• 検索結果がありません。

- 都市鉄道における遅延発生と輸送障害の現況都市鉄道における輸送トラブルと列車遅延に関していくつかの知見が得られている 三大都市圏における輸送トラブル発生件数 ( 平成 9 年度 ) は 支障時間 0 分未満が 60% 以上 0 分未満 80% 以上 0 分未満 90% 以上となっている 首都圏では

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "- 都市鉄道における遅延発生と輸送障害の現況都市鉄道における輸送トラブルと列車遅延に関していくつかの知見が得られている 三大都市圏における輸送トラブル発生件数 ( 平成 9 年度 ) は 支障時間 0 分未満が 60% 以上 0 分未満 80% 以上 0 分未満 90% 以上となっている 首都圏では"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

サービスの高度化に伴い発生する遅延等に対応した定時運行の確保方策に関する調査

平成 23 年 3 月 国土交通省 鉄道局

はじめに

本調査は、以下の項目を整理・検討し、今後の施策の参考となる報告を取りまとめることを目的とする。 1)都市鉄道における輸送サービス高度化の状況及び課題 輸送力増強や相互直通運転化等、都市鉄道の輸送サービス高度化の状況について整理する。また、高頻度運行に 伴うラッシュ時の遅延の慢性化、相互直通運転の拡大に伴う輸送障害発生時の影響の広域化等、都市鉄道輸送の今 日的な課題について整理する。 2)遅延防止のための今後の混雑緩和対策等 朝ラッシュ時は、高い混雑率を背景として利用者側のわずかな要因が遅延の原因となるため、遅延防止の観点か ら時差通勤の推進、混雑緩和や特定列車・車両への集中防止のための方策等について検討する。 3)路線の特性に応じたきめ細かな遅延防止対策 朝ラッシュ時に慢性化している短時間の遅延を対象に、遅延の発生要因を特定し、具体的な遅延防止対策につい て検討する。 4)相互直通路線における輸送障害の影響最小化の対策 運転休止や大規模な遅延を伴う輸送障害を対象に、影響を最小化し早期にダイヤを回復するために必要と考えら れる施設の整備や運転整理のあり方等について検討する。

1.都市鉄道における輸送サービス高度化の状況及び課題

1−1 都市鉄道における輸送サービス高度化の状況 東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県(以下「東京圏」という。)では、大量の通勤・通学需要の増大に対応するた め、都市鉄道の輸送力増強とネットワークの強化が図られてきた。しかし、今後は人口減少社会が本格的に到来し、 東京圏の総人口も減少に転じ、通勤・通学を中心とした都市鉄道の利用も減少傾向になると予想される。 東京圏の都市鉄道は、昭和 25 年から平成 22 年までの 60 年間に新線建設 886km、複々線化 216 ㎞が完成し、稠密 なネットワークと高頻度運転により世界に類を見ない 輸送力を実現している。昭和 40 年度から平成 21 年度 までの 44 年間に、東京圏の主要区間における最混雑1 時間当りの輸送人員は 1.6 倍、供給輸送力は 2.4 倍と なった。 国においては、各種助成制度や政策投融資等により 都市鉄道の整備を推進してきた。また、平成 17 年度に 都市鉄道利便増進事業費補助を創設し、平成 22 年度に 地下高速鉄道整備事業費補助のメニューに列車遅延・ 輸送障害対策を追加した。 図1に示すように、東京圏では戦後、都心部の路面 電車に代り地下鉄を整備するとともに、ターミナル駅 の混雑緩和と利便性向上のため、郊外線との相互直通 を実施し、現在では 878 ㎞に及びさらに整備中の路線 もある。一方、相互直通運転には、列車遅延や輸送障 害が発生した場合の影響の広域化やダイヤ回復の長時 間化といった新たな課題が生じている。 図1 東京圏の相互直通路線

(2)

1−2 都市鉄道における遅延発生と輸送障害の現況 都市鉄道における輸送トラブルと列車遅延に関していくつかの知見が得られている。 三大都市圏における輸送トラブル発生件数(平成 19 年度)は、支障時間 10 分未満が 60%以上、20 分未満 80% 以上、30 分未満 90%以上となっている。首都圏では、30 分未満のうち他社・他線区の影響によるものが約 4 割を 占め、輸送トラブルの影響が事業者境界を超えて波及している様子が分かる。 東京圏における時間帯ごとの運行実績データ等から、最混雑時間帯に向けて徐々に遅延が拡大し、以降は解消し ていく様子が分かっている。また、ラッシュ前半は駅停車時分の超過を駅間走行時分の短縮でカバーし、ラッシュ 後半は運行本数の増加とともに先行列車の遅れが直ちに後続列車の速度低下をもたらし、次々と列車間隔が詰まり 駅間走行時分も超過して遅延が拡大していることが分かっている。 東京圏における輸送障害の総件数は減少傾向にある一方、輸送障害に伴う総影響列車本数は増加しており、輸送 障害の影響範囲の拡大及び復旧時間の長期化が影響していると考えられる。

2.遅延防止のための今後の混雑緩和対策等

2−1 輸送力増強工事の現況 東京圏では現在も、小田急小田原線複々線化、JR東日本東北縦貫線、東急東横線改良、相鉄とJR及び東急直 通線等、大規模な輸送力増強工事が実施されている。また、東京メトロでは東西線の混雑緩和・遅延防止対策が計 画されている。 今後は、長期的には輸送量の減少が見込まれる中、部分的な線増や駅施設・車両の改良等、遅延防止に資する比 較的短期かつ小規模なハード対策を効率的かつ重点的に行なっていく必要がある。 2−2 時差通勤対策の現況と推進 時差通勤により混雑緩和を図る取組みは、東京圏では昭和 36 年に開始され、昭和 40 年の交通対策本部決定によ り深度化され、国家公務員の他に地方公共団体・民間事業所・学校等において時差通勤通学が推進されてきた。千 代田区霞が関地域に勤務する国家公務員約 4 万人の大部分が混雑時間帯後の 9 時 30 分の始業時刻となっており、東 京圏の鉄道の混雑緩和に大きく寄与している。 他方、平成 17 年度の内閣府調査によると、東京圏 では「官公庁」の時差通勤協力率が低く、地方公共 団体の多くが時差通勤を実施していないことから、 公的機関における時差通勤のさらなる実施の可能性 を調査した。1 都 2 県 3 市及び独立行政法人、地方 公共団体の外郭団体、合計 335 団体へアンケート票 を送付し 160 団体から回答を得て、始業時間帯別の 割合は図2に示すとおりだった。 複数の始業時刻がある場合、個人の判断で始業時 刻を選択できる度合があまり高くないとの回答が多 かった。また、さらなる時差通勤の実施可能性は、 大半の団体が「やや困難」または「非常に困難」としており、その理由は「サービスの低下」が最も多かった。 鉄道事業者の取組の一つとして、最近では、ICカード乗車券を活用して早朝利用にポイント等を付与してオフ ピーク通勤を推進する取組みが行われている。今後は、利用者へのより効果的なインセンティブの与え方の研究を 深め、需要シフトの効果を高めていく必要がある。 2−3 特定列車・車両への集中防止等 東急田園都市線及び東京メトロ東西線では、混雑する時間帯・区間で急行や快速を各駅停車化して列車間の混雑 0% 0% 0% 7% 3% 30% 70% 71% 86% 66% 46% 30% 12% 1% 19% 24% 0% 17% 6% 12% 1% 0% 0% 0% 0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 東 京 都 さいたま市 川 崎 市 横 浜 市 合     計 混雑前 混雑時間帯 混雑後 15分以内 混雑後 15分超 フレックス 図2 始業時間帯別の割合

(3)

を平準化し、混雑緩和と遅延軽減に一定の効果を上げている。西武池袋線の所沢・石神井公園間では、優等列車の 停車駅を分散(千鳥停車)している。 都市再開発等による局所的な交通需要の増加により、駅のホーム・階段・通路等に旅客が集中・滞留し、列車の 運行に影響している箇所があり、都営大江戸線の勝どき駅、東京メトロ東西線の門前仲町・茅場町駅等でホーム拡 幅や延伸等の工事が行われている。 2−4 混雑緩和対策の検討 平成 21 年度の混雑率 180%を超える 18 線区にて、輸送力が変らないとすると、180%以下とするために必要な協 力者数は約 6.5 万人、同様に 150%を超える 47 線区では約 33 万人となる。時差通勤対策によりピーク時間帯以外 にも鉄道利用者は分散しており、今後さらなる時差通勤対策を検討するには、ピークサイドの供給輸送力の状況等 を踏まえる必要がある。 鉄道事業は一種のサービス業で、利用者の行動パターンに合せた対応が必要な一方、遅延の発生要因として鉄道 外がある程度の割合を占めている。今後とも、鉄道利用者並びに沿線地域の住民等に対する広報活動等を通じて、 鉄道輸送に関する理解と協力の普及に努めることが重要である。

3.路線の特性に応じたきめ細かな遅延防止対策

3−1 調査対象路線での運行実績の分析 30 分未満の日常的な遅延の発生要因とその防止対策を検討するため、東京圏の「郊外鉄道A−地下鉄−郊外鉄道 B」からなる相互直通運転する 3 路線を調査対象とした。以下、郊外鉄道Aから地下鉄を経由して郊外鉄道Bへ向 かう方向を「順方向」、その逆を「逆方向」とする。 関係鉄道事業者からダイヤ(運行計画)・運行実績データ・関係資料の提供を受けて分析・考察するとともにヒア リングを実施し、必要により現地調査した。3 路線を一路線と捉え、年間で最も利用が少ないと想定される正月明 けの平日 1 日及び通常期の平日 4 日間の計 5 日間における、朝ラッシュ約 2 時間半の両方向各 60 本の列車の運行実 績を分析した。 3−2 遅延の発生・拡大・伝播の概況 縦方向に駅(郊外鉄道A−地下鉄−郊外鉄道Bの順にア∼ン、ガ∼ゲとした。)、横方向に列車を並べ、着・発ま たは通過時点の遅延時分を示すとともに、表1の各内容を表示した整理表(以下「遅延時分表」という。)5 日間分 を作成・分析した。その概要を図3に示すとおり、偶発的トラブルによる遅延を除いた定常的な遅延の要因として、 ①順方向ミ駅での出発待機、②順方向の途中駅終着列車、③逆方向のヒ駅、④他路線からの回送列車があり、それ ぞれにより待ち行列が発生したと考えられる。 表1 各駅での遅延時分表に示す内容 内 容 表 示 方 法 遅延時分の大きさ 枠内の色の変化 駅間走行での遅延増 赤の横線(20 秒以上) 駅停車での遅延増 青の横線(20 秒以上) 回送列車 縦線 折返し 矢印 遅延の発生要因 黒塗り(○数字は3−3で整理)

(4)

正月明け日 通常期1日目 通常期2日目 郊 外 鉄 道 B 地 下 鉄 郊   外   鉄   道   A 逆       方       向 郊   外   鉄   道   A 地   下   鉄 郊 外 鉄 道 B 順       方       向 通常期3日目 通常期4日目 郊 外 鉄 道 B 地 下 鉄 郊   外   鉄   道   A 逆       方       向 郊   外   鉄   道   A 地   下   鉄 郊 外 鉄 道 B 順       方       向 図3 各日の遅延の発生・拡大・伝播の様子 ② ② ③ ④ ② ② ② ③ ⑦ ③ ④ ④ ⑦ ② ② ② ③ ④ ② ② ② ③ ④ ① ② ② ⑤ ⑦ ⑦ ⑥ 遅延の色分け 1'∼ 3'∼ 5'∼ 7'∼ 9'∼ 11'∼ 13'∼ 15'∼ 18'∼ 25'∼ ①順方向ミ駅での出発待機 ②順方向の途中駅終着列車 ③逆方向のヒ駅 ④他路線からの回送列車 ⑤折返し列車の到着遅れ ⑥終着駅等での番線輻輳 ⑦偶発的トラブル :回送 :偶発的トラブルによる遅延の伝播 :定常的な遅延の伝播 :駅間走行での遅延増20"以上 :駅停車での遅延増20"以上 データ記録なし

(5)

3−3 遅延の発生要因 (1)出発待機 図4に示すように、順方向のミ駅は次のム駅までの距離が短く、軌道回路割の関係で、先行列車がム駅の軌道回 路に在線していると、後続列車は旅客の乗降が終了していても出発待機となる。(①) 現地調査及び運行実績データの分析により、先行列車との発着時隔を詰めてミ駅に到着した列車は停車時分が延 びて運転時隔を縮められず、発着時隔の長い列車は運転時隔も長いことが分かった。 50 0 0 0 ミ駅 ム駅 b a 50 0 0 0 ミ駅 ム駅 b a 50 60 40 0 a b 50 60 40 0 a b 列車aがム駅に在線中、列車bは前方の軌道回路へ進入した場合の車内信号が 0km/h なので出発待機となる。列車aがム駅の軌道回路を抜けると、列車bが前方 の軌道回路へ進入した場合の車内信号が 0km/h でなくなり出発待機が解除される。 (各軌道回路の数字は列車bが進入した場合の車内信号の速度を示す。) 図4 順方向ミ・ム駅間の続行運転の後続列車の信号現示 (2)途中駅終着列車 マ駅とユ駅は中線等の折返し線を持たず、折返し列車は順方向の本線に到着後、全旅客の降車を確認した後に引 上げ線へ引上げ、逆方向の本線へ据付けて出発する。 終着列車と前後の列車の運転時隔が開く要因を現地調査したところ、終着列車はその他の列車(以下、「通常列車」 という。)と比べ、「進入速度が低く到着が遅れる」「引上げ前の降車確認に時間を要する」「引上げ速度が低く後続 列車の信号開通が遅れる」ことが見出された。(②) 現地調査と理論計算により、通常列車が連続している場合と比べ終着列車が 1 本あるごとに、上記 3 点により、 マ駅では 2+20+6≒約 28 秒、ユ駅では 8+20+3≒約 31 秒の運転時隔の拡大が生じると試算された。 (3)ピーク後の高頻度運行 郊外鉄道Aから都心への高頻度運行による大量輸送の終了後、車両を都心から郊外鉄道Aにある車両基地へ戻す ために多数の列車を運行している。逆方向の 9 時台後半の 34 分間、マ駅から終点方は平均運転時隔が 2 分 00 秒と なり、順方向のピーク時間帯より短く、特にヒ駅は会社分界で乗務員が交代して相応の停車時分を要している。(③) 逆方向のツ・セ駅間は、朝ラッシュ後、ツ駅が終点の他路線の回送列車が加わり、約 70 分間に渡り平均運転時隔 1 分 51 秒とさらに短くなっている。(④) 以上を整理したものを表2に示す。 表2 遅延の発生要因のまとめ 項 目 要 因 (1)出発待機 ①順方向ミ駅での出発待機 先行列車の前方駅出発まで出発待機となり待ち行列が発生 (2)途中駅終着列車 ②順方向の途中駅終着列車 進入・降車確認・引上げに時間を要し待ち行列が発生 (3)ピーク後の高頻度運行 ③逆方向のヒ駅 運行頻度が高い中で停車時分を要し待ち行列が発生 ④他路線からの回送列車 運行頻度がさらに高まり断続的に待ち行列が発生

(6)

3−4 遅延の防止対策 (1)出発待機 順方向のム駅構内またはミ駅の前方の軌道回路を細分化できれば、ミ駅での出発待機を短縮または解消できると 考えられ、費用対効果を分析して検討する必要がある。 (2)途中駅終着列車 必要時間帯のみホーム要員を増やして対処し終着列車の降車確認時間を短縮すること、順方向のマ・ユ駅で折返 す列車をリ駅へ延伸すること等が考えられ、路線全体の輸送の安定性向上の観点から費用対効果を分析して検討す る必要がある。 (3)ピーク後の高頻度運行 都心区間の留置線を活用すること、マ・ユ駅で折返す列車をリ駅へ延伸すること、折返し列車の一部を回送列車 として運行すること、ヒ駅において乗務員交代時や駅務員対応の工夫等により停車時分を短縮すること等が考えら れるが、それぞれの対策においても課題があることから、費用対効果を踏まえて実務的検討をする必要がある。 以上を整理したものを表3に示す。 表3 遅延の防止対策のまとめ 項 目 要 因 防 止 対 策 課 題 (1)出発待機 ①順方向ミ駅 での出発待機 先行列車の前方駅出発まで出 発待機となり待ち行列が発生 ・軌道回路を細分化し出発待機を短 縮・解消 ・費用対効果の分析 (2)途中駅終着列車 ②順方向の途 中駅終着列車 進入・降車確認・引上げに時間 を要し待ち行列が発生 ・必要時間帯のみホーム要員を増員 し終着列車の降車確認時間を短縮 ・折返し列車の一部を延伸 ・費用対効果の分析 ・延伸区間の線路容量と延伸駅の折返し容 量の確保 ・費用対効果の分析 (3)ピーク後の高頻度運行 ③逆方向のヒ 駅 運行頻度が高い中で停車時分 を要し待ち行列が発生 ④他路線から の回送列車 運行頻度がさらに高まり断続 的に待ち行列が発生 ・都心区間の留置線への留置編成を 増やし郊外への運行本数を減らす ・折返し列車の一部を延伸し郊外へ の運行時間帯を分散 ・営業列車の一部を回送列車として 線容量を向上 ・ヒ駅での乗務員交代や駅務員対応 の工夫により停車時分を短縮 ・故障車両の収容及び他路線との直通運転 中止の際の留置箇所を塞ぐ ・(2)と同様 ・旅客サービスを確保しつつダイヤ設定 ・現場に即した実務的検討

4.相互直通路線における輸送障害の影響最小化の対策

4−1 東京圏各路線に共通の検討 東京圏には、東京メトロまたは都営地下鉄を核とした相互直通路線が 9 系統、878 ㎞ある。 鉄道利用者が輸送障害時にまず考えることは目的地へのスムーズな移動の可否であり、そのために欲しい情報は 当該路線の復旧見込み時刻や代替ルートの有無及び移動時分等であり、その重要性は発生時間帯により変化する。 輸送障害発生時における情報提供のあり方に関しては、関東運輸局にて既に検討会を 13 回開催し、鉄道事業者間

(7)

で合意できた内容をこれまでに 3 回通達しており、今後とも関東運輸局が中心となって検討していくことから、本 調査の対象としない。 支障時間 30 分以上 1 時間未満の輸送障害の原因は、鉄道内 14%、鉄道外 78%、自然災害 8%である。鉄道外で は、自殺が 61%を占め、鉄道内では、車両・土木施設・電気施設の故障が多くを占め、自然災害では、水害・風害・ 雪害・雷害等があり、自然災害が長時間にわたる場合や、施設の安全確認、故障原因の究明及び鉄道施設の復旧に 長時間を要する場合があると考えられる。 東京圏は鉄道・バスのネットワークが充実し、鉄道事業者は、振替輸送依頼先を事前にパターン化しており、輸 送障害時は速やかに振替輸送を依頼し、了解を得た後、鉄道利用者等に対して関連情報を速やかに提供している。 輸送障害が発生した路線では、折返し施設の設置場所及び容量に応じた折返し運転を実施しているが、通常と同様 の運行は確保できず所要時間と混雑の増大が発生する。振替輸送を実施する路線では、通常時を大幅に上回る利用 客が集中し、所要時間と混雑の増大が発生する場合もある。振替経路が複数ある場合は、情報提供を工夫し利用を 分散する方法を検討する余地がある。 並行路線または接続駅がない区間では、振替輸送が路線バスのみとなり、鉄道と輸送力に大きな差があり、バス 車両の不足及び道路混雑により所要時間と待ち時間が増大する。代行輸送の実施拡大を検討する余地がある。まれ に鉄道の接続駅も適当な路線バスもない区間があり、利用者は当該路線の復旧を待つしかない。代行輸送の実施を 検討する余地がある。 4−2 調査対象路線での分析 東京圏の最大延長 98.6 ㎞+分岐線 6.7km の「郊外鉄道−地下鉄−郊外鉄道」からなる相互直通路線を一つの路線 と捉え調査対象とした。 (1)折返し運転 図5に示すように、各鉄道事業者は輸送障害の発生場所に応じた折返し運転パターンを用意し、定期的に異常時 対応訓練等を実施している。しかし、折返し施設の容量が不足し、また迅速・確実な折返しダイヤの決定と関係者 への周知は容易でないことから、折返し駅等がボトルネックとなり、待ち時間・所要時間と混雑の増大が生じてい る。また、図5の3段目のように、折返し機能の制約から、輸送障害区間と離れた区間で運休が生じることもある。 事業者境界 輸送障害区間 運転区間 回送区間 運休区間 他線との乗換駅 A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U,V 図5 調査対象路線の折返し運転パターン (2)折返し施設 折返し施設は、車両基地の位置・輸送需要・運行計画等を総合的に判断して設置され、相互直通路線の事業者境 界駅の折返し施設は、通常の終端駅と比較して縮小されている場合が多い。調査対象路線の折返し駅の配線と折返 し時の列車の動きを見ると、例えば図6・7に示すように、折返しに制約を受ける配線の駅がいくつかあり、朝夕

(8)

の高頻度な列車本数の折返しに全て通常ダイヤどおりに対応することは難しい状況となっている。 ○:降車、△:乗車 図6 C駅の配線と折返し列車の動き ○:降車、△:乗車 図7 J駅の配線と折返し列車の動き さらに、図8に示すように、1 つの事業者境界駅は郊外鉄道方へ折返せず、遠方の駅で折返し運転を行い、事業 者境界駅との間は運休としている。鉄道事業者間にて、利用者の視点に立った輸送形態・分離運転のあり方等につ いて検討・調整を行う必要もあると考えられる。 R駅 P駅 引上げ線はいずれかを使用 徒 歩 約 分 路線延伸計画あり W駅 10 R駅 P駅 引上げ線はいずれかを使用 徒 歩 約 分 路線延伸計画あり W駅 10 図8 事業者境界P駅の配線と折返し列車の動き (3)運転整理等 輸送障害が発生した場合、指令所は様々な輻輳する業務に同時に対応している。さらに相互直通路線では、事業 者ごとに指令所が存在し、他の事業者の運行状況等を充分に把握できないこともあり、多くの場合は直通運転を中 止し事業者境界駅での分離運転としている。 輸送障害時は、利用者が目的地までスムーズに移動する手段の確保が重要であり、相互直通路線全体を一つの路 線として捉え、各事業者の指令員が様々な情報を的確に把握するとともに、路線内にある折返し施設を有効に活用 し、旅客の滞留や列車の輻輳等を解消する運転整理を実施するための体制を充実することが効果的と考えられる。

おわりに

本調査を踏まえ、東京圏の都市鉄道の定時運行の確保に向けた今後の課題としては、以下が考えられる。 ・本調査での分析内容及びその手法を踏まえ、列車の恒常的な遅延の発生要因となっているボトルネックを確認及 び抽出するとともに、費用対効果を踏まえた効果的な遅延防止対策について検討。 ・輸送障害発生時において、利用者が目的地までできるだけスムーズに移動する経路を確保するため、各鉄道事業 者が、相互直通路線を一路線と捉えて必要な情報を的確に把握するとともに路線内の折返し施設を有効に活用し、 旅客の滞留や列車の輻輳等を解消する運転整理を実施するための体制の充実について検討。 ・施設整備の推進に当り、利益の伴わない遅延防止・輸送障害対策に有効な施設等の整備に関して、費用対効果及 び費用負担のあり方等について検討。

参照

関連したドキュメント

自動車や鉄道などの運輸機関は、大都市東京の

・少なくとも 1 か月間に 1 回以上、1 週間に 1

延床面積 1,000 ㎡以上 2,000 ㎡未満の共同住宅、寄宿舎およびこれらに

1.3で示した想定シナリオにおいて,格納容器ベントの実施は事象発生から 38 時間後 であるため,上記フェーズⅠ~フェーズⅣは以下の時間帯となる。 フェーズⅠ 事象発生後

受電電力の最大値・発電機容量・契約電力 公称電圧 2,000kW 未満 6.6kV 2,000kW 以上 10,000kW 未満 22kV 10,000kW 以上 50,000kW 未満 66kV 50,000kW 以上

3:80%以上 2:50%以上 1:50%未満 0:実施無し 3:毎月実施 2:四半期に1回以上 1:年1回以上

3:80%以上 2:50%以上 1:50%未満 0:実施無し 3:毎月実施 2:四半期に1回以上 1:年1回以上

3:80%以上 2:50%以上 1:50%未満 0:実施無し 3:毎月実施. 2:四半期に1回以上 1:年1回以上