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(1)

「 寄 付 税 制 の 一 考 察 」

経 済 学 研 究 科

経 済 学 専 攻

05m3 0 5 5

小 川

さ つ き

(2)

論 文 要 旨 平 成 17 年 の 国 勢 調 査 に よ る と 、 平 成 17 年 10 月 1 日 現 在 の 日 本 の 総 人 口 は 1 億 2776 万 人 で 、 1 年 前 よ り 約 2 万 人 減 少 し た 。 こ れ は 、終 戦 時 を 除 い て 、1920 年 の 国 勢 調 査 の 開 始 以 来 、 初 め て の 減 少 で あ る 。少 子 高 齢 化 は 、 労 働 人 口 の 減 少 を 招 く 。労 働 人 口 の 減 少 は 納 税 者 の 減 少 と な り 税 収 の 減 少 に つ な が る 。国 税 に お け る 所 得 税 の 割 合 は 31%で あ り 、消 費 税 の 38.2%に つ い で 2 番 目 多 く 、 税 収 の 減 少 の 影 響 は 大 き い 。 一 方 、 人 々 の 価 値 観 の 多 様 化 に つ れ 、 政 府 の 一 元 的 、画 一 的 な サ ー ビ ス だ け で は 公 共 的 ニ ー ズ の 全 て を 満 た す 事 は 難 し く な っ て き て い る 。 平 成 17 年 6 月 17 日 、 税 制 調 査 会 か ら 『 新 た な 非 営 利 法 人 に 関 す る 課 税 及 び 寄 附 金 税 制 の 基 本 的 考 え 方 』が 出 さ れ た 。そ の 中 で は 非 営 利 法 人 に 対 す る 課 税 の あ り 方 等 が 提 言 さ れ て い る 。非 営 利 法 人 な ど の「 民 間 が 担 う 公 共 」を 促 進 す る 上 で 、寄 付 金 と し て 資 金 の 出 し 手 で あ る 個 人 や 法 人 の 税 負 担 に 関 す る 問 題 は 大 き い 。個 人 に お け る 寄 付 金 支 出 は 、寄 付 金 控 除 と し て 総 所 得 金 額 か ら 控 除 す る 所 得 控 除 方 式 を と る 。累 進 構 造 を 持 つ わ が 国 の 所 得 税 に お い て は 、合 計 所 得 か ら 控 除 で き る 所 得 控 除 は 、限 界 税 率 の 高 い 納 税 者 に と っ て 大 き な 影 響 が あ る と 思 わ れ る 。本 稿 で は 、寄 付 金 の 所 得 控 除 方 式 が 寄 付 金 支 出 に ど の よ う な 効 果 を 与 え る か を 考 え た 。 第 1 章 で は 寄 付 金 控 除 の 現 状 と 税 額 控 除 か ら 所 得 控 除 に 改 正 さ れ た 経 緯 、寄 付 金 支 出 を 控 除 す る 根 拠 を 見 た 。現 在 、寄 付 金 控 除 は 、政 治 的 寄 付 金 支 出 を 除 い て 所 得 控 除 方 式 を と っ て い る 。 寄 付 金 控 除 は 、 奨 励 補 助 金 的 な 性 格 を 持 つ 。 寄 付 金 控 除 を 利 用 す る 納 税 者 は 、 所 得 控 除 方 式 を 採 用 し た 昭 和 42 年 か ら 緩 や か に 増 加 し て い る 。 第 2 章 で は 、寄 付 金 支 出 に 対 す る 税 制 の 優 遇 が 、個 人 の 寄 付 支 出 に ど の よ う な 影 響 を 与 え る か 、消 費 選 択 の 問 題 と 同 様 に 考 え た 。所 得 控 除 と し て 寄 付 金 控 除 を 導 入 し た 場 合 、そ の 他 の 消 費 支 出 が 同 じ で あ る の に 対 し て 、寄 付 金 支 出 は 増 加 し 、促 進 す る 働 き が あ っ た 。税 率 か ら 独 立 し て い る 税 額 控 除 方 式 に 対 し て 、 所 得 控 除 方 式 は 税 率 の 影 響 を 受 け る 。寄 付 の 実 質 価 格 で あ る 寄 付 の 租 税 価 格 は 1 マ イ ナ ス 限 界 税 率 で あ り 、累 進 構 造 を 持 つ わ が 国 の 所 得 税 に お い て は 限 界 税 率 の 高 い 納 税 者 ほ ど 寄 付 の 租 税 価 格 は 低 く な る 。

(3)

第 3 章 で は 、ま ず 、過 去 の ア メ リ カ と 日 本 の 実 証 分 析 を み た 。ア メ リ カ に お い て は 寄 付 の 価 格 弾 力 性 は 、1975 年 以 降 の 推 計 結 果 の ほ う が 1960 年 以 前 の 結 果 に 比 べ て 、寄 付 金 税 制 が 効 率 的 で あ る と い う 結 果 で あ っ た 。日 本 に お い て の 先 行 研 究 は 、山 内(1997)と 三 和 総 合 研 究 所 (2000)が あ る 。山 内 (1997)に お い て は 寄 付 の 価 格 弾 力 性 は −1.701、 三 和 総 合 研 究 所 (2000)に お い て は − 0.793 で あ る 。山 内(1997)の ほ う が 結 果 と し て 寄 付 金 税 制 は 効 率 で あ っ た 。こ の 2 つ の 計 測 結 果 に は か な り 差 が あ る 。 本 稿 で は 、 国 税 庁 企 画 局 編 『 申 告 所 得 税 標 本 調 査 結 果 報 告 』 の 平 成 11 年 (1999)か ら 平 成 16 年 (2004)の 最 新 の デ ー タ ー を 使 っ て 寄 付 の 価 格 弾 力 性 と 所 得 弾 力 性 の 測 定 を 行 っ た 。寄 付 促 進 の た め の 税 制 は 、寄 付 金 控 除 分 だ け 減 ら さ れ た 税 収 よ り 、寄 付 支 出 が 増 加 し な け れ ば 、効 率 性 の 観 点 か ら は 正 当 化 さ れ な い 。山 内(1997)に よ る と 寄 付 税 制 の 効 率 性 の 条 件 は 、「 寄 付 支 出 の 価 格 弾 力 性 が −1 を 絶 対 値 で 上 回 る こ と 」で あ る 。本 稿 の 計 測 の 結 果 、申 告 所 得 者 全 体 で は 寄 付 の 価 格 弾 力 性 は −2.720 と な っ た 。申 告 所 得 者 計 で は 寄 付 金 控 除 制 度 は 効 率 性 の 観 点 か ら 導 入 す る 価 値 が あ る と い え る 結 果 と な っ た 。 職 業 別 に み る と 専 門 職 と 勤 労 者 の 価 格 弾 力 性 は −2.751 と な り 、申 告 所 得 者 計 よ り も 絶 対 値 で 高 い 数 値 と な っ て い る 。専 門 職 と 勤 労 者 の 計 測 の 結 果 も 、寄 付 金 控 除 制 度 は 効 率 性 の 観 点 か ら 導 入 す る 価 値 が あ る 結 果 と な っ た 。 税 率 か ら 独 立 的 で あ る 税 額 控 除 方 式 に 対 し て 、所 得 控 除 方 式 は 限 界 税 率 の 影 響 を 受 け る 。わ が 国 の 所 得 税 は 累 進 構 造 を 持 つ 。寄 付 金 支 出 に 所 得 控 除 方 式 を 採 用 す る 事 は 、税 額 控 除 方 式 を 採 用 す る 事 よ り 公 平 性 の 点 で 問 題 が あ り 、い わ ゆ る 金 持 ち 優 遇 と い う 議 論 も あ る 。し か し 、本 稿 で 寄 付 の 価 格 弾 力 性 に つ い て 絶 対 値 で 高 い 数 値 が 得 ら れ た と い う こ と は 、所 得 控 除 方 式 で の 寄 付 金 控 除 に 対 す る 意 識 が 高 く 、寄 付 金 の 優 遇 税 制 に よ り 、寄 付 支 出 が 増 え る 可 能 性 が 大 き い と い う こ と で あ る 。国 や 地 方 公 共 団 体 、非 営 利 法 人 等 へ の 寄 付 金 の 出 し 手 で あ る 個 人 の 寄 付 金 支 出 を 優 遇 す る 事 は 、寄 付 金 支 出 を さ ら に 促 し 、政 府 支 出 を 削 減 で き る か も し れ な い 。ま た 、人 々 の 多 様 な 公 共 的 ニ ー ズ に 答 え る 方 法 の ひ と つ で あ る と 思 わ れ る 。 寄 付 文 化 が 比 較 的 希 薄 と い わ れ て い る わ が 国 に お い て 、 税 制 調 査 会 の い う「 公 共 」の 意 識 を 育 て る た め に も 、寄 付 金 支 出 を 優 遇 す る 事 は 有 効 な 手 段 で あ る 。

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寄 付 税 制 の 一 考 察 は じ め に 第 1 章 寄 付 金 控 除 の 根 拠 と 寄 付 金 控 除 制 度 1 ・ 1 寄 付 金 制 度 と 現 状 1 ・ 2 寄 付 税 制 の 推 移 1 ・ 3 寄 付 金 控 除 の 根 拠 第 2 章 所 得 税 制 が 個 人 寄 付 に 与 え る 影 響 2 ・ 1 寄 付 金 支 出 と 消 費 支 出 の 選 択 2 ・ 2 寄 付 の 租 税 価 格 2 ・ 3 所 得 控 除 か 税 額 控 除 か 2 ・ 4 寄 付 の 租 税 価 格 と 所 得 控 除 ・ 税 額 控 除 第 3 章 寄 付 税 制 の 実 証 分 析 3 ・ 1 寄 付 の 実 証 モ デ ル 3 ・ 2 ア メ リ カ ・ 日 本 の 計 測 例 3 ・ 3 寄 付 の 価 格 弾 力 性 と 所 得 弾 力 性 3 ・ 4 寄 付 税 制 は 効 率 的 か お わ り に

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は じ め に 平 成 17 年 (2005)の 国 勢 調 査 に よ る と 、平 成 17 年 (2005)10 月 1 日 現 在 の 日 本 の 総 人 口 は 1 億 2776 万 人 で 、 1 年 前 よ り 約 2 万 人 減 少 し た 。 こ れ は 、 終 戦 時 の 1945 年 を 除 い て 、 1920 年 の 国 勢 調 査 の 開 始 以 来 、 初 め て の 減 少 で あ る 1 )少 子 高 齢 化 は 、 労 働 人 口 の 減 少 を 招 く 、 い わ ゆ る 団 塊 の 世 代 が 65 歳 以 上 と な る 2012 年 以 降 は 、 労 働 人 口 の 減 少 が さ ら に 加 速 す る と 考 え ら れ る 。 労 働 人 口 の 減 少 は 納 税 者 の 減 少 と な り 税 収 の 減 少 に つ な が る 。 そ れ は 、65 歳 以 上 に な る と そ の 多 く の 人 の 収 入 が 公 的 年 金 に よ る も の と 考 え ら れ る か ら で あ る 2 )。平 成 18 年 (2006)に お い て 、国 税 に お け る 所 得 税 の 割 合 は 31%で あ り 、 消 費 税 の 38.2%に つ い で 2 番 目 に 多 く 、税 収 の 減 少 の 影 響 は 大 き い 。一 方 、人 々 の 価 値 観 の 多 様 化 に つ れ 、政 府 の 一 元 的 、画 一 的 な サ ー ビ ス だ け で は 公 共 的 ニ ー ズ の 全 て を 満 た す 事 は 難 し く な っ て き て い る 。も し 、多 様 化 す る 価 値 観 に あ わ せ て サ ー ビ ス を 拡 大 す る 事 に な れ ば 大 き な 政 府 が 必 要 と な る 。 し か し 今 後 、 税 収 減 や 社 会 保 障 費 の 増 大 が 予 想 さ れ る の で 、大 き な 政 府 を 持 つ 事 は 難 し い と 思 わ れ る 。 こ の よ う な 背 景 の 中 、 平 成 17 年 6 月 17 日 、 税 制 調 査 会 か ら 『 新 た な 非 営 利 法 人 に 関 す る 課 税 及 び 寄 附 金 税 制 の 基 本 的 考 え 方 』が 出 さ れ た 。そ の 中 で は 非 営 利 法 人 に 対 す る 課 税 の あ り 方 等 が 提 言 さ れ て い る 。非 営 利 法 人 は 税 制 調 査 会 の い う「 民 間 が 担 う 公 共 」に 大 き く 貢 献 す る と 考 え ら れ る 3 )。「 民 間 が 担 う 公 共 」を 促 進 す る 上 で 、寄 付 金 と し て 資 金 の 出 し 手 で あ る 個 人 や 法 人 の 税 負 担 に 関 す る 問 題 は 大 き い 。税 制 調 査 会『 新 た な 非 営 利 法 人 に 関 す る 課 税 及 び 寄 附 金 税 制 の 基 本 的 考 え 方 』の 中 で も 、寄 付 金 税 制 の あ り 方 の 中 で「 個 人 に よ る 寄 付 金 に つ い て は 、一 般 的 に は 他 人 に 対 す る 金 銭 等 の 贈 与 で あ り 、所 得 の 任 意 の 処 分 で あ る た め 、個 人 所 得 課 税 の 課 税 ベ ー ス に 含 め る べ き も の で あ る 。し か し な が ら 、公 益 活 動 に 対 す る 寄 付 の 奨 励 措 置 と し て(中 略 )公 益 目 的 の 寄 付 金 に つ 1) 総務省統計局、国勢調査 http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/youkei/01.htm 参照。 2) 公的年金収入は所得税において雑所得として課税される。平成 17 年以降 65 歳以上の公的年金控除額の最 低控除額は 120 万円であり、これは給与所得控除の最低控除額 65 万円と比較してもかなり優遇されている(所 得税法第 28 条の 3、第 35 条の 2,3,4,5)。 他にも配偶者が 70 歳以上の場合、通常の配偶者控除より 10 万円高い 48 万円が所得控除となる。(所得税法 第 83 条)その他の控除も考えると、この年代の人の課税所得はかなり低いものになると考えられる。 3) 税制調査委員会(2005)1 頁,23 行目引用。

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い て は 所 得 控 除 を お こ な う 寄 付 金 控 除 制 度 が 設 け ら れ て い る 。」と し て 寄 付 金 税 制 の 充 実 の 必 要 性 と そ の あ り 方 に つ い て の 検 討 の 必 要 性 を 述 べ て い る 4 ) 税 制 調 査 会 、平 成 17 年 6 月 21 日『 個 人 所 得 課 税 に 関 す る 論 点 整 理 』で は 、 「 所 得 を 課 税 対 象 と す る 所 得 税 は 、 納 税 者 の 獲 得 能 力 に 応 じ た 負 担 を 求 め る 税 」と い っ て い る 5 )。寄 付 金 控 除 は 、総 所 得 金 額 か ら 控 除 す る 所 得 控 除 方 式 を と る 6 )。寄 付 金 控 除 は 、所 得 控 除 方 式 の な か で 人 的 控 除 の よ う な 最 低 生 活 水 準 の 保 障 の よ う な 性 格 を 持 つ と は い え な い 。し か し 、奨 励 補 助 金 的 な 性 格 が あ る と い わ れ て い る 。累 進 構 造 を 持 つ わ が 国 の 所 得 税 に お い て は 、合 計 所 得 か ら 控 除 で き る 所 得 控 除 は 、限 界 税 率 の 高 い 納 税 者 に と っ て 大 き な 影 響 が あ る と 思 わ れ る 。限 界 税 率 の 高 い 納 税 者 は 、低 い 納 税 者 に 比 べ て 同 じ 額 の 寄 付 金 支 出 を し た 場 合 、 寄 付 金 控 除 が 認 め ら れ な い 場 合 に 比 べ て 、 納 め る 税 額 が 少 な く な る 。 こ の よ う に 、寄 付 金 の 所 得 控 除 は 限 界 税 率 の 高 い 納 税 者 ほ ど 寄 付 金 支 出 へ の 促 進 効 果 が 高 い と 考 え ら れ る 。 本 稿 で は 、寄 付 支 出 に 対 す る 税 制 の 優 遇 措 置 が 個 人 の 寄 付 金 支 出 に ど の よ う な 影 響 を 与 え る か 、 寄 付 の 実 質 価 格 で あ る 寄 付 の 租 税 価 格 と は な に か を み る 。 第 1 章 で は 、寄 付 金 支 出 を 課 税 ベ ー ス か ら 控 除 す る 根 拠 、寄 付 金 控 除 制 度 の 現 状 と 推 移 に つ い て ふ れ る 。 第 2 章 で は 、 寄 付 金 支 出 に 所 得 控 除 を 認 め た 場 合 、 個 人 が 寄 付 金 支 出 と 寄 付 金 支 出 以 外 の 消 費 支 出 、い ず れ を 選 択 す る か 、一 般 の 消 費 者 選 択 モ デ ル を 参 考 に し て 考 え る 。そ し て 、累 進 構 造 を 持 つ わ が 国 の 所 得 税 に お い て 、限 界 税 率 が 異 な る と 寄 付 の 租 税 価 格 が ど の よ う に 変 化 す る か を 見 る 。第 3 章 で は 、寄 付 の 租 税 価 格 が 変 化 す る こ と に よ る 寄 付 金 支 出 へ の 影 響 を 、 国 税 庁 企 画 局 編 『 申 告 所 得 税 標 本 調 査 結 果 報 告 』 の 平 成 11 年 (1999)か ら 平 成 16 年 (2004)ま で の 最 新 の デ ー タ ー を 使 っ て 測 定 を 行 い 、 寄 付 の 租 税 価 格 が 寄 付 支 出 に 促 進 的 効 果 を 与 え て い え る か 、 寄 付 税 制 は 効 率 的 で あ る か を 見 る 。 4) 税制調査会(2005)12 頁,3∼7 行目引用。 5) 財務省 税制調査会 http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/tosin/170621.htm。 6) 政治活動に関する寄付支出をした場合は税額控除方式との選択が可能である。

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第 1 章 寄 付 金 控 除 の 根 拠 と 寄 付 金 控 除 制 度 現 在 、政 治 的 寄 付 以 外 、寄 付 金 控 除 の 対 象 と な る 特 定 支 出 寄 付 金 は 、課 税 所 得 か ら 控 除 す る 所 得 控 除 方 式 を と っ て い る 7 )。所 得 税 額 は 、総 所 得 金 額 よ り 所 得 控 除 を 差 し 引 い た 課 税 所 得 に 限 界 税 率 を か け て 算 出 す る 。累 進 構 造 を 持 つ わ が 国 で は 、高 額 所 得 者 ほ ど 高 い 限 界 税 率 と な っ て い る 。寄 付 金 支 出 に 所 得 控 除 方 式 を と る 場 合 は 、限 界 税 率 に 寄 付 金 支 出 が 影 響 を 受 け る 事 が 考 え ら れ 、高 額 所 得 者 ほ ど そ の 影 響 は 大 き い と 考 え ら れ る 。こ の 章 で は 、寄 付 金 の 所 得 控 除 方 式 が 、寄 付 金 支 出 を 促 進 し て い る か 考 え る に あ た っ て 、第 1 節 に お い て 寄 付 金 控 除 の 制 度 と 現 状 、第 2 節 で は 寄 付 金 税 制 の 推 移 と 税 制 調 査 委 員 会 の 答 申 に お い て 、寄 付 金 税 制 の あ り か た に つ い て ど の よ う な 経 緯 が あ っ た か 、第 3 節 に お い て は 寄 付 金 を 控 除 す る 根 拠 に つ い て 見 て ゆ き た い 。 1 ・ 1 寄 付 金 制 度 と 現 状 (注2) ×累進税率=税額 (注3) (注1) 総所得金額 所得控除 課税所得 合計所得 損益 通算 (注 1)給 与 所 得 、 事 業 所 得 等 10 種 類 の 所 得 が あ る 。 (注 2)基 礎 控 除 、 配 偶 者 控 除 等 平 成 18 年 現 在 、 15 種 類 の 所 得 控 除 が 認 め ら れ て い る 。 寄 付 金 控 除 も 所 得 控 除 に 含 ま れ る 。 (注 3)累 進 税 率 に よ り 税 額 を 求 め た 後 、平 成 18 年 現 在 、5 種 類 の 税 額 控 除 が 認 め ら れ る 。 図 1-1 所 得 控 除 方 式 の 流 れ 7) 平成 7 年より、政治的寄付は所得控除方式と税額控除方式のいずれかを選択することができる。

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寄 付 金 控 除 に 所 得 控 除 方 式 が 導 入 さ れ た の は 、 昭 和 42 年 (1967)で あ る 。 そ の 後 、平 成 7 年 (1995)よ り 政 治 的 寄 付 に 限 っ て 税 額 控 除 方 式 と の 選 択 適 用 が 認 め ら れ て い る 。政 治 的 寄 付 以 外 の 寄 付 金 支 出 に つ い て は 、所 得 控 除 方 式 が 認 め ら れ て い る 。 寄 付 金 支 出 に 所 得 控 除 方 式 を 採 用 し た 場 合 の 所 得 税 額 の 算 出 方 法 は 、 ま ず 、 給 与 所 得 や 事 業 所 得 な ど 10 種 類 の 所 得 を 合 算 し て 合 計 所 得 を 算 出 す る 8 )10 種 類 の 所 得 の う ち 、利 子 所 得 を 除 く 9 種 類 の 所 得 を 損 益 通 算 し 、総 所 得 金 額 を 算 出 す る 。総 所 得 金 額 か ら 寄 付 金 控 除 等 の 所 得 控 除 を 差 し 引 き 9 )、課 税 所 得 金 額 を 算 出 、 限 界 税 率 を か け る 1 0 )。 な お 、 税 額 控 除 方 式 を と る 場 合 は 、 こ の 後 税 額 控 除 を し 、所 得 税 額 を 算 出 す る 。確 定 申 告 を す る 場 合 は 、災 害 免 除 額 1 1 ) 源 泉 徴 収 税 額 、予 定 納 税 額 等 を 差 し 引 き 、確 定 申 告 に よ り 納 付 す る 税 額 を 算 出 す る 。 寄 付 金 控 除 と し て 所 得 控 除 方 式 は 、 所 得 税 法 第 78 条 に よ り 、 「 居 住 者 が 、各 年 に お い て 、特 定 寄 付 金 を 支 出 し た 場 合 に お い て 、そ の 年 中 に 支 出 し た 特 定 寄 付 金 の 額 の 合 計 額 が 一 万 円 を 超 え る と き は 、そ の 超 え る 金 額 を 、そ の 者 の そ の 年 分 の 総 所 得 金 額 、退 職 所 得 金 額 又 は 山 林 所 得 金 額 か ら 控 除 す る 。」と 規 定 さ れ て い る 。特 定 寄 付 金 と は ① 国 や 地 方 公 共 団 体 に 対 す る 寄 付 金 。② 民 法 第 34 条 の 規 定 に よ っ て 設 立 さ れ た 法 人 等 で 財 務 大 臣 の 指 定 を 受 け た 寄 付 金 。 ③ 特 定 公 益 信 託 の 信 託 財 産 と す る た め に 金 銭 で す る 寄 付 金 の う ち 、信 託 の 目 的 が 公 益 の 増 進 に 著 し く 寄 与 す る と 認 め ら れ る も の 。④ 公 共 法 人 や 特 別 の 法 律 に よ っ て 設 立 さ れ た 法 人 の う ち 教 育 又 は 科 学 の 振 興 、文 化 の 向 上 、社 会 福 祉 へ の 貢 献 、そ の 他 公 益 の 増 進 に 著 し く 寄 与 す る も の と し て 、所 得 税 法 施 行 令 第 217 条 で 定 め ら れ て い る 特 定 公 益 増 進 法 人 に 対 す る 寄 付 金 1 2 )。 ⑤ 政 治 献 金 の う ち 8) 合計所得には、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、譲渡所得、一時所得、雑所得、山林所得、 退職所得があり、他に利子所得がある。(所得税法第 23∼24 条、第 26∼28 条、第 3 条、第 32∼35 条) 9) 所得控除には平成 18 年現在、雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模共済等掛金控除、生命保 険料控除、損害保険料・地震保険料控除、寄付金控除、障害者控除、寡婦控除、寡夫控除、勤労学生控除、 配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除がある。(所得税法第 72∼79 条、第 81∼84 条、第 86 条) 10) 第 3 章、表 3-2 を参照されたい。 11) 損失を受けた住宅や家財がある場合、一定割合を雑損控除との選択適用により控除することができる。(災 害免除法第 2 条) 12) 特定公益増進法人とは、次のような法人をいう。 イ 独立行政法人。 ロ 地方独立行政法人で一定のもの(平成 16 年 4 月 1 日以後の寄付から対象)。 ハ 日本私立学校振興・共済事業団、日本赤十字社など特別の法律によって設立された法人。 二 民法第 34 条の規定によって設立された公益法人のうち特定のもの。 ホ 私立学校法第 3 条に規定する学校法人で学校の設置若しくは学校及び一定の専修学校若しくは各種学校 の設置を主たる目的とするもの 又は私立学校法第 64 条第 4 項の規定により設立された法人で、専修学

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一 定 の も の 。⑥ 認 定 N P O 法 人 に 対 す る 寄 付 金 で 、特 定 非 営 利 活 動 に 係 る 事 業 に 関 連 す る も の 。(所 得 税 法 第 78 条 、所 得 税 法 施 行 令 第 217 条 、第 217 条 の 2、 租 税 特 別 措 置 法 第 41 条 の 18、 第 41 条 の 19)で あ る 。 た だ し 、 学 校 の 入 学 に 関 し て 支 出 し た 寄 付 金 は 特 定 寄 付 金 に は な ら な い と な っ て い る 。 こ の よ う に 、 寄 付 金 控 除 制 度 は 公 益 の た め の 寄 付 支 出 を 奨 励 す る も の で あ る と い え る 。 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000 昭和45年 昭和50年 昭和55年 昭和60年 平成2年 平成7年 平成12年 寄付金控除適用者(単位:人) 寄付金総額(単位:百万円) (出 所 ) 国 税 庁 企 画 課 「 申 告 所 得 標 本 調 査 結 果 報 告 」 よ り 作 成 図 1-2 寄 付 金 総 額 と 寄 付 金 控 除 適 用 者 数 の 推 移 図 1-2 は 昭 和 45 年 (1970)か ら 昭 和 16 年 (2004)ま で の 寄 付 金 総 額 と 寄 付 金 控 除 適 用 者 の 推 移 で あ る 1 3)。こ の 図 は 国 税 庁『 申 告 所 得 標 本 調 査 結 果 報 告 』 よ り 作 成 し て お り 、寄 付 金 総 額 は 、昭 和 45 年 (1970)か ら 昭 和 48 年 (1973)ま で は 足 き り 額 限 度 額 が 10 万 円 で あ っ た の で 寄 付 金 控 除 適 用 者 数 に 10 万 円 を か け 、 校若しくは各種学校の設置を主たる目的とするもの。 へ 社会福祉法人。 ト 更生保護法人。 13) 寄付金の所得控除方式は昭和 42 年(1967)から導入されたが、総務省統計局消費者物価指数平成 12 年 のデーターは、昭和 45 年(1970)であるので、図 1−2 は昭和 45 年(1970)から平成 16 年(2004)とした。 寄付金控除導入当時の昭和 42 年(1967)、寄付金控除適用者は 1,955 人であった。

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昭 和 49 年 (1971)か ら 平 成 16 年 (2004)ま で は 足 き り 限 度 額 が 1 万 円 で あ る の で 寄 付 金 控 除 適 用 者 に1 万 円 を か け 、そ れ ぞ れ に 寄 付 金 控 除 金 額 を た し た 1 4 ) そ の 後 総 務 省 統 計 局 、 消 費 者 物 価 指 数 平 成 12 年 基 準 に よ り 、 実 質 化 し て い る 1 5) 図 1-2 に よ る と 寄 付 金 総 額 、寄 付 金 控 除 適 用 者 と も 増 加 し て い る 事 が わ か る 。 平 成 7 年 に 急 に 上 昇 し て い る の は 、 平 成 7 年 (1995)1 月 17 日 、 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 が お こ り 寄 付 が 増 加 し た 事 が 原 因 と 考 え ら れ る 。全 体 と し て は 、寄 付 金 総 額 に つ い て は 、 緩 や か に 増 加 し 、 寄 付 金 控 除 適 用 者 に つ い て は 、 昭 和 45 年 で は 寄 付 金 控 除 適 用 者 は 2,366 人 で あ っ た の に 、平 成 16 年 に は 160,785 人 と か な り 増 加 し て い る 事 が 分 か る 。こ れ は 個 人 の 寄 付 へ の 意 識 の 向 上 も あ る で あ ろ う が 、第 2 節 に も ふ れ て い る よ う に 、寄 付 金 が 優 遇 さ れ て い る 方 向 へ 税 制 が 改 正 さ れ て き て い る こ と も そ の 一 因 で あ る の で は な い か と 思 わ れ る 。 表 1-1 寄 付 金 控 除 利 用 状 況 の 推 移

控除適用者数申告納税者総数 利用割合 控除金額 合計所得 控除比率

百万円

百万円

平成 2年(1990)

94,167

8,547,375

1.10

34,214 57,550,049

0.06

平成 3年(1991)

101,073

8,562,552

1.18

36,615 59,114,398

0.06

平成 4年(1992)

105,781

8,577,661

1.23

33,563 47,718,734

0.07

平成 5年(1993)

106,667

8,428,477

1.27

31,509 47,919,293

0.07

平成 6年(1994)

107,298

8,223,171

1.30

32,020 44,849,111

0.07

平成 7年(1995)

122,337

8,020,634

1.53

41,857 45,623,421

0.09

平成 8年(1996)

102,473

8,239,858

1.24

26,909 48,320,563

0.06

平成 9年(1997)

108,919

8,271,709

1.32

36,585 46,991,679

0.08

平成10年(1998)

101,539

6,224,254

1.63

30,978 40,641,094

0.08

平成11年(1999)

109,179

7,400,607

1.48

32,418 41,107,209

0.08

平成12年(2000)

112,261

7,273,506

1.54

30,955 41,218,885

0.08

平成13年(2001)

118,537

7,076,549

1.68

25,179 39,958,384

0.06

平成14年(2002)

125,682

6,868,284

1.83

22,009 38,066,487

0.06

平成15年(2003)

136,738

6,933,359

1.97

25,181 38,322,092

0.07

平成16年(2004)

160,785

7,440,793

2.16

24,478 40,185,535

0.06

(出 所 ) 国 税 庁 企 画 課 「 申 告 所 得 標 本 調 査 結 果 報 告 」 よ り 作 成 14) 昭和 43 年(1968)から昭和 47 年(1972)までは寄付金支出額から 10 万円を超える金額を寄付金控除額とし て認め、昭和 48 年(1973)から平成 17 年(2005) までは寄付金支出額から 1 万円を超える金額を寄付金控除額 として認められた。 15)総務省統計局ホームページ http://www.stat.go.jp/data/cpi/index.htm。

(11)

表 1-1 は 平 成 2 年 (1990)か ら 平 成 16 年 (2004)の 寄 付 金 控 除 利 用 状 況 の 推 移 で あ る 。図 1-2 で 見 て き た よ う に 寄 付 金 控 除 適 用 者 は 導 入 当 時 よ り か な り 増 加 し て い る 。表 1-1 で も 寄 付 金 控 除 制 度 適 用 者 の 申 告 納 税 者 全 体 に 対 す る 割 合 は 、 わ ず か ず つ で あ る が 上 昇 し て い る 。し か し 、寄 付 金 控 除 を 利 用 し て い る 人 は 申 告 納 税 者 総 数 か ら 見 れ ば ま だ 少 な く 、 平 成 16 年 (2004)に お い て も そ の 寄 付 金 控 除 適 用 者 は 、 申 告 納 税 者 全 体 の 2.16% に す ぎ な い 。 図 1-2、 表 1-1 で 使 用 し た 国 税 庁 「 申 告 所 得 標 本 調 査 結 果 報 告 」 は 実 際 に 寄 付 金 控 除 を 申 告 し た 人 の み の デ ー タ ー で あ り 、足 き り 額 以 下 の 寄 付 支 出 を し た 人 や 、確 定 申 告 を し な か っ た 人 の 支 出 額 は 含 ま れ て い な い 。寄 付 金 控 除 を 受 け る た め に は 、寄 付 を 受 け た 団 体 等 か ら 寄 付 金 等 の 受 領 書 の 交 付 を 受 け て 、申 告 書 に 添 付 す る か 、 申 告 書 の 提 出 時 に 提 示 す る 事 が 必 要 で あ る 1 6 )。 よ っ て 、 街 頭 募 金 や 寄 付 金 等 の 受 領 書 を 発 行 し な い よ う な 団 体 へ の 募 金 等 は 含 ま れ て い な い 。 三 和 総 合 研 究 所(2000)は 平 成 11 年 (1999)に 電 話 帳 か ら 無 作 為 抽 出 し た 全 国 の 10,083 世 帯 に 郵 送 に よ り ア ン ケ ー ト 調 査 を お こ な い 、 回 答 率 21.7% 、 有 効 回 答 数 2,190 件 に よ り 分 析 を お こ な っ た 。 そ の 結 果 、 平 成 10 年 (1998)の 1 年 間 に 寄 付 を 実 施 し て い る と 答 え た 世 帯 は 回 答 世 帯 の 84.4% で あ っ た 。寄 付 を お こ な っ た 先 に つ い て は 「 各 種 募 金 」 が 72.2% と か な り 高 い 割 合 を 示 し て い る 。 続 い て 、 「 自 治 会 な ど の 地 域 活 動 」 が 24.2% 、 「 災 害 救 助 を お こ な う 団 体 」 が 17.9% 、「 福 祉 団 体 」 が 17.4% と な っ て い る 1 7 )。 こ の 分 析 結 果 を 見 る 限 り 、寄 付 を お こ な っ て い る 世 帯 は か な り 高 い 割 合 で あ る の に 対 し て 、実 際 の 寄 付 金 控 除 を 申 告 し て い る 世 帯 は 少 な い 。ま た 、寄 付 金 支 出 が 5 千 円 の 足 き り 額 以 下 を お こ な っ て い る か 、証 明 書 が 発 行 さ れ な い 寄 付 金 を お こ な っ て い る 場 合 も 考 え ら れ る 。そ れ 以 外 に 、足 き り 額 以 上 の 寄 付 を し た 人 で も 寄 付 金 控 除 制 度 を 知 ら な い 人 も い る と 思 わ れ る 。お な じ く 三 和 総 合 研 究 所(2000)で 調 査 を し た と こ ろ 、1 万 円 を 超 え る 寄 付 を し た 世 帯 の う ち 、 「 1 万 円 を 超 え る 寄 付 金 に つ い て は 寄 付 金 控 除 の 対 象 と な る こ と 」 を 認 知 し て い る 世 帯 は 39.9% で あ 16) 一定の特定公益増進法人に対する寄付や学校法人、特定公益信託の信託財産とするための支出については、 その法人または信託が適格であることなどの証明書の写しまたは認定書の写しを申告書に添付するか、申告 書の提出時に提示する事が必要である。また、政治活動に関する寄付金に関しては、選挙管理委員会の確認 印のある「寄付金(税額)控除のための書類」を申告書に添付する事が必要である。(所得税法施行令第 262 条 1 項 6 号,所得税法施行規則 47 条の 2)。 17) 三和総合研究所(2000)3、21 頁,図表I−29 参照。

(12)

り 、「1 万 円 を 超 え る 寄 付 金 に つ い て は 寄 付 金 控 除 の 対 象 と な る こ と 」を 認 知 し て い な い 人 が 、6 割 と い う 結 果 が で た 1 8 )。 こ の ア ン ケ ー ト の 回 答 世 帯 の 特 性 が 比 較 的 高 学 歴 、 高 年 齢 で あ る 事 を 考 え て も 1 9 )、 寄 付 金 控 除 制 度 の 認 識 は 高 い と は い え な い と い え な い 結 果 と な っ て い る 。 表 1-2 寄 付 控 除 適 用 者 と 寄 付 金 総 額 の 割 合 (高 額 所 得 者 )

全体

合計所得1千万円超

割合

全体

合計所得1千万円超

割合

百万円

百万円

平成11年

109,179

57,248

52

33,510

27,986

84

平成12年

112,261

57,714

51

32,079

24,889

78

平成13年

118,537

55,955

47

26,362

19,956

76

平成14年

125,682

57,765

46

23,266

18,961

81

平成15年

136,738

57,266

42

26,548

20,280

76

平成16年

160,785

65,025

40

26,087

20,091

77

寄付金控除適用者

寄付金総額

(出 所 ) 国 税 庁 企 画 課 「 申 告 所 得 標 本 調 査 結 果 報 告 」 よ り 作 成 表1-2 は 合 計 所 得 1 千 万 円 超 の 高 額 所 得 者 の 寄 付 金 控 除 適 用 者 数 と 寄 付 金 総 額 の 納 税 者 全 体 に 占 め る 割 合 で あ る 。 平 成 11 年 (1999)か ら 平 成 16 年 (2004) ま で 表 に し た 2 0 )。申 告 所 得 者 の う ち 、寄 付 金 控 除 を 適 用 さ れ た 高 額 所 得 者 は 、 寄 付 金 控 除 適 用 者 全 体 の ほ ぼ 半 数 近 く で あ る 。ま た 、彼 ら の 寄 付 金 支 出 額 は 全 体 の 8 割 ほ ど に な る 。累 進 構 造 を 持 つ わ が 国 の 所 得 税 に お い て 、総 所 得 金 額 か ら 控 除 さ れ る 所 得 控 除 方 式 を 採 用 し て い る 寄 付 金 控 除 制 度 は 、限 界 税 率 の 高 い 人 ほ ど 、寄 付 の 価 格 は 低 く な り 、寄 付 支 出 を 促 進 す る 働 き が あ る 。三 和 総 合 研 究 所(2000)で は 、先 ほ ど の ア ン ケ ー ト 結 果 の 中 で 、「 確 定 申 告 に お け る 寄 付 金 控 除 実 施 額 に つ い て は 、 平 均 値 は 208,504 円 で 、 中 央 値 が 60,000 円 で あ る 。 全 世 帯 の 寄 付 金 額 の 平 均 値(63,334 円 )及 び 中 央 値 (10,000)と 比 較 す る と 、寄 付 実 施 者 の 中 で も 高 額 寄 付 者 が 確 定 申 告 を し て い る 割 合 が 高 い と 考 え ら れ る 」と 18) 三和総合研究所(2000)36 頁,図表I−51 参照。 19) 三和総合研究所(2000)では回答世帯の属性として、世帯主が 50 歳台の世帯が半数近くを占め、大学・大 学院卒が66.5%、会社勤務者が 6 割を超えているといっている。 20) 寄付金控除額が寄付金支出額から 1 万円を超える部分だけ寄付金控除と認められるので、寄付金総額は、 寄付金控除適用者に1 万円をかけたものに寄付金控除総額をたした。

(13)

い っ て い る 2 1 )。 こ れ に つ い て 本 稿 で は 、 第 3 章 で 限 界 税 率 の 高 い 納 税 者 の 寄 付 金 支 出 を し て い る 割 合 が 高 い か 、実 際 の デ ー タ ー 国 税 庁 企 画 課「 申 告 所 得 標 本 調 査 結 果 報 告 」 を 使 用 し て 分 析 し て み た い 。 1 ・ 2 寄 付 税 制 の 推 移 わ が 国 に お い て 、寄 付 金 控 除 制 度 が 導 入 さ れ た の は 昭 和 37 年( 1962)で あ る 。そ れ 以 前 は 、所 得 税 法 に お け る 寄 付 金 は 、業 務 上 明 ら か に 必 要 と さ れ る 寄 付 金 の み が 必 要 経 費 と し て 認 め ら れ て い る だ け で あ っ た 。 こ の 制 度 は 、 林 (1986)に よ る と 、「 当 初 、わ が 国 に お い て は 、社 会 福 祉 や 学 校 教 育 を は じ め と す る 公 益 活 動 に 必 要 な 施 設 を 整 備・充 実 し て い く た め に は 、民 間 か ら の 寄 付 に 頼 ら ざ る を 得 な い 状 況 等 を 考 慮 し て 設 け ら れ た 。 」 と い う 2 2 )、 社 会 状 況 も あ っ た と 思 わ れ る 。 昭 和 37 年 (1962)寄 付 金 控 除 制 度 創 設 当 時 、寄 付 金 控 除 は 控 除 率 20% の 税 額 控 除 方 式 で あ っ た 。寄 付 金 控 除 制 度 は ま ず 、生 命 保 険 料 控 除 等 の 誘 因 的 控 除 と と も に 特 別 支 出 控 除 の よ う な 概 算 控 除 と し て 一 括 す る 事 が 検 討 さ れ た 。 昭 和 41 年 (1966)12 月 税 制 調 査 会 『 長 期 税 制 の あ り 方 に つ い て の 中 間 答 申 』 に よ る と 、 「 生 命 保 険 料 控 除 、 寄 付 金 控 除 の い わ ば 誘 因 的 控 除 ( 中 略 ) に つ い て は 、 現 在 の 仕 組 み が 複 雑 で あ る こ と の ほ か に 、そ れ ぞ れ の 控 除 に つ い て 時 の 経 過 に 応 じ て 個 々 に 再 検 討 し な け れ ば な ら な い 技 術 的 煩 雑 さ が あ り 、そ の 決 定 の た め の 客 観 的 基 準 も 必 ず し も 明 確 で な く 、か つ 貯 蓄 や 寄 付 金 の 支 出 は 人 の 選 択 に よ っ て 各 種 各 様 で あ る か ら 、一 定 の 控 除 限 度 額 の 中 で そ の 人 の 自 由 に 任 せ る ほ う が 所 得 税 と し て は 中 立 的 で あ る こ と 等 か ら 、こ れ ら を 一 括 し て 一 本 の 特 別 支 出 控 除 と し 、そ の 範 囲 内 で こ れ ら 控 除 を 吸 収 す る ほ う が 合 理 的 で あ る と 考 え ら れ る 。 」 と い っ て い る 2 3 )。 こ の こ と に つ い て は 、 昭 和 43 年 (1968)7 月 の 『 長 期 税 制 の あ り 方 に つ い て の 答 申 』に お い て 、「 こ れ ら の 控 除 を 一 括 し た 特 別 支 出 控 除 の 形 に ま と め る の も 一 つ の 方 向 と 考 え ら れ る 。た だ 、特 別 支 出 控 除 に ま と め る に し て も 、 担 税 力 減 殺 要 因 を 斟 酌 す る 控 除 ま で 含 め る か と い う 問 題 や 、 21) 三和総合研究所(2000)37 頁,3 行目∼5 行目引用。 22) 林(1986)78 頁,16∼18 行目引用。 23) 税制調査会編(1966)10 頁,32∼11 頁,7 行目引用。

(14)

表 1-3 寄 付 金 控 除 制 度 の 推 移 対象 最高限度額 足きり限度額 昭和37年(1962)改正 国または地方公共団体への寄付金、 税額控除方式 指定寄付金、試験研究法人等への 20% 寄付金(特定寄付金)の一定額 昭和39年(1964)改正 特定寄付金の範囲に公益法人設立 のための寄付金も含む 昭和40年(1965)改正 国・地方公共団体に対して対象とな る寄付金は「行政目的のために直接 供する施設に充てるもの」に限定 昭和41年(1966)改正 30% 昭和42年(1967)改正 国・地方公共団体に対して対象となる 所得控除方式 合計所得金額の15% 20万円 寄付金が「寄付した者が、その寄付 によって設けられた設備を専従的に 利用すること、その他特別の利益が その他特別の利益がその寄付をした ものに及ぶとみとめられるものを除 く」 昭和43年(1968)改正 10万円 昭和48年(1973)改正 合計所得金額の25% 昭和49年(1974)改正 1万円 昭和62年(1987)改正 政令で定めるものの信託財産とする ために支出した金銭を特定寄付金と して寄付金控除の対象に 平成7年(1995)改正 政治資金団体に対する政治活動に関す税額控除と選 る寄付金 択可 (30%) 平成17年(2005)改正 合計所得金額の30% 平成18年(2006)改正 5千円 限 度 額 を ど う 設 定 す る か と い う 問 題 が あ る の で 、さ ら に 充 分 検 討 を 加 え た 上 で そ の 採 否 を 判 断 す べ き で あ ろ う 。 」 と し て 検 討 課 題 と さ れ 2 4 )、 さ ら に 、 昭 和 46 年 (1971)8 月 の 『 長 期 税 制 の あ り 方 に つ い て の 答 申 』 で 「 控 除 を 一 括 し て 特 別 支 出 控 除 と い っ た 形 に ま と め( 中 略 ) 一 定 額 ま で は そ の 支 出 に つ い て 立 証 を 要 し な い 概 算 控 除 を 認 め る と い う 方 法 を 併 用 す る 事 も 考 え ら れ る 。」と い っ て い る が 2 5 )、 限 度 額 設 定 の 問 題 や 、 課 税 最 低 限 と の 関 係 を ど う 考 え る か と の 問 題 で 、検 討 課 題 と さ れ た 。概 算 控 除 制 度 に つ い て は 、現 在 、ア メ リ カ に お 24) 税制調査会編(1986)982 頁,17∼982 頁,3 行目引用。 25) 税制調査会編(1986)983 頁,11∼16 行目引用。

(15)

い て は 寄 付 金 や 医 療 費 、住 宅 債 務 に 対 す る 利 息 な ど を 項 目 ご と 申 告 し 、控 除 す る 項 目 別 控 除 と 申 告 資 格 に 応 じ て 定 額 を 所 得 控 除 す る 概 算 控 除 を 選 択 す る こ と が で き る 2 6 )。 概 算 控 除 方 式 を 採 用 す る 事 は 、 所 得 控 除 を す る こ と に よ る 寄 付 金 支 出 を 促 進 す る 効 果 は 薄 れ る と 思 わ れ る 。1985 年 と 1986 年 ア メ リ カ に お い て 時 限 立 法 に よ り 、定 額 を 所 得 控 除 す る 概 算 控 除 方 式 を 選 択 し た 人 に も 寄 付 金 の 項 目 別 控 除 を 選 択 す る こ と が 認 め ら れ た 。こ の こ と は 、寄 付 金 控 除 が 項 目 別 控 除 で あ る ほ う が 、寄 付 金 支 出 を 促 進 す る 効 果 が あ る と 考 え ら れ 、採 用 し た と 思 わ れ る 。 寄 付 金 控 除 制 度 が 税 額 控 除 方 式 か ら 所 得 控 除 方 式 に 改 正 さ れ た こ と に つ い て 、 昭 和 41 年 (1966)税 制 調 査 会 の 『 長 期 税 制 の あ り 方 に つ い て の 中 間 答 申 』 に よ る と 、「 税 額 控 除 は 、 本 来 人 的 控 除 を 補 っ て 追 加 的 な 費 用 等 を し ん 酌 す る も の で あ る が 、こ れ が 税 額 控 除 の 形 に な っ て い る こ と は 、し ん 酌 程 度 の 理 解 で き に く い 事 の ほ か 、一 定 限 度 以 上 の 所 得 者 に な る と し ん 酌 の 程 度 が 減 少 し 、折 角 の 追 加 的 費 用 の 意 味 が 薄 れ る と い う 面 も あ る し 、ま た 税 制 の 簡 素 化 の 要 請 に こ た え る 意 味 か ら も 、こ の 際 所 得 控 除 方 式 に 統 一 す る 事 が 望 ま し い 。」と し 2 7 ) 昭 和 42 年 よ り 障 害 者 控 除 や 、 寡 婦 控 除 と と も に 寄 付 金 控 除 も 税 額 控 除 方 式 か ら 足 き り 額 20 万 円 、合 計 所 得 の 15% ま で 控 除 を 認 め る 所 得 控 除 方 式 に 改 正 さ れ て い る 。 そ の 後 、 足 き り 額 は 10 万 、 1 万 と 引 き 下 げ ら れ 、 最 高 額 も 引 き 上 げ ら れ る な ど 、寄 付 金 支 出 を 推 進 す る 方 向 に 改 正 が 行 わ れ て き た 。な お 、平 成 18 年 改 正 に お い て は 、 寄 付 金 控 除 は 足 き り 額 5 千 円 、 最 高 限 度 額 は 合 計 所 得 の 30% ま で と な っ て い る 。 平 成 7 年 改 正 に お い て 、 政 治 資 金 団 体 に 対 す る 政 治 活 動 に 関 す る 寄 付 金 に 対 し て は 税 額 控 除 方 式 も 認 め ら れ て い る 2 8 )。 「 国 民 の 政 治 参 加 に 関 す る 機 会 均 等 を 確 保 し つ つ 、政 党 等 へ の 個 人 献 金 の 慣 行 の 定 着 化 を 促 進 す る と の 観 点 」か ら 、所 得 控 除 制 度 と の 選 択 に よ り 税 額 控 除 方 式 が 適 26) 定額控除は以下のとおりである 単身者 $4,700 特定世帯主 $6,900 夫婦合算申告・適格寡婦(夫) $7,850 夫婦個別申告 $3,925 出所:東京税理士会 http://www.tokyozeirishikai.or.jp/con_nihonsekaizeisei/nihon_kaigai/zeiseigaiyou_ame.html。 27) 税制調査会編(1966)10 頁,24∼29 行目引用。 28) 平成 7 年 1 月 1 日から平成 21 年 12 月 31 日までの間に行った政治活動に対する一定の寄付金のうち、政 党・政党資金団体に対する政治活動に関する寄付金で、政治資金規正法第 12 条または第 17 条による報告が されたもの。(租税特別措置法第 41 条の 18、租税特別措置法施行令第 26 条の 27)。

(16)

用 可 能 と な っ た 2 9 )。 第 2 章 で も 述 べ る よ う に 、 所 得 控 除 方 式 に 比 べ て 、 税 額 控 除 方 式 は 、累 進 構 造 を 持 つ 所 得 税 に お い て 所 得 税 率 に 影 響 を 受 け ず 独 立 的 で あ る 。 寄 付 金 に お け る 税 額 控 除 方 式 の 再 導 入 に つ い て は 、 昭 和 58 年 11 月 の 『 今 後 の 税 制 の あ り 方 に つ い て の 答 申 』に お い て 、障 害 者 控 除 等 の 特 別 な 人 的 控 除 に つ い て 、「 控 除 の 方 式 に つ い て は 、特 別 な 人 的 事 情 に 基 づ く 担 税 力 を 斟 酌 す る 制 度 の 趣 旨 か ら す れ ば 、所 得 控 除 方 式 は 高 額 所 得 者 が よ り 大 き く 受 益 す る た め 、む し ろ 、税 額 控 除 方 式 に 切 り 替 え る こ と も 検 討 し て よ い と の 意 見 も あ る が 、税 額 控 除 方 式 か ら 所 得 控 除 方 式 に 切 り 替 え ら れ て き た 経 緯 も あ り 、税 制 の 簡 素 化 の 観 点 等 か ら も 、 現 状 に お い て あ え て 変 更 す る 必 要 は な い と 考 え る 」 と し て い る 。こ の こ と は 、寄 付 金 の 所 得 控 除 に つ い て は 触 れ ら れ て い な い 。し か し 、税 額 控 除 か ら 改 正 さ れ て き た 経 緯 を 考 え れ ば 、同 じ 考 え 方 で あ ろ う と 思 わ れ る 。 1 ・ 3 寄 付 金 控 除 の 根 拠 寄 付 金 控 除 を お こ な う 根 拠 を 見 て ゆ く に あ っ た っ て ま ず 所 得 と 所 得 控 除 に つ い て 考 え て み た い 。所 得 税 は 個 人 の 所 得 に 対 し て 課 せ ら れ る 税 で あ る 。昭 和 24 年 (1949)の 「 シ ャ ウ プ 勧 告 」 は 長 期 的 ・ 安 定 的 な 税 制 、 公 平 な 税 制 等 を 目 的 と し て 、 所 得 税 中 心 の 租 税 体 系 の た め の 報 告 書 を 発 表 し た 。 こ の 報 告 書 は 、 わ が 国 に お け る 税 制 の 基 礎 と な っ て い る 。金 子(1976)は 、「 所 得 は 、人 の 総 合 的 担 税 力 の 標 識 と し て 最 も す ぐ れ て お り 、所 得 税 は 、基 礎 控 除 等 の 人 的 控 除 お よ び 累 進 税 率 と 結 び つ く こ と に よ っ て 、担 税 力 に 即 し た 公 平 な 税 負 担 の 配 分 を 可 能 に す る の で あ る 。 」 と い っ て い る 3 0 )。 所 得 税 を 課 税 す る 上 で 、 所 得 の 大 き さ を 考 え る 基 本 的 考 え 方 の 一 つ と し て 包 括 所 得 概 念 が あ る 。包 括 所 得 概 念 で は 、 所 得 は 以 下 の 式 で 表 さ れ る 。 所 得 = 消 費 + 純 資 産 増 加 額 29) 田中(2005)23 頁,32∼33 行目引用。 30) 金子(1976)170 頁,14 行目∼171 頁,1行目引用。

(17)

こ れ は 所 得 を 、あ る 期 間 中 の 消 費 に 期 末 に お け る 資 産 を 加 算 し て 、こ こ か ら 期 首 に お け る 資 産 を 控 除 し て 求 め る こ と を あ ら わ す 。藤 田(1992)は 贈 与 を す る 側 に つ い て 、「 こ の 場 合 の 資 産 移 転 は 、明 ら か に 通 常 の 概 念 で の 消 費 で は な い か ら 、当 然 、所 得 計 算 上 控 除 す べ き だ と 考 え る 事 が で き よ う 。」と い っ て い る 3 1 )。所 得 控 除 は 、総 所 得 金 額 か ら 控 除 さ れ る 。中 里(2003)は 、「 費 用 で は な い と こ ろ の 支 出 で 、将 来 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー の 増 加 の 可 能 性 の な い も の が 、移 転 と 消 費 で あ る(中 略 )移 転 は (中 略 )単 に 現 在 の 純 資 産 の 減 少 を も た ら す の み で あ り 、 実 際 の 財・サ ー ビ ス の 破 壊 を 伴 わ な い か ら 、消 費 と 異 な り 控 除 さ れ な け れ ば な ら な い 。 」 と い っ て い る 3 2 )。 そ し て 、 寄 付 支 出 は 典 型 的 な 形 の 移 転 で あ り 、 寄 付 金 控 除 は 認 め ら れ る と い っ て お り 、「 寄 付 を な し た 場 合 、そ の 者 の 純 資 産 は 、(中 略 )寄 付 の 額 だ け 減 少 し 、(中 略 )し か も 寄 付 に よ っ て そ の 者 は 実 物 の 財 ・ サ ー ビ ス の 破 壊(= 消 費 ) を お こ な っ て い な い か ら 、 理 論 的 に 考 え た 場 合 は 、 そ れ に つ い て は 、移 転 を な し た 側 に お い て 控 除 し て 、移 転 を 受 け た 側 に お い て 課 税 す べ き で あ る 」 と い っ て い る 3 3 )。 藤 田(1992)は 、 寄 付 金 控 除 を 「 収 入 獲 得 す る た め の 経 費 で は な く 、個 人 的 な 支 出 に 関 す る(中 略 )個 人 的 支 出 控 除 」と い っ て お り 3 4 )、 寄 付 支 出 は 政 策 的 配 慮 に よ る 特 別 項 目 と し て 控 除 す る と い っ て い る 3 5 )。 寄 付 金 控 除 は 奨 励 補 助 金 的 な 性 格 を 持 つ と も 言 わ れ る 。 こ の よ う に 、寄 付 金 支 出 は 純 資 産 の 減 少 を も た ら す の み で あ り 、所 得 か ら 控 除 さ れ る べ き で あ る と 考 え ら れ る 。 所 得 か ら 控 除 さ れ る 控 除 制 度 に つ い て 藤 田(1992)は 、「 粗 収 入 、税 法 上 の 所 得 あ る い は 算 出 税 額 か ら 、 所 定 の 金 額 を 差 し 引 く 事 を 認 め る 制 度 を 意 味 す る (中 略 )課 税 所 得 の 算 出 の た め の 控 除 (例 : 経 費 控 除 、 給 与 所 得 控 除 ) 、 所 得 控 除 ( 例 : 人 的 控 除 、 寄 付 金 控 除 ) 、 税 額 控 除(例 : 配 当 控 除 )」 が あ る と い っ て い る 3 6 )。 ほ と ん ど の 寄 付 金 支 出 が 現 在 、 所 得 控 除 方 式 を 採 用 し 、 同 じ 控 除 制 度 の 中 で も 税 額 控 除 方 式 を 採 用 し て な い 事 に つ い て の 経 緯 に つ い て 前 章 で ふ 31) 藤田(1992)21 頁 11∼12 行目引用。 32) 中里(2003)101 頁,14∼19 行目引用。 33) 中里(2003)115 頁,9∼14 行目引用。 34) 藤田(1992)93 頁,1∼3 行目引用。 35) 藤田(1992)では Bradford を基礎として、モデル所得税における課税ベースの導入を紹介しており、その 中で寄付金は控除し、また、日本の所得税における取り扱いでも控除されると書いている(藤田(1992)27 頁, 表 2-1 参照)。 36) 藤田(1992)64 頁,3∼13 行目引用。

(18)

れ た が 、 所 得 控 除 方 式 と 税 額 控 除 方 式 の 違 い は 第 2 章 3 節 で 見 て ゆ き た い 。 次 に 、 寄 付 金 に つ い て 控 除 す る べ き か ど う か と い う 議 論 に つ い て 見 て み る 。 寄 付 支 出 を 控 除 す る こ と は 、課 税 ベ ー ス か ら 寄 付 金 の 控 除 対 象 額 分 だ け 税 収 を 減 少 さ せ る こ と と な る 。Musgrave(1983)は 「 こ の よ う な 寄 付 が な け れ ば 、 慈 善 事 業 は 大 き な 損 失 を 蒙 り 、い く つ か は 生 き 残 れ な か っ た の で は な い か と い わ れ て い る 。 」 と い っ て お り 3 7 )。 ま た 、 「 慈 善 的 寄 付 を 全 体 と し て み れ ば 慈 善 事 業 は 国 庫 が 税 収 を 失 う も の を ち ょ う ど 手 に 入 れ る と 評 価 さ れ て き た 。」と い っ て い る 3 8 )。 そ の 一 方 で Good(1966)は 、「 た と え 控 除 に 賛 成 す る 主 張 が 事 柄 自 体 正 当 で あ る と 認 め ら れ た と し て も 、控 除 が あ る た め に 促 進 さ れ る 寄 付 の 金 額 が 失 わ れ る 歳 入 に 比 べ て き わ め て 少 額 に と ど ま る 事 が 明 ら か に な れ ば 、そ れ を 継 続 す べ し と す る 主 張 は で き な い で あ ろ う 」と い っ て い る 3 9 )。こ の よ う に 、 寄 付 金 控 除 制 度 を 導 入 す る こ と に よ る 税 収 減 以 上 に 寄 付 支 出 金 が 増 加 す る か ど う か で 、 寄 付 金 を 控 除 す べ き か ど う か 判 断 す る と い う 意 見 は 多 い 。 木 下 (1991) は 、 「 寄 付 と 税 金 の 関 係 を 考 え る 場 合 重 要 な こ と は 、 寄 付 を す る も の と 寄 付 を 受 け る も の の ほ か に 一 般 国 民 を 考 慮 す る 必 要 が あ る と 言 う 事 で あ る 。税 引 き 後 の 所 得 か ら 寄 付 す る の で あ れ ば 一 般 国 民 は 直 接 関 係 な い が 、寄 付 金 控 除(中 略 )に よ っ て 所 得 税 (中 略 )が 免 税 に な る 場 合 に は そ の 分 だ け 国 民 に 追 加 負 担 が 生 ず る か ら で あ る 。 」 と い っ て い る 4 0 )。 寄 付 金 控 除 が 妥 当 か ど う か を 判 断 す る 方 法 は 、寄 付 税 制 が 効 率 的 で あ る か ど う か と い う こ と で あ る と 考 え ら れ る 。 木 下(1991)で は 、 こ れ を 以 下 の よ う に あ ら わ さ れ る と い っ て い る 。

=「効率」

税収減

個人の寄付の増加額

木 下(1991)は 、「 免 税 に よ っ て 寄 付 が 税 収 減 以 上 に 増 加 す る か ど う か 、そ の 意 味 で 寄 付 免 税 の 拡 大 が 望 ま し い か ど う か は 、経 験 的 に 実 証 す る よ り ほ か な い と い え よ う 。 」 と い っ て い る 4 1 )。 つ ま り 、 こ の 「 効 率 」 が 絶 対 値 で 1 以 上 で 37) 木下和夫監修 Musgrave 著(1983)432 頁,9∼11 行目引用。 38) 木下和夫監修 Musgrave 著(1983)432 頁,7∼8 行目引用。 39) 塩沢潤訳 R・Goode(1966)183 頁,7∼10 行目引用。 40) 木下(1991)140 頁,29∼38 行目引用。 41) 木下和夫(1991)141 頁,20∼26 行目引用。

(19)

あ れ ば 、寄 付 免 税 は 社 会 的 に 意 味 が あ り 、未 満 で あ れ ば 寄 付 免 税 は 無 意 味 で あ る と い う こ と で あ る 。本 稿 で は 、第 3 章 に お い て 国 税 庁 企 画 課「 申 告 所 得 標 本 調 査 結 果 報 告 」 を 使 い 、 実 際 に 寄 付 が 効 率 的 で あ る か ど う か 実 証 を お こ な う 。

(20)

第 2 章 所 得 税 制 が 個 人 寄 付 に 与 え る 影 響 寄 付 に 対 す る 課 税 の 優 遇 は 、個 人 の 寄 付 支 出 を 促 進 す る 働 き が あ る と 考 え ら れ る 。所 得 税 制 が 個 人 寄 付 に 与 え る 影 響 を 考 え る に あ た っ て 、第 1 節 に お い て 寄 付 金 の 税 制 優 遇 が 消 費 者 選 択 に ど の よ う な 影 響 を 与 え る か 一 般 的 な 消 費 者 選 択 を 参 考 に し て み て ゆ き た い 。第 2 節 で は 、実 質 的 な 価 格 で あ る 寄 付 の 租 税 価 格 と は 何 か を み る 。第 3 節 で は 所 得 控 除 方 式 と 税 額 控 除 方 式 の 違 い に つ い て み る 。 現 在 、 個 人 の 寄 付 金 控 除 の ほ と ん ど が 所 得 控 除 方 式 で あ る が 、 昭 和 42 年(1967)改 正 以 前 、寄 付 金 控 除 は 税 額 控 除 方 式 で あ っ た 。ま た 現 在 に お い て も 、 寄 付 の 一 部 が 政 治 活 動 に 関 す る 寄 付 を し た 場 合 の み 認 め ら れ て い る 税 額 控 除 も あ る 。こ れ ら の こ と か ら 、藤 田(1992)が い う「 寄 付 金 控 除 は 奨 励 補 助 金 的 な 特 別 措 置 」 と い う 性 格 も 考 え た 場 合 4 2 )、 寄 付 金 控 除 の 所 得 控 除 と 税 額 控 除 と の 違 い を み る 。第 4 節 で は 、第 2 節 、第 3 節 を ふ ま え た う え で 、具 体 的 な 数 字 を あ て は め て 所 得 控 除 と 税 額 控 除 ど ち ら が 望 ま し い か を 考 え て み た い 2・1 寄 付 金 支 出 と 消 費 支 出 の 選 択 寄 付 に 対 す る 税 制 の 優 遇 措 置 は 個 人 の 寄 付 金 支 出 に ど の よ う な 影 響 を 与 え る の だ ろ う か 。消 費 者 選 択 の 問 題 と 同 様 に 考 え る こ と に す る 。家 計 が 一 定 の 所 得 M を 、寄 付 金 支 出 D と 寄 付 金 以 外 の 消 費 支 出 X に ど の よ う に 配 分 す る か を 考 え て み る 。 価 格 を P 、 所 得 税 T 、 所 得 税 率 t と す る 。 家 計 の 効 用 関 数 は 、

)

,

,

(

X

D

P

U

U

=

(2-1) と す る 。最 初 に 、寄 付 金 支 出 に 所 得 控 除 が 認 め ら れ な い 場 合 を 見 る 。消 費 者 が 支 払 う 所 得 税 額 は 、 租 税 関 数 、

M

t

T

=

(2-2) 42) 藤田(1992)100 頁 5∼6 行目引用。

(21)

と な る 。消 費 者 は 、一 定 の 予 算 制 約 の も と に こ の 効 用 関 数 を 最 大 化 す る よ う に 、 消 費 と 寄 付 の 組 み 合 わ せ を 決 め る 。 予 算 制 約 式 は 、

T

M

D

P

X

P

M

T

D

P

X

P

d x d x

=

+

=

+

+

(2-3) と な る 。(2-2)式 を (2-3)式 を 代 入 す る と 以 下 の よ う に 書 き 換 え ら れ る 。

tM

M

D

P

X

P

x

+

d

=

M

t

D

P

X

P

x

+

d

=

(

1

)

(2-4)

0

1

U

1

O

D

X

A

B

1

X

D

1 図 2-1 寄 付 支 出 と 消 費 支 出 の 選 択 (寄 付 金 控 除 が な い 場 合 ) 図 2-1 は 、効 用 を 最 大 化 す る よ う に 、寄 付 金 支 出 と 寄 付 金 支 出 以 外 の 支 出 を 決 定 す る 消 費 者 選 択 の 問 題 を 図 示 し た も の で あ る 。予 算 制 約 線

A

B

上 の

A

点 は 所 得 を 全 額 寄 付 金 支 出 に 当 て た 場 合 で あ り 、 d

P

M

t)

1

(

と な る 。 予 算 制 約 線

A

B

(22)

上 の

B

点 は 所 得 を 全 額 寄 付 金 以 外 の 消 費 支 出 に 当 て た 場 合 は 、 x

P

M

t)

1

(

と な る 。 曲 線

U

1は 納 税 者 の 寄 付 と 寄 付 以 外 の 消 費 に 対 す る 選 好 を 表 す 無 差 別 曲 線 で あ る 。こ の 曲 線 上 に お い て 消 費 者 は 、寄 付 と 消 費 の い か な る 組 み 合 わ せ で も お な じ 効 用 水 準 に な る 。寄 付 金 控 除 が 認 め ら れ な い 場 合 の 、消 費 者 の 選 択 す る 寄 付 金 支 出 と 寄 付 金 以 外 の 消 費 の 組 み 合 わ せ は 、無 差 別 曲 線

U

1と 予 算 制 約 線

AB

の 接 点

O

1で 効 用 を 最 大 化 さ れ 、 最 適 な 寄 付 金 支 出

D

1と 寄 付 金 支 出 以 外 の 消 費

X

1 を 選 択 す る 。 次 に 、寄 付 金 支 出 に 所 得 控 除 を 認 め た 場 合 を 考 え る 。単 純 化 の た め 、こ の 家 計 の 所 得 控 除 は 寄 付 金 控 除 の み と し 、寄 付 金 支 出 は 全 額 所 得 控 除 で き る も の と 考 え る 4 3 )。 こ の 場 合 、 消 費 者 が 支 払 う 所 得 税 額 は 、 控 除 で き な い 場 合 の 租 税 関 数(2-2)か ら (2-5)式 の よ う に な る 。

)

(

M

P

D

t

T

=

d (2-5) (2-5)式 を (2-3)式 に 代 入 す る と

M

t

D

tP

D

P

X

P

D

tP

M

t

D

tP

tM

M

D

P

M

t

M

D

P

X

P

d d x d d d d x

)

1

(

)

1

(

)

(

=

+

+

=

+

=

=

+

M

t

D

P

t

X

P

x

+

(

1

)

d

=

(

1

)

(2-6) 43) ここでは単純化のため、寄付金控除には上限も下限もなく全額控除できることとしている。なお、平成 18 年においては、寄付金控除は寄付金支出の5千円を超える額から合計所得の 30%までの金額が認められる。

(23)

0

1

U

1

O

2

O

U

2

D

X

A

'

A

B

1

X X

2 2

D

D

1 図 2-2 寄 付 支 出 と 消 費 支 出 の 選 択 (寄 付 金 控 除 が 認 め ら れ る 場 合 ) 図 2-2 は 、寄 付 金 支 出 が 全 額 所 得 控 除 で き る と 仮 定 し た 場 合 の 寄 付 金 支 出 と 寄 付 金 以 外 の 消 費 支 出 の 選 択 の 図 で あ る 。 曲 線

U

2は 納 税 者 の 寄 付 と 寄 付 以 外 の 消 費 に 対 す る 選 好 を 表 す 無 差 別 曲 線 で あ る 。 寄 付 金 控 除 が 認 め ら れ る 場 合 、 消 費 者 に と っ て 寄 付 金 支 出 以 外 の 消 費 に 対 す る 、寄 付 金 支 出 の 相 対 価 格 が 低 下 し 、 予 算 制 制 約 線 は

AB

か ら

A

'

B

に 移 動 す る 。 予 算 制 約 線

A

'

B

上 の '

A

点 は 、 所 得 を 全 額 寄 付 金 支 出 に 当 て た 場 合 で あ り 、 d

P

t

M

t

)

1

(

)

1

(

で あ る 。予 算 制 約 線

A

'

B

上 の

B

点 は 所 得 を 全 額 寄 付 金 以 外 の 消 費 支 出 に 当 て た 場 合 は 、 x

P

M

t)

1

(

と な る 。 寄 付 金 控 除 が 認 め ら れ る 場 合 の 、消 費 者 の 選 択 す る 寄 付 金 支 出 と 寄 付 金 以 外 の 消 費 の 組 み 合 わ せ は 、 無 差 別 曲 線

U

2と 予 算 制 約 線

A

'

B

の 接 点 2

O

で 効 用 を 最 大 さ れ 、最 適 な 寄 付 金 支 出

D

2と 寄 付 金 支 出 以 外 の 消 費

X

2を 選 択 す る 。寄 付 金 控 除 が 認 め ら れ る こ と に よ り 、寄 付 金 支 出 と 寄 付 金 支 出 以 外 の 消 費 支 出 の 組 み 合 わ せ も

D

1

X

1か ら

D

2

X

2に 移 動 す る 。以 上 の よ う に 、寄 付 金 に 所 得 控 除 が 認 め ら

(24)

れ て い る 場 合 に は 、認 め ら れ て い な い 場 合 に 比 べ て 、寄 付 金 支 出 に 促 進 効 果 を 与 え て い る 事 が 分 か る 。た だ し 、現 在 の よ う に 寄 付 金 控 除 に 上 限 と 下 限 が あ る 場 合 、全 額 控 除 で き る 場 合 に 比 べ て 、そ の 促 進 効 果 は 弱 め ら れ る と 考 え ら れ る 。 所 得 税 法 に お い て は 、 平 成 17 年 (2005)所 得 税 改 正 に よ り こ の 上 限 は 合 計 所 得 金 額 の 25% か ら 30% に 引 き 上 げ ら れ 、 下 限 は 平 成 18 年 (2006)改 正 に よ り 1 万 円 か ら 5 千 円 に 引 き 下 げ ら れ た 4 4 )。 こ の こ と は 、 限 度 が あ る こ と に よ り 弱 め ら れ た 促 進 効 果 を 以 前 よ り 強 め る 方 向 に 促 進 す る 働 き を 持 つ と 考 え ら れ る 。 2・ 2 寄 付 の 租 税 価 格 寄 付 の 租 税 価 格(tax price)と は 税 負 担 の 変 化 ま で を 含 め た 実 質 的 な 価 格 を い う 。寄 付 を 行 う こ と に よ り 、寄 付 以 外 の 財 を 購 入 す る 場 合 と 比 較 し て 税 負 担 は 軽 減 さ れ 、 そ の 他 の 消 費 の 価 格 で 評 価 し た 寄 付 の 実 質 価 格 は 低 下 す る 。 図 2-1、 2-2 に お け る 予 算 制 約 線 の 傾 き は 、 寄 付 の 租 税 価 格 を 示 し て い る と 考 え ら れ る 。 表 2-1 寄 付 の 租 税 価 格

合計所得 限界税率 寄付金支出 寄付金以外の財購入 課税所得 税額 寄付の租税価格

A

600万円

0.20

0

10万円 600万円 120万円

600万円

0.20

10万円

0 590万円 118万円

8万円

表 2-1 は 寄 付 の 租 税 価 格 の 具 体 例 で あ る 。単 純 化 の た め 所 得 控 除 は 寄 付 金 控 除 の み と し 、全 額 控 除 で き る と 仮 定 し て い る 。第 2 節 で 述 べ た よ う に 寄 付 金 控 除 が 認 め ら れ る 場 合 、寄 付 金 支 出 以 外 の 消 費 支 出 に 対 す る 相 対 価 格 が 低 下 す る 。 同 じ 合 計 所 得 600 万 円 の A 、B の 2 人 の 納 税 者 が そ れ ぞ れ 10 万 円 を 寄 付 金 と そ の 他 の 財 の 購 入 の た め に 支 出 し た と す る 。2 人 の 限 界 税 率 は 0.2 で あ る 4 5 ) 寄 付 金 以 外 の 財 を 購 入 し た A 氏 は 、所 得 控 除 を 受 け る こ と が で き な い の で 、税 44) 住民税においては下限は 10 万円、上限は合計所得の 25%までとなっている。 45) 第 2 章 4 節、表 2−4 において平成 19 年の 330 万円超 695 万円以下の所得税は 20%である。

(25)

額 は 600 万 円 ×0.2= 120 万 円 と な る 。一 方 、寄 付 金 支 出 を し た B 氏 は 、10 万 円 全 額 所 得 控 除 が 認 め ら れ 、 合 計 所 得 600 万 円 か ら 寄 付 金 支 出 金 額 の 10 万 円 を 控 除 で き る 。 税 額 は (600 万 円 − 10 万 円 )×0.2= 118 万 円 と な る 。 A 氏 と B 氏 の 税 額 の 差 は 、 120 万 円 − 118 万 円 = 2 万 円 と な る 。B 氏 は 寄 付 を し た こ と に よ っ て 、寄 付 を し て い な い と き よ り も 税 金 が 2 万 円 少 な い 。こ の と き 、寄 付 の 実 質 的 な 価 格 (租 税 価 格 )は 、寄 付 金 支 出 額 か ら 少 な く な っ た 税 額 を 差 し 引 い た 、 10 万 円 − 2 万 円 =8 万 円 と な る 。こ の よ う に 寄 付 支 出 に 所 得 控 除 が 認 め ら れ て い る 場 合 、寄 付 の 実 質 的 価 格 は 限 界 税 率 の 影 響 を 受 け る 。限 界 税 率 が 高 い ほ ど 寄 付 の 租 税 価 格 は 低 下 す る 。寄 付 の 租 税 価 格 が 低 下 す れ ば 、他 の 条 件 に 変 化 が な い 限 り 寄 付 支 出 は 増 大 す る と 考 え ら れ る 。 第 1 節 の (2-6)式 を み て み る と 、 寄 付 の 価 格 は

(

1

t)

P

dで あ る 。 税 負 担 の 変 化 ま で を 含 め た 実 質 的 な 価 格 で あ る 寄 付 金 の 租 税 価 格 は (1 マ イ ナ ス 限 界 税 率 )で あ る 。表 2-1 に お い て 、A 氏 の 寄 付 金 以 外 の 消 費 財 の 価 格 は 10 万 円 で あ る の に 対 し 、 B 氏 の 寄 付 の 租 税 価 格 は 10 万 円 ×( 1− 0.2) = 8 万 円 で あ る の で 、 寄 付 の 租 税 価 格 は(1− 0.2)= 0.8 と な る 。

(26)

2・3 所 得 控 除 か 税 額 控 除 か こ の 節 で は 、所 得 控 除 と 税 額 控 除 が ど の よ う に 違 う か を 見 て い き た い 。そ の 違 い に よ り 、累 進 構 造 を 持 つ 所 得 税 の 税 率 や 、税 制 改 正 に お け る 影 響 も ま た 異 な る と 思 わ れ る か ら で あ る 。ま た 、寄 付 金 控 除 は 所 得 控 除 方 式 と 税 額 控 除 方 式 ど ち ら が 望 ま し い か 検 討 し た い 。 所 得 控 除 と 税 額 控 除 と 違 い を 見 る 。以 下 、所 得 M 、所 得 控 除 E 、税 額 控 除 G 、 所 得 税 率 t と す る 。所 得 控 除 制 度 の 下 で の 税 額 を

T

e、税 額 控 除 制 度 の 下 で の 税 額 を

T

gと す る 。 所 得 控 除 の 場 合

{

}

E

t

M

t

E

M

t

M

T

M

E

M

t

T

e e

+

=

=

=

)

1

(

)

(

)

(

(2-7) 税 額 控 除 の 場 合

G

M

t

G

M

t

M

T

M

G

M

t

T

g g

+

=

=

=

)

1

(

)

(

(2-8) 可 処 分 所 得

M

T

を 同 額 に し よ う と す る と

t

E

=

G

と な る 。 所 得 控 除 の 場 合 は 、 税 率 に 影 響 を 受 け 、 税 額 控 除 の 場 合 は 税 率 か ら 独 立 的 と い え る 。 ま た 、累 進 税 率 の も と で 、税 率 が 高 く 設 定 さ れ て い る 所 得 者 層 で は 所 得 が 同 じ 場 合 、可 処 分 所 得 が 増 加 す る と い う こ と に な る 。こ れ に つ い て は 、第 4 節 の 具 体 例 を 参 考 に さ れ た い 。 寄 付 金 控 除 は 、政 治 的 寄 付 以 外 の 寄 付 に つ い て は 所 得 控 除 方 式 を 採 用 し て い

表 1-3 寄 付 金 控 除 制 度 の 推 移 対象 最高限度額 足きり限度額 昭和37年(1962)改正 国または地方公共団体への寄付金、 税額控除方式 指定寄付金、試験研究法人等への 20% 寄付金(特定寄付金)の一定額 昭和39年(1964)改正 特定寄付金の範囲に公益法人設立 のための寄付金も含む 昭和40年(1965)改正 国・地方公共団体に対して対象とな る寄付金は「行政目的のために直接 供する施設に充てるもの」に限定 昭和41年(1966)改正 30% 昭和42年(1967)改正 国・地方
表 2-2 平 成 18 年 所 得 税 ・ 住 民 税 税 率 表 課税所得金額 所得税 住民税 合計 200万円以下 10% 5% 15% 330万円以下 10% 10% 20% 700万円以下 20% 10% 30% 900万円以下 20% 13% 33% 1800万円以下 30% 13% 43% 1800万円超 37% 13% 50% 表 2-3 平 成 18 年 所 得 控 除 と 税 額 控 除 の 比 較 所得税 住民税 計 200万円以下 15% 20万円 1.95万円 0.5万円 2.45
表 2-5 所 得 控 除 と 税 額 控 除 の 比 較 所得税 住民税 計 195万円以下 15% 20万円 0.975万円 1.0万円 1.975万円 18.025万円 5.7万円 14.3万円 330万円以下 20% 20万円 1.95万円 1.0万円 2.950万円 17.050万円 5.7万円 14.3万円 695万円以下 30% 20万円 3.90万円 1.0万円 4.900万円 15.100万円 5.7万円 14.3万円 900万円以下 33% 20万円 4.485万円 1.0万円 5.48

参照

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