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⿪ᮾ᳣ɖʀɐ⿬ ǾǧȐǺ 貿易によって経済発展を促進する戦略は、 途上国にとって関心の強いテーマである。経 済の開発࡮発展および成長にとっての貿易の 役割は論争の多いテーマの 1 つでもある。「自 由貿易」か「保護貿易」か、「輸入代替工業化」 か「輸出促進工業化」か、などである。中国 は 1980 年代以降、「対内改革」すると同時に 「対外開放」を実施してきたのは、貿易の促 進によって国内経済の窮境を打開し、経済発 展を促進する思惑があるからである。その効 果は数多くの研究によって実証されてきた。 しかし、輸出を促進することによって工業 化を目指すにはいくつかの注意点が必要であ る。まず、輸入代替工業化および輸出促進工 業化の過程で、産業の発展が資本財や中間財 の輸入を増大させ、貿易収支の赤字を拡大す る恐れがある。したがって、「輸出促進工業 化」を成功させるには、中間投入財の輸入代 替工業化、つまり「第二次輸入代替」が実現 できるかどうか重要なポイントとなる1)。中 国の貿易主導産業の生産過程における中間財 輸入がどう変化したかを考察し、日本と比較 しながら検討するのは、本稿の第 1 の課題で ある。また、貿易主導産業がリーティング産 業になるには、自ら高い生産性を持ち、生産 性の低い産業と結合して輸出品を生産し、自 らの成長が経済全体の生産性向上に貢献する ことが望ましい。中国の貿易主導産業にはそ のような性質を備えているかを考察するの は、本稿の第 2 の課題である。最後に、輸出 志向工業化と第二次輸入代替との関連の直接 的な考察として、輸出により誘発される中間 投入輸入を計測し、日本と比較しながら検討 することが、本稿の第 3 の課題である。 本論文の枠組みおよび問題意識と近いいく つの先行研究を上げると、まず尾崎࡮相良 (1972)では、1960 年、1965 年の日本産業連 関表を用いて、「成長性産業」と「停滞性産 業」の生産構造における特徴を摘出した。そ の結果、日本の「成長性産業」が自部門の生 産性が高く、その製品を提供する際に自部門 より生産性の低い産業と結合して生産し、自 部門の成長が経済全体の生産性向上に貢献し ていることを確かめた。また、「成長性産業」 が「必要輸入依存度」2)つまり生産過程にお ける中間投入財の輸入量を下げながら輸出を 拡大したことが、日本経済における貿易黒字 累積の構造要因となったことをつきとめた。 また、秋山(1999)ではアジア諸国につい て、「輸出による輸入誘発」つまり 1 単位の 輸出総額が発生するとき必要な中間財輸入を 計測した。その結果、日米では輸出が輸入を 生まない輸出構造になっているのに対して、 アジア中進国では輸出主導による急速な経済 発展が多額の輸入を誘発することを指摘した。 本稿では、まず、分析モデルについて、「ユ ニット࡮ストラクチャー(単位構造系)」(尾

中国の産業構造と貿易構造

日本との比較を中心に

胡 秋陽

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崎、1980)から出発し、それに輸入を考慮す ることによって、「国産品ユニット࡮ストラ クチャー」と「輸入品ユニット࡮ストラク チャー」を定義した。そして、既存研究の「必 要輸入依存度」(尾崎࡮相良、1972: 55)、「付加 価値基準の国産化率」࡮「輸入品比率」(藤川、 1999: 179–204)、「輸入誘発係数」(秋山、1999: 210–211)、「輸出による輸入誘発」(秋山、1999: 211)諸概念について、それらは「ユニット࡮ ストラクチャー(単位構造系)」のどのような 側面を反映し、「輸入品ユニット࡮ストラク チ ャ ー」、「国 産 品 ユ ニ ッ ト࡮ ス ト ラ ク チャー」とどのような関連にあるのかを体系 的に説明する。次にこのように構築した分析 体系を用いて、中国経済および日本経済にお ける輸出主導産業の生産技術面の特徴を分析 し、地域経済全体の生産性向上における役 割、「第二次輸入代替」の進行を明らかにする。 そして、日本の工業化段階とその成熟段階と の比較を通じて、中国の問題点を提示する。 次節では本稿の分析体系を説明する。第Ⅱ 節では分析の結果を示す。3 つの分析を行っ た。すなわち、中国における輸出主導産業の 生産結合構造の分析、輸出主導産業の生産過 程における輸入誘発構造の分析、輸出需要が 生産過程における中間投入を通じて輸入を誘 発する構造の分析である。最後の節では本稿 の主な結論をまとめる。データは日本との比 較可能性を考慮した胡(2003)の中国の 1987 年―92 年―97 年接続産業連関表およびそれに 対応した産業別労働投入データ3)、日本の総 務 庁 が 公 表 し た 日 本 1960 年―1965 年―1970 年接続産業連関表および対応する雇用表、 1985 年―1990 年―1995 年産業連関表および対 応する雇用表を利用する4)。 ΣƷոኝΧṾǽẴ͒ 1. 産業連関モデル dijを産業間中間取引、fiを産業別最終需要、 eiを産業別輸出、xiを産業別総産出、vjを産 業別付加価値、maijを中間取引における輸入、 mf ijを最終需要における輸入とし、産業部門 を n 部門に分類すれば、諸産業の国内生産需 給バランス式は次のように示される。 xi = n ∑dij + fi + ei – (m1a + m1f) (1) j=1 (i, j = 1, 2, , n) ここで、産業に対する中間投入がその生産 額と線形(固定)の関係にあると仮定すると、 次のように中間投入係数の定義式が得られる。 aij = dij (2) xj 輸入も国内需要に比例するよう内生化す る。つまり中間投入輸入係数 m'aiと最終需要 輸入係数 m'fiを以下のように定義する。 m'ia = mia/ ∑dij j=1 (3) m'if = mif/fi (3)式の輸入係数と(2)式の投入係数を (1)式に代入すると、国内需給バランス式は 次のようになる。 xi = ∑dij + fi + ei – mi j=1 = ∑aij · xj + fi + ei – (mia + mif) (4) j=1 = ∑aij · xj + fi + ei – (m'ia · ∑aijxj + m'if · fi) j=1 j=1 (i, j = 1 n) (4)式を行列表示すると、 X = AX + F + E – M = AX + F + E – (MA + MF) (5) = AX + F + E – (MAAX + MFF) ただし

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X ⿉産業別総産出列ベクトル。 A ⿉中間投入係数行列。 F ⿉産業別最終需要列ベクトル。 E ⿉産業別輸出需要列ベクトル。 MA ⿉産業別中間投入輸入列ベクトル。 MF ⿉産業別最終需要輸入列ベクトル。 MA ⿉産業別中間投入輸入係数が対角要素 とする対角行列。 MF ⿉産業別最終需要輸入係数が対角要素 とする対角行列。 この(5)式を、産業の国内生産額について 解くと産業連関モデルによる均衡生産決定式 が得られる。 X = [I – (I – MA)A]–1[(I – MF)F + E] = B[(I – MF)F + E] (6) B⿉逆行列、[I – (I – MA)A]–1、中の要素 を bijとする。 2. ユニット࡮ストラクチャー(単位構造系) (6)式の逆行列 B の要素 bijは、第 j 産業で 1 単位の最終需要が発生すると第 i 産業の生 産が何単位発生するかを表している。たとえ ば第 1 産業の最終生産物を 1 単位だけ最終需 要に提供すると、その際に必要な各産業の総 産出ベクトルは以下のように求められる。 もちろんその際に産業間で中間取引が発 生し、付加価値も発生する。この中間取引マ トリックスを U とし、その要素を uijとしよ う。図 1 では、このときの経済取引を図示し ている。 uijから構成する行列 U は、第 1 産業の最終 製品を 1 単位だけ最終需要に提供する場合、 その生産における産業間の中間取引構造を示 しており、尾崎(1980)の「ユニット࡮スト ラクチャー(単位構造系)」である。第 1 産業 の「ユニット࡮ストラクチャー」は以下のよ うに求められる。 明らかに(8)式で求められる「ユニット࡮ ストラクチャー」は部門の数だけ存在する。 3. 「国産品ユニット࡮ストラクチャー」 と「輸入品ユニット࡮ストラクチャー」 の定義と分業構造 しかし、尾崎は「ユニット࡮ストラクチャー (単位構造系)」概念を導入する際に、国産品 と輸入品の区別をしていない。本稿ではまさ にこの技術体系における国産品による中間投 入と輸入品による中間投入を対象にするた め、U に関して国産品と輸入品を区別し、修 正を行う必要がある。ここで、「ユニット࡮ ストラクチャー」における国産財の取引マト リックスを UD、その要素を udijとし、「国産 品ユニット࡮ストラクチャー」と呼ぶことに する。また、輸入財の取引マトリックスを UM 、その要素を umijとし、「輸入品ユニット࡮ ストラクチャー」と呼ぶことにする。すると、 図 1 を図 2 のように修正できる。 そして、第 1 産業の「輸入品ユニット࡮ス トラクチャー」は以下のように求められる。 u11 … … u1n U = ⋮ 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 ⋮ un1 … … unn a11 … … a1n b11 0 … 0 = ⋮ 㩫 ⋮ 0 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 0 an1 … … ann 0 … 0 bn1 (8) b11 … … b1n 1 b11 ⋮ 㩫 ⋮ 0 = ⋮ (7) ⋮ 㩫 ⋮ ⋮ ⋮ bn1 … … bnn 0 bn1

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「ユニット࡮ストラクチャー」U の要素か ら「輸入品ユニット࡮ストラクチャー」UM の要素を引くと「国産品ユニット࡮ストラク チャー」UDが得られる。 「国産品ユニット࡮ストラクチャー」と「輸 入品ユニット࡮ストラクチャー」は、尾崎 (1980)の「ユニット࡮ストラクチャー」を国 産品と輸入品を分割し、ある産業の 1 単位だ けの最終生産物を提供する場合、それを生産 する産業間分業システムにおいて、国産品中 間取引システムと輸入品中間取引システムを それぞれ表している。 藤川(1999)の「輸入品比率」と秋山(1999) の「輸入誘発係数」は本稿の式を利用すると 以下のようになる。 u11m … …u1nm UM = ⋮ 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 ⋮ u1nm … …unnm m'ia 0 … 0 a11 … … a1n b11 0 … 0 = 0 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 ⋮ 0 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 0 ⋮ 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 0 0 … 0 m'na an1 … … ann 0 … 0 bn1 (9) 図 1 (出所) 横倉(1999: 159)の 2 部門の図示を参考に筆者作成。 図 2 (出所) 筆者作成。

(5)

第一産業の輸入品比率(輸入誘発係数)ˆm1 各産業の輸入品比率(輸入誘発係数)M 式から明らかなように藤川(1999)の「輸 入品比率」と秋山(1999)の「輸入誘発係数」 は、「輸入品ユニット࡮ストラクチャー」UM の要素 umijに関する集計である。そして詳細 は省略するが、藤川(1999)で定義した「付 加価値基準の国産化率」は、図 2 で示したユ ニット࡮ストラクチャー体系における付加価 値ベクトルの要素集計である。修正したユ ニット࡮ストラクチャー体系は付加価値ベー スの国内および国外との分業構造を示してい る。このことは図からも理解できる。輸入を 考慮することによって図 2 と図 1 の違いに注 目すると、図 1 では、第 1 産業の最終生産物 を 1 単位提供しているときの経済取引を示し ているので、付加価値ベクトルの要素の集計 もちょうど最終需要の 1 単位に対応して 1 に なる。しかし、この取引について輸入品を考 慮すると、図 2 のように、付加価値ベクトル の要素集計は 1 にはならない。ちょうど「輸 入品ユニット࡮ストラクチャー」の要素集計 分だけ海外に流出する。図 2 の付加価値ベク トルは、最終生産物の価額のうちどの程度が 付加価値として国内に残留したかを示す係数 であり、その集計は、藤川(1999)の「付加 価値基準の国産化率」であり、秋山(1999) の「誘発輸入係数」である。また、尾崎࡮相 良(1972)の「必要誘発輸入量」は、ある産 業の「付加価値額 100 万相当を生む生産活動 を行ったとき、経済全体としてどれだけの必 要誘発輸入量」(尾崎࡮相良、1972: 55)である. 明らかにある産業の 1 単位の最終生産物を提 供する際の「輸入品比率」と「誘発輸入係数」 は「必要誘発輸入量」を係数化したものであ り、同じ対象を反映している。しかし、「輸 入品比率」と「誘発輸入係数」と「必要誘発 輸入量」はいずれも「輸入品ユニット࡮スト ラクチャー」の要素集計であるため、「輸入 品ユニット࡮ストラクチャー」のように輸入 に関する構造的な情報がなにも得られない。 4. 産業生産の結合構造と結合労働生産性 比率の定義 図 2 は、ある産業の最終生産物を提供する ために当該産業と他の産業と結合して生産を 行うことから「結合構造」ともいえる。ここ で、v'jを付加価値係数とすると、図 2 で示す ユニット࡮ストラクチャー体系における付加 価値ベクトルは以下のように求められる。 第 1 産業のユニット࡮ストラクチャーにお ける付加価値ベクトル= 各産業のユニット࡮ストラクチャーにおけ る付加価値ベクトル= 次にユニット࡮ストラクチャーにおける誘 発労働投入を示そう。l'iを労働投入係数とす m'ia 0 … 0 a11 … … a1n b11 = 1 …… 1 0 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 ⋮ ⋮ ⋮ 㩫 0 ⋮ 㩫 ⋮ ⋮ 0 … 0 m'ia an1 … … ann bn1 (10-1) m'ia 0 … 0 a11 … … a1n b11 … … b1n = 1 …… 1 0 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 0 ⋮ 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 ⋮ 0 … 0 m'na an1 … … ann bn1 … … bnn (10-2) v'1 0 … 0 b11 v11 … … vn1 '= 0 㩫 ⋮ ⋮ (11-1) ⋮ 㩫 0 ⋮ 0 … 0 v'n bn1 v11 … … vn1 ' v'1 0 … 0 b11 … … b1n ⋮ 㩫 ⋮ = 0 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 0 ⋮ 㩫 ⋮ v1n … … vnn 0 … 0 v'n bn1 … … bnn (11-2)

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ると、労働投入ベクトルは以下のように求め られる。 第 1 産業のユニット࡮ストラクチャーにお ける労働投入ベクトル= 各産業のユニット࡮ストラクチャーにおけ る労働投入ベクトル= ここで、(11)式と(12)式を利用して、各 産業のユニット࡮ストラクチャー体系におけ る自部門の付加価値労働生産性と他部門の総 合付加価値労働生産性をそれぞれ計算でき る。たとえば第 1 産業に関しては以下で計算 する。 第 1 産業ユニット࡮ストラクチャーにおけ る第 1 産業の労働生産性= v1/l1 (13-1) 第 1 産業ユニット࡮ストラクチャーにおけ る他の産業の総合労働生産性= ∑ vj/ ∑ lj (13-2) j=2Λ n j=2Λ n そして、(13-1)式と(13-2)式の両者の比 率をとると、その比率が 1 より高(低)けれ ば、第 1 産業の最終生産物を提供する際に、 第 1 産業が自部門より生産性の低(高)い産 業と結合して生産を行っていることがわか る。ここでそれを「結合労働生産性比率」と 呼ぶことにしよう。明らかにこの結合関係は 産業の部門数だけ存在する。 5. 輸出による輸入誘発 すでに藤川(1999)の「輸入品比率」およ び秋山(1999)の「輸入誘発係数」と「輸入 品ユニット࡮ストラクチャー」との関連に関 する説明で明らかのように、それらは産業の 最終産出物を 1 単位だけ最終需要に提供する 際に産業間の中間取引を通じて誘発する輸入 の比率を意味する。そうすると、それらと各 産業に対する最終需要量に乗ずると、各産業 に対して発生する最終需要が間接的に各産業 の輸入をどれだけ誘発するかを算出できる。 今輸出を例に産業別の「輸出による輸入誘 発」を以下の式で示す。 各産業の輸出によって誘発した輸入の産業 別ベクトル M = 秋山(1999)で計測した「輸出による輸入 誘発」は(14)式の各産業の輸出が誘発した 輸入の産業別ベクトルおよびその集計値であ る。定義式で示されたように、これは、生産 過程における輸入中間財の使用構造と輸出の 産業構造による総合効果を示している。(14) 式は消費需要、投資需要に関しても計算でき るが、需要側の輸入誘発に対する影響の全般 の考察を別稿にゆずることにして、本稿では 輸出志向工業化政策の評価に関連して輸出需 要による輸入誘発を問題にする。 ΤƷոኝệእ 本節では第Ⅰ節で示した分析体系を利用し l11 … … ln1 ' l'l 0 … 0 b11 … … b1n ⋮ 㩫 ⋮ = 0 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 ⋮ ⋮ 㩫 0 ⋮ 㩫 ⋮ l1n … … lnn 0 … 0 l'n bn1 … … bnn (12-2) l'i 0 … 0 b11 l11 … … ln1 ' = 0 㩫 ⋮ ⋮ (12-1) ⋮ 㩫 0 ⋮ 0 … 0 l'n bn1 m1 m'1 0 … 0 a11 … …a1n b11… …b1n e1 ⋮ = 0 㩫 ⋮ ⋮㩫 ⋮ ⋮㩫 ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ 㩫 0 ⋮ 㩫 ⋮ ⋮ 㩫⋮ ⋮ mn 0 … 0 m'n an1 … …ann bn1… …bnn en (14)

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て、工業化段階の 1987 年∼ 1997 年の中国に おける貿易主導産業の特性と輸出促進の効果 について検討する。その際、中国の特徴を日 本と比較して把握するために、日本の工業化 段階である 1960 年∼ 1970 年と工業化の成熟 段階である 1985 年∼ 1995 年の状況をも取り 扱うことにする。 1. 結合労働生産性比率 表1 から表 3 では、輸出シェアの高い順か ら産業別の結合労働生産性比率と輸入品比率 を示している。まず、中国について、輸出 シェア上位の産業の変動が大きいことがわか る。上位 5 部門の中、伝統的輸出産業の繊維 製品以外に全部入れ替わった。具体的には、 農業及び鉱業の一次産業、機械工業のシェア が急速に低下し、パルプ࡮製紙࡮木製品、化 学工業のシェアが急速に上昇している。 このような構造変化のなか、輸出主導産業 群を構成する産業はどのような生産構造的特 徴をもつのか。まず各産業のユニット࡮スト ラクチャーにおける結合労働生産性比率から 産業生産の結合状況を見よう。表では結合労 働生産性比率が 1 以上、つまり、自部門の最 終産出物を産出する際に、自部門より生産性 の低い産業と結合して生産を行う産業が太字 で区別されている。それを見ると、1987 年 の輸出シェア上位 5 部門では、自部門より生 産性の高い産業と結合して生産を行い、他部 門の生産効率を享受するような産業は農業と 機械工業の 2 部門である。しかも、自部門生 産性と他部門総合生産性の比率がそれぞれ 0.22 と 0.23 で、1 からの乖離がかなり大きい。 全体的に、このような産業が輸出産業の主流 であったと言える。1992 年になると、輸出 主導産業の入れ替わりにより、輸出シェア上 位 5 部門中、自部門より生産性の高い産業と 結合して生産を行う産業は、その他の機械産 業およびパルプ࡮製紙࡮木製品の 2 部門であ るが、その比率は 0.70 と 0.55 であり、1987 年の両部門より明らかに乖離度の小さい産業 が輸出上位に進出したことがわかる。さら に、1997 年では、唯一その比率が 1 を下回っ た商業࡮飲食業でも 0.99 とそれほど乖離して いない。全体的に、自部門より生産性の低い 産業と結合生産する産業が輸出シェアの上位 を占めるようになったことが明確である。 このような傾向が同じ工業化段階にあった 1960 年代の日本においても観察できる。1960 年の日本では、輸出シェア上位 5 部門の中、 その他の機械産業およびパルプ࡮製紙࡮木製 品の 2 部門が、自部門より生産性の高い産業 と結合生産を行う産業であるが、1965 年に なると、パルプ࡮製紙࡮木製品の順位が上位 5 部門から脱落し、比率が 1.29 の化学工業が 入った。また、比率の高い金属精錬࡮圧延加 工業は順位をさらに上げ、逆に比率が 1 より 下回った繊維製品業の順位は下げた。そし て、1970 年では、上位部門が比率の高い産 業に占められ、伝統的輸出産業の「その他の 機械産業と製造業」も時系列で見れば、かな り比率が上昇している。さらに 1985 からの 日本経済では、60 年代では結合労働生産性 比率が高いが、輸出シェアがまだ下位だった 石油加工࡮石炭加工業は上位 5 位にはい上が り、反対に化学工業は結合労働生産性比率の 低下につれ、60 年代の輸出上位から下位産 業へ転落したことなどからも、この傾向が明 確に確かめられる。 2. 輸入品比率 産業生産における「輸入品比率」を見てみ ると、中国の輸出主導産業の問題点が露呈し てしまう。表 1 から表 3 の「輸入品比率」の

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表 1 中国産業の結合労働生産性比率と輸入品比率 (a)1987 年 付加価値労働生産性 輸入品比率 輸出シェア 自部門 他部門 自/他 繊維製品業 1.16 0.53 2.20 0.106 29.4 農業 0.30 1.37 0.22 0.030 13.4 鉱業 3.49 0.96 3.64 0.038 9.4 食品加工業 1.28 0.41 3.13 0.057 9.3 機械工業 0.30 1.27 0.23 0.200 7.8 その他の機械産業と製造業 0.48 1.12 0.43 0.211 7.3 運送・郵政業 0.69 1.72 0.40 0.069 6.1 パルプ࡮製紙࡮木製品 0.31 0.77 0.40 0.134 5.5 化学工業 0.73 0.85 0.86 0.117 5.5 石油加工࡮石炭加工業 12.17 2.00 6.07 0.041 4.1 金属精錬・圧延加工業 1.79 1.66 1.07 0.118 3.9 金属製品 2.10 1.28 1.65 0.125 2.5 その他社会サービス業 1.02 0.91 1.13 0.075 1.6 建築材料・その他非金属製品 1.07 1.29 0.83 0.094 1.0 金融保険業 8.90 0.92 9.67 0.004 0.4 電力、ガス、水道 5.69 1.93 2.95 0.045 0.0 建築業 1.10 1.24 0.88 0.109 0.0 その他 0.25 1.01 0.25 0.051 0.0 商業飲食業 0.87 0.90 0.97 0.041 −7.2 (出所) 筆者により算出。 (b)1992 年 付加価値労働生産性 輸入品比率 輸出シェア 自部門 他部門 自/他 繊維製品業 1.28 0.70 1.82 0.157 35.3 その他の機械産業と製造業 0.92 1.30 0.70 0.201 11.4 化学工業 2.00 1.09 1.83 0.160 9.5 パルプ࡮製紙࡮木製品 0.51 0.93 0.55 0.157 7.3 食品加工業 1.97 0.48 4.08 0.074 7.3 農業 0.35 1.84 0.19 0.044 6.2 機械工業 0.55 1.53 0.36 0.202 5.8 鉱業 4.06 1.34 3.02 0.067 5.1 金属製品 1.72 1.55 1.11 0.163 3.5 建築材料・その他非金属製品 1.64 1.52 1.08 0.125 3.3 運送・郵政業 0.66 1.93 0.34 0.134 3.2 石油加工࡮石炭加工業 9.93 2.18 4.56 0.084 2.4 金属精錬・圧延加工業 1.52 1.92 0.79 0.147 2.3 その他社会サービス業 1.21 1.25 0.97 0.092 1.7 金融保険業 5.98 1.19 5.01 0.074 0.2 電力、ガス、水道 9.24 1.83 5.05 0.069 0.0 建築業 1.62 1.44 1.12 0.110 0.0 その他 0.39 1.28 0.31 0.093 0.0 商業飲食業 1.43 0.92 1.55 0.082 −4.6 (出所) 筆者により算出。 (c)1997 年 付加価値労働生産性 輸入品比率 輸出シェア 自部門 他部門 自/他 繊維製品業 3.72 1.00 3.73 0.132 23.4 その他の機械産業と製造業 2.66 1.98 1.34 0.189 21.3 化学工業 5.12 1.41 3.62 0.153 9.2 商業飲食業 1.35 1.36 0.99 0.080 7.8 パルプ࡮製紙࡮木製品 1.97 1.43 1.38 0.135 7.5 その他社会サービス業 2.19 1.77 1.23 0.098 4.8 食品加工業 4.09 0.65 6.32 0.071 4.4 金属製品 3.28 2.18 1.51 0.161 3.9 運送・郵政業 1.89 2.19 0.86 0.090 3.5 金属精錬・圧延加工業 1.86 2.44 0.76 0.172 2.9 機械工業 2.01 2.15 0.93 0.167 2.9 農業 0.45 2.77 0.16 0.054 2.5 鉱業 4.11 1.92 2.14 0.094 2.4 建築材料・その他非金属製品 3.53 2.12 1.67 0.122 1.8 石油加工࡮石炭加工業 3.81 2.60 1.46 0.146 1.1 電力、ガス、水道 6.64 2.26 2.94 0.108 0.2 建築業 1.45 2.19 0.66 0.128 0.1 金融保険業 7.13 1.89 3.78 0.055 0.1 その他 0.34 1.97 0.17 0.086 0.0 (出所) 筆者により算出。

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表 2 日本産業の結合労働生産性比率と輸入品比率 (a)1960 年 付加価値労働生産性 輸入品比率 輸出シェア 自部門 他部門 自/他 その他の機械産業と製造業 0.46 0.73 0.64 0.098 21.0 繊維製品業 0.48 0.45 1.05 0.063 19.6 運送・郵政業 3.96 0.80 4.97 0.039 11.3 パルプ࡮製紙࡮木製品 0.35 0.45 0.79 0.067 7.8 金属精錬・圧延加工業 1.02 0.82 1.24 0.197 6.4 機械工業 0.57 0.79 0.71 0.106 4.6 食品加工業 1.12 0.36 3.14 0.082 4.4 農業 0.29 0.79 0.37 0.030 4.3 その他 1.16 0.66 1.76 0.035 4.2 化学工業 0.33 0.64 0.52 0.115 4.2 建築材料・その他非金属製品 0.56 0.79 0.72 0.106 3.3 金属製品 0.44 0.84 0.52 0.106 3.3 商業飲食業 0.37 1.09 0.34 0.014 3.3 その他社会サービス業 1.07 0.51 2.09 0.018 0.7 石油加工࡮石炭加工業 7.14 0.67 10.66 0.174 0.5 建築業 0.63 0.58 1.07 0.069 0.4 電力、ガス、水道 2.63 0.75 3.51 0.056 0.3 金融保険業 2.02 0.85 2.37 0.005 0.3 鉱業 0.50 0.71 0.70 0.039 0.0 (出所) 筆者により算出。 (b)1965 年 付加価値労働生産性 輸入品比率 輸出シェア 自部門 他部門 自/他 その他の機械産業と製造業 0.88 1.06 0.84 0.091 27.7 金属精錬・圧延加工業 1.76 1.21 1.45 0.216 13.9 繊維製品業 0.64 0.70 0.92 0.073 10.5 運送・郵政業 5.49 1.12 4.89 0.049 10.1 化学工業 1.16 0.90 1.29 0.106 6.8 機械工業 0.90 1.13 0.79 0.094 6.1 パルプ࡮製紙࡮木製品 0.60 0.65 0.93 0.073 5.4 商業飲食業 0.59 1.39 0.42 0.021 5.2 金属製品 0.86 1.22 0.71 0.088 3.2 食品加工業 1.54 0.49 3.11 0.107 2.9 建築材料・その他非金属製品 1.05 1.15 0.92 0.103 2.4 農業 0.37 1.16 0.32 0.045 2.3 その他 0.77 0.86 0.90 0.041 1.2 石油加工࡮石炭加工業 12.80 1.05 12.22 0.262 1.0 その他社会サービス業 1.27 0.77 1.64 0.026 0.8 金融保険業 2.30 1.07 2.14 0.007 0.2 電力、ガス、水道 3.25 1.14 2.86 0.072 0.1 鉱業 1.00 1.14 0.87 0.047 0.1 建築業 0.87 0.92 0.94 0.074 0.0 (出所) 筆者により算出。 (c)1970 年 付加価値労働生産性 輸入品比率 輸出シェア 自部門 他部門 自/他 その他の機械産業と製造業 1.69 1.74 0.97 0.089 31.8 運送・郵政業 9.08 1.81 5.02 0.047 13.8 金属精錬・圧延加工業 3.74 1.96 1.91 0.215 12.6 機械工業 2.18 1.85 1.18 0.095 8.2 化学工業 3.05 1.37 2.22 0.102 7.5 繊維製品業 0.73 1.15 0.63 0.106 6.2 商業飲食業 1.13 1.77 0.64 0.023 5.3 パルプ࡮製紙࡮木製品 0.96 0.97 0.99 0.091 3.2 金属製品 1.36 2.09 0.65 0.105 2.9 その他 1.37 1.39 0.99 0.037 2.5 食品加工業 2.05 0.67 3.07 0.141 1.8 建築材料・その他非金属製品 1.64 1.82 0.90 0.164 1.5 農業 0.42 1.89 0.22 0.067 1.1 その他社会サービス業 1.48 1.22 1.21 0.040 0.7 石油加工࡮石炭加工業 22.19 1.77 12.55 0.317 0.6 金融保険業 2.73 1.40 1.94 0.012 0.2 鉱業 2.07 1.99 1.04 0.066 0.1 電力、ガス、水道 5.01 1.96 2.56 0.095 0.0 建築業 1.35 1.52 0.89 0.093 0.0 (出所) 筆者により算出。

(10)

表 3 日本産業の結合労働生産性比率と輸入品比率 (a)1985 年 付加価値労働生産性 輸入品比率 輸出シェア 自部門 他部門 自/他 その他の機械産業と製造業 8.06 5.73 1.41 0.059 47.5 機械工業 8.78 5.76 1.52 0.050 12.6 その他社会サービス業 10.03 3.84 2.61 0.023 11.8 運送・郵政業 14.21 4.80 2.96 0.017 7.1 金属精錬・圧延加工業 12.43 5.72 2.18 0.126 6.8 石油加工࡮石炭加工業 100.88 5.18 19.49 0.090 4.1 繊維製品業 8.00 5.33 1.50 0.062 2.4 金属製品 5.45 6.38 0.86 0.055 2.1 その他 1.03 5.43 0.19 0.060 1.5 建築材料・その他非金属製品 7.14 5.60 1.28 0.110 1.2 食品加工業 8.17 2.89 2.83 0.082 0.8 パルプ࡮製紙࡮木製品 2.14 4.58 0.47 0.061 0.7 金融保険業 6.14 4.83 1.27 0.017 0.7 化学工業 2.97 6.82 0.44 0.229 0.3 農業 1.58 6.10 0.26 0.050 0.2 鉱業 8.81 5.73 1.54 0.039 0.0 電力、ガス、水道 113.45 5.22 21.74 0.056 0.0 商業飲食業 3.09 7.80 0.40 0.005 0.0 建築業 0.87 7.30 0.12 0.016 0.0 (出所) 筆者により算出。 (b)1990 年 付加価値労働生産性 輸入品比率 輸出シェア 自部門 他部門 自/他 その他の機械産業と製造業 10.67 7.25 1.47 0.077 53.7 機械工業 10.31 7.74 1.33 0.063 13.1 その他社会サービス業 10.19 4.83 2.11 0.032 10.9 石油加工࡮石炭加工業 149.03 6.24 23.88 0.090 5.1 運送・郵政業 19.10 5.44 3.51 0.020 4.4 金属精錬・圧延加工業 17.08 7.35 2.32 0.139 4.3 繊維製品業 12.94 7.06 1.83 0.081 1.7 その他 0.82 6.53 0.13 0.081 1.5 金属製品 5.85 8.44 0.69 0.070 1.3 建築材料・その他非金属製品 8.23 6.66 1.24 0.115 1.1 金融保険業 9.56 5.75 1.66 0.022 1.0 パルプ࡮製紙࡮木製品 2.46 5.57 0.44 0.073 0.8 食品加工業 8.14 3.47 2.34 0.085 0.5 化学工業 3.82 8.82 0.43 0.252 0.4 農業 1.70 7.95 0.21 0.057 0.1 電力、ガス、水道 171.34 6.22 27.57 0.064 0.0 鉱業 13.43 6.87 1.95 0.045 0.0 商業飲食業 2.75 8.03 0.34 0.009 0.0 建築業 0.83 9.13 0.09 0.022 0.0 (出所) 筆者により算出。 (c)1995 年 付加価値労働生産性 輸入品比率 輸出シェア 自部門 他部門 自/他 その他の機械産業と製造業 10.76 8.09 1.33 0.093 52.1 機械工業 9.58 8.35 1.15 0.076 13.2 その他社会サービス業 10.06 5.39 1.87 0.037 10.9 運送・郵政業 21.83 6.05 3.61 0.021 6.6 石油加工࡮石炭加工業 203.95 6.71 30.38 0.089 6.1 金属精錬・圧延加工業 17.67 7.85 2.25 0.144 4.5 金融保険業 11.89 6.47 1.84 0.022 1.2 繊維製品業 11.33 7.75 1.46 0.117 1.2 建築材料・その他非金属製品 9.05 7.63 1.19 0.113 1.1 金属製品 6.10 9.18 0.66 0.081 1.1 化学工業 4.34 9.27 0.47 0.290 0.6 パルプ࡮製紙࡮木製品 2.59 6.53 0.40 0.089 0.6 食品加工業 8.29 4.11 2.02 0.089 0.4 その他 1.34 6.50 0.21 0.065 0.1 農業 1.91 8.27 0.23 0.063 0.1 電力、ガス、水道 146.71 7.14 20.56 0.070 0.1 鉱業 13.95 7.29 1.91 0.053 0.0 商業飲食業 3.17 8.83 0.36 0.008 0.0 建築業 0.73 9.39 0.08 0.029 0.0 (出所) 筆者により算出。

(11)

欄では、19 部門中「輸入品比率」の上位 9 部 門が太字で区別されている。今度はまず日本 を見てみよう。日本では 1960 年代から 90 年 代をトータルとして、輸出シェア上位 5 部門 の中、その構成メンバーが入れ替わっても、 やはり「輸入品比率」の低い産業が多い。し かし、中国では、逆に輸出主導産業の交替が、 輸出シェア上位部門の「輸入品比率」の高い 部門を増やしている。しかも輸出主導産業に おける「輸入品比率」の水準が日本の輸出主 導産業より断然高い。つまり、日本では、輸 入品による中間投入をあまり誘発しない産業 が輸出主導産業となるのに対して、中国では 高水準の輸入品中間投入を誘発するような産 業が輸出主導産業となっている。 3. 輸入品ユニット࡮ストラクチャー 輸出主導産業の「輸入品比率」を構造的に 考察するために、「その他機械産業と製造業」 を取り上げ、(9)式で示した「輸入品ユニッ ト࡮ストラクチャー」を利用して「輸入品比 率」の構造的特徴を考察してみよう。(9)式 で示したように、「輸入品ユニット࡮ストラ クチャー」は産業間の相互取引を示してお り、産業数×産業数の正方行列である。図 3 から図 5 では、床面の両軸はそれぞれ産業を 取り、「ユニット࡮ストラクチャー」の各要 素の値を床面に立った柱の高さで示されてい る。つまり、各時期の中国および日本の「そ の他の機械産業と製造業」における「輸入品 ユニット࡮ストラクチャー」を視覚化したも のである5)。 1987 年の中国の「その他の機械産業と製 造業」の輸入品ユニット࡮ストラクチャーで は、輸入品比率が日本より断然高いほか、構 造的に、自部門以外に金属精錬࡮圧延加工 業、化学工業、機械工業など川上にある素材 産業からの中間投入輸入が高い水準にある。 それが 1997 年になると、一定の「第二次輸 入代替」として低下している。 1960 年の日本の場合、「その他の機械産業 と製造業」の輸入品比率が中国より低いな ど、構造的に異なることがわかる。日本の 「その他の機械産業と製造業」における輸入 品ユニット࡮ストラクチャーでは、自部門の 輸入より、金属精錬࡮圧延加工業、化学工業、 および金属精錬࡮圧延加工業と化学工業の生 図 3 中国その他の機械࡮製造業における輸入品ユニット࡮ストラクチャー (出所) 筆者作成。

(12)

産がもたらした鉱産物の輸入が高い水準にあ り、そのことが「その他の機械産業と製造業」 の「輸入品比率」を大きく左右した。そして、 1970 年のそれを見ると、「第二次輸入代替」 は主に金属精錬࡮圧延加工業、化学工業で生 じており、金属精錬࡮圧延加工業と化学工業 の生産がもたらした鉱産物の輸入は改善され てなかった。自部門の産業内輸入も上昇し た。工業化の成熟段階の日本をみると、1960 年代と異なり、「第二次輸入代替」が深化し、 1995 年になると自部門の産業内貿易以外の 中間投入輸入がわずかとなった。 このように、「輸入代替工業化」と「輸出 促進工業化」のいずれにおいてもその成功の 鍵のひとつとなる中間投入財の輸入につい て、「輸入品ユニット࡮ストラクチャー」は 構造的な洞察を得る有効な手段である。 4. 輸出による輸入誘発 「輸入品比率」および「輸入品ユニット࡮ ストラクチャー」は産業の生産構造に注目し て、生産過程で発生する輸入を考察するもの である。それでは、輸出需要が国内生産を通 図 4 日本のその他の機械࡮製造業における輸入品ユニット࡮ストラクチャー (出所) 筆者作成。 図 5 日本のその他の機械࡮製造業における輸入品ユニット࡮ストラクチャー (出所) 筆者作成。

(13)

じて誘発する輸入はどうであろうか。(14) 式で示す「輸出による誘発輸入」についての 計算結果が表 4 から表 6 で示されている。表 頭には両国の輸出によって誘発した輸入を産 業別で示している。それを比較評価するに は、輸出の輸入誘発係数と輸出の誘発輸入比 率を用いる。 まず輸出の輸入誘発係数、つまり 1 単位の 輸出需要総額が各産業にどれだけの中間投入 輸入を誘発するかを見ると、中国では 1987 年 の 0.1017 か ら 1992 年 の 0.1459、 そ し て 1997 年の 0.1367 へ変動した。後期では低下 表 4 中国の輸出による輸入誘発 1987 1992 1997 誘発 輸入額 (万元) 輸入 誘発 係数 誘発 輸入比率 (%) 誘発 輸入額 (万元) 輸入 誘発 係数 誘発 輸入比率 (%) 誘発 輸入額 (万元) 輸入 誘発 係数 誘発 輸入比率 (%)

M mi/∑ei mi/mi M mi/∑ei mi/mi M mi/∑ei mi/mi

1 農業 248,406 0.0058 7.21 341,972 0.0042 9.75 361,398 0.0022 9.04 2 鉱業 232,453 0.0054 12.41 997,145 0.0123 17.45 1,636,618 0.0099 21.30 3 食品加工業 92,894 0.0022 3.70 114,233 0.0014 5.01 285,413 0.0017 6.06 4 繊維製品業 849,448 0.0199 17.94 2,400,227 0.0297 29.56 3,254,864 0.0197 27.01 5 パルプ࡮製 紙࡮木製品 177,935 0.0042 9.78 382,745 0.0047 14.18 1,026,236 0.0062 16.12 6 石油加工࡮石 炭加工業 128,301 0.0030 12.33 480,915 0.0059 15.64 686,557 0.0042 17.40 7 化学工業 714,142 0.0167 13.39 2,489,873 0.0308 20.02 4,933,205 0.0298 23.35 8 建築材料࡮そ の他非金属製 品 9,535 0.0002 3.40 69676 0.0009 8.10 75,493 0.0005 7.11 9 金属精錬࡮圧 延加工業 730,647 0.0171 11.07 1,226,229 0.0152 18.75 2,003,956 0.0121 24.39 10 金属製品 26,892 0.0006 6.56 117,450 0.0015 11.45 507,088 0.0031 15.14 11 機械工業 503,819 0.0118 6.15 1,252,808 0.0155 9.68 2,065,166 0.0125 11.74 12 その他の機械 産業と製造業 604,448 0.0142 6.76 1,848,793 0.0228 11.78 5,214,875 0.0315 16.90 13 電力、ガス、 水道 14,899 0.0003 12.18 75,443 0.0009 17.93 373 0.0000 19.55 14 建築業 0 0.0000 0.00 0 0.0000 0.00 4,007 0.0000 0.80 15 運送࡮郵政業 2,956 0.0001 7.54 2,536 0.0000 10.73 163,656 0.0010 14.95 16 金融保険業 217 0.0000 10.82 395 0.0000 20.46 66,595 0.0004 15.11 17 商業飲食業 0 0.0000 0.00 0 0.0000 0.00 64,584 0.0004 14.98 18 その他社会 サービス業 4,703 0.0001 2.07 5,561 0.0001 5.37 272,664 0.0016 6.88 19 その他 0 0.0000 0.00 0 0.0000 0.00 0 0.0000 0.00 計 4,341,693 0.1017 9.53 11,806,001 0.1459 15.65 22,622,748 0.1367 17.73 (出所) 筆者により算出。

(14)

し た も の の、 日 本 の 60 年 代 の 0.0803 か ら 0.1000 までの変動に比べると高水準で急上昇 したことがわかる。つまり、中国では、輸出 が輸入をより生むようなになっている6)。さ らにその産業構造を見ると、中国では軽工業 の繊維製品業、重工業の化学工業と金属精 錬࡮圧延加工業、機械工業及び「その他の機 械産業と製造業」を中心としている。60 年 代の日本の場合は特に農業、鉱業と金属精錬 に集中している。 次に、輸入誘発比率、つまり輸出によって 誘発される各産業の輸入が当該産業輸入額に 表 5 日本の輸出による輸入誘発 1960 1965 1970 誘発 輸入額 (億円) 輸入 誘発 係数 誘発 輸入比率 (%) 誘発 輸入額 (億円) 輸入 誘発 係数 誘発 輸入比率 (%) 誘発 輸入額 (億円) 輸入 誘発 係数 誘発 輸入比率 (%)

M mi/∑ei mi/mi M mi/∑ei mi/mi M mi/∑ei mi/mi

1 農業 29,847 0.0137 5.23 45,172 0.0114 4.62 78,300 0.0092 4.65 2 鉱業 51,647 0.0237 13.28 157,388 0.0396 17.71 367,984 0.0431 16.24 3 食品加工業 1,613 0.0007 0.79 4,414 0.0011 1.00 6,416 0.0008 1.20 4 繊維製品業 2,458 0.0011 13.50 3,551 0.0009 10.37 14,414 0.0017 9.74 5 パルプ࡮製紙࡮ 木製品 1,565 0.0007 4.81 4,150 0.0010 5.04 12,608 0.0015 4.90 6 石油加工࡮石 炭加工業 6,363 0.0029 11.15 17,807 0.0045 13.64 39,127 0.0046 13.93 7 化学工業 18,758 0.0086 11.98 28,592 0.0072 12.42 60,414 0.0071 13.47 8 建築材料࡮そ の他非金属製 品 286 0.0001 5.46 390 0.0001 5.14 972 0.0001 4.76 9 金属精錬࡮圧 延加工業 43,533 0.0200 17.30 82,110 0.0206 26.63 140,886 0.0165 22.60 10 金属製品 235 0.0001 4.42 656 0.0002 4.97 1,259 0.0001 4.35 11 機械工業 5,964 0.0027 5.28 11,963 0.0030 7.01 24,841 0.0029 6.60 12 その他の機械 産業と製造業 4,261 0.0020 6.17 19,674 0.0049 7.73 55,725 0.0065 8.15 13 電 力、 ガ ス、 水道 114 0.0001 7.97 30 0.0000 9.10 5 0.0000 9.86 14 建築業 2 0.0000 0.61 0 0.0000 0.00 0 0.0000 0.00 15 運送࡮郵政業 6,050 0.0028 5.77 11,982 0.0030 6.59 27,628 0.0032 6.97 16 金融保険業 0 0.0000 0.00 126 0.0000 6.33 1,477 0.0002 7.07 17 商業飲食業 502 0.0002 3.28 2,303 0.0006 3.76 5,232 0.0006 4.39 18 その他社会 サービス業 388 0.0002 2.03 896 0.0002 2.25 2,990 0.0003 2.75 19 その他 1,551 0.0007 3.29 2,803 0.0007 3.30 14,146 0.0017 6.33 計 175,139 0.0803 8.50 394,006 0.0990 10.08 854,426 0.1000 10.39 (出所) 筆者により算出。

(15)

占める比率をみると、ほとんどの産業では上 昇か上昇傾向にある。そして、全体的として は、9.53 から 15.65、そして 17.73 まで上昇し、 輸入のかなりのシェアまで占めるようにな り、輸入発生の重要な要因の 1 つとなってい る。産業別では、特に鉱業、繊維製品業、石 油加工࡮石炭加工業、化学工業、金属精錬࡮ 圧延加工業および電力࡮ガス࡮水道におい て、それぞれの輸入に占めるシェアが高い。 60 年代の日本も、農業、繊維製品業および 建材材料࡮その他非金属製品では低下したほ か、ほとんどの部門において上昇している。 表 6 日本の輸出による輸入誘発 1985 1990 1995 誘発 輸入額 (億円) 輸入 誘発 係数 誘発 輸入比率 (%) 誘発 輸入額 (億円) 輸入 誘発 係数 誘発 輸入比率 (%) 誘発 輸入額 (億円) 輸入 誘発 係数 誘発 輸入比率 (%)

M mi/∑ei mi/mi M mi/∑ei mi/mi M mi/∑ei mi/mi

1 農業 108,694 0.0026 3.78 72,552 0.0016 2.99 63,577 0.0014 2.68 2 鉱業 519,592 0.0123 13.47 496,161 0.0110 9.94 593,291 0.0127 10.16 3 食品加工業 29,100 0.0007 1.71 45,907 0.0010 1.31 58,056 0.0012 1.22 4 繊維製品業 53,195 0.0013 6.47 77,184 0.0017 4.45 118,697 0.0025 4.32 5 パルプ࡮製紙࡮ 木製品 88,059 0.0021 11.49 130,772 0.0029 9.20 167,749 0.0036 9.08 6 石油加工࡮石 炭加工業 273,955 0.0065 18.72 321,068 0.0071 15.76 335,363 0.0072 14.98 7 化学工業 111,452 0.0026 11.53 107,334 0.0024 7.99 78,564 0.0017 6.90 8 建築材料࡮そ の他非金属製 品 17,664 0.0004 8.89 23,640 0.0005 6.98 23,533 0.0005 7.42 9 金属精錬࡮圧 延加工業 442,588 0.0105 31.21 504,866 0.0112 22.96 575,518 0.0123 24.01 10 金属製品 11,772 0.0003 10.20 20,830 0.0005 8.02 25,077 0.0005 8.11 11 機械工業 59,138 0.0014 8.98 83,915 0.0019 7.28 93,381 0.0020 8.41 12 その他の機械 産業と製造業 410,256 0.0097 15.82 897,806 0.0200 13.64 1,333,854 0.0285 13.53 13 電 力、 ガ ス、 水道 29 0.0000 2.79 56 0.0000 1.93 22 0.0000 1.91 14 建築業 44 0.0000 6.52 55 0.0000 5.33 28 0.0000 4.34 15 運送・郵政業 21,038 0.0005 5.75 19,823 0.0004 4.56 6,787 0.0001 4.34 16 金融保険業 49,834 0.0012 11.68 56,092 0.0012 7.21 65,118 0.0014 6.34 17 商業飲食業 81 0.0000 2.74 177 0.0000 1.79 58 0.0000 1.29 18 その他社会 サービス業 175,580 0.0042 5.01 263,723 0.0059 4.29 270,671 0.0058 3.85 19 その他 43,731 0.0010 17.11 90,548 0.0020 10.76 61,329 0.0013 10.94 計 2,415,801 0.0573 10.98 3,212,510 0.0715 8.87 3,870,673 0.0827 8.85 (出所) 筆者により算出。

(16)

そして、全体としては 8.50 から 10.08、そし て 10.39 まで上昇したが、中国の水準よりは るかに低い。そして、工業化の成熟段階に入 ると低下に転じた。産業別で相対的に比率の 高い産業は中国とあまり変わらない。 ǙȞșǺ 本稿では、「ユニット࡮ストラクチャー」 か ら 出 発 し、「国 産 品 ユ ニ ッ ト࡮ ス ト ラ ク チャー」、「輸入品ユニット࡮ストラクチャー」 を新たに定義し、既存研究における産業の生 産構造に関する分析手法の関連を整理した。 そして、上述の分析体系を利用して、中国の 産業構造と貿易構造の変化を日本と比較しな がら、輸出主導産業の結合構造、輸出需要に よる誘発輸入を分析した。その主な結論は次 の通りである。 ①ユニット࡮ストラクチャー体系における 産業の「結合生産性比率」と「輸入品比率」 をみると、日本の発展過程では、自部門より 生産性の低い産業と結合して製品を提供する 産業、つまり自部門の成長が経済全体の生産 性向上に貢献できるような産業、かつ「輸入 品比率」つまり輸入中間財の使用水準の低い 産業が貿易主導産業となっている。 ②中国の場合、輸出主導産業の交代は、自 ら高い生産性を持ち、生産性の低い産業と結 合し生産を行っている産業へとシフトした が、同時に、輸出主導産業群における「輸入 品比率」が高まっている。つまり、輸出主導 産業の生産過程における中間投入輸入代替、 いわゆる「第二次輸入代替」が実現されずに いることがわかる。 ③「輸入品ユニット࡮ストラクチャー」で みると、産業の生産過程における中間投入輸 入の発生を構造的に考察でき、「輸入品比率」 の改善、「第二次輸入代替」の推進などに有 意な示唆が得られる。 ④「輸出による輸入誘発」を見ると、中国 では、輸出が輸入をより誘発するような構造 へ変化し、その水準もかなり高い。そして、 輸出によって誘発される輸入がすでに輸入全 体の高いシェアを占めており、輸出発生の重 要な要因になっている。 貿易の効果はいろいろな角度から評価でき るが、本稿の視点に限ってみれば、以上の結 果から、中国の輸出促進策は、経済全体の生 産性向上に効果があるものの、「第二次輸入 代替」がともなわず、輸入を生むような構造 になっており、改善する必要があるように思 われる。 (注) 1) 池本(1997: 237–238)、渡辺(1996: 193–194)参照。 2) 「必要輸入依存度」とは、各時点において、「付加 価値額 100 万相当を生む生産活動を行ったとき、経 済全体として必要誘発輸入量」(尾崎࡮相良、1972: 55)である。後述の通り、藤川(1999)が定義した 「輸入品比率」は、尾崎࡮相良(1972)の「必要輸 入依存度」を係数化したものである。両者ともに中 間投入࡮技術構造における輸入を構造ではなく集計 でみるものである。 3) 日本との比較が可能となるように部門統合をし た、中国 1987–92–97 接続産業連関表の作成につい ては胡(2003)の補論を参照。なお、中国では、産 業連関表に対応する労働投入データがないため、本 稿では『中国経済統計年鑑』の公表データを利用し て推計した。中国の公式統計には「従業人員数」の 年末値と「職工数」の年末値の 2 つあるが、「従業 人員」の基準は“従事”しているか否かで、「職工数」 は“職についているか否か”であるため、「職工数」 では特に農業に関してかなり過小評価している。 「従業人員数」は「ある期間内で、すべての労働力 資源の実際の利用状況を反映している」ため、本稿 では各年度統計年鑑の「分行業従業人員数」(産業 別従業者数)を利用した。ただし、製造業に関して は当該のデータが細分類されてはなく、集計データ しかないため、細分類した「従業人員数」を推計す るために、「工業産業別職工数」データから製造業 各部門の比率を計算し、その比率ベクトルをもって 集計数の製造業就業者から各部門の従業者数を推計 した。

(17)

4) ただし、胡(2003)に従って部門統合を行った。 5) 産業番号と産業の対応は表 4 を参照。 6) ただし、中国では、農業、金属精錬࡮圧延加工業 に対して明確に低下している。また 1960 年代の日 本の場合は、農業と化学工業に対して低下している。 (参考文献) 秋山裕(1999)、『経済発展論入門』東洋経済新報 社。 池本清編(1997)、『国際経済』有斐閣。 尾崎厳࡮相良隼二(1972)、「産業構造と貿易構造 の変化―産業連関分析の手法による」慶応義 塾 経 済 学 会『三 田 学 会 雑 誌』 第 65 巻 第 12 号、 38–62 ページ。 尾崎厳(1980)、「経済発展の構造分析(三)―経 済の基本的構造の決定」『三田学会雑誌』第 73 巻第 5 号、66–94 ページ。 胡秋陽(2003)、「I-O 表から見た中国産業の連関構 造―日本との比較を中心に」『六甲台論集』第 50 巻第 2 号、1–22 ページ。 藤川清史(1999)、『グローバル経済の産業連関分 析』創文社。 横倉弘行(1999)、『産業連関分析入門』窓社。 渡辺利夫(1996)、『開発経済学―経済学と現代 アジア』日本評論社。 (こ࡮しゅうよう 南開大学経済学院 E-mail: xingehujp@hotmail.com)

表 2 日本産業の結合労働生産性比率と輸入品比率 ( a ) 1960 年 付加価値労働生産性 輸入品比率 輸出シェア 自部門 他部門 自/他 その他の機械産業と製造業 0.46 0.73 0.64 0.098 21.0 繊維製品業 0.48 0.45 1.05 0.063 19.6 運送・郵政業 3.96 0.80 4.97 0.039 11.3 パルプ࡮製紙࡮木製品 0.35 0.45 0.79 0.067 7.8 金属精錬・圧延加工業 1.02 0.82 1.24 0.197 6.4 機械工業 0.5

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