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A Study of Management model on the basis of Enjoyment: From a perspective of Corporate philosophy

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神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14号 2010年3月 3

■ 研究論文

楽 しさに基づいた経営管理モデルの一考察

一 経営理念 の観点か

ら-AStudyofManagementmodelon仇ebasisofEnjoyment :FromaperspectiveofCorporatephirosophy 神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士後期課程

小 森 谷

浩 志

KOMOR限 ,Hiroshi }キーワー ド 楽 しさ、学習、フロー理論、禅、経営理念

1.

は じめに

まわ りを見渡す と、厳 しい環境下で あって も、 自らのライフテーマを定め、意欲的に仕事に取 り 組み、成果 を上げ、仕事 を通 じて力強 く成長 を遂 げるビジネスパ ーソンがいる。仕事に没入 し、楽 しみ、遊ぶように働 く人たちである。 その一方で、多 くの ビジネスパ ーソンの働 く意 欲は決 して高いとはいえない現状がある。意欲の 低い労働者か ら、継続的な高い成果は望むべ くも ない。働 く意欲の相対的低下は、現代社会全体が 抱 えるもっとも深刻な問題のひ とつである。仕事 を楽 しむ人 とそうでない人、両者 を分 ける要因は、 なんであろうか。 また、経営の現場に目を向けると、マネジメン トの多 くは、従来か らの指示 や命令型 だけでは、 メンバ ーの意欲 を引 き出 し、高い成果 を出 し続 け るのは無理であることを実感、効果的なマネジメ ン トいかに、 を模索、悪戦苦闘 している。 本研究では、働 く人 々が仕事 を楽 しみ、没入 し、 高い成果 を上げ続 ける組織 になるには、何がポイ ン トとなるかを検討す る。それは、仕事 を遊ぶよ うに楽 しむ人々のポイン トはなにか、それを組織 ぐるみで実現す るにはどうすれば良いのか、 とい う

2

つの疑問に対す る考察であ り、楽 しさに基づ いた経営管理モデルの検討である。本稿では、 ま ず フロー (flow)理論 (Csikszentmihalyi 1975) に依拠 し楽 しさの概念 について整理す る。その際 重要な一致点をもつ禅の思想 を併せて検討 し概念 を深掘 り、定義 を試み る。その後経営管理モデル を検討、その中で も経営理念 を取 り上げ、組織 に おける浸透 について事例 をもとに検証 したい。

2.

楽 しさの概念整理

2.1 楽 しさの構造モデル としてのフロー理論 過去 を振 り返 ったとき、楽 しさのあまり時間を 忘れ、何 ごとかに没頭、投入 した経験 を持つ人は 多いだろう。 そうした楽 しさについてアメ リカの 心理学者Csikszentmihalyiはフロー理論 として ま

(2)

4 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14号 2010年3月 とめている。 フロー理論の研究 は運動選手や探検 家、登山家など活動 それ 自体 を報酬 とす る人々へ の調査面接 を出発点 としている。 フローとは流れ の ことであ り、被験者が自分の体験 を表現するた めに繰 り返 し用 い られ た語 に由来 して命名 され た。端的にい うとフロー理論 とは、楽 しさとい う 内発性 を起 点 と した動機付 け理論 で ある

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、質問紙調査、面 接調査 など複合 的な方法 を用いて、楽 しさの構造 を精撤化 している。本研究では、楽 しさに基づい た経営管理モデルの検討 において フロー理論 を援 用 したい と考 えている。

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に よると、行為 す る人 の技能 と、行為が必要 とす る挑戦が高 レベルでバ ランス す るところで「一つ の活動 に深 く没入 しているの で他の何 もの も問題 とな らなくなる状態、その経 験 それ自体が非常に楽 しいので、純粋にそれをす るとい うことのために多 くの時間や労力 を費やす ような」1状態が生 じるとい う。フロー経験 とは「挑 戦的な環境 に積極的かつ効果的に関わ り、環境の 統制感覚」 を持 った結果の 「自己効力感 に裏打 ち された楽 しさ」 2の ことである。 フロー理論では、3つ のモデルが提示 されてい る。本稿では、鍵概念 となる学習のダイナ ミズム について理解 しやすい初期モデル をとりあげ論 を 進める。 初期モデルでは、経験 を3領域で とらえてい る。 挑戦 と能力のつ り合 ったフロー、能力に対 して挑 戦が低い退屈、反対に挑戦が高いが能力が低 い不 安である。 入社 したばか りの、新入社員 を例 に説明 しよう。 徳 (彼女) は右 も左 も分か らず、不安である (A)O 仕事に対す る能力 も低 い。 しか し、 日を重ね るう ち、能力 も磨 かれや がて、第一段 階の フロー領 域 に入 る (Al)。は じめて仕事の達成感や充実感、 楽 しさを体験す る。 さらに、先輩や自分 より高度 な仕事 を している人の姿 を見て、今 より高度 な仕 事 に挑戦す る。す ると、今の能力では うまくいか ないので、再 び不安 に なる (B)。 ス ランプ、壁 に突 き当ると感 じる時期である。そこで、能力 を 磨 き、再び フロー領域 に入 る

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,以前 とは一 段上がった、一皮むけた時期である。 しか し、能 力が向上 したのに も関わ らず、新たな挑戦 を しな い と、やがて新鮮 さを失 い、退屈 の領域 に入 る (C)。マ ンネ リといわれ る段階である。新 たな課 題 に挑戦す ることで、マ ンネ リを脱す ることがで きるC (図1参照) 注 目す べ きは、最 初 に入 った フ ローAlに比 べ、高度 な能 力 と挑戦 のバ ラ ンス した

Bl

の ほ う が、 よ り複雑 で、楽 しい、高度 な プロ-状態 に なっていることだ。以上か ら分か るように、一度 フロー状態 に入 った人間は、 より高い水準での フ ローを求めることで、開発の階段 を上がることに なるC フローを一度経験す ることで、その意識状 態 を繰 り返 し経験 す ることを渇望 す ることにな る。 「フローのエ ピソー ドを重ね るにつれて、人 はより独 自性 をもち、ありふれた型 か ら抜 け出 し て、より希少な価値 をもつ能力の獲得 に夢中にな る

3

ので ある。楽 しい状態

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の中に段階

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を包含 してい るので ある。つ ま り持 出す べ きは、段階 を上がっていることか ら、 フローの メカニズムの中に、学習のダイナ ミズムが、内包 されているとい えることである。 フローは今 とい う瞬間 を楽 しい ものにす るとともに、「能力 を さ らに発展 させて人頬への重要 な寄与 を可能 にす る 自信 を築 きあげる」 4ことになる。 S # (c h a "e

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能 力(sk川S,

(cslkszentmlh叫 l[1990]p.74に一部筆者 加 筆) 図1フロー(FJow)状態 の 初期モデル

(3)

楽 しさに基づいた経営管理モデルの一考察 5 なお学習について特 に学習の起因 と生成 とい う 2つの観点が重要 だと考 えて お り今後 も検討 を続 けたい。起因については、個人 によるもの と、相 互 関係 によるもの、具体 的には、「特定の専門技 術や知識の習得 として、 あるいは、初心者か ら熟 達者、新参者 か ら古参者へいたる変化」 として捉 えられて きた伝統 的モデル と 「さまざまなコンテ クス ト、 あるいは、 コ ミュニテ ィの相互構成」 5 としての学習それぞれの役割について検討 したい。 生成 にっては、枠内に止 まる学習でな く、枠 その もの を作 り変 える学習、 さらには学び方 その もの の学習6につ いて検討 したい。 フロー理論の概観 に続 き、 フロー形成 の条件に論 を進める。 2.2 フロー形成の条件 先 に、高 い水準 の挑戦 と高 い水準 の能力がバ ランスす るこ とで、 フロー状態 が起 こることを 見て きた。 しか し、 これは「重要 で あるが、十分 な条件でな

い」

7

。 ここで登場す るのが、性格特性 としての、 自己 目的的パ ーソナ リテ ィ (autotelic personality)で ある。 フロー形成の条件 について 考 えるとき、 自己 目的的パ ーソナ リテ ィは、欠か さざるべ き鍵である。 「自己 目的的〔autotelic〕と言 う言葉 は、ギ リシャ 語の 自己 を意味す るautoと目的を意味す るtelosか らきてい る。 それは自己充足的な活動、つ まり将 来での利益 を期待 しない、す ることそれ 自体が報 酬 をもた らす活動

8

である。 「パ ーソナ リテ ィの力だけで、絶望 的な状況 を 克服すべ き挑戦対象に変 える ・ ・(中略)・ それ はおそ らく人生 に成功す るために最 も重要 な 特質であるとともに、人生 を楽 しむための最 も重 要 な特質

9

である。 そ して、 自己 目的的パ ーソナ リテ ィを発達 させ るル ール について、Csikszentmihalyiは以下の4つ をあげる10。 (∋ 目標の設定 達成すべ き明確 な目標 をもつだけでな く、 目標 決定の主体 としての強力なコ ミッ トメン トと同時 に、意味 を持 たな くなった ときには容易に修正す る、柔軟性 を併せ もつ。 (む活動への没入 没入 をうまくや り遂 げるには、挑戦対象 と自分の 能力 との問のバ ランスをとることで あり、注意の 集中能力によって大 きく促進 され る (む現在起 こってい ることへの注意集中 自意識 (自分がどの ように振舞 ってい るか、 自分 は外 か らどの よ うにみ えるかにつ いて思 い悩 む) をもたず、 自分が関わってい るシステムに心理的 エネルギーを没入す ることによ り、個 の限界 を超 えて成長す る ④直接的な体験 を楽 しむ ことを身につ ける 客観的な状況 が劣悪 な ものである時 さえも生活 を 楽 しむ ことがで きる フローの起 こる条件の中で、基礎 を成す性格特 性で ある、 自己 目的的パ ーソナ リテ ィにつ いて、 理解 を深 めた。引 き続 き、Csikszentmihalyiの提 示 す る8つ の条件 を基本 に、 プロ-生成 の条件 に つ いて整理 したい。 自己 目的的パ ーソナ リテ ィは、 フローの起 こる 土台であるが、それに加 え、 フローの起 こる条件 につ いて、Csikszentmiha】yiは以下のよ うにい う11。 「第一 に、通常 その経験 は、達成 で きる見通 し のある課題 と取 り組んでい る時に生 じる。第二 に、 自分の してい ることに集 中で きていなければな ら ない。第三、および第四 として、その集中がで き るのは一般 に、行われている作業 に明瞭な 目標 が あり、直接的なフィー ドバ ックがあるか らで ある。 第五 に、意識か ら日々の生活の気苦労や欲求不満 を取 り除 く、深いけれ ども無理のない没入状態で 行為 してい る。第六 に、楽 しい経験 は自分の行為 を統制 してい るとい う感覚 をともな う。第七 に、 自己についての意識は消失す るが、 これに反 して フロー体験 の後では自己感覚 はよ り強 く現れ る. 最後に、時間の経過の感覚が変わ る。数時間は数 分の うちに過 ぎ、数分 は数時間に伸び るよ うに感 じられ ることがある。 これ らすべての要素の組合 せ が深 い楽 しさ感覚 を生 む」キーワー ドを列挙す ると、達成で きる見通 しのある課題、集 中、明瞭

(4)

6 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14号 2010年3月 な目標、直接的なフィー ドバ ック、没入状態、 自 分の行為の統制、 自己意識の消失、時間経過の感 覚変化及び要素の組み合わせ、 となる。重要な示 唆がある一方で、重 な りや レベルのば らつ き、結 果 として起 こる現象 も含 まれてい る印象がある。 また、 フローの起 こる、家庭状況 としては、5 つの特徴 をあげる12。 第- は明快 さで ある。 ・ ・(中略)I ・家族 の相互作用において 目標、 フィー ドバ ックは明瞭 で ある。 ・第二 は中心化である。- ・(中略)・ 自分が現在 してい ることや具体的な感情 ・経験 に 関心 を持 っているとい う子供の認識である。第三 は選択の幅である。第四は投入す るようになるこ とを認める信頼。第五 は挑戦で ある。 さらに、 フローの疎外条件 として内的要因3つ、 外的要因

2

つ を示す13。 内的要因 として、注意散漫、 自意識過剰、極端 な自己中心性。外的要因 としてアノ ミー (規則の 欠如)、疎外 (自分たちの 目標 に反す る行為の強制) で ある。 以上、 フローの起 こる条件 につ いて、先 に検討 した、 自己 目的的パ ーソナ リテ ィ及び8つの条件 を基本 に、今 までの議論 を整理す ると以下の9つ に整理 されよ う。 ① 事象か ら楽 しさ、喜び を感 じる能力 (参 強い内発的動機付 け (釘 目標の明確化 と目標変更 に対す る柔軟性 ④ フ ィー ドバ ックの存在 また は、 フ ィー ド バ ックとして感 じる能力 ① 能力の向上 を伴 う、挑戦的 目標 (参 信頼関係 (∋ 目の前の行為 に対す る集中 ⑧ 他への貢献の精神 (釘 アノ ミーと疎外のない環境 フロー状態 に至 る条件 について まとめた、端的 にいえばひ とつの活動 にいかに深 く没入で きるか、 である。没入で きる内的、外的、双方の環境が整 えられ、相互作用す ることが重要である。投入す ることで楽 しさが生 まれ るのであり、没入経験 そ の ものが楽 しさになる。 2.3 楽 しさ概念の定義 本研究 において楽 しさは重要 な鍵概念である楽 しさの深耕 を試み る。 まず快楽 (pleasure)と楽 しさ (enjoyment)を比較検討 し、次 に没入 とい う重要 な一致点 を共有す る禅の思想の観点か らの 検討 を加 えることで、本研究 における楽 しさの概 念の定義 を試みたい。 快 楽 とは、 古 フ ラ ンス語 のplesin(愉 快、満 足) が語源で ある。 「身体 的欲求 が心理的エ ン ト ロピーを引 き起 こす原因 となった時、意識 を秩序 ある状態 に戻す均衡 回復」 14時に起 こる、満足感 情 (contentmentoffeeling)の ことで ある。期待 が満た された り、欲求や欲望 が満 た された ときに 生 じる快楽 は何 の努力 もな しに感 じることがで き、 良い食事や金 など外発的動機 を源泉 とす る。快楽 経験 を積んで も自己 を成長 させ ることはない。一 方楽 しさは、古 フランス語のenjoier(楽 しむ) を 語源 とす る。 「新 しく、挑戦的な要素 を含む 目標 への心理的エネルギーの投射」 15の結果 もた らせ られ る。秩序 の維持 に止 まる快楽 に比べ、意識 に 新 しい秩序 を創造す ることも可能にす る。快楽 が 期待 したことの満足で あるのに対 し、楽 しさは事 前の予想 を超 えた達成 にその源泉がある。仕事上 快楽 楽しさ 源 泉 外発 内発 期待 期待の満足 期待の超越 方法 無努 力 心的エネルギーの投射 成果 回復、秩序の維持 幸福、新しい秩序の創造 表1 快楽と楽しさの比較 (csikszentmihalyi[1990】をもとに筆 者作成)

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楽しさに基づいた経営管理モデルの一考察 7 の取引の成立 など、 こうした達成 は自己成長 を促 す。 (表1参照) 引 き続 き禅16の思想 か らの検 討 に論 を移 す17。 csikszentmihalyiは 「最 良の瞬 間は普通、困難 で はあるが価値 のある何 かを達成 しようとす る自発 的努力の過程で、身体 と精神 を限界 にまで働 かせ 切 ってい る時に生 じる」 18とい う。一方、曹洞宗 の創始者道元 は 「人生の意味は、生 き生 きと生 き 抜 くことにある。生命の火 を思い切 り燃 え上が ら せ、白熱化 し、燃 え尽 くして消 える。- かけ らの 余 じんをも残 さない完全燃焼」 19を人生 の意図 と す る。 「禅 の真理 は、全人格 の総力 をつ くして当 らねば、けっ して得 られない。 ・ - (中略)・ 生涯の最高の大事である。怠 け者 は、 あえて近寄 ろうともしないであろう。 これ こそ実 に、あなた の人格 を鍛 えに鍛 える精神 の鉄床」20で あ り、禅 は極 めて厳 しい修練 を要求す ることがわかる。 フロー理論 と禅、両者 に共通 しているのは、相 当厳 しい鍛錬の中、没入 を起点 とした楽 しさを超 え、投入す ることその ものを楽 しみ とす る、潔 さ とい えるか もしれない。 まず、禅 の 目的は何かについて検討す る。鈴木 は、禅 の定義 として「禅 は、仏教の精神 もしくは 真髄 を相伝す るとい う仏教の一派であって、その 真髄 とは、仏陀が成就 した く悟 り) (bodhi、菩提) を体験す ることにある」と述べ 「禅の意図す るとこ ろは、つねには智慧が眠っている意識の奥底 か ら、 その智慧 を喚び覚 ます ことにある」とす る21。代 表 的禅語、不立文字 が示す通 り、「禅 は、論理的 分析や知的処理の支配は受 けない。 - ・(中略)- ・ 内なる心の中で、 じかに身をもって体験 しなけれ ばな らな

」22不立文字一文字 を立 てず とは、本 当 に大切 な悟 りにつ ながる真理は、言葉では伝 えら れない、 自らが実践で体得す るしかない とい うこ とで ある。 つ まり、禅の 目的は、悟 りの体験、体得で あり、 そのためには、 「智慧が眠ってい る意識 の奥底 か ら、 その智慧 を喚び覚 ます」ことが必要 であると い うことになる。 これ を、 きわめて端的に表現す ると、 「生 き生 きと生 き抜 く」 とい うことであり、 道元 は自己の もってい る機能 を全部発揮す るとい う意味で、 「全機現」 と表現す る23。 道元 の 『正法眼蔵』95巻 は「仏教の真髄 を真正 面 か ら解 き明か した雄大 な宗教書」24と して有名 である。 その核心 を示す現成 公案 に、次の言葉が ある。 仏道 をな らふ といふは 自己 をな らふな り 自己 をな らふ といふは 自己をわす るるな り 自己 をわす るるとい うは 方法 に証せ らるるな り 「な らふ」とは、十分知 り尽 くす ことである。田 里 は さらに、「命 がけで繰 り返 し、繰 り返 し一つ ことを習い性 となるまで、 この身心にたたきこむ ことで ある」25とい う。つ まり、仏の道 を知 るには、 徹底 して己を知 り尽 くす ことだとい うことで ある。 何 を習 うに して もまずは∴ 自らが何者 なのかに深 く入 り、 自己 を確立 しない ことには、上達す るこ とはない。何 よ りも自己 を修 めることが先決 とな る。そ して、 「わす るる」とは「小我 を忘れ る」こと で ある。 レト我 を忘れ る」とは自己顕示、 自己防衛 など、はか らい を手放す こととも言い換 えられ よ う。その結果 「大我 (方法、大 自然) に従 う」、「方 法 (自然) に証せ らるる」つ まり、悟 りに至 るこ とにな る。 また、 「身心 を挙 して色 を見取 し、身 心 を挙 して声 を聴取す る」ともい う。身だけで も な く、心だけで もな く、全身全霊で ことにあたる とい うことである。心 をこめて、 その ものになっ て しまった如 く、溶 け込む ことである。 この こと をひ とことで-知 と表現す る。田里 はこの-如 こ そが禅 の秘密 で あ り道元 の秘 密 で あ ると重要性 を強調す る26。-如 と 「わす るる」 は同義で あ り、 悟 りに至 る方法 なのである。 フロー理論では没入 が成長 を生み、禅では-如が悟 りにつなが ること になる。 以上の考察か ら、本稿 における楽 しさは、手 を 抜いて楽 をす ることとは明 らかに違 う、 ある意味、 苦 しさをも含む概念で あることがわかる。次の よ うに定義で きよう。 た とえ未知であって も、価値 あ りと思 うことに

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8 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14号 2010年3月 徹底 して投入 し、行為 と一体 になるほど全身全霊 でや り切 ることか ら生 まれいず る、充実感や生 き がいのことで、行為者の能力伸長や思考深化 を伴 い、結果創造27や周囲への貢献 につ ながる。

3.

経 営管理 モデル への楽 しさ概 念 の導

3.1 戦略マネジメン トの意味 と経営戦略論の2つ の考 え方 フロー理論 の研 究 は前述 の通 り、 フロー状 態 に あ る個人 の検討 を中心 に行 われて お り、組織 ぐるみの検討、特 にマ ネジメ ン ト全体 にわた る 解明には至 ってない。本研究の 目的は、仕事 にお ける楽 しさの解明であり、楽 しさに基づいた経営 管理モデルの検討である。研究対象は個人 に止 ま らず、経営組織 にまで広 げたい。 よって戦略マネ ジメン トの観点か ら検討 したい。戦略マネジメン ト (strategicmanagement)とは 「組織 が設定 し てい る目標 を果 たすための機能分野間の意思決定 を明確 に し、 それ を実行、結果 を評価 す ること

28で ある。山倉 は 「従来の戦略論 は、戦略形成論 であ り戦略マネジメン ト論ではなかった」 29とし、 戦略の形成 に とどまらず実行 ・評価 ・変革 を総合 的に捉 える視点の重要性 を強調す る。本稿 もそ う した立 ち位置 をとりたい。なぜ な ら、単 に戦略の 策定のみで も、実行やそのための組織 の活性化の みで もな く、経営理念 を意思決定の拠 りどころに し、戦略 を立て、実行す るとい う日々の飽 くなき 繰 り返 しこそがマネジメン トの現実であるか らで ある。戦略マネジメン トプロセス全体 を考察す る ことで、経営管理全体の検討が可能にな り、現場 での実践 に役立つ と考 える。 戦略マネジメン トの視点か らの検討のため、経 営戦略論 について特 にその考 え方 につ いて概観 し たい。経営戦略論 において根源的には2通 りの考 え方 があ る。 内容学派 (contentschool) と過程 学派 (Processschool)である30。前者 は 「事前 に 合理的 ・分析的に編み出 された戦略」であ り、後 者は 「事後的 ・回顧 的に来 し方 を合理化 しなが ら 将来に向けて徐 々に形づ け られてい く戦略」であ る31。 まず内容学派 につ いてであるO岡田はポーター のSCPロジ ック (Porter 1980)と リソースペー ス トビ ュ ー (Werner

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t 1984;Barney 1991) の双方 を 「伝統 的な戦略理論」 と し、 「内外環境 の現状分析 とそれに基づ く線形の将来予測」 によ る 「事前意図的な戦略理論」 32に位置付 ける。 ま た奥村 は合理的側面 に焦点 をあてた 「分析型戦略 論」の特徴 として次の

5

点 をあげる33。 ① 企業 を物理的経済主体 とみな し、企業の行 動 はその まま経営戦略 と一致す るとい う前 提。 ③ 企業 を市場 における一個 の 「点」 とみて、 戦略は 「全知」の前提 に立 った トップの専 有物。 (卦 経営戦略は組織 ・個人が機械的に遂行す る 前提。 ④ その経営戦略はフォーマル な戦略計画 とし て記述、具象化。 ⑤ 経営戦略は規範的性格で、計画か らの帝離 は厳 しくコン トロール。 あいま

性 を許 さない、合理性や分析 に偏 り過 ぎた考 え方 は、変化への柔軟性や創造性 を阻害す ることは否 めない。 また、言われたことを言われ た とお りす るだけの機械論的組織 は、正解がはっ きりしてい る環境下では効率的で あるが、特 に以 下4点の危険性 をは らむ とい えよう。 ① 策定者 と実行者の分離、結果 として二元論 に陥 り実行不全、対立 を生む傾 向の増大。 ① メンバ ーの学習不全 を生む傾 向の増大。 ③ 強制 された義務感 が先立 ち、創造生 が育 ま れ る可能性 を阻害。 (彰 仕事の全体観 を掴みに くく、仕事の意義や 意味 を感 じることが困難。 次 に過 程 学 派 で あ る。 これ は戦 略 の創 発 性 (Mintzberg&Walters1985)に注 目 した もので あ る。奥村 は伝統 的戦略論 と対照的に異 なる特徴 と して次の

4

点 を指摘す る34。 ① 企業がその環境 と相互作用行為 を行 うプロ

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楽 しさに基づいた経営管理モデルの一考察 9 セスか ら戦 略 を形成。 プ ロセスは経 時的、 進化的。 ① 経営戦略は組織 内部の組織 プロセスの中か ら生み出 され る。戦略は トップ一人の専有 物 で はな く、組織全員の もの。 ③ 戦略の策定 と実施 のステージは相互依存 的 なダイナ ミックなプロセス。 ④ プ ロセスの中か ら生起 して くる創発的な行 動 に注 目。偶然性 を取 り込み、必然化。 前提 にある組織観 として、組織 を生命体 として 有機 的に捉 えてい ることが見て取れ る。 また、 ミ ンツバ -グは創発戦略 (emergentstrategy)にお いて 「戦 略 におけ る学習」 35の視点 の重要性 を強 調す る。過程学派の考 え方 では、ゆ るやかな変更 可能 な戦略 を試 しなが ら市場の声 に耳 を傾 け、 ト ライ ・ア ン ド ・エ ラーの中で よ り洗練化 させてい くので、戦略の策定 と行動の過程 その ものが、学 習の場 になる。学習 が内包 されてい るとい う考 え 方 は本稿 の楽 しさの定義 とも一致す る。 こうした 考 え方 は、 日々不確実性 と変化、顧客の多様化 に さらされてい る実務家の実感 とも一致す る。 一方で以下4つのデ メ リッ トも考 え られ る。 ① 特 に トップには衆知 を集 め る技量 と術 が必 要。 ① 正解が上 か ら下 りて きて言われた ことを徹 底す るの と違い、 メンバ ーの 自律性や個性 を引 き出す ことが重要 とな り、マネジメ ン トの難易度 が高 い。 ③ 先行 きが見 えないため、不安感が強 くなる 可能性 が高 いo ④ メ ンバ ーの 自律性 と学習能力に効果 が大 き く依存す るため、 そ うした意欲、能力の低 いメ ンバ ーの阻害や離脱 を生 む可能性 が存 在。 以上経営戦略論 における、 おお さな2つ の考 え 方 を概観 した。 ここまでの議論で内容学派 と比べ、 過程学派 とフロー理論 また本稿 における楽 しさ概 念 の定義 との間によ り類似性、親和性 が見受 け ら れ ることが明 らかになった。 しか し、合理性や分 析 が まった くない戦略 は現実 的で はない。2つ の 考 え方 を二項対立で はな く、相互補完 として捉 え ることが重要 で あろ うと考 える36。 ミンツバ ーグ は 「戦略 は 日常的な末端 の活動 か ら遠 く離れ た組 織 の高次元 において作成 され るもの と考 えるのは、 因習的なマネジメ ン ト論 における最大の誤 りの一 つ」 と指摘 しつつ も 「純粋 なプ ランニ ング戦略 と か、純粋 に創発 的な戦略 とかは この世 に存在 しな い」 37とす る。合 理性 と分析 を勘案 しつつ もその 限界 を認識 し、策定 と実行 を同期化 させ ることが 重要 なので ある。 その観点か ら引 き続 き論 を進 め る。 「月並 み な画家 が描 き始 め る時 は、何 を描 きた いかがあ らか じめ分かってお り、描 き終 わ るまで 最初 の意図が保持 され るのに対 して、独創 的な画 家 は同程度 の技術 で あって も、心の中に深 く感 じ なが らも未確定の 目標 を もって描 き始 め、キ ャン バ スに現れ る予期 しない色 や形 に応 じてた えず絵 を修正 し、最終 的には描 き始 めた時 とはおそ らく 似 て も似つ かない作 品 を描 いて終 る」 38事前決定 された "正解"の頑 なな徹底 や保持ではな く、臨 機応変 に行動 を変化 させ学習 を繰 り返 す ことが、 独創性や創造性豊 かな作 品創作 の肝 になる。 同 じよ うに戦 略論に おいて その本 質 を作 品創 作 の 隠 職 に よ って 明 らか に して い るの が、 ミ ンツバ ー グ の 戦 略 ク ラ フ テ ィ ング論 (crafting strategy)で ある。 これ は「行動 が思考 を触 発 し、 一つ の戦 略 が創 発

3

9

され る戦 略 で あ る。 行 動 を 重視 し、行動 か ら戦略策定への イ ンス ピレーシ ョ ンが湧 き、戦略が よ り現場 と一体化 した もの とし て、洗練 され、絞 り込 まれ、現場 のパ ワーになる。 「形成 して い くプ ロセス と実行 プ ロセスが学習 を 通 じて融合 し、 その結果、独創 的な戦略へ とだん だん と発展 してい く」 40ので ある。 これ に関連 して ワイクは、学習 によってつ なが れ ることで、戦略策定 と組織行動 が、 よ り生 きた もの にな る過程 を次の よ うにい う。 「部下 た ちは よ く道 を見失 うものだ し、 リーダーです らどこへ 行 くべ きか確 と知 って い るわ けで は ない。 リー ダーが知 ってい ることとい えば、 困難 に直面 した とき手 に持 ってい る計画 とか地図では脱 出す るの

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10 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14号 2010年3月 に十分ではない とい うことである。 この よ うな状 況 に直面 した とき、 リーダーの なすべ きことは、 部下 に自信 を植 えつ け、何 らかのおおまかな方 向 感覚で部下 を動か し、彼 らが 自分 たちのいた場所 を推定 し、 い まどこにいるのか、 また どこへ行 き たいのかが もっ とよ くわか るように、行為 によっ て生み出 された手掛 か りに部下 たちが注意深 く目 を向 けるよ うにす ることで ある

4

1

。 西洋文明の主流 で ある科学的思考 と対立 させ る 「野生 の思考」 を提示 したの は文化入渠学者 の レ ヴ イ -ス トロースで ある42。分析 的、理性 的なエ ンジニ アに対 し、 ブ リコラル ール (器用人) によ るブ リコラージュ (器用仕事) に例 え 「野生 の思 考」 を表現す る。 ブ リコラージュでは、 あ り合 わ せの材料 を臨機応変 に流用 して、決 め られ た機能 や意味 を組 み替 えなが ら関係づ け、 そこにある秩 序 を生成 す る43。事前決定的で 目的志向 に偏重 し た結果重視思考 ではない。 ゆるやかな方 向感覚で 進み なが ら、 ある意味、何 が出て くるか分 か らな い ドキ ドキ感、わ くわ く感 を楽 しみ、戦略策定 と 組織行動の相互作用のなかで学習 してい くので あ る。い うなれば、学習 が楽 しい、"学"が "莱" に、 学習が "楽習" になってい る状態で ある。 3.2 楽 しさに基 づ い た経営管理 モデルの ダイナ ミズム 本稿でい う楽 しさとは先述の通 り、徹底 してや り切 ることか ら生 まれいず る充実感、い きがいの ことで あ り、 自己成長 と周 囲への貢献 を包含す る 概念 で あ り、enjoyingと表現す るのが適 当 ともい えるダイナ ミズ ムで ある。 その、楽 しさに基づ い た経営管理モデル を検討す る議論 を重ねて きた。 モデル を導 出す る うえでのポ イ ン トが以下3つ あ ると考 える。 ● 戦 略の策定 (planning) と実施 と しての組 織行 動 (doing) が フ ィー ドバ ックル ープ で結ばれてい る。策定者 と実行者 が分離せ ず、相互 に作用 し合 い戦略 を洗練化 してい くとい う考 え方で ある。 ● 戦 略 を、 策 定 と実 行 の 両 者 が学 習 に よ り融 合 され た 中 で、 徐 々 に発 展、 開 発 (developing) され て い く動 的 な過程 と捉 える。学習 が楽 しさを誘発 してい る。 ● 存 在 (being) その もの を問 う経営理念 と 戦略策定 と組織行動 もフィー ドバ ックル ー プで結 ばれてい る。経営理念 が、単 なるお 題 目で はな く、 日々の意思決定や行動の指 針 として影響 を与 えてい る状態で ある。 何 が出て くるかわか らない、 ワクワク感や ドキ ドキ感、 そ して、 そ こで何 か しらを作 り上 げてい く過程 が、学習 その もので あ り、楽 しさを誘発 し てい る。つ ま りゴールが予期で きない よ うな混沌 か らスター トし、混沌 を動的に繰 り返 しなが ら一 定の秩序形成 の機会 を模索す るよ うな進化型経営 が期待 で きる。 なお、順番 につ いてで あるが、伝統 的な経営学 では、以下 の よ うになる。 ① ② ③ 経営理念 定 動 策 行 略 織 戦 組 しか し、 このモデルで は以下の よ うな順番 も考 え られ る。 ① 経営理念 (む 組織行動 ③ 戦略策定 経営理念 をもとに、何 か しら動 き始 め、次第 に 戦略が形作 られて くるパ ター ンで ある。 さらに、つ ぎの よ うな順番 も可能で ある。 ① ⑦ ① 動 定 行 策 織 略 組 戦 経営理念 集 まったメ ンバ ーが、 まず動 き始 め戦略が形成 され、 その意味や意義、企業 としての未来像や あ るべ き姿 を後付 けでつ くってい くパ ター ンで ある。 いずれ もダ イナ ミズ ム とい う点で共通 してい る。 (図2参照) このモデル につ いて、旭 山動物公園 を例 に考 え てみ よ う。 「週 間 ダ イヤ モ ン ド」 (2006年 6月24日号 ) の 実施 す る2004年 の顧客満足度総合 ランキ ングで、

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楽 しさに基づいた経営管理モデルの一考察 11 図2 楽 しさに基 づいた経営管理 モデル (筆者作成) 東京 デ ィズニ ー リゾー ト、ザ ・リッツカール トン 大 阪 をお さえ、見事

1

位 にな った、人 口

3

6

万 人、 決 して良い立地 とはい えない、北海道旭川市 にあ るユニ -クな施設で あるO 同 園で は、 動物 園 の持つ使 命 を全 うす るた め に、 「伝 えるのは生命 の輝 き」とい うテーゼが示 さ れて い る。旭 山動物 園 には、珍獣 はい ない。 「あ りふれ た動物 で あって も、 その魅力 を独 自の展示 方法で伝 え、 その背後 にある自然界 のすぼ らしさ まで思い を馳せて もらうD それがわれわれの使命 だ。」と、動物 の単 な る「姿形 の展示」か ら特徴 的 な「行動展示」へ と見せ方 に対 す るパ ラダイム転換 を図 った。 「行動展 示」は、使 命 で ある「伝 えるの は生命の輝 き」と直結 してい る。 その使命 を体現 すべ く、 「単 に飼育 が うまいだ けのプ ロはい らないC 動物 の魅 力 を伝 え る」こと を、 メ ンバ ーの組織行動の中心 に据 えた。 そ して、 トラや ライオ ンな どの生息環境 に近づ けた放飼場 が特徴 の もうじゅう館、水 中を泳 ぎ回 るペ ンギ ン を水 中か ら見 る こ とがで きるペ ん ぎん館、 ホ ッ キ ョクグマ を目の前で見 ることがで きる半球 ドー ムの あるほっきょくぐま館 など、 メ ンバ ーが智恵 (海老津他

1

9

9

9

)

を出 し合 って考 え、独 自の アイ デ ィアがた くさん盛 り込 まれた展示施設の建設 を 軽 営理念

えるの は

生命の浸き

図2 楽 しさに基 づいた経営管理 モデル (旭 山動物園の例) (「週刊 ダイヤモ ン ド」2006年6月24日号 をもとに筆者作成)

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12 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14号 2010年3月 進 め た。 結果、2005年 には黒字 を達成 した。 公 立動物 園では例外 的に収益 もあげることがで きて い る。 (図3参照) 先述の よ うに、順番 は行動が先行 して も構 わな い。例 えば、次 の よ うに も見 て とれ よ う。 まず、 予算の制約上、珍獣 が高価で購入で きない。 その 中で動物 の行動 を見せ ることが試 され、顧客の支 持 を受 ける。顧客 の反応 か ら方 向性の正 しさにつ いて一定の手応 えを感 じ、更 なる打 ち手 を考 える。 その過程で色 々なアイデ ィアが浮 かび、実現 され、 反省 され、改 良 され学習が進んだ。やがて 「行動 展示」 とい うコンセプ トに結実 し、戦略 に自信 が もた らされ、洗練 されていった。併せて経営理念 が、戦略策定や組織行動に さらなる意味や意義 を 付加 し、仕事 に全体観 を与 えた。 以上、考察 の基礎 になる経営管理モデル につ い て、 よ り統合 的アプローチ を目指 し戦略マネジメ ン トの観 点か ら検討 を進めた。結果 として、内容 学派 と過程学派 を相互補完的に捉 えた、動的なモ デル を導 出 した。 このモデル に学習 が誘 発す る、 楽 しさの要素 を強調す ることで よ りマネジメ ン ト が生 きた もの となるとい う発見が あった。 プ リコ ジ ンは、 「古典 的 な科学 は、安定性、永遠性、万 能性 を重視 しま した。 しか しその報酬 は、二元論 の出現 と、 自然か らの人間の孤立で した。新 しい 科学 は、 はかな さと、 リスクと、 多元性 を重視 し ます」 44とい う。混沌 か ら出発 し、学習過程 か ら 生 まれ る楽 しさに基づいた経営管理モデルの意味 は大 きい と考 える。楽 しさに基づいた経営管理 モ デル は、経 営理念、戦略策定、組織行動 の3つの 要素で構成 され る。引 き続 き、本稿では経営理念 につ いて取 り上 げ論 を進 め る。

4.

経営理念の浸透

4.1 経営理念の重要性 と二元論 か らの脱皮 従来か ら経営理念45の重要性 を説 く経営者 は多 い。質の異 なる変化 が加速化、 ます ます社会 ・経 済的状況 の不確実性 が増加 してい る現在、企業 に とっての よ りどころ、 "ぶれ ない"思考 としての 経営理念の重要性 が、一層増 してい るよ うに見受 け られ る。 筆者 は2005年 か ら2008年 にか け、3社46の経 営 理念 に関す る助言業務 を行 った。売上の急激 な減 少、法改正 による市場環境 の急変、次 なる飛躍の ための新規 ビジネスの立 ち上 げとそれぞれの企業 の抱 える状況や課題 は違 っていた。 しか し変化の 時期 に、 自律 した個人 がまとま り協働す る組織 に したい とい う思い。経営理念 を、時代 や発展段階 に合 致 した、 メ ンバ ーの意欲 をか きたて るエネ ル ギーを持 ってい るものに したい とい う危機感 は共 通 していた。 その中で特 に主題 となったのが、浸 透 に関す ることで ある。 ここでい う浸透 とは経営 理念 が単 なる "お題 目" だった り、経営幹部 など 一部の人 だけの ものではな く、全社 的に共有 され 日々実践 され、経営 になにか しら貢献す ることで ある。本稿 では、 この浸透への取 り組みにおいて 何 が要点 になるのか検討す ることを通 じて、楽 し さに基づ いた経営管理モデル における、経営理念 につ いて考察 したい 。 理念研究 のル ーツは、ギ リシア哲学者 プラ トン の イデ ア47論 で あろ う48。変 化 の ない真 の世界 が 存在す るとい う二元論 か ら始 ま り、 ドイツ古典哲 学 に理念 (Idee)や理想 (Ideal)として継承 され る。 例 えばカ ン トは理念 を不完全で限界 だ らけの人間 が、 その人 間性 の完全 な実現 をめ ざしていつか到 達すべ き場 とす る。 その後ハ イデカ」 ま、人間に つ いては、 イデアとい うもの も本質 とい うもの も 想定で きない と、動詞の よ うに機 能す る もの49っ まり、未来永劫不動の ものではな く動的な変化 と して捉 え、二元論 か らの脱皮 を試みてい る。 一方経営学 においては、経営理念 に関す る現代 の考 え方の基本 は、 ドラッカーのマネジメン ト概 念 に基づ く50。 ドラ ッカ-は 「成功 を収 めてい る 企業の成功 は、 『われわれの事業 は何 か』 を問い、 その問いに対す る答 えを考 え、明確 にす ることに よって もた らされてい る」 と指摘す る。加 えて、 「われわれの事業 は何 になるか、何で あるべ きか」 も併せ て問 うことが必要 で あるとす る51。つ ま り、 経営理念 とは自社 の存在理 由および未来像 に対す

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楽 しさに基づいた経営管理モデルの一考察 13 る問い掛 けへの表明であり、企業の重要 な出発点 であるといえよう。 4.2 経営理念の構成要素 と今 回再構成 したモデ ノレ 次に経営理念の構成要素 としてどのようなもの が必要か検討 したい。基本理念 に基づ くマネジメ ン トの有効性 を論証 し多 くの影響 を与 えた、 コリ ンズ、ポラス (2006)に従 い整理す ることとす る。 コ リンズ、ポ ラスは、「ビジ ョンとは、守 るべ き核心は何か、 どのような未来に向けて湛進すべ きかを指 し示す ものである」 とした うえで、経営 理念 を 「基本理念」 と 「目指すべ き未来」の

2

つ に分け、 さらにそれぞれ を2つの要素に分ける。 「基本理念」とはその企業 が何 を守 り、何 の た めに存在 してい るか を表 わ し、「目指すべ き未来 」とは何 を達成 し、何 を創造 したいのか、 どの よ うな存在 にな りたいか を示 した もので ある

「基 本理念」のひ とつめの柱 は「価値観」である。「価値 観」とは、 「永遠 に失 われ ることの ない組織 の魂 で あ り、時代 を超 えた生存原則」である。ふたつ めの柱 は「企業 日的」で ある。 これ は、「企業の存 在理 由その もので あ り、精神 を表 した もの」で あ る

O

「目指すべ き未来」も2つ に分 け られ るolO年 後、30年先 を見据 えた「遠大 な 目標」と目標 を達 成 した後 についての「鮮やかな未来像」である。 そ して、興味深いのは、「基本理念」は発見す る ものであ り、 「目指すべ き未来」を定めるのは創造 的営みだとす ることである。つ まり「基本理念」と は、 もともとその企業 に埋め込 まれた信念であり "深化" させ るものであり、「目指すべ き未来」は、 これか らどうしたいか、"進化"の姿 を描 き出す もの といえよう。 この経営理念の フレームワークは、数多 くの調 査 を経た、洗練 された ものである。 しか し、経営 理念に関わるプロジェク トを進める上でクライア ン ト企業 の メ ンバ ーか ら、異 口同音 に2つの要望 が出た。ひ とつは策定の後の浸透、共有の段階 を 考 えたときもう少 し分か りやすい ものにで きない か とい うことで あり、ふたつめは再構築 に取 り組 む企業か らは、不変性に拘 りす ぎてないか とい う ことである。 そこで、 メンバ ーと議論 を重ね、再 構成 を加 えることとした。 前述の通 り、 コ リンズ、ポラスは、経営理念 に ついて4つ の構成要素 を示 した。 その うち 「遠大 な 目標」 は概念的重 な りが多い 「未来像」の中で 語 るここと した。つ ま り「未来像」、 「企業 目的」、 「価値観」の3要素 を狭義の経営理念 と した。端 的 にい えば、何者 にな りた くて (未来像)、何 のた めに (企業 目的)、 どう動 くか (価値槻) を問 う ことを経営理念の構成要素 とした。 併せて、必要 に応 じて「価値観」をより具体化 し た「行動指針」を加 え、狭義 の経 営理念 (3要素) を下支 えす る形 と した。狭義 の経営理念 に「行動 指針」を加 えて広義の経営理念 としたO (図4参照) このモデル を用 い ることで、3つ の メ リッ トが生 まれた。 ① 不変性 に加 え可変性の観点 を導入で きる。 (む 経営理念 をよ りシンプル に分か りやす く捉 えることがで る。 (む 経営理念 と戦略の策定 と実行 をよ り近い も のにで きる。 4.3 経営理念策定、浸透プロジェク トのステ ップ プロジェク トには半年 か ら

8

カ 月が要 され

、9

広義の杜嘗理念(3要素+ 1要素) 行 動指針 PrincIPle 図4今回使用した経営理念モデル (筆者作成)

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14 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14号 2010年3月 つのステ ップが踏 まれた。具体 的には以下の通 り で ある。 (ヨ メ ンバ ーの決定 いずれの企業 において も時限的プロジェク ト 方式 をとった。 メ ンバ ーの選定 は、 それぞれ の企業 の事情 に合 わせ、手上 げ式 と指名式双 方が あったが、や る気 を重視 した点は共通 し てい る52。 (む 経営理念 につ いての理解促進 そ もそ も経営理念 とは何 か、 なぜ大切 か を学 ぶ とともに、 自分が気 になる会社の経営理念 を持 ち寄 り、魅 かれ理 由や他社の取 り組み を 共有す ることで、経営理念 に対す る感度 を高 めた。 ① 自分 自身の価値観 内省 これはそ もそ も会社 の経営理念 を考 える上で、 自分 自身の理念 がないよ うではまずいだろう とい うことで行 った。 自分 自身の大切 に して いる価値観 に改 めて触れ ることの効果 は予想 を超 えて大 きかった。 この ことで、経営理念 の大切 さを実感 し、取 り組みに対す る思い を 深 め ることがで きた。経営理念 とい う組織 の もの を、個人 に引 き寄せ て考 える "再意 味53 化"の出発点 になった。 ④ 社員への イ ンタビュー実施 「自社 らしさとは何 か」記憶 に残 る逸 話 を集 めた。 ここで集 まった言葉や物語が、経営理 念 の言葉 の基 とな り、重要 な ヒン トを与 える ことに もなった。 この過程 は個人 と組織 をつ な ぐことに効果 的で あ り、 メ ンバ ーの "再意 味化"が促進 され、 メ ンバ ー以外 に も "再意 味化"の きっかけを与 えた。物語の力 は大 き く、深 く共有化の萌芽 も見受 け られた。 (9 経営理念 の青写真作成 インタビューで集 め られた言葉 を精査 し、先 にふれたモデル にあてはめ ることで整理 した。 (む 青写真 につ いて ヒア リング実施 プロジェク トメ ンバ ーだけでな く、多 くの人 が関わ ることを 目指 し、当事者意識 を醸成す る助 けとなった。 ⑦ 経営理念 を完成 メ ンバ ーに社長 が入 っていない会社 は、 ここ で社長へのプ レゼ ンを行 ない、必要 とあれば 微調整 し完成 させ た。 (釘 経営理念 発表 と共有 のための ワークシ ョッ プ プロジェク トメンバ ー、 もしくは トソプか ら お披露 目の後、経営理念へ の思 いが語 られ、 社員 それぞれが、 自分の もの とす るための対 話54や会話55と内省 が行 われ た560経営理念 と 自分 のつ なが りを考 える大切 な機会 となった。 二項対立 の"or"の思考ではな く、統合 や融合、 共有 な ど "and"の思考 が重要 で あ る気付 き があった。経営理念 を自分 に引 き寄せ る "再 意味化" か ら皆の ものになる共有化へ移 りつ つ あるのが観察 された。併せて 日々実践のた めの今後の具体策や課題 につ いて も話 し合 っ た。 (9 プロジェク ト全体 の評価 、今後の展 開決定 出 された具体策 につ いて優先順位 を決 め、実 行 に移 した。具体 的には、毎 日の朝礼 に経営 理念 に基づ き決 めた行動指針 につ いて話 し合 う時間 をとる。採用の際、経営理念 に共感で きるか どうかを重要 な項 目にす る。研修 に経 営理念 に関す るプログ ラムを入 るなど重層的 な取 り組み を続 けてい る。 以上 が プ ロ ジ ェク トの全 体像 で あ る。 (図5参 照) 4.4 深い問い掛 けと振 り返 りの重要性 ドラ ッカーは、先述の よ うに事業 について何 か、 何 にな るか、何 で あるべ きか とい う3つの問い掛 けを重要 とした。今 回のプロジェク ト中において も問い掛 けの重要性 を実感 す る場面 が多 くあった。 問い掛 け と振 り返 りが "再意味化" を促 し、浸透 の原動力 となったのである。特 に効果的だった問 い掛 けは以下の もので あった。 ● 自分 に引 き寄せ る問い掛 け 「経営理念 の作 り手 は どんな思 いや夢 を込 めたの

か」

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楽 しさに基づいた経営管理モデルの一考察 15 (診自己内省 ④ 自社らしさ発見 .発 掘 (物語収集) ⑥ 意見ヒアリング @ -2ワークショップ形式による対話 再意味化Ⅰ (プロジェクト内の振り返り) -(Dメンバ ー選定 ② 経営理 念理解 ⑤ 青写真 作成 ⑦ 文言まとめ ⑧-1プロジェクト メンバーからの発 伝 再意 味化

(日々 の振り返り) プロジェクト 図5経営理念策定、浸透プロジェクト過程 (筆者作成)

○ とい う言 葉 を自分 な りに言 い換 える とどん な表 現 にな るか」 「10年 間や り続 けた ら自分 と組織 に どんな変化 が あるか」 「まった く実行 しなか った らど うな るか」 ●実践 を ともなった 日々の振 り返 りを促す 問い掛 け

○ を体 現 す る具体 的 な行動 と して今 までや っ て きた ことは何 か」 「これか らや ってみ たい ことは何 か」 「顧客 の立場 で考 えた とき、何 を した らいいか」 ●大 きな節での振 り返 りを促 す問い掛 け 「そ もそ もこの経営理念 は莫 なのか」 「や りきることで幸せ になれ るか」 「時代 とずれてい ないか

「手段 が 目的化 していないか」 今 回の助 言 業 務 で は、従 来 あ りが ちで あ っ た トップ もしくは一部 の プ ロジェク トメ ンバ ーが策 定、発信 し、現場へ落 とされ るとい う直線 的 な トッ プダウ ンアプ ロ-チだけで な く、策定段階、現場 での実践段 階、 そ して節 目の段階 にお ける振 り返 りに よ る、3つ の "再 意 味化 " の フ イ- ドバ ック ル ープが組 み込 まれ ることになった。 その ことで、 現場 経営理念 が磨 かれ、 エ ネル ギ ーが吹 き込 まれ、経 営理念 自体 が 目的で あるとともに、経営 をよ り良 くしてい く有効 な手段 と して生 か されてい る状態 になった。つ ま り "再意 味化"す ることで共有化 に進み結果 として浸透 の道筋 が見 えた。浸透 は結 果 で あ り、浸透 が 目的化 す ると強制 にな るとい う 気付 き も重要で あった。 プ ロジェク トメ ンバ ー以 外 か らも 「肺 に落 ちた

「腹 に沌 み た」 な どの感 想 が あった。 また、 ステ ップ を通 じて、 プ ロジェ ク トメ ンバ ーの成長 が図れ るとい う副産物 もまの あた りに した。 マネジメ ン トに対 す る貢献 が多 く 観察 された。

5.

さい ごに 本稿 で は、仕 事 を楽 しむ人 と組織 の実現 につ い て検討 して きた。楽 しさの概念 を整理 し、定義 し た後、考察 の基礎 にな る楽 しさに基づ い た経営管 理 モデル を導 出、 その中で も経営理念 を取 り上 げ、 浸透 につ いて議論 を進 めて きた。 フローの生成 条 件、楽 しさの定義 の観 点 か ら、経営管理 モデル を 検 討す ることで、仕事 を楽 しむ組織 のポ イ ン トが 見 えて きた。経 営管 理 の土 台 と して次 の4つ が あ

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16 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14号 2010年 3月 げ らるO ① 楽 しさ、わ くわ く感 を大切 にす る 論理 に偏 り過 ぎることな く、直感や感情 に も 触 れ、 内発的な動機 を重視す る。遊び心や想 像力など "しなやか さ"が大切 だ ろう57。 また、 例 え外 発的に与 え られた仕事で あって も、楽 しんで しまうくらいの "したたか さ" も必要 で ある。 ② 今 に集 中す る Csikszentmihalyiは 「わず か な集 中の緩 み が フロー を消 して しま う」 58こ とを指摘 す る。 それほ ど集 中は各 メ ンバ ー と組織 に対 して微 細 な レベル まで要求 され る"基礎体力"である。 (彰 起 こったで きごとを学習の糧 と捉 える 特 に失敗 をどの ように受 けとめ るかが重要で あ る。 目の前 の売 上 げや利 益 にば か りこだ わって、失敗 を許 さない風土 は楽 しさを生 ま ない。失敗 しない行動 は、指示待 ちや前例踏 襲の挑戦 しない風土 を醸成 して しま う。失敗 の原 因は冷静 に分析す るも、次 にどう生 かす かに注力す る。失敗 を挑戦 してい る証 として 奨励す るくらいでち ょうど良いのか もしれ な

い。

(彰 問い掛 け、内省、再意味化のサ イクル をま わす 相手や場 に対 して効果的な問い掛 け とは何 か を考 え、互 いに問い掛 け合 う。問い掛 け られ ることで、内省が始 まり、思考 を深 め合 うこ とがで きる。人間関係の向上 に も寄与す る。 また、経営理念 において は、以下 の4つ がはず せ ない重要 ポイン トで ある。 ・(∋ 個 人の価値観 と経営理念 の重 な りの発見、 確認す る まずは個人 としての価値観 を内省、探求 し続 けることが出発点である。 自分の大切 に して い る考 え方や使命 を問い直す ことで、個人 と 組織双方 に とって基軸 を持つ ことの重要性が 実感で きる。 また個人 と組織 の価値観 の根本 的な一致点につ いて確認す ることで、マネジ メン トパ ラダイムが、強制ではな く、共鳴 と なる。 (参 事業の社会的意義、貢献 につ いて共感、共 有す る 経営理念 がある程度の幅広 い解釈 を許容す る 抽象度 をもっ ことO併せ てメ ンバ ーの誇 りと なる崇高 な精神性 を兼 ね備 えてい ることで あ る。心が揺 さぶ られ る、や る気が引 き出 され るよ うな言葉 とそれ を想起 させ る物語が重要 で ある。 ③ メ ンバ ーが経営の全体観 を捉 える 自分 が協働 の どこに位置す るのか を知 り、仕 事 に納得感 を持 って取 り組 め る。 さらに大 き な取組の一役 を担 うかけが えの ない個 で ある ことの相互 自覚 に も発展す る。 ④ 日々の行動 レベルへ落 としこみ実践す る 経営理念 自体 は抽象度 が高い。 それ を 日常の 意思決定や行動の基準 とす るために、 ある程 度 の具 体 性 が必要 で あ る。 そ して実践 す る こ とで行 動 や 思考 に対 して、失敗 や成 功 の フ ィー ドバ ックがあるo フィー ドバ ックがあ ることで学習 が進む。 その際、問い掛 けが原 動力 とな ることも忘れてはな らない。 以上楽 しさに基 づ いた経営管理の土 台 と して、 また経営理念 と して それ ぞれ4つ のポイ ン トが抽 出 され た。今後 は経営管理 モデル の要素 の うち、 戦略策定、組織行動 につ いて検討 を続 けたい。経 営理念、戦略策定、組織行動 それぞれ を総合 的に 考察す ることで、 よ り確 かな応用が期待で きると 考 えてい る。 参考文献

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ハ ーバ ー ド・ビジネス ・レビュー 第31巻第

1

1号,ダイヤモ ン ド社. 鈴木大拙ユ 藤澄子訳[1987

1

『禅』筑摩書房. 田里亦無【1973]『道元禅入門』産業能率大学出版部 デイビッ ト,F.R,大柳正子訳【2000

『戦略的マネジ メ ン ト 21世紀 の マ ネ ジメ ン トモデル を構 築す る』 ピアソン ・エデュケーシ ョン. ドう ッヵ- ,P.F,上 田惇生訳 【2001]『マネジメ ン ト 課題、責任、実践』 ダイヤモ ン ド社. 中山元[2000]『思考の用語辞典』筑摩書房. 日本総合研究所編t1993

『生命論パ ラダイムの時 代』 ダイヤモ ン ド社. 虞松 渉,子安宣邦他編【1998]『岩波 思想 ・哲学 事典』岩波書店. 藤原稜三【1993

『守破離の思想』ベースボールマ ガジン. フォレッ ト,M.P,米 田清貴,三戸公訳[1972

『組織 行動の原理』未来社. プ リコジ ン,I.,スタンジュール,I.,伏見康治,伏見譲, 松枝秀明訳[1987]『混沌 か らの秩序』 みすず 書房. マ-チ,J.,G.,オル セ ン,J.P.遠 田雄志,ア リソン ・ユ ング訳[1986]『組織 におけるあいまい さと決 定』有斐閣. 三戸公【2002

『管理 とは何 か テイラー ,フォレッ トノヤーナー ド,ドラッカーを超 えて』文具堂. ミン ツバ ー グ,H.,編 集 部 訳[2003]「戦 略 ク ラ フ テ ィ ング

」『

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・ミ ン ツバ ー グ の 経 営 論

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ハ ーバ ー ド ・ビ ジ ネ ス ・レ ビュー ,第28巻第1号,ダイヤモ ン ド社. 山倉健嗣【2007]『新 しい戦略マネジメン トー戦略 ・ 組織 ・組織間関係』 同文舘出版. レヴ イ -ス トロー ス,Cリ大橋 保 夫訳 [1976]『野生 の思考』みすず書房. ローテ ィ,R.,野家啓一監訳【1993

『哲学 と自然 の 鏡』産業図書. ワイ ク,E.,遠 田雄 志,西 本 直 人 訳[2001]『セ ンス メ-キ ング イ ン オーガニゼーシ ョンズ

(16)

18 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14号 2010年3月 文具堂. 脚注 1 Csikszentmihalyil1990】p.4 (今 村 浩 明 訳 【199615ページ) 2 今村、浅川編、浅川【2003】210ページ 3 Csikszent血halyi[1990】p.41 (今 村 浩 明 訳 [1996]52ページ) 4 Csikszentmihalyi【1990]p.42 (今 村 浩 明 訳 【1996]54ペ ージ) 5 上野 【19991125ページ 6 ArgyriS,Schonel1978] 7 今村、浅川編、チクセ ン トミハ イ【2003】12ペー ジ 8 Csikszentmihalyil1990】p.67 (今 村 浩 明 訳 【1996】85-6ページ) 9 Csikszentmihalyi【1990】p.24 (今 村 浩 明 訳 [1996】31ページ) 10 Csikszentmmalyi【1990】p.p.209-213 (今村 浩明訳[1996】261-5ページ) ll Csikszentmihalyi[1990】p.62 (今 村 浩 明 訳 【1996】49ページ) 12 Csikszentmihalyil19901p.89 (今 村 浩 明 訳 【1996]113ページ) 13 Csikszentmihalyi【1990】p.84-6 (今村 浩 明訳 【1996]107-9ページ) 14 Csikszentmihalyi[1990]p.45 (今 村 浩 明 訳 【1996158ページ) 15 Csikszentmihalyi【19901p.46 (今 村 浩 明 訳 【1996】59ページ) 16 禅 には代表 的な2大宗派 が あるが、本稿 で は 曹洞宗 を道元及び田里、臨済宗 を鈴木 に従 う。 17 フロー理論 と、 日本文化 との親和性 は高 い。 チクセ ン トミハ イは、 その著 『フロー体験 喜びの現象学』 日本語版への序文で、 日本文 化 とフロー理論 との葦似性 があることを指摘 した後、 「日本 の文化 は、対 象へ の注意 を集 中す る関わ り方 を達成 す るのに役立つ多 くの 活動 を生 み出 して きた。剣道や弓道か ら禅 の 修行 まで、 また茶 の礼法 か ら今 もなお生彩 を 放つ伝統 的芸術 に至 るまで、 日本人 は、世界 中の人 々がそこか ら多 くを学び、生活の質 を 高めて きた身体的精神的な注意集 中の技法 を 発展 させて きた」と述べ る。 18 Csikszentmihalyi[1990]p.3 (今 村 浩 明 訳 [199614ページ) 19 田里 [1973】まえが きviペ ージ 20 鈴木 【1987]65ページ 21 鈴木 [1987】14ページ 22 鈴木 [1987157ページ 23 田里 [1973]まえが きviページ 24 懐葬 『正 法眼蔵 随 聞記』 水 野弥穂 子訳,筑摩 書房,1992年,411ペ ージ,水野による. 25 田里 [1973】135-136ページ 26 田里 【19731102ページ 27 有機体 の哲学 の雄Wh iteheadによれば、創造 性 とは、 「新 しさ (novelty)の原理」で ある。 「選言 (disjunction)か ら達吉 (conjunction) への前進」で あ り 「多は一 にな り、一 によっ て増加 され る」 (p.21) とも表 現す る。新 し さを加 え、前進 してい く動的な過程 その もの が創造 なので ある。 また、海老滞他【1999]は、 「漢字 の 『創』 の文字 は刀 をあ らわす立刀 を ふ くんでお り、刀で木 を削 って形造 るとい う 意味 を持つ。す なわち量的な増加のみではな く、同時に質的に異 なるものへの変容 も表 し て い る

.

」 (44ペ ー ジ) こ とを指摘 す る. 以 上 か ら、変 態 (transformation) を遂 げ続 け てい ることに創造の本質 があるとい えよ う。 28 デイビッ ド、R.、大柳正子訳[200015ページ 29 山倉健嗣【2007】1ページ 30 金井等宏,高橋潔【2004]87-8ページ 31 金井毒宏,高橋潔【2004】90ページ 32 岡田正大 【2009】23ページ 33 奥村昭博 【198913516ページ 34 奥村昭博 [1989]38-40ページ 35 ミンツバ ーグ、H.、DAIAMONDハ -バ - ド・ ビジネス ・レビュー編集部訳【2003】78ページ 36 海老滞栄一 【1999】153ページ 37 ミンツバ ーグ、H.,DAIAMONDハ ーバ ー ド ・

参照

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