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土木学会論文集 G( 環境 ),Vol.72,No.8,III_387-III_395,2016. 水利用実態の現地調査に基づいたベトナム国ダナン市の生活用水の利用構造分析 田中周平 1 今田啓介 2 濱島健太朗 3 Tran Van QUANG 4 藤井滋穂 5 1 正会員京都大学准教授地球環境学

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1

水利用実態の現地調査に基づいた

ベトナム国ダナン市の生活用水の利用構造分析

田中 周平

1

・今田 啓介

2

・濱島 健太朗

3

・Tran Van QUANG

4

・藤井 滋穂

5

1正会員 京都大学准教授 地球環境学堂(〒606-8501 京都市左京区吉田本町) E-mail: [email protected] 2非会員 京都大学大学院地球環境学舎修士課程(〒606-8501 京都市左京区吉田本町) E-mail: [email protected] 3非会員 京都大学大学院工学研究科修士課程(〒606-8501 京都市左京区吉田本町) E-mail: [email protected]

4非会員 ダナン工科大学准教授(54-Nguyen Luong Bang Street, Lien Chieu District, Da Nang City)

E-mail: [email protected] 5正会員 京都大学教授 地球環境学堂(〒606-8501 京都市左京区吉田本町) E-mail: [email protected] 2011~2012年にベトナム国ダナン市において308世帯の水利用実態ヒアリング調査と97世帯の水利用量 調査を行い,生活用水の利用構造を11の用途別に分析した.主な成果を以下に記す.1)用途別の水道水 利用量(中央値)は風呂39.6 L, トイレ13.2 L, 洗濯10.8 L, 皿洗い10.6 L, 料理10.5 L, 洗面5.7 L, ガーデニング 3.4 L, 床掃除3.3 L, 散水2.7 L, 飲用1.5 L, 洗車0.9 Lであり,合計102 Lであった.2)用途別の水利用量を重 回帰分析により数式化し, 2020年, 2025年, 2030年の一人一日あたり水道利用量を予測した結果, 2020年に 145 L, 2025年に161 L, 2030年には174 Lに増加することが分かった.3)収入の増加による水利用機器の変 化,家族人数の減少による料理,皿洗い等の水量増加,地下水の利用率の低下等が,水道水利用量増加の 主な要因であると考えられた.

Key Words : Water demand forecasting, Vietnam, Da Nang, Questionaire survey, Water volume survey

1. 背景および目的 ベトナム国ダナン市はインドシナ東西経済回廊の東の 拠点として近年急速に発達している.2013年時点で経済 視聴率は5.4%と高い水準にあり,GDPは1993年の約25倍 になっている等,経済成長が著しい1).急激な都市化に 伴い水需要が増大している一方で, 下水処理などの対策 が遅れており, 水環境の汚染が懸念されている.下水道 普及率は都市部で47%であるが,農村部ではほぼ0%で あり,腐敗槽と呼ばれる嫌気消化を期待した簡易な貯留 沈殿槽が主流である2) ダナン市の主な水源は東部を流れるHan川であり, Cau Do取水場で通常,取水が行われている.ただし高度 が低いため,潮位により塩水が遡上してくる時期は,さ らに上流のAn Trach取水場に取水点を移している.An Trach取水場の上流はグアンナム省であり,ダナン市に よる水源の管理が難しい3).ダナン市の部門別の水道水 供給量の経時変化を図-1に示す.2002年に42,164 m3 /日で あった供給量が2011年には118,024 m3 /日にまで急増した4). 水道事業はダナン市水道公社(Da Nang Sole Member Lim-ited Liability Water Supplying Company, 以下,DAWACO)に よって運営されている.2012年時点での供給能力は 155,000 m3/日であり,このペースで供給量が増加すれば 2016年には現在の供給量を超過することが予測された. 水需要に大きな影響を及ぼす要因のひとつは人口であ るが,家庭部門では,一人一日あたりの水利用量がさら に重要な要因となる.例えば2012年のカトマンズでの調 査結果5)では,36.9 L/人/日と報告されており,日本の平 均6)と比較して約8分の1である.タイ王国では2003年の 一人一日あたりの水道水利用量が平均120~200 L/人/日 7),インドのKanpurでは77 L/人/日,Kolkataでは116 L/人/ 日と報告されている8).このように都市の状態に伴い一 土木学会論文集G(環境),Vol.72,No.8,III_387-III_395,2016.

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人一日あたりの水利用量は大きく異なる.著者らは, 2011~2012年にダナン市の7行政区において308世帯の水 利用実態ヒアリング調査,97家庭の水利用量調査を実施 し,ダナン市における生活用水の利用構造を用途別に分 析することを本研究の主目的とした. 2. 調査および解析の方法 (1) 水利用実態ヒアリング調査 2011年10月25日~12月9日(雨期)と2012年8月2日~9 月15日(乾期)に,ダナン工科大学の協力のもとベトナ ム語に翻訳したアンケートを用い,ベトナム人学生と共 に各家庭を訪問し,聞き取り形式で計308世帯(7行政地 区×44世帯)の水利用実態に関するヒアリング調査を実 施した.調査家庭の選択では,水量メーターを複数世帯 でシェアしている家庭,水道水を商業利用している家庭, 学生や工業地帯の社員の寮などは対象外とした.アンケ ート内容の要約を表-1に示す.家族人数,高齢者割合等 の基礎情報の他,用途別の利用水源,水利用頻度,水利 用特性,水利用機器・設備,水道料金等を調査した.ま た,ダナン工科大学とともに事前調査を行い,利用用途 として,風呂,洗濯,料理,皿洗い,飲用,洗面,ガー デニング,散水,洗車(バイクを含む),床の掃除の11 項目を選定し,調査を行った. (2) 水利用量調査 水利用実態ヒアリング調査を実施した家庭のうち,水 道水を利用している家庭を対象に2012年8月2日~9月15 日に行った.調査世帯数を地区別に表-2に示す.各地区 12~15を対象とし,合計97世帯を調査した.本調査は, 水量メーターによる3~6日間の水利用量と用途別の利用 頻度の調査と用途別の水利用量の調査に分けて実施した. 水量メーターによる調査では,毎日の水量メーター値 と世帯における水利用頻度を記入するチェックシートを 作成し,初日の水量メーター値を調査後,対象住民に記 入方法を説明した.その3~6日後に調査シートを回収す ることで,データの収集を行った.調査開始後2日目に, 大部分の家庭を再度訪問し,目の前で実際に記入させる ことにより,より正確なデータを得る工夫を行った.チ ェックシートについてもベトナム語に翻訳し,現地学生 の 協 力 の も と 実 施 し た . な お , 水 量 メ ー タ ー は DAWACOによって水道水が供給されている家庭に取り 付けられていた.また,一部の家庭で貯水タンクを利用 しており,水量メーターの変動値と実際の水利用量が釣 り合わないケースも生じたため,貯水タンクに水を溜め る期間が短い家庭のみを調査対象とした. 用途別の水利用量調査の調査項目を図-2に示す.調査 開始2日目もしくはチェックシートの回収時に行った. 飲用以外の10の用途について,使用1回あたりの水利用 量を測定した.飲用水量についてはヒアリング調査結果 を利用した.水利用機器の利用については,トイレ,洗 濯について,それぞれ水槽式水洗トイレ,洗濯機を利用 する場合は,そのメーカー名,製品番号を調査し,後日, 製造元から水量情報を得た.また,洗濯機利用時の水利 用量については,ヒアリング調査で得られた洗濯1回あ 0 20 40 60 80 100 120 140 160 200 2 200 3 200 4 200 5 200 6 200 7 200 8 200 9 201 0 201 1 商業 工業 行政組織 家庭部門 供給能力 図-1 ダナン市の部門別水道水供給量推移1) 水道水供給能力 (1,000 m3/日) (1 ,0 0 0m 3/日 ) 0 50 100 0 500,000 1,000,000 2002 2004 2006 2008 2010 人口(人) 水道 水供給 量 (L /人/日) アンケート項目類別 項目 内容 基礎情報 7 家族人数、高齢者割合等 利用水源 7 水道水、地下水、雨水等 用途別水利用頻度 1 風呂、トイレ、洗濯等別 用途別水利用特性 15 風呂、トイレ、洗濯等別 水利用機器・設備 5 洗濯機種、便器型等 水質 5 基礎項目 その他 6 水道料金、収入等 表-1 アンケート内容の概要 地区 n 人口(2010年) Hai Chau 13 196,098 Thanh Khe 15 178,447 Son Tra 15 132,944 Lien Chieu 13 68,270 Ngu Hanh Son 12 136,737

Cam Le 15 92,824

Hoa Vang 14 120,698 郊外部 合計 97 926,018

都市部

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たりの洗濯物量等のデータも参考にした. その他の水利用方法については,水を溜めて利用する 場合は,溜めるための容器の容量を計測し,その容器に どの程度まで水を溜めるのか,その容器を何回用いるの か等を調査した.水を溜めずに流したまま利用する場合 は,蛇口やシャワーから出る水の単位時間当たりの流量 を計測し,1回あたりの流水時間を調査することで,利 用量を算出した.調査の対象者は本アンケートの回答者 とし,その対象者の回答をその家庭における代表値とし た.蛇口からの水の流出時間や容器にどの程度水を入れ るか等の項目については,水利用量調査の初日に調査項 目について詳細に説明し,実際に意識して水を利用して もらった翌日(もしくは調査最終日)に,本項目の調査 を実施することで,より正確な値を得る工夫を行った. (3) 水需要量の予測方法 積み上げ法と呼ばれる使用目的別分析による推計は, 家庭内水需要を構成する用途ごとに水需要量を予測し, それを積み上げることで算出する方法である.清水らの 研究9)では1404世帯を対象に世帯,個人レベルで調査を 行い,水量や行動に影響を与える世帯構成や機器の普及, 生活行動,節水意識などの要因の今後を予想することで, 精度の高い需要予測が可能であることが示された.本研 究では,用途別の水道水利用量を目的変数とし,水利用 実態調査で得られた世帯属性を含む社会的要因,利用水 源,水利用機器の保有および水利用行動などの相互相関 を調べ,取捨選択した要因を説明変数とし,重回帰分析 によって回帰した.さらに,2020年,2025年,2030年を 目標年として,将来の水利用行動を仮定して設定した説 明変数を重回帰モデルに当てはめることで,将来の水需 要量の予測を行った.次に,水道水利用率,頻度,1回 あたりの水利用量,世帯人数を,用途別の一人一日あた り水道水利用量の構成要素として考え,それらと影響要 因ごとの関係を検討した. 3. 結果および考察 3.1. 一人一日あたり水道水利用量 ダナン市における一人一日あたりの水道水利用量を11 種類の用途別に図-3に示す.各用途別の中央値の合計は 101.8 L/人/日であった.用途別では風呂の利用量が最大 であり,中央値で39.6 L/人/日であった.続いて,トイレ での利用量が大きく,中央値で13.2 L/人/日であった.そ の他,中央値が10.0 L/人/日を超えたのは,洗濯(10.8 L/ 人/日),皿洗い(10.6 L/人/日),料理(10.5 L/人/日)の 用途別 調査項目 風呂 バスタブ 容器の容量、回数 シャワー 流速、流出時間 桶 容器の容量、回数 トイレ フラッシュ式 メーカー、製品番号 注水式 容器の容量、回数 洗濯 洗濯機 メーカー、製品番号 手洗い 容器の容量、回数 皿洗い 料理 洗面 溜める 容器の容量、回数 ガーデニング 流水 流速、流出時間 床掃除 散水 洗車 図-2 水利用調査の調査項目 0.1 1 10 100 風呂 トイ レ 洗濯 皿洗い 料理 洗面 ガ ーデニ ン グ 床掃除 散水 飲用 洗車 水道水利用量( L / 人/日) 図-3 ダナン市における一人一日あたり水道水利用量 90% 75% 50% 25% 10% 非超過 確率値 (90) (88) (92) (97)(110) (98) (54) (87) (35) (85) (44) ( )はデータ数を示す 水道水 73.7% 水道水+ 地下水 3.2% 地下水22.1% 地下水+ 雨水 0.3% 雨水 0.6% 図-4 ダナン市における風呂用水源 n= 308

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3項目であった.この上位5項目で全体の83%を占めた. 全体で6番目に多かった項目は洗面であり,中央値で5.7 L/人/日であった.その他,ガーデニング(3.5 L/人/日), 床掃除(3.3 L/人/日),散水(2.3 L/人/日),飲用水(1.5 L/人/日)となり,最も利用量が少なかった項目が洗車 (0.9 L/人/日)であった. 3.2. 用途別の利用構造分析 (1) 風呂 ダナン市における風呂用の水源構成を図-4に示す.全 体の73.7%は水道水を利用していた.一方で,地下水を 風呂に利用している世帯が22.1%を占めた.また,水道 水と地下水を併用している家庭が3.2%であった.ダナ ン市では多くの家庭に地下水用の蛇口が設置されており, 併用することで水道料金の節約をしている様子が見て取 れた.また,ごく僅かではあるが,雨水,地下水+雨水 を風呂用に利用していることが明らかとなった. ダナン市における入浴方法の構成を図-5に示す.シャ ワーのみを利用する世帯が全体の53.2%を占め,バスタ ブを利用する世帯は1.6%であった.ダナン市では桶の ような容器に湯を入れ体を洗う世帯が全体の24.4%を占 めた.また,シャワーと桶を利用する世帯が20.8%を占 めた. 本調査では各世帯のシャワー水量,時間,頻度と桶の 大きさ,使用回数,湯を張る高さ等を調査し,一人一日 あたりの入浴用水道水利用量を算出した.それらのデー タを図-6に示す.a) シャワー水量は1分間に1.1 ~13.0 Lで あり,中央値は4.4 L/分であった.b) シャワー時間は0.5 ~17.5 分であり,中央値は5.0 分であった.また1日に0.3 ~3.0回シャワーを浴びていた.一方で桶を利用してい る世帯では,1.1~76.0 Lの大きさのさまざまな桶(中央 値は16.2 L)を利用していた.桶の使用回数,湯を張る 高さを掛け合わせた値をd) 桶使用量に示す.一人一日あ たり中央値で27.5 Lの水道水を使用していた.それらを 合わせてe) に入浴用水道水利用量を示す.水道水利用家 庭のみを対象とした計算では,中央値は39.6 L/人/日であ った.一方で地下水を利用している世帯を考慮して中央 値を計算すると34.6 L/人/日であった.今後,都市の発展 に伴い地下水利用者が水道水利用へ移行すると,さらに 一人一日あたりの水道水利用量が大きくなることが示唆 1.6% 53.2% 20.8% 24.4% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 図-5 ダナン市における入浴方法の構成 シャワー シャワー 桶 +桶 バス タブ n= 308 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 2 4 6 8 10 12 140 3 6 9 12 15 180 1 2 3 0 20 40 60 80 100 120 非超過 確率(%) 図-6 ダナン市における一人一日あたり入浴用水道水利用量とその算出根拠データ a) シャワー水量 (L/分) b) シャワー時間 (分) c) シャワー回数 (回/日) e) 一人一日あたり 入浴用水道水利用量 (L/人/日) 水道水 利用家 庭のみ 他水源 利用家 庭含む 0 20 40 60 80 (L/人/日) d) 桶使用量 シャワー利用 桶利用 0 30 60 90 シャ ワ ー 桶 0 100,000 200,000 300,000 400,000 500,000 600,000 700,000 シャ ワ ー 桶 水道水利用量( L /人/日) 図-7 ダナン市におけるシャワー利用と桶利用の 一人一日あたり水道水利用量と年間家庭収入 90% 75% 25% 10% 非超過 確率値 50% p= 0.030 年間家庭収入(円/年) p= 0.002 (38) (78) (24) (38) ( )はデータ数を示す

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された. ダナン市におけるシャワーのみ利用者と桶のみ利用者 の水道水利用量と年間家庭収入を図-7に示す.シャワー のみ利用者は中央値42.0 L/人/日の水道水を使用し,桶の み利用者は中央値32.1 L/人/日の使用量であり9.9 L/人/日 の差があった.両群での水道水使用量を危険率を5%と してt 検定により比較した結果,有意差が認められた(p = 0.030).また,年間家庭収入を比較した結果,シャワ ーのみ世帯で中央値270,000円/年,桶のみ世帯で中央値 210,000円/年となり,60,000円/年の差があった(p = 0.002).ダナン市では各世帯の収入が増加傾向にある ことから,今後,入浴用の水利用方法が桶からシャワー に移行する傾向にあると示唆された.また,それに伴い, 一人一日あたりの水道水利用量が増加することが示唆さ れた.なお,アンケートでは収入をカテゴリーで尋ねて おり,その中央の値を代表値として解析に用いた (1,000,000ドンを5,000円で換算). (2) トイレ ダナン市におけるトイレ用水の水源を図-8に示す.全 体の71.4%は水道水が用いられていたが,地下水も 23.1%を占めた.また,水道水と地下水を併用している 世帯が4.9%存在した.また,雨水を利用している世帯 もごくわずかであるが存在した. ダナン市におけるトイレ様式の構成を図-9に示す.全 体の69.8%は水槽式のフラッシュトイレ(流水式)であ ったが,注水式トイレも27.3%存在し,フラッシュトイ レとの併用も2.9%見られた. 本調査では各世帯のトイレ型式,大小便頻度と注水式 の場合は注水容器の大きさ,使用回数,水を張る高さ等 を調査し,一人一日あたりのトイレ用水道水利用量を算 出した.それらのデータを図-10に示す.a) 大便時の洗 い流し水量は95%以上の便器で6.0 L/回であった.b) 一日 の頻度は0.5~5.3回/日であり,中央値は1.0回/日であった. c) 小便時の洗い流し水量は90%の便器で3.0 L/回であり, d) の頻度は1.0~8.3回/日であった(中央値は3.7回/日). 注水式の容器サイズは1.0~10.0 Lであり,1回あたり3.2 回注ぐことが分かった(中央値).e) 注水式1回利用に つき,5.0 L/回の水道水を利用することが示された.そ れらを合わせて,f) に一人一日トイレ用水道水利用量を 示す.水道水利用家庭のみを対象とした計算では,中央 値は13.2 L/人/日であった.一方で地下水を利用している 世帯を考慮して中央値を計算すると11.3 L/人/日であった. 水道水 71.4% 水道水+ 地下水 4.9% 地下水 23.1% 雨水 0.6% 図-8 ダナン市におけるトイレ水源 n= 308 69.8% 2.9% 27.3% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 図-9 ダナン市におけるトイレ様式 フラッシュ 注水式 フラッシュ+注水 n= 308 0 10 20 30 40 50 非超過 確率(%) 図-10 ダナン市における一人一日あたり トイレ用水道水利用量とその算出根拠データ a) 大便時水量 (L/回) (回/日) f) 一人一日あたり トイレ用水道水利用量 (L/人/日) 水道水 利用家 庭のみ 他水源 利用家 庭含む 0 1 2 3 4 5 6 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 4 5 6 7 b) 大便頻度 2 3 4 5 6 (L/回) c) 小便時水量 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 d) 小便頻度 (回/日) フラッシュ式 0 2 4 6 8 10 e) 注水量 注水式 (L/日)

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ダナン市における流水式トイレ利用者と注水式トイレ 利用者の水道水利用量と年間家庭収入を図-11に示す. 流水式利用者は中央値15.1 L/人/日の水道水を使用し,注 水式利用者は中央値11.1 L/人/日の使用量であり4.0 L/人/ 日の差があった.両群での水道水使用量を危険率を5% としてt 検定により比較した結果,有意差が認められた (p = 0.022).また,年間家庭収入を比較した結果,流 水式使用世帯で平均値330,556円/年,注水式使用世帯で 平均値275,714円/年となり,54,841円/年の差があった(p = 0.062).ダナン市では各世帯の収入が増加傾向にある ことから,今後,トイレの形式が注水式から流水式に移 行する傾向にあると示唆された.また,それに伴い,一 人一日あたりの水道水利用量が増加することが示唆され た. (3) 洗濯,皿洗い,料理他 ダナン市における洗濯水源の内訳を図-12に示す.全 体の71.8%を水道水が占めており,地下水の利用は 22.7%,水道水との併用は4.5%であった.また,一部, 雨水(0.6%),水道水+地下水+雨水(0.3%)を使用 している世帯もあった. ダナン市における洗濯方法の構成を図-13に示す.洗 濯機を利用している世帯は,全体の44.3%に留まり, 38.8%の世帯では手洗いで洗濯が行われていた.また, 洗濯機と手洗いの併用も,全体の16.6%を占めた. 洗濯方法については,洗濯機のみで洗濯する世帯の年 間家庭収入の中央値が330,000円/年であるのに対して, 手洗いのみで洗濯する世帯では,210,000円/年であった. 両群での水道水使用量を危険率を5%としてt 検定により 比較した結果,有意差が認められた(p = 0.001).一方 で,水量については洗濯機を用いる場合と手洗いの場合 で2.4 L/人/日の差があったが統計的に有意ではなかった (p = 0.437).その他では,家族人数が増加するほど一 人一日あたりの料理水量が小さくなる傾向(p = 0.006) や,家族人数が増加するほど皿洗い水量が小さくなる傾 向(p = 0.005)が示された.また,ガーデニング用に水 道水を利用する世帯の年間家庭収入が330,000円/年であ り,行わない世帯の240,000円/年との間に有意な差がみ られた(p = 0.007).今後,ベトナムの急激な経済成長 とともに各家庭の年間収入が上昇することが予想される. その中で洗濯様式が洗濯機使用へと変わり,ガーデニン グなどにも水道水を利用する家庭が増えてくる可能性が 示唆された.また,都市の発展とともに家族人数が減少 することで,料理用水や皿洗い用水の使用量が増大する ことも考えられた. 4. 重回帰分析による水道水利用量の推定 (1) 説明変数の選定 世帯属性等,利用水源,水利用機器保有の有無,水利 用行動等について,単相関を考慮しながら説明変数を選 択し,最終的に用途別に14~17要因を選定した.社会要 因については,世帯人数,子供の割合,高齢者の割合, 所得等を選定した.その後,多重共線性について考慮す るため,相互相関表を用いて各説明変数間の関係を検討 し,関係性の強い項目はどちらかを選択することで対応 0 100,000 200,000 300,000 400,000 500,000 600,000 700,000 流水 注水 0 5 10 15 20 25 流水 注水 水道水利用量( L /人/日) 図-11 ダナン市におけるトイレ様式別の 一人一日あたり水道水利用量と年間家庭収入 90% 75% 25% 10% 非超過 確率値 50% p= 0.022 年間家庭収入(円/年) p= 0.062 ( )はデータ数を示す (42) (108) (24) (60) 水道水 71.8% 水道水+ 地下水 4.5% 地下水 22.7% 雨水 0.6% 水道水+ 地下水+ 雨水 0.3% 図-12 ダナン市における洗濯水源 n= 308 38.8% 16.6% 44.3% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 図-13 ダナン市における洗濯方法 手洗い 洗濯機 n= 308 手洗い+ 洗濯機

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した.用途別重回帰式の各変数の重相関係数を表-3に示 す.重相関係数は洗車で0.93ともっとも高く,トイレ, 散水が0.90で続いた.その他,洗濯,ガーデニングも 0.80以上であり,高い相関が得られた.用途別重回帰式 の各変数の偏回帰係数を表-4に示す.トイレの頻度1, 頻度2はそれぞれ小便,大便の頻度を示す.水道水利用 量に対して,利用頻度が大きく影響する結果となった. 風呂については,シャワーの利用による水道水利用量の 増大が影響し,洗濯については,洗濯機の利用による水 道水利用量の増大が影響することが読み取れた. (2) 実測値と推定値の関係 洗濯用の一人一日あたりの水道水利用量を例として, 実測値と推定値の関係を図-14に示す. 切片を0とした 場合,決定係数は0.58であり,関係式は実測値=1.01× 推定値となった.風呂で1.02,トイレで1.01であった. (3) 将来の水道水利用量の予測 将来の水道水利用量の予測のため2020年,2025年, 2030年のダナン市についてシナリオを設定した.概要を 表-5に示す.2011~2012年のダナン市の平均世帯人数は 4.8人であり,ハノイ市(2009年)の3.7人より大きかっ た.そこで2025年にハノイ市の平均世帯人数に近づくと 推定するシナリオを立てた.また収入については,ダナ ン市人民委員会が2020年に目標とする年収95百万ドン/年 に達すると予測した.また,洗濯機などの水利用機器は さらに普及し,飲用水については水道水からボトル水に y= 1.01 x R² = 0.58 0 10 20 30 40 0 10 20 30 40 図-14 一人一日あたり水道水利用量の 実測値と推定値の関係(洗濯) 推定値(L/人/日) 実測値(L / 人/日) トイレ 風呂 洗濯 洗面 料理 皿洗い 飲用 ガーデニング 洗車 散水 床掃除 重相関係数 0.90 0.71 0.81 0.64 0.63 0.56 0.83 0.81 0.93 0.90 0.76 重決定係数 0.81 0.50 0.65 0.41 0.40 0.32 0.68 0.66 0.87 0.80 0.58 観測数 45 45 43 45 45 45 45 31 30 21 45 表-3 用途別重回帰式の各変数の重相関 トイレ 風呂 洗濯 洗面 料理 皿洗い 飲用 ガーデニング 洗車 散水 床掃除 切片 -16.2 -56.0 40.8*** 22.4 -10.0 6.6 -1.2 -8.4 -3.9 1.0 16.9* 世帯人数 -0.6 -0.5 -1.7*** 0.0 -1.4** -1.0* 0.04 -0.4* -0.03 -0.2 -1.3*** 子供の割合 0.01 0.2 0.1 0.1 -0.01 -0.1 0.005 -0.004 -0.003 -0.01 0.01 高齢者の割合 -0.02 0.2 0.01 0.1 -0.04 -0.1 0.01 0.02 -0.02 0.1*** 0.1* 昼食内食率 -0.004 0.1 -0.03 0.02 0.04 -0.1** 0.00 0.01 0.005 0.005 -0.04 夕食内食率 0.1 0.3 -0.3*** -0.1 0.05 0.04 0.01 0.1 0.03 -0.01 -0.1 家族での外食日数 0.1 0.6 0.1 0.1 -0.1 0.1 -0.05* 0.02 -0.03 0.1** 0.1 所得 0.2 -0.03 0.3 -0.5 0.5 0.5 0.01 0.003 0.01 -0.1 0.2 水道水用蛇口数 0.1 1.1 0.1 -0.8 0.9* 0.2 0.02 0.2 -0.05 0.02 0.3 水道水+ボトル水 14.2*** 35.2** 2.4 7.2 4.2 4.5 -1.1*** 2.3 1.6* 0.1 -0.2 水道水利用 10.7** 23.8* 3.7 7.3 3.1 4.4 0.04 0.7 1.0 1.3 1.1 地下水利用 -2.6 -8.6 -6.3* -0.7 1.1 -2.8 0.3 -1.3 -0.003 -0.1 -1.2 節水意識 3.8 4.8 -2.5 -6.1* 5.5* 1.3 0.1 0.3 -0.9* -1.2* -1.9 水道水利用年 -0.1 -0.03 0.03 -1.2** -0.1 0.1 0.01 -0.04 0.1* 0.003 -0.1 利用機器等1 6.7** 11.8 5.5** -0.9 -1.3 -2.8* -1.1 -1.5 -0.2 -0.5 -0.5 利用機器等2 -0.01 0.02*** 頻度1 1.7 26.9*** 14.8*** 0.7* 8.2*** 6.8*** 4.3*** 13.2*** 2.6*** 2.7** 頻度2 2.5** ***1%有意 **5%有意 *10%有意 表-4 用途別重回帰式の各変数の偏回帰係数

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移行していくというシナリオを立てた.シナリオ分析で 用いた係数を表-6に示す.2012年の結果にこれらの係数 を掛け合わせることで,各用途別の水道水利用量を算出 した. シナリオに沿って2020年,2025年,2030年の用途別の 一人一日あたり水道水利用量を予測した結果を図-15に 示す.2012年に102 L/人/日であった総利用量が,2020年 には145 L/人/日に増加し,2025年にはさらに161 L/人/日 に,2030年には174 L/人/日に増加することが予想された. 特に用途別では,風呂,トイレ,洗濯,料理での増加量 が顕著であった.収入の増加による水利用機器の変化, 家族人数の減少による料理,皿洗い等の水量の増加など が主な要因であると考えられた.また,地下水の利用率 が下がることも,水道水の利用量を増加させる要因であ ることが分かった. 5. 結論 本研究では急激な発展により水需要が変化しているベ トナム国ダナン市において水利用実態ヒアリング調査, 水利用量調査を実施し,生活用水の利用構造を詳細に分 析した.主な成果を以下に記す. 1) 各用途別の水道水利用量(中央値)の合計は101.8 L/ 人/日であった.用途別の中央値は,風呂39.6 L/人/日, トイレ13.2 L/人/日,洗濯10.8 L/人/日,皿洗い10.6 L/ 人/日,料理10.5 L/人/日,洗面5.7 L/人/日,ガーデニ ング3.5 L/人/日,床掃除3.3 L/人/日,散水2.3 L/人/日, 飲用水1.5 L/人/日,洗車0.9 L/人/日であった. 2) シャワーのみ利用者は中央値42.0 L/人/日の水道水を 使用し,桶のみ利用者は中央値32.1 L/人/日の使用量 であり9.9 L/人/日の差があった.また,年間家庭収 入を比較した結果,シャワーのみ世帯で中央値 270,000円/年,桶のみ世帯で中央値210,000円/年とな り,60,000円/年の差があった.ダナン市では各世帯 の収入が増加傾向にあることから,今後,入浴用の 水利用方法が桶からシャワーに移行する傾向にある と示唆された.また,それに伴い,一人一日あたり の水道水利用量が増加することが示唆された. 3) 流水式トイレの利用者は中央値15.1 L/人/日の水道水 を使用し,注水式では中央値11.1 L/人/日の使用量で あり4.0 L/人/日の差があった.年間家庭収入を比較 した結果,流水式使用世帯で平均値330,556円/年, 注水式使用世帯で平均値275,714円/年となり,54,841 円/年の差があった.ダナン市では各世帯の収入が 増加傾向にあることから,今後,トイレの形式が注 水式から流水式に移行する傾向にあると示唆された. また,それに伴い,一人一日あたりの水道水利用量 が増加することが示唆された. 4) 重回帰分析とシナリオ分析による推定の結果,2012 年に102 L/人/日であった水道水利用量が,2020年に は145 L/人/日に増加し,2025年にはさらに161 L/人/ 日に,2030年には174 L/人/日に増加することが予想 された.特に用途別では,風呂,トイレ,洗濯,料 シナリオ 目標年 都市化の進展。世帯人数は減少し、高齢者の割合は微増し子供は微減すると予想。所得はダナン市 人民委員会の目標に達する。利用機器・設備の普及。ボトル水・水道水の利用が進み、地下水の利 用は減少する。各用途の頻度は増加し、水を溜める家庭が減少する。 都市化がさらに進展。世帯構成は2009年時点のハノイ市のデータに達する。所得はさらに増加する。 利用機器・設備のさらなる普及。ボトル水の利用が進み、地下水の利用は減少する。水道水の利用 はプラスマイナス0。各用途の頻度はさらに増加し、水を溜める家庭はさらに減少する。 都市化がさらに進展する。世帯人数は減少し、高齢者の割合は微増、子供の割合は微減する。利用 機器・設備の普及は維持され、バスタブの利用のみ増加する。ボトル水・水道水の利用が進み、地下 水の利用が0となる。各用途の頻度はさらに増加し、水を溜める家庭は2025年並みに留まる。 内容 シナリオ1 シナリオ2 シナリオ3 2020 2025 2030 表-5 シナリオの概要 2020年 2025年 2030年 世帯人数 0.9 0.8 0.7 子供の割合 1.0 0.9 0.7 高齢者の割合 1.1 1.2 1.5 昼食内食率 0.8 0.8 0.8 夕食内食率 0.8 0.8 0.8 家族での外食日数 1.2 1.2 1.2 所得 1.8 2 2.5 水道水用蛇口数 1.2 1.2 1.2 水道水+ボトル水 1.2 1.5 3.0 水道水利用 1.2 1.2 1.0 地下水利用 0.8 0.5 0.0 節水意識 1.2 1.2 1.2 水道水利用年 2.0 2.0 2.0 利用機器等1 1.2/0.8 1.2/0.8 1.2/0.8 利用機器等2 1.2/0.8 1.2/0.8 1.2/0.8 頻度1 1.2 1.3 1.3 頻度2 1.2 1.5 2.0 表-6 シナリオ分析で用いた係数

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理での増加量が顕著であった. 収入の増加による水利用機器の変化,家族人数の減少 による料理,皿洗い等の水量の増加などが水道水利用量 の増加の主な要因であると考えられた.また,地下水の 利用率が下がることも,水道水の利用量を増加させる要 因であることが分かった. 謝辞:本研究の一部はJST/CREST「21世紀型都市水循 環系の構築のための水再生技術の開発と評価(代表:田 中宏明教授)」として実施した.現地調査では,ダナン 工科大学Le Hoang Son氏, Diep Ngoc Khoi,氏 Chanh Roi氏他, 多くの学生,スタッフの協力を受けた.ここに謝意を表 します.

参考文献

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参照

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