理 学 療 法 学 第
22
巻 第5
号202〜 207
頁 (1995
年)報
告
実
験
的
胸
郭拘束時
に
お
け
る
運
動
に
対
す
る
生
体
反
応
*和 田 宣 子
1)多 田
智 美
2)河 野
往
子
3)島
田
幹 也
4)鈴木
めぐみ
5)有 賀 美 穂
6)木 山 喬 博
7) 要旨 呼吸器疾患 患者の運動時にお ける呼吸一
循環応 答 を調べ る目的で,
健常 者 12名の胸郭を人為的に拘束 し,
肺 活 量を 70% に拘束し た群 (VC 70% 群), 肺活量を55% に拘束し た群 (VC 55% 群 )を設定し 漸増 的運動負荷 試験を行っ た。 その結果, 拘束の程度が増 すほ ど運動持続 時間は有意に短縮し, 酸素摂 取率は安静時 及 び運 動 時において,
VC
55
% 群で有 意に減 少 し,
運 動 時の酸 素 摂 取 量 及 び/.
:wa
化 炭 素 生 産量の最大値は, 拘束に より有 意に減少し, 肺活量に対する一
回換気量の割 合が一
定 値に な ると運動 限 界に達する こ と が わ かっ た。 つ まり, 肺 実質に異常がない健常者に おいても胸郭拘束に よ り, 運動能力 や呼吸能力に大きな影響を与え る結果が得られた。 キー
ワー
ド 胸 郭拘束, 運動 限界, 呼 吸一
循環 応 口 は じ め に 呼 吸 器 疾 患 患 者の呼 吸 困 難,
特に労 作 時 呼 吸 困 難は,
同患 者の 日常 生 活 動 作を障 害 する主 要 因 子と考え られ る。 しか し, 呼吸器疾 患 患 者の運 動 時における呼 吸を中心 と し た生体反 応は,
運 動 負 荷 試 験 を 耐 え られる限 界 まで行 う事が困難である ため, 十分に解明されていない現 状で*
VitalReaction of Healthy Adults during Exercise with
the Thorax Movement Arti且cially Restricted
1)
中津 川 市 民 病 院 (〒508 岐阜 県 中 津 川市駒場1522
−
1)Nobuko Wada
,
RPT :Nakatsugawa Municipal General Hospital2)
愛 知 県 心 身 障 害 者コ ロニ
ー
Satomi Tada
,
RPT :Kobato Gakuen Aichi Prefectural Colony3)
大 同病 院
Ikuko Kawano
,
RPT :Daidoh Hospital 4)名古屋掖済会 病院Mikiya Shimada
,
RPT :Nagoya Ekisaikai Hospital5)
新 生 会 第
一
病 院Megumi Suzuki
,
RPT :Shinseikai Daiichi Hospital 6)甲州 リハ ビ リ テー
シ ョ ン病 院Miho Aruga
,
RPT :Kosyu Rehabilitation HospitaI7)
名 古 屋 大 学 医 療 技 術 短 期 大 学 部
Takahire Kiyama
,
RPT :Nagoya University College ofMedical Technology (受 付日 1993年5月20日/受 理 日 1995年 7月 29日) あ ろう。 よっ て
,
患 者の運 動 時の生 体 反 応 を予 測 す るため国 光 らD, 江口 ら 2 )に よ り健 常成 人 を対 象と した実験的肺 拘 束の研 究 が発 表されており拘 束に よ る影響と して運 動時 の呼吸数の増大,一
回換気量の低下な ど が報告されてい る。 しか し,
拘束の程度が設定さ れて お らず,
負 荷強度 も軽度か ら中等度であ り,
運動限界時の値につ い ては示 さ れて いない。 そこで,
今 回 我々は換 気 障 害の 中で も拘 束 性 換 気 障 害 患者の理学療 法を行う上で の基礎 的実験と して, 人為 的 に胸郭拘 束 障害を設定して運動 限界まで負 荷試験を行う ことに より,
運動 時の生 体の反応を呼 吸一
循環応 答を中 心に無 拘 束 時と比 較 検 討し たの で報 告 する。 尚,
拘 束の 程 度と して は,
拘束 性障害の限界に諸説あ る が,
%VC
が 70% の説にそい拘束 性障害と正常の境 界であ る70
% 群と健常 者に お け る胸郭 拘束の限界に 近 い55
% 群と を 設 定 し た。 対 象と方 法 1.
対 象 被 験者は肺疾患お よ び 心疾患の既往のない健常人12
名と し た。 内訳は男性
3
名女性9
名で年齢は20 〜22
歳 (平 均21.
1±0.
6
歳 ),
身 長 は153〜
170 cm σF
均 16LO ± 5.
7 cm),
体 重は49〜
70 kg (平 均 55.
8± 4.
9 ) で あっ た。2.
方法 〈実験 条件の設 定〉 肺 活 量 (VC ) を電 子 式スパイロ メー
ター
(日本 光 電 社 製 :MFR− 8200
) に て測 定し胸 腰 椎コル セ ッ ト (松 本義 肢製;特注)を 用いて胸 腰部を拘 束する こ と に よ り,VC
が拘束前と比較し,65
〜70
% と な る よ う に胸郭の 拡 張に制限を加え た状 態をVC
70
% 群と し,
同様に し て VC が 50〜
55% と なるように制 隈を加え た状 態 を VC 55% 群とした。
又,
拘 束を加えない状 態を対 照と し た。3.
実験方法 運動 負 荷は 自転 車エ ル ゴ メー
ター
(モナー
ク社製 :818− 7KP
) を 用い,
O Kp より始め3
分毎に 25 Kp ず っ 増 加さ せ る漸 増 的 負荷試 験に て行っ た。
回転 数は50 rpm に な る ように メ トロ ノー
ム に合わ せて運動を行い, 自転 車エ ル ゴ メー
ター
の 回 転 数を50rpm
に維 持す るこ と が不 可 能と なっ た時 点で運 動 を終 了 し,
これ を運 動 持 続 時間と した。 尚,
危 険であると判 断 さ れる自覚 症 状 が 出現 した場 合は,
運 動 を 終 了 するよ うに被 験 者に説 明 し た。 運動 時の姿勢は, 左手で自転車の エ ル ゴメー
ター
の ハ ン ドル を握り,
右上肢は体 側に た ら して血 圧計の マ ン シェ ッ トを装着し た。
そ して,
自転車エ ル ゴ メー
ター
の サ ドルの高 さ をペ ダルが 最 も低い位 置に きた と きに膝 関 節 軽 度 屈 曲位 (約 30°
)になるよ うに設 定 した。
運 動 中 は一
分ご とに収縮期血 圧 (Ps
) 拡張 期血 圧 (PD
), 心拍 数 (HR
)と呼 吸数 (RR
)を測定し,
各 負荷 中の最終 の一
分間の呼気ガスを ダ グラ スバ ッ グ方式にて採取し,
シ ョ ランダー
方 式にて分 析 した。 RR はマ スク に装 着 し た温 度セ ンサー
に て測 定し,
HR と共に モニ ター
(日本 電 気三 栄 株式 会 社製 :BIOPHYSIOGRAPH180
system ) を 用い て記録 した。
血 圧は,
標準 水 銀 血 圧 計 にて測定し た。 呼気ガスに関して は,
ダグラス バ ッ グに 採 取さ れ た呼 気ガス の 酸素分 圧, 二酸 化 炭素分 圧を そ れ ぞ れ02
ア ナ ライ ザー
(OXYGEN
ANALYZER model Lc−700
;Toray lndustries lnc.
),CO2
ア ナ ラ イ ザー
(INFRARED
GAS
ANALYZER :Yokogawa ElectricWorks
)にて測定し, 肺 換気量 (VE
)を乾 式ガス メー
タ
ー
(品 川製器製 作 所 製 :DS − 5A −T
)にてt ガス温 をアル コ
ー
ル温 度 計に て測 定 した。
そ れ らの測定値よ り分時酸素摂取量 (マ
0
、) 分時二酸化炭 素生産量 (VCOD
,
標 準 状 態 の 分 時
VE
〔V
E (Standard
Temperature,
Standard Pressure and Dry):
VEcsTpn
)〕 を 算 出 した。
さ らに以 上の測定値より
一
回換気量 (V
。) 酸素摂取 率 (VO ,/V
。)を計算し た。 尚,
運動 開始前に自転車エ ル ゴ メー
ター
上にて3
分以上の安静 状態をHR
に て確認 し,
その後の 55>間の値 を安 静 時の値 と した。
結 果 運 動持続 時 間は対照で は19.
9min ,
VC
70
% で は1Z9
min,
VC
55
% で は14.
8
min と拘束の程度に伴い 有 意 (p
〈 O.
Ol
)に短 縮 した。 また,
総 負 荷 量は対 照で は 433.
4KpKm,
VC 70%で は 347.
5 KpKm,
VC 55% で は245,
1KpKm
と有意に減少し た。HR
,RR
,P
、, P恥VE
(sTpD >,
VT,
VO2
,VCO
,,
VOz
/VE
の安 静 時にお ける各値 (表
1
)及び運動 負荷時の各 最 大 値 (表2
)にっ いて拘束に よ る変化を平 均値及び標準偏差で示し た。 ま た 運動負荷 時の最 大値到達時間も各因 子につ い て平 均 値 と標準偏差で示 し た (表3
)。 まず 安 静 時で は,
バ イ タル サ イン と呼ば れ る HR,
RR,
Ps,
PD
の値 は対 照と比 較 して拘 束 群で は有 意 (p 〈 0.
01,
p<0,
05
) に増 加 した。 加 えて拘 束の割合が増 すにっれて値 も増 加 する傾 向 を示 し た。
ま た,
換気 機能 の 因 子である †,(、T,D )はVC
55
% に お いて 有 意 (pく0.
Ol
)に高値を示し,
V
。 は拘 束群で有 意 (p<O.
01
)に 低値を示 し た が,
拘 束の程度によ る傾向は見 られなかっ た。
加 えて VO2 /VEで はVC
55
% におい て有意 (pく 0,
01) に減 少 し た。
なお,
VO2
,
VCO
,に おい て は拘束 に よ る影響は認め られな かっ た。 次に運 動 負荷 時の各 最 大 値にっ い て示 す。 HR はVC55
% で他の二条件と比較し有 意 (pく0.
05
)に低 値 を 示 した。
ま た,
RR は対 照に比 較 し,
拘 束群で は有意 (p 〈 O.
05)に高 値 を 示した が,
拘 束の程 度に よ る差は 認 め られ なかっ た。 な お, Psで は拘 束に よ る影響は認め ら れ ず,P
、 は 無 圧時において も聴診音が 認 め ら れ た た め 測 定不 可能で あ っ た。 さ ら に換気機 能に 関 して はVE
(STPD),
VT
,VO2
,
VCO2
の いずれの因 子におい て も拘 束におい て有意 (pくO,
Ol,
pく0.
05
)に低値を示し,
そ の値は拘 束の 程 度が増すに つ れて 減 少 し た。 ま たVO2
/VE
におい て も対照に比較してVC
55% で は有 意 (p<0.
05
) に低 値を示 し,
他の換気 因 子と1
司様の傾 向 と なっ た。 最大値到 達時 問に関して は,
拘束の程度の増加に伴い204
理 学 療 法 学 第22
巻第5
号 表1
安 静 時にお ける測 定 値 n=
=12
対照 VC70 % VC55 % HR (beat/min.
)RR
Ps
PD ウ、〔,T,D) ウO, †CO
, VT (f
/min.
) (mmHg ) (mmHg ) (1
) 78,
7 ± 11、
8 83.
9 ± 8,
8一
89.
7 ± 8.
618.
1
±3 .
2
24,
0
±3.
4
一
30.
0
±9.
6
lO9.
0 土10.
1
118.
6
±IO.
4ヒ
= ゴピ
._
」
121.
8
±11、
2
8
■
10 ±」
当
蠻
4376.
3
±1.
3
6.
1
±2,
0
L
と士
7.
8
±1.
5
†O
、/†、 (1) (1
) (1) 0.
20
± 0.
050,
18
:」:0 .
05
0.
35
ゴ:O.
08
0.
18± 0.
060.
16
二辷0.
06
0.
26
:±:0,
10 0.
20± 0.
040.
18
±0.
04
0.
27± 0.
05
ま
。
_
」
14.
2 ±13.
413.
5
:ヒ13.
1L
−
_
. 。_
_
」
11.
9
±11.
5
「
k:p<0.
05,
s*
:p< O.
OL.
ゆ
HR :心 拍数,
RR :呼吸数 P、:収 縮 期 血 圧,
P。:拡 張 期 ぽ1L圧,
V、⊂、r,。):標準状態の分時肺換気 量,
VO2:分時酸素摂取量,
VCO2 :分時二酸化炭素生産量,
VT:一
回換気量.
RR,
VO
,IVE
を 除 く全て の因 子に おい て有 意 (p
〈0.
01
)に短縮し た。RR ,
VO2
/V
、におい て はVC
55
% は 他の二 条 件と 比較して有意 (p
く 0、
01) に短縮した が,VC
70
% で は拘束による影 響は認められ な かっ た。
考
察
今 回の我々 の実験に お い て は,
人為 的に胸 郭を拘束 す ること に よ りVC
70
% 群,
VC
55%群を設 定し,
自転 車エ ル ゴ メー
ター
に て漸増 的運 動 負 荷 試 験 を行っ て生 体 反応を観察し た。 運動待続 時間は拘 束に よ り短 縮 し,
RR,
守02/VE
を除 く全て の因 子の最 大 値 到 達 時 間 も同 様に短縮の傾向を示 し た。 こ の原 因を探る た め運 動 時の生 体 反 応 を考察する。 まず 安 静 時にお ける拘 束の影 響 と して は,V
。 は減少 しRR
は増 大し た。
すな わ ち浅 くて速い呼吸とな り, そ の結果 マ,(,T,。)は高値を示し,
VO
,/V
。の低.
ドにもかか わ ら ずVO2
は ト分に保た れて いた。ま た
,
同 時に HR.
Ps
も高値を示して おり,
胸 郭の拘 束に対 し,
呼 吸 器 系 に加え循環 器系におい て も対 応が行 わ れたことが予測さ れる。
運 動時に お け る最 大値にっ い て は拘 束によ るVO2
/VE
の減 少に加えて安静 時には変 化の見 ら れ な かっ たVO
,,
VCO ,が減 少 して い る。 こ のVO
、の最 大 値の減 少に よ り早期に酸素 需要量がVO
,の上 限を ヒ回 り運 動が終了 し た と考察さ れ る。 しか し,VC
・55% にお ける運動 終了 時のVO2
の値は,
他の条 件の 同 時 点の値と比 較して有 意 差は認め られ ず,
運 動 持 続 中に おいて は,
酸素は無拘 束 時と同 程度 摂取されてい る。 よっ てVO2
の最 大 値 到 達 直 後に酸 素 不 足 と なり その結果運動が終了したと考え られる。 本実験に おい て急 激に酸素 不 足と なっ た原 因 と して は, 漸増 的運動負荷を行っ た た め,
負 荷 増 加 時にエ ネル ギー
消費量,
すな わ ち酸素消 費 量が急 激に増 加 した た め と推測さ れ る。VO
,の最 大値が低 下し た原因と し て は,
拘束性 換 気 障 害では低コ ンプライア ンスの為運動 によ り呼 吸 数が増 加 し,
そ の結果死 腔換気が増大するこ とにより,
肺 胞 低 換 気 を きたす3)とされ て い る。 ま た胸 郭コ ンプライア ン スが低.
ドすると換気 分布障害が お こり 著しい換気一
血流比不 均 衡が生 ずるので酸素の拡散が十 分に行え ない。 以 上の事より負 荷 時の換 気作業能力は低 下してお り,
これ が労作時呼 吸 困 難の一
融と考え ら れて いる。 ま た,Warren4
)によ る と 安 静 時に おいて VO2/ VE が低 下 して も呼吸系は酸 素の取 り込みの需 要 を 満た すことが出来る が, 運動 中はVO
、/V
、の低 下が特に大 き くな り需 要を満た し き れ ない と さ れて い る。 これ らの理表
2
運動時に おける最大値 n= 12
対 照 VC70 % VC55 %HR
(beat
/min.
)RR
(f/min.
)Ps
ウ、(、TPD) マO
、 ウCO , VTVO
、f
†、 (mmHg ) (1
) (1
) (1) (1)186.
4
±16.
4 184.
1 ±7.
6
175.
8
:ヒ15.
9L
_
辷
= ゴ ニ =ヨ
50,
3
±9
.
164.
6
:ヒ25.
4
69.
7
:辷30,
9
L
= =± ==ヨ
,一
一 _
」
193.
6
:ヒ43.
3
195.
5
±34、
8
203.
3
±40.
2
57,
9
±17.
6
48.
9
±10、
5
43.
9
:ヒ8,
2
一
1.
86
±O▼
411.
60
:辷0,
28
一
1.
36
:ヒO.
40
2.
18
:辷 0.
45 L89 ± 0,
33
一
1.
56
± 0.
50 1.
30±0.
21
0.
90d: 0.
16一
O.
74±0,
2120.
3
:ヒ生9.
5
18.
4
±17,
9
L
、一
15.
2
±14.
8
*
:pく 0.
05,*
*
:p〈O.
Ol.
HR :心拍数,
RR :呼吸数,
Ps:収縮 期血圧,
PD:拡張期血 圧,
V ,(,,?D):標準状態の分時肺換気 量,
VO2 :分 時 酸 素 摂 取 量,
VCO2 :分 時二酸 化 炭 素 生 産 量,
VT :一
回 換 気 量.
表3
最 大 値 到 達 時 間 n=12
対照 VC70 % VC55 %HR
RRPs
の
VE
(STPD} †0
, †CO,VT
VO2
/SrE
(min.
) (min.
) (min.
) (min.
) (min.
) (min.
) (min.
) (min.
)18.
9
± 4.
016.
9
:辷3 .
9
一
15.
〇二」二3.
6
19.
8
±3.
9 18.
6 :辷 4.
8
L
__
.
一
= =」
14.
8
± 3.
218.
9
±4.
1
16.
8
±3 ,
3
一
14.
3
±2.
8
19.
4
±3.
9
17.
3
:辷3 .
4
一
14.
9
±2.
5
19.
4
±3,
9
16.
8
±2.
7
一
14,
3
±2.
9
19.
4 : ヒ 3.
9 16.
8 ± 2.
7一
14.
3 ± 2.
9 18.
0
: ヒ4.
4
15.
8
:t3 .
9
一
14.
0
:ヒ3.
0
11.
0 ±2.
3 11.
0 ±3.
O
L
_ _
.ヒ
= エヨ
9.
3
± 2.
7 寧 :p<0.
05,*
* :p〈 0,
01.
HR :心拍数,
RR :呼吸数,
P$:収縮期血 圧,
PD:拡張 期血 圧,
V、(scm]:標 準状態の分時肺換気 量,
VO2 :分 時酸 素 摂 取量,
VCO ,:分 時二酸 化 炭 索 生 産量,
VT:一
回 換 気 量.
206
理学療法 学 第22
巻第 5 号 由に よ り運 動 時において はVE
(STPD )の増 大のみ で はVO2
を増加さ せ る ことが出来な かっ たと考え ら れ る。 加え て 同じ負荷量 を 運動す る場合,
換気 障害の 程度が増す ほ ど 大き な換気量と心拍数を要し,
呼 吸筋と心筋の仕事量は 増 加 する た め, 大な るVO2
っ まり大な るエ ネル ギー
消 費を要する5)と さ れて いる。 ま た,
蝶名林 3) によ る と,
運 動に より 呼 吸 筋 自 体の酸 素 消 費 量は VO2 の35 〜
40% まで 増 大 する と さ れて い る。 つ ま り運 動時に はVO
、の最 大値の低 下に加えて酸素 需要量 も増 加 する た め,
酸素の需 要一
供給バ ラ ン スが崩れて早期に酸素不足 と なり呼吸 困難が生 じ た と推 測さ れ る。 運動 制限の因子 として はHR の増 加 も考 え られ るが,
本 実 験に おい て は拘 東に よ りHR の最 大 値は減 少し た。 沖 本 5)による と,
換 気 障 害 患 者の HR は運 動 限 界 時Astrand
の予 測 最 大 心拍数まで は達 し て おらず, HR の増 加は運動制限 因 子 とは考え難い とされて い る。 この た め呼吸器 系の因 子に より運動の持続が不 可能になっ た と考えられ る。また
,
沖 本5),
直 江 ら6)によるとV
。が VC の 50% ま で増 加 すると,
吸 気 胸 腔 内圧が最 大に近づ くた め,
息 苦 しさ を感じ, 運動 限界に達 するとされて い る。 我々 の実 験において もV。 の最大値は VC が 70%,55
% と減 少 するの に伴い69,
2
%,56.
9
% と同程度の低下率を示して い る。 この こと よ りV 。
の限 界 値はVC
の値に依 存して いると考え られ,
拘 束に よ りVT の限界値も低 下す る。 よっ てVT
は運動限界を決定 する因子の一
っ で あ る と推 察さ れ る。 以上の生体反応に よ り肺実 質に異状が ない健常者にお いて も, 胸郭拘束 状 態で は早期に運 動 限界に至 り,
拘 束 の程度が増す 程 運 動持続 時間も短縮し た と考え ら れ た。
本実験を行うにあた り ご指 導頂い た名古 屋 大学 医療技 術短期大学部の 猪田邦男教授,
岩 月宏泰助手,
名古屋大 学総合保健体 育科学セ ン ター
の 矢部京之助教授,
蛭田秀一
講師,
杢子耕一
助手に深謝致し ます 。 文 献 1) 国光美代,
篠原 豊・
他:実験的肺拘束時の呼吸応答.
運 動生 理 2〔2):1]7−
120,
1987.
2) 江口勝彦,
原出芳明:実験 的肺拘束 時・
肺 閉塞 時の運 動に 対 する呼 吸 応答.
運 動生 理 4(4}:201−
2e8,
1989.
3) 蝶 名林 直 彦 :運 動 療 法の実 際 Medicina 27〔5}:840−
842,
1990,
4)Warren W :呼 吸の病 態 生理,
Kryger MH,
白石 透 (訳 ),
西村書店,
新潟,
1981,
pp 43−
70.
5) 沖 本二郎 ;呼吸 器 疾 患 患者にお け る運 動制限因子に関する 贋究.
日胸疾会 誌 20〔D
:59−
68,
1982,
6) 直 江 弘 昭,
副 島 林 造・
他1正 常 人および換気障 害 患者に お け る 運動 能 力 制 限 因 子にっ いて.
日胸 疾 会 誌 16(9):683−
698,
1978.
<Abstract>
Vital
Reaction
ofHealthy
Adults
during
Exercise
with theThorax Movement ArtificiallyRestricted
Nobuko
WADA,
RPT
dehatsugazva
thinictbal
General
Hbspiml
Satomi TADA, RPT
Kobato
Gahuen
Aichi
Prefocturul
Colo?ry
Ikuko
KAWANO,
RPT
Daidoh
Hbspital
Mikiya
SHIMADA,
RPT
Ntrgqya
Eleisaihai
Hbspital
Megumi
SUZUKL
RPT
Shinseihai
Daiichi
llbspital
Miho ARVGA, RPT
Kosyu
Rehabilitationllbspital
Takahiro
KIYAMA,
RPT
Alagqya
[iniversity
College
of
Mladical71uchmolqg]yIn order to study respiratory and circulatory responses of the patientswith respiratory disease, 12
heaithy
adults aged between 20 and 22 years performed the gradual motorload
testunder thecondition
that
their
thorax
Inovement
was artificiallyrestrictedto
VC
70%
andVC
55%.
The
results were asfollows;
1)
The
exerciseduration
was significantly shortened as the restriction tothorax wasincreased,
2)
Oxygen-uptake-rate
was significantly reduced inthegroup
of VC 55% both at restand during exerclse.
3)
The rnaximal oxygen-uptake and production of carbondioxide
were reduced significantlyby
the
thorax
restriction.