新 し
い
伝 統 的
工
芸 品
を
作
る
一
産 地
と
デザ
イ ナ
ー の
コラ
ボ
レ
ー
シ
ョン か
ら
Direction
for
New
Concept
ofThe
Traditional
Crafts− From
the
Collaboration
ofCraftsmen
andDesigners
山
本建 太郎
YAMAMOTO
Kentaro
GK
プ
ランニ ング
ア ン ドデザ
インGK
PIanning
andDesign
1
.伝統
的工 芸 品と の出 会い このプロ ジェ ク トは、
GK
グルー
プ として伝 統 的 工芸 品とい う対 象も 初の 試みである ば かりで は な く、 5
年 間とい う長い 年 月を おつ き あい し た とい う 点に おい ても希 なケー
ス となっ た。 そもそ もの きっ か けは、
GK
グ ルー
プ会長の栄 久 庵 憲 司が、 地場 産 業に関するフ ォー
ラ ム で、
新 潟 県 の木工家 具協 同 組 合で の デザ イン提 案を3
年ほどお 手 伝い したこと を紹 介し たこ とに始ま る。1995 (
平 成7
) 年、
フ ォー
ラ ム が終 了 した後の懇 親 会で新 潟 県 木工 家具協
同 組合か ら紹 介さ れた輪 島漆 器 商工業 協 同 組 合理事
長か ら持ち込 まれ た相 談は次の ような もの であっ た。
「産 地 活 性 化 事 業と して 商品 開発と販路開拓 お よ び 人 材 育 成 事 業の3
本の柱で行 うこ とになっ た もの の、
どうやっ た らい い もの か わ か ら ない 。 商 品 開発 ではデザ イナー
さんを呼ん で きて デザ イン して も ら うとい う方 法 もある が、
こ れ は、
かつ て外 部の デザ イナー
に デ ザ イン を依頼 し、
その デ ザ イ ン画を も と に製 品 開 発 を 行い、一
時 的に は雑 誌に紹 介され て注 目を浴び る もの の やがて見 向き も さ れ な くな る とい う失 敗 例 も聞い てい る。 どうし た ら よいものか、 相 談に乗っ ても らえない もの だろうか。 」このような経 緯で、 まずは手 探り状態で
事業
の 企 画か ら取 り組むことになっ た。 これ までGK
プラ ン ニ ン グア ン ドデザ イン (以降GK
と略 す )で扱っ て きた デ ザ イン とい えば、
工業製 品 がメインである。 前に新 潟 県の地 場 産 業である木工家 具の技術 を 用い て現 代 集 合 住 宅の た め の家 具を提 案 するとい うプロ ジェ ク ト を完成 した ば か りで、
伝統
的工芸 品の よう な歴 史や風土性 など文 化 的な背 景を背負
っ た デザ イ ン の事 例は ほとんど経 験がない とい っ て良
い 。 この プロ ジェ ク トの 実 施に当たっ て、
プロジJ、
ク ト チー
ムが組ま れ た。 コ ア にな るメ ンバー
は2
名
で あ る。 そのほ か、
必 要に応 じて他の社 員が参加した。
「こ の プロ ジェ ク トで 私た ちデザ イ ナー
は何をした ら よい のか ?少なくも、 デ ザ イン を絵
に描い て持
っ てい くことでは ない だろう」とい うのが、
プロ ジェ ク トチー
ム の一
致し た意 見だっ た。 「こ ちらも わ か ら ない こと だ ら け なの だか ら、
教 えてもらい なが ら 教え る とい うギ ブア ン ドテ イク で行こ う。」
とい う ことになっ た。 そこ で、
まずは職 人 さん とデザ イ ナー
を交えて の 合宿 を行 うことに し た。 私たちが 「キャ ンプ」と呼 んでい るこの 合 宿の 第1
回 目は、
職 人 さん15〜6
名 とデザ イ ナー 3
人 が参加 して の 会合となっ た。 た だ し、
この会 合には しか け が あっ た。
1
回 目の キャ ン プ は1995(
平成7 )年
の7
月に実 施さ れた。 1
回の キ ャ ンプの 日程は お おむ ね2
泊3
日 で あ る。漆
器組
合の声掛
け で集
まっ た職 人さ ん は 16人。30
歳か ら40
歳 代の若 手が中心であっ た。2
.
ワー
ク ショ ッ プさて
、
キャ ンプに私たちデザ イ ナー
が持
ち 込んだ もの はデザ イ ン ス ケ ッ チ では な く 「テー
マ(
課 題 ) 」である。1
>
四季
のティー
タ イム を彩る漆器2
>日常の テ ィー
タイム を彩る漆 器3 )
漆の イ ン テ リ ア4 )
漆の照 明 (図1)5 )
漆の ア クセサ リー
(図2)
とい うよう な、
ちょ うどデザ インの学 校でや る よう な 五つ ぐらい のテー
マ を持 ち込み、
15〜6
人の職 人 さ んにグルー
プに 分 か れ て取
り組んで もらっ た。 そ れぞれの グルー
プには だい たい1
人の デザ イ ナー
が 担 当できる よ うに人数も配 分した。2.
1.
マ ッ プづくりとア イデア スケッ チまずは
、
ど ん な もの を作っ た ら よい のか とい う問 題である。各
グルー
プでは、
デザ イナー
を 中心に、
各 自が持24
sPEcIAL IssuE oF JSSD vol.
8 No.
2 2001 デザ イン学 研 究特 集 号Japanese Society for the Science of Design Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
図1 漆の照 明 図2 漆の アクセ サ 1丿
一
ち 込んだ雑 誌な ど を 見 な が ら資 料をマ ッ ピング し な が ら、
どん な もの を作っ た ら よい のか コ ン セプ ト を 練るとい う作 業を共同で行っ た。 そ して、
そのコ ン セ プ ト を もと に ア イ デ アス ケ ッチ を作 り上げる とい う作業
を、
これも職人 さ ん た ち とデザ イ ナー
が 共 同 で行っ た。 (1
> 商 品リサー
チ ま ず、
制 作 する もの で あるが、
た とえば 「漆の照 明 」 という
テー
マ で 自 分た ちの 身の 回りの もの を 作っ て み ま しょうと言わ れ た とこ ろ で、
い っ たい何 を作っ た ら よい の か わ か ら ない 。 そこ で、
まず手が け たこ とは、
照 明 器具 とい うテー
マ に沿っ て雑誌
な ど か ら写 真を切 り抜い てボー
ドに貼 り付 ける とい う 作 業である。 デザ イナー
な ら ば誰も がや っ てい る商 品リサー
チの初 歩である。 この作 業を行っ た こ とにより、
職人 さ ん た ち も 、 商 品 を 分類して見い てい くこ と、
ア ンテ ナ を張っ て 自分の 生 活 を見 直してみる ことなどを学ぶ こと がで きた と 思 わ れ る。
(2
)コ ンセプトを 立 て る 作るもの を決める と、 次は どの ように作るかであ る。 誰が使 うのか、
どんな ときに使 うの か、
どうい う使い 方をするの かな どなど、
指導
に当たっ たデ ザ イ ナー
か ら は質
問 が矢継
ぎ早に投
げ か け ら れ た。 「これ まで考え たこ とも なかっ たが、
これらを考 え な くては本 当の意 味で商 品にはなら ない とい うこと が わ かっ た」とい うような感 想が聞か れ た。 また、
こ の ときに収 納 性やス タ ッ キ ン グ、
モ ジュー
ル、一
器多
用の考
え 方な どをコ メン ト し た と こ ろ、
職 人 さん たちか らは 「そ うい う発 想 も商 品 開 発には必 要なん で すね」という声
があった。 (3
)プレゼンテー
ショ ン 職 人さん たちにとっ て、
自分の作るもの を人 に 説 明する という
訓練
は初の 体験
と なっ た。 プ レゼ ン テー
シ ョンでは、 これ か ら作る もの をス ケッ チ を描 き、
それに対 する説 明をする とい う訓 練である。デ ザ イナ
ー
か らは、
「そんなの ダメ」
「お も しろ く ない
」 「
な ぜ その形にな るの ?」な ど厳しい 言葉 が容 赦な く飛び出して くる。 本 当に作 りたい もの、
本 当に必 要 な もの の アイデ アを自 己の中で確 立して い ない こと に は説 明は で きない という
こ と を、 体 験 して学び取るこ とがで き た。 ま た、 こ れ まで、
職 人 さんた ちは、
決め られた ものを作るとい う作 業が多
かっ た た め、
人に説
明 するという
必要性
が ほ と ん ど な かっ た 。 その意味で、
人に説 明 する とい うこ と は、
よ り良い ものを作っ てい くため に必 要 なプロセ スだ し、
自分で自分の作 りたい もの がよ り明確
に な るの で、良
い 勉強 に なっ た との声
が聞か れ た 。 2.
2.
試作アイデ ァス ケッチ がで きた とこ ろ で、
7
月のキャ ンプはお 開 きである。
そ れ か ら後は宿 題 と なる。
約2
ヶ 月後
に 開催
さ れ る第
2
回 目の キャ ン プまで に、
デ ザ イ ン学研究 特集号 sPECIAL IssuEoF JssD vol
.
8 No.
2 2001 25図3 三つ組み 入 れ子 鉢 各グル
ー
プ がアイデ ア ス ケ ッ チ に基づ い て 木 地を 作っ て お くとい うの が 宿題であ る。9
月 にはデ ザ イ ナー
が その 宿 題を チェ ッ クに来る とい う算 段であ る 。 こ の ときに、
デ ザ イナー
は 生活 者の視
点で 「もっ と小 さ くし た方が持 ちやすい ん じゃ ない の 」 など、使
い手の立 場での製 品 作りの ア ドバ イス を行 うの である。 参 加し た研 修生 は ほ と ん どが職人 さ ん であるため、
使い 手の立場で考えるとい う訓 練は さ れてい ない 。 作 り手の立 場で仕事
をし てきた職人 さ ん に とっ て 、作
り手
の 立場で もの を提案
し た り、 使 い手の立場で ものを見た り とい うデザ イナー
の視 点 の使い分け は勉 強になっ た と思わ れる。2.
3
.
試 作 品の完 成この ように し て
、
キャン プは1
年
間 に4
回行わ れ た。7
月の 第1
回で デ ザ イン を決 定 する と、9
月の 第2
回 目 まで に木 地を作っ て お くとい う宿 題が 出 さ れ た。
木 地 を作っ た とこ ろ でデ ザ イ ナー
か らア ドバ イス を も らい、
ま た研 修生同士 が製 品を見せ合っ て さ らに改 良点を出 し合 う。 それ か ら塗 りの作 業に は い り、仕事
の合間を見て 約半年
間を か け て第
一・
次
の 製品 が完成 し た。 研 修に参 加 して くれ た職 人さんたちに とっ て良 かっ た こ と は、
商 品 リ サー
チ にはじ ま る製品開 発の一
連の プロセ ス を 知 識 だ けでは な く、
体 験的に伝え る こ とがで きた とい う点 だと思 う。 こ の こ とに よ り、参
加 して く れ た 職 人 さ ん た ちには、
新しい カ テ ゴリー
の商 品を開発 する こ と がで きた と同 時に、
自 分た ちで商 品展 開に チ ャ レ ン ジ し てい く力が つ い た と確 信して い る。2.
4 .
発表 会 この研 修には さ らにお まけがつ い てい る。 自分た ちで開 発 した製 品 を発表 する とい う仕事
で あ る。 東京
ドー
ムで開 催さ れ る テー
ブル コー
デ ィネー
トの フェ ア に試 作 品を持 ち込み、
実 際に試 作 品を使っ て テー
ブ ル コー
ディネー
トをし て来 場 し た方か ら意見 を聞 くとい うもの である。 も ちろ ん、
そ こ で製 品 を 気に 入 っ たとい う方に 巡 り逢 え ば商 談 を行
っ て も良 い 02.
5.
外へ の発 信 (1
)テー
ブル コー
ディネー
ショ ン単
品の商品 だけを考 える の では なく、
その周 辺 も 合わ せて考え た方が もの づ く りに は役に立つ との 考 えのも とに、1998 (
平 成10)年
度 と1999 (
平 成11)
年
度に は、
作っ た商 品を外に向
けて発 信 する とい う 勉 強を加え た。 1998 (平 成 10 ) 年度に は テー
ブル コー
ディネー
ター
を輪島
に招 き、
テー
ブル コー
ディ ネー
シ ョ ン の 考え方につ い て のセ ミナー
を開 催 し た。
26 SPEclAL ISSUEOF JSSD vol
,
8 No.
2 2001 デ ザイン学 研 究 特 集 号Japanese Society for the Science of Design Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
実 際に セ ミナ
ー
を開催 してみ る と、
テー
ブルコー
ディネー
シ ョン で チー
ムを牽 引し たの は 職 人 さ んの奥
さ ん た ちであっ た。 厂そ れ だっ た ら私た ちにもで きる。 」「
古い 道 具 類だっ た ら、
うちの蔵にもい っ ぱい 眠っ てい る よ。 そ れを活
用 で きない かしら。 」 とい う具 合に、
奥さ ん た ち が夢中 に な り始めた。 そ れと同時に、
参 加 した職 人さん や奥
さ ん た ち は、
か つ て の生活で はご くあた り まえ に漆 器の コー
デ ィ ネー
ショ ン をやっ てい たとい うことに気が付い た。 こ の セ ミナー
に参 加し た奥
さ ん た ち を中心に、
女 性 の 関 心が一
気に高まっ たの である。 (2
)パ ン フ レッ トの作 成 パ ン フレッ トの作 成 も共 同 作 業であっ た。 これ ま で、
漆 器 産地の パ ン フ レッ ト とい え ば、
漆 器が単 体 で写っ てい る商 品 見 本の ような もの がほ と ん どで あっ た。 そこ で、
こ こ で は、
使っ て みたい とい う意 識を喚 起で きるようなパ ン フ レッ トを め ざ して、
デ ザ イ ナー
の監修
の も とに職 人さんと地 元の写 真 店と の共 同作 業で作成するこ とにし た。 デ ザ イ ナー
が提 出した絵コ ン テを も とに、 地元の 写 真 店が撮影
す るとい う形 式を とっ た。 地 元の 写 真 店は漆 器の特 性をよ く心得てい るの で光の扱い 方な どに詳
しく、
こ の こと は、
デザ イ ナー
側に とっ ても 良い勉 強になっ た。撮 影はス タ ジ オよりもロケハ ン が多 くなっ た。 ロケ を行っ た場 所はすべ て職人 さ ん た ちの
自
宅 や 近所の美 術 館な どである。 ロ ケを行 う場 所か ら小 道 具まで、 す べ てチー
ム で 話し合っ て決め た。 パ ン フ レッ トの制作 では、
ス タイリ ス トがや る ようなア レン ジの仕事
ま で、一
通 りを経 験して もらっ た。 撮 影ロケー
シ ョ ンを みんなで探 し回り、
小物をみ んなで持ち寄るという、
ま さに自分 たちの手づ くりの パ ン フ レッ ト となっ た。 テー
ブルコー
ディネー
トで培
っ た知 識 をこ こでも存 分 に活か し てもらい、
プロの撮 影した写真を前に して、
さきに学んだテー
ブル コー
ディネー
トの成 果を全 員で 確か め合う
こともできた。3 ,
製品 完 成 した製 品をい くつ か紹 介 する。
(1
) 弁 当 箱1
(図4
)縦に積み重ね と 書類 鞄に 入るサ イズ に作 られてい る。 全工程が終 了し た後に行っ て み ると
、
知り合
い の織 師さ ん に頼ん で、
専用の袋
を作
っ てもらっ たと い う袋が付い てい た。 異 業 種 交 流に発 展 したのはす ば ら しい こと である が、
織 師さん は人 間 国 宝との こ と で、
とて も値
段は聞け な かっ た。デザ イン学 研 究 特 集 号 SPECiAL 「SSUE OF JSSD Vol
,
8 No.
2 2001 27(
2
) 弁 当 箱2
(図5
)テ
ー
パー
を付けて、 ス タッキ ン グ で きる よう
に 作っ てある。 弁 当を入れて持っ てい くと きには大き い 方を上 に し て重ね、
食べ 終わっ た後は小さい 方を 中に入 れて仕舞
う。
テー
パー
が付い て い るの で、
中 が見や すい し、
洗い や すい と評判 で あ る。
(3
) 酒 器 (図6
)結
婚
記念
日の た めの酒器。 人 生の 晴れの 日を記
念 するた めの酒 器。 日常生活か ら一
歩 踏み込んで、 生活提
案型の 商 品企画がで きる よ うになっ た例であ る。 ろ くろを回 すと きの 回転 軸が1
本では ない とい う、
めずらしい 技 法を使っ てい る。
杯 は夫
婦になっ て お り、
職 人さん ご夫 婦の 酒 量に応 じ た作 りになっ てい る。手
の 大 きさ、
とっ く りの 容量 との 関係 を考
えて杯の大 きさ を何 度か検討 した。 図9 飾り台 (大) (4
> 箱 膳 (図7
)「
収
納ができる」
「自分だ けの もの」
とい う考
え が新 鮮だっ たの か、
か な りの 高 額にもか かわらず、
フェ ア で多くの注 文 を受け た。 (5
) 飾り台 (小 ) (図8
>前
年
度の 製品を改 良し て完 成させた製 品。 折 り畳 んで収 納で き るようになっ て い るもの だ が、
前 年 度 の製 品で はヒ ンジ が わずかに見 えて し まうとい う欠 点があっ た。 この 製 品ではその点を改 良 すると とも に、
両脇の 板 をわずか に曲面に してやわ ら か な 雰 囲 気を出してい る。 (6
)飾り棚 (大 ) (図9
)飾 り
棚 (
小)
と同様
に、
折 り畳 ん で仕舞
える よう
に作 られ てい る。 撮 影は市 内の美 術 館である。 (7
) 重 箱 (図10 ) 重 箱の 間に銘々 皿 がセッ トになっ て い る。
デザ イ ナー
の指 導の も と、
ス タッ キン グ、
モ ジュー
ル とい うような考 え 方が取 り入 れ ら れてい る。28 sPEclAL lssuE oF JssD vol
.
8 No.
2 20D1 デ ザ イ ン学 研 究特集号Japanese Society for the Science of Design Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
図fO 重箱
5
.
5
年の歳 月の なか で こ の ワー
ク ショ ッ プ 形 式のキ ャン プは、 1
年 を クー
ル と して 行われたが、
5
年続
い た こ と になる。 その 間、
10人 ぐ らい がコ アメ ン バー
となっ てキャ ン プを牽 引 する役 割を果た してきた。 こ の メ ン バー
は ちょ うど1
年生、
2
年 生、
3
年 生とい うような 具 合 に、
学年
が進む ようにして力を付けてい っ た。
最 後の年で ある平 成 11 年 度には、
職 人さんたちの奥
さ ん た ちも入っ て30
人 ぐらい の大ワー
クショ ップ となっ た 。 最 初は横で見て い た奥
さ ん た ち も、
「奥
さ んた ち も一
緒に や っ た らい か がで す か」
と声を か けた とこ ろ、
夢 中になっ て自分た ちの使っ てみ たい ものを絵に描 きは じめた。5
年 目を迎えて、
女 性の 発 想 を 出 し てい くこ とが 必 要 だとい う意 見が出て き たこ とにな る。奥さんた ちの活躍は目
覚
ま し かっ た。自
分た ちで デザイン した もの を出 入 りの 職 人 さん た ち を手 配し て作ら せ る な ど、
優れ たマ ネー
ジャー
ぶ りを発 揮 し た。5
年 目となっ た2000
(平 成12)
年3
月の最 終 報 告 会 で は、各
グルー
プとも奥さん たちの方が豪快 な プレゼ ンテー
シ ョン を披露 してい た。 職 人さんは大 き な仕 事でない 限 りは家で仕 事を し て い る。奥
さん たち もその 仕 事の 下仕 事な ど を 日頃 手 伝っ てきた という
歴史
的な背 景 もあ り、
もともと のあるべ き職人夫 婦の姿に戻っ た とい う感が あ る。 夫 婦が共 同で もの づ く りを進めてい く、
集 団の最 小単
位で あ る夫
婦で 自立 して ものづ くりを進めてい く という
原 点に 立 ち返 るこ とが できた とも言 える。 最後の5
年 目にな る と、
職人 さ ん た ち は、 雑誌や イン ター
ネッ トか ら情 報を収 集 して、
マ ッ ピングす る という
作 業を 通 して、
自力で コ ン セプ トを 立て て 商品 開 発 がで きるまで に力 を付ける こと がで きた。
絵もマ ッ クでCG
で描い て くる まで になっ た。 この ため、
GK
としてお手伝い できる こと はな くなっ た と判 断し、
キャ ンプ は5 年
をもっ て終
了 することに なっ た。6 .
プロ ジェ ク トを終え て 商品開 発 とい うプロ ジェ ク トを通 して、
私 たちデ ザ イ ナー
が産地に残 して く ること が できた ものは何 だっ たのだろ うか。 まずひ とっ は、
具 体的な商品コ ンセプ トの 立て方 を勉強 して もら うこ とがで き たこ と だ と思 う。 現代 生 活 を見据え な が ら もの のあ り方 を考えて みましょ う、
生活 者の 価 値 観 や 「もの を所 有 する とい うこ と」 な ど を 考 えてみ ま しょ う、
世の 中の 流 れ に 対 し て ア ン テナを 張っ てみ ま しょ うとい うこと。
自分の 考え をマ ップ化 し た り、
言 葉に し てみ るなど、
コ ン セ プ トを周 囲の 入 に 説 明でき る よ う な 手 法。 これ ら を、
知 識とし て で は な く体 験とし て伝え るこ とがで きた と考える。
も うひ とっ は、
こ れ まで になか っ た 商品 を考え る、
新しい商品づ く り に 取 り組む姿 勢を 勉 強 しても ら うこと ができた と思 う。
参 加 した若い職 人 さん たデ ザ イ ン学 研 究 特 集 号 sPEcIAL IsSuEOF JssD vol
,
8 No.
2 20D1 29ちの なか に は
、
自分た ちで新しい商品 を作り、
仲 間 を 集 めて個展 を 開 き、
できた商 品を発 表 し てマー
ケ ッ トを 開 拓 し は じ め た 人 もい る。
職人 さんた ち は、
外に 目を 向 け る と 同 時 に、
自らの 力で活 発に動 き出したの である。
塗師 屋 さんな どの 組 合に所 属す る 方々 か ら は、
こ れ ま で と は まっ た く異 なる方 法 を学ぶ ことで、
新し い次 世代の若い人 た ちの人 材育 成に非 常に 役 に 立っ た、
ま たそ れが、 何 よ り も 産 地 活 性 化の原 動 力 に な る と評をい た だいた。 東 京の デ ザイナー
がデ ザイ ン した もの を 作 ら せる よ う なこ と はやっ て はい け ない との 信 念の も と に、
微力では あ る もの の、
産 地の 職人 さんた ち が、
自力 で、
自 立 して もの づ く り を で き る ように 人材 を育 成 した り、
体 制を変えるた めの お 手 伝い がで きたこ と は幸せ に思 う。
7 .
プロ ダ ク トデ ザイ ナー
が学んだもの1
回のキ ャ ン プには3
〜
4
人の デ ザ イ ナー
が講 師 と して参 加し た。 講 師は、
コア と な る 人物を除い て は毎回違 うデザイ ナー
が参 加 した。 その な かで、
プ ロ ダク トデザ イ ナー
たちが職 人 さん との コ ラ ボ レー
シ ョンで学んだこ と も多
い。
以 下 は、
プロ ダ ク トデ ザ イ ナー
がこ の プロ ジェ ク トを 通 して学んだこと や 発 見 したことである。 (1
)輪 島の か た ち 職 人 さんたちが 工房にス トック してい る何百という
型 や 見 本 を見せ て もらっ た。 数に圧倒さ れると 同 時に、
不格 好 だけ れ ども味の あるか たちとい うもの を目の当た り に し た。
今の工 業デ ザ インが見 落とし てい るか たちを発 見 し、
刺 激を受
け た。(
2
)
も の を愛す る心職人 さ ん た ちの言 葉はい つ も同 じだ。
「大 事に作っ て
、
大事に使って もらい たい」と言 う。 職人 さんた ち は決して儲 けたい と は考
えてい ない。 「売る」の では ない、
「
使っ て もらう」
と言 うの だ。
大事に作っ て、
大 事に売っ て、
大 事に長 く使っ ても らい たい という
一
心 で真
心 を 込めてもの を作る真 摯 な態度、
もの づく り の基本 的な姿 勢に頭が 下 が る 思い が し た。 (3
) 時 間が経っ た漆の良さ 「こ の世には年を経れ ば経る ほ ど美 しくな る もの があっ た」とい うこ と を発 見で きた。 産 地で数 多 く の漆 器に ふ れ て、
時間の経っ た漆の美 しさ、
質 感の 良さ が わ か るようにな り、
時と ともに良 くなるもの があること を 知っ た。
(4
>「
直せる」とい うこと「
直
せ る」
とい うのは、
商 品に とっ て大 き なポテ ン シ ャル・
潜在
力で あ るとい うことを知っ た。 長い 時 間 使っ てい れば品物も傷む し、
壊 れ る こ と も あ る。 しか し、 そ れ を元の よう
に直 すこ とがで きるの だ。 しか も、
直した後は さ らに愛 着が増 すとい う。 (5
)カ スタマ イズできる、 オー
ダー
メイ ドでき る とい うこ とこ ん なの が欲しい とい
う
と、
す ぐに作っ て くれ る。一
つ だ けでも作
れ る、
カス タマ イ ズで きる とい うの は大 量生産には ない 強みであ る。 デザ イ ナー
の な か に は、
自家用 にざる そ ばを食べ るときに使 うお 重箱の ように重ね て仕舞
えるセ ッ トを作っ てもらっ た人 もい た。 (6
) 待つ とい う楽しみ方 アイ デアス ケッ チがで きて か ら木地が で きる まで に2
ヶ 月。
木地 ができてか ら塗が仕上 が るまで が半 年。 キ ャ ンプ が終わ る た びに、 デザ イ ナー
た ち は 「次に来る ときには どんな製 品に なっ てい る ん だろ う」という
楽しみ を胸に東 京に 戻 っ た。「待た さ れ る」 あるい は 「待た なけれ ば な ら ない 」の で は な く
、
「待つ 」とい うのも楽 しみ のひ とつ である とい うこ とに気づい た。
どんな もの に仕上が っ て くるの だろう、 思い 通 り に な る だろうか、
い や ひ ょっ と し た ら…
。 」デー
トの約 束を して、
相手
を待ち な が ら 「どんな服で来るだろうか、
何を話 そ うか」と思い を巡らすの に似て い る か も しれ ない 。 ま た、
待つ 時 間が長 けれ ば長い ほ ど、 その 後の 楽しみ も長 く続く よう
な気 もする。 その点では、
共 同で作 り上げるこ との お も しろさも堪 能 する こ とがで きた。 (7
) 顧客
の顔が 見 え る 販売一
新しい マー
ケ テ ィ ングの か た ちかつ て輪島で は全国
各
地へ の訪問 販売で さ れ てい た とい うのは有 名な話である。 塗師が2
ヶ月も3
ヶ 月 も逗留 し て、
その地 域の注 文を とっ た り直しもん30
sPEclAL lssuEoF JssD vol.
8 No,
2 200t デ ザ イ ン学 研 究 特 集 号Japanese Society for the Science of Design Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
を引 き受 けた り して商 売 をしてい た
。
顔の見 えるつ きあい を通 し て、
リ ピー
ター
を増や し、
顧 客を開拓 して い た という。
現地で聞い た話で は、
なかに は尺 八の師 匠と なっ て地 方を ま わ り、
尺 入を教 えて弟子 を増や しなが ら顧 客の 開拓 をし てい た 塗師さ ん もい たそ うである。 職人 さん か ら聞い た お話の な かに は、
現代の 新 しい マー
ケテ ィン グのヒ ン トがある か も しれ ない 。(
8
)
愛 着へ の吸 引 力私も漆 器を持っ てい たが
、
もっ たい な くて使っ て い なかっ た。 輪 島 塗の よ うな 漆器は美 術 品だ と思っ て い たの だ。 とこ ろが、
職人 さ んに言っ て み た とこ ろ、
「毎日使っ て欲 しい 」 と言わ れ た。 職 人さん に
、
毎日使い 続 けた漆 器を見せてもらい、
その た く ま し く光るさまに圧 倒さ れ た。 そ れ か ら、
し まっ て あっ た 漆 器 を 出 して使い 始め た とこ ろ、 使え ば使 う ほ ど愛 着が湧い て くる。 漆 器に は愛 着の吸 引 力 とも 言う
べ き ものが ある の だろうかと思っ た。 わせ て行 っ た事
例 を紹 介 し た 。 この ほかに、
プロ ジェ ク トの 初 期には漆 器の使い 方が生活 者に伝わ っ てい ない こと が問 題であると して、
1996 (平成8 )
年に、 『
漆とくらす 』とい う全5
巻の リー
フ レッ ト を作 成 した。 漆 器の教 科 書と して、
現 在も塗 師 屋 さ んや漆器 や さんに 使っ ても らっ てい る。 ま た、
同時 に、
生活に漆 器を取 り入れて も ら うた めの導
入 ガ イ ド と して、
料理研 究 家の ボ ル トハ ウス 房 子さ んにお 願い して、
漆 器を使っ た おもて なしを紹 介 する ビ デ オ を作成 し た。 両 方とも、
輪 島漆器 商 工業 協 同 組 合 の ホー
ムペー
ジ で紹介
さ れてい る。 輪 島漆器商工業協
同組 合http:
1
!www.
wajimanuri.
or.
jp
!index−
ie.
htmi8
.
今 後の 課 題 今 回、5
年 間の商 品 開発 事 業を お手 伝い し て、
唯一
心 残 りだっ たこと とい えば、
職人 さ ん た ち が自
分 たちで か たち を生 み 出 して い くた めの お手 伝い には 至ら な かっ た とい う点である。
職 人 さ ん た ち は、
か た ち を作っ てい くとい う作 業 は比 較 的 苦 手である。 それ は、
昔か ら決め ら れ た 「型 」に合わせ て の もの づ くり を して きた た め か も しれ ない。
しか し な が ら、 発 表 会や仲 間同士の集 まりをと お して他の人の 目にさ らすことに よ り、
よ り美
しい も の、
よりすばら しい もの を得
てい くこと ができる と いう
こと は、 これ まで のキャ ンプで十 分に会 得して い る。 よりよい もの、
よ り美しい もの をめ ざそう
と する意識 も徐 々 に芽生 えつ つ ある輪 島か ら、
やが て、
すば ら しい 伝 統 的工芸 品が登場するの を待ち た い ○9
.
お わ り に 今 回は、1995
(平 成7
> 年か ら5
年間に わ たる プ ロ ジェ ク トの なかで、
特に商 品開 発 と 販 路開 拓を合デ ザ イン学研究特集 号 sPEclAL issuEoF JssD vol