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痙直型脳性麻痺者における足関節等尺性背屈時のH 波の特徴

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 168 46 巻第 3 号 168 ∼ 173 頁(2019 年) 理学療法学 第 46 巻第 3 号. 短  報. 痙直型脳性麻痺者における足関節等尺性背屈時の H 波の特徴* 楠 本 泰 士 1)# 菅 原   仁 1) 松 田 雅 弘 2) 高 木 健 志 3) 新 田   收 4). 要旨 【目的】本研究の目的は,痙直型脳性麻痺(以下,CP)者における安静時と足関節等尺性背屈時の H 波 の振幅値変化の違いを明らかにすることとした。【方法】対象は粗大運動能力分類システムにてレベルⅠ, Ⅱ,Ⅲの CP 群 14 名と健常者である対照群 14 名とした。CP 群では下肢随意性検査を行い,利き足を決 定した。両群で利き足でのヒラメ筋の H 波最大振幅値を安静時と等尺性背屈時とで比較した。【結果】対 照群は等尺性背屈時に H 波最大振幅値が有意に低下したが,CP 群は振幅値が低下した者が 8 名,上昇し た者が 6 名であり,全体としては変化がなかった。【結論】CP 者は足関節等尺性背屈時にヒラメ筋への 相反抑制がかからない者がおり,健常者と比べて脊髄前角細胞の興奮性が十分に制御されていなかった。 CP 者の腓腹筋やヒラメ筋のストレッチでは,背屈時の H 波振幅値の上昇と低下に合わせて,相反抑制の 効果を組み合わせるか判断する必要性が示唆された。 キーワード 脳性麻痺,H 波,相反抑制,背屈,下肢随意性. 度の遅延. はじめに. など.  脊髄前角細胞を含めた二次ニューロンの情報が得られ る Hoffmann 波(以下,H 波)は,後天性の脳卒中患者 や頸髄症患者. 2)3). 1). で振幅の増大や波形時間の延長,出. 4). や最大上刺激で消失するはずの H 波の残存. 5). ,二次的な影響がいくつか報告されている。脳性. 麻痺児では,通常 H 波が観察されない筋からも H 波が 導出されることがあり,上位中枢からの抑制が不十分で ある可能性が報告されている. 5). 。. 現頻度の増大などが麻痺側でみられたと報告されてい.  α 運動ニューロンの興奮性変化の要因には上位中枢か. る。H 波は Ia 感覚神経線維が興奮し,単シナプス性に. らの直接制御以外にも,拮抗筋の筋紡錘から Ia 繊維を. 接続している脊髄前角細胞を興奮させ,発生した筋活動. 6) 介した信号による相反抑制や ,主動筋や共同筋への持. 電位が α 運動ニューロンを順行性に筋に伝導すること. 続的な伸張によってゴルジ腱器官が興奮し,求心性に介. で導出される。そのため,H 波は脊髄前角細胞の興奮性. 在ニューロンを介して同名筋の脊髄前角細胞の興奮を抑. を表す指標として考えられている。脳性麻痺のような周. 制する Ib 抑制. 産期に生じた中枢神経損傷であっても末梢神経の伝導速. 般的にヒラメ筋から導出される H 波は,拮抗筋の収縮. 7). の存在が知られている。そのため,一. による相反抑制や持続的なストレッチによる Ib 抑制な *. Characteristics of H-reflex during Isometric Dorsiflexion of the Ankle in Patients with Spastic Cerebral Palsy 1)東京工科大学医療保健学部理学療法学科 (〒 144‒8535 東京都大田区西蒲田 5‒23‒22) Yasuaki Kusumoto, PT, PhD, Hitoshi Sugawara, PT, PhD: Department of Physical Therapy, Faculty of Health Sciences, Tokyo University of Technology 2)城西国際大学福祉総合学部理学療法学科 Tadamitsu Matsuda, PT, PhD: Department of Physical Therapy, Faculty of Health Sciences, Josai International University 3)目白大学保健医療学部理学療法学科 Kenji Takaki, PT, MSc: Department of Physical Therapy, Faculty of Health Sciences, Mejiro University 4)首都大学東京大学院人間健康科学研究科 Osamu Nitta, PT, PhD: Department of Physical Therapy, Faculty of Health Sciences, Tokyo Metropolitan University # E-mail: [email protected] (受付日 2018 年 8 月 29 日/受理日 2019 年 1 月 25 日) [J-STAGE での早期公開日 2019 年 4 月 18 日]. どの神経学的要因が関与することで低下する。相反抑制 は,拮抗筋の Ia 繊維の発火による主動筋の反射感度が 低下することで起きる現象である。ヒラメ筋の拮抗筋で ある前脛骨筋が収縮することで筋紡錘からの求心性線維 は,前脛骨筋の α 運動ニューロンを興奮させると同時 に,抑制性の介在ニューロンを介してヒラメ筋の α 運 動ニューロンを抑制する相反抑制が働く。Leonard ら は,足関節背屈運動の可能な脳性麻痺両麻痺児では健常 児と比較して立位での足関節背屈時にヒラメ筋の H 波 振幅値が上昇し,相反抑制の働きが不十分だったと報告 している. 8). 。しかし,先行研究は症例数が 6 名と少なく.

(2) 痙直型脳性麻痺者における足関節等尺性背屈時の H 波の特徴. 169. 粗大運動レベルや下肢随意性がどの程度の状態なのか明. し,サージカルテープで固定した。H 波の測定は安静腹. 記されていない。また,測定姿位が立位だったため,左. 臥位にて膝関節軽度屈曲位,検査台から足関節がでる状. 右の荷重量によって H 波振幅値に変動が起こった可能. 態とし,足関節底背屈の角度は固定せず安静時の状態で. 性がある。脳性麻痺患者と健常者間や,脳性麻痺患者間. 行った。頭部は枕の上で左右どちらかに回旋させ,開眼. で相反抑制の作用に違いがあるのであれば,ストレッチ. の状態で行った。誘発電位検査装置(日本光電社製,. や各種トレーニングは対象に合わせて実施する必要が. Neuropack S1,MEB-9402)の刺激電極を膝窩部に設置. ある。. した。電流量を徐々に上げ,H 波の出現から最大の H 波,.  そこで本研究の目的は,足関節背屈運動の随意性の異. H 波の振幅が 20% 減少するまで H 波のリクルートメン. な る 痙 直 型 脳 性 麻 痺(spastic cerebral palsy: 以 下,. トカーブを確認した。その後,最大の H 波が導出でき. CP)者を対象に安静時と足関節等尺性背屈時の H 波の. る電流値で 3 回のデータを 5 秒間隔で記録し,H 波の潜. 振幅値変化の違いを明らかにすることで,拮抗筋への相. 時と振幅値,電流値を読み取った。次に安静腹臥位の足. 反抑制が保たれているか否かを検討することとした。. 関節底背屈の角度を維持させた状態にて検査者の一方の 手で踵骨を把持し,検査者の大. 対象および方法. 部に対象者の足背を押. しあて,足関節を徒手的に固定した。その状態で最大努. 1.対象. 力にて足関節を等尺性に背屈し,同様に最大の H 波を.  本研究デザインは横断研究(cross-sectional study). 導出した。解析には 3 回記録した平均値をそれぞれ使用. として実施した。対象者は CP 者と健常者とし,CP 者. した。. の募集は小児関連の 1 施設で行い,対象の取りこみ基準 は粗大運動能力分類システム(Gross Motor Function. 3.統計方法. Classification System:GMFCS) レ ベ ル Ⅰ, Ⅱ, Ⅲ の. 2  対象者の性別を χ 検定,年齢,身長,体重を対応の. CP 者とした。除外基準は,過去 6 ヵ月以内に整形外科. ない t 検定にて検討した。CP 群と対照群を対応のない. 的手術やボツリヌス毒素療法を実施した者とした。基準. 要因,安静時と背屈時を対応のある要因とした反復測定. を満たした CP 者 17 名の内,同意を得られなかった 3. 二元配置分散分析および多重比較検定にて検討した。各. 名を除外した 14 名(レベルⅠが 3 名,Ⅱが 4 名,Ⅲが. 群で安静時に対する背屈時の各パラメータの変化率を算. 7 名,18.3 ± 6.1 歳(平均値±標準偏差) ,12 ∼ 30 歳). 出し,対応のない t 検定にて検討した。また,各群にて. を CP 群とした。対照群として都内の大学に在学してい. 背屈時に振幅値が低下した者と上昇した者の人数の内訳. る健常者 14 名(平均 18.5 歳,18 ∼ 20 歳)を対象とした。. を Fisher の直接確率検定にて検討した。統計処理には. 除外基準は過去 6 ヵ月以内に観血的治療を受けた者とし. SPSS statistics ver.19 を使用し,有意水準を 5%とした。. た。なお,本研究は東京工科大学倫理審査委員会の承認 後(承認番号:第 E16HS-010 号) ,対象と保護者には口. 結   果 1.H 波に関する各パラメータの比較. 頭と書面で説明し,承諾を得て実施した。.  対象者の属性を表 1 に,CP 群と対照群におけるヒラ 2.測定方法. メ筋の H 波最大振幅値の典型例の波形を図 1 に示した。.  測定は利き足で行った。利き足は,CP 群では下肢随意. 潜時は CP 群では安静時が 27.3 ± 2.5 ms(平均値±標. 性検査である Selective Control Assessment of the Lower. 準偏差)で背屈時が 27.4 ± 2.5 ms,対照群では安静時. Extremity(以下,SCALE)の得点の高い下肢とし,対. が 29.8 ± 1.8 ms で背屈時が 30.3 ± 1.9 ms と群間に主効. 照群ではボールを蹴る際の蹴り足と定義した。SCALE. 果があった(群間の主効果:p < 0.001,背屈前後の主. は股・膝・足・距骨下・足指の計 5 つの関節の屈伸や内. 効果:p = 0.08,群×背屈前後:p = 0.18) 。. 返し外返しなどの自動運動を 3 秒間ごとに繰り返し行わ.  各群全例の振幅値変化を図 2 に示した。振幅値は群間. せ,各関節を 0 ∼ 2 点で採点し,一側下肢の下肢随意性. と背屈前後に主効果があり,交互作用が確認された(群. を 0 ∼ 10 点で採点する. 9). 。今回は両下肢の SCALE を. 測定後,結果の記載には利き足の値のみを使用した。 10). 間の主効果:p < 0.001,背屈前後の主効果:p < 0.001, 群×背屈前後:p < 0.001) 。振幅値は CP 群では安静時. 。皮. が 3.18 ± 2.79 mV で背屈時が 3.20 ± 2.97 mV と変化な. 膚の状態を観察,触診し異常がないことを確認後,電極. かったが,対照群では安静時が 13.27 ± 4.69 mV で背屈. 設置位置の皮脂,汚れをアルコール綿にて落とした。次. 時が 7.73 ± 4.06 mV と有意に低下した。. に直径 10 mm の導出電極を下. 内側遠位 2/3 にあるヒ.  電流値は CP 群では安静時が 8.6 ± 5.6 mA で背屈時. ラメ筋単独部位の筋腹上とアキレス腱上に,直径 30 mm. が 8.8 ± 5.2 mA,対照群では安静時が 6.8 ± 3.2 mA で. のアース電極を外果に,それぞれペーストをつけて設置. 背屈時が 7.8 ± 3.9 mA と主効果はなく,交互作用は確.  H 波の測定は Braddom らの方法を基に行った.

(3) 170. 理学療法学 第 46 巻第 3 号. 表 1 対象者の属性. 性別(男,女,(名)) 年齢(歳). CP 群(n=14). 対照群(n=14). 10,4. 14,0. p値 0.03 *. 18.3 ± 6.1(12 ∼ 30) 18.5 ± 0.7(18 ∼ 20). 0.90. 身長(cm). 156.7 ± 8.6. 172.4 ± 6.9. p < 0.001*. 体重(kg). 53.2 ± 9.2. 66.9 ± 9.2. p < 0.001*. GMFCS レベル(Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,(名)). 3,4,7. −. −. 4.7 ± 2.5(2 ∼ 9). −. −. SCALE(点) SCALE 足関節(2,1,0 点, (名)). 3,4,7. CP 群:痙直型脳性麻痺群,GMFCS:Gross Motor Functional Classification System, SCALE:Selective Control Assessment of the Lower Extremity, 平均値±標準偏差(幅),* : p < 0.05.. 図 1 CP 群と対照群におけるヒラメ筋の H 波最大振幅値の典型例の波形 CP 群:痙直型脳性麻痺群,3 回測定した波形を重ねて表示した. a:安静時の H 波最大振幅値,b:等尺性背屈時の H 波最大振幅値.. 図 2 各群全例の振幅値変化 CP 群:痙直型脳性麻痺群,点線は対象ごとの値を,実線は平均値を示した. CP 群の結果は足関節の SCALE が 2 点の者を対照群と同様に点線で,1 点の 者はわずかに長い点線,0 点の者はもっとも長い点線で示した..

(4) 痙直型脳性麻痺者における足関節等尺性背屈時の H 波の特徴. 171. 図 3 安静時に対する背屈時の振幅値変化率 CP 群:痙直型脳性麻痺群,二群を結ぶ線は各群の平均値を示した.最 小値∼最大値の幅は CP 群が 61 ∼ 152%,対照群が 17 ∼ 97%だった. CP 群の結果は足関節の SCALE が 2 点の者を対照群と同様に〇で,1 点 の者を△で,0 点の者を×で示した.. 認されなかった(群間の主効果:p = 0.11,背屈前後の. H 波振幅値変化率は,70%から 270% と対象によって興. 主効果:p = 0.11,群×背屈前後:p = 0.30) 。. 奮性の変化が異なり,多くの者が背屈時の振幅値変化率 が上昇していた. 12). 。本研究では CP 群の H 波振幅値変. 2.背屈時における各値の変化率と振幅値変化の人数比. 化率は図 3 からわかるように 61%から 152% と,先行.  安静時に対する背屈時の潜時変化率は CP 群が 100.1. 研究における脳卒中患者ほどの振幅値変化率の上昇はみ. ± 2.0%,対照群が 101.6 ± 2.8%(p = 0.12),振幅値変. られなかった。脳卒中患者では背屈努力時に底背屈筋の. 化率は CP 群が 99.3 ± 23.9%,対照群が 65.1 ± 32.6%(p. 同時収縮を示すことがよくある. < 0.001) ,電流値変化率は CP 群が 108.1 ± 32.4%,対. も背屈努力時に底背屈筋の同時収縮を示すことがある. 照群が 113.7 ± 16.9%(p = 0.58)と,振幅値変化率で. が,背屈時に足趾伸筋のみを活動させる場合や筋活動が. 対照群が有意に低かった。各群全例の安静時に対する背. えられない場合など,同様の粗大運動レベルであっても. 屈時の振幅値変化率を図 3 に示した。. 様々な病態を示す.  各群にて背屈時に振幅値が低下した者と上昇した者の. は中枢神経系の障害部位が異なることから,ひとつの動. 人数の内訳は,CP 群で低下した者が 8 名,上昇した者. 作を行わせる際に疾患ごとに筋活動の特徴が異なり,背. が 6 名,対照群は全例低下し,2 群間で振幅値変化の人. 屈時の振幅値変化率に影響していたと思われる。足関節. 数比に差があった(p = 0.02) 。. 背屈時の H 波振幅値の変化には,中枢神経系の障害の. 12)13). 。脳性麻痺患者で. 9)14). 。脳性麻痺患者と脳卒中患者で. 程度や疾患ごとの特徴によってばらつきが生じる可能性. 考   察. がある。. 1.背屈時の振幅値変化.  本研究によって CP 群は対照群と比べて H 波の調節.  振幅値に交互作用が確認され,CP 群では安静時に対. 能力が低下していることが明らかになった。しかし,. して背屈時に振幅値は差がなかったが,対照群では背屈. CP 群では,対照群と同様に背屈時に H 波の振幅値が低. 時に有意に低下した。また,CP 群では安静時に対する. 下した者と,先行研究の脳卒中患者のように上昇した者. 背屈時の振幅値変化率は平均で 99.3%と変化なく,対照. がいた。脳性麻痺児に対する先行研究では立位での背屈. 群が 65.1%と CP 群と比べ低かったことから,CP 者は. 8) 時に振幅値が上昇していたことから ,脳性麻痺患者で. 健常者と比べて脊髄前角細胞の興奮性が十分に制御され. は,対象の運動機能や測定姿位によって脊髄前角細胞の. ていなかったといえる。健常者では足関節背屈時にヒラ. 興奮性の変化が異なることが考えられる。ストレッチ後. 11)12). ,本. の関節可動域増大には筋や腱の粘弾性の変化である生理. 研究の対照群は先行研究と同様の結果であった。脳卒中. 学的要因と脊髄前角細胞の興奮性を含めた神経学的要因. 患者における安静時に対する足関節背屈時のヒラメ筋の. が関与する. メ筋の H 波振幅値が低下する報告は多くあり. 15). 。背屈努力時に H 波の振幅値が低下する.

(5) 172. 理学療法学 第 46 巻第 3 号. 者と上昇する者とでは相反抑制の働きが大きく異なる。. かった。背屈時に H 波振幅値が上昇する者への腓腹筋. そのため,背屈時に H 波の振幅値が低下する脳性麻痺. やヒラメ筋のストレッチでは相反抑制の効果を組み合わ. 患者では,理学療法介入で腓腹筋やヒラメ筋のストレッ. せることはできないため,痙直型脳性麻痺者の足関節背. チを行う際に拮抗筋の収縮を利用した相反抑制の効果を. 屈ストレッチは,背屈時の H 波振幅値の上昇と低下に. 組み合わせることで生理学的要因だけでなく神経学的要. 合わせて,相反抑制の効果を組み合わせるか判断する必. 因の効果を図ることが可能になる。一方で背屈時に H. 要性が示唆された。. 波の振幅値が上昇する脳性麻痺患者では,相反抑制の効 果を組み合わせることはできず,ストレッチによる生理 学的要因の効果を図るなど,理学療法介入の方法が異. 利益相反  本研究において開示する利益相反関係はない。. なってくることが予想される。今後は脳性麻痺患者の対 象数を増やし,粗大運動レベル別の検討や足関節の随意. 謝辞:本研究は科学研究費助成事業 (課題番号:16K21440). 性の程度を考慮した調査,背屈時の H 波振幅値の変化. の助成を受けて実施した。. の特徴を考慮したストレッチ方法の再考が必要と思わ れる。 2.研究の限界  本研究では潜時に群間の主効果を認めた。脳性麻痺患 者の神経伝導速度は健常者と比べて遅延する可能性があ るが,表 1 の身長と体重からわかるように CP 群は対照 群と比較して体格が小さかった。対照群は CP 群と年齢 や身長,体重によるマッチングを行っていなかった。そ のため,下肢長にも差が生じ,潜時に群間の主効果を認 めたと考えられる。また,今回は対象者への負担軽減の ため,M 波の最大振幅値の測定は行わなかった。その ため,足関節は固定していたが,背屈運動による電極設 置部位と筋のずれによって H 波の振幅値が個別に変化 していた可能性がある。今後は対照群の年齢や下肢長を 考慮し,M 波の最大振幅値の測定を行い,M 波の最大 振幅値に対する H 波の最大振幅値の比(H/M 比)によ る検討も必要である。  表 1 の SCALE 足関節の人数分布のように,CP 群で 滑らかな足関節底背屈運動を行えた者は 3 名だった。ま た,図 2,3 からわかるように足関節の SCALE が 1 点, 0 点と背屈動作の不十分な者でも背屈時にヒラメ筋の H 波振幅値が低下した者がいた。本研究では筋電図にて背 屈時の前脛骨筋の筋活動や前脛骨筋とヒラメ筋から同時 収縮の有無を確認しなかったため,相反抑制の前提とな る背屈筋の筋収縮が CP 群で起こっていたのかが不明で ある。今後は脳性麻痺患者における背屈時の筋電図解析 や H 波振幅値の変化に影響を及ぼす要因を明らかにし ていく必要がある。 結   論  痙直型脳性麻痺者は足関節等尺性背屈時に拮抗筋であ るヒラメ筋への相反抑制がかからない者がおり,健常者 と比べて脊髄前角細胞の興奮性が十分に制御されていな. 文  献 1)Liberson WT, Chen LC, et al.: "H" reflexes and "F" waves in hemiplegics. Electromyogr Clin Neurophysiol. 1977; 17(3-4): 247‒264. 2)小森哲夫:痙性脊髄麻痺患者における F 波の性質.臨床 神経学.1981; 21(6): 517‒521. 3)板垣敏明:頸椎痙性脊髄症における F 波に関する研究.日 大医誌.1983; 42: 751‒759. 4)宮地 健:片麻痺型脳性麻痺の末梢神経機能.リハ医. 2000; 37(9): 598‒604. 5)三山佐保子,有本 潔,他:痙性四肢麻痺児における H 波の検討.脳と発達.2009; 41(1): 21‒26. 6)Mizuno Y, Tanaka R, et al.: Reciprocal group I inhibition on triceps surae motoneurons in man. Neurophysiol. 1971; 34: 1010‒1017. 7)中村浩一,兒玉隆之,他:ヒラメ筋に対するストレッチン グ効果の筋電図学的解析.ヘルスプロモーション理療研. 2014; 4(3): 125‒128. 8)Leonard CT, Moritani T, et al.: Deficits in reciprocal inhibition of children with cerebral palsy as revealed by H reflex testing. Dev Med Child Neurol. 1990; 32(11): 974‒984. 9)Kusumoto Y, Hanao M, et al.: Reliability and validity of the Japanese version of the selective control assessment of the lower extremity tool among patients with spastic cerebral palsy. J Phys Ther Sci. 2016; 28(12): 3316‒3319. 10)Braddom RI, Johnson EW: Standardization of H reflex and diagnostic use in Sl radiculopathy. Arch Phys Med Rehabil. 1974; 55(4): 161‒166. 11)緒方陽一郎,大城昌平 , 他:随意的足関節背屈時における ヒラメ筋 H 反射の変化.運動生理.1994; 9: 27‒32. 12)鏡原康裕,正門由久:足関節の Cocontraction 時における Ib 抑制回路の活動性.リハ医.2004; 41: 686‒691. 13)芝崎 淳,阿部浩明,他:病期別にみた脳卒中片麻痺者 の歩行改善に向けて─生活期から─.理学療法学.2014; 41(8): 567‒572. 14)Kusumoto Y, Takaki K, et al.: Relation of selective voluntary motor control of the lower extremity and extensor strength of the knee joint in children with spastic diplegia. J Phys Ther Sci. 2016; 28(6): 1868‒1871. 15)野口綾利,菅原和広,他:足関節底屈筋群に対するスト レッチング様式の違いがヒラメ筋 H 波および筋血流動態 に及ぼす影響.理学療法科学.2014; 29(2): 219‒223..

(6) 痙直型脳性麻痺者における足関節等尺性背屈時の H 波の特徴. 〈Abstract〉. Characteristics of H-reflex during Isometric Dorsiflexion of the Ankle in Patients with Spastic Cerebral Palsy. Yasuaki KUSUMOTO, PT, PhD, Hitoshi SUGAWARA, PT, PhD Department of Physical Therapy, Faculty of Health Sciences, Tokyo University of Technology Tadamitsu MATSUDA, PT, PhD Department of Physical Therapy, Faculty of Health Sciences, Josai International University Kenji TAKAKI, PT, MSc Department of Physical Therapy, Faculty of Health Sciences, Mejiro University Osamu NITTA, PT, PhD Department of Physical Therapy, Faculty of Health Sciences, Tokyo Metropolitan University. Purpose: The aim of this study was to investigate the characteristics of H-reflex amplitude during isometric dorsiflexion of the ankle in patients with spastic cerebral palsy. Methods: This trial was designed as a cross-sectional study. The subjects were 14 patients with spastic cerebral palsy (CPG) aged 12-30 years with gross motor levels I, II, and III, based on the Gross Motor Function Classification System (Expanded & Revised version), and 14 healthy individuals (typical development: TDG) aged 18-20 years. Selective Control Assessment of the Lower Extremity (SCALE) was measured in the CPG. Maximum H-reflex of the soleus muscle was measured both at rest and during isometric dorsiflexion of the ankle in both groups. Results: The amplitude of H-reflex showed a significant interaction between the groups both before and after dorsiflexion. The amplitude of the H-reflex improved only in the TDG. The H-reflex amplitude improved in eight CPG subjects and did not improve six CPG subjects. The H-reflex amplitude improved all TDG subjects. Conclusions: CPG had a diminished ability to regulate H reflex during isometric dorsiflexion of the ankle compared to TDG. It was suggested that need to change stretch methods of gastrocnemius and soleus muscle by ability to regulate the amplitude of H-reflexes in patients with spastic cerebral palsy. Key Words: Cerebral palsy, H wave, Reciprocal inhibition, Dorsiflexion, Selective voluntary motor control of the lower extremity. 173.

(7)

表 1 対象者の属性 CP 群(n=14) 対照群(n=14) p 値 性別(男,女,(名)) 10,4 14,0 0.03  * 年齢(歳) 18.3 ± 6.1(12 〜 30) 18.5 ± 0.7(18 〜 20) 0.90 身長(cm) 156.7 ± 8.6 172.4 ± 6.9 p &lt; 0.001 * 体重(kg) 53.2 ± 9.2 66.9 ± 9.2 p &lt; 0.001 * GMFCS レベル(Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,(名)) 3,4,7 − − SCALE(点) 4.7 ± 2.5

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