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使用成績調査データの活用

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Academic year: 2021

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タスクフォース-2:長谷川寿一*1(大日本住友製薬 ㈱ ファーマコビジランス部),西利道*2(大鵬薬品工業 ㈱ 薬制部),松井慶太*2(アステラス製薬 ㈱ 育薬情報部),井野嘉明*2(アボット ジャパン ㈱ 医学統括本部 ファーマコヴィジランス 市販後調査グループ),真田勝之*2(武田薬品工業 ㈱ 医薬情報部),野﨑一郎*2(日 本イーライリリー ㈱ 信頼性保証本部安全性情報部統括管理室 PMS 実施管理課),中野涼子*2(東レ ㈱ 医 薬・医療情報部),上崎利昭(味の素 ㈱ 医薬カンパニー薬事部),藤田賢司(あすか製薬 ㈱ 信頼性保証本部 医薬情報部),松岡俊之(エーザイ ㈱ 臨床研究センター 育薬企画部),岩竹紀明(大塚製薬 ㈱ ファーマコ ヴィジランス部),上安功明(小野薬品工業 ㈱ 医薬情報部 調査室),甲斐靖彦(参天製薬 ㈱ 市販後調査グ ループ),伊藤和彦(千寿製薬 ㈱ ファーマコヴィジランス部安全性情報グループ),野上佳秀(田辺三菱製薬 ㈱ 安全管理統括部調査管理部),戒田全(㈱ ツムラ信頼性保証本部安全管理部安全管理課),大場節哉(ノバ ルティスファーマ ㈱ 安全管理統括部),小嶌一夫(バイエル薬品 ㈱ メディカルアフェアーズ),中村圭吾(マ ルホ ㈱ 安全管理部),河野仁(明治製菓 ㈱ 市販後安全管理部第 2G) *1:リーダー,*2:拡大幹事 〈Abstract〉

The drug use-results survey, as well as the spontaneous reporting system, is an important measure to collect the post-marketing safety and effectiveness information of drugs;many drugs have already been evaluated.

The data collected through the drug use-results surveys is submitted to the authorities as part of the application documents for drug reevaluation, but has seldom been used for pharmacoepidemiological research despite its potential for such use.

We propose the authority to make full use of the drug use-results survey data for pharmacoepidemiological research by developing a database of the collected data after standardization of the survey items such as adverse events, and disease-specific background information of patients.

Key words:drug use-results survey, standardizing the drug use-results survey items, database,

pharmacoepidemiology

Post-Marketing Surveillance Subcommittee, Drug Evaluation Committee, Japan Pharmaceutical Manufacturers Association*

Potential of Drug Use-Results Survey Data for

Pharmacoepidemiological Research

日本製薬工業協会 医薬品評価委員会

PMS 部会 タスクフォース-2

第二部 情報データベースとエビデンスの創製

使用成績調査データの活用

Torii Nihonbashi Bldg., 3-4-1 Nihonbashi-Honcho, Chuo-ku, Tokyo 130-0023, Japan シンポジウム 2

医薬品評価と薬剤疫学〜患者さんへ真に役立つ医薬品の提供を目指して〜 第 14 回 日本薬剤疫学会学術総会記録

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はじめに 2005 年 9 月に厚生労働省より ICH E2E ガイド ライン「医薬品安全性監視の計画」が通知され, 製造販売後の調査および試験計画を示す製造販売 後調査等基本計画書の内容の充実が求められた. E2E ガイドラインには医薬品安全性監視の方法 すなわちシグナルの検出,評価あるいは安全性の 立証などの目的に用いられる方法として種々の薬 剤疫学研究の手法が示されている1).欧米ではこ のような研究に利用できる各種データベース (DB)が存在しており,これらの DB を使った研 究が数多く実施されている.しかし,本邦におい ては製薬企業が薬剤疫学研究に利用可能な大規模 DB が存在しない状況である.厚生労働省は 2011 年度からレセプトデータの全国規模での収集,分 析・公表する計画であるが,現段階では製薬企業 が薬剤疫学研究に使用することは想定されていな い.このような状況の中,日本製薬工業協会(製 薬協)は 2008 年の官民対話の場(厚生労働省,文 部科学省,経済産業省および内閣府と製薬業界と の革新的創薬等のための政府と産業の対話の場) で薬剤疫学研究に利用可能な大規模自動医療 DB の実現を行政当局に要望するとともに,現存する 各種 DB の利用可能性および理想的な DB の要件 に関する検討を行っている. 一方,本邦においては市販後の安全性に関する 情報の収集手段として,使用成績調査が自発報告 制度とともに重要な位置づけにあり,多数の使用 成績調査(特定使用成績調査脚注)を含む)が製薬企 業により実施されている. 今回我々は製薬企業が多額の費用をかけて実施 し,電子的に保管している使用成績調査データの 薬剤疫学研究への二次活用について,製薬協医薬 品評価委員会 PMS 部会タスクフォース-2(TF-2)で検討した結果を報告する. 使用成績調査の概要 使用成績調査は,医薬品の承認後に使用実態下 で安全性を中心に有効性を含めた情報を収集する ために製薬企業が実施する調査である. 使用成績調査は 1980 年の再審査制度の施行と ともに開始され,当時 10,000 例の調査が実施さ れた.1987 年から「医薬品の使用成績調査の実施 方法に関する研究班」(班長:慶應大学本間光夫名 誉教授)の検討が開始され,1991 年に研究報告が まとめられた.その結果,使用成績調査は発現頻 度 0.1%の副作用を少なくとも 1 例,95%の検出 力で検出できる例数として 3,000 例の実施が定め られた.1993 年には具体的な調査方法について 「新医薬品等の再審査の申請のために行う使用の 成績等に関する調査の実施方法に関するガイドラ イン」が通知され,希少疾病医薬品以外では,従 来のレトロスペクティブな症例収集から,投薬患 者の登録によるプロスペクティブな症例収集に変 更された2).その後,2000 年の市販直後調査の導 入に伴い,一律 3,000 例の実施がガイドラインか ら削除され,現在は,その目的に従って症例数を 定めて収集している. 製薬企業には承認後の調査および試験の実施計 画について,製造販売後調査等基本計画書として 全体計画を作成し,販売開始予定の 1 カ月前まで に提出することが求められている.また,それぞ れの調査等の調査内容については,製造販売後調 査等実施計画書に記載し,調査および試験開始 1 カ月前までに提出することが求められている. 脚注)「特定使用成績調査」とは使用成績調査のうち,製造販売業者等が,診療において,小児,高齢者,妊産婦, 腎機能障害又は肝機能障害を有する患者,医薬品を長期に使用する患者その他医薬品を使用する条件が定めら れた患者を対象とし行う調査を言う. 図 1 使用成績調査の流れ

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使用成績調査の流れを簡単に図 1 に示す.一部 の全例調査を除き,医療機関において当該医薬品 が採用され,調査の実施が可能であると判断され る時期から開始される.調査を依頼する医療機関 としては「調査の目的を十分果たしうる」医療機 関を選択する.製薬企業と医療機関との契約締結 後,調査担当医師は当該医薬品の使用症例を定め られた登録方法により登録,観察期間終了後カル テの記載内容を調査票に転記し,製薬企業に提出 する.主として用いられる調査方法とその特徴を 表 1 に示す.製薬企業は収集された調査票が登録 症例であることおよび記載内容を確認し,記載漏 れなどの不備や内容の不整合があった場合は再調 査依頼を行う.調査終了後,医療機関に調査票作 成に対する報酬が支払われる. 製薬企業は調査票から得られた安全性および有 効性の情報を,使用成績調査実施計画書に定めた 集計解析方法に従い集計解析し,背景因子による 層別解析など詳細な検討を行っている.これらの 調査結果は,安全性定期報告書や再審査申請資料 として行政当局へ提出するとともに,医療用医薬 品添付文書の「使用上の注意」の「副作用」を追 加したり,「臨床成績」等の項へ使用成績調査結果 の追加を提案する根拠資料としている.また,製 薬企業の判断で適正使用情報としてその結果を医 療関係者へ提供している. 使用成績調査の実施状況について PMS 部会参 加会社 78 社を対象としたアンケート調査の結果, 2006 年度に実施中の使用成績調査数は 53 社 173 調査であった.特定使用成績調査は 52 社 323 調査であった.1 調査当たり 1,000 例/年収集され るとすると年間約 500,000 症例が収集されている こととなる. 使用成績調査に要する費用は概算ではあるが, 1 例当たりの医療機関への報酬が 20,000 円(医療 用医薬品製造業公正競争規約で 1 症例当たり 30,000 円を超えない額が目安とされている),そ の他経費(データマネジメント費用,解析費用な ど)が個々の調査票内容で異なるものの約 30,000 円で計 50,000 円と試算される.これには MR な ど社員の人件費は含まれていない.3,000 例を収 集する調査では人件費を除いても 1 調査当たり 1 億 5,000 万円が費やされていることになる. 使用成績調査データの特徴 使用成績調査データの特徴は,介入のない使用 実態下の観察研究であること,基本的には当該医 薬品を新規に使用開始した症例であること,当該 疾患の重症度,合併症,併用薬や実施された臨床 検査値の収集が可能であること,収集している有 害事象情報は医師により重篤性や併用薬,原疾患, 合併症等を加味した当該医薬品との因果関係が評 価されていること,GPSP 省令38に則り実施され ていること,加えて再審査対象の医薬品では行政 当局による適合性調査が実施され信頼性が保証さ れていることなどが挙げられる.また,一般的な 調査項目については「医療用医薬品の製造販売後 調査等の実施方法に関するガイドライン」で示さ れており,標準化も図られている48 一方で各製薬企業が収集できる症例数には限り があり,ほとんどの調査が当該医薬品を使用した 症例のみの情報であり,対照群を有していない. また,それぞれの調査は医薬品の特性に応じて各 製薬企業が重点調査事項等を設定しており,調査 項目が完全には標準化されていない. 使用成績調査はこのような特徴を有しており, データの活用にあたっては各種バイアスを考慮し たうえでの検討が必要である. ・中央登録方式 調査担当医師に当該医薬品の投与を開始した時点で, 企業の製造販後調査等管理部門やあらかじめ定めた センター等へ登録してもらい,登録したすべての症例 を調査票に記載してもらう方法 ・連続調査方式 調査担当医師に当該医薬品の投与を開始する(または 開始した)症例を依頼症例数まで連続して(もれなく) 調査票に記載してもらう方法 ・全例調査方式 調査担当医師に一定の依頼調査期間中に当該医薬品 を使用する(または使用した)全症例について(もれ なく)調査票に記載してもらう方法 表 1 調査方法

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くすりの適正使用協議会による 使用成績調査データの活用 くすりの適正使用協議会は統計数理研究所リス ク解析戦略研究センターと共同で,2000 年より降 圧剤の DB 構築に着手し,2002 年までに 17 社か ら 19 製品 125,657 症例の使用成績調査の情報を DB 化している.その後拡張され,2007 年には 17 社から 21 製品 143,509 症例の DB が構築された. 経口抗菌剤については 2005 年時点で 7 社から 7 製品 91,797 症例の使用成績調査の情報が DB 化 されている.今後の予定として高脂血症治療薬の DB 構築が計画されている. これらの DB を用いた研究報告を表 2 に示 す5,6) 降圧剤 DB では ACE 阻害剤の咳嗽の発現頻度 と関連要因の検討が報告されている.ここで用い られた方法は ACE 阻害剤の使用を新たに開始す る本態性高血圧症例を対象としてケース・コント ロール研究が行われた.ケースは投与後 12 週後 までに咳嗽が発生した 947 症例,コントロールは 各ケースの咳嗽が発生した投与後日数において ACE 阻害剤が投与継続中のものをリスク集団と して,同じ使用成績調査データの中からランダム にケースごとに 3 人を選択する時点マッチングが 用いられた.関連要因として性別,年齢,高血圧 病期分類,BMI,調査前の降圧薬,併用薬を選択 し,検討した結果,ACE 阻害剤が関連する咳嗽発 生の増加に係わる要因としては,女性,b 遮断剤, a 遮断剤ないし Ca 拮抗剤などの降圧剤が調査前 に使用されていたこと,肥満や脂質代謝異常の合 併症があること,喘息などの呼吸器系の合併症が あることが挙げられた. 経口抗菌剤 DB ではセフェム系経口抗菌剤によ る下痢発現の関連要因が報告されている.下痢の 発生率が示され,ポアソン回帰モデルでの相対リ スクが検討されている.関連要因として性別,年 齢,入院・外来,合併症,アレルギー素因,併用 薬,併用療法,調査前抗菌薬の有無,重症度を選 択し,検討した結果,年齢では 5 歳未満,次いで 5〜14 歳での相対リスクが大きく,併用薬ありの 相対リスクも増大していた. 藤田らは,使用成績調査 DB の活用方法として は,「未知・重篤な有害作用検出というよりは,頻 度の比較的高い有害作用の発現を軽減して適正使 用を推進するための活用法が最も期待される.あ るいは,他から創生された安全性および有効性に かかわる仮説について,仮説強化ないし仮説検証 のための研究を迅速に行える可能性がある」とま とめている.また,使用成績調査のデータの問題 点としては併用薬の使用用量,身長,体重などが 未記載,医薬品コードが同定不能,追跡期間が短 いなどを挙げている5,6) 行政当局による 使用成績調査データの活用 くすりの適正使用協議会の事例のように使用成 績調査データは有効に二次活用できる可能性があ るにもかかわらず,現時点では各企業が個々に活 用するに留まっている.我々は,行政当局が各企 業から提出された使用成績調査のデータを DB 化 し,比較対照群を考慮した薬剤疫学研究を実施す ることを提案する.とくに承認条件として課され た全例使用成績調査のデータの活用は重要である と考える.複数の調査データから作成された薬効 群 DB や疾患 DB については個々の調査で重点調 査事項の設定により有害事象の収集内容が異なる ことや調査実施時期が異なるなど課題はあるもの の,安全対策上重要と思われる重篤な有害事象に ついては,同様に収集されており比較検討は可能 であると考える. ●降圧剤 ) ACE 阻害剤の咳嗽の発現頻度と関連要因の検討 ) 非ステロイド性消炎鎮痛剤併用に伴う降圧効果の 減弱 ) CYP-3A4 を阻害する医薬品との併用による Ca 拮抗薬での副作用増加の可能性 ●経口抗菌剤 ) セフェム系経口抗菌剤での下痢の発現の関連要因 ) ニューキノロン系経口抗菌剤での光線過敏性反応 の発現の関連要因 表 2 データベースを用いた研究報告

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行政当局は検出されたシグナルやシグナルの評 価結果などについて製薬企業とその対応を協議す るなど,使用成績調査データをこのように活用す ることで早期安全確保措置の実施につなげること が可能である. そのための第一段階として,有害事象関連の各 項目の調査内容を全製品統一し,さらに各疾患領 域特有の背景項目など標準化を図ることが必要で ある.個々の医薬品ごとに安全性検討事項が異な り,使用成績調査の調査内容が異なることも考え られるが,基本的な調査項目の統一は疾患領域ご とにある程度可能であると考える. そのことにより以下に示すようなデザインの薬 剤疫学研究の実施・検討が可能になると考えられ る. ઃ.比較対照群(historical control)あるいは DB としての活用 使用成績調査の多くが対照群のない調査である が,得られた安全性情報を既存の調査の成績と比 較することにより,ある程度の解釈や判断が可能 となる.また,多数の使用成績調査の成績を統合 し,DB 化しておくことにより,新たな調査・試験 を実施することなく速やかに相対的なリスクの推 定を行うことが可能である. 8 先行する同薬効で類似する承認条件が付さ れた薬剤のデータとその後に承認される薬剤 のデータ(中間成績など)を用いた有害事象 の発現頻度や関連要因などの比較検討. (例) 新しい作用機序の抗がん剤の開発が続くよう なケースでは,行政当局は最初の薬剤上市時 にその後の薬剤開発状況を考慮した使用成績 調査の計画作成を指導する.たとえば 1,000 例の全例調査の実施を承認条件で指示しデー タが収集された場合,その後の類似薬効の抗 がん剤においては,安全対策上検討が必要と された有害事象の評価に必要な目標症例数の 設定を指導する.製薬企業は安全性定期報告 時あるいは一定症例数集積時にデータを提出 すれば,行政当局はこれら 2 つのデータを比 較検討してシグナルの強度の比較を行うこと が可能である. 8 希少疾病医薬品については安全性に加えて 有効性についても検討. (例) HIV 感染症治療薬に見られるように,その特 殊性を考慮し,各社が同一の調査要綱,調査 票を用いて実施している事例がある.ここで は有効性について CD4 陽性リンパ球数の推 移や Kaplan-Meier 法で生存率の比較検討を 行っている. このように比較試験が困難な希少疾病医薬品 では有効性についても客観的評価が可能な評 価項目を設定し,比較検討を行うことが可能 である. 8 症例数が多い疾患領域(メタボリック症候 群など)における DB による有害事象の発現 要因などの検討. (例) 糖尿病治療剤,高血圧治療剤,高脂血症治療 剤などは,互いに併用されるケースが多いこ とから,行政当局は使用成績調査の調査項目 について患者背景項目などの標準化を指導す る.製薬企業は調査終了後速やかにデータを 行政当局へ提出する. 行政当局は DB を構築し相互作用の検討,発 現要因の検討などを行い,シグナルを検出す る. 8 自発報告からシグナルが検出された場合に 類似薬効 DB でリスクの大きさを他の薬剤と 比較検討. (例) 自発報告により特定の有害事象がシグナルと して検出された場合,当該医薬品を含む類似 薬効 DB が構築されていれば,他の同効薬と のリスク(Odds 比)を評価することにより, その薬剤に特有のリスクか,同効薬に共通の リスクかの判断材料を得る可能性がある. ઄.その他の活用 8 治療ガイドラインと使用実態の検討の参考 データとしての活用. 医薬品の使用の実態が治療ガイドラインに則

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した状況にあるのかを確認するとともに,ガ イドラインの妥当性を評価することができ る. ) 学会からの適応外使用の追加承認取得など の要望書に対する参考データとしての活用. 使用成績調査で適応外使用症例が多く含まれ ることはないが,承認後長期間を経たような 併用薬の情報を有することから,承認取得を 要望された医薬品における有効性,安全性に 関する情報を DB から得ることができれば, 審査の際の参考情報として活用することが可 能となる. ) 配合剤承認審査時の安全性関連情報の参考 データとしての活用. 各成分を含有する医薬品を併用した時の有効 性,安全性に関する情報を得ることにより, 審査の際の参考情報として活用することが可 能となる. 調査項目の標準化と 行政当局へのデータ提出 1986 年,厚生省(当時)は再審査の適正かつ円 滑な運用と再審査申請資料の適正な管理および活 用を図ることによる医薬品の安全対策の推進を目 的とし,「再審査情報検索システム」を導入した. これに伴い申請企業は使用成績調査で得られた個 別調査症例情報を磁気テープに入力し,再審査申 請と同時に提出することを義務付けられた7) 1996 年,厚生省は個別調査症例情報の磁気テー プによる提出をフロッピーディスクによる提出に 変更した.その際,入力内容についても見直され, それまでは複数の入力が可能であった「合併症」 については記載数のみを,「併用薬」については記 載数と代表的な薬剤 1 剤の名称のみを入力するこ とに変更された8) 再審査申請企業は,現在も同様のファイル形式 で個別調査症例のラインリスト(再審査申請添付 資料別紙様式 3 使用成績調査症例概要一覧)を 電子的に提出しているが,GPMSP 適合性調査の 際に使用されるに留まっており,十分に活用され ていない. この別紙様式 3 の様式は DB を目的に作成され たものではないことから,薬剤疫学研究に用いる DB とするためには項目の追加,修正等を行うこ とが望ましい.我々が検討した使用成績調査 DB 構築に必要な項目を表 3 に示す. 患者背景に関する情報のうち合併症について は,別紙様式 3 では合併症記載数となっているが 全事象名とする必要がある.また,併用薬剤に関 する情報については,別紙様式 3 では代表薬剤名 と記載数のみとなっているが併用された全薬剤 名,投与量,投与経路,使用期間(いつから投与 調査薬剤 全薬剤名,1 日平均投与量,単位,投与経 路,使用期間(日付),使用理由(発現した 有害事象に対する処置か否か) 代表薬剤名,記載数 併用薬剤 性別,年齢,入院・外来の別,本剤の使用 理由,本剤投与前重症度,合併症(有無, 記載数) 安全性 有効性 効果の程度 効果の程度 副作用の有無,副作用名,副作用記載数, 転帰 患者背景 様式 3 アンダーライン:様式 3 に追加あるいは修正が必要な項目を示す 情報内容 表 3 使用成績調査データベース構築に必要な項目(様式 3 と検討案の比較) 有害事象の有無,有害事象名,重篤性,転 帰,因果関係 検討案 投与経路,1 日最大投与量,1 日平均投与量, 単位,1 日投与回数(最多),使用期間(日 数) 投与経路,1 日最大投与量,1 日平均投与量, 単位,1 日投与回数(最多),使用期間(日 付) 性別,年齢,身長,体重,BMI,入院外来の 別,本剤の使用理由,本剤投与前重症度, 合併症(有無,全事象名)

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を開始して,いつ終了したか)とする必要があり, 別紙様式 3 では大きく情報が不足している.安全 性に関する情報については,別紙様式 3 では副作 用となっているが有害事象に変更し,薬剤との因 果関係も追加する必要がある. これら別紙様式 3 の変更やデータ提出に関連す る製薬企業側の問題は,データ抽出プログラムの 変更やデータ管理を CRO と契約し委託している ことから新たな費用が発生するなどの問題があげ られ,即時対応するには課題がある. 行政当局への提言 日本薬剤疫学会 PMS 検討会(座長 大橋靖雄) は 2003 年にわが国における PMS の今後のあり 方について,幅広く現状の問題点の検討を行い, 解決・改善策についての提言をまとめている.各 論のひとつ「行政が保有するデータの利用」では 「使用成績調査,特別調査のデータも観察研究の データ源,または比較対照の参照データとなりう ることから,当該品目の評価に使用した後,遂次 DB 化し整備すること」を行政に提言している98 今回の TF-2 の検討においても使用成績調査 データには,種々のバイアスや各調査の実施時期 が異なるなどの限界はあるものの,前述のとおり 調査項目の標準化を図ることで,DB が不足して いる本邦においては有用な薬剤コホートとして二 次利用可能であることから,行政当局が使用成績 調査データを用いた薬剤疫学研究を行うことを提 言する. なお,医薬品医療機器総合機構は平成 21 年度 からの第 2 期中期計画で「使用成績調査データに ついて,平成 23 年度から調査・研究のために利用 できるようにするものとし,そのための検討を平 成 21 年度から開始する」ことを示しており,製薬 協の提言も踏まえ今後の検討に期待したい. また,製薬協は 2008 年の官民対話の場で薬剤 疫学研究に利用可能な大規模自動医療 DB の実現 を行政当局に要望しており,引き続き医療情報 DB の活用を提言していく. 文 献 18 医薬品安全性監視の計画について 厚生労働省医薬 食品局審査管理課長・安全対策課長(平成 17 年 9 月 16 日 薬 食 審 査 発 第 0916001 号・薬 食 安 発 第 0916001 号). 28 新医薬品等の再審査の申請のために行う使用の成績 等に関する調査の実施方法に関するガイドラインに ついて 厚生省薬務局安全課長(平成 5 年 6 月 28 日 薬安第 54 号). 38 医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に 関する省令の施行について 厚生労働省医薬食品局 長(平成 16 年 12 月 20 日薬食発第 1220008 号). 48 医療用医薬品の製造販売後調査等の実施方法に関す るガイドライン 厚生労働省医薬食品局審査管理課 長(平成 17 年 10 月 27 日 薬食審査発第 1027001 号). 58 降圧剤ならびに経口抗菌剤データベースの報告書他 // くすりの適正使用協議会ホームページ http://www. / rad-ar.or.jp/ 68 藤田利治,真山武志.降圧剤の使用成績調査データ ベース構築とその活用例.日本統計学会誌 2007; 36:205-17. 78 再審査品目に係る再審査データ入力ファイルの提出 について 厚生省薬務局安全課長(昭和 61 年 8 月 11 日 薬安第 172 号). 88 再審査品目に係る再審査データ入力ファイルの提出 について 厚生省薬務局安全課長(平成 8 年 3 月 27 日 薬安第 25 号). 98 PMS 検討会による報告.薬剤疫学2003;8:3-34.

参照

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