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技術論文 実物ベース遠隔コラボレーション支援システム LightCollabo LightCollabo : Distant Collaboration Support System Involving Real Objects 要旨 企業活動のグローバル化が進展する中 企業の壁を越えた連携強化によ

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実物ベース遠隔コラボレーション支援システム

LightCollabo”

LightCollabo : Distant Collaboration Support System

Involving Real Objects

要 旨

企業活動のグローバル化が進展する中、企業の壁を 越えた連携強化によって、お客様の企業品質向上に資 することが、富士ゼロックスの掲げる企業ビジョン “オープンオフィスフロンティア”においても重要な ポイントである。主に製造業における企業間連携の進 展において課題となっている TV 会議などでの実物を 見ながらの議論の困難さを解消するために活用出来 る、遠隔コラボ支援システムLightCollabo システムを 構築した。LightCollabo システムが提供する、遠隔か らの実物観察と光による描画指示サービスによって、 実物ベースの遠隔コミュニケーションを円滑かつ効 果的に進めることが出来る。約1 年にわたる現場での 試用実験を通して行なったシステム改善および試用 評価の中間結果と、今後の改善・性能向上の方向性に ついて考察した。

Abstract

執筆者 伊與田 哲男 (Tetsuo Iyoda) 安部 勉 (Tsutomu Abe) 東海 研 (Kiwame Tokai) 坂本 彰司 (Shoji Sakamoto) 新宮 淳 (Jun Shingu) 大貫 宏子 (Hiroko Onuki) 研究本部 未来ワーク研究所

(Future Work Research Laboratory, Corporate Research Group)

“Open Office Frontier,” which is the corporate vision of Fuji Xerox, aims to enrich communication and collaboration between globally scattered companies. The LightCollabo team works on facilitating remote collaboration involving physical objects, which is common among industrial companies. LightCollabo enables an operator at a distant location to view real objects and to project annotations on the objects. The operator can remotely point, draw, and annotate on the objects to enhance smooth collaboration. This report describes improvement efforts of the system made through our one-year trial experiment, and discusses future performance improvements and enhancements

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1. 緒言

市場や企業活動のグローバル化の進展や、 2007 年問題として議論される技術の伝承課題 などの観点から、現状の製造関連産業における 空間を超えたコミュニケーションの重要性は、 今後とも一層増していくと考えられる。富士ゼ ロックスが企業ビジョンとして掲げるオープン オフィスフロンティアの理念においても、企業 や空間の壁を越えた連携の強化によって、お客 様の企業品質向上へ資することが、重要なポイ ントのひとつと考えられる。 製造業における企業間連携においては、従来 の遠隔コミュニケーション技術である電話、 FAX、電子メールや、TV 会議システムなどの 活用では不十分であるために、開発担当の技術 者による度重なる海外出張の発生や、トラブル 品の緊急輸送といった事象が起こっており、海 外展開によるコストメリットとの相殺が懸念さ れる。既存技術による遠隔コミュニケーション システムの限界は、製造業において重要である 現場・現物の状況把握の困難さや、現物へのイ ンタラクション手段の欠如に起因しており、 我々はこれらの課題に解決策を提供しうるもの として、FX パロアルトラボラトリーにおける 研究コンセプト iLight[1]を出発点として、 LightCollabo というシステムを構築した。 LightCollabo の特徴は、遠隔からの現物の観 察にとどまらず、現物への遠隔アノテーションの 手段を提供することにより、一方だけに現物が存 在する非対称コミュニケーションでありながら も、現物に関係する相互の意思疎通を円滑かつ安 心して実施出来るものとしている点である。 約 1 年間にわたり実際に稼働出来るシステム として社内の現場に設置し、実試用を通した改善 を行なってきた。ここでは、システム構成の特徴 と技術的ポイントを概説し、社内試用とそこで始 めているシステム評価の概要について報告する。 さらに、進行中の試用実験における課題認識や性 能向上の方向性などについて考察する。

2. 背景

本章では、LightCollabo のコミュニケーショ ンシステムとしての位置付けについて概観し、 続いて関連研究との比較からその技術的特徴に ついて述べる。 2.1 コミュニケーションシステムとして の特徴 遠隔コミュニケーション技術は、対話者間に メディア装置を配置するという点において、対 面コミュニケーションと異なる。我々が身体を 使って自然に行なっているコミュニケーション 行為はメディア装置上では機能せず、このこと が製造業の現場で様々な問題を引き起こしてい る。 言語や身体を使ったコミュニケーション行為 が機能しないという前提から出発するコミュニ ケーション研究としては、発達心理学が興味深 い示唆を与えている。幼児の言語獲得における 基底的な機能として必ず指摘される事柄に、共 同注意がある。「ある物を共通の名前で呼ぶに はまず共同の指示物(joint referent)に対して 共同注意(joint attention)を払うことが前提 となる。」(Bruner, 1983)[2]この指摘から明ら かなように、共同注意を実現するためには、指 示物を共有することに加え、指示物に対する指 示を共有することが必要である。 既存の遠隔コミュニケーション技術では、こ れらの点が十分に考慮されているとはいえない。 TV 会議システムは相手の顔を映し出すことに 主眼を置き、遠隔地の対象物を見せることには 適していない。また、対象物に対する指示を行 なうこともその指示を共有することもできない。 このようなコミュニケーション技術を製造現場 に適用すると、遠隔地の現物を見ることや、遠 隔地の現物に言及して議論を行なうことが困難 になる。一部のソフトウエアでは画像やアプリ ケーション画面とそれに対する操作を共有する ことでこれらの問題に対応しているものがある が、このようなソフトウエアシステムが扱える のは計算機内に一度取り込まれたデータだけで ある。 LightCollabo は、現物を直接の対象として遠 隔地間での共同注意を支援することを目的とし たシステムである。現物を見る機能と現物に言 及する機能はそれぞれ画像配信技術と遠隔アノ テーション技術で実現した。即ち、遠隔地から 現物を見る機能については現物の画像をリアル タイム配信することで対応し、遠隔地の現物に 言及する機能については配信された画像上に描 画を行なうとこれを現物上の同じ位置に投射す るという技術で実装した。

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2.2 関連研究 カメラとプロジェクタを用いた遠隔ポイン ティング・アノテーションシステムの研究はい くつか行なわれている。カーネギーメロン大学 により開発された“Tele-Graffiti”と呼ばれる 双方向システム[3]では、遠隔地の机上の映像を プロジェクタにより投影することで遠隔地間で の机上共同作業を可能にしている。NTT による 研究事例では、保守現場に対する遠隔からのメ ンテナンス手順指示をプロジェクタで投影する システム[4]を構築しているほか、遠隔地から レーザーポインタを制御してポインティングを 行なう研究例[5]がある。これらは主に平面に近 い物体を対象にしているが、LightCollabo では 製造業における工業製品のような3 次元物体を 対象にして遠隔地から描画を行なう。このとき LightCollabo には、3 次元物体上に高い精度で 描画投影を行なうことが求められるが、単純に カメラとプロジェクタとを並べたハードウエア 構成の場合は、指定した位置とずれた場所に描 画 が 投 影 さ れ て し ま う 問 題 が あ る 。 LightCollabo は、カメラとプロジェクタとを光 学的に同軸上に置くハードウエア構成により、 遠隔地から高精度で自在な描画投影を行なうこ とを可能にしている。 プロジェクタとカメラを組み合わせたハード ウエア構成による応用システムの研究は、拡張 現実感システム(Augmented Reality)[6]の分 野でも多く行なわれている。AR システムの分 野では、実物の上に電子データを表示してイン タラクションを行なう試みがなされており、 EuroPARC によるディジタルデスクの研究例 [7]では、机上において実際の紙と同時に電子 データを扱うことのできるシステムを提案して いる。また、机上にある実物をカメラで認識し、 これに関連するデータをプロジェクタで投影す るシステムがある[8]。AR システムで重要であ り、かつ大きな課題ともなっている現実世界と 仮想世界との位置合わせという点について、 LightCollabo の持つ高精度な光学性能が効果的 であり、AR システムとしてのさらなる機能性 の実現が期待できる。 以上のようにLightCollabo は、従来実現出来 ていなかった3 次元物体に対する遠隔からの自 在なアノテーション投射を実現している点で新 規であり、特徴ともなっている。さらに、従来 研究例に示したようないくつかの方向性を参考 にして、ユーザーニーズに即した発展性を追求 することで、さらなる機能性の実現を予感させ る位置づけにある。

3. システム構成

LightCollabo はサーバー・クライアント型の 通信システムである。サーバー側は、光学系に 特徴を持つビデオ・プロジェクタシステムと、 画像配信および描画コマンドに基づく描画・投 射機能を実現するサーバーおよびそのソフトウ エア、クライアントとの通信を制御する帯域制 御機構から構成されている。 クライアント側は、受信した撮像画像の表示 と、描画 UI および描画コマンドの送信機能を 実現するクライアントソフトウエアとなる。こ れらのソフトウエアおよび通信の機構の実現に あたっては、ベースとなる環境に特殊な機能を 前提としていないため、通常のインターネット 通信の環境下で、複数種類のOS 環境下での動 作を実現出来る構成となっている。また、ひと つのサーバーに対する複数クライアントの同時 接続も可能となっている。 3.1 ハードウエアの特徴 LightCollabo のハードウエアは、サーバー本 体およびその懸架機構、ズーム用首振りカメラ・ 内視鏡型カメラおよび被写体設置用のテーブル から構成される。サーバー本体は、液晶プロジェ クタ、デジタルビデオカメラ、汎用PC 基板、ハー フミラー・光トラップ部材および電源装置を内蔵 したひとつの筐体にまとめられている。 クライアント側は一般的な PC を使用するの みであり、特徴的なハードウエアは無い。クラ 写真1. LightCollabo サーバー本体の外観 Appearance of LightCollabo server body

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イアントソフトを使用する際の、ユーザーの使 用状況によっては、マウスの代わりにペン入力 を使用できる、いわゆるタブレット PC の使用 が好ましい場合がある。 液晶プロジェクタとデジタルビデオカメラの 光軸および投射・撮像画角をそれぞれ一致させ るための調整機構をデジタルビデオカメラの取 り付け部材に備えており、組み立て時の調整に 使用する。これらの構成は、3 次元形状計測技 術の研究[9]において取り組んでいた知見を ベースにしている。 カメラとプロジェクタという、光軸上の光量 レベルが桁違いに異なる光学系要素を組み合わ せるという他に類を見ない光学系構成から、不 要な透過投射光の処理が重要な課題となってお り、反射防止ND フィルタを活用した光トラッ プを配置することで対応している。 また、液晶プロジェクタの設計上、通常は投 射対象を数メートル離れた平板なスクリーンを 想定し、出来る限り明るく、画面の四隅まで均 一な光量と合焦を追求することが通常であり、 また多くの場合は、光軸から上方向にずれた方 向へあおった投射を前提に作られており、使用 しているプロジェクタもそのような一般品であ る。そのため、投射対象に凸凹のある物品を配 置すると、スクリーン位置のみでの合焦となっ て、対象物上でのアノテーションがぼけ画像と なってしまい、さらにあおりにより撮像画像と の位置合わせが難しい。この課題に対して、焦 点深度の深いゼロシフト投射レンズという前例 の無い仕様のプロジェクタレンズの試作を協業 先に依頼して行なった。試作仕様としては、合 焦位置1,000mmに対して±100mmの位置まで ライン像が判別出来ることを目安とした。 以上の特徴により、クライアント側からネッ ト越しに観察している対象物上へ、位置ずれな く描画を指示することが出来るようになり、 LightCollabo システムのコラボレーション支援 における基本機能の実現につながっている。 懸架機構および被写体設置用テーブルについ ては、利用意図に沿った改善の結果となってお り、ユーザー要望によっては変更される部分と なる。4 章にて詳述する。ズーム用カメラ・内 視鏡型カメラはユーザー要望によって設置した 外部カメラである。ハードウエアとしては市販 品であるが、構成および動作に特徴があり、次 節以降に詳述する。 3.2 ソフトウエア構成 ソフトウエア構成は、図 5 に示すように TCP/IP による通信を介したサーバー・クライ アントモデルとなっており、通信される情報は、 撮像画像および描画コマンドである。 カメラ/描画 サーバー プロジェクタ カメラ 描画 光軸/画角完全一致 図2. LightCollabo のシステム構成 System architecture of LightCollabo

CCD カメラ プ ロ ジ ェ ク タ ハーフミラー 反射防止NDフィルタ 透過率/反射率:0.3% 遮光シート 反射率:0.3% ガ ラ ス 反射防止層 NDフィルタ Al(鏡) 図3. 光トラップ Light trap 図4. 焦点深度の測定結果

Measurement result of the depth of focus

- 1 0 0 m m ± 0 m m + 1 0 0 m m 特注 レンズ 標準 レンズ (投射距離:1,000mm に対して) 図5. LightCollabo のソフトウエア構成 Block diagram of LightCollabo software

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図5 において、FlyServerは独自のカメラサー バーモジュールであり、高画質カメラに対応した JPEG配信を担っている。MessageBoardServer は描画コマンドなどの遠隔地からネットワーク を通じて送信されてくるコマンドを受信する独 自のミドルウエアである。 LightCollabo-Serverは描画コマンドに基づ いたグラフィックスの生成を主要な部分とする 描画サーバーモジュールである。LightCollabo- Clientは、LightCollabo-Serverモジュールにア ノテーション記述用のGUIを組み合わせたよう な構成となっている。 LightCollabo 本体は、カメラ撮像画像からカ メラレンズに起因する形状歪みを補正する処理 を行ない、プロジェクタの投射範囲に正確に一 致させる修正を行なった画像を切り取って、 HTTP プロトコルによって一連の JPEG フレー ムとしてビデオを送出する。この画像送信方法 は、一般的なコードされたビデオフォーマット より多くの帯域を費消するが、機構の単純さ、 画像解像度とカラー画質が優れている、遅れ時 間の少なさ、ファイアウォール全体に渡るロバ ストネス、コーデック独立といった利点を多数 持っている。 撮像画像の回転およびカメラ歪みに関しては、 カメラサーバーにおいて補正されており、また、 前述した試作プロジェクタレンズに関してはほ ぼ歪みが無視できるため、描画サーバーにおい ては描画キャンバスの並進およびスケールの キャリブレーションのみが必要となる。本体設 置時に、投射画面いっぱいに投射された四角形 の撮像画面上での四隅の4 点を位置合わせする 手動キャリブレーションによって、必要とされ る単純なアフィン変換パラメータを導出してい る(図7 参照。なお、図 7 中では説明のため小 さな矩形を使用している)。 LightCollabo-Client では、ユーザーは JPEG フレーム画像の上に、数種類の線画や、文字や 画像を書き込むことが出来る。JPEG フレーム 画像から、その一部をコピー&ペーストするよ うな操作も可能である。描画内容の一部や全体 を消去することや、描画内容をコマンドとして、 あるいはJPEG フレーム画像とともに画像とし て保存することも可能となっている。

3.3 帯域制約に関する課題

LightCollabo 本体とそのクライアント間での 通信においては、画質優先の考え方から、カメ ラ撮像画像の画質パラメータを落とさずに、フ レームレートを2 枚/秒まで落とすことによっ て、約150kbps 程度の帯域費消での動作を実現 している。しかしながら、外部カメラの通信の ために使用している市販ビデオサーバーにおい ては、パラメータ調整無しでは数Mbps の帯域 を発生してしまうため、大幅なパラメータ調整 を必要としている。現状では、画質や動作を犠 牲にすることで、約400kbps 程度に抑えている が、帯域上限を保証する機構の追加が課題と なっている。 帯域制約に関連して、マルチクライアント接 続の問題がある。拠点間での使用が標準的であ 写真6. LightCollabo-Client ウインドウ

GUI of LightCollabo client software

図7. キャリブレーション画面

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るLightCollabo システムにおいては、マルチク ライアント接続による同一内容のトラフィック が多重に帯域を費消して、一時的に拠点間接続 の帯域をあふれさせることが懸念される。マル チキャスト配信のような技術が、このような問 題を解決する可能性があるが、クライアント間 同期などの課題を同時にクリアする必要があり、 今後の課題となっている。

4. 社内試用に基づくシステム改善

約1 年間にわたって、生産技術を担当する部 門と中国側の生産ラインの双方からの協力を得 て、LightCollabo システムの社内試用実験を実 施した。これらの実験から多数のフィードバッ クを得て、LightCollabo 本体関連のみならず、 多岐にわたる改善を実施することが出来た。主 な改善点は以下のような5 点である。 4.1 クライアント GUI の改良 試用実験への参加者は、ほぼ全てにわたって CAD 利用者や図面ベースの業務関係者であっ て、GUI における描画コマンドのありかたに対 する要望も CAD ライクなものが求められた。 利用状況の観察からも同様の認識が得られてい る。これに応じて、寸法線描画コマンドの追加 や、描画コマンドのアイコン化、メニューの日 本語化などを検討し、一部を採用した。 4.2 本体設置方法のバリエーション 利用部門が複合機の組み立て方法を構築して ラインへ展開することを主なミッションとして いたため、LightCollabo の活用にあたって対象 とする実物が、部品ベースである場合と、組み 立て途中のフレーム全体である場合の両方が存 在した。これらに対応するためには、テーブル 上に置いた部材への上からの投射スタイルと、 組み立て中のフレームに対する横からの投射ス タイルの2 つの利用形態が要望されたが、その た め に 2 台 は 必 要 無 い と い う 意 向 か ら 、 LightCollabo 本体および首振りカメラを上下動 する懸架機構と、落射用のミラーを用意するこ ととした。 LightCollabo の設置形態は、上記の懸架機構 によるものを基本としているが、ユーザー要望 に応じて、天井吊り下げ方式、ラックマウント 型、移動台車式などいくつかを試用実験してい るところである。 テーブルトップについては、投射画面のスク リーンであると同時にマーカペンによる記述も 可能にする部材を採用している。この部材にも バリエーションがあり得るため、いくつかのも のを比較検討しているところである。 4.3 ズーム用外部カメラの設置 社内展開に伴うほとんど全ての事例において 要望されるのが拡大表示である。FlySPEC[10] の技術を応用し、首振りズームカメラを本体横 に配置して、設置時に視野のキャリブレーショ ンを行なって、クライアント側からの拡大指示 に対応してズーム画像を送出出来るようにした。 サーバー側の利用者が、クライアント側がどの 部位にズームしているか、注目しているかを理 解しやすくするため、ズーム指示位置に黄色二 重線の長方形の表示を行なうようにしている。 外部カメラの制御については、MessageBoard Server に制御コマンドを送信することで可能で 写真8. LightCollabo 懸架機構およびテーブル LightCollabo tower and table set

写真9. ズーム画面 Zoom sub-window

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あるが、撮像画像の送出には、本体とは別にビ デオサーバーが必要となったため、市販のもの を併設した。 4.4 別視野用内視鏡カメラの追加 社内試用の利用者からのフィードバックには、 必ずズームというキーワードが含まれている。 これらのフィードバックに対してさらなるヒア リングを行なった結果、要望内容が単純に拡大 倍率を上げるようなズームではないことが判明 した。例えば組み立て途中のフレーム筐体全体 を横から見込む配置の場合、フレーム筐体その ものの影になっている部分への着目などについ てもズームと表現されていた。これらの要望に 対応するために、市販の工業用内視鏡部材に持 つための筐体と電源スイッチを付けたフリー アームカメラを試作した。フリーアームカメラ 用のビデオサーバーとしては、ズーム用外部カ メラに用いている市販ビデオサーバーが複数 チャネルを備えていることから空きチャンネル に接続して使用し、クライアントからの操作で 切り替えながら使えるようにした。 このフリーアームカメラは、同軸照明が付い ていることや、通常のデジカメなどに比べては るかに容易に接写が出来ること、倍率が他の方 法に比べてやや高いことなどから、現場で多用 されている。 多用されているが故でもあるが、使用上の問 題点として、固定しにくい、ピントが合わせに くい、アームが短いなどの要望が多数出ており、 改善策の検討を進めている。 4.5 電源 On/Off 機構の追加 LightCollabo 本体の電源投入・停止手順を簡 略化するための WEB-UI や、稼働中でもプロ ジェクタの電源を On/Off する機構のクライア ントソフトへの追加などを、要望や運用上の経 験から着想して実施している。 実運用上の改善すべき点はこれら以外にも多 数あると考えられ、特にマルチクライアント環 境下での実試用例がまだ少ないことから、それ らに起因する改善などが今後必要になると想定 される。

5. 現場試用での効果確認

主要な試用実験の協力部門において、中国に おける新製品の生産ラインの量産移行に合わせ てLightCollabo の本格的な利用が予想された。 この量産ラインにおいて、LightCollabo が利用 される業務シーンを抽出し、円滑な利用を妨げ ている問題点や今後の利用促進を図る上での課 題の探索を目的として観察ベースの調査を実施 した。量産開始直後では、トラブル発生の第一 報を迅速に伝達することが、後の原因究明とト 写真10. フリーアームカメラの外観

Free arm camera

写真11. フリーアームカメラ画像

Image sub-window of free arm camera

写真12. 制御用 WEB 画面

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ラブル対策作業を円滑に進めることにつながる こと等が示唆された。評価の結果は以下の3 点 にまとめられる。 (1) トラブルの第一報を迅速に伝達したいと いう要求に対して、LightCollabo を使っ て現物を投影し、現場での要因把握と対 策立案を迅速に行なった。通常、約数時 間要していたトラブル状況の伝達が10 分 以内のやりとりで伝達することができた。 (2) デジカメでは撮影することの困難なユ ニット部の微小部品をフリーアームカメ ラで撮影することで、トラブル箇所を明 示できることが示唆された。 (3) トラブル要因を把握するためには、不良 部品と設計図面の確認、現場作業員によ る再現が行なわれている。設計図面にト ラブル箇所の書き込みを行なうところで LightCollabo が利用されている。 利用者の注目が集中している機能は、ズーム 用カメラおよび内視鏡カメラであった。ある観 察場面においては、利用者が日常的に利用して いるマイクロスコープを LightCollabo システ ムに接続してその画像を伝送する試みがなされ た。これらのことから、2 章で説明した共同注 意を支援する機能のうちでも、現状では指示物 を共有する機能に対する要求が高いことが分 かった。また、内視鏡カメラは、遠隔地から指 示された場所を写すために使われるよりも、遠 隔地側に見せたい場所を写すために使われるこ とが多かった。これは、指示物の一部を拡大し て見せることが指示行為として行なわれていた と考えることができる。

6. 今後の課題

今までの社内試用などを通して、LightCollabo が主に製造業においてはっきりした効用があり、 商品としての価値を持つであろうことが確認さ れてきている。しかしこれらの認識は概ね定性 的であり、現場の通常の改善活動との切り分け やLightCollabo 以外のシステムとの関係など、 評価の定まっていない点も多い。 6.1 社内展開 これまでに数拠点へ展開を実施しているが、 全ての展開先で試用実験としての観察やログ収 集が十分に実施できてはいない。重点拠点を定 めた活動を実施中であるが、何らかの工夫に よって、試用頻度や動作状況などに関する情報 収集を実施できるようにすることが課題と言え る。 さらに、LightCollabo の利用によって得られ るメリットの測定が期待される。適用先の状況 によるが、多数の試用事例の積み重ねから、そ れらの効用に関する平均的なありかたを類型す ることによって、LightCollabo の商品としての 価値をアピールしやすくなると考えられる。 6.2 性能向上とシステム連携 現在までの社内試用に基づく改善によって得 られている基本性能やシステム構成上の特徴に ついて、LightCollabo にとって本質的な部分と 試用先の状況に依存した部分との切り分けと、 本質的な性能に関するさらなる向上策の検討が 不十分である。これらの議論には、複数種類の 試用先によるフィードバックの分析などが必要 と思われる。次の段階における課題である。 さらに、フィードバックに必ず含まれる使用 状況を保存する機能への要望について、現状の 単純なファイル保存の機構のみではなく、シス テム的な対応策の検討が必要と考えている。他 のファイル共有システム等とのシステム連携と していくつかの組み合わせを試行中であるが、 セキュリティ課題への取り組みとも関係して、 簡単には結論を出せていない。よりはっきりし た商品コンセプトの検討の中で設計していく必 要がある。 6.3 社外展開 現状の LightCollabo システムは音声通話機 能を含まない。これは中国国内のネットワーク に対するQoS 制御との整合が理由であり、富士 ゼロックスグループ固有の事情である。 社外への展開にあたっては、このような企業 インフラを利用する部分に対する個別の配慮が 求められる。また、企業間での通信を実現する ためには、情報セキュリティに関する取り組み が必要となる。

7. 結び

LightCollabo プロトタイプの概要を記述し、 社内試用に基づく改善結果や今後の課題につい て述べた。LightCollabo の導入によって主に製

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造業における遠隔コラボレーションの業務効率 向上へ寄与出来ることがわかった。実物ベース の遠隔コミュニケーション支援における基本的 なフレームワークが構築出来たと言える。 対象物や適用業務のバリエーションに応じた システム設計の広がりと、システムの基本機能 充実とのバランスおよび使いやすさの作り込み などが今後の課題となる。

8. 謝辞

関係資材の調達や試作にあたっては、数多く の関連企業の皆様のご協力をいただいた。とり わけ、特注投射レンズの試作にあたって多大な ご協力を得た、フジノン株式会社の皆様に感謝 する。

9. 参考文献

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筆者紹介 伊與田 哲男 研究本部 未来ワーク研究所に所属。主幹研究員。電子情報通信学 会員、画像電子学会員。専門分野:画像処理応用 安部 勉 研究本部 未来ワーク研究所に所属。研究員。映像情報メディア学 会員。専門分野:画像入出力装置設計/実装 東海 研 研究本部 未来ワーク研究所に所属。研究員。情報処理学会員。 専門分野:画像処理 坂本 彰司 研究本部 未来ワーク研究所に所属。研究員。専門分野:Computer Mediated Communication 新宮 淳 研究本部 未来ワーク研究所に所属。研究員。電子情報通信学会員。 専門分野:マルチメディア処理 大貫宏子 本部 未来ワーク研究所に所属。研究員。日本行動計量学会員。 専門分野:ユーザビリティ評価 フィールドワーク

図 5 において、 FlyServerは独自のカメラサー バーモジュールであり、高画質カメラに対応した JPEG配信を担っている。MessageBoardServer は描画コマンドなどの遠隔地からネットワーク を通じて送信されてくるコマンドを受信する独 自のミドルウエアである。  LightCollabo-Serverは描画コマンドに基づ いたグラフィックスの生成を主要な部分とする 描画サーバーモジュールである。 LightCollabo-  Clientは、LightCollabo-Serverモジュー

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