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(162) 岡 山本 渡辺まず Jeffery(2) と Starkey(3) は粘性流体中に一個の剛体粒子があるとき 流動による散逸エネルギーを極少にするようにふるまうと考え 軸集中の説明をこころみている 山本と大木は同様の原理を仮定し 定常状態にある懸濁液内での粒子の分布を統計的に論じた 一方

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Academic year: 2021

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物性論研究 1962年 Sigma効果の現象論 都立大 岡小天* 山本三三三** 渡辺 恒雄*** (1962年1月17日受理) (Ⅰ)軸集中とSigma効果について 円管内での血液の流動は、多くの場合Poiseuilleの法則に従う。しかし,円管の 半径が小さくなるとこの法則からはずれてくることがみられる。このことはFakreaue とLindqrist(1)によって実験的に証明されたものである。彼等によると血液が血管 内を流れるとき管の半径が0.015cm以下になると,Poiseuilleの式をもちい て求めたみかけの粘性率は半径の減少とともに減る,といっている。(Ⅰ図にその実験 の一例を示す。この現象をSigma効果という。 このSigma効果とならんでもう一つ興味ある現象に血液の軸集中がある。すなわ ち毛細管内に血液が流れると赤血球が軸方向に集り,壁に近い領域には赤血球がなくな ることが見出された。これはPoiseuille自身によって観測されているから、そうと う以前から知られていたことがわかる。 ところで,このSigma効果と軸集中については現在までいろいろな研究がなされ ている。 *都立大教授,**都立大助教授,***都立大大学院学生

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(162) 岡・山本・渡辺 まずJeffery(2)とStarkey(3)は 粘性流体中に一個の剛体粒子があ るとき、流動による散逸エネルギ ーを極少にするようにふるまうと 考え、軸集中の説明をこころみて いる。「山本と大木は同様の原理 を仮定し、定常状態にある懸濁液 内での粒子の分布を統計的に論じ た。 一方、Vand(10)は壁の近くに粒 子がないのはWall効果のため であると考えて、その効果の巾を 1.301a(aは粒子の半径)と理 論的に導いている。この結果は実 験と大体一致している。 またSigma効果については、 まずDixとScott Brain4) の研究があげられるが、それによると毛細管内の血液は不連続的な速度勾配をなして流 れていると考え、みかけの粘性率をだしているが、実験との一致はよいようである。 山本と大木(5)は、軸集中がこの原因であるとしてみかけの粘性率をだしている。しか しその結果はSigma効果をうまく説明しない。同様に、Sigma効果を軸集中によ って説明しようとする定性的な議論は多くみうけられる。 このようにこの二つの現象が深い関係にあるとみる人は多いが、なかには実験データ ーをもとにして強い疑いをもつ人もある。従ってこのことについての結論はこれからな されるべき仕事であると思う。 〔Ⅱ〕 理論 いまのところ、Sigma効果と軸集中との関係は、はっきりしていないように考え られる。そこでわれわれは、“Sigma効果は軸集中によっておこる”と仮定してこの ことを現象論的に調べてみることにした。 ここで(Ⅰ)は赤血球のない領域、(Ⅱ)は赤血球と血漿の混った領域、Lは管の長さ、 Rは管の半径、ηは領域(Ⅱ)の粘性率、η0は領域(Ⅰ)の粘性率、ρ0は領域(Ⅰ)、(Ⅱ)の平均体積 (Ⅰ図)

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Sigma効果の現象論 (163) 濃度、ρは領域(Ⅱ)の体積濃度、δ は領域(Ⅰ)の半径方向に沿っての長 さ、である。(Ⅱ図)参照 まず次の三つの仮定をなし、即ち (1):(Ⅰ)(Ⅱ)の各領域で流れは Newtonianである。(2)定常状態において、毛細管内の赤血球の全体積濃度は軸集 中によって変らない。即ち、 LπR2ρ0=Lπ(R-δ)2ρ0 (3):η0とηは次の関係にある。 η0/η=1-αρ (αは定数) なお仮定(3)の関係式はBurgers(6)が剛体球懸濁液についての粘性理論で導出して いるものである。 次に(1)(2)(3)の仮定を考えに入れた場合の流量の式をだし、みかけの粘性率(η0) を求める。 まず円管内での流速をυ(r)、流動曲線をf(τ)とすると、次の関係式が成立する。 ∂υ(r)/∂r=-f(τ) (2.1) ここで、τはshearing stressである。 仮定(Ⅰ)によって、f(τ)は下のように書ける。 f(τ)=τ/η0 (R-δ<r<R (Ⅰ) τ/η (0<r<R-δ) (Ⅱ) (2.2) Stokesの関係式 τ=△P/2L・rと(2.2)とから(2.1)は積分できて、 νⅠ=△P/4η0L・(R2-r2) (Ⅰ) νⅡ=△P/4ηL・(c-r2) (Ⅱ) (2.3) (Ⅱ図)

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(164) 岡・山本・渡辺 が得られる。但しυⅠ,υⅡは(Ⅰ)(Ⅱ)の流速を表わし、△Pは管の両端間の圧力差 Cは積分定数である。Cを求めるのには υⅠ)r=R-δ=(υⅡ)r=R-δの関係を使えばよ い。即ち、 C=1+αρ0/1-αρ(R/R-δ)2・R2 (2.4) 流量・Qは下のように書ける。 ・Q=2π〔∫12-δ 0 rνⅡdr+∫R R-δ rνⅠdr〕 (2.5) (2.3),仮定(2),(3)により ・Q=πR4/8η0・△P/L・〔1-αρ0(1-δ/R)2〕 (2.6) 従ってみかけrの粘性率ηaは ηa=η0/1-αρ0(1-δ/R)2 (2.7-a) または、ηa(∞)=limR→∞ηaとすれば ηa/ηa(∞)=1-αP0/1-αP0(1-δ/R)2 (2.7-b) が得られる。 理論と実験との比較は(2.7-a)、(2.7-b)の両式についてなされる。即ち両式に含 まれているパラメーターαρ0とδとに対して適当な数値を与えてデーターを説明できる かをみ、さらにそのαρ0とδの数値が他の実験から得られた数値と比較して妥当なもの であるかどうかをみるのである。

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Sigma効果の現象論 (165) 〔Ⅲ〕 実験との比較 (Ⅲ図-a)はFahreaas とLiuaquist(1)による 人血についてのとKumin(2) による牛血についてのも のである。図の実線は (2.7-b)の二つのパラ メーターにαρ0=0.70; δ=3.2μ(人血);αρ0 =0.72,δ=2.5μ(牛血) の数値を与えてそれぞれ 画いたものである。また (2.7-b)を変形すると (ηa(00)/ηa-1)R= αρ0/1-αρ0・δ(2-δ/R) …(3.1) となる。(Ⅲ図-b)は(Ⅲ図-a)の実測値を(ηa(∞)/ηa-1)Rと1/Rの関係にプロ ツトしなおしたものである。測定点は大分ばらついているけれども大体(η(∞)/ηa-1)R と1/Rは直線関係にあるとみてよいであろう。図の実線はこのような考えで引いたもの である。なおこのことはδがRによらないことを示すものである。 (Ⅳ図)はRとηaとαρ0の関係を示す。このデーターはRahreausとLindquisut(1) が人血について測定したものである。ηwは粘性率である。実線はηa/ηw= η0/ηw/1-αρ0(1-δ/R)2の理論曲線である。但し、αρ0=0.70,0.75,0・83;δ=2.5μ;η0/ηw=1.4 の各数値を使った。なおη0/ηw=1.4は血液の粘性率をηとしてη0/η〓1/3; ηw/η=1/4として得られたのである。(Ⅴ)図はWittakerとWinton(8)が犬の血液 について求めたηaとρ0(%)の関係を示すデーターである。ηNaclは食塩水の粘性率 である。点線はηa/ηNacl=η0/ηNacl/1-αρ0の理論曲線である。但しη0/ηNacl=1.7;α'= (Ⅲ図-a)

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(166) 岡・山本・渡辺 α(1-δ/R)2=0.011とした。こ こでα'は実際には濃度とともに変 わるとみられるから、図の曲線は 平均的なものと考えられる。 (Ⅲ図-b) (Ⅳ図) (Ⅴ図)

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Sigma効果の現象論 (167) 〔Ⅳ〕 議論 はじめにδについて調べる。Vejlens(9),Vand(10)等は,管内に粘性流体を流し,その 中に剛体球を浮べ,その球の挙動を調らべるという実験から、球は壁からおおよそ0.6D ~0.7D(Dは剛体球の直径)離れて流してゆくという結果を得ている。この場合球は 軸上へは動いてゆかないということも報告している。 さて,一方赤血球は厚さが1μ,直径7~10μ位の円板状をなしている。今これを球 とみなすと,直径3~5μ位とみることができる。 0.6D~0.7Dにこの値を入れると,1.8~3.0μとなるが,この値は〔Ⅲ〕章で得 られたδの値2.5μ,3.2μとよい一致を示している。また0.6D~0.7Dの実験値は 〔Ⅰ〕章で述べたVandの剛体球懸濁液の理論で予想されたδの値1.301a(aは球の半 径)とも一致している。 次にαρ0についてはη0/η=1-αρ0の関係式において,普通の血液の粘性率(η)と血 漿のそれ(η0)との比がおよそη0/η〓1/3であることからαρ0=0.67という値が得 られる。〔Ⅲ〕章で得られた数値はαρ0=0.70,0.72であった。η0/η〓1/3であることと, 理論の近似性を考えれば,満足すべき結果であると思われる。 さて通常の血液はρ0=0.4とみられる。αρ0=0.70とするとα=1.75という値 が得られる。 一方稀薄剛体球懸濁液に対するEinsteinの理論によるとα=2.5である。ところ で血液の場合,赤血球が円板状であること,非剛体であること,血液が稀薄でないこと, などのための配向効果*,相互〓用,そして非剛体などからくる固有粘度の現象が考え られるから,α=1.75の数値はそう悪いとは思われない。 δのR依存性については,いろいろな実験結果が得られているが,正確なところはR に依存するとみるのが正しいと思われる。しかしこの近似的な理論ではRに依存しない とみてもよいであろう。

*Cyrindorical rodの稀薄懸濁液に対する理論によると,Cyrindorical rod が完全配向した場合のαの値はα=2.0とだされている。

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(168) 岡・山本・渡辺 文献

(1)Fahreaus,R.and Lindqiest,T.:Am.J.physiol.96,5621(1931) (2)Jeffery,G.B.:Proc.Roy.Soc.A 107,161(1922)

(3)Starkey,T.V.:Brit.J.Appl.Phys.7,448(1956)

(4)Dix,F.J.and Scott Blair,G.W.:J.Appl.Phys.11,574.(1940) (5)山本三三三と大木新平:物性論研究.6.641(1959) (6)Hermans.J.J.「Flow properties of disperse systems」 chapⅣ.〓5.

(7)Kumin,K.:Inaugural Dissertation der Uniuersitat Bern. Faeiburg in der Schweiz:Poulusdruckesei(1949)

(8)Whittaken.S.R.F and Winton,F.R.:J.physiol.78,339(1933) (9)Vejlens,G.:Acta pathol.,1938.Suppl.ⅩⅩⅩⅢ and 1959. (North.Pathol.Congress in Gotenborg)

参照

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