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図 1 日本の自動車関連税と課税段階 生産段階購入段階保有段階走行段階 なし 自動車取得税 ( 地方税 ) 自動車税 ( 地方税 ) 軽自動車税 ( 地方税 ) 自動車重量税 揮発油税軽油引取税 自動車税 軽自動車税 そして 自動車重量税 を指す 1970 年代以降 日本の自動車関連税はこうした体系

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1.税制の「グリーン化」と車体課税 1990年代以降、国際的に環境税の導入や税 制の「グリーン化」が進展している。その中 で興味深いのは、環境税を新規導入するだけ でなく、既存税を環境に望ましい方向に改革 する動きが目立ってきている点である。その 手法としては、⑴税率の差別化(環境に望ま しい行為に対して適用する税率を引き下げ る)、⑵控除(環境保全のためにかかった費用 を所得や利潤から差し引くことで、所得税や 法人税などの負担を軽減する)、⑶課税免除 (環境に望ましい行為に対してはその課税を 免除する)、⑷目的税化(その税の税収を環境 に望ましい行動を行う企業に補助金として支 出する)、などを挙げることができる。環境税 導入だけでなく、環境に望ましい行為への経 済的動機づけを既存税の中に埋め込む工夫の 総体を指して、「環境税のグリーン化」と呼ぶ。 OECDは、それ自体としては環境税ではな いが、上記⑴~⑷の手法によって環境保全へ のインセンティブを内包した税制を、「環境関 連税制」と呼んで積極的に評価している(経 済協力開発機構[OECD] 2002)。自動車の 車体に対して税をかける「車体課税」は、代 表的な環境関連税制でもある。なぜなら、車 体課税には欧州を中心に、これまでに税制に 環境インセンティブを組み込む工夫がもっと も多くなされてきたからである。 ここで、あまりなじみのない「車体課税」 について、説明をさせていただきたい。一般 に自動車には、図1に示されているように自 動車の「生産」、「購入」、「保有」、「走行」の 各段階それぞれに税がかけられている。日本 では、自動車の生産段階に特定して課される 税はないが、購入段階には「自動車取得税」、 保有段階には「自動車重量税」、「自動車税」、 そして「軽自動車税」が、さらに走行段階に は「揮発油税」と「軽油引取税」が課されて いる。このうち自動車取得税、自動車税、軽 自動車税が地方税である。さらに自動車重量 税の税収も、いったん国税として徴収された のち、地方自治体の財源としてその一定割合 が配分されるので、これらの税の税収は自治 体にとって貴重な財源となっている。 さて「車体課税」とは、これら自動車関連 税のうち、車体そのものに着目して課税され る購入段階の「自動車取得税」、保有段階の

車体課税の「環境税化」に向けて

-平成26年度税制改正における「車体課税改革」の評価と展望-

 

諸富  徹

京都大学大学院教授

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「自動車税」、「軽自動車税」、そして「自動車 重量税」を指す。1970年代以降、日本の自動 車関連税はこうした体系で安定的に推移して きたが近年、いくつかの重要な変化に見舞わ れている。第1は、平成21年(2009年)に実 施された「道路特定財源の一般財源化」であ る。1970年代以降、その税収の使途が道路建 設・維持目的に充てられていた道路特定財源 は、すべて一般財源化されることになったの である。車体課税では「自動車取得税」と「自 動車重量税」が道路特定財源だった。これら が一般財源化されたことにより、その課税根 拠が改めて問われ直すことになった。つまり 納税者側からみれば、道路建設・維持に税収 が用いられるからこそ受益の対価としてこれ らの税を納めることに納得していたが、一般 財源化するのであれば、税そのものを廃止し てほしいというわけである。 2.平成26年度税制改正の概要 そして実際、この要求は消費増税のタイミ ングで顕在化してきたのである。つまり、自 動車業界による「自動車取得税」と「自動車 重量税」の廃止要求である。彼らは、前回の 消費税率引き上げ時(1997年,税率3%⇒ 5%)に、それが原因で自動車販売台数が激 減してしまったと主張する。業界は、消費税 率引上げを原因として国内新車販売台数が約 100万台も減ったことから、上記2つの車体課 税を維持したまま消費税を引き上げれば、さ らに約100万台減少すると主張した1。そして、 一般財源化されたこれら自動車2税の課税根 拠はもはや失われていることもあり、消費税率 引き上げ時に廃止すべきだというわけである。 前回の消費税率引き上げが自動車販売減の 主要因だったか否かの真偽のほどはさて置く としても、「税制のグリーン化」という観点か らみれば、これら自動車2税の廃止はきわめ て疑問が多い。運輸部門からの温室効果ガス 排出は、日本の総排出量の約20%を占め、自 動車は運輸部門全体の88.1%を占めているの で、日本の排出総量の17.1%を占める大きな 排出セクターとなっているからである。した がってこれらの税を単純に廃止するのではな く、自動車からの温室効果ガス排出抑制を誘 導する税制上の手法として、車体課税を引き 続き十分に活用すべきではないだろうか。 さて、自動車業界の要望は平成25年度与党 税制改正大綱において一部が認められ、自動 車取得税が消費税率10%への引き上げ時に廃 止されることになった。しかし、単純に廃止 するだけでは、地方自治体に歳入欠陥が生じ 図1 日本の自動車関連税と課税段階 生産段階 購入段階 保有段階 走行段階 なし 自動車取得税 (地方税) 軽自動車税(地方税)自動車税(地方税) 自動車重量税 揮発油税 軽油引取税 1 ただし、これは経済学的に論証された主張ではない。むしろアジア通貨危機の勃発、国内金融危機の 再燃(「北海道拓殖銀行の破綻」、「山一證券の自主廃業」、「三洋証券の倒産」など)によって信用不安 がもたらされ、それによって起きた景気悪化が、自動車販売減の原因としてより効いたとの意見もある。

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る。そこで大綱は、地方財政に影響を及ぼさ ないよう代替財源を措置することを求めてい る。それだけでなく、自動車取得税がもって いる「グリーン化機能」が失われることのな いよう、消費税率10%への引き上げ時には自 動車税に「環境性能課税」を織り込むことを も打ち出した。つまり、自動車取得税は廃止 するけれども、その「財源調達機能」と「グ リーン化機能」は、別の車体課税か、その他 の税で引き継ぐということである。 これを受けて平成26年度与党税制改正大綱 は、消費税率8%への引き上げ時、10%への 引き上げ時について、下記のように具体的な 税制改正の中身を決定した。 【消費税率8%への引き上げ時】自動車取得 税は税率を引き下げ(登録車23%⇒ 2%、軽自動車3%⇒2%)、それにとも なう税収減は、軽自動車税の引き上げ等 によって補う。 【消費税率10%への引き上げ時】自動車取得 税を廃止。取得時点における自動車税へ の環境性能(「燃費基準」)課税の導入で グリーン化機能を引き継ぎつつ、代替財 源を確保。 決着した改革案は、自動車の取得段階課税 である「取得税」を廃止するが、保有段階課 税である「軽自動車税」、「自動車税」、「自動 車重量税」を、環境によい方向で課税強化す ることで税収中立的な改革を目指す。車体課 税は戦後ずっと、道路の建設・維持と第一義 的に結びついてきた。しかしこれを契機に、環 境の維持・保全と課税目的をより一層強く結 びつける方向に舵を大きく切ることが決定づ けられた。改革は今回だけでは完結せず、そ の最終的な姿は、消費税率10%への引上げ時 を待たなければならない。だがその基本的な 方向性は、今回でほぼ出されたといってよい。 最終形に至るまでの一連の車体課税改革は、 車体課税の原型がつくられた戦後すぐの時期、 道路目的財源が創設された1970年前後の時期 に次いで、大きな改革期として銘記されるこ とになるのは間違いない。 3.すでに進行しつつある車体課税の「環 境税化」 平成26年度税制改正は、「車体課税改革」に 関してその環境税化への方向性を決定づけた 点で画期的な意義をもつ。だが車体課税の環 境税化は、今回初めて打ち出されたわけでは ない。すでに日本の車体課税は10年以上前か らグリーン化が開始され、その程度もかなり 進化を遂げてきた。その最初のきっかけと なったのは、1999年に「課税自主権」を行使 して自動車税の不均一超過課税を実施する条 例改正を行い、「自動車税制のグリーン化」を 単独で成し遂げた東京都の試みである(諸富 2000,184-187頁)。これは、燃費・排ガスで一 定の基準を満たす車に対しては自動車税を軽 課し、他方で、車齢10年超の車に対しては重 課を適用するものである。東京都の条例改正 後、国もまたこれとまったく同じ方式を車体 課税に採用し、国土交通省が税制改正要望と して提出、地方税法改正が実現したことで、東 京都の政策が全国的に普及することになった。 これにより低燃費・低公害車の普及に拍車 がかかり、結果として生じた急速な税収減少 2 軽自動車の規格を超える大きさの自動車を指す。

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に課税当局が慌てるほどであった。平成15年 度(2003年度)には約1兆1千億円だった自 動車重量税の税収は、平成24年度(1013年度) には約7千億円に減少(約4割減)、同時期に 自動車税の税収は約1兆8千億円から約1兆 6千億円に減少(約1割減)、さらに自動車取 得税は同時期に、約4,500億円からなんと約 2,000億円にまで減少した(約6割減)。これ は、車体課税グリーン化のインセンティブ効 果の大きさを物語っている。その結果、低燃 費・低公害車の技術進歩に合わせて軽課対象 となる環境基準が段階的に厳格化され、つね に軽課対象車を絞り込む努力がなされてきた。 こうして課税による「インセンティブ効果」 と「税収の維持」を両立させる工夫が行なわ れたのである。 現在、自動車取得税では、電気自動車、燃 料電池車、プラグインハイブリッド車などの 次世代車や高燃費車に対して非課税が適用さ れ、その他にも、一定以上の環境性能を満た していれば、その性能に応じて大幅な軽減税 率の適用が認められている。自動車税におい てもグリーン化機能は引き継がれており、環 境によい自動車にはその環境性能に応じて軽 減 税 率 を 適 用 す る 一 方、 車 齢11年 以 上 の ディーゼル車、同13年以上のガソリン車は重 課が行われている。 以上のことから、自動車2税はこれらのグ リーン化措置によって事実上、「環境税化」し つつあると言えよう。図2は、車体課税の税 負担 / 台と走行距離あたりCO2排出量が比例 関係にあることを示しているが、これはまさ に、車体課税が環境税化しつつある証拠であ る。したがって、単純にこれら自動車2税を 図2 車体課税のグリーン化とCO2排出量の関係 [出所]「自動車関係税制のあり方に関する検討会」第4回会合(平成25年7月26日開催)「資料4(環 境省提出資料)」.

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廃止することは、財源だけでなく、自動車の 温室効果ガス排出抑制のために活用できる貴 重な政策手段を失うことを意味し、温暖化対 策としても後退となることから、慎重を期す べきだと考える。 4.車体課税検討会報告書の要点 こうした問題状況の下で、平成25年度与党 税制改正大綱が示した方向性に沿って具体的 な制度設計を行うため、総務省地方財政審議 会内に「自動車関係税制のあり方に関する検 討会」が平成25年5月に設けられ、議論が開 始された。以下では、その要点を紹介するこ とにしたい。 制度設計にあたっての基本的なスタンスは 次のとおりである。つまり、自動車取得税が これまでに果たしてきた地方財源への貢献と、 そのグリーン化機能の果たしてきた役割を高 く評価した上で、それが廃止されることに よって失われる両機能を、同じ車体課税の枠 内で引き継ぎ、総体として税収中立的な改革 を目指すというものである。検討にあたって は、これまでの日本の車体課税の沿革、機能、 徴税実務だけでなく、諸外国における車体課 税グリーン化の詳細な調査結果などが議論の 参考にされ、制度設計に取り込まれた。 最大の新機軸は、これまで「排気量」を課 税ベースとしてきた自動車税に、新しく「燃 費」を組み込むことである。燃費がよければ それに応じて納税額が減少するよう設計する のである。燃費がよくなるということは自動 車からのCO2排出量が減少するということな ので、燃費のよい車を税制上優遇することは、 結果としてCO2排出量の少ない車を優遇する ことになる。そこで、⑴自動車の耐用年数の 範囲内で、どのタイミングで燃費課税を実施 するのか、⑵具体的にどのように、自動車税 に燃費課税を仕組むのか、という2点が制度 設計上問題となる。これら2点のそれぞれに ついて、報告書はそれぞれ3つの選択肢を提 示している。 ⑴ 課税タイミングについて [案A]自動車の全登録期間を通じて均等に、 環境性能に応じた課税を行う。 [案B]自動車購入後の3年間、環境性能に 応じた課税を行う。 [案C]自動車の購入時に環境性能課税を実 施する。 案Aは、ちょうど2009年7月1日から新車 に適用される自動車税改革を実施し、その課 税ベースを「排気量のみ」から「CO2排出量 と排気量の組み合わせ」に移行させたドイツ の課税方式が念頭にある(諸富 2009)。ドイ ツでは、従来の「排気量割」に加えていわば 「CO2割」を新たに加え、課税ベースを両者 の組み合わせとすることで、奢侈品的、ある いは道路損傷負担金的性質を帯びていた自動 車税に、環境税としての性質を加味した。ド イツの自動車税も日本の自動車税と同様に毎 年課税であり、ドイツの方式によれば、排気 量ベース課税と並んで毎年、自動車に対して 「CO2」排出量課税を行うことになる。 これに対して案Cは、自動車税の課税標準 を2001年に排気量からCO2排出量に変更した イギリスの課税方式が念頭にある。イギリス はその上で2010年より、CO2排出量の少ない 自動車ほど初年度の自動車税負担を軽減する 一方で、CO2排出量の多い自動車については

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逆に、自動車税を重課する「First-Year-Rate (初年度自動車税の重課/軽課制度)」を導入 した。なぜ購入時点でこのような重課/軽課 を行うのだろうか。一般に、自動車購入者に 環境に望ましい車を選んでもらうようインセ ンティブを効果的に付与したいのであれば、 その車の登録年度にわたって均等に広く薄く 環境課税するよりも、購入時点でメリハリの 利いた形で環境に望ましい自動車とそうでな い自動車を税額上はっきり区別するような制 度設計を行う方が、効果が大きいと言われて いる。もちろん、登録全期間にわたって広く 薄く課税する方式は効果がないというわけで はないが、両者を比較すると、やはり初年度 課税は金額も大きく、購入者の意思決定に与 える影響は大きいと思われる。なお案Bは、初 年度課税を3年間にわたって行うものである。 報告書は、以上案A~案Cのなかでは案C がもっともグリーン化機能が強いという理由 で推奨している。しかし、これらは相互に排 他的ではなく、これらの組み合わせによる実 施もありうるとしている。 ⑵ 環境性能課税の仕組み方について 報告書は、自動車税における環境性能課税 の具体的な仕組み方について、下記の案1~ 案3の3方法を提示した。このうち案3につ いては2つの方式に分かれているので、合計 では4種類の異なる仕組み方を提案している。 [案1]税額=(基準燃費値 ‐ 当該車の燃 費値)×税率(一定額) [案2]税額=税率×[1+{(基準燃費値 -当該車の燃費値)×税率(割増率)}] [案3] 方式①:税額=[取得価額 ‐{基礎控除 額+燃費控除額×(燃費値‐基準燃費 値)}]×税率 方式②:税額=(取得価額 ‐ 基礎控除 額)×{基本税率+(基準燃費値‐燃 費値)×補正税率} このうち、案1、案2と案3の間には大き な違いがある。案1と案2は自動車の燃費性 能の実質値に対して税率を掛け合わせて税額 を算出する方式となっているのに対し、案3 は、取得価額を税額計算の中に組み込むこと で、自動車の燃費性能の実質値を名目値に転 換して税額を算出する方式となっている。 案1や案2のような実質値のみの税額計算 であれば、自動車価格の大きさを税額計算に 反映できない。この結果、高級車の場合はそ の取得価額に比べて税額が小さく、この課税 が十分なインセンティブ効果を与えない可能 性が高い。また、税収規模についても、案3 の方が大きいことが見込まれる。こうしたこ とから報告書では、案3を推奨している。 このほか、報告書は長年にわたって車体課 税で維持されてきたけれども、その環境損傷 負担金としての性格の強まりを考慮に入れる と、次の3つの点での見直しが必要だと提言 している。第1は、「営自格差」である。正確 には、営業用自動車と自家用自動車に適用さ れている税率の格差のことである。現在、自 家用自動車は営業用自動車の約3倍の税率を 課されているが、両者の環境負荷に差がない ことを考えると、もはやこのような大きな格 差は許容しえないと結論づけている。 第2は、軽自動車課税の見直しである。近 年、軽自動車と小型自動車は、性能面でも価

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格面でも、そして環境負荷の面でも格差が縮 小しており、やはり車体課税の環境損傷負担 金的性格が強まっていることを考慮すれば、 軽自動車を軽課する現行の税率体系は合理性 を欠いている、と指摘している。第3に報告 書は、軽自動車課税の見直しに歩調を合わせ て、二輪車等の課税についても、その負担水 準の適正化を図らねばならないとしている。 5.本年度税制改正の評価 以上の報告書を受けて、平成26年度税制改 正はどのように決着したのであろうか。まず、 焦点の自動車取得税については、消費税率が 8%に引き上げられる平成26年4月に、表1 に示されているような形で適用税率が引き下 げられ、消費税率が10%に引き上げられる時 点で廃止となることが決まった。 自動車取得税の税率が5%から3%へ(営 業用自動車・軽自動車の場合は3%から2% へ)と引き下げられるのにともなって発生す る歳入欠陥は、主として軽自動車と二輪車等 の税率を引き上げることで補塡することが決 まった。具体的には、平成27年度以降に新規 取得される四輪車等の新車に適用される税率 を自家用乗用車は1.5倍、その他は約1.25倍に 引き上げる。また、二輪車等の税率について も、現行の約1.5倍に引き上げられることに なった。これらを課税強化する根拠について は、すでに検討会報告書に即して説明したと おりである。 消費税率の10%への引き上げ時に予定され る自動車取得税廃止によって発生する歳入欠 陥については、自動車税に組み込まれること になる環境性能課税によって調達されること になる。平成26年度税制改正ではその詳細の 決定は平成27年度税制改正に委ねられたが、 その基本的な方向性については決定をみた。 その要点は下記のとおりである。 自動車取得税のグリーン化機能を維持・ 強化する環境性能課税を、自動車税の取得 時の課税として、消費税率10%引上げ時か ら実施することとし、平成27年度税制改正 で具体的な結論を得る。 1)課税標準は取得価額を基本とし、控 除及び免税点のあり方等についても検 討。 2)税率は、省エネ法の燃費基準値の達 成度に応じ0~3%の間で変動する仕 組み。 3)税収規模は、他に確保した安定的な 財源と合わせて、地方財政への影響を 及ぼさない規模を確保。 ここから言えるのは、「自動車税の取得時の 課税として」とあるように、課税タイミング については報告書の案C、「課税標準は取得価 額を基本とし」とあるように、⑵環境性能課 税の仕組み方については、取得価額を課税 表1 自動車取得税の見直し 区分 現行 平成26年4月~ 消費税率10%への引き上げ時 自家用自動車(軽自動車を除く) 5% 3% 廃止 営業用自動車・軽自動車 3% 2%

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ベースに取り組む報告書の案3が採用された ということである。これは、報告書が推奨し ている通りの結論である。 6.逆転の発想:自動車産業発展のための 車体課税改革を 消費税率10%への引き上げ時に、最終的に 環境性能課税がどのような姿をとることにな るのかは、平成27年度税制改正論議に委ねら れている。しかし、平成26年度税制改正で、少 なくともその骨格は見えてきた。それは、自 動車税の中に初年度課税として環境性能課税 を初めて導入するということである。同様の 改革は、軽自動車税についても行われるはず である。また、自動車重量税についてもこれ までのグリーン化機能の深堀りが行われる。 これは、これまで奢侈品課税、あるいは道路 損傷負担金的な性質を帯びていた車体課税が、 環境損傷負担金的な方向に向けて移行してい く、その第一歩だと評価することができるだ ろう。これは1970年代以降、道路建設・維持 と深く結びついてきた車体課税にとって、大 きな転換を意味する。平成21年における道路 特定財源一般化が転換の第1の波だとすれば、 平成26年度および平成27年度の税制改正は、 その第2の波だといえる。平成26・27年度改 正の射程に留まらず、将来的には初年度に加 えて平年度においても環境性能課税を導入す ることが考えられてよい。 しかし、自動車業界にとってみれば、自ら が要求し、実現したはずの自動車取得税廃止 が自動車税における初年度の環境性能課税と して「復活」を遂げるようにみえるかもしれな い。彼らがそう判断すれば、この提案に対し て大いに反発する可能性がある。そのため、来 年度税制改正論議では、そう簡単に環境性能 課税が平成26年度の税制改正大綱に沿って実 現するかどうか、予断を許さない部分もある。 こうみてくると、「車体課税の環境税化」と 「自動車産業の利害」は一見、相対立するよ うにみえる。しかし興味深いのはドイツ自動 車工業会が、ドイツにおける自動車税グリー ン化に賛意を表明して、自動車関連税廃止一 辺倒の日本の自動車工業会と好対照をなして いる点である。これは、自動車のCO2排出規 制が強化されていく方向性そのものが世界的 に不可避だとすれば、その方向に早く動いた 者が報われるような制度設計が税制上組み込 まれることは、産業界にとっても望ましい方 向だと受け取られたからである。 このまま推移すれば、日本における自動車 市場は人口減少でどんどん縮小していく。縮 小していく需要に恐れをなして自動車減税を 要求し実現したとしても、問題は一時的に緩 和されるだけである。問題が一時的に緩和さ れたのに安住して、技術を磨き、燃費を高め、 環境に負荷を与えない自動車を開発するのを 怠れば、世界市場における日本の自動車産業 の優位性は、瞬く間に失われてしまうだろう。 それよりも、環境に望ましい自動車開発の成 否が未来の自動車産業の命運を握っているの だとすれば、税制としては自動車産業がその 方向に向かって動くことを支援し、そうでな い場合には罰するような税体系を構築し、産 業育成を図っていく方が、中長期的には単な る減税よりもはるかに自動車産業に対して好 影響を与えるだろう。平成27年度税制改正で は是非、車体課税の「環境税化」に日本の自 動車工業会からも賛意を得たいものである。

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[参考文献] 経済協力開発機構[OECD](2002),『環境 関連税制‐その評価と導入戦略』天野明弘監 訳/環境省総合環境政策局環境税研究会訳. 自動車関係税制のあり方に関する検討会 (2013),『自動車関係税制のあり方に関する 検討会報告書』(http://www.soumu.go.jp/ menu_news/s-news/01zeimu03_02000013. html) 諸富徹(2000),『環境税の理論と実際』有 斐閣. 諸富徹(2009),「低炭素社会と自動車関連 税のあり方-EUおよびドイツの動向を中心 に」『地方財政』第48巻第12号,4-13頁.

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