児童のパーソナリティと積極的授業参加行動
1主要 5 因子性格検査を用いた検討
小
平
英
志
日本福祉大学 子ども発達学部布
施
光
代
明星大学 教育学部安
藤
史
高
岐阜聖徳学園大学 教育学部Big Five Personality Traits and Elementary School
Pupils' Positive Participation in Classes
Hideshi KODAIRA
Faculty of Child Development, Nihon Fukushi University
Mitsuyo FUSE
Faculty of Education, Meisei University
Fumitaka ANDO
Faculty of Education ,Gifu Shotoku Gakuen University
Keywords : Big Five personality, positive class participation, elementary school pupils ( ビ ッ グ フ ァ イ ブ モ デ ル , 積極的授業参加行動, 小学生)
Abstract
The purpose of this research was to investigate relationships between Big Five personality traits and positive partici-pation in classes by elementary school pupils. Pupils (n=1672, 3rd to 6th grade) completed questionnaires about Big Five personality (Survey A; conscientiousness, extroversion, and agreeableness, Survey B; openness and neuroticism) and positive participation in class, including eye contact and listening (EL), raising the hand and talking (RT), and preparation and homework (PH). Results indicated that Big Five personality traits were positively related to positive participation in class, except for the relationship between extroversion and PH. Moreover, there were relatively strong associations between conscientiousness and EL, agreeableness and EL, extroversion and RT, and openness and RT.
授業中の行動は, 児童によってさまざまである. しっ かりと前を向き, ノートテイキングを怠らない児童もい れば, 何度も宿題を忘れてくる児童もいる. 静かに話を 聞いているだけの児童もいれば, 積極的に挙手をし, 教 師の問いかけに答えようとする児童もいる. このような 児童の授業内の学習行動の差異は, どのような要因によっ て生じているのだろうか. 布施・小平・安藤 (2006) は, 小学校の教員を対象に, 積極的に授業に参加していると思われる児童の行動, 消 極的であると感じる子どもたちの行動について尋ねた. その結果, 「授業中の姿勢が良く, 話を聞き, 発言した り挙手をしたりする児童」 がより積極的であり, 「授業 中の姿勢が悪く, 他の事をしていたり, 無反応である児 童」 が消極的であると判断される傾向が見出された. さ らに布施他 (2006) は, この知見に基づき児童の積極的 授業参加行動を測定する項目を作成した. 児童による自 己評定をもとに因子分析を行ったところ, 余計なことを せずに授業に集中して話を聞くという注視・傾聴, 発言 や返答などで意見を表明するという挙手・発言, 授業時 間外における授業の準備や課題 (宿題) をこなすという 準備・宿題の 3 つの側面が抽出されている. 積極的授業参加行動と児童自身の要因 これまでの積 極的授業参加行動に関する研究では, 教師の指導スタイ ルや学級内での地位など, 環境要因に注目した検討 (布 施他, 2006; 安藤・小平・布施, 2015) がなされてきた 一方で, 児童自身の要因に注目した検討が数多く行われ てきている. 例えば, 積極的授業参加行動は, 個々の児 童の教科に対する動機づけと関連することがすでに示さ れている (布施他, 2006). また, 自律性が比較的高い 動機づけによって積極的授業参加行動は促進されるが, 自律性の低い動機づけによって抑制されることも明らか になっている (安藤・布施・小平, 2008). 加えて, 動 機づけが上昇した児童は注視・傾聴, 挙手・発言も上昇 する傾向にあるが, 動機づけの変化は準備・宿題の変化 とはほとんど連動しないことなども明らかとなっている (小平・安藤・布施, 2017). 動機づけ以外にも, 児童の 達成目標や認知されたコンピテンスが積極的授業参加行 動に影響を与えること (安藤・布施・小平, 2009), 私 的自己意識が高い児童ほど, また公的自己意識が低い児 童ほど積極的授業参加行動が高い傾向にあること (布施・ 安藤・小平, 2015; 小平・布施・安藤, 2014) も示されて いる. しかしながら, これまでの児童の要因に注目した検討 だけでは, どのような個性を持った児童がどのような積 極的授業参加行動を示しやすいのかについて明確にされ たとは言い難い. 特定の構成概念 (特に児童の特性的な 要因や形成された態度) との関連を個々に検討していく ような微視的な視点だけではなく, 児童の個性の全体像 を描くような, 代表的なパーソナリティ特性との関連を 検討することも, 積極的授業参加行動に及ぼす児童自身 の要因の影響を理解する上で有用であろう. ビッグファイブモデル 本研究では, 児童のパーソナ リティ特性の測定に, ビッグファイブモデルの枠組みを 用いる. パーソナリティ心理学の分野では, 特性論の台 頭以降, どういった特性によって, また何種類の特性に よって人のパーソナリティを捉えるのが妥当であるのか という議論が盛んに行われてきた. 測定する特性が多い 場合には, パーソナリティ・テストの対象者 (回答者) への負担が増すだけでなく, 測定者にも実施のコストが かかり, 解釈も容易ではなくなる. 一方で, 測定する特 性が少なすぎると対象者の特徴を明らかにできないこと になる. 研究者たちは, 妥当なパーソナリティ特性の数 について実証的な検討を踏まえた議論を重ねてきた. こ の問題へのアプローチには大きく分けて, 人格を表す言 葉を分類することによって主要な特性を得ようとした 「辞書的アプローチ」 と, 相関関係にある人格特性を質 問紙への回答傾向から因子分析を用いることで明らかに しようとした 「質問紙的アプローチ」 の 2 つの流れがあ る (Costa・ McCrae・下仲・中里・権藤・高山, 2011). 結果的に, 両アプローチのたどり着いた結論には, 多く の類似点が認められ, 近年では, パーソナリティは 5 つ の特性によってよく表現されるというビッグファイブモ デル (5 因子モデル) が広く支持されるに至った. 現在, ビッグファイブモデルの主要な特性として提唱されてい るのが, 良心や責任感, 努力や誠実さの傾向である誠実 性 (conscientiousness), 活動的な様子や他者に対する 積極性などを示す外向性 (extraversion), 社交的・友 好的な傾向である調和性 (agreeableness), 空想的傾向 や創造性などの開放性 (openness), 不安や怒り, 抑う つなどを特徴とする神経症傾向 (neuroticism) である. これら 5 つの特性は, 個人のパーソナリティ傾向を捉え る上で, 一般的かつ代表的なパーソナリティ特性として, 多くの研究で取り上げられている. 本研究の目的 以上, 本研究では児童のパーソナリティ
特性をビッグファイブモデルの観点から測定し, 積極的 授業参加行動に与える影響を検討する. 調査の対象とな る児童の回答の負担を考慮し, 調査 A と調査 B に分け, それぞれビッグファイブの 3 特性 (誠実性, 外向性, 調 和性), 2 特性 (開放性, 神経症傾向) について回答を 求め, 積極的授業参加行動との関連を検討したい.
方法
調査対象 関東地方の小学校 3 校に通う 3 年生から 6 年生の 675 名 (調査 A) と, 東海地方の小学校 3 校に 通う 3 年生から 6 年生の 997 名 (調査 B) を対象に調査 を実施した. 対象となった児童の内訳を Table 1 に示す. 調査内容 調査 A では下記の①と②が, 調査 B では ①と③が実施された. ①積極的授業参加行動尺度 布施他 (2006) で作成さ れ, 布施・安藤・小平 (2010)で整理された, 児童の積 極的授業参加行動を測定する 23 項目を実施した. この 尺度は, 注視・傾聴, 挙手・発言, 準備・宿題の 3 つの 側面を測定する下位尺度から成る. 注視・傾聴は 「授業 中にやるように言われたことは, さい後までがんばる」, 「ノートや教科書, 黒板をしっかり見る」, 「授業中によ そ見をする (逆転項目)」, 「授業中によいしせいですわ る」, 「先生の話を一生けん命聞く」, 「授業中にやるよう に言われたことは, しずかに集中してやる」, 「友だちや 先生の話を聞かない (逆転項目)」, 「しずかに授業を聞 いている」, 「授業中に授業とかん係ないことをする (逆 転項目)」, 「授業中にむだ話をする (逆転項目)」 の 10 項目から構成されていた. また, 挙手・発言は 「友だち の発表を聞いて, 自分の意見を言う」, 「手をあげて自分 の意見を言う」, 「授業中にわからないことがあったら, 先生に聞く」, 「答えを言わずにだまっている (逆転項目)」, 「答えがわかっていても, 手をあげずにだまっている (逆転項目)」, 「話し合いをする時には, ちゃんと意見を 言う」 の 6 項目であった. 準備・宿題は 「宿題をしない ことがある (逆転項目)」, 「きちんと宿題をする」, 「授 業にひつようなものをわすれずに持ってくる」 等の 7 項 目であった. 布施他 (2010)では, 準備・宿題の項目が 新たに追加されていたが, 追加前と追加後の尺度得点の 間に高い相関係数が得られていること (小平・布施・安 藤, 2009) や信頼性係数に大きな改善は見られなかった ことから, 本研究では, 当初, 布施他 (2006) で見いだ された 3 項目のみを分析に使用した. つまり, 3 下位尺 度でそれぞれ 10 項目, 6 項目, 3 項目の計 19 項目 (23 項目中 4 項目を除外) を尺度の得点化に用いたことにな る. それぞれの項目について, 国語の授業内での行動に ついて 「ちがう」, 「少しちがう」, 「少しそう」, 「そう」 の 4 件法で回答を求めた. ②良識性・外向性・協調性 村上・畑山 (2010) によ る小学生用主要 5 因子性格検査の中から, 良識性, 外向 性, 協調性に関する質問項目 (各 6 項目の計 18 項目) を用いた. 良識性は誠実性 (conscientiousness) に対 応するパーソナリティ特性を測定するもので, 「何かに とりくんでも, 途中でやめてしまうことが多い (逆転項 目)」, 「どちらかというと, やろうと思ったことが長つ づきしないで, こん気がないほうです (逆転項目)」, 「どちらかというと, さいごまで全力をつくすほうです」 等の 6 項目から成る. 外向性は 「どちらかというと, お となしいほうです (逆転項目)」, 「人の前で話すのはに がてです (逆転項目)」, 「ほかの人とくらべると活発に 行動するほうです」 等の 6 項目から成る. 協調性は調和 性 (agreeableness) に対応するパーソナリティ特性を 測定し, 「思いやりがあるほうです」, 「どちらかという Table 1 本研究の調査対象者と人にたいしてやさしいほうです」, 「だれにでも親切に するようにしています」 等の 6 項目から成る. 先行研究 に従い, 「はい」, 「いいえ」 の 2 件法で回答を求めた. ③知的好奇心・情緒安定性 村上・畑山 (2010) の小 学生用主要 5 因子性格検査の中から, 知的好奇心, 情緒 安定性に関する質問項目 (各 6 項目の計 12 項目) を用 いた. 知的好奇心は開放性 (openness) に対応するパー ソナリティ特性であり, 「いろいろなことをたくさん知っ ています」, 「問題をいろいろなほうめんから考えるのが にがてなほうです (逆転項目)」, 「ほかの人とくらべる と, ものごとの本質がみぬけるほうです」 等の 6 項目か ら成る. 情緒安定性は神経症傾向 (neuroticism) のパー ソナリティ特性と対応し, 「どちらかというと, 気持ち が落ちつかないことが多い (逆転項目)」, 「くよくよと 考えこみます (逆転項目)」 「いつも気になることがあっ て, 落ちつきません (逆転項目)」 等の 6 項目から成る. ②と同様に 「はい」, 「いいえ」 の 2 件法で回答を求めた. 調査手続き 調査は担任教師に依頼し, クラス毎に一 斉に実施された. 調査校にはあらかじめ調査票を送付し, 内容の確認を求めた. 倫理的配慮等について要望があっ た学校については, 修正を行った後に調査が行われた. 調査 A は 2012 年 11 月∼2013 年 1 月に, 調査 B は 2016 年 2 月に実施された.
結果
1. 尺度の信頼性, 基礎統計量の確認 先行研究に倣い, 積極的授業参加行動尺度, 小学生用 主要 5 因子性格検査のそれぞれの下位尺度得点を算出し た. 積極的授業参加行動については, 先行研究に従い, 注視・傾聴の 10 項目, 挙手・発言の 6 項目, 準備・宿 題の 3 項目の合計を項目数で除した値を下位尺度得点と した. 小学生用主要 5 因子性格検査については, 各 6 項 目の平均をそれぞれ良識性得点, 外向性得点, 協調性得 点, 知的好奇心得点, 情緒安定性得点とした. α係数及 び基礎統計量を算出したものが Table 2 である. α係数 は.63∼.86 であり, 許容できる値を示していた. 2. 全体及び学年別・男女別の相関関係 積極的授業参加行動と児童のパーソナリティ特性との 関連を検討するため, 相関係数を算出した. その際, 相 関関係の性差及び学年差も考慮し, 全体での相関係数に 加えて, 各学年, 各性別の相関係数も算出した. 結果を Table 3 に示す. 全体の相関係数に着目すると, 注視・傾聴は良識性 (r=.55, p<.001), 協調性 (r=.52, p<.001) との間に .50 程度の相関関係が見られた. また知的好奇心 (r= .19, p<.001), 情緒安定性 (r=.24, p<.001) との関連 も有意であった. さらにごく弱い関連ながら, 外向性と の間に有意な負の相関係数も確認された (r=-.11, p< .01). 挙手・発言では, 知的好奇心 (r=.35, p<.001), 外向性 (r=.34, p<.001) との間に.30 程度の相関関係 が見られた. その他, 良識性 (r=.26, p<.001), 協調 性 (r=.27, p<.001), 情緒安定性 (r=.14, p<.001) と の関連も有意であった. 準備・宿題については, 良識性 (r=.34, p<.001), 協調性 (r=.33, p<.001) との間に .30 の相関関係が見られた. 知的好奇心 (r=.19, p<.00 1), 情緒安定性 (r=.16, p<.001) も有意な正の関連を 示していたが, 外向性との間 (r=-.01) のみ, 有意な関 連は見られなかった. Table 3 の学年・性別毎の相関係数を範囲としてまと めたものが Table 4 である. ある程度一貫して有意もし くは有意でない相関関係が見出された箇所 (網掛け部分) Table 2 各変数の基礎統計量に注目すると, まず, 注視・傾聴が良識性 (rs=.39∼ .64), 協調性 (rs=.27∼.59) といずれの学年・性別で も正の関連が見られた. 挙手・発言は知的好奇心 (rs =.20∼.49) との間に正の関連が見られた. 準備・宿題 では外向性 (rs=-.10∼.14) との間で, いずれの学年・ 性別でも有意な相関係数は得られなかった. その他, 有意性の観点から一貫した結果が示されなかっ た箇所について触れると, 注視・傾聴と知的好奇心 (rs =.12∼.31) および情緒安定性 (rs=.15∼.40) との間に は, 学年によって有意な相関係数が得られなかった箇所 はあるものの, 全て正の係数を示していた. 外向性 (rs =-.25∼.22) については, 正と負の相関係数が混在して 見られ, 特に 3 年生女子 (r=-.25, p<.05), 6 年生男子 (r=-.21, p<.05), 6 年生女子 (r=-.21, p<.05) では有 意な負の相関係数が得られた一方で, 5 年生女子で有意 な正の相関係数 (r=.22, p<.05) が確認された. 挙手・ Table 3 相関関係 (全体及び各学年男女別) Table 4 学年・性別の相関係数の範囲 ※ 網掛け部分は性別・学年別で一貫して有意もしくは有意でない相関係数が得られた箇所
発言については良識性, 外向性, 協調性との関連につい て, 3 年生女子で相関係数が低く, いずれも有意な関連 が確認されなかった点が特徴的であった. 情緒安定性と の関連については, 有意な相関係数も一部得られている が, おおむね低い係数を示していた (rs=-.06∼.27). 準備・宿題については, いずれのパーソナリティについ ても, 3 年生女子で有意でない相関係数が確認された. 3 年生女子の傾向を除くと, 良識性 (3 年生女児が r= .12, それ以外で rs=.18∼.56) や協調性 (3 年生女児が r=-.03, それ以外で rs=.22∼.46) との相関係数が他の パーソナリティと比べて高い値を示していた. 上記結果は, あくまでも相関係数の有意性を中心にま とめたものではあるものの, 児童の積極的授業参加行動 とパーソナリティ特性との関連において, 注視・傾聴と 良識性, 協調性の正の関連, 挙手・発言と知的好奇心の 正の関連については, 性別・学年を問わず確認できる可 能性が高いと考えてよかろう. 3. パス解析による検討 先行研究では, 積極的授業参加行動の 3 つの下位尺度 間にはある程度の相関関係が認められており, 本研究で も全体での相関係数で rs=.24∼.50 の正の関連が見られ た (Table 3 参照). パーソナリティ特性と積極的授業 参加行動の下位側面との関連をより弁別的に整理するた めに, 学年と性別を調整した上で, 積極的授業参加行動 の下位尺度間の相関を考慮したパスモデルの検討を行う こととした. パス解析には共分散構造分析を用い, 調査 A, 調査 B のそれぞれについて, パーソナリティ特性 が積極的授業参加行動の 3 つの下位側面を予測するとい うモデルの検証を行った. すべての観測変数に対し, 学 年及び性別からのパスを仮定し, パーソナリティ特性の 誤差間, 積極的授業参加行動の下位尺度の誤差間にはそ れぞれ共分散を仮定した. パーソナリティ特性から積極 的授業参加行動への効果の有意性を確認したところ, 外 向性から準備・宿題への効果のみが有意ではなく, パス を 削 除 し た . 最 終 的 な 結 果 を Figure 1 ( 調 査 A) , Figure 2 (調査 B) に示す. まず, 調査 A のデータを用いた, 良識性, 外向性, 協調性からの影響を検討したモデル (Figure 1) につい て は , 適 合 度 指 標 が χ2(2)=1.85 , CFI=1.00 , RMSEA=.00 と十分な値を示していた. 協調性, 良識 性が高いほど注視・傾聴や挙手・発言が高く, 準備・宿 題は良識性や協調性が高いほど高かった. また, 外向性 が高いほど注視・傾聴は低く, 挙手・発言は高かった. 標準化推定値の値に注目すると, 特に注視・傾聴は良識 性, 協調性から, 挙手・発言は外向性から, 準備・宿題 は良識性からの影響を相対的に強く受けているようであっ た. 良識性, 外向性, 協調性の 3 つのパーソナリティ特 性からの予測における決定係数は, 注視・傾聴が.40, 挙手・発言が.23, 準備・宿題が.17 であった. 調査 B のデータを用いた, 知的好奇心, 情緒安定性 からの影響を仮定したモデル (Figure 2) についても, 適合度指標はχ2(1)=1.81, CFI=1.00, RMSEA=.02 と十分な値を示した. 知的好奇心と情緒安定性は注視・ 傾聴, 挙手・発言, 準備・宿題のいずれに対しても正の 効果が見られた. 標準化推定値の値に注目すると, 注視・ 傾聴は情緒安定性から, 挙手・発言は知的好奇心から相 対的に強い影響を受けているようであった. 知的好奇心, Figure 1 パスモデルの検討結果 (調査 A) x2 (2)=1.85, CFI=1.00, RMSEA=.00 **p<.01 ***p<.001 ※観測変数の誤差, 誤差間の共分散, 学年, 性別の効果は省略
情緒安定性の 2 つのパーソナリティ特性から予測した場 合の決定係数は, 注視・傾聴が.15, 挙手・発言が.14, 準備・宿題が.09 であった.
考察
本研究の目的は, 児童のパーソナリティ特性 (ビッグ ファイブ) が, 積極的授業参加行動に与える影響を検討 することであった. 以下, 本研究で得られた結果をもと に, 積極的授業参加行動の 3 つの側面に対する児童のパー ソナリティ特性の影響について考察したい. 注視・傾聴 良識性, 外向性, 協調性の影響を検討し た調査 A (Figure 1) では, 注視・傾聴の分散の 40%が, 知的好奇心および情緒安定性の影響を検討した調査 B (Figure 2) では, 注視・傾聴の分散の 15%が説明され ており, いずれも挙手・発言や準備・宿題よりも高い決 定係数が得られた. 調査 A と B では対象となった児童 が異なり, ビッグファイブすべてを同時に投入したパス 解析は実施できなかったものの, ビッグファイブのパー ソナリティ特性から最もよく説明されるのは, おそらく この注視・傾聴であると考えられよう. とりわけ, 良識 性と協調性は注視・傾聴の強い予測因であり, この点は, 学年・性別毎に算出した相関係数 (Table 3, Table 4) でも同様の傾向が確認できた. 良識性は, 誠実性 (con-scientiousness) に対応する特性であり, 粘り強さや努 力といったパーソナリティの特性であるがゆえに, 動機 づけと深いかかわりがあることが指摘されている (例え ば, Chamorro-Premuzic & Furnham, 2003). 積極的 授業参加行動のうち, 教科に対する動機づけと最も高い 相 関 係 数 を 示 す の は 注 視 ・ 傾 聴 で あ る と の 布 施 他 (2006) や小平他 (2017) の報告とも合致する結果であっ たと言えよう. また小平・布施・安藤 (2011) は, 授業 後に 「今日の授業で大切だったこと」 を児童に記述する ように求めたところ, その記述された文字数は注視・傾 聴の高さのみと有意に関連 (r=.32) していたことを報 告している. 誠実性の特性は, 動機づけだけでなく, 学 業成績の良好さともかかわりが深いことが指摘されてい るが (Chamorro-Premuzic & Furnham, 2003), 小平 他 (2011) の結果もまた, 誠実性と注視・傾聴とのかか わりから解釈が可能であると考えられる. 一方で, 協調 性もまた, 注視・傾聴と関連しているパーソナリティ特 性であった. 協調性には, 他者への思いやりや親切にふ るまう傾向が反映されている. 協調性の高い児童では, 教師との関係性を重視したり, 他のクラスメートに配慮 し, 迷惑をかけないことを心掛けることで, 結果的に注 視・傾聴が高いケースが多いと解釈されよう. 挙手・発言 これまでの挙手行動の研究では, 挙手に 対する自己効力感が挙手を促進する要因として注目され てきたが (例えば, 藤生, 1991, 1993; 藤生・高野, 1991 など), 本研究では, 挙手・発言が外向性とも関連する ことが示された. 外向性は一般的な活動性や他者に対し ての積極性などを含む特性であるが, 外向性が挙手に対 する自己効力感を高める方向で作用し, 挙手・発言を高 めていると考えられる. 外向性が挙手や発言をした場合 の周囲の人々の否定的な反応の予期などを低め, 挙手等 を促進していることも容易に想像できよう. 加えて本研 究では, ビッグファイブの 1 特性である知的好奇心も, 学年を問わず児童の挙手・発言の行動を促進する要因で あることが示された. 先述のように教科への動機づけと Figure 2 パスモデルの検討結果 (調査 B) x2 (1)=1.81, CFI=1.00, RMSEA=.02 **p<.01 ***p<.001 ※観測変数の誤差, 誤差間の共分散, 学年, 性別の効果は省略の相関関係では, 注視・傾聴の方が相対的に相関係数は 高く, 動機づけは挙手・発言よりも注視・傾聴の行動に より反映されやすい. しかしながら, パーソナリティと しての知的好奇心は, むしろ挙手・発言を予測する要因 であることがうかがえた. 知的好奇心は開放性 (open-ness) に対応するビッグファイブの特性であるが, 知識 を得ることや経験することに対する構えのない開かれた 姿勢は, 挙手・発言を促進するパーソナリティ要因であ ると考えられる. 準備・宿題 準備・宿題については比較的, 良識性や 協調性の影響が顕著であった点など, 注視・傾聴と同様 の傾向が見られたが (Table 4), 学年や性別によっては 相関係数の値が低かった. 小平他 (2017) は 1 年間の児 童の動機づけの変化が, 準備・宿題の変化とは関連しな いとの結果を受け, 児童の動機づけを学習や学習の準備 の習慣化に結び付ける支援が重要であることを指摘して いる. 本研究の結果からも, 良識性 (誠実性) から準備・ 宿題への効果は有意ではあったものの強い影響があると は言い難く, 授業の準備や宿題を行うことについての習 慣化が行われているかどうかは, 児童のパーソナリティ だけの問題ではなく, 家庭環境の要因も少なからず影響 していると解釈してよさそうである. 教員にインタビュー 調査を行った安藤・小平・布施 (2013) においても, 準 備・宿題の背景要因として家庭環境に言及する教員が多 いことが報告されている. 今後, 準備・宿題を予測しう る要因や準備・宿題を変化させうる要因を解明していく ことが求められよう. 関連して, 準備・宿題は, 調査 A, 調査 B ともに, 積極的授業参加行動の中で最も分 散の説明率が低かった点も特徴であった. つまり, パー ソナリティによって予測される割合が低い積極的授業参 加行動の側面であると言えよう. 説明率を下げていた理 由として, 学年・性別を問わず, 外向性との有意な関連 が見られなかった点も注目に値する. パス解析において も, 外向性から準備・宿題へのパスが, 唯一有意ではな かった. 外向的かどうかは準備・宿題の行動にはほぼ影 響しないと考えてよいであろう. 本研究の限界と今後の課題 本研究の限界として, 下 記の 2 点を指摘しておきたい. 第一に, 調査 A と調査 B で対象児童が異なったために, ビッグファイブの 5 つ の特性をすべて投入した解析が不可能であった点である. 本研究の結果から, どのパーソナリティ特性が児童の積 極的授業参加行動をよりよく説明しうるのかは, ある程 度予測できるとは言え, ビッグファイブすべてについて 測定を行うことで本研究の結果の再現性を検討すること が今後の課題として残されている. その際, 小学生の回 答できる質問項目の量にも十分配慮し, 調査上の工夫を 行うことも求められよう. 第二に, 同時点の測定であっ たため, 因果関係については明確な主張ができない点も 本研究の限界であろう. 一般的には, パーソナリティは 学習行動より先行する要因であると考えられ, そのよう な因果関係が想定された解析が行われることが多いが, 児童期の場合, 授業行動を通して形作られるパーソナリ ティも少なからずあることは考慮すべきであろう. 縦断 調査等による因果の検証もまた今後の課題である. 注 1 本研究は JSPS 科研費【課題番号 24530838, 16K04320】 の助成を受けた. また, 本研究の一部は日本教育心理学会第 55 回総会, 第 58 回総会で発表された. 引用文献 安藤史高・布施光代・小平英志 (2008). 授業に対する動機づ けが児童の積極的授業参加行動に及ぼす影響―自己決定理論 に基づいて 教育心理学研究, 56, 160-170. 安藤史高・布施光代・小平英志 (2009). 児童の積極的授業参 加に関する研究 (6) ―積極的授業参加行動と達成目標・コ ンピテンスとの関連について 日本教育心理学会第 51 回総 会発表論文集, 565. 安藤史高・小平英志・布施光代 (2013). 児童の積極的授業参 加に関する研究 (17) ―教師に対する面接調査による検討 日本心理学会第 77 回大会発表論文集, 1125. 安藤史高・小平英志・布施光代 (2015). 児童の積極的授業参 加に関する研究 (23) ―学級内での社会的地位の影響に対す る縦断的検討 日本心理学会第 79 回大会, 1199.
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