1. 緒言
教 師 が 授 業 を 成 立 さ せ る た め に は , content knowledge (内容に関する知識) や pedagogical knowledge (教え方に関わる知識) が必要だとされ てきた. 体育の授業で考えればサッカーやバスケッ トボール, バレーボールなどスポーツ (や運動) の 内容に関する知識とそれをどうわかりやすく伝え, 教えるかといった教育方法に関する知識が必要であ るということになる. もう少し砕くと, その内容に ついての知識を持っているだけではどう教えて良い のかがわからず, また教え方は身についていたとし てもその内容の知識を持っていなければ何を教えて 良いのかがわからないということになる. また, L. ショーマン1) 以降, この両者は切り離して考えるの ではなくその両者を関連させて成り立たせるように な っ た . そ し て , そ れ は pedagogical content knowledge (特別な混合物) と呼ばれ, 他のどの知 識にも還元できない独自の重要な 「知識基礎」 とし て捉えられている2). その 「知識基礎」 の構成要素 は次の7つから成り立っている. ① 「内容に関する知識 (content knowledge)」 ② 「 一 般 的 な 教 育 方 法 に 関 す る 知 識 (general pedagogical knowledge )」 ③ 「 カ リ キ ュ ラ ム に 関 す る 知 識 (curriculum knowledge )」④ 「PCK (pedagogical content knowledge)」 ⑤ 「学習者とその特性に関する知識 (knowledge
of learners and their characteristics )」 ⑥ 「教育の文脈に関する知識 (knowledge of
edu-cational contexts )」
⑦ 「教育の目的, 目標, 価値, そしてそれらの哲 学的歴史的基盤に関する知識 (knowledge of educational ends, purposes and values, and their philosophical and historical grounds)」 以上を踏まえただけでも, 教師が適切な授業を行 うためには, 複数の専門的知識が必要になることは
大学体育における授業モデルの検討
−スポーツ教育モデルの適用可能性−
Appication of Sport Education Model
to university Physical Education Classes
岡田 雄樹1)
和田 博史2)
Yuki OKADA, Hiroshi WADA
1) 日本福祉大学 スポーツ科学部
Faculty of Sport Sciences, Nihon Fukushi University 2) 育英大学 教育学部
Faculty of Pedagogy, Ikuei University 実践報告
容易に想像がつく. 本研究では大学の体育授業 (以下, 大学体育) を 対象にしているが, 大学体育においては content knowledge (内容に関する知識) だけで授業を行う 教師が多い事が予想される. さらには知識などの学 問的基盤に関わらずその種目の 「経験者だから」 と いう理由のみで授業を担当している実態があること は周知の事実であろう. さらに深刻なのが, 「教師 のコマ数調整としての授業」 となっている (ならざ るを得ない) 現実もある. これらは授業者の経歴や 業績とシラバスを対比させることで, ある程度推察 ができてしまう. それにくわえ, 体育の授業という のは教師や学生にとって遊びの範疇を超えず 「楽し ければ」 と理解され, その授業に 「笑顔が見られれ ば」 授業が成立しているように見えてしまうことも 危惧する必要がある. 目標や内容, 方法が成熟され ていない体育の授業では 「何が身についたのか」 「何ができるようになったのか」 「何のために身につ け, できるようになる必要があるのか」 「どのよう に教えるのか」 「どのように評価するのか」 が不明 確となり, 授業者自体が大学体育における学問とし ての存在意義や価値を放棄していくことになる. こ れでは, 「国民の誰もが, それぞれの体力や年齢, 技術, 興味・目的に応じて, いつでも, どこでも, いつまでもスポーツに親しむことができる生涯スポー ツ社会を実現する」3)ことなど到底無理であろう. これらの問題は 1991 年大学設置基準の大綱化によっ て専門教育重視に傾倒していき, 大学体育の在立根 拠の喪失や専任 (専門) 教員の減少などが大きく関 わっている. それでは専門的力量を持たない教師が 教えなければならない現実をどのように克服すれば 良いのだろうか. まず, 第一に大学体育における研 究知見や授業実践記録の乏しさが課題として浮き彫 りになるであろう. 目標から内容, 方法, 評価をど のように考えたら良いかと熟考するためには, 研究 知見や授業実践記録などがおおいに役に立つ. そこ で本研究では一つの授業モデルを大学体育に適用し, その結果を通して研究知見の一助となりたい. そこで本研究に有益な示唆を与えてくれるのがシー デントップのスポーツ教育モデルであると仮説を立 てた. なぜなら, スポーツ教育モデルは, 教育学や スポーツ・体育学, 社会の動向に応じて 1968 年の プレイ体育論から 6 度の改定を重ねて発展してきた 歴史あるモデルだということが一つの要因と言え る4) . そして, そのモデルには 5 つの特徴を有して いる. 1つ目は, スポーツ教育モデルはみんなのス ポーツを標榜するものであり, 体育授業で一般的に 行われているスポーツに比べてその本質的特性を経 験させることができる特徴がある5) . 2 つ目は, そ の中で, 人格的・社会的発達の目標達成や健康重視 のカリキュラム編成も可能にする柔軟性があること である. そもそも, スポーツ教育モデルのカリキュ ラム哲学は2つの独特な特性をもつ. それは, 「内 容目標の準備を拡大させること:より深い内容の範 囲を対象とする」 特性を有している4) . 内容目標の 準備とは, まず, 多くの目標を達成できるように大 単元に設定することであり, その単元で達成する目 標を増加させていくことである. より深い内容の範 囲を対象にすることとは, そのスポーツ活動で子ど もが感動するような意味のある経験をさせたり, 核 となる技術を学習させたりすることである. 3 つ目 は, 教師教育プログラムの機能を備えていることで ある. まず, スポーツ教育モデルの適用初心者には, 急に大きな授業改善をすることを求めない. 少しず つ, 子どもや教師が望ましいと思う箇所から導入す ることが推奨されている4). 詳細は省くが, モデル 適用には多大な知識と実践力が求められるため, 教 師においてもスモールステップの必要性が求められ 成長していく. 4 つ目は, スポーツ教育モデルの効 果検証が 66編以上行われていることである. 例え ば, Wallhead ら6)
の Sport Education: physical education for the new millennium? や Hastie ら7)
の A review of research on Sport Education: 2004 to the present が成果や問題点を整理してい る. また, Dyson ら8) は, スポーツ教育モデルが近 年の教育学的動向を踏まえた社会的構成主義のモデ ルであることを評価し, Metzler (2011)9) も認知領 域, 精神運動領域, 感情領域の唯一バランスよく促 進できるモデルであると評価している. このように, スポーツ教育モデルは, 実証されてきた指導モデル
という特徴を有している. 5 つ目は, スポーツ教育 モデルが生涯スポーツの実現に向けて, するだけで はなく, みる・ささえるスポーツの学習や, 地域社 会のスポーツの接続を考慮した授業展開をみせてい ることである. スポーツ教育モデルでは, 単元の終 わりには祭典的なクライマックスのイベントが用意 されている. そこでは, 地域スポーツの関係者や保 護者などを観客席に招き, 表彰式の際には, その代 表者からコメントをもらったり, 地域スポーツで選 手として登録しないかといったりする勧誘や接続が 準備されている. 以上のことから, 我が国の大学体育においてもス ポーツ教育モデルを適用し, 実践的研究を図ること は, 先の大学体育問題を解決する糸口になると考え た. そこで本研究では大学体育においてスポーツ教 育モデルを適用しその効果を検討することを目的と する.
2. 研究方法
2-1. 対象者及び教師の属性 本研究では大学1年生, 25 名 (男性 23 名, 女性 2 名) を対象に授業を行った. 対象者の所属学部は 福祉を主とする学部と教育を主とする学部でありそ の混合クラスで実施された. 授業者は 30 代前半で 体育科教育学を専門とする男性教師であった. 2-2. 実施期間と内容 本研究は, 2017 年 4 月から 2018 年 1 月までの計 30 回のサッカー系 (授業科目名はフットサル) の 授業であった. 2-3. スポーツ教育モデルの概要及び単元計画 (1) スポーツ教育モデルの概要 本授業者の大学では全 30 回の実技科目が実施さ れている. そのことから大単元を好むスポーツ教育 モデルが実施できると考えた. スポーツ教育モデル の概論は上記した通りであるが, より焦点を絞った 概要を示したい. まず本モデルの最大の目的は 「有 能で, 教養があり, 情熱的なスポーツ人」 を育成す ることにある. それらはどういうことか. 具体的に 以下に示す. ・ 「有能なスポーツ人」 とは, 満足いくかたちでゲー ムに参加できる技能をもち, プレイの複雑さに対 応した戦術を実行することができ, さらに, 豊か な知識を身につけたプレイヤーを意味する. ・ 「教養のあるスポーツ人」 とは, スポーツのルー ル, 儀礼, 伝統を理解し, 重んじるとともに, 子 どもたちのスポーツであれ, プロスポーツであれ, 良いスポーツ実践と悪いスポーツ実践とを見分け ることのできる人間を意味している. また, すぐ れた参加者であると同時に, ファンあるいは観戦 者のいずれであっても, 見識を備えた賢い消費者 であることを意味する. ・ 「情熱的なスポーツ人」 とは, それが地域の若者 のスポーツ文化であれ, 国家的なスポーツ文化で あれ, この文化を維持し, 保護し, 発展させるよ うな方法で参加でき, 行動できる人間をさしてい る. そのような情熱的なスポーツ人は, スポーツ 集団の一員として地域, 国家あるいは国際レベル で, スポーツ文化の発展に寄与する. これらは最大の目的であって, 全てを習得させよ うと思うなら莫大な時間と労力を要する. また, 先 の 「少しずつ, 子どもや教師が望ましいと思う箇所 から導入することが推奨されている」 ことを踏まえ たい. そこで今回は 「有能なスポーツ人」 と 「教養 のあるスポーツ人」 の育成に焦点をあてた. 続いて, 目標は次の通りとなる. ・それぞれのスポーツに特殊な技能と体力を向上さ せる. (技能と体力) ・それぞれのスポーツにおける戦術を正しく認識し, 実行することができる. (戦術能) ・発達段階に応じて参加する. (レベルに応じた参 加) ・スポーツ経験の計画と運営に協力する. (運営) ・責任のあるリーダーシップを発揮する. (リーダー シップ) ・グループの中で共通の目的に向かって効果的に活 動する. (協力的活動) ・それぞれのスポーツに独特の意味を与えている儀 礼や伝統を正しく評価する (儀礼の尊重)・スポーツに関わった諸問題に対して, 合理的に判 断し, 決定ができる能力を発達させる. (スポー ツの問題解決能力) ・審判やトレーニングの方法についての知識をもち, それらを適用する. (実践的知識) ・放課後や授業後のスポーツに自発的に参加する. (自発的参加) (2) 単元計画 本単元では 「グループの中で共通の目的に向かっ て効果的に活動する. (協力的活動)」 を中心にしな がらもそれぞれの目標に対して到達できるよう単元 を作成した (表 1). また, スポーツ教育モデルを 実施するにあたって中核の方法となる 「シーズン制」 「チームへの所属」 「記録の保存」 「公式試合」 「クラ イマックスイベント」 「祭典性」 を取り入れた5) . こ れらはスポーツの特性をスポーツ教育に組み入れる という発想からなるものである. それに加え役割を 決めることもこのモデルの特徴ではあるが 「キャプ テン」 「コーチ」 「運営」 の3つの役割を設定した. 2-4. データの収集方法 データの収集方法は以下の4つとした. (1) 目標達成度評価 (2) スポーツの価値観, 見方, 考え方の変容 (自 由記述) (3) スポーツに対する行動変容 (する・みる・さ さえる) (4) 形成的授業評価 表 1 単元計画 日程 時間 内 容 目 標 期分け 4月 7 日 1 オリエンテーション 授業の進め方, スポーツ教育モデルの理解 Ⅰ期 自分, 他者理解 チーム主体 4月14日 2 オリエンテーション チーム決め 授業の進め方, スポーツ教育モデルの理解 4月21日 3 オリエンテーション チーム決め 授業の進め方, スポーツ教育モデルの理解 4月28日 4 ルール確認, 試しのゲーム ルールの確認, チームの能力を知る 5月12日 5 練習, 試合① 自らで練習メニューを決め, 試合に生かす. 自らの, 他者の, チームの理解+新しい発見 5月19日 6 練習, 試合② 自らで練習メニューを決め, 試合に生かす. 自らの, 他者の, チームの理解+新しい発見 5月26日 7 練習, 試合③ 自らで練習メニューを決め, 試合に生かす. 自らの, 他者の, チームの理解+新しい発見 6月 2 日 8 練習, 試合④ 自らで練習メニューを決め, 試合に生かす. 自らの, 他者の, チームの理解+新しい発見 6月 9 日 9 練習, 試合⑤ 自らで練習メニューを決め, 試合に生かす. 自らの, 他者の, チームの理解+新しい発見 6月16日 10 講義① サッカーとフットサルの技術の特徴・共通点・違い②サッカーとフットサルの特徴・共通点・違い 6月23日 11 提供したドリルゲーム, 試合① ボール操作とボールを持っていないときの動きを知る 審判を行う, 主審, 副審 Ⅱ期 ルール, 審判を 覚える 提供された知識, 技術を検討 6月30日 12 講義② 練習メニューの検討. サッカーのオフィシャルルールの理解 (オフサイドを学ぶ) 我々の授業では適用するか 7月 7 日 13 提供したドリルゲーム, 試合② ボール操作とボールを持っていないときの動きを知る 審判を行う, 主審, 副審 7月14日 14 提供したドリルゲーム, 試合③ ボール操作とボールを持っていないときの動きを知る 審判を行う, 主審, 副審 7月21日 15 提供したドリルゲーム, 試合④ ボール操作とボールを持っていないときの動きを知る 審判を行う, 主審, 副審 9月15日 16 後期オリエンテーション 講義③ サッカーの歴史を知る 9月22日 17 講義④ 戦術理解 チーム作戦の検討 9月29日 18 提供したドリルゲーム, 試合⑤ ボール操作とボールを持っていないときの動きを知る 審判を行う, 主審, 副審 10月 6 日 19 クライマックスシリーズの確認 大会を運営する. ルール等検討 10月13日 20 基礎練習、 チーム練習, 試合⑥ ボール操作とボールを持っていないときの動きを知る 審判を行う, 主審, 副審 10月20日 21 全面ゲーム①チーム練習 ボール操作とボールを持っていないときの動きを知る 審判を行う, 主審, 副審 Ⅲ期 学んだことを 公式戦に生かす チーム主体 10月27日 22 基礎練習, チーム練習, 審判練習, 試合⑦ ボール操作とボールを持っていないときの動きを知る 審判を行う, 主審, 副審 11月10日 23 全面ゲーム②審判練習 ボール操作とボールを持っていないときの動きを知る 審判を行う, 主審, 副審 11月17日 24 チーム練習 公式戦① 今まで学んできたことを公式戦で生かす 11月24日 25 チーム練習 公式戦② 今まで学んできたことを公式戦で生かす 12月 1 日 26 チーム練習 公式戦③ 今まで学んできたことを公式戦で生かす 12月 8 日 27 チーム練習 公式戦④ 今まで学んできたことを公式戦で生かす 12月15日 28 決勝戦 公式戦⑤ 今まで学んできたことを公式戦で生かす 12月22日 29 振り返り まとめ, レポート 1月 5 日 30 全面ゲーム③
3. 結果及び考察
(1) 目標達成度評価 良い体育の授業とは 「学習目標が十分に達成され ている授業」 であると言われている10). 本授業では 何が, どの程度達成されたのであろうか. 本授業の 目標達成度を表2で確認すると, 「グループの中で 共通の目的に向かって効果的に活動する. (協力的 活動)」 や 「それぞれのスポーツに特殊な技能と体 力を向上させる. (技能と体力)」, 「それぞれのスポー ツにおける戦術を正しく認識し, 実行することがで きる. (戦術能)」 が高い達成度を示している. 特に 最も多かった協力的活動に焦点をあて考察してみた い. それは, スポーツ教育モデルの特性でもあるチー ムへの所属や役割の任命がこのような結果を生み出 したと考えられる. シーデントップ5) が言うように, チームに関わりながらも様々な役割を与え, 責任を 持たせることで情熱も持たせることができる. また, その分チーム内アクシデントも増加するが, それら 人間関係に関わった問題を解決していくことで, 学 生を成熟させ 「成長した」 と感じることに繋がった のであろう. 教師の目線から見ても協力的活動に力 を入れ, グループにおける練習, 戦術確認, ルール 決め, 大会運営などの時間を確保してきたことが功 を奏したと言える. また体育授業や運動部活動にあ りがちなその種目において上手なプレイヤー (学生) がヒエラルキーのトップに立つようなことがないよ う注視して授業を進めたことも少なからず影響した と考えられる. (2) スポーツの価値観, 見方, 考え方の変容 (自 由記述) 大会後の学生 (授業で言えば 29 回目) に 「スポー ツの価値観, 見方, 考え方は変わったか」 を自由記 述させた. その内容は表 3 になる. 本研究の目的は 授業モデルの検討であるが一人の学生が 「変わった. 今までの体育の授業では, チームは毎回変わり, ルー ルも曖昧, あつすぎるプレーが多くあったが, 知識 をつけ, チームを固定することで連携したプレーが できるようになり, 技能の上達にも繋がった. 授業 の進め方を変えるだけでここまで変わるのかと思っ た」 と記述していることから事例的ではあるがこの 授業モデルが大学生にも効果的であったと推測はで きる. くわえて表 4 と図 1 はそれらを内容別に区分 けしたものであるが, 「チーム力・コミュニケーショ ン能力」 「審判」 「スポーツへの興味・関心」 「楽し さ・内容重視 (勝利至上主義からの脱却)」 におけ る価値観や見方, 考え方が多く変化していったこと が見受けられる. この結果から先の目標達成と同様 に仲間との関係に肯定的な変容がみられたことがわ かる. その背景には, 繰り返しにもなるが協力的活 動に力を入れたことやチームへの長期間の所属が影 響をもたらしていると考えられる. 「楽しさ・内容 重視 (勝利至上主義からの脱却)」 に関して言えば 「勝利やできるということは大切ではあるが最優先 表 2 目標達成度 目標を設定したが身についたと思うものに○ (よく身についた) △ (まあまあ身についた) × (身につかなかった) をつけよ. ⃝ △ × 計 ・グループの中で共通の目的に向かって効果的に活動する. (協力的活動) 23 2 0 25 ・それぞれのスポーツに特殊な技能と体力を向上させる. (技能と体力) 22 3 0 25 ・それぞれのスポーツにおける戦術を正しく認識し, 実行することができる. (戦術能) 21 4 0 25 ・発達段階に応じて参加する. (レベルに応じた参加) 17 7 1 25 ・それぞれのスポーツに独特の意味を与えている儀礼や伝統を正しく評価する (儀礼の尊重) 17 7 1 25 ・審判やトレーニングの方法についての知識をもち, それらを適用する. (実践的知識) 15 10 0 25 ・放課後や授業後のスポーツに自発的に参加する. (自発的参加) 14 8 3 25 ・スポーツに関わった諸問題に対して, 合理的に判断し, 決定ができる能力を発達させる. (スポーツの問題解決能力) 13 9 3 25 ・スポーツ経験の計画と運営に協力する. (運営) 12 13 0 25 ・責任のあるリーダーシップを発揮する. (リーダーシップ) 6 16 3 25表 3 スポーツの価値観, 見方, 考え方の変容 この授業をきっかけにスポーツを始めた, 再開した (みる・する・ささえる) 1 フットサルがどのようにしてできたのかを知ることができた. また審判をすることで普段あまり目が向かないところを知ることができたのでサッカーや フットサルの新しい見方ができた. また他のスポーツでもどのようにしてできたのかを知りたいと思うようになった. 2 スポーツは単に体を動かすだけだと思っていたけど, 頭を使って動かなければいけないということがわかった. 3 スポーツをやるということは継続性が大切で, 長い間コーチやチームに縛られて, 本当にスポーツを仕事, 職業として視野に入れている人以外意味のな いものだと思っていたが全く違っていて, ただ体を動かしたい, 友達が欲しいなどという軽い気持ちで, たとえ, 実力がともなわなくとも楽しんで良い ものだという考えに至った. 4 サッカーやフットサルは個の技術というイメージが強かったがチーム力が最も大切なことだとわかった. やはりどのスポーツもピラミッドの頂点にある ものはチーム力だと思った. (サッカー部) 5 スポーツというものは自分一人では成り立たないということを改めて理解できた. (サッカー部) 6 元々あった自分のスポーツへの考え方を変更するということはなかった. 7 この授業をやる前は勝つことが一番大事. そのためなら多少荒れたプレーをしてもいいのではないかと思っていました. しかし本講義を通して, 尊重, 礼 儀が一番大切なのではないかと私は思うようになりました. スポーツは相手, 味方がいないとできないものが多いと思います. 一緒にプレーしてくれるこ とに感謝しないといけないと思うようになりました. 8 スポーツの価値観はとても上がった. スポーツをやることにより何事にも成長できると思います. そしてスポーツはとても頭を使うことだと思った. 頭 を使わないとうまくできないし勝ちにつながらないと感じました. 9 初めて主審や副審をやってみて, 簡単かなと思っていたけれど, レフリーは足を止める時間が短く, オフサイドラインがころころ変わっていくのでずっ とみていないと気づいたら違うところへいっていて, 思ったより大変だった. 10 自分は経験者だったが, チーム内の未経験者が一年のうちに段々とうまくなっているのがわかり, 練習や経験の必要性を改めて感じるようになった. ま た, 自分たちでルールを決めたことで, 今までやってきたサッカーのルールを詳しく見直すようになった. 11 実技を通して自分の中で変わったのはスポーツの価値観だ. スポーツは点を取ること, 華やかなプレーをすることだけが魅力的なものだった. しかし, 点を取るまでの過程 (的確なパス回し) やフィールドにいるチームメイトと一体となってプレーすることが一番の魅力だと思うようになった. みんなで 助け合うことで 「信頼」 と 「達成感」 を得ることができるものだと考える. 12 変わった. 今までの体育の授業では, チームは毎回変わり, ルールも曖昧, あつすぎるプレーが多くあったが, 知識をつけ, チームを固定することで連 携したプレーができるようになり, 技能の上達にも繋がった. 授業の進め方を変えるだけでここまで変わるのかと思った. 13 私はこの授業で監督のポジションをやり今まで選手としての考えしかなかったので新しい見方, 考え方ができました. 選手として中でプレーするより監 督として外から考えることで発見がたくさんできました. 14 変わりました. スポーツの価値観として, 結果より内容を大切にして, 見方としては, 人の良いところ悪いところが 30 回通してやっていくことで見え てきて, 自分がそれをカバーするべきと意識が変わりました. 考え方は最初から変わらなかったのですが, うまくいった時の楽しさの大きさを大切にし ていけば楽しく感じられるようになりました. 15 自分中心のプレーでは決して勝てないことがわかった. それぞれのスポーツに合った戦略や動きをしなければうまくいかない. 一つ一つのプレーに意味 を持って動かなければパスをもらうことなどが難しいことがわかった. 16 自分はスポーツはたくさんやってきましたが, 何げなくやっていました. でもこの授業を通して楽しさやコミュニケーション能力, 信頼関係を得ること ができたので, やはりスポーツは大切だと思いました. 17 この授業を受講したことで, サッカー中継やスポーツニュースのハイライト, インターネット動画でスーパープレー集などを見るようになりました. 前 までは見てもすぐにチャンネルを変えたりしていたが, 今では少しでもやっていると画面に向かって熱心に見るようになった. 18 もともと運動をすることが好きなので, スポーツに対して大きく価値観は変化していませんがテレビでサッカーの試合を観るときに一人一人の選手のプ レーだけではなく, チームの戦術にも注目するようになりました. 19 スポーツは面識のあまりない人とも, 一緒にプレーすることで仲間意識が生まれ, 仲良くなることができる一種の良いコミュニケーションツールになる ことができると思いました. 20 手を使うバスケを中学校でやっていたため最初はとてつもなく不安であった. でも 30 回と毎週練習することで技術が身に付き, 試合をやり勝てるよう になってからは, 毎週のサッカーが楽しいと感じるようになっていった. 昔は苦手意識があったけれど今はバスケの次に好きなスポーツとなった. また みんなでサッカーをやりたいと感じられてよかったと思う. サッカーは個人プレーが多いと思ったけれど. ボールを持ってない人の動きが大切だと知り, 価値観が 180°変わった. クラブ W 杯を観るようにもなって, 国や地域によってプレースタイルが違うと新しい発見をたくさん見つけた, 決勝はレベ ルが高くて見ていてとても楽しむことができた. 21 スポーツをやることで, 技術を向上させるために, 生活習慣を整えることの大切さを知り, 実行に移すことができた. また好きなことを信頼できる仲間 と共にやることで自主的に練習をし積極的に参加できるようになった. 今までを振り返ると記憶に残るスポーツとしての価値観を感じることができた. 22 スポーツをやる際に, 私は基本的に真剣に楽しむことをモットーにしていました. また, 興味のないことに対しても 「どうせやるなら真剣に」 という考 えがありました. それ自体はあまり変わっていません. 変わったことはチームの向上です. 自分はとにかくレギュラーで出るためにはチームよりも個を 優先してきました. しかしチーム内で協力し, 勝ちに行くという考え方が増えました. 23 スポーツをただ楽しむだけでなく, それに従ったルールでやればもっと楽しくなるということです. また, スポーツをやるということはそれなりの責任 があると思いました. これからサッカーをテレビなどで観るときには自分のポジションを見ようと思いました. 24 変わった. 私がやってきたスポーツとは違う楽しさや考え方がありとても面白いスポーツだと思った. サッカーやフットサルなんてただ球を足で転がし ているだけだと思ったが実際にやってみて, 実は奥深いものがあり, 頭を使うスポーツなんだと見方が変わった. 25 この授業を始めたときには周りが上手い子がばかりで正直個人の実力だけの個人スポーツなんじゃないかという考えが多々ありました. あとはずっと走っ ているとても体力のいるスポーツだと思いました. しかし個人の実力だけだったらピンクチームが強いと思いました. その相手に勝てた時は個人だけの 力じゃ勝てず, チーム一人一人の力がうまく発揮されないとダメなんだなと思いました.
表 4 スポーツの価値観, 見方, 考え方の内容別振り分け 内容別振り分け (複数回答) チーム力・コミュニケーション能力 6 審判 4 スポーツへの興味・関心 (見る, 調べる, 研究) 4 楽しさ・内容重視 (勝利至上主義からの脱却) 4 技術・戦術 3 知識 2 ルール 2 授業の進め方で体育が変わる 1 責任 1 プレイヤー以外の視点 1 礼儀・尊重 1 歴史 1 図 1 スポーツの価値観, 見方, 考え方の内容別振り分け (グラフ)
事項ではない. それよりもそれに向かってチームで どう協力し, どう乗り越えていくかが重要だ」 とい う授業者のスタンスがこのような結果になったと推 察できる. (3) スポーツに対する行動変容 (する・みる・さ さえる) この授業をきっかけにスポーツを始めた, 再開し たという質問には 「する」 だけでなく, 「みる」 よ うになったり, ボランティア活動や指導者になった りして 「ささえる」 ことも含んだ問いとなっている. その結果は表 5 と表 6, 図 2 にあるが本授業を通し てスポーツを再開したあるいは始めた学生は 25 人 中 11 人となる. みるも含めると 13 人となり過半数 を超えることになる. 一つの授業でスポーツに対す る行動まで変容させることは大変意義深いことであ り, 改めて授業の重要性を確認することができる. 多少の小競り合いはあったものの, チーム内外で歓 声も上がり雰囲気も良く 「授業内の仲間に誘われて」 という回答もあることから仲間とのコミュニケーショ ンによるきっかけがその要因となったと考えられる. もちろん 「無回答 (再開していないか, 記入漏れ)」 の存在も忘れてはならない. そのことの精緻な分析 については今後の課題としたい. 表 5 スポーツに対する行動変容 この授業をきっかけにスポーツを始めた, 再開した (みる・する・ささえる) 1 見るようになった. 2 体を動かしたいから受講した. 3 4 この授業を通して仲間ができフットサルサークルに少しずつ参加するようになった. 5 元々行なっている. 6 7 プレーの楽しさやルールを知ることでサッカーやフットサルを見るようになった. 8 大学になると部活もやらなくなりスポーツから離れるところであったが, この授業を通してスポーツをするのは楽しいと感じたので生涯にわたってやり たいと感じました. 9 スポーツをやることはやっぱりいいなと思い再開した. (初めてサッカー) 10 11 12 この授業によってスポーツの面白さを再認識した. (スポーツは前からやっています) 13 私はサッカーが好きだけど自分に合うサークル等がなかなか見つからず授業のみでボールを蹴っていたけれど, チーム内にフットサルをやりたいという 人がいて一緒に探してフットサルサークルに所属しました. 14 フットサルサークルにこの授業がきっかけで入りました. この授業の中で交流関係ができてこのような結びつきが生まれたと思います. 15 高校までは先生の指示に従っていただけであったが, 大学では自分たち中心の考えで目標を持って動きをするので自分が自由に動くことができるように なり楽しさを感じることができるようになった. 今も続けているスポーツを続けていきたいと思った. 16 フットサークルサークルに入部したきっかけはこの授業でもあるし, 高校時代にサッカーをやっていたからです. 17 フットサルサークルに入部した. きっかけはこの授業であって, 誘われて, その日にプレーをして楽しかったからである. 18 スポーツは初めていません. やりたい気持ちはあります. 19 もう一度サッカーやフットサルをしたいと思いフットサルサークルに入りました. 20 この授業をきっかけにもっと体を動かしたいと思うようになり, 中学校でやっていた2部のバスケットボール部に所属しました. 今でも頑張って続けて います. 21 22 チーム内で友人ができたからフットサルサークルに入っている. 改めてスポーツにおける人との繋がりのすごさを感じた. 23 高校では運動部に所属していなかったが, 大学でバスケサークルに入って改めて運動は良いと思った. 24 私はまだ再開していないが. もう一度野球を再開しようという気持ちになった. なぜかというと勝つことの喜びを野球で感じたいと思ったから. 25 自分のチームの××と一緒にフットサルをやっていると自分自身とても楽しいだろうなと思い, フットサルを始めました. またもっとうまくなりたいと 思うようになりました. あと単純にやっていて楽しかったので始めました.
(4) 形成的授業評価11) 表 7 と図 3 は形成的授業評価の推移であるが, 講 義や説明, 試しのゲーム, 最終日などを除くと評価 の対象は全 19 回となった (表 1 の単元計画の時間 において塗り潰されている箇所が評価の対象). ま ず, 全体の値を見ると平均して高い水準を保ってい ることから本授業は学生に受け入れられていたこと がわかる. つづいて, 次元別で確認をすると 「成果」, 「協力」 のはじめとおわりの比較ではやや向上がみ られていることがわかる. 「学び方」 においては横 ばいであり, 「意欲・関心」 では若干の低下がみら れる. さらに単元計画 (表 1) の各期別で確認して みたい. Ⅰ期は学生 (チーム) 主体, Ⅱ期は教員主 体, Ⅲ期は学生 (チーム) 主体の公式戦ということ になる. 再三出ているコミュニケーション能力も含 む, 仲間との 「協力」 は各期ともそれなりに高い水 準を保っている. ここで気になるのは 「成果」 であ るがⅠ期 (図 4) の6時間目や 9 時間目の評価は得 図 2 スポーツに対する行動変容の内容別振り分け (グラフ) 表 6 スポーツに対する行動変容の内容別振り分け 本授業を通したス ポーツの行動変容 サッカー・フットサルを再開した 6 無回答 (再開していないか, 記入漏れ) 5 元々やっているうえ継続している 3 やりたいが行動に移していない 3 サッカー・フットサルを始めた 2 自らの種目を再開した 2 みるようになった 2 新しいスポーツを始めた 1 その他 1
図 3 形成的授業評価 (全体グラフ) 表 7 形成的授業評価 (全体) 5 3.00∼2.77 4 2.76∼2.58 3 2.57∼2.34 2 2.33∼2.15 1 2.14∼1.00 (診断基準) Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 5 6 7 8 9 11 13 14 15 18 20 21 22 23 24 25 26 27 28 総合評価 2.71 2.63 2.68 2.56 2.63 2.60 2.72 2.62 2.61 2.73 2.71 2.74 2.71 2.79 2.72 2.85 2.74 2.76 2.70 成 果 2.44 2.31 2.36 2.37 2.25 2.37 2.54 2.33 2.38 2.57 2.48 2.57 2.53 2.64 2.63 2.69 2.57 2.67 2.51 意欲・関心 3.00 2.98 2.94 2.69 2.88 2.72 2.90 2.78 2.88 2.86 2.95 2.94 2.91 2.92 2.84 3.00 2.94 2.85 2.83 学び方 2.65 2.54 2.69 2.55 2.73 2.62 2.71 2.70 2.64 2.67 2.71 2.70 2.61 2.74 2.56 2.83 2.63 2.77 2.65 協 力 2.90 2.86 2.88 2.71 2.83 2.80 2.81 2.80 2.67 2.89 2.83 2.84 2.86 2.92 2.90 2.96 2.90 2.79 2.92 図 4 形成的授業評価 (Ⅰ期グラフ)
点換算すると 「2」 である(図 2). 本格的な授業に 入り, なおかつ未熟な知識で自主的に練習メニュー 等を考えたところで 「できるようになった」, 「上達 した」 という評価にはならなかったと推察できる. ただし, 教師が知識や技術を教えることが主となる Ⅱ期 (図 5) からは少しずつ上昇し, その知識や技 術を活かしたⅢ期 (図 6) においてはさらに上昇傾 向を示していることがわかる. 本授業者の通常の指 導スタイルはⅡ期からⅢ期に向かわせる授業が多い. もちろん今持っている力で思考・判断させることも 多々あるが今回のように長く時間を割けない現状が あった. しかし, 今回のような 30 時間という大単 元が授業の幅をもたせた. その結果, 本実験におい てシーズン制が適用でき, 本質的特性を味わうこと や有能なプレイヤー (実際の試合において戦術的プ レイ面で適度なレベルに達しているプレイヤー) を 育てることができたと捉えることができる.
4. 結論
本研究の目的は, 大学体育においてスポーツ教育 モデルを適用しその効果を検討することであった. 特にスポーツ教育モデルは大学体育における適用は 乏しく検討の余地があった. それが大学体育問題解 決の糸口になることを期待した. その結果を以下に 示す. ① 本授業では 「グループの中で共通の目的に向かっ て効果的に活動する. (協力的活動)」 という目標 の達成度が高かった. 図 6 形成的授業評価 (Ⅲ期グラフ) 図 5 形成的授業評価 (Ⅱ期グラフ)② 本授業を受講したことでスポーツの価値観, 見 方, 考え方が変容した. なかでも, 「チーム力・ コミュニケーション能力」 「審判」 「スポーツへの 興味・関心」 「楽しさ・内容重視 (勝利至上主義 からの脱却)」 における価値観や見方, 考え方が 大きく変化していった. ③ 本授業をきっかけにスポーツに対する行動に変 容がみられた. スポーツを再開したあるいは始め た学生は 25 人中 11 人となった. みるも含めると 13 人となり過半数を超える結果となった. ④ 本授業における形成的授業評価では概ね高い数 値を保ち, 単元の後半になる程その傾向はみられ た. この結果から大学体育におけるスポーツ教育モデ ルの適用はある程度の効果を示した. しかし, 本大 学のように 30 時間の授業を確保できる大学は少な い. 15 時間授業での検討余地も残されている. く わえて, すべての大学体育においてスポーツ教育モ デルを実施することが望ましいわけではない. 社会 情勢や各大学のポリシー, 授業者の目標に沿って授 業を展開してもらいたい. 最も大切なことは各授業 者の授業に対する責任である. 大学体育において厳 しい状況があるからこそ各教員の授業研究が盛んに なることを望む. 引用参考文献
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9) Metzler, M. (2011). Instructional Models in Physical Education 3rd. Holcomb Hathaway. Arizona. 10) 高橋健夫 (1994) よい体育の授業の構造. 高橋健夫 編
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