≪生活美学基礎理論研究会≫
くらしの中の生活と美学
静岡文化芸術大学名誉教授 株式会社デザインインテグレート代表取締役宮 内 博 実
はじめに 普段は、企業でスタッフ向けの専門的な能力開発を中心としたセミナーを担当、さ らに実際の商品開発のアドバイスも行っています。その主なアイテムは、自動車をは じめ家電などのプロダクト製品、住宅や建材、家具などの住環境構成材、食品や飲料 などのパッケージ、ネーミングと味の開発など広範囲にわたっています。かなり多く の業種で、様々な場面で具体的なアドバイス、商品開発のコンセプトの立案、最終的 なデザイン提案までのコンサルティングを仕事内容としています。 このような具体的な開発において、はたして「色」そのものの要素はどこまで結果 に影響するのでしょうか。水と空気以外、すべての物に必ず「色」はついてまわりま す。そのために、どんな商品も「色」がいかに重要かということを丁寧に説明し、そ の上で「必ず売れる商品」をどのように開発展開するかを、専門チームを編成して共 同で研究します。 一般的な経済活動では、新商品を出したがあまり売れない状況で、そのままの形で 生産を続けることは難しい。そうなると、どこかのタイミングで何としても売れるよ うに見た目やスペックを変更して、それなりの軌道修正が必要になります。その検討 段階でデザイナーが考えたアイデアがうまく顧客にも伝わり、実際の販売にも繋がれ ばよいのですが、そう簡単ではありません。 一般的にデザイナーはマーケッターではないので、なかなかいつも売れそうなアイ デアやデザインを確実にひねり出すのは容易くはない。そこで多くの企業では、商品 企画を担当する人を、文系の出身者や政治や経済を学んできた人を配属することも多 い。しかし、その担当者は、デザイナーのように具体的な絵が描けるわけではありま せん。販売傾向の分析や顧客ニーズをヒアリングして次の手を考えます。これまでの 数値結果やグラフを参考に、何が売れるのか、これからの需要をそれなりに予測しま す。かなり売れた実績をもとに改良や修正で済むような場合は、開発担当とデザイナ ーの打ち合わせで十分ですが、今までにない新しい商品を考えるとなるとこれまで以 上の互いの「コミュニケーション」の精度が求められます。デザイナーと企画担当者のコミュニケーション力は、良い結果を導き出すには必要 不可欠であり、目的に相応しい雰囲気やイメージを双方で共有する必要があります。 そのため、それぞれが相手に、自分が考えた意味が正しく伝えられているかチェック します。そのために感覚的な「イメージコミュニケーション」を客観的に捉え、企画 力に生かす手法を教育プログラム(感性マネージメントシステム)として開発しまし た。 感性教育の重要性 cocoiku1)(ココイク)は、数年前から伊勢丹新宿店が提供している、未来を担う 0 ~12 歳の子どもたちに向けた、クリエイティブな学びの場を提供する教育プログラム です。少子高齢化により、百貨店おける来店客層の変化は売り上げに大きな影響を及 ぼしています。子どもの数が減少していることにより、子ども服や玩具の売上は伸び 悩み、高齢者が増加したことから、婦人服では高齢者向け衣服しか売上が見込めなく なります。あらゆる世代の商品を取り扱っているのが百貨店の魅力であるにも関わら ず、この状況では、これからの百貨店としては成り立たない。そこで、子どもを中心 とした親子を何としてでも百貨店に集める工夫が必要となってきたと思われます。 そこで、伊勢丹新宿店は、単に子ども対象に商品を売るのではなく、保護者から子 どもを預かり、子どもだけで体験できる塾のような場を、売り場の一角を利用して提 供しています。それが cocoiku です。この教育プログラムは、「みる」「きく」「さわる」 「うごく」「かく」「つくる」「しる」「はなす」「わける」「くみあわせる」という 10 こ の体験を用いています。30 分~1 時間単位で子どもを預け、いろいろな玩具を使用し たり、プロのインストラクターを用意したりと、多種多彩なプログラムを提供してい ます。 基本的な感性の形成段階と考えられている 48 カ月(4 歳)までの間に、「みる」「き く」「さわる」「うごく」「かく」「つくる」「しる」「はなす」「わける」「くみあわせる」 という 10 個の体験を、どのくらい経験するか、プロから正しく直接教わることで、そ の子供の成長でセンス(感性)が大きく変わると考えられるからでしょう。 普通の幼稚園や保育園に預けられ場合、ただの好きなように書くだけの遊びの延長 のような「お絵かき」では、ほとんどの子どもたちはそれほど続かないかもしれませ ん。この cocoiku のような感性教育プログラムを受けた子どもと比較すると、多分将 来的にはセンスの差が生じるだろうと思います。 どんな初等教育を受けられたか、その先の小中高と進みそれが学歴の差となり、最 後はセンスの差となって表れるのでしょう。努力をして良い学校を卒業し、良い職に 1)2020 年 3 月 23 日を持って、全てのサービスが終了している。
デザイナーと企画担当者のコミュニケーション力は、良い結果を導き出すには必要 不可欠であり、目的に相応しい雰囲気やイメージを双方で共有する必要があります。 そのため、それぞれが相手に、自分が考えた意味が正しく伝えられているかチェック します。そのために感覚的な「イメージコミュニケーション」を客観的に捉え、企画 力に生かす手法を教育プログラム(感性マネージメントシステム)として開発しまし た。 感性教育の重要性 cocoiku1)(ココイク)は、数年前から伊勢丹新宿店が提供している、未来を担う 0 ~12 歳の子どもたちに向けた、クリエイティブな学びの場を提供する教育プログラム です。少子高齢化により、百貨店おける来店客層の変化は売り上げに大きな影響を及 ぼしています。子どもの数が減少していることにより、子ども服や玩具の売上は伸び 悩み、高齢者が増加したことから、婦人服では高齢者向け衣服しか売上が見込めなく なります。あらゆる世代の商品を取り扱っているのが百貨店の魅力であるにも関わら ず、この状況では、これからの百貨店としては成り立たない。そこで、子どもを中心 とした親子を何としてでも百貨店に集める工夫が必要となってきたと思われます。 そこで、伊勢丹新宿店は、単に子ども対象に商品を売るのではなく、保護者から子 どもを預かり、子どもだけで体験できる塾のような場を、売り場の一角を利用して提 供しています。それが cocoiku です。この教育プログラムは、「みる」「きく」「さわる」 「うごく」「かく」「つくる」「しる」「はなす」「わける」「くみあわせる」という 10 こ の体験を用いています。30 分~1 時間単位で子どもを預け、いろいろな玩具を使用し たり、プロのインストラクターを用意したりと、多種多彩なプログラムを提供してい ます。 基本的な感性の形成段階と考えられている 48 カ月(4 歳)までの間に、「みる」「き く」「さわる」「うごく」「かく」「つくる」「しる」「はなす」「わける」「くみあわせる」 という 10 個の体験を、どのくらい経験するか、プロから正しく直接教わることで、そ の子供の成長でセンス(感性)が大きく変わると考えられるからでしょう。 普通の幼稚園や保育園に預けられ場合、ただの好きなように書くだけの遊びの延長 のような「お絵かき」では、ほとんどの子どもたちはそれほど続かないかもしれませ ん。この cocoiku のような感性教育プログラムを受けた子どもと比較すると、多分将 来的にはセンスの差が生じるだろうと思います。 どんな初等教育を受けられたか、その先の小中高と進みそれが学歴の差となり、最 後はセンスの差となって表れるのでしょう。努力をして良い学校を卒業し、良い職に 1)2020 年 3 月 23 日を持って、全てのサービスが終了している。 就き、高い年収につながる。そして、家庭を持って自分の子どもに対しても、当然で すが感性の投資をするようになると思います。 今どうすれば生活が豊かになるかと考えていますが、経済的な豊かさの次は、感性 の質がその先で求められます。cocoiku のプログラムでは、どうすれば感性が豊かにな るのかを、いくつかの項目を細かく分けて実践しています。何を見せるか、何をどう 聞くか、何をどう触るか。現行の学校や幼稚園の授業では、このような感性的な教育 は一部分しか取り入れられていないのが実情と思われます。 現在、文部科学省は、小中学校の図画工作や美術の時間をできる限り減らそうとし ています。特に小学校では、ハサミやカッターナイフを使う工作の時間を減らし、他 の学習内容に変更しようとしています。先生たちの準備や片付けも面倒で、道具を使 うと怪我をする可能性もあるためでしょう。こうなると、残るは家庭内でどのような 感性教育を行うかが重要となってきます。仮に通常の学校教育で、感性教育の減少傾 向がこのまま進むとすると、今後は、益々センスに影響を与える子どもたちの感動経 験そのものに格差が広がると思いませんか。 IMAGE の重要性 この研究会で今日伝えたいことは、見えているものから、見えないものをどのよう に「IMAGE」として想像するかです。今目の前に見えているもの、それこそたくさんあ りますが、そこからどうやって実際に見えていないものを閃いたり気持ちとして感じ たりするのか。言い換えると脳や心で感じた印象を、何とか「イメージ」として他人 に伝えられるかどうかです。 このイメージとは、アイデアであり、「発想」や「閃き」などと同じようなものです が、頭の中に抽象的に描かれた「雰囲気」や「ムード」を意味しています。普通、い くつかの見えているもの(情報)から類推や想像しながら新しいアイデアに繋げてい ます。しかし、何も見ずに何かを想像することは、とても難しいことです。それなり に努力することで、誰もが今までにないようなアイデアが思い浮かぶとは限りません。 ある程度の本を読んでいないと面白い小説は書けないでしょう。これまでにいくつも の音楽を聴いたことがなければ、新しい曲作りは無理でしょう。そうだとすると多く の絵を見ていないと絵は描けないのでしょうか。雰囲気を簡単な絵にして伝えること ぐらいであれば、子供でも十分にやれると思います。むしろ内容をわかりやすい言葉 にしたり、文字で書く方が絵を描くよりもかなり難しいと思います。 実際に見たものをある程度イメージとして視覚として記憶することは、誰もが自然 にできています。しかし、記憶されたイメージを正確に再現するには、それなりに、
普段からモノをしっかり見るトレーニングが必要と思います。ところが漠然と眺めて いるといくつものイメージが重なって、かなり曖昧なイメージとして記憶してしまい ます。そうなると、ありのままの再現ができなくなります。それでも自分な好きなイ メージだけは、かなり鮮明に記憶されて、それがどんどん厚みを増してストックされ ます。逆に嫌いなものはすぐに記憶から消そうと処理されるので、再現にはうまく使 えないのでしょう。このプロセスの繰り返しを通じて、体験として作られる「イメー ジストック」が、そのまま「自分らしさ」の表現にしっかり繋がっていると思います。 デザインを考える際に実際に絵をどのように描けるかではなく、見ているものから 見えないものをそれなりに想像する「イメージ力」があるかないかです。普通の人が、 思ったように画が描けない言い訳として、これまでにデッサンが苦手、誰かに絵が下 手と決めつけられたとかでしょう。こんな理由は、2000 年代までのアナログ的な言い 廻しであり、今ではパソコンの性能やアプリの充実、精密なスキャナーや 3D プリンタ ーなど多彩な道具が用意されています。これらソフトやテクニックを駆使することで、 デッサンや絵が上手に描けないハンデキャップはかなり補完できています。このこと から、今では画が描けないことが、そのままイメージが描けないことにはならなくな っています。忠実にしっかりとモノを見て、見えないものを想像する直感力があれば、 世界中に広がったインターネット検索で膨大な画像データから検索できます。自分が 直感で感じた「イメージ」に相応しい画像やビジュアルを的確に探し出して、それを 加工するツールやテクニックが沢山用意されています。 昔は、玩具もそう手に入りやすくはなかったため、その辺の石ころやブリキの空き 缶を使って試行錯誤しながらも、子どもが自ら玩具に変える感動体験を行っていまし た。これらの経験は、大人が意図的に周囲から提供した場ではなく、何もなかった時 代だからと思います。しかし、今は昔とは違い、知恵や工夫の余地が少なくあらゆる ものが出来上った状態で取り揃えられています。そのためにこのような感性を育てる 場を、周囲から提供されなければ体験しがたい状況と思います。 「感動」というものは、本来教えられるものではなく、当然ですが強制もできない。 このような時代で、せめて保護者が子どもにできることは、モノを見せる場所に連れ て行くことでしょう。そこで、子どもがそのモノをどう感じたかをしっかり聞くこと はできます。色々な場面での感動経験と身体と頭を使った失敗や成功の体験により、 個々人のイメージのコンテンツはより豊かになります。今日集まった学生の皆さんで も、決して遅くはないと思います。いろいろなモノを実際に見て何かを直接感じて欲 しい。 自分がこれまでに育った環境で、1つ1つのイメージ体験によって感性が形成され
普段からモノをしっかり見るトレーニングが必要と思います。ところが漠然と眺めて いるといくつものイメージが重なって、かなり曖昧なイメージとして記憶してしまい ます。そうなると、ありのままの再現ができなくなります。それでも自分な好きなイ メージだけは、かなり鮮明に記憶されて、それがどんどん厚みを増してストックされ ます。逆に嫌いなものはすぐに記憶から消そうと処理されるので、再現にはうまく使 えないのでしょう。このプロセスの繰り返しを通じて、体験として作られる「イメー ジストック」が、そのまま「自分らしさ」の表現にしっかり繋がっていると思います。 デザインを考える際に実際に絵をどのように描けるかではなく、見ているものから 見えないものをそれなりに想像する「イメージ力」があるかないかです。普通の人が、 思ったように画が描けない言い訳として、これまでにデッサンが苦手、誰かに絵が下 手と決めつけられたとかでしょう。こんな理由は、2000 年代までのアナログ的な言い 廻しであり、今ではパソコンの性能やアプリの充実、精密なスキャナーや 3D プリンタ ーなど多彩な道具が用意されています。これらソフトやテクニックを駆使することで、 デッサンや絵が上手に描けないハンデキャップはかなり補完できています。このこと から、今では画が描けないことが、そのままイメージが描けないことにはならなくな っています。忠実にしっかりとモノを見て、見えないものを想像する直感力があれば、 世界中に広がったインターネット検索で膨大な画像データから検索できます。自分が 直感で感じた「イメージ」に相応しい画像やビジュアルを的確に探し出して、それを 加工するツールやテクニックが沢山用意されています。 昔は、玩具もそう手に入りやすくはなかったため、その辺の石ころやブリキの空き 缶を使って試行錯誤しながらも、子どもが自ら玩具に変える感動体験を行っていまし た。これらの経験は、大人が意図的に周囲から提供した場ではなく、何もなかった時 代だからと思います。しかし、今は昔とは違い、知恵や工夫の余地が少なくあらゆる ものが出来上った状態で取り揃えられています。そのためにこのような感性を育てる 場を、周囲から提供されなければ体験しがたい状況と思います。 「感動」というものは、本来教えられるものではなく、当然ですが強制もできない。 このような時代で、せめて保護者が子どもにできることは、モノを見せる場所に連れ て行くことでしょう。そこで、子どもがそのモノをどう感じたかをしっかり聞くこと はできます。色々な場面での感動経験と身体と頭を使った失敗や成功の体験により、 個々人のイメージのコンテンツはより豊かになります。今日集まった学生の皆さんで も、決して遅くはないと思います。いろいろなモノを実際に見て何かを直接感じて欲 しい。 自分がこれまでに育った環境で、1つ1つのイメージ体験によって感性が形成され ています。そこで五感を通じてストックされた「イメージ・データ・ベース」が、豊 かな発想力や幅広い表現力の源になり、ひいては「個性表現」に影響を与えると思い ます。 WAT-9(イメージ 9 分類)の活用事例 これまでに述べてきたように、自分の感性を客観的なイメージとして捉え、確実にイ メージをストックするのに便利な分類基準を説明します。それが、この WAT9 と呼ばれ る図で、9つの基本的なインデックスイメージワ ード(形容詞)から構成されています(図 1)。 多くの人が互いにコミュニケーション精度を高 めるために、それぞれの感じ方を何とかあらかじ め確認する必要があります。言葉の意味は理解し ても、その言葉から連想されるイメージが同じと は限りません。そこで心理学調査手法を用いて、 色から連想されるイメージの関係性を整理して配 置したのが、この 9 つで示された「イメージ分類 手法」です。9 つのイメージは、形容詞の中で最少 の漢字一字を用いています。中国から伝わった漢 字ですが、我々は、その漢字一字に上下で文字を加えて、いくつか意味を広げていま す。今回はこの手法の詳しい説明は、時間がないのでここでは省きますが、この分類 手法を実際にマーケティングに活用した事例を見せながら解説したいと思います。 (武庫川女子大学生活美学研究所紀要第 29 号講演録を参照) 9 分類を用いた感性マーケティングの事例として、最初に五感の中から味覚を取り上 げ、その味の分類を具体的に説明します(図 2)。 味を WAT9 で分類するために、基本軸として左 右に甘い-苦い、上下の軸でライト-ヘビーと なり、その中に斜めの補助軸として、コク-キ レ、メリ-ハリ(緩和と緊張)の軸を設定して 意味づけを設定しています。そこでこのマップ を用い、まずは最初に 9 つのイメージキーワー ドに合わせて大体の位置にプロットしてみます。 例えば既存調味料のマップを作成すると、味全 体の位置関係から、砂糖、塩、油、水などの方 向性から、人気の調味料や売れ筋の把握、これ 図 1. 9 イメージの構造 図 2. 味覚のイメージ分類
からの味の方向性を模索することができます。例えば、既存商品のマッピングから、 未だ見ぬ新商品も想像することができます(図 3)。 同じソースでも、同じ味噌でも、マッ プのどちらの方向へ寄せればどんな味に 変化するのか、今よりより売れそうな味 になるのか。そのためには昆布を入れる べきか、あるいはこってり味のバターを 入れるか、大人向けに塩を少し強めるか など、開発の段階で味そのものの方向性 を、このマップ上で味のイメージを確認 できます。 このようにさまざまな開発段階で、こ のようなマップを作り、食品開発における感性マーケット分析を行なって、デザイナ ーと方向性を感覚的に確認する際に活用されています。少子高齢化と健康志向、世帯 あたりの人数減、コンビニの普及、そんな状況から調味料は、料理や食材の変化、調 理方法や貯蔵方法などとの連動性があり、そこからイメージの動向を類推することが これからの需要予測につながります。 次に提示するのは、これは食材のイメージです。食品スーパーを計画するとき、生 鮮食品や加工食品、生活雑貨など何をどの売り場にどれだけのスペースを割り振るか を考えます。その際にヒントとなるのが、客層に合わせた料理の提案、先を見越した 食材の調達とその提供方法の検討です。新装開店時店内インテリアや什器も重要です が、より売り上げを長い間維持するには、イメージで十分に考えられた店頭ディスプ レーと魅力的な品揃えが欠かせません。 図 4 は、新宿伊勢丹でイタリ ア食品のイベントがあり、その 時販売されていたワインをマ ッピングしたものです。 イタリアで毎年 4 月上旬に ミリタリーというコンテスト が開催されています。そのコン テストで入賞したものを一括 して輸入販売していました。ボ トルカラーやラベルデザイン、 味と香りの説明、どんな料理に 合わせるのか、その全体の雰囲 気から、イメージとしてマッピ 図 4. イタリアワインのマップ 図 3. 調味料のイメージマップ
からの味の方向性を模索することができます。例えば、既存商品のマッピングから、 未だ見ぬ新商品も想像することができます(図 3)。 同じソースでも、同じ味噌でも、マッ プのどちらの方向へ寄せればどんな味に 変化するのか、今よりより売れそうな味 になるのか。そのためには昆布を入れる べきか、あるいはこってり味のバターを 入れるか、大人向けに塩を少し強めるか など、開発の段階で味そのものの方向性 を、このマップ上で味のイメージを確認 できます。 このようにさまざまな開発段階で、こ のようなマップを作り、食品開発における感性マーケット分析を行なって、デザイナ ーと方向性を感覚的に確認する際に活用されています。少子高齢化と健康志向、世帯 あたりの人数減、コンビニの普及、そんな状況から調味料は、料理や食材の変化、調 理方法や貯蔵方法などとの連動性があり、そこからイメージの動向を類推することが これからの需要予測につながります。 次に提示するのは、これは食材のイメージです。食品スーパーを計画するとき、生 鮮食品や加工食品、生活雑貨など何をどの売り場にどれだけのスペースを割り振るか を考えます。その際にヒントとなるのが、客層に合わせた料理の提案、先を見越した 食材の調達とその提供方法の検討です。新装開店時店内インテリアや什器も重要です が、より売り上げを長い間維持するには、イメージで十分に考えられた店頭ディスプ レーと魅力的な品揃えが欠かせません。 図 4 は、新宿伊勢丹でイタリ ア食品のイベントがあり、その 時販売されていたワインをマ ッピングしたものです。 イタリアで毎年 4 月上旬に ミリタリーというコンテスト が開催されています。そのコン テストで入賞したものを一括 して輸入販売していました。ボ トルカラーやラベルデザイン、 味と香りの説明、どんな料理に 合わせるのか、その全体の雰囲 気から、イメージとしてマッピ 図 4. イタリアワインのマップ 図 3. 調味料のイメージマップ ングしてみました。 実際にはどのような味か、試飲してみなければわかりません。しかし、すべてを試 飲するわけにもいかない。そこで、あらかじめ「キャッチフレーズ」をつけることで、 そのワインがどのような味であるのかを消費者がイメージできるようにしています。 試飲をせずに売る場合、ボトルのイメージも重要ですが、それだけでは、味の良さは わからない。マッピングした中で、どのワインが売れるのか。味覚のイメージ分類上 で、あまりこってりしたものではなく、飲みごたえはあるがそれほど重くないものに、 これからの人気が移行するのではないかと、勝手に売行き動向を予測してみました。 次は、料理全体で見てもらい ます。大きく国別にインド料理、 韓国料理、中国料理、フレンチ、 イタリアン、懐石料理、和食な どをマッピングしています(図 5)。 近年、増加しているのはイタ リアンですが、フレンチや中華、 インドにエスニック、寿司や天 ぷらをはじめとした日本料理、 懐石料理、伝統的な和食を配置 しています。味と料理の関係を マップ上で傾向を確認すると、これからはますますこってりした味はウケないかもし れません。カロリーを控えて、肉よりも魚や野菜、常温から多少冷たくした状態で少 しずつ味わう方向に向かうと思います。 このように集めた情報を実際にマッピングするには、普段から味そののもの、新し い食材、調理方法、流行りの店など飲食情報に関心や興味を持つことが必要です。神 戸や梅田で新しい商業ビルができたと聞けば、どのようなレストランが入っているの か現地で確認する。イタリアンの中でも、どのような料理を出す店舗が人気なのか、 どうしてこんな店にお客が大勢入っているのだろうか。特に、和食が文化遺産となり、 和という意味を強調するようになったことから、居酒屋や和食を意識して提供すると ころが増加しているのだろうか。 そこから考えて、これからの食材の開発において、野菜もどんなカッティングにす れば売れるのかが見えてくると思います。何かを作ろうとすれば、どこかからか調達 することになります。常に生産から流通、消費者目線で全体の流れを「イメージ」と してつかむことで、新たに必要な商品展開や提案を想像しやすくなります。 図 5. 世界の料理のマッピング
図 6 は特定のブランドのケー キに特化して、その見た目と形、 ディテールをそれぞれイメージ で考えて分類しています。 神戸発祥の菓子メーカー「ア ンリシャルパンティエ」のフレ ンチスタイルのケーキイメージ マップです。同じ会社の別ブラ ンドでイタリアンイメージの 「シーキューブ」もあり、さら にもう一つ新しいブランドを作 ろうと企画をスタート、しかし、 うまくそれぞれの違いをイメー ジすることができませんでした。 マーケットリサーチの結果で、ケーキ店のショーケースに必ず欲しいものは、イチ ゴのショートケーキ、シュークリーム、そしてチーズケーキだそうです。なぜなら、 神戸で最初に作ったショートケーキであり、神戸から全国に広がったケーキイメージ を代表する大切な味です。そこで、ケーキといえばイチゴのショートケーキを連想す る常識的な感覚が、昔から当たり前のように引き継がれています。 どのケーキを買のか必ず自分で選びます。しかし、買ったケーキを自分一人で食べ るわけではない。誰かにプレゼントするためだとしても、食べる人の気持ちになって 1つ1つケーキを選んでいることも少ないのではないでしょうか。当然ですが、自分 が食べたいものを中心に選ぶことが多いと思います。なぜなら、自分が食べたくない と思うものを選んでプレゼントにしたくない。しかもケーキの場合、1 個だけ買う人も 少ない。複数個を買うと考えると、ショートケーキとシュークリームとチーズケーキ だけでは選択肢が少なく、もう少しバラエティが欲しくなります。そこで、店では、 売れ筋以外のデザインに工夫を凝らして、綺麗に並べる。そして全体で美味しそうに 感じさせるかが腕の見せ所となります。さらにケーキは日持ちしないため、当日に売 り切らなければならない。しかし、数多く用意すると損失が出てしまう。あまり数が 出ない高価なケーキを作れば作るほど、売り上げに繋がらない。 いかに、バラエティが豊富であるように見せ、売れ筋のものを多く作り、売れない ものをできるだけ数少なく作るかが要となる。そのために、このイメージ 9 分類を作 成しています。たとえ中身や材料が違ったとしても、いざ並べみると同じように見え てしまったのでは、バラエティの豊富さにつながらない。限定されたパテシエのセン スでどこまでイメージの変化をブランドイメージとしてどこまで出せるか、このマッ プを活用して企画をプロデュースしています。 図 6. ケーキのイメージマップ
図 6 は特定のブランドのケー キに特化して、その見た目と形、 ディテールをそれぞれイメージ で考えて分類しています。 神戸発祥の菓子メーカー「ア ンリシャルパンティエ」のフレ ンチスタイルのケーキイメージ マップです。同じ会社の別ブラ ンドでイタリアンイメージの 「シーキューブ」もあり、さら にもう一つ新しいブランドを作 ろうと企画をスタート、しかし、 うまくそれぞれの違いをイメー ジすることができませんでした。 マーケットリサーチの結果で、ケーキ店のショーケースに必ず欲しいものは、イチ ゴのショートケーキ、シュークリーム、そしてチーズケーキだそうです。なぜなら、 神戸で最初に作ったショートケーキであり、神戸から全国に広がったケーキイメージ を代表する大切な味です。そこで、ケーキといえばイチゴのショートケーキを連想す る常識的な感覚が、昔から当たり前のように引き継がれています。 どのケーキを買のか必ず自分で選びます。しかし、買ったケーキを自分一人で食べ るわけではない。誰かにプレゼントするためだとしても、食べる人の気持ちになって 1つ1つケーキを選んでいることも少ないのではないでしょうか。当然ですが、自分 が食べたいものを中心に選ぶことが多いと思います。なぜなら、自分が食べたくない と思うものを選んでプレゼントにしたくない。しかもケーキの場合、1 個だけ買う人も 少ない。複数個を買うと考えると、ショートケーキとシュークリームとチーズケーキ だけでは選択肢が少なく、もう少しバラエティが欲しくなります。そこで、店では、 売れ筋以外のデザインに工夫を凝らして、綺麗に並べる。そして全体で美味しそうに 感じさせるかが腕の見せ所となります。さらにケーキは日持ちしないため、当日に売 り切らなければならない。しかし、数多く用意すると損失が出てしまう。あまり数が 出ない高価なケーキを作れば作るほど、売り上げに繋がらない。 いかに、バラエティが豊富であるように見せ、売れ筋のものを多く作り、売れない ものをできるだけ数少なく作るかが要となる。そのために、このイメージ 9 分類を作 成しています。たとえ中身や材料が違ったとしても、いざ並べみると同じように見え てしまったのでは、バラエティの豊富さにつながらない。限定されたパテシエのセン スでどこまでイメージの変化をブランドイメージとしてどこまで出せるか、このマッ プを活用して企画をプロデュースしています。 図 6. ケーキのイメージマップ 次に新宿伊勢丹で羊羹の特別展示会 があり、その際に配布されたカタログを 使って羊羹のイメージを分類していま す(図 7)。 全国から有名羊羹を数多く集め、羊羹 のバラエティさを一堂に見せてくれま した。まず、羊羹の中心(基準)はどこ になるのかを考えてみました。すると羊 羹の発祥は、榮太郎やとらやが、小豆を 長方形に固めて作ったものではないか。 これが多分基本形で、ここから多様なア レンジをして羊羹が変化して今に至っ ているのではないでしょうか。その「と らや」は創業 600 年です。600 年間作り 続け、それが全国に伝えられて、いろい ろな形に派生されたものが作られている。基本の羊羹から右や上へ行くと何が違うの か。左下コクと右上キレ、左上メリと右下ハリ。中央は隠し味であり、含蓄のある奥 深さを感じるような味となります。あまり甘くないものにすると右上に、左下にいく ほど甘くこってりした味となります。 図 8 こちらは伝統的な和菓子の分類です。 和菓子ですから基本軸は、横に甘い- 甘くない、縦に水分量が多い-少ないを意味として設定しています。このマップ上に 最初は、生菓子、半生菓子、干菓子という分類を大雑把に配置しています。生菓子は 茶席で、お茶を飲むときのお菓子であり、半生菓子はお茶菓子、お茶は何でもよく、 干菓子はおやつで時間はいつ食べ てもよい。生菓子は、水分量が多 く手が汚れるので、食べるため際 にはそれなりの道具が必要になり ます。半生菓子は、袋から半分出 せばそのまま手でも食べられ、道 具は不要なもの。干菓子は、つま んでそのままいつでも食べられる ものとして分類してみました。 お菓子の開発は、特別なことを 考える必要はありません。普段自 分たちが甘いものが欲しいと感じ 図 7. 羊羹のイメージマップ 図 8. 和菓子のイメージマップ
ている状況を整理して、一つの答えを導き出すことです。季節変化や行事などをモチ ーフに、どんな感じで楽しみをイメージとして見直すか、考えるヒントがこのイメー ジマップです。例えば、大福をマップ上でどちら方向に持っていけば、新しいイメー ジで魅力的な味になるか、どこまで見た目や味を変えることで、具体的な形の工夫や ネーミング、が思いつくかどうかです。 次に、これまでに私が講師を務めたセミナーでイメージ分析方法を学んだ受講生の 成果を紹介します。最初は、お菓子つながりで 4 人のパティシエの商品(ケーキ)を Web 上で検索して、特徴とするケーキのイメージ分類がこちらです(図 9)。 青木定治、ピエール・エルメ、辻口博啓、鎧塚俊彦の 4 人のパティシエのケーキを あらかじめプロットしています。Web に掲載するということは、各パティシエが是非お すすめしたい、最も今を感じて欲しいケーキとして主張していると想定しています。 パティシエごとにケーキを 9 つに分類すると、青木氏はマップ上 2 つに大きく分類さ れます。ピエール・エルメ氏は広範囲にわたってさまざまなケーキを作っています。 辻口氏も同じく広範囲にさまざまなケーキを作り、鎧塚氏はかなりデザインの範囲を 限定しています。 これが彼らのデザインイメージ戦略であり、パーソナリティや個性表現です。パテ ィシエがどういう造形で自分らしいパーソナリティを食物に置き換えて表現している か。もともとケーキは人間にとって、あってもなくても生きていけるものです。だか らこそ、その時々の「楽しみ」であり、日々の豊かさであり、その場面での「気持ち」 の表れでもあります。気に入ったケーキデザインをじっくり味わう感動が、より「感 図 9. 4 人のパティシエ
ている状況を整理して、一つの答えを導き出すことです。季節変化や行事などをモチ ーフに、どんな感じで楽しみをイメージとして見直すか、考えるヒントがこのイメー ジマップです。例えば、大福をマップ上でどちら方向に持っていけば、新しいイメー ジで魅力的な味になるか、どこまで見た目や味を変えることで、具体的な形の工夫や ネーミング、が思いつくかどうかです。 次に、これまでに私が講師を務めたセミナーでイメージ分析方法を学んだ受講生の 成果を紹介します。最初は、お菓子つながりで 4 人のパティシエの商品(ケーキ)を Web 上で検索して、特徴とするケーキのイメージ分類がこちらです(図 9)。 青木定治、ピエール・エルメ、辻口博啓、鎧塚俊彦の 4 人のパティシエのケーキを あらかじめプロットしています。Web に掲載するということは、各パティシエが是非お すすめしたい、最も今を感じて欲しいケーキとして主張していると想定しています。 パティシエごとにケーキを 9 つに分類すると、青木氏はマップ上 2 つに大きく分類さ れます。ピエール・エルメ氏は広範囲にわたってさまざまなケーキを作っています。 辻口氏も同じく広範囲にさまざまなケーキを作り、鎧塚氏はかなりデザインの範囲を 限定しています。 これが彼らのデザインイメージ戦略であり、パーソナリティや個性表現です。パテ ィシエがどういう造形で自分らしいパーソナリティを食物に置き換えて表現している か。もともとケーキは人間にとって、あってもなくても生きていけるものです。だか らこそ、その時々の「楽しみ」であり、日々の豊かさであり、その場面での「気持ち」 の表れでもあります。気に入ったケーキデザインをじっくり味わう感動が、より「感 図 9. 4 人のパティシエ 性=センス」を高めてくれるのかもしれません。 図 10 はごく一般的に売られているチョコレートのイメージマップです。チョコレー トは形を変えることが自由で、それほどイメージで分類する必要はないかもしれませ んが、あえて一つのメーカーで作られた商品を分析したのがこちらです。 基本的にチョコレートの茶色がベースですが、形が丸か角か、何かをトッピングして デコレーションするかでイメージが広がっています。最近では、同じデザインを複数 セットに組むのではなく、いくつか のデザインや味の違ったアソートで 提供されることが多くなっています。 図 11 は帯止めのイメージ分類です。 帯止めを Web 上から探して分類し ています。今では帯止めのデザイン は、昔とは違って、かなり個性的で コーディネートを意識した品揃えが みられます。店舗で購入しても同じ ものは少なくデザインが多いそうで 図 10. チョコレートのイメージマップ 図 11. 帯留―アクセサリーイメージマップ
す。それが Web でネット販売するというやり方が常識化してきたことで、自分で作っ ては Web 上に掲載し、売買可能だそうです。そうすると、従来の和装小物としてアク セント的な使われ方とは異なり、かつてないほど帯止めというものが趣味嗜好を強調 する大切なアクセサリーとして見直され、その結果、非常に広範囲なイメージになっ ています。 Web 上で販売が可能になった商品ですから、 同じものを数多く作る必要はない。気に入っ た着物に合わせて、帯締めのところに品良く 飾る、いかに粋につけるか、ここが重要なポ イントです。興味のある人しか目がいかない ものですが、ひっそり楽しめる造形物です。 これを作成した受講生は、以前から着物に興 味があり、身近な Web という便利な道具があ り、そこで得られた情報からストレートにイ メージ分類しています。この講義の最初に述 べた、見えているものから見えないものを想 像するということの実例と思います。 図 12 はグラフィックデザイナーをしている 女性が分類した香水のボトルイメージです。 実に上手く出来ています。左右上下ともにイ メージの違いが等ピッチに配置されています。しかも非常に綺麗にみやすく分類され ています。おそらく、多くの画像情報から、最もふさわしいものを選び、的確にマッ ピングしていると思います。事前に丸形、楕円型、ドロップ型など、分類基準をきち んと決め、その決めた通りのデザインを検索して当てはめています。これが Web での 検索メリットです。Web が使えな かった時代は、雑誌などを切り取 らなければいけなかったのが、今 は Web で検索すれば精度の高い マップを作ることができます。 ここからは、私が作成した事例 を紹介します。人工的に作られる 木目のイメージ分類です(図 13)。 木目は、大きく分けて板目と柾目 に区分されます。丸い年輪パター 図 12. 香水のイメージ分類 図 13. 木目のイメージ分類
す。それが Web でネット販売するというやり方が常識化してきたことで、自分で作っ ては Web 上に掲載し、売買可能だそうです。そうすると、従来の和装小物としてアク セント的な使われ方とは異なり、かつてないほど帯止めというものが趣味嗜好を強調 する大切なアクセサリーとして見直され、その結果、非常に広範囲なイメージになっ ています。 Web 上で販売が可能になった商品ですから、 同じものを数多く作る必要はない。気に入っ た着物に合わせて、帯締めのところに品良く 飾る、いかに粋につけるか、ここが重要なポ イントです。興味のある人しか目がいかない ものですが、ひっそり楽しめる造形物です。 これを作成した受講生は、以前から着物に興 味があり、身近な Web という便利な道具があ り、そこで得られた情報からストレートにイ メージ分類しています。この講義の最初に述 べた、見えているものから見えないものを想 像するということの実例と思います。 図 12 はグラフィックデザイナーをしている 女性が分類した香水のボトルイメージです。 実に上手く出来ています。左右上下ともにイ メージの違いが等ピッチに配置されています。しかも非常に綺麗にみやすく分類され ています。おそらく、多くの画像情報から、最もふさわしいものを選び、的確にマッ ピングしていると思います。事前に丸形、楕円型、ドロップ型など、分類基準をきち んと決め、その決めた通りのデザインを検索して当てはめています。これが Web での 検索メリットです。Web が使えな かった時代は、雑誌などを切り取 らなければいけなかったのが、今 は Web で検索すれば精度の高い マップを作ることができます。 ここからは、私が作成した事例 を紹介します。人工的に作られる 木目のイメージ分類です(図 13)。 木目は、大きく分けて板目と柾目 に区分されます。丸い年輪パター 図 12. 香水のイメージ分類 図 13. 木目のイメージ分類 ンとストライプ様の縞のことです。その線画曲線かストレートか、線の間隔が狭いか 広いか、その線のカーブの曲率が大きいか小さいかでイメージが決まります。 床や壁などの建材、キッチンや水回りなど住設機器、家具や収納、車両内装などに、 この木目の分類が使われています。 そして図 14 は、先日自宅に届けられた ウィッグの折り込み広告を使って分類し たものです。特につけられている価格に 注目してください。価格の高さとロング ヘア、ショートヘアなどの長さがどう繋 がるのか。また、カールの仕方がどう程 度イメージに影響するのでしょうか。じ っくり見るとかなり似た位置にあるもの でも、価格が大きく変わっています。現 物を見れば、明らかに商品の質が違うこ とがわかるのでしょうが、印刷物を見て いるだけではわからない。 そこで実験的に、この前に提示した木目のイメージ分類とウィッグで、どの顔立ち が、どの木目に似合うか、2つの要素でイメージのコーディネートを当てはめてみま した(図 15)。 どのようなモデルを使い、どのように写真を撮るのか。どんなデザインのソファー に座り、どのようなテーブルコーディネートで、どのようなモデルを立たせて撮影す るのがいいのでしょう。ロングヘアーが合うのか、ショートにした方がいいのか。同 じモデルを使っても、ファッシ ョンやスタイルコーディネート で印象が大きく違ってきます。 色々な要素をコーディネート する際に、ある程度同じ様なイ メージに揃えてみやすくするか、 あるいはバラバラでインパクト や面白さを強調したイメージな のか、そこでセンスや感性のマ ネージメント力が試されます。 それは、多分特別なことではな く普段から感覚的にイメージと 図 14. ウイッグのイメージマップ 図 15. 木目と顔のイメージ比較
して養われるはずです。 図 16 は茶道に用いる茶碗の分類です。 私は、茶道の素養もなく、経験も乏しいほとんど素人です。焼き物にもそれほど詳 しくはありませんが、ただ見た目のイメージから分かりやすく、しかも見やすく分類 してみました。茶碗全体の形、釉薬のかかり具合などから、色と素材と質感などの要 素を総合しながらイメージで分けてみました。どこで誰がいつの時代に作ったのか、 どんな経路で残されてきたのか、土や石の材料の違い、そして茶道の道具としての価 値評価などのストーリーと重ね合わせると、この茶碗イメージとの関連性が違って見 えてくると思います。 これが何に活かされるのか。自動車開発の中で、内装の中のデリケートな仕上げ材 を開発するときに、このような違いをデザイナーが研究するためにも使えそうです。 もっと日本を感じさせる高級な車の内装をデザインしたい。しかし、現行車を見て、 そこからイメージ作っていたのでは間に合わない。どのように高級感を出せば良いの かと、日本人の美意識というところから引き出してくる。このイメージマップから、 創造性につながるイメージの引き出しを増やすことにつながります。 おわりに 本や雑誌の付録でも、新聞の折り込みチラシの中にも色々な情報が存在します。イ ンターネットを使うことで、今以上にコストをかけずに情報量を増やすことが出来ま す。それらを上手く検索し、収集編集することでイメージの方向性をわかりやすくビ 図 16. 茶碗のイメージ分類
して養われるはずです。 図 16 は茶道に用いる茶碗の分類です。 私は、茶道の素養もなく、経験も乏しいほとんど素人です。焼き物にもそれほど詳 しくはありませんが、ただ見た目のイメージから分かりやすく、しかも見やすく分類 してみました。茶碗全体の形、釉薬のかかり具合などから、色と素材と質感などの要 素を総合しながらイメージで分けてみました。どこで誰がいつの時代に作ったのか、 どんな経路で残されてきたのか、土や石の材料の違い、そして茶道の道具としての価 値評価などのストーリーと重ね合わせると、この茶碗イメージとの関連性が違って見 えてくると思います。 これが何に活かされるのか。自動車開発の中で、内装の中のデリケートな仕上げ材 を開発するときに、このような違いをデザイナーが研究するためにも使えそうです。 もっと日本を感じさせる高級な車の内装をデザインしたい。しかし、現行車を見て、 そこからイメージ作っていたのでは間に合わない。どのように高級感を出せば良いの かと、日本人の美意識というところから引き出してくる。このイメージマップから、 創造性につながるイメージの引き出しを増やすことにつながります。 おわりに 本や雑誌の付録でも、新聞の折り込みチラシの中にも色々な情報が存在します。イ ンターネットを使うことで、今以上にコストをかけずに情報量を増やすことが出来ま す。それらを上手く検索し、収集編集することでイメージの方向性をわかりやすくビ 図 16. 茶碗のイメージ分類 ジュアル化することができます。ジャンルを問わず形を客観的に見る訓練、多くの 素材を直接みて触り、そのちがいを感じ取る経験、何に対しても興味を示し、デリケ ートに感動する気持ちが大切です。これらのことが実践されることで、よりわかりや すい「イメージマップ」が出来上がります。誰がみても納得して、わかりやすいマッ プを活用することで、目的に相応しい方向性やコンセプトの設定に説得力が増してき ます。 最初に述べたように、イメージとは、見えているものから見えていないものを想像 することです。この中で、この良さをどう活かすか、ということが開発に繋がってき ます。見えているものを漠然と見るのではなく、一旦それを情報として整理する。食 べるもの、着るもの、使うもの、見るもの、すべてが情報源となります。それを暮ら しの中で上手く使っていけるかどうか、現在 20 代の皆さんは、これからの 34・35 歳 までがセンスの分かれ目です。それまでの日々の努力で、どのくらい自分の「美的感 性」が豊かになるかが問われています。これを、講義の最後の言葉とします。 (2020 年 2 月 14 日、生活美学研究所本年度生活美学基礎理論研究会における講演に基づく) コーディネーター 武庫川女子大学生活環境学部准教授