短期的野外キャンプ活動におけるコミュニケーショ
ンの促進効果
著者
橋本 公雄, 井上 弘人, 藤塚 千秋, 石橋 剛士, 宮
林 達也, 甲木 秀典
雑誌名
熊本学園大学論集『総合科学』
巻
19
号
2
ページ
189-212
発行年
2013-06-30
URL
http://id.nii.ac.jp/1113/00000202/
短期的野外キャンプ活動における
コミュニケーションの促進効果
―質的分析―
橋本 公雄(熊本学園大学)
井上 弘人(熊本学園大学)
藤塚 千秋(熊本学園大学)
石橋 剛士(熊本学園大学)
宮林 達也(熊本学園大学)
甲木 秀典(九州大学大学院)
キーワード 野外キャンプ コミュニケーション 要因分析 メカニズム 質的分析要 約
本研究は短期的な野外キャンプ活動のコミュニケーション促進効果に関し,質 的分析を用いて調べたものである。野外キャンプに参加した大学男女13
名を対象 に,野外キャンプ活動のコミュニケーション促進効果の仮説モデルにしたがって 作成された質問項目について,自由記述で回答を求めた。分析の結果,ほとんど 全員が野外キャンプに参加したことに満足し,コミュニケーションが促進したと 回答していた。野外キャンプ活動のコミュニケーション促進効果の要因として共 同作業,場の雰囲気,感動的体験が内容分析から確認された。本研究では短期的 野外キャンプ活動のコミュニケーション促進効果の可能性とメカニズムが論じら れた。緒 言
近年,子どもや青少年のコミュニケーションスキルの低下が問題になっている(一宮ら,
2003
)。この原因の1つに,子ども時代の身体活動・運動の不足や外遊 びから室内遊びといった遊びの内容の変質が関係しているとの指摘もある。 コミュニケーションスキルは社会的スキルと同じ概念で捉えられる(Riggio,
1986
)が,社会的スキルの向上を図るために社会的スキルトレーニングが開発 され,試みられている(金山ら,2000
;津村,1998
;渡辺,2002
)。しかし,運 動やスポーツ活動を通してもコミュニケーションスキルや社会的スキルの向上は 図れるものと考えられ,この種の研究が体育実技授業(橋本,2009
:2012
;杉山,2008
)を通して進められている。橋本ら(2009
:2012
)は運動・スポーツ活動 のメンタルヘルス効果を調べる際,身体活動量は男子において社会的スキルと低 い正の相関があることを見出し(橋本ら,2009
),社会的スキルを媒介とする運 動によるメンタルヘルスの向上効果のモデルを構築している(橋本,2012
)。 近年,野外活動を通しても社会的スキルやコミュニケーションスキルの向上 効果に関する研究もまた進められている(青木・永吉,2003
;Christy et al.
,2003
;甲木・橋本,2011
;西田ら,2002
)。野外活動は運動・スポーツ活動とは 目的や活動内容を異なるが,どちらも共同と協力によって目的を達成する活動で あり,しかも身体活動を伴うという意味において共通している。西田ら(2002
) は児童を対象に,組織キャンプへの参加が向社会的スキル,とりわけ「困ってい る友達を助ける」という社会的スキルのポジティブな向上効果を報告している。 また,青木・永吉(2003
)は長期的キャンプ体験による社会的スキルの変容過 程を参加者の諸特性から調べ,学年,キャンプ経験の有無,初期の社会的スキル のレベルによって変容過程に相違があることを見出した。さらには,
甲木・橋本 (2011
)は組織キャンプ体験によるメンタルヘルス効果の媒介変数としてコミュ ニケーションスキルが付置されることを検証している。 このように,運動・スポーツ活動や野外活動を通してコミュニケーションスキ ルを向上させることは可能と思われるが,その要因やメカニズムを明らかにする 研究はまだ緒についたばかりである。 本研究は,野外キャンプ活動の心理社会的効果としてコミュニケーションの促進に焦点を当て,その要因を探るとともに,実生活への般化を調べることを目的 とする。つまり,短期間の野外キャンプ活動でコミュニケーションは促進される のか?コミュニケーションが促進されるとしたらその要因は何なのか?さらに は,野外キャンプ活動で促進されたコミュニケーションスキルは日常生活に般化 されるのか?これらの疑問に答えるために主に質的分析を用いて研究を行うこと にした。 本研究を進めるにあたって,野外キャンプ活動に伴うコミュニケーション促進 効果および日常生活への般化のプロセスを仮説モデルとして図1に示した。野外 キャンプの参加者はプログラムに沿って諸活動を遂行することになるが,野外 キャンプでは「共同作業」が中心となるので,必然的に意思の疎通を欠かないよ うにコミュニケーションを取らざるを得なくなる。この「共同作業」が野外活動 ㊁ᄖࠠࡖࡦࡊᵴേ߳ߩෳട ᵴേࡊࡠࠣࡓߩㆀⴕ ㊁ᄖࠠࡖࡦࡊᵴേ႐㕙ߦ߅ߌࠆ ࠦࡒࡘ࠾ࠤ࡚ࠪࡦߩଦㅴ หᬺ ႐ߩ㔓࿐᳇ ታ↢ᵴߦ߅ߌࠆࠦࡒࡘ࠾ࠤ ࡚ࠪࡦࠬࠠ࡞ߩะ ᗵേ⊛㛎 ೨⺞ᩏ ෳടേᯏ ⥄Ꮖಽᨆ ࠠࡖࡦࡊෳട⋡ᮡ ⋡ᮡ㆐ᚑ߳ߩ⋡ᮡ⸳ቯ ᓟ⺞ᩏ 㛎ᵴേ ႐ߩ㔓࿐᳇ หᬺ⥄Ꮖ⹏ଔ ⋡ᮡ㆐ᚑߣḩ⿷ᐲ MHPޔ␠ળ⊛ࠬࠠ࡞ ࡈࠜࡠࠕ࠶ࡊ⺞ᩏ 㛎ᵴേߩታ↢ᵴ߳ߩᓇ㗀 図1.野外キャンプ活動によるコミュニケーション促進効果の仮説モデルと研究デザイン
に伴うコミュニケーション促進効果の1つの要因となると考えられる。また,野 外キャンプという「場の雰囲気」は重要であり,この良し悪しが野外キャンプに おけるコミュニケーションの促進に影響することになると思われる。具体的には コミュニケーションが促進されるがゆえに,交友関係の深まり,人間関係の醸成 として表れることになるだろう。これが2つ目の要因である。3つ目の要因は感 動的な体験である。体験は経験と異なり,体験は刺激が強く時間的に短いもの であるのに対し
,
経験は刺激の弱い時間的に長いものである。よって,ただ野外 キャンプで共同生活を行ったという物理的時間の長さではなく,その期間にどの ような印象深い,「感動的な体験」をしたかが,コミュニケーションの促進に大 きくかかわってくるものと考えられる。なぜなら,ポジティブな感情体験は心を 解放し,他者との共感を生起させるからである。 本研究では,この仮説モデルに沿って自由記述法を用いて調査を実施し,野外 キャンプにおけるコミュニケーション促進効果とその要因を明らかにすることに する。方 法
1.対象 対象はKGU
大学の「健康科学B
集中キャンプ」を受講した男女学生14
名のう ち,資料の不完全な回答者1名を除く,事前と事後の調査に回答した男女13
名 (男子1名,女子12
名)を分析の対象とした。2.調査時期 調査時期は野外キャンプ実習開始の前日の平成
24
年8月6日および終了日の 8月10
日であった。 3.調査方法 調査は野外キャンプ実習の事前と事後に野外キャンプ実習担当者がアンケート の調査協力を依頼したうえで,調査票を配布し,記入させ,回収した。回収率は 事前・事後とも100%
であった。 4.調査内容 事前調査票は「健康科学B
集中キャンプ」の種目選択理由(選択動機),キャ ンプ参加の期待と目標,目標達成への目標設定,自己の心理的特性(性格や行動 特性)に関する設問項目からなり,自由記述方式で調査した。一方,事後調査票 は集中キャンプの全体の雰囲気,積極的な共同作業,参加者との会話,目標の達 成度,参加満足度に関する単項目の設問を用意し,それぞれ5段階評定尺度法を 用いて測定した。なお参加満足度に関してはその理由を記述させた。また,他者 とのコミュニケーションの促進効果に関しては,4段階尺度法を用いた単項目で 測定するとともに,促進理由を自由記述させた。その他,印象深い感動体験に関 する調査は自由記述で回答を求めた。 5.野外活動プログラム 野外キャンプは平成24
年8月7∼10
日にKUG
大学阿蘇キャンパス(阿蘇市黒 川1442-1
,坊中野営場)で実施された。引率した教員は3名で,うち1人は野外 キャンプ指導が専門的に行える教員であり,他の2人の教員が学生の諸活動の遂 行を補佐した。 キャンプに行く前に,学内でキャンプに関する内容,グルーピング,テント張 り,手引き書の印刷,最終確認等々のため,事前授業として合計3回の講義と実習を行った。 日程および実施プログラムは表1に示すとおりである。主な活動内容は,設 営,クラフト,飯盒炊飯,なかまづくりのゲーム,ネイチャーゲーム,ボンファ イアー,救急法,ロープワーク,自然観察等々であった。なお,登山やキャンプ ファイアーは計画されていたが,天候不良のため中止された。 学生たちは事前に諸活動の班に割り当てられ,資料収集を行い,指導案を作成 して参加した。当日は各班ともこの指導案に沿って諸活動のリーダー的役割を遂 行した。 6.分析方法 自由記述による質的分析とアンケート調査による量的分析を行った。サンプル サイズが小さいので統計処理は行わなかった。 表1.日程及び実施プログラム 8/7(火) 8/8(水) 8/9(木) 8/10(金) 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 8:30 集合,積込 9:05 出発 10:10 買い物 11:10 キャンプ場着 荷卸し 場内案内 6:30 起床 体操 6:50 朝食準備・朝食 なかまづくりの遊び 9:30 救急法 11:20 ネイチャーゲーム 昼食準備 起床 体操 朝食・昼食準備・朝食 烏帽子岳登山 9:30∼11:40 キャンプ場散策 (案内人:松本氏) 昼食準備 起床 体操 8:30 朝食 撤収 昼食準備 昼食準備 12:00 昼食(弁当持参) 昼食 昼食 昼食 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 12:30 設営 14:10 休憩 15:45 クラフト 夕食準備,クラフト 12:30 ネイチャーゲーム ロープワーク 入浴・買物 17:30 夕食準備 12:30 ロープワーク 13:30 入浴・買い物 キャンプファイヤー 準備 夕食準備 撤収・清掃 13:40 キャンプ場発 15:10 学園大着 キャンプ用品収納 総括レポート (学生課会議室) 16:30 解散 18:00 夕食 20:00 夕食 夕食 19:00 20:00 21:00 22:00 17:45 キャンプソング 消灯 20:30 ボンファイヤー 消灯 19:30∼20:30 キャンプファイヤー (雨天キャンドル) 消灯
表2.自己分析 人見知り・消極性 ・人の影に隠れ,人の前には立とうとしないが, ・少し人見知りな部分があります。しかし,少し話すようになれば後は心配ないので,コミュ ニケーションを取りながら頑張っていけると思います。 ・私は,少し人見知りで知らない人と話すのはあまり得意ではない。 ・積極的なときもあれば,消極的なときもある。人見知りなので,少しでも話せたらいいと思 う。 積極性 ・また,積極的に自ら行動できます。 ・自らの責任は果たす人間である。 ・自ら動くことも,部活動で身につけていたので大丈夫だと思う。 協調性 ・皆で協力する。 ・みんなで協力してやることは得意だと思う。 ・「自分が自分が」というのではなく,人に合わせることが出来る。 ・人に合わせて行動することが出来る。自分なりに優先順位を考えて行動する。 ・みんなで団結して1つのことをやりとげることが好きなので,協調性はあると思います。 リーダーシップ ・集団行動をする時は,リーダーとなって皆をまとめる人が必要だと思う。リーダーになる人 は,自分の考えだけを周りに押し付けるのではなく,皆の意見を聞くことも必要である。ま た,リーダー以外の人も,リーダーに頼りっぱなしになるのではなく積極的に行動すること が大切だと思う。 ・リーダー格なので,活動時は一番手か最後で取組み,全体を見通す力が必要。 ・私は,周りを見てしっかり行動できる方だと自分でもはっきり言える自信があります。して ほしいこと,してほしくないこと,また,自分がしなければいけないことは周りを見てしっ かり判断出来ます。共同作業ではその特性を生かして行動できればいいなぁと思います。 主体性 ・あきっぽく,行動が雑。 ・面倒くさがりなところがあるので,ちゃんと協力して皆とやれるように頑張りたい。 ・たまに,人任せになってしまいそうなところもあると思う。 その他 ・思いやる気持ち,精神を持つ。 ・心配性であること。何事もとりあえずは挑戦してみようとすること。 ・時間にルーズな部分もあるので気を付けたい。
結 果
1.参加者の心理的特性・行動特性 3泊4日の集中キャンプでの共同作業をする際,人の性格や行動特性は大きく 影響してくると思われる。 そこで,参加者の性格や行動特性を調べるため,「あなた自身の心理的特性や 行動特性を自己分析してください」との設問で,参加者の性格や行動特性を記述 させ,分類した(表2)。内容としては,大きく「人見知り・消極性」「積極性」「協 調性」「リーダーシップ」「主体性」の5つに大別できた。「人見知り・消極性」は 4名いたが,前向きの積極的な参加態度を示す者もいた。積極性は自ら行動する 行動特性を示す内容である。「協調性」は皆と協力して行動できる性格特性を述 べたものである。「リーダーシップ」は3名おり,周囲の人々を見て行動するリー ダー的特性を有するという内容であった。「主体性」は飽きっぽく,行動が雑で 面倒くさがり屋という主体性を欠如した性格・行動特性を有する者である。その 他,思いやり,心配性,時間にルーズな者もいた。 以上のように,今回の参加者はさまざまな心理的特性を有する者が参加してい たことになる。 2.野外キャンプの選択動機と目標設定 1)授業種目選択の動機 野外キャンプは「健康科学B
」の種目の中からの自由選択である。そこで,な ぜ「健康科学B
集中キャンプ」を選択したのか,その選択動機について調べ,分 類した結果を表3
に示した。選択動機は「カリキュラム」と「仲間づくり」の2 つに大別できる。「カリキュラム」にかかわる内容としては,「希望種目が選択で きなかった(4名)」と「時間割の都合(2名)」が挙げられており,積極的参加 というよりむしろ仕方なくという消極的な動機で選択している者が半数いた。中 には,レクリエーション資格取得を目指して参加した学生もいた。 一方,「仲間づくり」は積極的な選択動機であり,6名の者が他学部・学科の人たちとの交流・仲間づくりを挙げていた。中には「先輩の勧め(2名)」など もあり,野外キャンプ体験者からの仲間づくりの実体験を聞いたことが種目選択 を後押ししたものと考えられる。 その他の自然災害時に生き延びる力を身につけたいという動機がみられるが, 近年の自然災害(
2011
年3月の東北大震災)の影響もあるのかもしれない。 このように,野外キャンプ種目の選択動機はカリキュラム上の消極的選択があ る一方で,仲間づくりという積極的な動機から選択をあげる者もおり,消極的側 面と積極的側面の両面があることが明らかにされた。 表3.野外キャンプ種目の選択理由 カリキュラム ・第一希望のものから外れたので,定員制限がなかったキャンプにした。 ・バドミントンを希望したがもれたため。キャンプとテニスで迷ったが楽しそうだったから キャンプを選択した。 ・最初,健康科学Bを希望していたのですが,希望に入ることができなかった為キャンプを選 択しました。 ・希望していた学内の健康科学が落ちたので,友達がキャンプを希望していたので自分もそう した。 ・時間割の都合で,自分の受けたい健康科学Bが受講出来なかったから。 ・健康科学Bと資格を取るために必要な科目の時間がかぶってしまったから。 ・レクリエーションの資格を取りたくて,キャンプを取れば野外活動にもカウントされると聞 いたから。 仲間づくり ・一度キャンプを本気でしたかったというのもありますが,他の学年,学科の人達とこの機会 に仲良くなれたらと思い選択しました。 ・自然の中で,みんなと協力して作り上げていくキャンプに興味があったから。キャンプとい う体験は,今しか出来ないことだと思ったから。 ・キャンプに興味があり,別学科の人たちとの交流ができるだろうなと思ったからです。 ・プライベートでキャンプに行くかもしれないから。それから仲間作り。 ・大学に進学して野外活動を通して自然の中で仲間作りを体験し,一から何かにチャレンジし てみたいと思ったことと,先輩に勧められたことがきっかけです。 ・以前選択されていた先輩に,仲間が出来るし楽しいよ!と勧められたため。 その他 ・自然災害時に生き延びる力を身につけたい。2)野外キャンプへの期待と参加目標 参加の目標を明確にすることは野外キャンプの成果をあげるために極めて重要 なことであり,参加の期待は参加の満足度とも関連してくる。 そこで,この集中キャンプに何を期待し,何を目標としているのか,野外キャ ンプへの期待や参加目標を尋ねた。複数回答をした者が多かったので,内容ごと に分類し,その結果を表4に示した。「他者との友好関係の構築・コミュニケー 表4.野外キャンプへの期待と参加目標 他者との友好関係の構築・コミュニケーション ・他人とのコミュニケーションがとれることを目標とし,他の学科の人と仲良くなれることを 期待します。 ・知らない人と仲良くなることと,自然に触れること。 ・みんなと仲良くなって楽しく4日間過ごすこと。安全に4日間過ごすこと。 ・また,みんなと仲良くなり楽しい4日間を過ごすこと。 ・一緒にキャンプに行く人達との交流を深めたい。 ・仲間作りを期待し,責任を持つこと, 参加者との協力 ・みんなで協力し,自分の仕事をきちんとやり遂げることを目標とする。 ・仲間と協力し合って,信頼関係をつくること。 ・他の人たちと協力していくことを目標とする。 キャンプに関する知識獲得 ・キャンプの基本的な知識を身につけ,実践すること。 ・キャンプを通して色々な知識を得て, ・キャンプについてもっと深く知ってみたい。 ・テントの立て方など。 ・体験の1つとして何か得られればいいなと思ったし,楽しく安全に思い出に残るようにした い。 生きる力の養成 ・キャンプの意義を十分理解し,自然の中で生活出来るようになりたいと考えています。 ・自然災害時に何もない空間で生き延びる力,能力,精神力を養う。 ・情報化が進んでいる現代社会の中で,当たり前に使っている通信機器または電化製品に頼ら ずに生活することで,普段使っている物に対するありがたさを感じたい。また,将来子供達 を指導する立場になる者として,野外活動をする上でどんなことが危険なのか判断する力も 身につけたい。 ・自然の中で生きること,自分の行動力を知ることを目標としています。
ション」「他者との協調行動」「キャンプに関する知識獲得」「生きる力の養成」の4 つに分類できた。「他者との友好関係の構築・コミュニケーション」では,他者 とコミュニケーションをとる,仲良くなる,交流を深めるなど人間関係の醸成に 関わる内容であり,6名の者が挙げていた。「他者との協調行動」は他者との協 力で役割を遂行し,信頼関係を築くといった内容であり,3名の記述があった。 「キャンプに関する知識獲得」は4名の者が挙げており,キャンプの基礎知識, テントの張り方などの知識獲得に関する内容であった。普段体験できないことに 対する知的欲求が窺える。「生きる力の養成」では,4名の者が挙げており,自 然の中での生活体験,利便性を欠いた空間での生きる知恵やスキルの獲得などを 参加の目標としていた。 3)目標達成への目標設定 目標を掲げたままでは目標は達成できない。如何にして目標を達成するか,そ の具体的な目標設定が重要となる。 そこで,個々人が掲げた目標を達成するために,どのようなことを具体的に行 おうとしているか,その具体的な目標設定について記述させ,内容分析を試みた。 有 効 な 目 標 設 定 法 と し て
SMART
が 知 ら れ て い る。SMART
と は 英 語 のSpecific
(具体性),Measurable
(測定可能性),Accountability
(自己責任性),Realistic
(現実性),Time bound
(達成期間)の頭文字であり,端的に言えば 他者の力を借りることなく自分の力で達成可能な現実性のある目標を具体的に数 値で示すということである。SMART
の原則からみると,表5に挙げられた目標設定の多くは抽象的である と言わざるを得ない。しかし,内容は大きく,「積極的対話」「積極的参加行動」「協 力支援行動」「規範的行動」「リーダーシップの発揮」の5つに分類できる。「積極 的対話」は5名からの回答があり,自ら話し掛けを行うということである。「積 極的行動」は7名が挙げており,自ら積極的に行動を起こすことで目標達成しよ うという意図が見て取れる。「協力支援的行動」は4名の記述があり,他者との表5.目標達成への目標設定 積極的な対話 ・3泊4日の間に,他の学科の人の名前を覚えようとし,積極的に話しかける。 ・できるだけ話しかけてみる。 ・積極的にみんなと会話すること。周りにも目を配る。 ・積極的に声をかける。いつも笑顔でいる。 ・積極的に声をかけながらコミュニケーションをとる。 積極的参加行動 ・自ら行動をおこし,視野を広く持つことと,何事にも積極的に行動すること。 ・自ら,積極的に動く。 ・キャンプにおいて必要な知識を出来るだけ身につけた上で参加することと,先のことを考え ながら行動するようにしたいです。 ・炊事やテントの設営など,自分から積極的に行動して ・準備,片付けなどに積極的に参加することによって仕組みなどを知る。 ・自ら仕事を見つけて取り組むこと。 ・自分から積極的に行動する!! 協力支援行動 ・周りを見て,大変なことをしている人がいたら助ける。 ・みんなと協力して取り組む。 ・積極的に自ら動いて皆と協力する。 ・相手の気持ちを考えて行動するよう心掛けたい。 規範的行動 ・事前にキャンプの内容をきちんと把握して計画に従う。 ・もう1つは,4日間集団行動を行うので,決まり事はきちんと守り, ・考えて考えて,一番合理的活動を行う。 リーダーシップの発揮 ・自分が担当しているクラフト活動の時はリーダーシップがとれるように積極的に行動した い。 ・リーダーシップを発揮する。 ・私は食事係なので自ら率先して動いて周りに分かるようにしっかり指示しようと思います。 協力を強調したものである。「規範的行動」は計画に従う,決まりを守る,合理 的行動を取るなど秩序を乱さないことを意識したものである。「リーダーシップ の発揮」では,積極的行動の中でも自分が中心となって他者を指示していくとい う最も積極的な行動といえるかもしれない。
このように
,
さまざまな積極的な行動が目標設定の内容として挙げられてい た。 3.野外キャンプの評価と満足感 1)キャンプの雰囲気 コミュニケーションがスムーズにいくかどうかはキャンプ全体の雰囲気が影響 するものと考えられる。そこで,全体の雰囲気を「良くなかった―非常に良かっ た」を両極とする5段階評定尺度法で尋ねた。その結果,「まあまあ良かった(2 名)」と「非常に良かった(11
名)」に全員が好意的な回答をしており,キャンプ の雰囲気は良好であったことが窺える。 2)積極的な共同作業 共同作業への積極的参加はコミュニケーションスキルの向上に影響するものと 思われる。そこで,参加者の共同作業を積極的に行えたかどうかを「まったく行 えなかった―非常に積極的に行えた」を両極とする5段階評定尺度法で尋ねた。 その結果,「まあまあ行えた(7名)」と「非常に積極的に行えた(6名)」に全 員が好意的に回答し,参加者たちは積極的に共同作業を遂行していたことがわか る。 3)参加者との会話 参加者同士がどの程度話をしたかを「ほとんど話をしなかった―非常に良く話 をした」を両極とする5段階評定尺度法で尋ねた。その結果,「まあまあ話をし たほう(1名)」「非常によく話をした(11
名)」にほとんどの者が回答しており, 参加者同士の話し合いがスムーズにいったことが窺える。 4)目標達成 事前に設定していた目標が達成できたかどうかを「ほとんど達成できなかった表7.参加満足度 設問6 1.不満足である 2.少し不満足である 3.どちらともいえない 4.まあまあ満足している5.非常に満足している 無記入 あなたはこの集中キャンプに 参加して満足しましたか。 0 0 0 4 (30.8%) (61.5%)8 (7.7%)1 ―大いに達成できた」を両極とする5段階評定尺度法で尋ねた。その結果,「ま あまあ達成できた(8名)」と「大いに達成できた(4名)」にほとんどの者が好 意的な回答をし,目標が達成されたことがわかる。 5)野外キャンプ参加の満足感 野外キャンプ参加の満足度を「1.不満足である−5.非常に満足している」 を両極とする5段階評定尺度法で調べた。その結果,「まあまあ満足(4名)」と 「非常に満足(8名)」に回答した者がほとんどであり(表7),受講生は参加に 表6.野外キャンプの評価 設問1 1.良くなかった 2.あまり良くなかった 3.どちらともいえない 4.ま あ まあ良かった5.非常に良かった 無記入 今回の集中キャンプの全体の 雰囲気はあなたにとってどう でしたか。 0 0 0 2 (15.4%) (84.6%)11 0 設問2 1.まったく行えなかった2.あまり行えなかった 3.どちらともいえない 4.まあまあ行えた 5.非常に積極的に行えた 無記入 あなたは今回の集中キャンプ での共同作業は積極的に行え ましたか。 0 0 0 7 (53.8%) (46.2%)6 0 設問4 1.ほとんど話をしなかった 2.あまり話をしなかった3.どちらともいえない 4.まあまあ話をしたほう5.非常に良く話をした 無記入 あなたは今回の集中キャンプ の参加者とよく話をされまし たか。 0 0 0 1 (7.7%) (84.6%)11 (7.7%)1 設問5 1.ほとんど達成できなかった2.あまり達成できなかった 3.どちらともいえない 4.まあまあ達成できた 5.大 い に達成できた 無記入 あなたはこの集中キャンプに 参加して,事前に立てた目標 は達成できましたか。 0 0 0 8 (61.5%) (30.8%)4 (7.7%)1
満足していたことがわかる。また,その満足の理由を自由記述で書いてもらい, 表8に示した。仲間ができた,仲良くできた,深い人間関係の醸成に関わる内容 表8.野外キャンプ参加の満足の理由 友好関係の成立 ・たくさんの仲間ができ, ・友人がたくさんでき, ・他の学科の人と仲良くなることが出来たから ・逆にこのキャンプを通して仲間もできて, ・そして何より皆と仲良くなれました! ・みんなと仲良く出来たし,遭難した時に飢えをしのぐため食べれたり出来る草とかを知れた ため。 ・雨が降ってしまったから。みんなと仲良くなることができたから。 ・でも,たくさん友達も出来たし楽しいこともたくさんあったので,良かったです。 ・知り合いじゃなかった人とも深い交友関係を築くことができ,とても楽しい3泊4日を過ご せた。 ・他の学科の子と仲良くなれたし,自ら積極的に話しかけることが出来て,人付き合いに関し て一歩成長したなと思うため。 知識獲得 ・色んな知識も増えたから。 ・自然への理解も深まったから。 ・集中キャンプを通してしか学べない,コミュニケーションの力や生きるための知恵を学び, 身につけることができたからです。 ・最初はすごく「早く帰りたい」という気持ちが大きかったので,知識を身につけることがで きたり,有意義なキャンプであったことに予想以上に満足しているから。 ・今までは知らなかったキャンプについての知識や山についての知識をたくさん身につけるこ とができたから。 新たな価値ある体験 ・いろんな体験ができたから。 ・ふだん味わうことができない貴重な体験ができたし, ・普段の生活では体験できないことを体験することができたから。 ・やっぱりキツかったです。体験したことないような中で4日間過ごして体力的にも精神的に も疲れました。 楽しいキャンプ生活 ・何より楽しくキャンプできたから。 ・楽しい時間を過ごすことができたので, ・よい仲間と共に協力し合ってやりとげられたから。 ・初めから終わりまで,誰一人としてケガなく無事に過ごせたからです。
が最も多く
11
件あった。また,「いろんなことが体験できた(4名)」や「楽しく 過ごせた(4名)」もあったが,食べれる野草,キャンプ,山,自然への理解な どの「知識の獲得」も満足の理由として挙げられていた。 4.印象深い体験活動 スポーツにおけるドラマチックな体験はさまざまな心理的特性や心理的スキル に影響を及ぼすことが示唆されている(橋本,2006
)。野外キャンプは非日常的 な空間であり,さまざまな感動的な体験をすることが推察される。 そこで,野外キャンプ実習期間中にどのような印象深い体験活動があったかを 自由記述で尋ねた。内容分析した結果を表9に示した。強く印象に残った体験と して,クラフトによる物づくりの体験(4名),テント張りの体験(4名),火起 こしと飯盒炊飯の体験(5名),食用としての野草の試食体験(2名),自然環境 における新たな知識の獲得(2名),その他のテント生活や缶けりの体験(2名) などに分類されたが,どれも日常生活では味わえない野外特有の体験である。こ のような感動的かつ印象に残る体験はコミュニケーションを促進したり,日常生 活にも何らかの影響をもたらすことが期待される。 5.野外キャンプのコミュニケーション促進効果とその理由 野外におけるコミュニケーション促進の理由を「変わらないと思う」から「非 常に促進されると思う」を用いて,単極の4段階評定尺度で尋ねた。その結果, 全員が「かなり促進されると思う(8名)」と「非常に促進されると思う(5名)」 という積極的な好意的回答をしていた(表10
)。 コミュニケーションの促進理由を表11
に示した。促進理由は「共同生活におけ る必然性(4名)」「協力の必要性(4名)」「コミュニケーションの必要性(5名)」 の3つに分類された。なぜ野外キャンプ活動でコミュニケーションが促進される のか。それは共同生活を行うので,協力を必要とする作業をすることが重要とな り,そのためにはコミュニケーションを取らざるを得ないという状況が必然的に表9.印象深い体験活動 クラフトでの物づくり ・クラフトは結構上手にできました。 ・一番印象深い体験は,クラフトで竹の皿やコップを作ったこと。 ・クラフトでの食器作りはものすごくいい体験になった。作ることを通して昔の人々の生活も 考えることができた。 ・クラフトを初めてしたけれど,とても楽しくて物を作ることがこんなに大変なんだなと思い ました。 火起こしと飯盒炊飯 ・火の起こし方を知らなかったが,最終日には習得することが出来た ・火起こし, ・みんなで缶けりをしたこと。あれがなかったら,話して仲良くなることもなかったし,キャ ンプが苦痛だったと思う。 ・また,飯盒でご飯を炊いたのも印象的だった。 ・みんなで苦労しながらやりとげた炊事。 テント張り ・テント張り ・テントの組立て,難しかったです。 ・印象深い活動は,テントを立てることです。 ・本格的なテントを張るのは初めてで,一個完成させるのにも一苦労でした。しかし,意外と うまくできたので嬉しかったし,安心して生活できました。 知識獲得 ・松本さんから教えてもらった草木のことや,写真のこと。このキャンプを通してしか教えて もらうことはできなかったと思います。 ・次にキャンプして遭難しても助かると思います。松本さんに色々なことをたくさん教えても らえたから。 食用としての野草 ・キャンプ場にある草木を食べた。 ・食べられる野草について学んだことが印象に残っています。説明を聞きながら実際に食べて みたことで,本当に食べられることが分かり,遭難した際に役に立つ知識を身につけること ができました。 その他 ・片付け,キャンプの準備と片付け。 ・テントの中で4日間過ごしたことが印象深いです。虫もいるし暑いし暗いし,狭い中で4日 間過ごすと,ある程度は慣れることに驚きました。
表
11
.コミュニケーションの促進理由 共同生活における必然性 ・4日間ほぼ1日中を共にし,共同生活をする機会が多いから。 ・4日間一緒に生活するため, ・大学生活で,個人での行動が多い分,4日間ともに同じ環境で過ごすことで,絆が深まりコ ミュニケーション能力も上がったと思う。 ・一緒に活動する場面が増えるから。一緒に寝るから。一緒にご飯を食べるから。一緒にお風 呂に入るから。 協力の必要性 ・協力しないと何も始まらないし,声を掛け合わないと物事がスムーズに進まないため。 ・全てにおいて皆で協力していかないとキャンプは成り立たないので,自然とコミュニケー ションは増えると思う。 ・他の人と協力しないとできないことがたくさんあるから。例)食事,テント立て… ・他の人と意見を交換しながらご飯の準備をしたりして,変更部分があったりしたことが結構 あるから。 コミュニケーションの必要性 ・お互いの意思疎通がとても大切だから。 ・また,コミュニケーションを通して楽しい雰囲気を作りたかったから。 ・一人一人が個々の物を使うのではなく,みんなで使う物のほうが多かったので,コミュニ ケーションをうまく取りながら使用する必要があったから。 ・共同生活なので,コミュニケーションをとらないと1つ1つのことがうまくできないから。 ・コミュニケーションをとらなければうまく生活できないと考えるからです。 その他 ・相手の気持ちや気分,考え方を把握できるようになりました。 ・人見知りだと思っていたけど,自分からいろいろ話せるようになったから。 ・普段は人見知りで,自分から交友関係を築こうとはしないけど,このキャンプではみんなと コミュニケーションをとることが出来たから。 表10
.野外キャンプのコミュニケーション促進効果 設問3 1.変 わ ら ないと思う 2.やや促進されると思う 3.かなり促進されると思う 4.非常に促進されると思う 無記入 あなたは集中キャンプでは, 日常生活と比べて他者とのコ ミュニケーションが促進され ると思いますか。 0 0(61.5%)
8 (38.5%)5 0出てくるということであろう。
考 察
本研究の目的は短期間の野外キャンプ活動におけるコミュニケーション促進効 果とその要因を主に自由記述法を用いて調べることであった。野外キャンプ参加 者は14
名(対象者は13
名)と少なく,男女比も女子に偏っていたが,分析対象者 の全員が印象に残るさまざまな体験をしており,野外キャンプに参加したことに 満足していたようである。この満足の理由として,交友関係が深まった,新たな 知識が獲得できた,新たな体験をした,楽しいキャンプ生活を過ごしたなどが挙 げられていた。 概して,野外キャンプの参加は気分や感情をポジティブにするので,満足感が 得られやすい環境と考えられる。このような満足感が得られる背景には,野外 キャンプ中におけるコミュニケーションがスムーズに行われ,その促進が図られ ることも1つの要因になっていると推察される。このことは今回の調査でもわか るように,結果として交友関係が築けているからである。 そこで,仮説モデルで示した,コミュニケーションの促進効果の要因として掲 げた「共同生活」「場の雰囲気」「印象深い体験」の3点について考察してみたい。 今回の参加者は協調性があり,リーダーシップを発揮できる積極的な心理的特 性を有する者がいた反面,人見知りをする消極的な者や主体性のない者もおり, さまざまな心理的特性を有する者がいたことになる。一般的に人見知りで,消極 的な者はコミュニケーションスキルは低く,短期間では他者とのコミュニケー ションは取り難いかもしれない。しかし,今回の野外キャンプでは,ほぼ全員が 「コミュニケーションは促進した」と回答しており,野外という特有の場・状況 が人見知りや消極的な性格を有する者を含めてコミュニケーションの促進を可能 にするといえる。 野外キャンプという場は共同生活や共同作業で成り立つものである。この共同 生活をコミュニケーション促進の1つ目の要因として仮説モデルでは挙げた。たとえば,テントの設営,火起こし,炊事・片付け,そしてさまざまな野外活動, これらの活動は一人ではできず,共同・協力による作業を必要とする。よって, これらの作業を成功裡に遂行するためには必然的にお互いがコミュニケーション を取らなければならない。野外活動では参加者はこのような状況に置かれている ということである。事実,今回の野外キャンプでは,「共同生活」「協力」「コミュ ニケーション」等々がコミュニケーションを促進する要因となっていることが参 加者の記述から明らかにされた。 運動・スポーツ活動におけるコミュニケーションスキルの向上効果が指摘され ている(杉山,
2008
;橋本ら,2009
;橋本ら,2012
)が,この理由として,運動・ ポーツ場面では個人やチームのパフォーマンスの発揮のために,バーバルとノン バーバルによる情報の伝達と解読といったコミュニケーション能力が要求される ためと推察されている(橋本ら,2009
)。野外キャンプ活動は同じ身体活動であっ ても目的が異なる。しかし,この共同作業による目標達成ということに関しては 同一であり,それゆえ協力やコミュニケーションが必要となり,野外キャンプ活 動はコミュニケーションの促進を可能にすると考えられる。 「場の雰囲気」をコミュニケーションの促進に影響する2つ目の要因として挙 げたが,参加者全員が「雰囲気は良かった」と評価していた。また,多くの者が 仲良しになり交友関係ができたことを記述していることからみても,良好な場の 雰囲気があったことがわかる。集団の雰囲気が悪いと不平や不満が出て人間関係 の醸成にはつながらないであろう。 3つ目の要因として挙げた内容は「印象深い感動的体験」であった。本研究で は,野外活動体験の中でも印象に残る感動体験を重視した。橋本(2005
;2006
) は運動・スポーツのさまざまな心理社会的効果をみる際,競技年数ではなく練習 や試合におけるドラマチック体験が意味を持つとして,生涯の心に残るエピソー ドとしてのスポーツドラマチック体験を主張している。野外キャンプ活動は日常 生活における空間とは異なる特有の環境条件である。よって,非日常的な体験を することが多い。たとえば,「クラフトによる物づくり」「火起こしと飯盒炊飯」「テント張り」「知識獲得」「野草の試食」等々はどれ1つとっても日常の生活では味わ えない新たな体験である。このような心に刻まれる印象的な活動体験はスポーツ ドラマチック体験に通じるものであり,人々の心を解放し,共感を生み,コミュ ニケーションを促進させる要因となると推察される 以上,述べたように,仮説モデルで提示した,野外キャンプ活動によるコミュ ニケーション促進効果の要因としての「共同作業」「場の雰囲気」「印象深い体験」 は参加者の記述の中に含まれており,仮説モデルで示した要因としては一応検証 できたものと考える。
今後課題
今回は野外活動体験で培ったコミュニケーションスキルの日常生活への般化に 関するフォローアップ調査はできなかったが,今後は質的分析はもとより量的分 析を含め,野外キャンプに伴うさまざまなコミュニケーション促進のメカニズム を明らかにしていく必要があるだろう。その際,サンプルサイズを大きくする必 要がある。また本研究では,自由記述の内容分析を行ったが,質的研究としての 十分な手順を踏まえているとは言い切れない側面もあるので,これも今後の検討 課題としたい。 いずれにしても野外キャンプはたとえネガティブな心理的特性や行動特性を有 する者であったとしても,コミュニケーションを促進させ,さまざまなスキルを 高める可能性がある。このことからコミュニケーションスキルが低下していると いわれる現代の青少年のスキル教育の一環として,野外キャンプは重要な実体験 活動の場として位置づけることができるであろう。引用文献
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〈資料〉 調査設問項目 1.あなたはなぜ学内で開講されている健康科学
B
を選択せずに,「健康科学B
集 中キャンプ」を選択したのですか。その選択理由について書いてください。 2.あなたはこの集中キャンプに何を期待し,何を目標としていますか。 3.あなたはその目標を達成するために,どのようなことを具体的に自ら行おう と思っていますか。その具体的な目標設定について書いてください。 4.これから3泊4日の集中キャンプで課題達成に向けて共同作業をすることが 多々あります。共同作業をするうえで,人の心理的特性や行動特性は大きく 影響してくるかと思います。あなた自身の心理的特性や行動特性を自己分析 して記述してみてください。 5.今回の集中キャンプの全体の雰囲気はあなたにとってどうでしたか。 1.良くなかった 2.あまり良くなかった 3.どちらともいえない 4.まあまあ良かった 5.非常に良かった <その理由を書いてください> 6.あなたは今回の集中キャンプでの共同作業は積極的に行えましたか。 1.まったく行えなかった 2.あまり行えなかった 3.どちらともいえない 4.まあまあ行えた 5.非常に積極的に行えた <その理由を書いてください>7.あなたはこのような集中キャンプでは,日常生活と比べて他者とのコミュニ ケーションが促進されると思いますか。 1.変わらないと思う 2.やや促進されると思う 3.かなり促進されると思う 4.非常に促進されると思う <その理由を書いてください> 8.あなたは今回の集中キャンプの参加者とよく話をされましたか。 1.ほとんど話をしなかった 2.あまり話をしなかった 3.どちらともいえない 4.まあまあ話をしたほう 5.非常に良く話をした 9.あなたはこの集中キャンプに参加して,事前に立てた目標は達成できました か。 1.ほとんど達成できなかった 2.あまり達成できなかった 3.どちらともいえない 4.まあまあ達成できた 5.大いに達成できた