学 位 論 文 内 容 の 要 約
氏名 清水 辰哉
論文題目
MRI-Based Risk Factors of Hepatocellular Carcinoma in Patients With Chronic Liver Disease: A Prospective Observational Study
(慢性肝疾患患者において肝細胞癌発生のリスク因子となるMRI画像所見:前向き観察研 究) 学位論文内容の要約 (研究の目的) 慢性障害肝には肝細胞性造影剤を取り込まない乏血性結節が生じることがあり、これらは進行肝細胞癌 の前段階である早期肝細胞癌に相当することが、これまで多くの研究で示されている。そのような結節 を有する肝臓(Non-clean liver)はそうでない肝臓(Clean liver)よりも進行肝細胞癌の発生率が高 いことが予想される。またMRエラストグラフィーにより計測した肝弾性率(Liver stiffness)も肝細 胞癌発生のリスク因子であることが知られている。過去にそれらを証明した研究はいずれも後ろ向き研 究であり、それを前向き研究で証明することが本研究の目的である。
(方法)
2012年3月から2014年5月の間に肝細胞性造影剤を用いてMRI撮影をした慢性肝障害の患者110名を対象 とした。患者を上記乏血性結節の有無により2群(Clean liver群とNon-clean liver群)に分け、また 肝弾性率の結果に応じて2群(Stiff liver群とSoft liver群)に分けた。各群の肝細胞癌発生率をカプ ランマイヤー曲線により比較した。また乏血性結節の有無と肝弾性率の他、各患者の年齢、性別、肝硬 変、脂肪肝、アルコール多飲歴、糖尿病、高度肥満、慢性ウイルス性肝炎の有無について調べ、それら が肝細胞癌発生の有意なリスク因子となるかCox回帰分析を用いて検討した。
(結果)
Clean liver群が76名、Non-clean liver群が34名となった。またStiff liver群は53名、Soft liver群 は45名であった(12名はMRエラストグラフィー未施行)。観察期間中、16名の患者に肝細胞癌が発生し た。Non-clean liver群はClean liver群に比して有意に高い肝細胞癌発生率を示した(3年後の肝細胞 癌発生率はそれぞれ50.4%と5.7%; P<0.05)。Stiff liver群とSoft liver群との間では有意差は見られ なかった(3年後の肝細胞癌発生率はそれぞれ29.7%と12.6%; P=0.07)。Cox回帰分析の単変量解析では、 高齢(65歳以上)であること、Non-clean liver、Stiff liverがリスク因子となった。これらを多変量 解析した結果、高齢とNon-clean liverが有意なリスク因子として示された。
(考察)
Clean liver群の患者53名には、観察開始から18ヶ月の間、肝細胞癌の発生が1例も見られなかった。こ の群のうち50名は肝硬変と診断されており、26名はStiff liver群に入る(従来、肝細胞癌発生の高リ スク群と見なされるべき患者である)。Stiff liver群とSoft liver群との間で結果に有意差が出なか ったのは、セレクションバイアスが関与している可能性がある(外来医師によりMRI検査が必要と判断 された患者は全体的に肝弾性率が高い傾向にあると思われる)。
(結論)
肝細胞性造影剤を取り込まない乏血性結節の存在は、その後の肝細胞癌発生の重要なインジケーターで ある。
学 位 論 文 内 容 の 要 約 ( 続 紙 )
氏名 清水 辰哉