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<論文>被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察

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(1)人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. -論文. 被差別部落女性の主体性形成に果たした 全国婦人集会の役割に関する一考察 近畿大学人権問題研究所准教授. 熊. 本. 理. 抄. はじめに 部落解放運動においては、部落差別撤廃が最優先課題として設定され、その 課題を解決していくうえでの差別概念のとらえ方や政策対応では、その集団内 における他の差別問題が軽視もしくは無視されてしまうという限界を抱えてき た。そこで本稿では、部落解放運動における差別概念のとらえ方や政策対応が、 被差別部落女性(以下、部落女性)にいかに伝えられ、それがいかなる意味を 持っていたのか、その考察を行う。具体的には、部落解放同盟が毎年主催して きた部落解放全国婦人集会が、部落女性が抱える問題に対する認識と、その問 題解決に向けた政策対応についてどのように議論してきたのか、部落女性の主 体性形成にどのような役割を果たしたかについて考察を試みる。 「主体性」概念については、人類学や社会学の分野で用いられている agency 概念が含意する歴史的・社会的文脈や、多層的な共同性や他者との関係性と いった側面を付加した概念として本稿では用いる. 10. 分析対象としては、部落解放同盟の公式文書である全国大会運動方針、およ び部落解放同盟主催の全国的な女性集会である部落解放全国婦人集会における 討議資料と報告書を検証する 。部落解放同盟は、部落解放運動を歴史的かっ大 衆的に担ってきた点を重視し選択した。部落解放全国婦人集会は 1 9 5 6年に第. l回目が聞かれ、以降現在に至るまで毎年開催されているが、本稿では、 1 9 6 9 年に同和対策事業特別措置法が施行され本格的に同和対策事業が実施されるま EA 唱. η ' u. 、. 〆.:(.

(2) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. での 1 9 5 0年代から 1 9 6 0年代の期聞を対象とする。この期間は、男性を中心に 開催されてきた全国大会に部落女性が参加するようになり、また部落女性の参 加を中心とする全国婦人集会が開催されるようになった時期である。そのた め、「共同性」や「関係性」 との相互作用のなかで形成される 「 主体性」 を検 討するにあたって、全国的に部落女性が集い、議論が展開されるようになった 期間として重視し分析を行う。. 1.部落解放全国婦人集会の開催 1 9 2 2年の創立以来、部落解放運動を積極的に推し進めてきた全国水平社 9 4 6年、ただちに、部落解放委員会として立て直しをはかった。 は、敗戦後の 1 1 9 5 5年の第 1 0回全国大会において、名称は部落解放同盟と改められた。部落 解放委員会にしても部落解放同盟にしても大衆闘争を展開していくにあたり、 部落女性の組織化とその「指導」を必要としていたことは、部落解放委員会お よびその後改称した部落解放同盟の全国大会運動方針から読み取ることができ る 。 性別分業ゆえに、家庭や地域において果たす部落女性の役割は大きい。その 彼女たちの教養を高めるために学習の機会を提供すること、さらに、日常生活 における具体的な課題や要求を抱える彼女たちのニ ーズを拾い上げること、そ れらの重要性を認識していたものと思われる。またすでに、地域レベルにおい ては、部落女性の運動への参加の増加、活動家としての成長、平和集会や母親 大会等への積極的な参加、そして独自の活動などがみられるようになっていた ことから、それらを部落解放委員会ならびに部落解放同盟に結集して組織化 し、「指導」 と「対策」を行う必要性を感じていたことが推測できる。そうし た認識は下記、全国大会の運動方針にみられる。. 2 2-.

(3) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割こ関する一考察. o i婦人会…など部落における種々の団体の文化活動を支援 し、生産技術の向 上、生活の科学化、衛生思想、及び科学思想の普及を図らなければならない。 J2 (部落解放緊急第 2回全国大会、 1 9 4 6年). o i 特に母性の教養を高めるための活動に大 きな努力を払わなければならな 9 4 6年) い 。 J3 (部落解放緊急第 2回全国大会、 1. o i解放委員会はまず組織を整備すると共に、主体性を確立 しなければならな い。(中略)婦人、青年を加え、あるいはその支持を獲得することが大切で ある。 J4 (部落解放第 4回全国大会、 1 9 4 9年 〕. o i婦人の 聞に おける解放委員会の活動は極めて大切である。部落の婦人は文化 的にとくに遅れているから、根気つ、 よく啓蒙教育し、婦人の組織をつくり、 たとえば生活協同組合や消費組合は婦人を中心として組織し、配給品の公正 なる分配や物価問題に関心をもたせ、生活の擁護、向上に奮い起たせる等の 婦人の闘争を展開しなければならない。部落の婦人組織を孤立させず、民主 的な婦人団体と連けいさせ、頻繁な交流をはかることが肝要である 。解放闘 争における婦人の力を軽視しではならない。 J5 (部落解放第 4回全国大会、. 1 9 4 9年). or 婦人及び子供の対策について. 最も過酷な身分差別と 家族制度のもとで苦. しんでいる婦人についてわれわれはほとんど見るべき経験をもっていない。 しかし生活苦と闘う婦人の内職の問題、村の費用で託児所を作れなどという 要求は起っており、部分的には闘われている。青年部は婦人の文化的、家庭 的、職業的要求を取あげて、親切と友情をもって指導し協力しなければなら ない。その中で婦人のもつ依存主義、ことなかれ主義を克服し部落の婦人の もつ伝統的な特長である生活力の強さを充分生かし、組織化していくことが. 9 5 1年) 大切である。 J6 (部落解放第 7回全国大会、 1. or 第 8回大会いらいの経験は、部落大衆の階層、性別、年齢、地域そ の他の生 活状態によるさまざまの具体的な要求をほりおこし、それを部落綱領にまと め、そのまわりに、 大衆を結集し、その要求に一番てき とうな形態、名称、 性格をもった組織をつ くり、つぎつぎに大衆闘争を展開してゆく、すなわち、 部落委員会活動をたえまなく行なうこと、これなくしては、部落解放闘争は 発展できないことを、まざまざとしめした。 J7 (部落解放第 9回全国大会、. 1 9 5 4年). o. ["平和と生活と権利を守るために立ち上ってきた青年、婦人の要求と行動にた いし、われわれは積極的な指導と援助をおこない、その力を充分に発揮させ. qd n d “. ..

(4) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. なければならなし、。青年婦人対策の強化は、 このような観点からも重要であ. 0回全国大会、 1 9 5 5年) る 。 J8 (部落解放第 1 o Iこのような弱さを克服するために、青年・婦人の要求を、部落全体の要求 としてとりあげ、青年婦人の要求と行動を正しく成長させてゆくために努力 しなければならない。(中略)部落における青年婦人対策も、この方針(筆 者注:第 1 0回全国大会の一般運動方針)にしたがい、青年 ・婦人をたたか いの先とうに立たすとともに、青年婦人独自の諸要求をとりあげ、組織して ゆかねばならなし、。(中略〕青年婦人が、自分たちの要求や生活の苦しみに ついて自由に話しあい、すべてが差別行政からおこっていることを自覚し 、 団結して差別行政反対の行動をおこしてゆけるような集いや話しあいをもつ ことが、非常に大切である。(中略)このような諸活動をつうじて、青年婦 人を幅ひろく行動に立たせると共に、部落解放委員会に加入させ、全部落的 な差別反対の統一行動をくめるよう努力しなければならなし、。そして学習と 実践をつうじて新しい青年 ・婦人の幹部、活動家を生み出すよう努力をかさ ねることである。(中略)府県ごとに青年婦人のための学習会をひらくなど、 学習活動を強化しなければならな L、。そして、部落問題についての理解を深 め、正しい世界観、人世観を身につけさせ、部落解放のために役立つ人間に 成長させなければならなし、。これらの 日常不断の活動の中から、新しい青年 婦人活動が生れ、部落解放運動の行動隊としての役割をはたすであろう。 J9 (部落解放第 1 0回全国大会、 1 9 5 5年). これらの方針を踏まえ、 部 落 解 放 委 員 会 は 、 第. 9回全 国 大 会 の 決 定 で 、 本 部. に青年婦人対策部を設置して、組織的な指導にのりだすこととなった九名称 が 部 落 解 放同盟 に 改 め ら れ た 1955年 の 第 1 0回全国大会には、「多くの主婦、娘、 働 く 婦 人 、 少 女 ま で が 参 加 し 、 部 落 解 放 運 動 は、 家 族 ぐ る み 、 部 落 ぐ る み の 闘 争 に よ っ て 発 展 す る の だ と い う こ と J11 がはっきりと示された。 周年 に 聞 か れ た日本母親大会には約. 6 0名 の 部 落 女 性 が 参加 す る な ど 、 部 落 女 性 自 身 に よ る. 活動の「もりあがり 」 ゃ 「 た か ま り 」 が 全 国 婦 人 集 会 を 開 催 す る 条 件 と も な っ. た 120. 1 949年 に 部 落 解 放 第 4回 全 国 大 会 が 聞 か れ た と き は 、 女 性 の 参加 者 は わ ず か 3名 で 、 「 婦 人 た ち は 『 運 動 と い う も の は 男 の や る も の で 女 の ク チ パ シ を は. 2 4.

(5) 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する 一考察. 人権問題研究所紀要. さむものでない』とか、 『差別、差別といったって、食うことの方が大事だ』 と部落解放運動にたいする関心が、ひじように低かった J13。 また、 「かんじん の運動じたいも差別事件だけを観念的に追いかけまわしたり、環境改善事業を くませるためにやっきとなるだけだったので、青年や婦人に魅力のある運動 と はいえなかった」. 1 4 0. しかし、. 1 9 5 1年に聞かれた部落解放第 7回全国大会にお. いて、 「部落差別とは、たんな る差別偏見でない。部落民が長いあいだ職業、 居住、教育、結婚そのほか日本国民としての権利を保障されず、貧乏と無権利 のみじめな状態におしこめられていることが差別であること、このために政治 の責任を追及し、差別行政反対、生活と権利保障の具体的な要求でたたかう方 針がうち 出され J15 ると、「し、ままで、部落解放運動を男だけがやる運動だと、 他人ごとのように考えていた婦人も、はじめて、運動を自分たちの問題だと考 えるように J16なった。こうして全国婦人集会が開催されるに至った。 部落解放運動の基本戦術として行政闘争の方針がうち出されたのは、. 1 9 53. 年の第 8回全国大会であった。 この方針を受けて部落解放同盟による行政闘争 が本格化する時を前後して、堺市では、主婦の内職あっせん 会の組織化や職 安に おける婦人失業者の枠の獲得 17、和歌山県では女性自らの座り込みによる 「職よこせ」の 闘い、上下水道、道路工事、住宅、集会所、託児所などの建設 獲得 18、兵庫県における差別行政反対闘争、三重県における「生活まもる会」 の設立、岡山県における女性の 話 し合いの 組織化、広 島市における子ども会 や健康を守る活動、診療所建設、区画整理をきっかけとするまちづくり運動. 1 9. などが女性たちを 中心に進められていたことが、全国大会運動方針において紹 介されている。「部落の中でもっとも下づみにおかれてきた、婦人の 切実な要 求を実現する、根ばり強い闘いが土台になって、全国婦人集会にまで発展した」 2 0のである 。. p hu. n〆u.

(6) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. 2 . 部落解放同盟における全国婦人集会の位置づけ では、部落解放同盟にとって、 1 9 5 0年代から 1 9 6 0年代にかけての全国婦人 集会はどのような位置づけを有していたのだろうか。 「思想の普及」、「母性の教養を高めるための活動」、「部落の婦人は文化的に とくに遅れているから、根気づよく啓蒙教育」、「婦人のもつ依存主義、ことな 、「部落の婦人のもつ伝統的な特長である生活力の強さを…組 かれ主義を克服J 織化」、「部落解放のために役立つ人聞に成長」、「部落解放運動の行動隊として の役割」などの全国大会運動方針の言表にあるように、部落解放運動を担う活 動家の育成、文化活動や学習の機会や場の提供、要求をとりあげ大衆闘争を展 開していくための組織化、そして「民主的な婦人団体と連けしリなどが意図さ れていたことがわかる。 全国婦人集会が 1 9 5 6年に開催された後の全国大会運動方針では、「部落解放 運動の新しいにない手として、育ててゆく J21、「部落解放運動の働き手として、 獲得して J22 ゆく、「部落解放運動を前進させる巨大な力として、結集してゆく」 2 3 など、部落解放運動の担い手・働き手としての育成. ・獲得 ・結集といった表. 現が使用されるようになる。 1 9 5 8年の全国大会運動方針では、「青年や婦人の 運動の必要は、部落解放運動を強化するためであって、それを忘れてしまうと かえって、部落差別をなくする闘いの障害 J2 4 になるとまで述べられている。 さらに、「男女の性的相違を対立的に捉えて、婦人部を解放同盟とは独立にし て、運動に参加させることを怠り、支部活動の障害になった場合もあるが、そ れは差別支配の本質をぼかした小市民的婦人運動である」から、「厳に注意し て克服J25するよう指摘されている。 青年婦人対策の基本的な任務も、「部落解放同盟の綱領および一般運動方針 にもとずいて、青年婦人の統一と団結をはかり、部落解放運動に結集してゆく こと J26 であるとする。さらに、「中央、府県連、支部をつうじて青年婦人対策 を強化してゆく。各機関は青年婦人対策を確立し、対策部を中心に、青年婦人 の〆臼. ρ り.

(7) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. の集会や話しあいの機会を、無数にっくり、苦しみを解決するための道をみつ けてゆくと共に、青年、婦人の要求を全組織に反映してゆくこと。青年、婦人 活動家を意識的に配置し、活動家はつねに、サークルや青年婦人の組織の中で、 青年婦人とかたくむすびついて、活動しながら、(中略)青年婦人活動家の質 をたかめ、量をふやしてゆく J27 と提起されている。 組織の問題についても、「青年婦人の話しあいでは、いつも、組織が青年、 婦人の問題を軽視するとしづ、不満が出される J28 ことが全国大会運動方針で 紹介されている。「われわれの組織内に、いまなお、青年婦人を、いわゆる闘 争にだけ動員するという、利用手段にしか考えていないあやまりであり、(中 略)組織の中にさえ、青年婦人を蔑視し、要求を軽視するとし寸、封建的な思 想と感情とが、相当根づよくのこっていることを、ものがたっている。このこ とは、青年婦人を苦しめるだけでなく、部落解放運動の前進にとって、大きな 障害である J29 と説明している。 このような認識に立ち、 1 9 5 8年の第 1 3回全国大会運動方針では、「各府県 連(各地区にも)に対策部をっくり、婦人の活動を進めることに力を入れるこ と」、「部落の活動を家長だけのものとして『女子どもの知ったことではない』 とする封建的な差別思想をなくするように支部の活動を進め、婦人をどんどん 運動に参加しやすいようにすること」、「支部は行政の上にも婦人の力を出せる 機会をつくること。すなわち部落内の民主化を進めること J30 が提起されてい る。しかし 1 9 6 0年代に入っても、「婦人を大衆動員の手段として利用するだけ J31 であり、 「低い位置づけしかあたえられていない J32 との認識と実態は依然と して解消されずにいた。 全国婦人集会においても、部落解放運動内における性差別体制を批判する発 言は、 1 9 5 0年代から出されている。女性の役員や指導者、常任活動家が本部 にいないことへの不満や批判は、すでに第 3回や第 4回の全国婦人集会におい てもあがっていた。それら批判は 1 9 6 0年代になるといっそう明言されるよう t' 円. nノ“.

(8) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. になる。 1 9 6 3年の第 8回全国婦人集会では、「組織の婦人に対する差別待遇へ の不満 J33 が、 1 9 6 8年の第 1 3回全国婦人集会では、男性を 中心とした役員構 4。女性の活動 成が批判され、「中央本部へ婦人中執を、の声が強く出された J3. の場の保障、女性育成の体制強化、婦人対策部長への登用なども議論されてい る。しかし実際に、婦人対策部長に女性の名前がみられるのは、 1 9 6 0年の第. 1 5回全国大会運動方針にある中尾歳子中央委員のみであり、翌年以降は再び 男性が着任している。 批判を受けた部落解放同盟中央本部書記長の答弁は、 「中央本部からの指令 が充分ではなかったこともあります。しかし、それよりもさらに問題なのは、 みなさん方婦人の解放運動に対する理論的な弱さ、水準の低さがある。そのこ とをみなさんにも反省してもらう。私たちも組織的に 1日も早くそれを克服し ていかなければならない。来年の大会では婦人の中央委員が 2 、 3名選ばれる ように配慮していきたい J35 というものであった。この答弁に対し、女性活動 家が再度批判の声をあげる。「支部で活動している半分は婦人でありながらし かも“婦人がかわれば部落がかわる"と婦人活動の重要性がいつもいわれなが ら、全国大会の代議員や中央委員、中央執行委員には婦人は l人も入っていな い。女性は教育の機会均等の権利も一番はずされ、理論的水準が低いのも当然、 である。だからこそ、金と時間をかけて、婦人に教育の場所を、そして活動の 場所をつくるよう、特別の配慮を中央で考えてほしいと、熱をこめて訴えると、 日頃苦しい条件のもとで活動している婦人からは、共感の拍手がわきおこり、 会議はまさに最高潮に達した感J36 だったことが報告されている。. 1 9 6 9年 の第 2 4回全国大会では、「婦人の中央委員を中心とする 中央婦人対 策部の確立J37 が組織活動の目標として掲げられ、 5名の婦人の中央委員が選 出されている。. 9 6 5 部落解放同盟における全国婦人集会の位置づけが明確にされたのは、 1 年の第 2 0回全国大会で、その方向性に転機が訪れる。 n n u n r u.

(9) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. o I解放同盟が、いわゆる部落の婦人や青年を学習させ、あるいは運動への積極 的な推進力として…運動への認識を深める場としてはいささかいつだつがみ られました。極端な表現をとれば、解放同盟が主催する、 一般民主婦人団体 の集会だというような感じもなきにしもあらずということです。 そういう傾 向が婦人集会への参加者の構成の中にあらわれてきております。 もちろん部 溶の婦人以外に一般の婦人が部港問題に関心を持って、部落の婦人集会に参 加せられるということは、歓迎するところではございます。 ただ多くの婦人 を集めようという観点だけで、いったい解放運動のために婦人集会を持つこ とになるでしょうか。同盟が、一般民主婦人の集会の場を提供するだけであ るというような面がでて くるという傾向についてはやっぱり婦人集会の持ち 方の上から見ても考える べき点があるのではないかと考えます。 」甜. o I 部落問題にたいする自覚を高めるための学習と交流を主要な目的とする集 0回の婦人集会では、その参加者の多数が一 会であります。ところが、第 1 般民主団体の婦人によって占められました。それゆえ必然的にそのような構 成による集会の性格は、わが同盟の意図するところと一致しないものに変化 したのです。すなわち『部落解放』婦人集会ではな く、同援が主催する一般 民主団体の婦人集会に転化してしまったのです。 このことはレ ジメ、司会者 や助言者の発言などには っきりあらわれています。J39. f r部 落 解 放 』 婦 人 集 会 で は な く 、 同 盟 が 主 催 す る 一 般 民 主 団 体 の 婦 人 集 会 に 転 化 し て し ま っ た 」 こ と が 「 反 省 」 さ れ、 翌 年 聞 か れ た 第. 1 1回 全 国 婦 人 集 会. においても、集会のもち方の再考が必要だと指摘されている。第. 1 1回 の 全 国. 婦人集会については、「①同盟本部が責任をもって主催する 。 ②綱 領 と 運 動 方 針 の 観 点 に た っ て、 部 落 の 婦 人 を 中 心 l こ、部落問題に対する自覚を高めるため の学習と交流をおもな目的とする、部落解放の 目的 にかなったかたちの集会を 確立する。(中略)④中央執行委員会の指導のもとに、各府県連の青婦対策部 長をもって実行委員会を構成する J40 ことが部落解放同盟中央委員会において 決定された。第. 2 2回全国大会運動方針では、「全国婦人集会は 1 1年 の 歴史 を. 経 て 偏 向 を 克 服J41 と述べられているように、全国婦人集会が「偏向」してい たとの認識に立っている 。 新 し く 打 ち 出 さ れ た 方 向 性 に つ い て は 、 全 国 婦 人 集 d n “. A u.

(10) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. 会においても、部落解放同盟の執行部である助言者から繰り返し述べられてい る 。 この方向性について女性参加者からの意見として、「各地域婦人会や先生を 動員して参加したら、部落婦人の集会でなく各種団体の集会のようだという否 定的意見があったが、部落問題を理解してもらうために各地域婦人会や先生に 参加してもらうことが必要だと思う 。全国民運動に広げる べ きことだと方針に は彊つであるのにと、以前いわれたそういう否定的意見には疑問を持った J42 という発言以外に異議が呈された記録は残っていなし。 、. 3回全国婦人集会では、集会の性格として、上述した①と②に加 その後第 1 ③それをとおして部落のおかれている現 えてさらに下記 3点が追加された。 「 実と、その中での部落の婦人が直面している問題を明らかにする。④さらに部 落差別の本質と、部落解放運動の歴史と現状を理解し、婦人の要求を結集して、 平和と、差別と貧乏からの解放の共同行動を発展させる 。⑤とくに 「同対審」 答申完全実施要求運動のたたかいの先頭に婦人がたち、組織の拡大強化をはか. 4回全国婦人集会では、「⑥全国各部落における実践と学習を、 るJ430 さらに第 1 組織的に十分に反映させ、理論学習活動の場として確立し、婦人の解放理論を 高める J44 ことが全国婦人集会の性格として追加された。 第 2回全国婦人集会では、「部落解放同盟の方針のもとに、すべての婦人が 第1 3回 団結し、行動して行くよう J45確認され、第 4回全国婦人集会では、 「 全国大会の活動方針を、どのように、婦人の日常活動にうっすか J46 が議論さ れた。第 5回全国婦人集会では、「すべての話し合いが、部落解放同盟という 組織と結び、ついてすすめられ」、部落解放運動における婦人活動の任務は、「部 落差別をなくすることに婦人の独自性をいかしながら、基本的組織である同盟 の規約に従い、その綱領の実現のために行動すること J47 や、「婦人の運動も、 同盟の運動方針からはなれて活動する事は、出来ない J48 ことが確認されてい る。さらに第 7回全国婦人集会では、「部落解放同盟中央本部の責任と指導に η. ハU. 。.

(11) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. よってこの集会を開催すること J49 が明確にされ、「部落解放同盟の方針を実 践するための婦人の活動家としての意識化」切をはかるとされた。 このように、全国婦人集会は、部落解放同盟の運動方針を実現していく「部 落解放のための婦人運動」のありょうを確認・普及、ときには「偏向を克服」 する場としての 「 部落解放のための婦人の集会」であったといえよう。. 3 . 差別の理論化と二重差別の把握 全国婦人集会は、部落差別のとらえ方を女性差別のとらえ方に援用していく 場ともなった。法律上は男女同権・平等であっても、実際そうなっていないの は、「男の考え方がまちがった封建的な思想をもっているとか、女が相変らず 卑屈であるとか、このような古い封建的な観念が残っているからではない。そ れは現在の社会関係に深く根ざしている J51 、「婦人の本当の解放をさまたげ ている根本の力は、男のわがままや女の卑屈ではなくて、現代の資本主義にあ る。男のわがままや女の卑屈も、この資本主義がっくり出すのである J52 と説 明される。さらに、女性の社会的地位の低さ、不平等、被差別の実態は、「女 であること」によるものでも「男と女の差別」でもなく、「階級支配のっくり だしたものであって、男女の性的差別は決定的なもの」ではないため、女とい う立場で物をみず、社会のしくみとしてみていかなければ分裂が生じると説明 するヘ つまり、「婦人解放をたんに男と女の聞の問題というように」考えではなら ず、「婦人問題をもっぱら男対女の問題にしてしまって婦人の本当の敵」を隠 しでもならず、家の中での夫婦げんかも嫁と姑のけんかの解決においても、「現 代資本主義すなわち独占資本主義の人民を搾取し支配するしくみそのもの」臼 との闘いが必要だとの主張が展開される。 このように、「部落差別と女性に対する差別の 2本の住によって他の一切の 分裂支配を支え存続し、っくりだしている」支配階級 55 にこそ問題の根本があ 噌Eム. ntu.

(12) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. り、部落差別と男女の差別を作り出したのは、「人間の労働と生産を搾取する という階級社会J56 であるとする差別のとらえ万であった。女性に共通してい る差別の苦しみや悩みは部落差別と根本的に同じであり、それは、「日本に根 づよく残っている半封建性に根があり、これを残存させて人民を分裂支配して いる米日反動とたたかわなくては、部落の解放も、婦人解放もありえない J57 と解放運動の方向性を論じている。このような論から導き出されるのは、「部 落と、婦人の解放 J58 のために部落女性が「部落と婦人解放運動の推進力 J59 になることであった(傍点筆者)。女性たちとの連帯によって、女性を隷属と 屈辱の地位に陥れているものと闘うこと、そして部落のすべての人と部落解放 のために闘うこと、この「二重のたたかい」の相手はいずれも「独占資本家階 級の支配」であるというへ 部落解放全国大会運動方針において、「身分、年令、性別と二重三重の差別、 圧迫J61 との表現は、 1 9 5 6年の第. 1 1回全国大会で登場する 。全国婦人集会が. 開催された年である 。全国婦人集会においては、 1 9 5 6年の第. 1回集会で、「み. んな部落民としての身分差別と婦人としての差別と、二重の半封建的な差別」 位、「私たちは部落民として、いわれない差別をうけ、そのうえに女としての 二重の圧迫 J63 、第 2回集会で、「部落民であるため、婦人であるため、二重 の差別J64 と、二重の差別圧迫という表現が使われている。第 3回集会におい ては、「部落民であること、女であること、そして労働者であることによって、 三重の圧迫」矢「部落、貧困、女性という三重の苦しみ」へ「部落民として 身分差別され、女としても差別されさらに労働者として差別、圧迫されている。 この三重の苦しみ J67 などの表現がみられる。その後、集会が回を重ねても、 こうした表現は頻発する。 部落女性のおかれている実態が、二重三重の差別圧迫によるものだとの認識 があるにもかかわらず、部落差別や部落解放運動を優先すべし、課題を部落解 放の理論と実践に結びつけるべし、との主張は当初から変わっていない。そう. 3 2~.

(13) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. した 主 張 は 、 一 般 の 婦 人 集 会 や 婦 人 運 動 と の 差 異 と し て 強 調 さ れ て も い る 。 以 下、一部抜粋する。. oI 婦人の仕事の問題も、部落問題としてとりあげ、部落解放運動をすすめてい く、大きな力に、わたしたち がなろう(後略 )J田(第 2回全国婦人集会、. 1 9 5 7年). o 1 部落差別がなくならないで、女性が、男性からうける差別もなくなりませ ん 。 J69 ( 第 3回全国婦人集会、. 1 9 5 8年). o1 部落民であるということで男も女も子供も大人も社会全体から差別され、圧 迫されているのであるからこの差別され圧迫されているという問題の解決な しにはわたしたちの家庭内で、あるいは部落内だけで、男女同権がいくら確 立しでも 、それは 決して部落の婦人が解放されたことにはならない。(中略) こうした意味で、部落における婦人問題は、一般の婦人運動と異なったもの があるわけである。 J70 ( 第 3回全国婦人集会、. 1 9 5 8年). o 1 たんに婦人だけの問題として考えるのではなくて、すべて部落を解放する運 動と結び‘っけなければなりません。ここに同じ働く婦人の集会と言っても一 般の働く婦人の問題と違う点がある(後略)J71( 第 3回全国婦人集会、. 1 9 5 8年). o1 婦人が婦人として考え、運動しなければならない問題を、部落の婦人として は部落解放というものに結びつけていく、そして今度はその部落解放を社会 全体の解放ということに結び、つけてし、く、いわば三重の解放になるわけで 第 3回全国婦人集会、 す 。 J72 (. 1 9 5 8年). o 1部落解放なしに部落婦人の解放がありうるわけがない。 J73 (第 4回全国婦 人集会、. 1 9 5 9年). o 1 部落の問題が解決していく時に、婦人の問題が解決する。 J7 4 ( 第 4回全国 婦人集会、. 1 9 5 9年). o 1 何よりもまず部落民全体の地位を高め生活を高める闘争なしに、(中略)恋 愛と結婚の自由をかちとれないことがわかるであろう。 J7 5( 第 4回全国婦人 集会、. 1 9 5 9年). o 1部落の婦人は先ず部落解放運動の中で常に解放の思想を高め、それを常に婦 人運動の中にもちこむことによって自らを婦人運動の中で解放してゆき、さ らに婦人運動の中で高められた婦人としての 自覚を解放運動の中にもちこむ ことによって婦人の弱さを解放してゆかねばなりません。 J76 ( 第 7回全国婦 人集会、. 1 9 6 2年). or 部落差別がなくならないかぎり、婦人の解放はありえません。同時に、婦人 η3. ヨυ.

(14) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. としての男女平等の権利を具体的に保障させるためにも、部落民全体が、人 間としての権利を保障され、生活が保障されねばなりません。つまり、部落 第 8回全国婦人集会、 1 9 6 3 の完全解放を実現なければならないのです。 J77 ( 年). o I 婦人の権利が侵害されている…原因は、婦人だけでなく、部落ぜんたいが、 差別のために、資本主義的な生産関係からはずされ(後略)J78 ( 第 8回全国 婦人集会、 1 9 6 3年). 部落女性たちの状況を決定づけているのは、彼女たちが被差別部落出身者で あり、女性であり、多くが不就学・低学歴であり、低賃金不安定非熟練労働者 であり、といったいくつもの要因であり、その要因のからみあいのなかにのが れがたく位置づけられている。そのような部落女性の経験を明らかにしていく にあたっては、「被差別部落出身者」であり、「女性」である、といった追加的 アプローチでは、「被差別部落出身者」でない、「女性」でない人を中心とし て、部落女性の経験を周縁に位置づけることになってしまう。また、多様な形 態の差別相互の関係性とそれを生み出す構造そのものを理解することも困難に する。ある人たちの経験を固定化し、それに「さらなる」差別を受けていると 「追加」することで、「異なる」経験をしていることがみえなくなる。さらに、 部落差別や性差別を固定的なものとしてとらえてしまいかねず、差別にヒエラ ルキーを持ちこむ問題もはらんでいる。 世界を見渡すと、アフリカ系アメリカ人女性による、ブラック・フェミニズ. r i t i c a lr a c efeminismと呼ばれる一連の思想的達成があり、性、 ム、あるいは c 人種、階級などのからみあいと社会的権力関係について、部落解放運動が学ぶ べき知見を提示している。アフリカ系アメリカ人の女性たちがおかれている状 況を分析するに際して、性、人種、階級といった抑圧の形態を「追加/ 足し 算」することは、「追加式/足し算分析JC a d d i t i v ea n a l y s i s ) と呼んで批判さ れてきた CSpelman1 9 8 2 :4 3-6,King1 9 8 8:4 6-7,Spelman1 9 9 0:1 1 5-2 5,. 3 4.

(15) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. C o l l i n s1 9 9 0:2 0 7-2 6 ) 0I 追加式/足し算分析」では、社会構造や支配関係、 権力の作用を不可視化させ、既存の社会的不平等に問題提起しないからであ る。その知見に学びながら、部落解放運動における「二重差別」概念に関する 思想史的展開の検証は論を改めたい。. 4 . 主体性形成に「対話Jr 団結」が及ぼす影響 二重差別の説明としては、第 4回全国婦人集会において次のようになされて いる。 「その部落の中でも婦人はさらに低い地位に置かれている 。 もし男性と女性と の関係という角度からのみ見れば、部落における男性にたいする女性の地位 と、日本全体における男性にたいする女性の地位との聞には、根本的な相違 はない。しかし部落婦人は一般の婦人よりも社会全体における地位は低い。 なぜなら部落そのものが低い地位におしこめられているから。」市 この説明によると、部落の中で男性に比べて女性が低い地位にあること、つ まり女性差別は部落も一般も違いはなし、。一方、社会の中で一般女性に比べて 部落女性が低い地位にある、そこには部落差別があり、部落女性が低い地位に おかれているのは部落差別によるものであるということになる。こうした認識 の結果、部落のすべての人との連帯によって部落差別をなくす運動に尽力し、 一般の婦人解放運動との連帯によって、 一般の婦人に部落差別を認識させ、部 落解放に取り組むよう働きかける必要が部落女性にある、との主張が導き出さ れている。それが部落解放同盟が意味するところの、部落解放運動における団 結の必要性と、一般婦人運動における団結の必要性との違いであったと思われ る 。 この認識では、部落差別が、部落女性が受ける女性差別と一般女性が受ける 女性差別とにいかなる影響を与えているか、女性差別が、部落男性が受ける部 落差別と部落女性が受ける部落差別とにいかなる違いを生み出しているかを議 論する余白はない。 F. ヘu q a.

(16) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. 「すべての 日本婦人の問題とも共通」へ「私達の力は、他の婦人達と共同する 事によって、もっともっと大きくなる」ヘ「自分の足元の問題にとりくむ中で、 お互いに共通の目標に、共同の闘いをくみ、共同の利益を守りあうこと J82、「炭 労、全日自労など婦人労働者たちの苦しみの原因と、私たちの苦しみの原因は、 まったく一つであること、差別と貧乏をなくすために、すべての働く婦人が手 をつないで統一戦線をっくり、差別者(搾取する者)のいない社会をつくるこ とが大切」郎、「共同闘争によって共に解放されていくのだという思想が強め られてきた」へ「同じ女性としてのなやみや要求をだしあって、ともにたた かうことの大切さ」邸などの表現にみられるように、部落女性たちが、一般の 女性たちとの共通点に焦点を当てて団結を重要視した一方、部落解放同盟中央 本部としては、先述の認識から、差異を重視した団結を重視していたと思われ る。それが先述したように、部落差別や部落解放運動を優先すべし、との主張 の繰り返しにあらわれたのであろう。 さらには、「私たち、部落の婦人が共闘、統一行動を取り組む場合には、まず、 自分が部落民であり 差別されているという社会的立場を充分に自覚することが 大切です J86 といった発言のように、「部落民として」の「社会的立場の自覚」 が強調されることにもなったと推測する。 では部落女性にとっての社会的立場の自覚とは何を意味していたのであろう か。それを検討するにあたって、部落女性たちが「共感」や「対話」を重視し、 それらによる自己変容を全国婦人集会で表出していることを下記にみていきた. し 、 。. o I皆の胸は共に、長年差別された者同志という共通感情で胸がいっぱいになっ 第 l回全国婦人集会、 ている。こんなにも沢山私たちの仲間がいる。 J87 (. 1 9 5 6年). o Iこれが全部同じ苦しみをうけている部落民かと思うと、ただ驚ろ くばかりで 胸があつくなる程力強いものを感じ、心から出席してよかったと思う。」曲(第. 1回全国婦人集会 、 1 9 5 6年) ρ 口. qu.

(17) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. o Iこんなに大勢きょうだい仲間が結集したことは、私と同じ様な気持の人が多 勢いたことを知り、心の底から喜びがこみあげてきました。 J89 ( 第 l回全国 婦人集会、 1 9 5 6年). o I“もう一人ではないんだ"というよろこびが、いままでのあきらめをつきや ぶって大きな新しい力となって婦人の行動がはじまったのです。」田(第 l回 全国婦人集会、 1 9 5 6年). o I 差別や貧乏に苦しんでいる人たちがこんなにもたくさんいる、そしてそれか らの解放をねがい幸せな生活をきづこうとしている仲間が全国から集ってい る、苦しんでいるのは自分一人ではないのだ、わたしたちが力を一つにすれ ば、自分たちの力で差別と貧之の苦しみをなくしてゆける、というしっかり とした確信をもつことができました。 J91 ( 第1 1回全国婦人集会、 1 9 6 6年). o I 差別と貧乏も、自分たちの力で、自分たちの生きている聞になくして行くこ とができるという確信をもつことができたことです。(中略)このよろこび をひとりでしまっておくことはできませんでした。となり近所や仲間と、顔 を合せると差別と貧乏のはなしです。生活のはなし、子どもの教育のはなし です。」回(第 1 1回全国婦人集会、 1 9 6 6年) . 、 , " 内. 部落女性たちにとって他者との共感は非常に重要であり、それらは互いのい たわりあいや力強さ心強さ. 9 3 、勇気、自信、誇りとなっていった。だからこそ. 「団結の尊さを感じ」へ行動へとつながったのである。 全国婦人集会では、第. 1固 か ら 、 「 考 え 方 も 暮 し 方 も ち が う 日 本 中 の い ろ い. ろな部落の婦人たちが一つにとけあし¥熱心に話しあい、たがいの心と力を信 じJ95 あったと記されている。「経験や物の考え方には、かなりのちがいがあっ た0 ・ は っ た り や 、 か け 声 で な く 、 毎 日 、 井 戸 ば た や 、 仕 事 場 で 話 し て い る よ うに、ごくあたりまえのことばで、話しあったのである。…これからみんなと 苦しみや喜びをわけあい、助けあって進んでいこうという、婦人の行動をきめ たのである」へその後も、「対立する意見も、すなおに出しあい、納得する まで J97話 し あ う こ と 、 「 抽 象 的 な 理 く つ や 、 は っ た り で な く 、 自 分 の 経 験 を とおして、具体的に、ふだんのことばで話し」関あうこと、「話しあいのなかで、. ,. η' a nペU. ..

(18) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. ちがった意見が出たとき、感情的にならず、おなじ運動をしている仲間として、 ど う し た ら 一 致 で き る か 、 お 互 い に 努 力 J99す る こ と を 大切にした。 全国大会で男性の聞に対立があったことを受け、「男の方にはそのような雰 囲気があるとしても、私たち婦人どうしは絶対に分裂しないように統一と団結 を 守 ろ う J1∞ と の 発 言 が あ る よ う に 、 全 国 婦 人 集 会 で は 、 連 帯 に 向 け て 対 話 を重視していたことが下記にもあらわれている。. o. 1"一つ一つの闘いに勝利する度に、又苦しい壁につきあたって、之を解決する ための話しあいや統一行動の中で婦人の意識は高まり、運動に対する確信も 強まってゆきました。又、私達は個人個人の考えや能力で生きる道をさがし 求めるのではなく、皆んなの意見を出しあって話しあし¥きまった事は皆ん なの力を出しあって力強く闘う以外に私達の願いを実現さす道のない事も知 りました。」叩1 ( 第1 0回全国婦人集会、 1 9 6 5年). o. 1"差別と貧困と迫害にいためつけられ、しいたげられてきた部落の婦人が自 らの歩んできた道を明らかにし、この差別の現実のなかから自らの力で解放 される方向を見出す、その話し合いを重ねたいということでありました。 J102 ( 第1 3回全国婦人集会、 1 9 6 8年). o. 1"討議は具体的であり、生活の場で の、解放への要求実現のたたかいをとおし てなされました。それは当然なことながら、生活をとおして、部落の婦人た ちのそれぞれの生き方をとおしてなされています。部落として女性として母 として苦しめられてきた婦人たちが、自らが生きてきたその生活のなかにあ るさまざまな要求、それを解放をめざして実現させるためには、どのような 道すじと手だてがあるのか。しかも、要求が実現すれば、それだけでおわり とするのではありません。それの実現によって、生活はどう変り、部落はど う変るのか、それを明らかにしよう、それを学びとろうという話し合いであ 第1 3回全国婦人集会、 1 9 6 8年) りました。 J103 (. o. 1"もっともしいたげられてきたゆえに、もっともはげしく解放をねがっている 婦人たち、その婦人の要求を明らかにしその力を結集すること、その力が部 落解放運動の中心となるよう、そのためにさらに学習をかさねそれを解放へ のたたかいに生かすこと、その確信を参加した婦人たち 一人ひとりのものに 第1 3回全国婦人集会、 1 9 6 8年〉 する話しあいでありました。 J104 (. o. 1"最初へっぴり腰だった活動家が進んで家々を訪問するようになりました。一 nd. o o.

(19) 人権問題研究所紀要. 軒平均. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. 4 0分ぐらし、かかります。それは婦人たちに悩みや苦しみが語りきれ. ないほどあるからです。私たちは真剣に聞きます。ですから相手も信頼して 第1 4回全国婦人集会、 1 9 6 9年) くれて真剣に話してくれます。 J105 ( ド. ペ ー. 貧困研究者のルース・リスターは、貧困状態にある人が a gencyの感覚を 増加させるためには尊重・敬意をもって扱われることだという C L i s t e r2 0 0 4:. 1 2 0= 2 0 1 1:1 7 7 )。さらに agencyを、「日々のくやりくり>という闘いから、 力の強い者への<反抗>や、貧困から<脱出>して戻らないための試みを経 て、集団的な形態である<組織化>や、自身の生活に影響する政策・意思決定 への参加要求へと至る JC L i s t e r2 0 0 4 :1 7 8= 2 0 1 1:2 5 5 ) プロセスとして説明 している。 主体性をひきうけていくには、人間として承認され尊重されることが必要で あり、それによって他者を承認し尊重する相互承認が必要である。 差異による社会的立場の自覚を強調した部落解放同盟の運動方針に対して、 部落女性にとっては共通点による社会的立場の意識化があったのではないだろ うか。それは、生活者の視点に立ち、生活者主体として、差別の経験を分かち 合い、差別の経験を乗り越えるための運動の経験を共有しながら目標を設定 し、意見や価値観の対立や葛藤を豊かさや力に変えて乗り越えようとする連帯 によって生み出されたものだったのではないだろうか。話し合いは、共感や共 有のための話し合いと、納得や合意形成のための話し合いの 2種類が重視され ていたことがわかる。 そうした連帯や対話を重視しながら形成される主体性は、「共闘のとりくみ 方その中での同盟の主体性を忘れないこと J106、「同盟支部方針と密着しなが ら、婦人の主体性、創意性をもったとりくみ J107などで使われている「主体性」. r. とは異なる主体性である。同盟の「活動方針」や「綱領J 規約」を身につけ ること. 1 0 8 で形成される主体性とは異なり、「他者とのつながりを可能とするよ. ハ 日. nd.

(20) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. 双 方 向 的 、 相 互 交 渉 的 な 場 一 共 同 性 一」 と の 相 互 作 用 の な か で う な 関 係 性 JI の主体性であり、自己変革や社会変革はこれら部落女性の主体性によってこそ 可 能 だ っ た の で は な い だ ろ う か。. 5.女性による部落解放運動の質的発展 先 述 し た 「二 重三 重 の 差 別 圧 迫」 との言 説 は 、 部 落 女 性 を 部 落 解 放 運 動 に 結 集させ、さらに部落解放運動を部落女性が主体的に担ってし、く言説実践として の機能を果たしていたと思われるのが下記の表現である 。. o I 婦人にたいする社会的、経済的差別は、身分差別とおなじように、いぜんと して解決されず、圧迫が強くのしかかっている 。 そして、多くの婦人は非人 間的な圧迫の中に、とぢこ め られている 。だが、もっとひどく圧迫をうけて いるものこそ、その圧迫の根源を自覚する時、部落民の中でも、もっとも巨 大なたたかいの力となりうる 。J1凹 (第 1 1回全国大会、 1 9 6 6年). o Iこのよ うにして長い間、部落民であるため、婦人であるために、社会の忌も 下づみにされ、苦しみのす べてをうけて来た婦人が動き出すことは、部落全 第 2回全国婦人集会、 体が部落解放運動に立ち上るための歯車である 。J110 (. 1 9 5 7年). o I H前略)此の世の中で最もしいたげられている部落の婦人こそが団結して立 ち上るようにな らなければウ ソだ、部落の婦人が一般婦人運動や部落解放運 動の先頭に立つようにならなければ婦人の解放も部落の解放も有り得ない』 と言って部落婦人として の民主的自覚を高めて来て唐ります。J111 ( 第 2回全 国婦人集会、 1 9 5 7年). o I 女であるため、部落民であるた めに苦しんでいる私たちこそ、差別から解放 される大きな力であり、ひいては、日本の平和と民主主義をまもる力になる 第 3回全国婦人集会、 1 9 5 8年) のだとほこりをもって宣言いたします。 J112 (. o I 闘いの中心になるのは部落の婦人です。婦人は男の人に圧迫される。部落の 婦人は差別を受ける中で、その中でさらに男の人にも圧迫されている 。 あな たがたは社会の一番のど、ん底だ。 その一番どん底の人が自覚し、立ち上るこ とによってこそ本当にどん底からの解放をかちとることができるのです。J113 ( 第1 1回全国婦人集会、 1 9 6 6年). 凋斗企. n u.

(21) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. oI 部落のなかでも、もっともしいたげられてきた婦人こそが、たち上って一つ になるとき、差別と貧乏からの解放をおしすすめる、部落解放運動を大きく 発展させることができるのだ、という確信とほこりをもって(後略 )J 114 ( 第. 1 2回全国婦人集会、 1 9 6 7年). o I 部落のなかでも、もっとも下積みにおかれ、差別の苦しみをいっさい、身に うけており、それゆえ一番具体的で切実な、あらゆる生活上の要求をもって いる婦人がたたかいに参加しなければ、運動はほんものにならないというこ 第1 2回全国婦人集会、 1 9 6 7年 〕 とであります。 J115 (. これらの表現が示しているように、身体としての「婦人」が動員されたのみ ならず、言説としての「婦人」が動員されたのである。それが的確にあらわれ 母」という言説実践に導か ているのが 「 母」 としづ言説実践である。「婦人 JI れた部落女性の「闘い」を中心としながら、部落解放運動は、日常生活要求を 中心とする行政闘争を本格化させていく. U60. 生活の場である部落に根づいた、生活に密着した具体的な闘いの中心は女性 たちであった。水道、住宅、浴場・隣保館設置、子どもの教育、教科書無償、 入学・就学・就職支度金、保育所、生活保護、健康と医療、母子福祉、仕事保障、 生業資金などの要求闘争の中心的役割を果たしたのは女性たちであった。支部 組織の戸主会や男性による「もの取り 」 的な体質を改善し町、男性のように. 名誉欲. 1 1 8 のなし¥生活と権利に根ざした要求は地域全体の要求として位置づ. けられ、全国的に展開していくことが期待された。 居住地域を活動の基盤とする部落解放運動は「部落ぐるみ」の運動を打ち出 し、その責任を担うのは出稼ぎや仕事によって留守がちになる夫ではなく、自 分の生活に追われて活動に専念できない夫ではなく、女性たちとされた。それ は、「動員のための要員 J119、「同盟の男の活動の補助機関 J120、「たんなるア クセサリ ー J121、「夫の代用 J122ではなく、部落解放運動にとっての主軸と位. 置づけられた。女性たちによる生活と結び、ついた活動は、部落解放運動を質的 ム 唱E. A笠.

(22) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. に発展させていった。 これら行政闘争が実現した背景には、「妻JI 母」としての言説実践があった といえる。たとえば、仕事保障要求闘争である。部落女性たちが働いている理 由として、「一家の亭主がかいしょなしで働かないからではなく、男であり、 一家の主であり、おやじである男が、差別のために近代的産業から締め出され ているからであってその殆んどが定職のない失業者、万年失業者、いや失業と いうより最初から近代産業よりしめ出されているためにやむを得ず女でありな がら重労働につかなければならない J123 といった発言が目立つ。 したがって、 「 一般の働く婦人だけの問題」として考えることはできず、「働く部落の婦人の 問題が解決するためには、実はそれ以前の問題、つまり部落の男の働く仕事の 問題が解決されなければならない J124 という。そして、「夫や息子、恋人が安 定した仕事についてほしいという要求と、それを満たそうとする闘い J125が 解放運動の中心的な課題とされた。 もちろん、働くことを女性の地位向上や権利意識としてとらえていた発言も ある。「婦人が職業をもつことは、婦人の自覚と地位をたかめるものだという 確信をもつことが大切 J126、「やむなく婦人が仕事に出かけるということだが、 それは婦人が生産に参加することになる。そして生産に関係するということ は、必然的に婦人の地位を高めていくことになる。婦人が活動していくという ことである J127、「婦人が働くということは、一般的にも婦人の地位を高めるし、 さらにそういう中から婦人自身が理論を身につけ、あるいは視野を広めて、自 分自身の立場を理解するような状態になる。それが婦人運動の発展していく条 件になる J128などの発言もみられるが少数である。「結婚しでもともかせぎをす るのは、生活が貧しいから」で、「このために、働くことをはじる人が多い J129 と述べられている。 とりわけ、農村部落においては、夫の出稼ぎを問題にして、 I~夫婦、親子が. そろって暮せる仕事を保障せよ』という『職よこせ』の要求 J130闘争が展開 4 2.

(23) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. された。このように、仕事保障要求闘争は、まず第ー に「主人」に安定した仕 事が確保されること、その次に婦人に安定した仕事が保障されること、第三 に現在働いている婦人の労働条件の改善が課題とされたのである日1。第三の 女性が働ける条件整備として、託児所や保育所建設、学童保育設置の要求が始 まっていった。 これら要求闘争や行政闘争のなかで必要とされたのが、部落女性による 「 学 習」である。全国婦人集会は、「理論学習の場として確立し、婦人の解放理論 を高める J132 ことも目標とされていた。 教養がない J135 I 文 部落女性たちは、 「 理論的な低さ J1お「婦人の低位性J134 I 思想の低さ J137 I 女の引こみ 思案や卑下心J1却な 化、教養がかけている J136 I d. どを克服するための学習会や文化活動の必要性を訴えている。部落解放同盟中 央本部書記長が、性差別体制を批判する活動家に対し、組織の問題以上に、部 落女性自身が 「 理論的な弱さ、水準の低さ」を 「 反省」するよう促す発言をし たことは先述したとおりである 。 このような学習が、部落女性としての社会的立場の自覚、権利意識の向上、 自己解放や自己変革、そして仲間づくりに重要だとされるなか、学習の必要性 がとりわけ強調されたのが、「母」 としての役割においてである。「子供の質問 に答えられる母となるように J1 ω、子どもを幸せにするために、子どもを変え てい くために、まず母親が部落問題や解放理論を勉強する必要があることが強 調される 。「よい子をつ くるためには、よい母にならなければJ140 という「母 として」の思いが教育闘争へとつながっていった。 当初は、全国婦人集会に来るのに、子どもたちにどのように話して来たかと いった話し合し、から始まり、その後、 「 部落問題を子どもにいつどのように教 えるか」が母たちの主たる関心となり、そのために母には正しい学習が必要だ という議論が繰り返され、これは全国婦人集会での例年の主題となった。行政 への要求闘争が部落ぐるみで進められ、その「主体」が部落女性とされたよう 4A1. qO.

(24) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. に、子どもを含む家族ぐるみの部落問題学習の 「 主体」も部落女性とされたの である。そしてその主体を引き受けるべく、母親と教員との連携の必要性が求 められるようになる。 自分たちが受け苦しんできた体験や思いを、子どもたちには背負わせたくな い、昧わわせたくない、との思いから派生し、子どもに「部落差別の本質を正 しく 」教える教育、アイデンティティ継承、「差別に負けない」抵抗主体の育 成は、「母」 たちの役割であった。 分科会をみても、子どもの進学や就職、保育、教育内容や教育条件、子ども. 9 6 3年の第 8回 会活動など、子どもに関する分科会が多くつくられている。 1 全国婦人集会で、はじめて子ども会活動の分科会がつくられたように、「婦人 の活動と子ども会とを切りはなして考えること J141 はできず、「子どもがおか あさんのあとをついで解放運動をやる子どもを育てることが、本来の子ども会 活動の目的である J142 とされた。こうしていっそう、「母」 としての部落女性 たちの部落問題学習の必要性がうたわれるようになっていった。. 6.識字がもたらしたもの この部落女性たちが、自己変革、自己解放、人間変革、社会変革の道筋を見 いだしていったのが識字運動であった。全国婦人集会で、識字について語られ. 9 6 5年 の 第 1 0回全国婦人集会であった。下記に、第 1 0回全国婦人 たのは、 1 集会および以降の集会記録の一部を抜粋する。. o 1"字をおぼえることが、主人の考えをかえたり、近所の人と人との関係をかえ たりしなければできないことだということがわかり、字をおぼえることは闘 かいだという事をわからし、私たち自身の考えをかえさしてゆきました。字 を一字おぼえようとすれば、どうしても自分自身をかえ、家庭をかえ、隣近 所をかえ、村をかえなければなりません。こうして『字をおぼえよう」とい う運動は字をしらないおばちゃんだけの問題でなく、字のよくわかっている. -4 4一. "". 1.

(25) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. 人たちも部落をつくりかえる闘かい、部落を解放する 事業 の一部分として全 体の問題として文盲退治がとらえられたとき、識字学校は一応の基礎ができ. 0回全国婦人集会、 1 9 6 5年) あがったのであります。」凶( 第1. of T解放』という字を教る時、解放とは何か、という解放の思想を学びま した。 平和の字を教る時、平和について独立 について学びました。J1 44 ( 第1 0回全 国婦人集会、 1 9 6 5年). o I 部落 という字を書ながら、部落ということばが持っている意味、即ち、貧乏 と差別の集中地帯としての“部落"その部落がどうして作られてきたのかと いう “ 部落の歴史"その“部落が解放されていくすじ道"を勉強しました。 いまさらにすすんで、私たちは“人閣の歴史"の勉強をしています。 J145 ( 第. 1 0回全国婦人集会、 1 9 6 5年). or 識字運動の動機は、生活の必要からと、責任ある活動を果たすためという、 個人生活と社会生活が結びついていることが明らかにされました。 J146 ( 第. 1 0回全国婦人集会、 1 9 6 5年). or わたしたち部落には、文字を書く. こと、読むことさえもできない多くの母が. います。 それは差別と迫害をせおわされてきた、部落民として女としての、 もっともきびしいすがたです。しかしわたしたちはこのままで一生おわらせ はいたしません。 わたしたち部落の母がまず字 をおぼえ、それをとおして解 放へのすじみちを、自らの力でみいだしてい くこと、さらに部落の母の生き てきたみちすじを、語ること 書く ことによって、自身をかえ部落をかえてい くたたかいをつづけることも明らかにしております。日本のなかで、もっと もしいたげられ、くるしみをいっぱい背おってきた私たち部落の母がたちあ がり、たたかうとき、だれもおしとどめることのできない力となることを、 あらためて自分のものにいたしました。J147 ( 第1 3回全国婦人集会、 1 9 6 8年). or 識字学校でべんきょうしたおかげで、多少でも自分でものを考えるようにな 第 り、自分の思うことが書けるようになりました。J148 (. 1 4回全国婦人集会、. 1 9 69年). o I 識字学校によって、自分をかえ、老人や子どもをかえ、家をかえ、部落を かえていること、それによってさらに自身を成長させている、その活動と道 すじを明らかにしなければなりません。 ただたんに文字 をならうというだけ でな く、それ によって人間として『変革』し『成長』していくことの意味に ついて、つ っこんでかんがえていきましょう 。J149 ( 第. 1 4回全国婦人集会、. u. F円. aq.

(26) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. 1 9 6 9年). o Iよく運動のなかでいわれる『せめて子どもにだけは』という思いは、それと してせつなくわからぬではないが、そのためにはまず自分がかわり自分が解 放されれば、子どもだけではかわらないことがみなで明らかにされた。母親 がまずかわること 。それによって子どもがかわる。夫をかえる、部落をかえ るのだ。ただ文字を知るだけでない識字運動の意義、役割がここにある。部 落解放運動の質的な発展を象徴する識字運動である。」 日 (第 1 4回全国婦人 集会、 1 9 6 9年). o I 私たち部落の婦人は、要求実現の活動、解放へのたたかいに取りくむなか で、何より自分のおかれている立場を自覚し、自らが変革することである 。 活動に結集するすべての人たち 一人ひとりが、自らの力で解放をなしとげ ること、それをとおして自らの変革をこそなしとげることである 。人間とし て成長していくことである。私たちの部落解放の最終の目標は一面では人間 変革のたたかいであるともいえる 。完全解放をなしとげ差別のない社会をっ くりだす人問、そして差別のない社会に生きる人間への変革である。(中略) この人間変革については識字運動がその道すじを、みごとに明らかにしてい る 。 J1 5 1( 第1 4回全国婦人集会、 1 9 6 9年). 第 1 0回 全 国 婦 人 集 会 に お け る 識 字 の 取 り 組 み 報 告 を 受 け て で あ ろ う 。 翌 年. 1回全国婦人集会では、 「語 る こ と 、 書 く 人 の 自 己 変 革 を 、 書 く こ と 、 語 の第 1 る こ と に よ っ て な し と げ て J1 5 2 ~、こうと「提案」されている。差別が強けれ ば強いほど圧迫が激しければ激しいほど大きくなる「人間回復のうごき」、部 落の中で女性としての差別を受け、何重にも苦しめられ、悩み続けた部落女性 が「自由をもとめながらも、出口のない環境で、ぎりぎりにたたされたはだか の人間のつよさ 」 へ の 注 目 で あ っ た. 1 5 3 。第. 1 1回 全 国 婦 人 集 会 で 、 福 岡 県 か ら. 2回 全 国 婦 人 集 「特 別 報 告 」 と し て 識 字 運 動 の 取 り 組 み が 報 告 さ れ て い る 。 第 1 会では、「書く運動の中で部落の生活と歴史を明らかにしよう」と 「文化活動」 の分科会が設けられた. 1 5 4。 そして、. 1 9 6 9年 の 第 1 4回 全 国 婦 人 集 会 で は じ め て. 「識字運動」の分科会が設けられている。 識字運動は 1 9 6 2年 、 福 岡 県 行 橋 で 始 ま り 、 翌 年 以 降 、 大 阪 、 京 都 、 奈 良 に. 4 6.

(27) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. 広がっていった。部落女性たちが自分たちの解放理論を導き出し、思想をもち、 主体性を形成していくプロセスに果たした識字運動の役割に関する分析は今後 の課題としたい。. 7 . まとめにかえて 部落女性たちが語る差別の実態は、部落解放同盟中央本部が打ち出す理論 によって一つの方向性に収数されていった。嫁姑関係も、「嫁」役割も、夫の. DVも、性別分業も、である。全国婦人集会は、彼女たちの経験や思いを理論 化し、行動へと結び‘つける、また行動を理論化する、その学習の場であった。 「二重三重の差別圧迫」との言説は、一般と部落との違いを強調する役割を果 たしたのみならず、部落女性たちの組織化や運動への参加を意識づける機能と もなった。部落解放同盟中央本部は、「だからこそ女性が主体的に闘う必要が ある」との論を導き出し、部落女性たちは、「だからこそわたしたちが主体的 に闘う必要がある」とその役割を引き受けた。部落差別や部落解放運動が優先 されるなかで、くらしの中の実態を差別ととらえた要求闘争は、「主体性」の 名のもとに、部落女性たちが先導的役割を担い展開されていった。 部落解放運動が有する性差別体制への批判は、部落女性たちの理論の低さや 教養が身についていないという問題に転化され、それを乗り越えるべく学習の 必要性が強調された。部落女性は「文化活動」として、部落の文化の低位性向 上の役割も担っていく。「二重三重の差別圧迫」との言説は、部落解放運動の 性差別体制への批判もくみこみながら、要求闘争を居住地域で担う部落女性の 主体性形成は全国婦人集会の焦点になっていった。「母」言説は、部落という 居住コミュニティおよび部落解放運動という居住活動コミュニティにおいて、 それらが有する諸価値を次世代に伝達・継承し、次世代を育成・教育する再生 産の機能として求められていくようになる。 女性としての共通項を模索し追求する部落女性たちにとって、全国婦人集会. -47-.

(28) 人権問題研究所紀要. 被差別部落女性の主体性形成に果たした全国婦人集会の役割に関する一考察. は、共感、対話、連帯の場であり、それらによるエンパワメントや自己変革を 言語化する場であった。一方、部落解放同盟中央本部にとっては、一般の婦人 集会や一般の婦人運動との差異を強調することで、部落解放同盟の綱領等に基 づく社会的立場の自覚を部落女性に追求する場であった。 「より強いマスイにかかって眠らされている私たちをよび覚してくれる集 会 J155 との発言にあるように、怒りゃあきらめ、劣等感から、差別や権利、 政治に目覚めて立ち上がり、自分の力に自信をもつようになったのは、他者と の関係性や相互性に基づく共感、対話、連帯があったからである。さらに、他 地域の実践に学び、他者と共有することで¥部落女性たちは、自己を表現 ・主 張することと、そのための学習に対する意欲を高めていった。そして部落女性 たちの意識化に大きな役割を果たした識字運動が生まれることになる。 部落解放同盟中央本部の運動方針と、部落女性の主張や活動はときに対立 し、ときに後者が前者によって抑制されながらも、部落女性たちは、対立を対 話に変えようと模索してきた。さらには、揺らぎや葛藤を力に変えようと試行 錯誤し、経験や感情、希望や目標を共有しながら、中央本部の運動方針とも協 調しあるいはのりこえようとしている。部落女性の主体性形成は、差別との闘 いや社会に対する抵抗運動を経験することで生み出されているものである。そ の主体性は、他者との相互承認、や尊重 ・敬意にもとづく運動への主体的な参加 によって生まれる共同性との相互作用によるものであり、その場として全国婦 人集会があったと言えよう。. agency概念は、共同性を踏まえた個人の主体性の成り立ちを論じている。 本論で焦点を当てる主体性とは、単に個の力の増強といったことではなく、歴 史的・社会的文脈のなかで、主体的 ・意識的に他との交渉を通じて、また関係 性や共同性のなかで、助け合い、助けを引き出していくプロセスと場を通じて、 相互に変容し、社会関係や社会構造、地域の関係性の変化にかかわっていく主 体性である。 4 8.

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