鹿児島湾におけるタイワンガザミの分布と漁法
著者
田ノ上 豊隆, 出納 幸人, 安東 孝也, 山切 康弘
雑誌名
鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of
Fisheries Kagoshima University
巻
16
ページ
85-92
別言語のタイトル
On the Distribution and the Fishing Method of
Portunus Pelagicus in Kagoshima Bay.
Mem・Fac・Fish.,KagoshimaUniv・ Vol、16.pp、85∼92(1967).
鹿児島湾におけるタイワンガザミの分布と漁法
田ノ上豊隆・出納幸人・安東孝也・山切康弘*
OntheDistributionandtheFishingMethodof
乃伽棚〃“c”inKagoshimaBay.
ToyotakaTANouE,YukitoSuITo,TakayaANDoandYasuhiroYAMAGIRI
Abgtract ToclarifythehabitatofPor"”s〃αg”Sandtheoptimumfishingmethodofthat,someexper‐ imentalinvestigationswerecarriedoutonacraftinKagoshimaBayduringtheteImfi・om Septemberl963toFebruaryl965・ Theresultsobtainedareasfbllows. ')Thetrinalnet(Tablel)isasuitablefishinggeartocatchPoγ畑"“P8Jag畑3. 2)Pりγ畑”JPeI‘zg畑Sisfbundinthegreaterpartofshallowwaterarea,l∼6m・indepthwhere thebottommaterialsarecomposedofsandandmud、 3)ChieffishingseasonofPoγ"msPeIag”sisconfinedwithinthetermfromJunetoOctober, andthewatertemperatureappropriatedfbrthegoodcatchiswithintherangeof20∼29.C、 4)RangeofthecephalothoraxofPoγ畑皿sPeノagjc“caughtwiththetrinalnetlieswithin70∼l40 millimeters. タイワンガザミPbγ"”s〃αg伽sは日本沿海では太平洋側の相模湾以南と日本海側の福井県以南の沿海に生息していることが知られている酒井(1960)').鹿児島湾内においてはタ
イワンガザミを漁獲するための専用漁具は用いられていないが,他の魚類を対象とする刺網 類によって混獲され,また夏季には銘で捕獲されて食用に供されている.筆者等は昭和38年 夏から,底刺網を作製して湾内で漁獲試験を実施し,分布状態を調べたのでその結果を報告 する. 調 査 方 法 漁具は三重底刺網を作製して昭和38年9月から水産学部沖合で,毎月3回以上漁獲試験を 1年間継続実施して,漁況変動と物理的環境要因について調査した.作製した漁具の構造は Tablelに示した如く,クレモナ網地を使用して網長32m,網丈1.4mに仕立てた.此の漁 網の他にクレモナ網地5cm目,「いせ」4割の三重網とクレモナ網地9cm目の一重網を作製 して学部沖で数回にわたり操業した.操業に際しては船外エンジン付舟艇を用いて,網2反 を常用し,主として夕刻投網して翌早朝揚網した.学部沖以外の操業場所は湾内各地の漁業 協同組合を通して聞き取り調査を行ない,漁獲実績のある加治木,国分,燃島,谷山,喜入, 知林,古江等の地先を選定操業した. *鹿児島大学水産学部漁法学教室,(LaboratoryofFishingMethod,FacultyofFisheries,Kagoshima University》Lr〉 鹿児島大学水産学部紀要第16巻(1967) 86 ︵貞員。︶ @N湯0二画の]言 寺④ ①ロ雪︲で面@日 Uロ雪坐吋○﹃閏 茎消吋冒三 旦冒︺ぬ C、I 弓 GI ー ︵ま︶ ①即吋呈冒糧昌め ○の ◎の ●旨①日冒のQxの旨の”gQgでの湯o己日①︵﹃日吋︲①竜ご︶芯員︲君昌揖何﹄opo垣。。揖目○○・[①三吋僧 ● .b蔚言員・励戸鴇三如遍乏二go僧︽震﹃b@日ゴロ︷go伊菖吋昌・励函園三即ち言己8日 ●勘の.望望﹄。ロ吋湯○.旦冒goP︽等.。z﹃go偶・勘、三稗①三︽日。雲碧、口①臼・日。函・国Q︽首○国。君の彊口易二の ︵・︹員︶ 昌乱口①日 幻・函雨 幻・函函 ︾④ Uロ﹃ごロ ● 国ロ○日①﹄。 Q①①で0昌吻①冒言 の。⑦一 僧①望ロ︷の ︺吋○︷鴎 四口︾旦旦瞥声砦①ロロ胃 即自室pU芸5首○ ○ぬ O) ﹃両冨①︺面︼宮 ︺○口茎当①。昌吻 ︺○口茎ムの①皇吻 ︺opM国 ・日日⑦.層口 めで員吋穐拐の 画員揖吋声守函 ︾ロゴOUつ国 画でロ国跨葛函 四口揖吋声守 ︺ロゴOUCふ めでロ団揖湯園 画口揖吋声函 ︺○.oUC風 @N︾ぬ @頁︻乏厘 ● 日一両Q何口三○ で面①﹄二︺ 阿冒OB2o で面①穐二︺ 何口○日2。
田ノー上・出納・安東・山切:鹿児島湾のタイワンガザミの分布と漁法 ︵・巳。︶︾①亘︸○一二脚①エ
漁獲物は羅網位置を調べ,甲幅,甲長等を測定した.甲幅は甲面の前側縁の第9歯の強大
な疎の先端間の長さで現わし,甲長は額の中央部の疎の先端から甲の後端までの長さで表示
した.操業の都度水深1mの位置の水温・塩分を測定した. 試 験 結 果漁具:学部沖にて操業した結果,一重網の漁獲尾数は少なく,目合5cmの三重網では魚
類の漁獲数は多かったが,タイワンガザミの羅網数は少なかったので,両網共に性能的には
9cm目の三重網に劣るものと判断し,学部
沖以外の場所では使用しなかった.以下に
のべる操業試験結果は全て9cm目三重網 によるものである. 漁具は水中に設置した場合,潮流の抵抗 を受けて沈子綱を基点として傾斜し,身網 の中央部は袋状を呈して網丈は低くなる. 水産学部沖の水深2mの場所で投網して, その真上にポートを固定し,網の形状を観察,測定した結果,傾斜の程度は流速0.2,
0.3ノットのときFig.1の如き断面形状を
呈することがわかった.すなわち,浮子は 沈子を基点として50cm位の距離に流され, 網丈は1.2cm位を保っている. 操 業 : 水 産 学 部 沖 で 操 業 し た 結 果 は Table2の通りである.漁獲数についてみ ると,冬季の12月から3月までの間は漁獲 ]1111
87 4C rl L」 rl L 」 O 2 0 3 0 4 0 5 0 6 C 【)脚 r1 L」Distance(c、.)数が少なく,4月から漸増して,6月から10
Fig.1.LongitudinalsectionsoftheMie-ami 月までが盛漁期となっている.晩秋に漁獲 inthesea・ 数は両び低下しはじめる. 翁:Velocityoftidalcurrent,2knots水温は8月は最高29.5.Cがみられ,2
○:Velocityoftidalcurrent,3knots月に14.5。Cの最低が現われている.平均
漁獲数と水温の月別変化状況はFig.2に示した通り,高温期に漁獲数が多く,低温期に漁
獲数は低下している.漁狸数の多い6月から10月までの水温範囲は22.0∼29.5。Cであり,
20°C以下では漁猶数が極端に低下することが明らかである.塩分濃度は30.8∼33.5%・の範
囲で,季節的な変化は少ないが,冬季にやや高く,夏季幾分低い.盛漁期の塩分範囲は30.8
∼32.85%・である.羅網位置(沈子からの網の高さ)を調査した結果はFig.3に示した通り,沈子付近から
商さ60cmの位置までの広い範囲で漁獲されている.しかし網の高さ30cm以下で96%が漁
獲されており,網の高さ31∼60cmの範囲では僅か4%が羅網したに過ぎない.
昭和39年9月から湾内の各地先で操業した結果はTable3に示した.漁協における聞き取
り調査に基づいて漁場を選定して好漁場の範囲を充分に知悉していなかった関係上,現場で
lOO6Ⅳ弱糾拓別
鹿児島大学水産学部紀要第16巻(1967)401823001
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zoぐ ○○一一 の①で シで周一 三口望 Fig.2.Relationshipbetweenthevariationofwatertemperature andthemeannumberoffishing、 一○一Meannumber −−×一一Watertemperature N o . o f T i m e s o f 合 、 早 indihidualsoperation Mean m1mber Water temperature (。C) Sa(l%i)nity 32.02∼32.99 31.27∼33.26 31.82∼33.44 31.00∼33.00 30.91∼32.54 30.82∼31.92 31.09∼32.09 31.37∼32.81 30.91∼32.99 ﹄屋一軍 ﹄自。① ●●日日昼Ⅷ叩伽伽伽州伽肋伽畑胸肱川蝿剛
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水深2∼5mの砂地を選び操業した.この結果漁場価値の判断はできなかったが,タイワン
ガザミの生息を確めることはできた.漁場の水温範囲は23.0∼29.6。Cで比較的水温の高い時期であり,塩分は31.0∼33.8%・の
範囲で学部沖に比較してかなり高い. 131.-30′40′ 50′ 30′ 50 O一一一○ v a m a 40′ 90 0 1 1 2 1 3 1 4 1 5 1 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0H
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Fig.3.Percentageofthefishingrateat everyheightoftheMie-ami.0021
2回角即二三の揖図 10′ 1 28° H 1これまでの間にタイワンガザミの生息場として確認された海域はFig.4に示す如く,液
内の奥部,薩摩半島側および大隅半島側の地先水深6m位までの範朋である.
水産学部沖で漁獲されたタイワンガザミの叩幅組成はFig.5に示した通り,11111幅の範囲
は70∼140mmで,雌雄別の大きさの差異は少ない.しかしモードは雄では111∼120mmに
現われ,雌のそれと比較してやや大である.各地地先漁場(Table3)で漁挫されたタイワンガザミの叩幅は88∼132mmで,100mm以
上が多く水産学部沖の大きさとほぼ同大であった.雌雄別の羅綱数は雄の方が年間を通して若干多い傾向がみられる.雌の中でも抱卵中,い
わゆる外卯を持つ個体は極めて少なく,時期別には6月から9月までの間にみられた.
Irll傭と甲長との関係はFig.6に示した通り,雌雄間の差異は認められず,共に直線式
J〃=1.631L+20.28 で近似的に現わされる.但し〕〃=叩幅,L=叩長とする.Fig.7は昭和42年6月20日に天保山沖で漁独されたタイワンガザミである.雄の甲面の青
20′ Fig.4.Geographical企aturesofthePor虹皿J PeJagic“fishingareasinKagoshimaBay.000000210987
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菌﹄○三○一圃一一旦の。﹄殉︹弓一三 91 ID 地に白い雲紋模様は以前漁獲されたものに比較して不明瞭な部分が多く,此の1 呈 し て い る . 多 分 埋 立 て 工 事 の た め 海 水 が 濁 り を 生 じ て い る 影 響 と 考 え ら れ る . 此 の 部 分 は 泥 色 を 45「 $o 40卜 150 140 1306
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50 田 ノ 上 。 出 納 ・ 安 東 ・ 山 切 : 鹿 児 島 湾 の タ イ ヮ ン ガ ザ ミ の 分 布 と 漁 法 J U 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0 7 0 8 0 Lengtllofcephalothorax(、'、.) Fig.6.Relationshipbetweenthewidth ofcephalothoraxandthelengthof cepllalothorax,ofPorjIzノ“P8jagic“. ○Male ②Female O o 6bO 7 0 9 0 1 1 0 l 3 0 Widthofcephalotl1orax (m、.) Fig.5.Histgramshowingthe widthofcephalothorax compositionofPorj"”s Pcjag極Jcaughtwiththe Mei-amiinKagoshima Bay. Fig.7.Por/"7“PcJagj‘"JcaughtwiththetrinalnetattheseaoffTempozaninJune20,1967. 60雪
旬 ■皇 ,I 早92 鹿児島大学水産学部紀要第16巻(1967) 考 察 網の構造について詳細な比較試験はできなかったが,9cm目の三重網に比較すると,目 合が小さい三重網,一重網共に羅網率が悪い傾向が認められる.網は水中で抵抗を受けて沈 子綱を基点として潮下に傾斜して網丈が若干低くなるが羅網部位から判断すると,網丈を 70cm位として長さを倍に構成して使用する方が効率はよいものと考えられる. 漁獲状況を観察すると,タイワンガザミの索餌活動の活発な期間は6月から10月頃までで あ り , 水 温 の 高 い 時 期 程 活 動 は 盛 ん な 傾 向 が 認 め ら れ る . 活 動 範 囲 は 砂 地 の 水 深 1 m か ら 6m位までに見られたが,海底の石の多い場所においても発見された.漁獲されたタイワン ガザミは甲幅100mm以上の成体が多いが,これらの群が索餌の為遊泳移動する深さは,羅 網部位から判断して,海底から20cm以内と推定される.平面的に観察すると河口近くの砂 地 の と こ ろ に 多 い 傾 向 が み ら れ る . こ の こ と は 餌 料 の 関 係 に よ る も の と 推 察 さ れ る . こ の よ うな関係で生息場の塩分濃度は一般に低い. 昼間の活動は盛んでないが,学部沖において夏キス刺網で漁獲された例もあるので全然活 動を停止しているもものではない.羅網数が少ないのは海中照度が高く網が発見され易い為 でもあろう.潜水観察すると石の下,穴等に発見される.一般に水温が降下する冬期には深 所へ移動することが知られている八塚(1967)が今回の調査ではこの点究明されなかった. 要 す る に , 鹿 児 島 湾 内 の 浅 所 で 海 底 が 砂 地 の と こ ろ に は 広 く タ イ ワ ン ガ ザ ミ が 生 息 し て い ることが推定される. 漁獲されたタイワンガザミの甲幅はどの海域でも90∼120mmが多い.これは網目の選択 性と活動‘性,生息水深等に起因するものと考えられる.実験中国分沖では水深30cmの場所 で甲幅50∼60mmのものが若干観察されたが,その他では小型個体についての資料は得ら れなかった. 要 約 鹿児島湾内のタイワンガザミの生息場と漁法について調査して次のような結果を得た. 1)三重網はタイワンガザミの漁獲に適した漁具である(Tablel). 2)鹿児島湾内の河口近くの砂地の浅所には至るところタイワンガザミが生息している. 3)漁期は4∼11月で,盛漁期は6∼10月である. 4)水温20℃以上の水域で活動は盛んである. 5)漁獲されたタオワンガザミの甲幅は70∼140mmの範囲であり,90∼120mmが最も 多い. 文 献 l)酒井‘垣(1960):原色動物大図鑑59∼60p、 2)八塚剛(1967):養魚学各論753∼760p、