〈Original Papers〉脱原発政治とガバナンス転換--3.11以降の政治学の基本構想
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(2) MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.30(2012). 30. は原 発 を再 稼 働 して補 い 、や む を得 ず原 発 由 来 の 電 力 を享 受 しつ つ 、 そ れ と併せ て 、発 送 電 の 分 離 を推 し 進 め 、 再 生 可能 エ ネル ギ ー の普 及 拡 大 の た め の 政策 誘 導 を行 い 、 か つ ま た新 た な 成長 産 業 と して 環境 産 業 に期 待 を 寄せ る戦 略 的 な シ ナ リオ の 方 が マ ジ ョ リテ ィ を 占め るか も知 れ な い。 こ うした シ ナ リオ だ と、 差 し当 た っ て 、脱 原 発 と経 済成 長 は 対 立 しな い。 それ で も、 環 境 産 業 が ど こま で成 長 産 業 で あ るの か 、 か つ ま た雇 用創 出や 所 得 上昇 に ど こま で 寄 与 しえ るの か 、確 か な保 障 は な い。 脱 原 発 に 経 済 成長 を関係 させ な が ら議 論 を巡 らせ る と、 い つ しか 思 考停 止 の 回 路 に迷 い 込 む か の よ うで あ る。. 遡 れ ば 、1969年. 、 ア メ リカ 政 治 学 会 第65回. 年 次 大 会 に お い て 、 会 長 の デ ヴ ィ ッ ド ・イ ー ス トン が. 「政. 治 学 に お け る新 し い 革 命 」と 題 し、こ れ ま で の 政 治 学 の 在 り方 を 反 省 し な が ら 、「 脱 行 動 論 革 命 」を 提 唱 し、 そ の 中 で 、「政 治 学 に お け る 脱 行 動 論 運 動 は 、わ れ わ れ の 学 問 と職 業 の 義 務 に 関 す る 新 しい イ メ ー ジ を 提 示 し つ つ あ る 」 と指 摘 し た こ と を 、 こ こ で 思 い 出 す(イ. ー ス トン1976:337)。. 思 う に 、3.11以 降 の 政 治 学 は 、. 脱 原 発 に対 して 、少 な く と も 「 新 し い イ メ ー ジ 」 の 回 答 が 求 め られ て い る の で は な い か 。 そ れ ば か りか 、 3.llは 、 脱 原 発 と い う基 本 設 定 を 突 き 抜 け 、 脱 原 発 に 併 せ 脱 成 長 を も視 野 に 入 れ た 新 しい 政 治 学 の 誕 生 を 求 め て い る の で は な い か 、 そ の よ うに 筆 者 は 思 い 至 っ た 次 第 で あ る。 脱 原 発 と脱 成 長 と を 重 ね 合 わ せ な が ら 、 新 し い 政 治 学 を 構 想 す る こ と は 、 途 方 も な く 、 極 め て 容 易 な ら ざ る 学 理 的 行 為 で あ る。 と りわ け 、 近 現 代 の 政 治 が 拠 り所 と し て き た 究 極 の 正 当性 は 、 何 よ り も 、 経 済 成 長 で あ っ た 。 周 知 の 通 り、 戦 後 の 福 祉 国 家 は 一 定 の 経 済 成 長 の 上 に 成 り立 っ て い た 。 貧 困 に 喘 ぐ 途 上 国 が 開 発 独 裁 も し く は 権 威 主 義 体 制 を 敷 き 、 民 主 主 義 や 人 権 を 犠 牲 に し な が ら経 済 開 発 を 急 ぐ の も 、 経 済 成 長 に よ っ て 人 び と の 生 活 が 豊 か な に な る た め で あ る と 、 為 政 者 か ら釈 明 さ れ て き た 経 緯 が あ る 。 ま た 、 経 済 の グ ロ ー バ ル 化 の 進 展 や 新 興 国 の 台 頭 に よ る厳 し い 国 際 競 争 下 に お い て 、 巧 み な 成 長 戦 略 が 求 め ら れ る。 そ れ 故 に 、 脱 成 長 と い う課 題 設 定 は 、 あ た か も圧 倒 的 な 迫 力 を も っ て 讐 立 す る 障 壁 に 等 し く 、 そ れ に 挑 も う と す れ ば 、立 ち す く み 、一 歩 を 踏 み 出 す こ と も で き ず 、立 ち 往 生 せ ざ る を え な い か の よ う で あ る 。3.ll は 、 脱 原 発 の さ ら に 奥 に は 、 脱 成 長 と い う最 難 関 の 先 鋒 が 屹 立 し て い る こ と を 政 治 学 に 知 ら しめ た 。. こ の よ うな 問 題 意 識 を 持 ち つ つ 、 本 稿 は 、 ま ず 、i)政 う政 治 学 の 基 本 概 念 の 再 確 認 を 行 い 、 次 に 、i)脱 し 、 そ れ を 踏 ま え 、ii)脱. 治 、 ガ バ ナ ンス 、 民 主 主 義 お よび レ ジー ム とい. 原 発 政 治 の途 上 に 現 れ た原 発 再稼 働 の 政 治過 程 を考 察. 原 発 政 治 に お け るガ バ ナ ンス に つ い て 、 政 治 や 民 主 主 義 、 レジ ー ム との 関係 に. つ い て 考 察 し な が ら 、 ガ バ ナ ン ス 転 換 に つ い て 検 討 す る。 尚 、 こ の ガ バ ナ ン ス 転 換 と い う立 論 は 、 ガ バ ナ ン ス 論 に お け る新 た な テ ー マ 設 定 と な る。 最 後 に 、iv)脱. 原 発 ・脱 成 長 と持 続 可 能 な 社 会 と の 関 係 に つ い. て 議 論 し な が ら 、3.ll以 降 の 政 治 学 の 基 本 構 想 を 展 望 す る 。. 2.政 治 、ガ バ ナ ン ス 、民 主 主 義 お よ び レジ ー ム こ こ で 、 後 の 議 の た め に 、 政 治 、 ガ バ ナ ン ス 、 民 主 主 義 お よ び レ ジ ー ム と い う政 治 学 の 基 本 用 語 に つ い て 、 一 定 の 概 念 規 定 を 示 し て お き た い 。 い ず れ の 用 語 も 、 そ の 定 義 は 未 だ に 論 争 的 で あ り、 した が っ て ま た 、 定 説 が 確 定 し て い な い 。 そ の こ と を 承 知 の 上 で 、 本 稿 の 論 述 手 順 と して 、 予 め 、 定 義 を 示 し て お き た い。 最 初 に 、政 治(politics)で. あ る が 、 そ れ は 、本 質 的 に 、 当 該 社 会 を 構 成 す る 利 害 関 係 者 が 、 調 整 を 重 ね 、. 妥 協 と 同 意 の 下 に 、 一 定 の 政 治 的 決 定 を 引 き 出 し、 か つ ま た 併 せ て 正 当 性(legitimacy)を. 獲 得 す る作 業 で. あ る と と も に 、 そ の 正 当 性 を 得 た 政 治 的 決 定 を 統 治 者 も し く は 政 府 が 政 策 と して 実 行 し つ っ 、 利 害 関 係 者 に 利 益(interest)を. 配 分 し 、 か つ ま た 正 義(justice)を. 実 現 す る 作 業 で あ る 。 実 際 の 政 治 過 程(realpolitical.
(3) 31. process)に. おいては、正々堂・ 々 た る議 論 が 交 わ され もす れ ば 、 妥 協 点 を 見 出 す た め に 対 案 が 示 さ れ 、 懸 命. な 説 得 工 作 も行 わ れ る。 ま た 、 虚 々 実 々 の 駆 け 引 き や 打 算 が 働 く。 し た た か な 権 謀 術 数 が 渦 巻 く こ と も あ れ ば 、 時 に は 、 金 銭 が 飛 び 交 い 、 謀 略 や 暴 力 さ え 交 わ る 場 合 も あ る。 い ず れ に し て も 、 政 治 を 通 じて 引 き 出 され た 一 定 の 決 定 は 、 被 統 治 者 か ら集 合 的 支 持 を得 る こ と に よ り、 そ の 正 当 性 を獲 得 す る こ と が で き 、 関 連 す る政 策 の 実 効 性 が 担 保 さ れ る。 ま た 、 政 治 的 決 定 は 、 必 要 悪 と い うべ き 、 政 治 権 力(politicalpower)に 構 成 す る メ ンバ ー を 強 制(coercion)す. よ っ て 裏 付 け ら れ 、 当該 社 会 を. る 。 した が っ て 、 政 治 的 決 定 は 被 統 治 者 を 多 少 な り と も 権 力 的 に 強. 制 す る が 故 に 、 被 統 治 者 か ら 正 当 性 を 獲 得 す る こ と が 政 治 の 要 諦 と な る。 反 対 に 、 政 治 的 決 定 が 被 統 治 者 か ら支 持 さ れ ず 、 か つ ま た 正 当 性 の 獲 得 に 失 敗 す る と 、 政 策 の 実 効 性 も 低 減 す る が 、 そ れ で も決 定 を 強 行 し被 統 治 者 を 強 制 し よ う と す れ ば 、 赤 裸 々 な 権 力 を 露 呈 す る 権 力 政 治(powerpolitics)も (suppresspolitics)の. し くは抑 圧 政 治. 様 相 を 濃 くす る 。 さ ら に 、 そ の 傾 向 が 強 ま れ ば 、 独 裁 政 治(dictatorship)と. 化す。 し. た が っ て 、 理 想 的 な 政 治 は 、 物 理 的 強 制 力 を 行 使 す る こ と な く 、 利 害 関 係 者 の 同 意 と被 統 治 者 の 支 持 に よ り得 た 正 当 性 の 下 に 、 正 義 の 実 行 と利 益 の 配 分 が 行 わ れ る 状 態 で あ る と い え よ う。 次 に 、 ガ バ ナ ン ス(governance)と も し く は 行 政 機 関 に 、第2セ. は、通常. ク タ ー=市. 「統 治 」 と 訳 さ れ る が 、 具 体 的 に は 、 第1セ. 場 経 済 部 門 の 企 業 や 、第3セ. ク タ ー=市. ク ター の 政府. 民 社 会 部 門 のNGO・NPO. な ど が 加 わ り、 お 互 い 対 等 な 関 係 に お い て 、 協 働 し な が ら 、 政 策 課 題 設 定(agendasetting)か. ら、 政 策 形. 成 、 政 策 決 定 、 お よ び そ の 執 行 ・実 施 、 並 び に 政 策 評 価 に 及 ぶ 政 策 過 程 全 般 を 担 い 、 か っ ま た 直 接 規 制 と は 異 な る政 策 手 法 を 用 い な が ら 、 所 期 の 政 策 成 果 を 実 現 し よ う と す る 統 治 形 態 と し て イ メ ー ジ さ れ る 。 要 す る に 、 ガ バ ナ ン ス と は 、 全 員 参 加 型 の 協 同 統 治(協 こ の よ うな ガ バ ナ ン ス と い う政 治 現 象 は 、1970年. 治)、 も し く は 共 同 統 治(共 代 中 葉 以 降 、 と りわ け1989年. 冷 戦 の 終結 以 降 、今 日に至 る 「 新 し い 政 治(newpolitics)」. 治)で. あ る と い え よ う。. の 東 欧 革 命 に 連 動 した. の 一 つ に 数 え られ る 。 周 知 の 通 り、 グ ロ ー バ リ. ゼ ー シ ョ ン の 進 展 と相 侯 っ て 、 脱 工 業 化 や 女 性 の 社 会 進 出 、 地 球 温 暖 化 な ど の 政 治 を 取 り巻 く 環 境 の 変 化 は 、 政 府 の 統 治 能 力(govemability)の. 低 下 を 助 長 し た 。 政 府 が 十 全 に 対 処 し え な い よ うな 難 しい 政 治 的 課. 題 が 現 れ 、 し か も 、 き め の 細 か い 対 応 を 必 要 と す る課 題 が 増 え て き た 。 反 対 に 言 え ば 、 政 府 だ け で は 統 治 を 為 し得 な く な っ た 次 第 で あ る。 も し仮 に 、 政 府 が 課 題 解 決 を 焦 る 余 り、 権 力 的 な 統 制 に よ っ て そ の 課 題 解 決 を 図 っ た と し て も 、 決 し て 根 本 的 な 解 決 に は 繋 が ら な い こ と は 言 うま で も な い 。 こ う し て 、政 府 の 統 治 能 力 の 低 下 と相 即 す る よ うに 、 「ガ バ メ ン トか ら ガ バ ナ ン ス へ 」 とい う、 統 治 に 関 す る根 本 的 な 変 動 が 着 実 に 進 み つ つ あ る。 尚 、 こ の 場 合 の 、 「ガ バ メ ン ト(govemment)」. とは 、 通 常. 「政. 府 」 と 訳 さ れ る が 、そ の 意 味 す る と こ ろ は 、専 ら 政 府 に よ る 「上 か ら下 へ の 統 治 」 を 指 す 。 こ れ に 対 して 、 ガバ ナ ンス は 、政 府 だ け に拠 らな い 、 市 場経 済 セ クタ ー や 市 民社 会 セ クタ ー の 協 力 を得 た. 「対 等 な 関 係 の. 統 治 」 を イ メ ー ジ す る 。 しか し な が ら、 ガ バ ナ ン ス は 全 て の 統 治 分 野 に 該 当 す る わ け で は な く、 「環 境 ガ バ ナ ン ス 」や. 「医 療 ガ バ ナ ン ス 」 が 代 表 す る よ うに 、 特 定 の 分 野 に 該 当 す る も の と看 倣 さ れ て き た 経 緯 が あ. る。 尚 、近 年 の ガ バ ナ ン ス 研 究 、そ れ は 「第 二 世 代 の ガ バ ナ ン ス 論(secondgenerationofgovernanceresearch)」 と も 呼 ば れ る が 、 そ の 焦 点 は 、 ガ バ ナ ン ス の 生 成 ・機 能 ・発 展 、 ガ バ ナ ン ス の 失 敗 と成 功 の 条 件 、 メ タ ・ ガ バ ナ ン ス を 通 じ た 自 己 調 整 ガ バ ナ ン ス(selfregulatinggovernance)、 あ る と い う(SorensenandTo面ng2007:14)。. お よび ガ バ ナ ンス の 民 主 主 義 問題 に. また、 「 第 二 世 代 の ガ バ ナ ン ス 論 」 の 中 で も 、 「国 家 中 心 ・関. 係 重 視 型 ガ バ ナ ン ス 論 」 に よれ ば 、 政 府 は 衰 退 す る ど こ ろ か 、 新 し い 環 境 に適 応 し つ つ 、 統 治 の た め の 新 し い 関 係 性 を 発 展 し て き て い る と指 摘 す る(BellandHindmoor2009、 に お い て 、 この. 君 村2011、. 小 暮2011)。. 本 稿 第4節. 「国 家 中 心 ・関 係 重 視 型 ガ バ ナ ン ス 論 」 の 議 論 を 敷 延 し な が ら 、 ガ バ ナ ン ス 転 換 、 就 中 、.
(4) MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.30(2012). 32. 原 発 ガ バ ナ ン ス か ら脱 原 発 ガ バ ナ ン ス へ 向 け た ガ バ ナ ン ス 転 換 を 論 じ る 次 第 で あ る。 民 主 主 義(democracy)は. 、 当 事 者 が 政 治 的 決 定 の 場 に 参 加(participation)し. ね 、 そ の 当 事 者 が 責 任 を 持 っ て 自 己 決 定(selfdete㎜ination)を あ る。 民 主 主 義 は 政 治 的 価 値 観 で あ り、 そ れ 故 に. 、 熟 議(deliberation)を. 重. 行 うべ き で あ る 、 と 考 え る 政 治 の 在 り方 で. 「 独 裁 政 治 」 を 否 定 し 、 「民 主 主 義 政 治 」 が 称 揚 さ れ る。. し か し 、 い ま 示 し た 民 主 主 義 の 概 念 規 定 は 直 接 民 主 主 義 を 基 本 と し て い る が 、 今 日で は. 「常 識 」 と な っ て. い る よ うに 、 古 代 ギ リシ ャ の ポ リス と違 い 、 現 実 的 に 当 事 者 全 員 が 政 治 の 場 に 参 加 す る こ と が で き な い の で 、 直接 民 主 主義 は 、 間接 民 主 主義 と して の代 表制 民 主 主 義 、 具 体 的 に は議 会 制 民 主 主 義 に 代 替 され るの が 正 当 と さ れ て い る。 選 挙 を 通 じて 選 出 さ れ た 当 事 者 の 代 表 が 議 員 と し て 議 会 を構 成 し 、 そ の 議 会 に お い て 、 あ る い は ま た 議 会 に 付 属 す る委 員 会 に お い て 、 熟 議 が 行 わ れ 、 そ の 熟 議 を踏 ま え つ つ 、 議 会 の 多 数 決 に よ り、 政 治 的 決 定 が 行 わ れ る。 但 し 、 選 挙 は 当 事 者 か ら の 白紙 委 任 で は な い 。 ま た 、 議 会 制 民 主 主 義 が 当 事 者 を 十 全 に 代 表 す る こ と は で き な い 。 も と も と 、 民 主 主 義 本 来 の 姿 と い うべ き 直 接 民 主 主 義 の 代 替 と し て の 議 会 制 民 主 主 義 に は 不 十 分 さ が 付 き ま と う。 こ の た め 、 議 会 制 民 主 主 義 を 補 完 し 、 当 事 者 の 直 接 参 加 を 可 及 的 に 求 め る 参 加 民 主 主 義(participatorydemocracy)が. 繰 り返 し 主 張 さ れ る。 し か し な が ら 、 当 事 者 の 中 か ら 部 分 的 な 参 加 が 実 現. され て も 、 そ の 参 加 が 形 式 的 な 参 加 に と ど っ ま っ て い た り、 ま た 参 加 民 主 主 義 の ア リバ イ づ く りに 綾 小 化 され て し ま っ た り し て い る 事 態 を 反 省 し 、 近 年 、 単 な る 参 加 の 域 を超 え 、 熟 議 の 契 機 を よ り一 層 重 視 し た 熟 議 民 主 主 義(deliberativedemocracy)が. 提 唱 され 、 か つ 実 践 され て い る 。. 尚 、 国 民 投 票 や 住 民 投 票 と い う直 接 民 主 主 義 の 手 法 は 、 決 し て. 「民 主 主 義 の 誤 作 動 」 な ど で は な く 、 ま. し て や 議 会 制 民 主 主 義 を 否 定 す る も の で は な い 。 そ れ こ そ 、 議 会 制 民 主 主 義 を補 完 す る仕 組 み で あ る 。 翻 っ て 言 え ば 、よ り多 く の 当 事 者 が 関 与 す る 参 加/熟. 議/自. 己 決 定 を保 障 し な が ら議 会 制 民 主 主 義 を 補 完 し、. 民 主 主 義 の 強 化 を 目 指 す 必 要 が あ る と い え る。 した が っ て ま た 、 民 主 主 義 を議 論 す る と き 、 丸 山 眞 男 に 倣 えば、 「 永 久 革 命 と し て の 民 主 主 義 」 と い う動 態 的 な 捉 え 方 を加 味 す る 必 要 が あ る と い え よ う。 最 後 に 、 レ ジ ー ム(regime)と は 、 通 常 、 「体 制 」 と 訳 さ れ て い る が 、 法 制 度 や 仕 組 み 、 手 順 、 イ ン フ ォ ー マ ル な 不 文 律 や 「書 か れ ざ る ル ー ル 」 、慣 行 や し き た り な ど を 含 め た 、社 会 的 な 決 ま り事 の 総 体 を 意 味 す る。 ま た 、 レ ジ ー ム に は 、 そ の 決 ま り事 が 決 定 され る 実 質 的 な 政 策 決 定 の 場(venue)の. 設 定 とそ の 決 定 手. 順 が 含 ま れ る。. 3.脱 原 発 政 治 の 中 の 原 発 再 稼 働 2012年5,月. 、 北 海 道 電 力 泊 原 発3号. 機 の 停 止 に よ り、 国 内 に 設 置 され た54基. 全 て の 原発 か ら電 力 の 供. 給 が 途 絶 え た わ が 国 は 、 最 早 、 電 力 供 給 を 原 発 に 頼 ら な く な っ て い る と い う観 点 か ら す る と 、 近 未 来 に お い て 脱 原 発 が 完 了 し た 状 態 を 、 疑 似 体 験 し て い る と い え る。 全 て の 原 発 が 稼 働 せ ず 、 原 発 由 来 の 電 力 が 全 く供 給 され て い な い に も か か わ らず 、 経 済 活 動 や 電 化 生 活 が 営 ま れ て い る こ と は 、 否 定 す る こ と が で き な い 、 そ れ こ そ 紛 れ の な い 客 観 的 な 事 実 で あ る。 脱 原 発 政 治 を議 論 す る場 合 、 こ の 事 実 を 出 発 点 に 据 え て 議 論 す る必 要 が あ る。3.llの. 後 、柄 谷 行 人 が. と が 見 え て く る の で あ る 」(柄 谷2011:27)と. 「 原 発 の廃 棄 を通 して の み 、 つ ぎの な す べ き こ と、 な し うる こ 指 摘 した 。3.llか. ら1年. が 経 過 し、 脱 原 発 を め ぐ る 政 治 は 、. 原 発 廃 棄 → 原 発 由 来 の 電 力 供 給 ゼ ロ と い うプ ロ セ ス が 逆 と な り、 改 め て 原 発 由 来 の 電 力 供 給 ゼ ロ と い う出 発 点 か ら原 発 の 廃 棄 に 着 手 し つ つ 、 柄 谷 の 言 う 「つ ぎ の な す べ き こ と 、 な し う る こ と 」 を 見 定 め て い く ア リ ー ナ(闘. 技 場)に. お い て 展 開 され よ う と し て い る 。 そ れ こ そ 、 「堅 い 板 に 力 を こ め て じ わ っ じわ っ と 穴 を. く り貫 い て い く 作 業 」(ウ ェ ー バ ー)で. あ る 政 治 の 見 せ 所 で あ る。. ま ず 、 確 認 し な け れ ば な ら な い の は 、 電 力 供 給 を原 発 に 頼 ら ず 、 経 済 活 動 や 電 化 生 活 が 営 ま れ て い る と.
(5) 33. い う客 観 的 事 実 に 附 帯 す る こ と の 意 味 で あ る。 そ の 意 味 は 、 実 は 、 極 め て 単 純 明 快 で あ る が 、 余 り に も 重 大 で あ る。 す な わ ち 、 そ の 意 味 と は 、 「 原 発 を 必 要 と し て い な い 」、 こ の 単 純 明 快 、 か つ ま た 意 味 深 長 な 一 言 に 集 約 で き る。 こ れ ま で 、 「原 発 を 前 提 に 経 済 と生 活 が 成 り立 っ て い る 」 と い う原 発 神 話 を拠 り所 に し な が ら原 発 が 推 進 され て き た わ け で あ る が 、 原 発 が 必 要 と さ れ な け れ ば 、 こ の 原 発 神 話 に 終 止 符 が 打 た れ る 次 第 で あ る。 巨 大 地 震 と 大 津 波 に よ っ て メ ル トダ ウ ン が 起 き 、そ の メ ル トダ ウ ン に よ っ て 惹 起 さ れ た 水 素 爆 発 に よ り、 大 量 の 放 射 性 物 質 が 漏 出 す る と い う福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 の 過 酷 事 故 は 、 こ れ ま で 国 策 と し て の 原 発 を 推 進 す る た め に 喧 伝 さ れ て き た 原 発 神 話 を も 吹 き飛 ば した 。 附 言 す る と、2011年6月6日 安 院 は 大 気 中 に 放 出 され た 放 射 性 物 質 の 総 量 を77万 島 第 一 原 発 の 地 下 に 漏 出 し た 高 濃 度 汚 染 水 は72万 こ の2つ. の 数 字 を 合 わ せ る と149万. 射 性 物 質520万. 、 原 子 力 安 全 ・保. テ ラ ベ ク レ ル 、 ま た2011年6月3日. テ ラ ベ ク レ ル(10万5,100ト. 、東 京 電 力 は福. ン)と そ れ ぞ れ 発 表 した が 、. テ ラ ベ ク レル と な り、 そ れ は チ ェ ル ノ ブ イ リ原 発 事 故 で 放 出 さ れ た 放. ベ ク レル の28.65%に. あた る。. さ て 、原 発 神 話 は 単 純 な ナ ラ テ ィ ブ か ら構 成 さ れ た 幾 つ か の 言 説 か ら 成 り立 っ て き た が 、そ れ に 対 して 、 一 部 を 除 い て 多 く の 市 民 は 疑 い を 差 し挟 む こ と も な く 、原 発 神 話 は い わ ば 不 可 侵 の 神 話 と し て 君 臨 し 、3.11 ま で は 揺 る ぎ の な い 正 当 性 を 確 保 し て い た 。 概 ね 、 原 発 神 話 は 、4つ 話:「. 日本 の 原 発 は 安 全 で あ る 」(最 も よ く 指 摘 さ れ て き た. の 神 話 か ら成 り立 っ て い た 。 第1神. 「安 全 神 話 」 で あ り、 原 子 炉 は. 「五 重 の 壁 」 で. あ る燃 料 ペ レ ッ ト、 燃 料 棒 被 覆 菅 、 原 子 炉 圧 力 容 器 、 原 子 炉 格 納 容 器 、 お よ び 原 子 炉 建 屋 に よ っ て 防 護 さ れ て い る と語 ら れ て き た)。 第2神. 話:「 原 発 は 二 酸 化 炭 素 を排 出 し な い ク リー ン ・エ ネ ル ギ ー で あ り、 温. 暖 化 対 策 の 切 り札 で あ る 」。 第3神. 話:「 原 発 が 発 電 す る 電 気 は 安 い 」。 そ して 、 先 の 「 原 発 を前 提 に経 済 と. 生 活 が 成 り立 っ て い る 」 とい う言 説 が 第4神 と い う言 説 が 第5神. 話 に あ た る 。尚 、民 主 党 政 権 に よ り、 「原 発 は 成 長 産 業 で あ る 」. 話 と し て 付 け 加 え ら れ よ う と して い た が 、 い わ ば 神 話 化 の 揺 藍 期 に3.11と. これ ら の 原 発 神 話 は 、 福 島 第 一 原 発 事 故 に よ り、 第1神. 話 は 地 震 ・津 波 列 島 と い うべ き 日本 列 島 の 沿 岸. 部 に 立 地 し て い る 「日本 の 原 発 は 安 全 とは い え な い 」、第2神 射 性 物 質 、就 中 、 プ ル トニ ウ ム を 漏 出 し か ね な い 」、第3神. 遭 遇 した。. 話は 「 原 発 は 二 酸 化 炭 素 よ り遥 か に 危 険 な 放. 話 は莫 大 な原 発 事 故 処 理 費や 使 用 済 み核 燃 料 の. 中 間 貯 蔵 費 だ け を 勘 定 し て も 「原 発 が 発 電 す る 電 気 は 決 して 安 く な い 」、 と い う よ う に 、そ れ ぞ れ の ナ ラ テ ィ ブ の 構 成 が 否 定 形 で 書 き 換 え られ る か の よ うに 、 そ の 神 話 性 が 剥 奪 さ れ た 。 か く し て 、 原 発 神 話 か ら そ の 神 話 性 が 剥 奪 さ れ る 事 態 は 、 国 策 と して 原 発 を推 進 し て き た 原 発 政 策 の 正 当 性 が 地 に 落 ち た こ と を 意 味 す る の で あ る。 但 し、 関 西 電 力 大 飯 原 発 の 再 稼 働 を め ぐ り、 第4神 際 で 粘 りを 見 せ て い る。 か つ て 、 「 原 発 を 前 提 に 経 済 と生 活 が 成 り立 っ て い る 」 と い う第4神 る 際 、 発 電 電 力 量 の3割. 話 は 土俵. 話 が 説 明 され. を原 発 が 占 め て い る の で 、 原 発 が な け れ ば 、 日本 の 経 済 活 動 や 市 民 生 活 は 成 り立. た な い 、 そ れ 故 に 原 発 は 必 要 で あ る 、 と い う言 説 が 加 え ら れ た 。 こ の. 「3割 」 が 第4神. 話の数字上の根拠. だ っ た 。 と こ ろ が 、54基 全 て の 原 発 か ら電 力 が 供 給 され な く な っ て も 、 日本 の 経 済 活 動 や 市 民 生 活 は 成 り 立 っ て い る。 こ れ が 厳 然 た る事 実 で あ る。 原 子 力 資 料 情 報 室 の 『原 子 力 市 民 年 鑑2011-12』 備 の 最 大 出 力 は 、2億8,135万kWで 発 電 施 設 の 最 大 出 力 は2億2,224万kWと 録 し た1億7,633万kWで 2,224万kWを. を 縮 く と 、2010年3.月. 末 現 在 の 時 点 で 、 日本 の 発 電 設. あ っ た 。 こ の 数 字 か ら 、 原 発 の 最 大 出 力4,911万kWを な る 。 ち な み に 、2010年. 引 く と、 他 の. の 電 力 ピ ー ク は 、8月23日15時. に記. あ っ た 。 そ の 電 力 ピ ー ク に 対 して 、 原 発 由 来 の 電 力 が な く と も 、 最 大 出 力2億. 有 す る 発 電 設 備 に は 、 な お も4,591万kW(約20%)の. 電 力供 給 能 力 の 余裕 が あ る。 尚、 最. 大 出 力 と は フ ル 稼 働 状 態 の 電 力 供 給 能 力 を 意 味 す る の で あ る が 、 現 実 的 に は 、 法 定 点 検 や 何 等 か の トラ ブ ル を 見 越 し て 、9割 程 度 の 稼 働 率 を 措 定 した 方 が 現 実 的 で あ る の で 、最 大 出 力2億2,224万kWか. ら1割. を.
(6) MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.30(2012). 34. 引 き 、 最 大 出 力 を2億kWに 万kWの. 措 定 す る と し て も 、 そ れ で も 電 カ ピ ー ク 時 の1億7,633万kWに. 対 し 、2,367. 余 裕 が あ る。. こ の よ うに 、54基. 全 て の 原 発 か ら電 力 が 出 力 され な く と も 、 他 の 発 電 設 備 だ け で 、8月. の 電 力 ピー ク時. に も十 分 対 応 し え る の で あ る。京 都 大 学 原 子 炉 実 験 所 助 教 の 小 出 裕 章 が 言 う よ う に 、「 原 発 をや めて も電 力 は 不 足 し な い 」 の で あ る(小. 出2012:191)。. で は 、 何 故 に 、 か つ て 発 電 電 力 量 の3割. を原 発 が 占 め て い た. の か と い う と 、 そ れ は 原 発 の 稼 働 率 を 上 げ 、 反 対 に 火 力 発 電 所 の 稼 働 率 を 下 げ た た め 、 結 果 的 に(と よ りは 意 図 的 に)、 総 発 電 量 の 割 合 が 力 の3割. 「3割 」 と い う数 字 に な っ て い た に 過 ぎ な い(念. い う. の た め 、電 力供 給 能. で は な い)。 繰 り返 す が 、 日本 に は 、 原 発 が な く と も 、 電 力 需 要 を 賄 え る だ け の 発 電 能 力 が あ る。. さ て 、脱 原 発 政 治 の 焦 点 は 、 日本 全 体 か ら 、福 井 県 に あ る 関 西 電 力 大 飯 原 発3・4号 はll8万kW)の. 再 稼 働 に 移 っ た 。 関 西 電 力 は 、 原 発 の 再 稼 働 が な け れ ば 、2012年. 管 内 の 電 力 が 約15%不. 機(と. もに 最 大 出 力. 夏季 に お け る関 西 電 力. 足 す る 事 態 を 招 く恐 れ が あ る と発 表 し た 。 尚 、 関 西 電 力 と北 海 道 電 力 ・九 州 電 力 以. 外 の 電 力 会 社7社. は 、 今 夏 、 原 発 が な く と も 、 電 力 需 要 を賄 え る だ け の 発 電 能 力 が あ る と発 表 して い る 。. ち な み に 、2010年. 夏 季 と比 較 し 、 北 海 道 電 力 は1.9%、. 九 州 電 力 は2.2%、. そ れ ぞ れ 電 力 の供 給 が 不 足 す る. と し て い る。 2012年5,月24日 も 、2010年. 、関 西 電 力 は 、 「 今 夏 の 需 給 見 通 し と節 電 の お 願 い に つ い て 」 を 発 表 し 、2012年. 同 様 の 猛 暑 が 襲 う と想 定 した 上 で 、 電 力 需 要 の ピー ク 時 に は2,987万kWの. れ る が 、 関 西 電 力 の 擁 す る全 て の 原 発(美 電 力 は2,542万kWで. あ り、 差 し引 き405万kW(14.9%)の. 内 訳 を 見 る と 、 火 力1,472万kW、 由 来 の 電 力)に. 水 力203万kWお. 、他 社 ・融 通644万kWが. 他 社 ・融 通522万kW、. 電 力 が 不 足 す る と し た 。 そ の2,542万kWの よ び 揚 水233万kWを. 合 わ せ て1,898万kW(非. 水 力225万kW、. 揚 水448. あ った 。. の 火 力 発 電 の 供 給 力1,415kWに57万kWが. が 供 給 で き る と し て い る が 、 そ の57万kWの. 原発. が 電 力 需 要 の ピ ー ク と な り、. あ り、 内 訳 は 火 力1,415万kW、. お よ び 原 発337万kWで. 火 力 発 電 に つ い て み る と 、昨 年8月. 電力消費が見込ま. 稼 働 して い な い た め 、 現 時 点 で供 給 しえ る. 加 わ る と い う。 尚 、昨 年 は8.月9日. そ の 時 点 に お け る 電 力 供 給 量 は2,947万kWで 万kW、. 浜 、 大 飯 、 高 浜)が. の今夏. う ち45万kWは. 加 算 され 、今 夏 は1,472kW. 、 長 期 計 画 停 止 中 の 和 歌 山 県 に あ る 海 南2. 号 機 の 再 稼 働 に よ っ て 得 られ る と し て い る。2012年4月20日. 、 和 歌 山県議 会 お よび 和 歌 山市議 会 の 両議. 長 は 、 関 西 電 力 本 社 を 訪 れ 、和 歌 山 市 内 で 建 設 が 中 断 し て い る液 化 天 然 ガ ス 火 力 発 電 所(370万kW)の 設 促 進 を 申 し入 れ た 。 尚 、 関 西 電 力 は 、 当 該 発 電 所 の 運 転 開 始 時 期 を 、 計 画 変 更 に よ り、2021年. 建 か らと し. て い る。 そ れ に し て も 、 何 故 に 、3.11以. 降 、脱 原 発 の 時代 の流 れ が 強 ま る中 、 関 西 電 力 は 、 天 然 ガ ス を用 い 、 ガ. ス タ ー ビ ン と蒸 気 タ ー ビ ン と を 組 み 合 わ せ た エ ネ ル ギ ー 効 率 の 高 い 、 コ ン バ イ ン ドサ イ クル 発 電 を 増 設 し て こ な か っ た の か 、 あ る い は ま た 既 存 の 火 力 発 電 所 の ボ イ ラ ー を 外 し て 、 ガ ス タ ー ビ ン に 置 き換 え 、 コ ン バ イ ン ドサ イ ク ル ・シ ス テ ム に 切 り替 え て こ な か っ た の か 、 疑 問 が 残 る。 コ ン バ イ ン ドサ イ クル 発 電 は 、 タ ー ビ ン1個. 分 で 、25∼30万kWの. コ ン バ イ ン ドサ イ クル 発 電 が8本. 発 電 が で き 、例 え ば 東 京 電 力 横 浜 火 力 発 電 所7号 設 置 さ れ て お り、原 発2・3基. 機 と8号. 機 には改良. 分 に 相 当 す る 発 電 能 力 が あ る と い う(藤 田. 2011:208-215)。 尚 、 先 の 原 子 力 資 料 情 報 室 の 『原 子 力 市 民 年 鑑2011-12』 電 能 力 は 、 火 力 設 備1,635万kWと. 水 力 設 備819.6万kWを. に よ れ ば 、2010年3,月 合 わ せ る と2,455.3万kW(非. と な り、 これ に 先 の 「お 願 い に つ い て 」 で 示 さ れ た 他 社 ・融 通644万kWを っ て 、 電 力 需 要 ピー ク 時 の2,987万kWに. 末 現 在 、 関 西 電 力 の発 原 発 由 来 の 電 力). 加 え る と 、3,099.3万kWに. 対 し も 、 若 干 で は あ る が 、ll2.3万kWの. な. 余 裕 が あ る。 この よ う. に 、原 子 力 資料 情報 室 が示 した数 値 に従 え ば 、 大飯 原 発 を 再稼 働 す る こ とな く、 関 西 電 力 管 内 の 電 力 需 要.
(7) 35. は賄 え る計 算 が成 り立 つ。 しか し、 関 西 電力 管 内 に お け る非原 発 由来 の 電 力 で 比 較 す る と、原 子 力 資 料 情 報 室 の2,455.3万kWと. 関 西 電 力 の1,898万kWと. で は、557.3万kWの. 差 が あ る。 お そ ら く、 この 差 は 、. 最 大 出力 と、過 去 の 出力 実績 か ら算 出 した供 給 力 との違 い か ら く る もの で あ ろ う。 か か る差 の違 い は 大 き く、結 局 の と ころ 、 そ の差 の違 い が 、原 発 再稼 働 の 必 要性 を分 か つ議 論 の 前 提 を築 い て い る こ とに 注 意 を 払 う必 要 が あ る。 それ に して も、 関 西 電力 が 大飯 原 発 の 再稼 働 に 固 執 す る理 由が奈 辺 に あ るか と詮 索 す れ ば 、 差 し当た っ て 再稼 働 とい う既 成 事 実 を創 る こ とに よ り、脱 原 発 に 対 す る拒否 権 プ レイ ヤ ー とな っ た原 発 ア ク ター に と っ て 、他 の原 発 の 再稼 働 に 向 け橋 頭 墨 を築 く意 味合 い が あ っ た こ とは 間 違 い な い 点 で あ ろ うが 、 そ れ だ け で は な い。 そ も そ も 、経 済 合 理 性 の観 点 か ら して、稼働 で き る既 存 の 原 発 を使 わ な い の は 「もっ た い な い 」 か らで あ る。 原 発 の 代替 と して火 力 発 電 所 の 比 重 が 高 ま る 中、 そ の火 力 発 電 所 が使 う液 化 天 然 ガ ス な どの 燃 料 価 格 が 高騰 し、 関 西 電力 も財 務 状 況 が悪 化 して しま い 、2012年3.月 期 の最 終 損 益 は2,422億 円の 赤 字 とな っ た。 それ 故 に 、火 力 発 電所 の増 設 や 高効 率化 の た め の 設備 投 資 に躊 躇 せ ざ るを えな い 。 先 に 疑 問 と して提 示 した 、火 力 発 電所 を コ ンバ イ ン ドサ イ クル に切 り替 え るな どの 大 胆 な設 備 投 資 が行 えな か った わ け で あ る。 した が っ て 、経 済合 理 性 の観 点 か らす る と、換 言 す れ ば コス ト削減 と利 潤 最 大化 とい う至 上命 題 の観 点 か らす る と、減 価 償 却 しつ つ あ る古 い原 発 の 再稼 働 が 最 も合 理 的 な選 択 肢 とな る。 2012年6月8日. 、 野 田佳 彦 首 相 は 、 「これ ま で 全 体 の 約3割 の 電 力供 給 を担 って き た 原発 を、 止 めて し. ま っ て は 、 あ るい は 止 め た ま ま で あ っ て は 、 日本 の社 会 は 立 ちゆ か な い 」、 そ れ 故 、 「 国 民 の 生活 を守 るた め に 、大飯 原 発3・4号 機 を再 起動 す べ き だ とい うの が 私 の判 断 だ 」 と表 明 した。 この 「日本 の社 会 は 立 ち ゆ か な い 」 とい う表 現 は 、 民 主 党 は 「 脱 原 発 依 存 」 の看 板 を下 げ 、 あ た か も 「 原 発 依 存 」 に 戻 る こ と を告 げ た 宣言 に も聞 き 取 れ る。 ま た 、枝 野 幸 男 経 済 産 業 大 臣 は、 「 エ ネ ル ギー 安 全 保 障 とい う観 点 か らも、原発 は重 要 な電 源 で あ る」 と加 え た。 それ に 、奇 し くも 、原発 第4神 話 を支 えて きた 「3割」 に も言 及 した 野 田の発 言 は 、 これ を契 機 に、 「 原 発 を前 提 に経 済 と生活 が成 り立 っ て い る」 とい う第4神 話 の 建 て 直 しを企 図 す る意 思 が伝 わ っ て く る よ う に も思 え る。大 飯 原 発3・4号 機 の再 稼 働 は、関 西 電 力 管 内 を対 象 と した 地 域 限 定 の 問 題 で あ って 、そ れ が 勢 い 「日本 の社 会 は 立 ち ゆ か な い 」 と して 、 日本 社 会全 体 に 範 囲 が飛 躍 す るの は 納 得 で き な い し、 ま た 電 力需 要 が ピー ク とな る夏季 を対 象 と した期 間 限 定 の 問題 が 、これ ま た 勢 い が つ き 「 夏 場 限 定 の 再稼 働 で は 、 国 民 生活 は 守れ な い 」 と して 、期 間 の範 囲 を 夏 場 以 降 に 拡 張 す るの も納 得 で き な い。 果 た して 、 野 田に は脱 原 発 の 政 治 哲 学 が あ るの か 疑 わ しい 。 本 来 、脱 原 発 へ 向 か う途 上 にお い て 、 電 力 供 給 が 一 時 的 に 逼迫 す る こ とが 予測 され る関 西 電力 管 内 に 対 し、や む を得 ず 、大 飯 原 発3・4号 機 を再稼 働 させ 不 足す る電 力 を賄 い 、急 場 を凌 こ うとす る苦渋 の判 断 で あ る こ と を、 国 民 に 対 し最 低 限 訴 え るべ きで は な か っ た か。野 田 の発 言 の 中 に 、「 電 力 価 格 が高 騰 す れ ば、 中小 企 業 や 家 庭 に影 響 が 及 び 、空洞 化 が加 速 して雇 用 の場 が 失 わ れ る」 とあ るが 、 こ こに 野 田の本 音 が垣 間 見 られ る。 ま た 、 野 田政 権 に お い て 、 守 る べ き 主 要 な 対象 とは 、燃 料 価 格 の 高騰 に よ り財 務 状 況 が 悪化 して い る電 力 会社 な の で は な い か。 野 田の発 言 を 注意 深 くみ る と、原 発 第4神 話 の建 て 直 しとい うよ りも、 電 力 不 足 → 経 済 活 動 と市 民 生 活 に支 障→ 原 発 再 稼 働 とい うロジ ッ クをべ 一 ス に 、「 原 発 が ない と経 済 と生 活 に支 障 を来 す 」とい う新 た な 第 4神 話 を創 ろ う とす る思 惑 が 伺 わ れ る。 新 旧第4神. 話 の 差 異 は 、言 説 の 前提 が原 発 の稼 働 中 と停 止 中の 違. い で あ るが 、 旧第4神 話 は稼 働 中 の原 発 を そ の ま ま継 続 して稼 働 す れ ば それ で よ か っ た の に対 し、新 第4 神 話 は 、3.ll以 降 に お い て 、停 止 中の原 発 を 再稼 働 しな け れ ば な らな い の で 、 一 定 の 政 治 的 作 為 を必 要 と して い る点 で あ る。大 飯 原 発 の再 稼 働 に あ た っ て 、最 早 、「 原 発 を前 提 に経 済 と生 活 が 成 り立 って い る」 と い う旧第4神 話 を い く ら喧伝 して もそ の説 得 力 を欠 き 、 そ こで 「 原 発 が な い と経 済 と生 活 に支 障 を来 す 」.
(8) MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.30(2012). 36. と い う新 第4神. 話 の 創 造 が 必 要 と な っ た と い え よ う。. こ う し て 、 野 田 の 政 治 的 作 為 に よ っ て 新 第4神 し く、 む しろ. 話 が 創 造 さ れ た が 、 そ れ は 神 話 に して は 、 余 りに も 弱 々. 「 原 発 が あ る か ら 経 済 と 生 活 に 支 障 を 来 す 」 と も 、 反 論 さ れ る で あ ろ う。 ま し て や 、 当 面 の. 電 力 不 足 を 踏 ま え 、 節 電 ビ ジ ネ ス の 商 機 を 見 据 え て い た 企 業 や 節 電 生 活 を 覚 悟 して い た 市 民 に 対 し水 を 差 す こ と と な っ た 。毎 日新 聞 が 行 っ た2012年6月2日. ・3日 の 全 国 世 論 調 査 に お い て 、関 西 電 力 大 飯 原 発3・. 4号 基 の 再 稼 働 に つ い て 、 「 急 ぐ必 要 が な い 」 と答 え た 人 は71%に. 達 して い た。 時代 の流 れ は 、民 主 党 政 権. や 野 党 自 民 党 が 思 っ て い る よ り も 、 全 原 発 稼 働 停 止 と い う事 態 を 前 提 に 、 即 時 原 発 廃 止 に 等 しい ほ ど 、 脱 原 発 へ 向 け て 大 き く流れ 出 して い るの か も知れ な い。 菅 直 人 が 打 ち 出 した. 「 脱 原 発 依 存 」 を継 承 す る と し て い る 、 民 主 党 政 権3代. 目の 首 相 と な る 野 田佳 彦 が. 行 う脱 原 発 へ の 舵 取 りは 、 極 め て 消 極 的 と い う よ り も否 定 的 で す ら あ る。 な る ほ ど確 か に 、 関 西 電 力 管 内 に お け る電 力 需 給 と の 関 係 で 、 脱 原 発 に 対 し冷 静 か つ 慎 重 で あ り現 実 的 な 姿 勢 で 対 処 し て い る と 、 野 田 を 贔 屓 目 に 評 価 す れ ば 、 そ れ ま で で あ る が 、 野 田 は 脱 原 発 と原 発 再 推 進 と い う反 対 方 向 の 政 治 的 ベ ク トル に 引 っ 張 られ な が ら も 、 い ま 見 た よ うに 、 逼 迫 が 予 想 され る今 夏 の 電 力 需 要 を 理 由 に 、 「 原 発 は 必 要 で あ る」 と して 大飯 原 発 の 再稼 働 を判 断 した。 大飯 原 発 の 再稼 働 を先 例 に して 、 四 国 電 力伊 方原 発 、 九州 電 力 玄海 原 発 の 再 稼 働 が 予 定 され て い る。 こ う して 、 原 発 由 来 の 電 力 供 給 ゼ ロ とい う事 態 は 、 即 時 廃 炉 も し く は10 年 後 ま で に は 廃 炉 と い う出 発 点 と し て は 使 わ れ ず 、 む し ろ 原 発 を. 「 止 め た ま ま で あ っ て は 、 日本 の 社 会 は. 立 ち ゆ か な い 」 と し て 原 発 再 稼 働 の た め の 出 発 点 に 位 置 付 け られ た 。政 府 は40年. 後 を脱 原 発 の 完 了 時 点 と. す る が 、 こ の よ う な 時 間 設 定 は 既 存 の 原 発 の 再 稼 働 を 容 認 し え る し 、 「脱 原 発 依 存 」 の ス ピ ー ド ・ダ ウ ン に も使 え る。 それ に して も、何 故 に 、 野 田は 菅 の. 「 脱 原 発 依 存 」 を継 承 し な が ら も 、 脱 原 発 に 向 け て 熱 意 を傾 注 で き. な い の で あ ろ うか 。 そ れ は 、 民 主 党 内 を含 め 、 原 発 を 再 び 推 進 し た い 原 発 ア ク タ ー の 政 治 力 学 に 抗 し き れ な い か らで あ る こ とは容 易 に 察 しが つ くが 、 問題 は 、 そ うした 野 田の. 「 原 発 は 必 要 で あ る 」 と い う政 治 的. 意 思 が 、脱 原 発 へ 向 か うべ き ガ バ ナ ン ス の 舵 取 り を 、曇 らす と ご ろ か 、 「原 発 は 必 要 と され な い 」 と い う時 流 と 民 意 か ら外 れ 、 む し ろ誤 らせ る こ と に 帰 結 しな い か と 、 今 後 、 危 惧 さ れ る 次 第 で あ る。 日本 史 研 究 家 の ジ ョ ン ・ダ ワ ー は 、3.llの 後 に 、 「国 や 社 会 の 歴 史 に お い て も 、 突 然 の 事 故 や 災 害 で 、 何 が 重 要 な こ と な の か 気 づ く 瞬 間 が あ りま す 。 す べ て を 新 しい 方 法 で 、 創 造 的 な 方 法 で 考 え 直 す こ と が で き る ス ペ ー ス が 生 ま れ る の で す 。関 東 大 震 災 、敗 戦 とい っ た 歴 史 的 瞬 間 は 、こ う した ス ペ ー ス を 広 げ ま した 。 そ し て い ま 、 そ れ が 再 び 起 き て い ま す 。 し か し 、 も た も た し て い る う ち に 、 ス ペ ー ス は や が て 閉 じて しま うの で す 」(『朝 日新 聞 』2011年4.月29日)と. 語 っ た が 、 野 田 の 発 言 が ダ ワ ー の い う 「ス ペ ー ス 」 を 閉 じ. る 「 始 ま りの 始 ま り」 に な ら な け れ ば よ い が と 思 う次 第 で あ る。. 4.脱 原 発 政 治 とガ バ ナ ン ス 転 換 「 官 僚 主 導 」 に 対 し 、今 と な っ て は 、 か な り色 槌 せ て し ま っ た 感 が あ る が 、 「政 治 主 導 」 を 打 ち 出 し た 民 主 党政 権 に とっ て 「 脱 原 発 依 存 」 こそ 、 「 政 治 主 導 」 の な せ る 技 で あ っ た 。 こ れ ま で の 原 発 推 進 と い う国 策 を 、脱 原 発 へ転 換 し えた の は 、 官 僚 で は な く民 主 党 政権 の. 「政 治 主 導 」 に よ っ て で あ っ た 。 菅 直 人 が 首 相. 在 職 中 に 「脱 原 発 依 存 」 に 踏 み 切 っ た が 、 最 早 、 「脱 原 発 依 存 」 は 菅 の 個 人 的 見 解 を 超 え 、周 知 の 通 り、 後 継 の 野 田佳 彦 政 権 に も継 承 され た 。 し か し な が ら 、冷 静 に 顧 み れ ば 、 「脱 原 発 依 存 」 は 福 島 第 一 原 発 事 故 と い う未 曾 有 の. 「 外 生 的 シ ョ ッ ク(exogenousshock)」. に よっ て 、 そ の 正 当性 が 担保 され て い るに過 ぎな い。. 「 脱 原 発 依 存 」 は 正 当 性 を 獲 得 し た も の の 未 だ に 原 初 的 で あ り、 「脱 原 発 依 存 」 を 実 行 し、 か つ ま た 一 定 の 成 果 を あ げ る に は 、 脱 原 発 政 治 の 課 題 が 多 く残 っ た ま ま で あ る。.
(9) 37. 教 科 書 的 な 政 治 の 手 順 か らす る と 、 調 整 と 妥 協 と合 意 そ して 決 定 へ 至 る 政 治 過 程 の 中 で 、 併 せ て 正 当性 を 獲 得 し て い く わ け で あ る が 、 「外 生 的 シ ョ ッ ク 」 に よ っ て 掌 中 に 収 め る こ と に な っ た 正 当 性 の 場 合 、順 序 が 逆 と な り、 調 整 ・妥 協 ・合 意 ・決 定 が 後 か ら 付 い て く る か た ち と な る。 も ち ろ ん 、 統 治 者 も し く は 政 府 は 、今 後 、調 整 ・妥 協 ・合 意 ・決 定 を 大 変 有 利 に 推 し進 め る こ と が き る 、 い わ ば 政 治 的 ア ドバ ン テ ー ジ(有 利 性)に. 立 脚 し て い る。. そ れ で は 、 民 主 党 政 権 が 政 治 的 ア ドバ ン テ ー ジ に 立 脚 しな が ら脱 原 発 政 治 を進 め. 「 脱 原 発 依 存 」 を実 現. し え る か と い う と 、 そ う簡 単 な わ け で も な い 。 脱 原 発 政 治 を進 め る た め に は 、 こ れ ま で 国 策 と さ れ て き た 原 発 推 進 と い う国 家 の 基 本 政 策 を 転 換 す る わ け で あ る か ら 、i)「. 脱 原 発 ガ バ ナ ン ス 」 の 確 立 、i)「. 脱原. 発 民 主 主 義 」 と の 呼 応 、iii)「 原 発 レ ジ ー ム 」 の 解 体 と 「 脱 原 発 レ ジ ー ム 」 へ の レ ジ ー ム 転 換 、iv)原. 発推. 進 か ら脱 原 発 へ の エ ネ ル ギ ー 政 策 転 換 、V)脱. 原 発 関 連 産 業 と の 連 携 お よ び 環 境 産 業 革 命 の 推 進 、vi)市. 民 社 会 に お け る脱 原 発 団 体 と の 連 携 な ど の 政 治 的 課 題 に 取 り組 む 必 要 が あ る。 中 で も 、 「脱 原 発 ガ バ ナ ン ス 」 の 確 立 が 重 要 で あ る 。政 府 が 脱 原 発 を 成 功 裡 に 推 し進 め る た め に 官 邸 や 官 僚 機 構 を再 編 し 「 パ ブ リ ッ ク ・ガ バ ナ ン ス(publicgovernance)」 や 市 民社 会 セ クタ ー お よび研 究者 や 文化 人 な どの バ ナ ン ス(networkgovernance)」. を 構 築 して. を確 立 す る と と も に 、 市 場 経 済 セ ク タ ー. 「 脱 原 発 ア クタ ー 」 との 間 で新 た な. 「ネ ッ トワ ー ク ・ガ. 「原 子 カ ム ラ 」 とい う政 策 コ ミ ュ ニ テ ィ に 対 抗 し 、 か つ ま た. 原 発 代 替 と な る 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー を 地 域 社 会 に お い て 普 及 ・拡 大 し つ つ 、 小 規 模 分 散 型 の エ ネ ル ギ ー 自 給 シ ス テ ム の 構 築 に つ と め る ソ ー シ ャ ル ・ガ バ ナ ン ス を 強 化 す る必 要 が あ る。 「 ネ ッ トワ ー ク ・ガ バ ナ ン ス 」 と は 、 当 該 政 策 領 域 の 政 府 、 官 僚 、 市 場 経 済 セ ク タ ー 、 市 民 社 会 セ ク タ ー 、 お よ び 学 者 ・知 識 人 な ど の キ ー ・パ ー ソ ン が. 「 政 策 ネ ッ トワ ー ク(policynetwork)」. 協 働 の 度 合 い 」 が 高 く 、 「ネ ッ トワ ー ク 管 理(networkmanagement)」 る(ゴ. ー ル ドス ミス&エ. ッ ガ ー ズ2006:21)。. に 結 ば れ 、 「官 民. の能 力 が 高 い ガバ ナ ンス の こ とで あ. 「 政 策 ネ ッ トワ ー ク 」 の 利 点 は 、 特 定 の 政 策 領 域 に お い て 、. 「 政 策 ネ ッ トワ ー ク 」 に 参 加 す る メ ン バ ー が 自 主 的 に 資 源 を 持 ち 寄 りな が ら 、 政 策 課 題 を解 決 し て い く 関 係 性 に あ る(風. 間2011:129)。. 政 府 が ネ ッ ト ワ ー ク ・ガ バ ナ ン ス の 経 験 と 学 習 を積 み 重 ね る に し た が い 、. 政 府 は 「ネ ッ ト ワ ー ク 管 理 」 の 能 力 に 長 け て い く。 「ネ ッ トワ ー ク 管 理 」 と は 、 市 場 経 済 セ ク タ ー や 市 民 社 会 セ ク タ ー な ど か ら 、人 材 を リク ル ー トし つ つ 、政 策 課 題 の 解 決 に 役 立 て る こ と で あ る。 ま た 、政 府 は 「政 策 ネ ッ トワ ー ク 」 の メ ンバ ー か ら 貴 重 な 助 言 を 得 る だ け で は な く 、 そ の メ ン バ ー の 紹 介(他. 薦)に. よ り有. 能 な 新 規 参 入 者 と し て の 人 材 を 新 た な メ ン バ ー に 加 え る こ と も で き る。 ま た 、 政 府 は 都 合 が 悪 く な っ た メ ンバ ー を 、 差 し 障 りな く 、 ネ ッ トワ ー ク か ら退 場 させ る こ と も で き る。 そ して 、 政 府 は 、 特 定 の 政 策 課 題 を 解 決 す る た め に 、 「政 策 ネ ッ トワ ー ク 」 に 関 係 す る メ ン バ ー を エ ー ジ ェ ン シ ー の 代 表 に 仕 立 て 、 例 え ば 、 特 定 の 企 業 やNGO・NPOが. 有 す る課 題 解 決 能 力 を 政 策 執 行 の 場 面 に 生 か そ う と す る 、 巧 み な 間 接 統 治 と. し て の 「ネ ッ トワ ー ク ・ガ バ ナ ン ス 」 を 行 う こ と が で き る 。 こ う して 、 政 府 は 、 「 ネ ッ トワー ク管 理 」 を 自 らの 資源 とす る と と もに 、 「 政 策 ネ ッ トワ ー ク 」 も 新 た な 資 源 と し て 得 られ る 場 合 が あ る 。 こ れ が 「第 二 世 代 ガ バ ナ ン ス 論 」 の 知 見 で あ る。. 「 脱 原 発 民 主 主 義 」 と の 呼 応 に つ い て み る と 、 政 治 的 ア ドバ ン テ ー ジ を 使 い 、 さ ら に そ の ア ドバ ン テ ー ジ を 高 め て い く た め に は 、政 権 リー ダ ー が 直 接 国 民 に メ ッセ ー ジ を 送 り、民 意 の 支 持 を 集 め 、「脱 原 発 依 存 」 の 正 当 性 を 強 固 な も の に す る こ と が 肝 要 と な る。 こ れ は 、 政 権 → 国 民 、 も し く は. 「パ ブ リ ッ ク ・ガ バ ナ ン. ス 」 → 民 主 主 義 と い う図 式 で あ る。 こ こ で 、 こ の 図 式 を反 転 し 、 民 主 主 義 を 起 点 に 捉 え 返 し て み た い 。 政 権 リー ダ ー が 直 接 国 民 に 向 け て メ ッ セ ー ジ を 送 り、 そ の 反 応 を伺 うの は 、 代 表 制 民 主 主 義 と 直 接 民 主 主 義 の 中 間 的 な 形 態 で あ る 、 受 動 的 な 世 論 民 主 主 義 と い え る 。 代 表 制 民 主 主 義 を 通 じ、 と りわ け 選 挙 を 通.
(10) MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.30(2012). 38. じて 、 有権 者 に 単 一 争 点 の選 択 を迫 るの は 、選 挙 が 多様 な争 点 を含 む 故 に 、 半 ば虚 構 で あ る。 む しろ、 単 一争 点 の選 択 は. 、国 民 投 票 と い う直 接 民 主 主 義 が 望 ま し い が 、そ れ を 行 う の は 容 易 で は な い 。そ うす る と 、. 政 権 リー ダ ー が 提 起 す る争 点 を 、 国 民 が 受 け 取 り、 そ れ を 民 意 と い うか た ち で 送 り返 す 世 論 民 主 主 義 が 現 実 的 で あ る。 そ の 場 合 の 民 意 は 、 メ デ ィ ア な ど の 世 論 調 査 や 市 民 社 会 に お け る社 会 運 動 の 反 応 と い うか た ち で 表 明 さ れ る。 尚 、 こ の よ うな 受 動 的 な 世 論 民 主 主 義 に は 代 表 制 民 主 主 義 を補 完 す る 効 果 が 認 め ら れ る が 、 政 権 は も ち ろ ん 国 民 そ し て メ デ ィ ア に 対 し 、 世 論 操 作 と感 情 政 治 の 悪 弊 に 陥 ら ず 、 理 性 の 政 治 が 通 用 す る よ うに 、 そ の 政 治 的 習 熟 が 求 め ら れ る。 また、「 受 動 的 」 に 対 す る 、能 動 的 な 世 論 民 主 主 義 と は 、 市 民 社 会 が 争 点 を 提 起 し 、 そ れ に 反 応 した 市 民 の 民 意 を 政 権 へ 投 げ 掛 け 、 代 表 制 民 主 主 義 を 活 性 化 す る ス タ イ ル で あ る。 い ず れ に し て も 、 世 論 民 主 主 義 とい う 「 新 し い 政 治 」 の 一 つ の ス タ イ ル は 、 民 主 主 義 を 代 表 制 民 主 主 義 に よ る 政 権 へ の 全 権 委 任(シ. ュム. ペ ー タ ー 的 な 「お 任 せ 民 主 主 義 」)と 看 倣 す の で は な く、 時 に 、政 権 と 国 民 ・市 民 が 向 き 合 い 、 重 要 な 争 点 に つ い て 、 民 意 を 確 認 ・表 明 で き る 政 治 的 機 会(politicaloppo血lnities)を. 増 設 す る こ と に な る が 、 「脱 原 発. 民 主 主義 」 に は 民 主 主義 の成 熟 を促 す政 治 的役 割 が 期待 され て い る と考 え られ る。 と ころ で 、 「 脱 原 発 依存 」 を提 唱 した 菅 政権 の 後継 で あ る野 田政 権 は 、 「 脱 原発 依 存 」 に 向 けて 、 然 るべ き 政 治 的 メ ッ セ ー ジ を 国 民 に 向 け て 発 し て い は い な い 。 む し ろ 、先 に 見 た よ う に 、大 飯 原 発3・4号 稼 働 に 際 し 、 原 発 第4神. 機 の再. 話 の 建 て 直 し を 企 図 す る よ うな メ ッ セ ー ジ を 発 した だ け で あ る 。 も と も と 、 野 田. は 直 接 国 民 に メ ッ セ ー ジ を 送 る の を好 ま な い よ うで あ り、 今 回 の 大 飯 原 発 再 稼 働 で は 、 西 川 一 誠 福 井 県 知 事か ら 「 脱 原 発 依 存 」 路 線 の 再 転 換 を 迫 ら れ 、 国 民 に メ ッ セ ー ジ を発 し た 経 緯 が あ る。 か つ て 、 小 泉 純 一 郎 首 相 が 、 ス ピ ン ド ク タ ー の 飯 島 勲 首 相 秘 書 官 の 進 言 を 受 け 入 れ 、1日. に2回. 、 ぶ ら さ が り取 材 の 場 を 設. け 、 「ワ ン フ レ ー ズ ・ポ リテ ィ ク ス 」 とい うサ ウ ン ド ・バ イ ト(決 め セ リフ)の. 効 い た メ ッセ ー ジ を国 民 に. 向 け て 発 し て い た の と較 べ 実 に 好 対 照 で あ る。 野 田 が 行 うべ き だ っ た こ と は 、 脱 原 発 と い う極 め て 重 要 な 政 治 選 択 の 正 義 を 、 熱 意 を も っ て 、 しか も 冷 静 に 語 る よ うに 、 直 接 国 民 に 向 け て メ ッ セ ー ジ を 発 し、 脱 原 発 の 正 当 性 の ア ドバ ン テ ー ジ を さ ら に 高 め る こ と で あ っ た 。 強 固 な 正 当 性 に 定 礎 され て こ そ 、 「脱 原 発 ガ バ ナ ン ス 」 の 確 立 、 「 原 発 レ ジ ー ム 」 と解 体 、 「 脱 原 発 レ ジ ー ム 」 へ の レ ジ ー ム 転 換 、 原 発 推 進 か ら脱 原 発 へ の エ ネ ル ギ ー 政 策 転 換 を推 し進 め る こ と が で き る。 福 島 第 一 原 発 事 故 を 深 刻 に 受 け 止 め た ドイ ツ の メ ル ケ ル 首 相 は 、急 遽 、「安 全 な エ ネ ル ギ ー 供 給 に 関 す る 倫 理 委 員 会 」 と い う臨 時 諮 問 機 関 を 設 け 、 『ドイ ツ の エ ネ ル ギ ー 転 換 』 と い う答 申 を 受 け た が 、 そ れ は 「 原 発 の 危 険 性 が 社 会 に 倫 理 的 に 受 容 さ れ る か 否 か の 報 告 」で あ っ た(梶. 村2011:269)。. 倫理委員会の報告は、. 「 原 子 力 エ ネ ル ギ ー の 利 用 や そ の 終 結 、 他 の エ ネ ル ギ ー 生 産 の 形 態 へ の 切 り替 え 等 に 関 す る 決 定 は 、 社 会 に よ る価 値 決 定 に 基 づ く も の で あ っ て 、 こ れ は 技 術 的 あ る い は 経 済 的 な 観 点 よ り も 先 行 して い る 」 と 明 言 し た(安. 全 な エ ネ ル ギ ー 供 給 に 関 す る 倫 理 委 員 会2011:14)。. こ の よ うに 、 倫 理 委 員 会 の 報 告 は 、 原 発 の. 政 策 課 題 設 定 を 、電 力 供 給 の た め の 「技 術 的 あ る い は 経 済 的 な 観 点 」 を 先 行 させ る の で は な く、 「社 会 に よ る価 値 決 定 」、す な わ ち 倫 理 も し く は 正 義 の 問 題 と し て 捉 え る べ き で あ る と示 し た 。 こ れ を 受 け 、2011年5 .月30日 、 ドイ ツ 政 府 与 党 幹 部 協 議 会 に お い て 、 停 止 中 の 原 発8基 ら2022年. に か け て5段. 階 で 閉 鎖 す る こ と を 決 定 し 、 同 年6月30日. を 即 時 閉 鎖 し、 残 りの9基. を2015年. 、連 邦 議 会 で 可 決 され た(小. か. 野2012a:. 135)。 原 発 を 倫 理 問 題 と看 倣 す 点 に 関 し て 、 柄 谷 行 人 が 興 味 深 い 指 摘 を して い る 。 柄 谷 に よ れ ば 、 原 発 が あ る 限 り、放 射 能 被 曝 の 可 能 性 が 非 常 に 高 い 労 働 を 必 要 とす る 故 に 、未 来 の 他 者 で あ れ 現 在 の 他 者 で あ れ 、 「 他 者 を た ん に 手 段 と し て の み 扱 う」社 会 を 必 要 とす る 。 し た が っ て 、倫 理 を 幸 福 や 合 意 お よ び 自 由(自 発 性).
(11) 39. と い う観 点 か ら捉 え た 場 合 、「他 者 を た ん に 手 段 と して の み 扱 う」 こ と を 前 提 と す る原 発 は 廃 棄 す べ き で あ り、 か つ ま た 脱 原 発 を て い る(柄. 「た ん に エ ネ ル ギ ー シ フ トで か た つ く よ うな 問 題 と し て 見 て は な ら な い 」 と 指 摘 し. 谷2012:211-213)。. お よ そ 、 柄 谷 の 発 想 は カ ン ト哲 学 に 基 づ く が 、 そ の 点 は 『ドイ ツ の エ ネ ル. ギ ー 転 換 』 に も 通 底 し て い る。 日本 で は 、3.11以. 降 に お い て も、原 発 を 電 力 供 給 の 問題 と して捉 え る思 考 方 法 か ら抜 け出 て い る とは 言. い 難 い 。 確 か に 電 力 供 給 の 問 題 は 重 要 で あ る が 、 だ か ら と 言 っ て 、 福 島 第 一 原 発 事 故 を 経 験 しな が ら 、 旧 態 依 然 の 思 考 方 法 に 縛 られ て い る こ と 自 体 が 問 題 で あ る。 原 発 は 価 値 判 断 す べ き 事 柄 で あ る 、 こ の よ うに 政 策 課 題 設 定 を 行 うの が 民 主 党 政 権 の 責 務 で あ る と 思 う次 第 で あ る。 現 代 の 科 学 技 術 の 水 準 で は 放 射 性 廃 棄 物 の 最 終 処 理 が で き な い た め 、 取 り敢 え ず 使 用 済 み 核 燃 料 を 中 間 貯 蔵 施 設 に 一 時 保 管 す る も の の 、 そ の 中 間 貯 蔵 施 設 の キ ャ パ シ テ ィ が 逼 迫 し て い る。 こ れ は 、 相 当 な 長 期 間 に わ た り、 将 来 世 代 に 対 し負 の 遺 産 を 押 し付 け る こ と に な り、 現 在 の 世 代 が 将 来 の 世 代 に 対 し 環 境 や エ ネ ル ギ ー の 面 で ツ ケ を 残 さ な い と い う持 続 可 能 性(sustainability)の. 原 則 に 背 信 す る行 為 と い え る 。原 発 の. 再稼 働 は現 時 点 で最 終 処分 不 可 能 な放 射 性 廃 棄 物 を蓄積 す る。. さて 、脱 原 発 を 実 現 す るた め に 、 周到 な. 「 脱 原 発 ガ バ ナ ン ス 」 を確 立 しな け れ ば な ら な い 。 そ の 場 合 、. 政 府 が 有 す る メ タ ・ガ バ ナ ン ス(meta-governance)の. 力 量 が ポ イ ン トを 握 る 。 メ タ ・ガ バ ナ ン ス と は 、 具. 体 的 に は 、 ガ バ ナ ン ス を 実 際 的 に 進 め る に あ た り、 如 何 な る 政 策 分 野 や テ ー マ を設 定 す る の か 、 参 加 す る 個 々 の メ ン バ ー を 誰 に す る の か 、 ま た 政 策 形 成 の た め の 場(審. 議 会 や 委 員 会 、 協 議 会 、 円 卓 会 議 等 々)を. ど の よ うに 開 く の か 、 い つ か ら い つ ま で 開 催 す る の か 、 ど の く ら い の 時 間 や 回 数 を か け る の か 、 そ して 叩 き 台 と な る 素 案 を 誰 が 作 成 す る の か(通 常 は 担 当 官 僚)、 あ る い は ま た 複 数 の 政 策 ガ バ ナ ン ス を連 結 す る 場 を 設 け る か な ど を 行 う こ と で あ る。 要 す る に 、 メ タ ・ガ バ ナ ン ス と は 、 ガ バ ナ ン ス が 機 能 す る た め の 制 度 的 な 枠 組 み を 設 計 し 、ガ バ ナ ン ス の 進 め 方 を 取 り仕 切 る こ と で あ る 。 も ち ろ ん 、脱 原 発 を 担 うパ ブ リ ッ ク ・ ガ バ ナ ン ス の 確 立 も 、 こ の メ タ ・ガ バ ナ ン ス 如 何 に 左 右 され る。 そ れ 故 に 、 メ タ ・ガ バ ナ ン ス を め ぐ り、 「 原 子 カ ム ラ」 の. 「 原 発 ア ク タ ー 」 が 介 在 し 、 メ タ ・ガ バ ナ ン ス そ の も の が 骨 抜 き さ れ か ね な い 。 場 合 に. よ っ て は 、 権 謀 術 数 が 張 り巡 ら され る こ と も あ り、 そ の 意 味 で は 、 メ タ ・ガ バ ナ ン ス の 設 計 は. 「政 治 的 」. で あ る。 ガ バ ナ ン ス を 参 加 協 働 型 の 協 治 と し て イ メ ー ジ し、 か つ ま た そ の 協 治 を 可 能 と す る メ タ ・ガ バ ナ ン ス を イ メ ー ジ す る と 、 そ れ は あ た か も公 平 中 立 な も の で あ り、 そ こ に 権 謀 術 数 な ど介 在 す る 余 地 が な い も の と 思 い 込 ん で し ま い が ち で あ る。 し か し 、 ガ バ ナ ン ス は 政 治 の 延 長 で あ り、 理 想 的 な 協 治 も 政 治 の 産 物 な の で あ る。 脱 原 発 を 担 うパ ブ リ ッ ク ・ガ バ ナ ン ス の 確 立 は 、 端 的 に 言 っ て 、 原 発 を 推 進 して き た 官 僚 機 構 ・行 政 組 織 の 廃 止 と 、 原 発 の 安 全 規 制 ガ バ ナ ン ス を 行 っ て き た 官 僚 機 構 ・行 政 組 織 の 再 編 成 に あ る と い え る。 そ し て 、 原 発 推 進 機 構 ・組 織 の 廃 止 と 同 時 並 行 的 に 、 国 家 の エ ネ ル ギ ー 基 本 政 策 を 定 め る 、 司 令 塔 的 な 機 関 を 新 た に 設 け エ ネ ル ギ ー ・ガ バ ナ ン ス を 刷 新 す る こ と が 肝 要 で あ る 。具 体 的 に は 、例 え ば 、内 閣 府 に 、首 相 、 関 係 閣 僚 、 有 識 者 で 構 成 す る 「環 境 エ ネ ル ギ ー 戦 略 会 議 」 を 重 要 政 策 会 議 と して 設 置 す る の も 一 案 で あ ろ う(田. 中2011:298)。. こ こ に 、 か つ て 経 産 省 が 所 管 して い た. 「 環 境 エ ネル ギ ー 戦 略会 議 」 の設 置 は 、政 策 決 定 の 民 党 は 、政 策 調 査会 の各 部 会 の. 「エ ネ ル ギ ー 基 本 計 画 」 が 移 管 さ れ る 。. 「場 の 変 更(venuechange)」. を 意 味 す る。 か つ て 自. 「与 党 審 査 」 を 、 イ ン フ ォ ー マ ル で は あ る が 実 質 的 な 政 策 決 定 の 場 と して. き た 。 そ こ で 、小 泉 首 相 が 、郵 政 民 営 化 に 反 対 す る 郵 政 族 が 取 り仕 切 る 部 会 で 「与 党 審 査 」が 行 わ れ る と 、 郵 政 民 営 化 を 進 め る こ と が で き な い と判 断 し 、 内 閣 府 の 経 済 財 政 諮 問 会 議 に 政 策 決 定 の 場 を 変 更 した 。 小 泉 は 、郵 政 族 を. 「 抵 抗 勢 力 」 と し て 排 除 し つ つ 、 経 済 財 政 諮 問 会 議 と い う場 に お い て 、 郵 政 民 営 化 法 案 の.
(12) 40. MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.30(2012). 実質 的 な決 定 に成 功 した。 尚 、 小 泉 が 起 用 した 「 政 策 起 業 家 」 の竹 中 平蔵 は 、経 済財 政 諮 問 会議 の 事 務 局 を担 当 す る官僚 が 作成 す る原 案 に よっ て 政策 が左 右 され るの を恐 れ 、竹 中 を含 めた 「 チ ー ム竹 中」 の メ ン バ ー が原 案 を作 成 し、 そ の原 案 を提 出 して経 済財 政 諮 問 会議 の場 を リー ドした こ とを 思 い 出 す。 尚 、 政府 は 国 家戦 略 室 に 「 エ ネル ギ ー ・環 境 会議 」 を発 足 し、 そ こに原 子 力 政 策 の 実 質 的 な決 定 権 を与 え た。 会 議 の議 長 は 古川 元 久 国 家 戦 略担 当 大 臣 、 副議 長 は枝 野 幸 男経 済 産 業 大 臣 お よび 細 野 豪 志 環境 大 臣 兼 原 発 事故 担 当 大 臣 、構 成 員 は外 務 、文 科 、農 水 、国 交 大 臣 お よび 内 閣 官 房 副 長 官 で あ る。 しか しな が ら、 従 前 の組 織 で あ る内 閣府 の 「 原 子 力 委員 会 」(近 藤 駿介 委 員長)を 残 した ま ま 、 これ ま た 従 来 通 り、 「 原子 力 委 員 会 」で原 子 力政 策 の基 本 方 針 で あ る 「 原 子力 政策 大 綱 」の 見 直 しを進 め させ て い る。 一応 、 「 原 子力 委員 会」が 「 エ ネ ル ギ ー ・環 境 会 議 」 の 下 請 け組 織 と して 、 「 原 子 力 政 策 大 綱 」 の 見 直 しを行 うとい う2 階建 て の組 織 構 造 で あ るが 、 「 原 子 力 委 員 会 」 の策 定 会議 の メ ンバ ー(合 計27名)は. 、3.ll以 前 と ほぼ 同. 様、「 原 子 カ ム ラ」 の メ ンバ ー が 多勢 を 占め る。 これ で は 、 政 策決 定 の 場 の 変 更 とは い えな い。 「 原子力政 策 大綱 」 は 、 そ れ こそ 「 脱 原 子 力政 策 大 綱 」 に 変 更 した 上 で 、 改 め て 「 エ ネ ル ギ ー 基本 計 画 」 の 下位 計 画 に位 置 付 け 直 し、 「 環 境 エ ネル ギ ー戦 略会 議 」 に お い て 一 元 的 に 取 り扱 うべ きで あ る と考 え る。 一方. 、原 発 の 安全 規制 ガ バ ナ ンス に つ い て は 、 日本 弁護 士 連合 会 公 害 対 策 ・環 境保 全 委員 会 が 、 内 閣府. の原 子 力 安 全委 員 会 と経 済 産 業省 資源 エ ネル ギ ー庁 の原 子 力 安 全 ・保 安 院 の 安 全 規 制権 限 を、 一 体化 した 新 組 織 と して 「 原 子 力 廃 止 管 理 委 員 会 」 の名 称 で、公 正 取 引 委 員 会 の よ うに、内 閣府 設 置 法 第49条3項. に. 基 づ き 、 立 法 に よ り、政 府 か らの独 立性 を確 保 した 、独 立行 政 委員 会 と して設 置 す べ きで あ る と提案 して い る。 そ の設 置 目的 は原 子 力 施 設 の 全 て の廃 止 と、廃 止 に 至 るま で の 暫 定 的 な利 用 に 関 して の 安 全 の確 保 等 に あ り、具 体 的 な業 務 の一 つ に、「 原 子 力 の 暫 定 的 な利 用 に関 す る新 た な 安 全審 査 基 準 の 策 定 とそ れ に 適 合 性 の確 保 」 を指 摘 して い るが 、 大 方 首 肯 で き る(日 本 弁護 士連 合 会2012:191)。 福 島原 発 事故 独 立検 証委 員 会 が発 表 した 『調 査 ・検 証報 告 書 』は 、原 発 の 安 全 規 制 ガ バ ナ ンス に関 して 、 原 子 力 安 全 ・保 安 院 と、原 子 力 安 全 委 員 会 とい う 「 二 元審 査 体 制 」は 、 「 電気 事 業者 に 対抗 す るだ け の 十 分 な技 術 資源 を もた な い原 子 力 安 全 ・保 安 院 」、 「 安全 規制 の 基 準 作 りをす る有識 者 会議 で あ りな が ら、 十 分 な 法 的権 限 と調 査 分析 能 力 を もた な い原 子 力安 全委 員 会 」 に よっ て成 り立 っ て お り、 ま た 「日本 の原 子 力 行 政 の 特徴 の ひ とつ で あ る文部 科 学省 と経 済産 業省 の 『二 元推 進 体 制 』 に よっ て原 子 力推 進 と規 制 の 区別 が あ い ま い とな り、2001年 の省 庁 再 編 に よ る原 子 力 安 全 ・保 安 院 の成 立 に よっ て 、い わ ば 安 全規 制 ガ バ ナ ンス の 『無 責 任 状 態 』が 生 まれ た 」と大 変 厳 しい 指 摘 を して い る(福 島原 発 事 故独 立検 証委 員 会2012:292)。 また、 「 二 元推 進 体制 」 と 「 二 元審 査 体制 」 の 輻較 化 が 、 「 所 掌 の 重複 の み な らず 、 責任 の 所在 の 曖 昧 さ を も生 み 出す 結 果 とな っ た 」 と指 摘す る(同2012:299)。 安 全 規 制 ガバ ナ ンス の再 編 成 に あ た り、 政府 は 、 経産 省 の原 子力 安全 ・保 安 院 を廃 止 した 上 で 、 国 家行 政 組 織 法3条. に基 づ く、政 府 か ら独 立 した 「3条委 員 会 」 して 「 原 子 力 規 制 委員 会 」 を設 置 し、 ま た そ の. 事務 局 に 「 原 子 力規 制委 員 会 」 を設 置す る と発 表 した。 当 初 、 政府 は 、 環境 省 の 外 局 と して 「 原 子力規制 庁 」 とい う行 政 機 関 を設 置 した い意 向 で あ っ た。 原 発 の 安 全 規制 行 政機 関 を、 ア メ リカ の原 子 力 規 制 委員 会(NRC)や. フ ラ ンス の 原 子 力 安 全 庁(ASN)の. ツ の連 邦環 境 ・自然 保 護 ・原 子 炉 安 全 省(BMU)の. よ うに政 府 か ら独 立 した 組 織 にす るか 、 そ れ と も、 ドイ 原 子 力 安 全 局 の よ うに 、省 内組 織 の 中で 安 全 規 制 を担. わせ るか 、 衆参 ネ ジ レ国会 とい う状 態 の 中 で 、議 論 が 分 か れ て い た。 い ず れ に して も、 実 質 的 な独 立 性 と 専 門性 が確 保 され る必 要性 が あ る。 但 し、環 境 省 は 温 暖化 防 止 の た め に原 発 を推 進 して きた 経緯 が あ り、 ま た原 子力 に精 通 した 専 門性 の あ るス タ ッフ に 乏 しい とい う弱 点 を抱 えて い た。 大飯 原 発 の再 稼 働 は 、原 発 の 安全 規制 ガ バ ナ ンス を担 う予 定 の 「 原 子 力 安 全 庁 」 が発 足 しな い ま ま 、 最.
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