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3)新強化白金「Nano-Platシリーズ」の商品化

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Academic year: 2021

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1.はじめに 白金や白金合金中に微細酸化物を分散し高い 高温クリープ強度を有する酸化物分散型強化白 金は,ガラス工業用の白金装置に不可欠な材料 となっている。田中貴金属工業では,酸化物分 散型強化白金として,白金系強化材として強度 の異 な る2種 類 の 材 料 GTH,Spartan を,ま た,白金ロジウム10% 系強化材として GTHR を2000年から市場展開し,白金装置の長寿命 化や貴金属量の削減に貢献してきた。市場投入 から既に12年が経過し,これら材料で多くの お客様において好評を博してきたが,その一方 で更なる品質の向上要求,特性の改善要求があ ったことも事実である。また,白金系強化材で は2種類の高温クリープ強度を持つ材料があ り,その特性を考慮してお客様のご使用環境に 適した強化白金を推奨できたのに対して,白金 ロジウム10% 系強化材では1種類しかなく, 必ずしもお客様のご使用環境に適した材料の推 奨ができなかった。これら市場の要求に応える ために,新たに4種類の強化白金を開発し, Nano―Plat シリーズ”として商品化したので, その特徴を紹介する。また,これまでの強化白 金の実用面での効果を分かり易くイメージでき るよう,幾つかの実験を行った。その結果も合 わせて記載するので,今後のガラス工業用の白 金装置への強化白金採用のご参考にして頂きた い。 2. Nano―Platシリーズ”の種類とその特徴 お客様のご使用環境や用途に合わせた材料提 案を実現するため,白金系強化材,および,白 金ロジウム10% 系強化材それぞれに,2種類 の高温クリープ強度を持つ材料を商品化した。 それら材料の名称,特徴,および,推奨活用部 位について,表1にまとめた。 図1は Nano―Plat―Pt と Nano―Plat―BP の断 面組織である。いずれも酸化物分散型強化白金 の特徴である層状組織を有していることがわか る。両者を比較 す る と, Nano―Plat―BP の 方 が結晶組織の縦横比が大きくなっている。この ように,結晶組織の形状・大きさを制御するこ とで,白金系強化材,白金ロジウム10% 系強 化材の高温クリープ強度を調整した。 図2にそれぞれの材料の1400℃ での高温ク リ ー プ 強 度 を 鋳 造 白 金,鋳 造 白 金 ロ ジ ウ ム 10% と 比 較 し て 記 し た。 Nano―Plat―シ リ ー Isehara Plant,TANAKA KIKINZOKU KOGYO K.K.

Tomoyuki Tada and Hideo Segawa

Commercialization of newly developed oxide dispersion strengthened

platinum called “Nano

―Plat series”

多 田 智 之,瀬 川 英 生

田中貴金属工業(株) 伊勢原工場

新強化白金“Nano―Plat シリーズ”の商品化

新製品・新技術紹介

〒259―1146 神奈川県伊勢原市鈴川26番地 TEL 0463―94―5841 FAX 0463―94―3114 E―mail : t-tada@ml.tanaka.co.jp 78

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名称 特徴 推奨活用部位 Nano-Plat-Pt 高温クリープ強度が高く、かつ、高温伸びも大きい白金系強化材 溶解槽、清澄槽、攪拌槽 Nano-Plat-BP 高温クリープ強度は非常に高いが、高温伸びの小さい白金系強化材 スターラー、高強度が必要な部材 Nano-Plat-R 高温クリープ強度が高く、かつ、高温伸びも大きい白金ロジウム10%系強化材 溶解槽、清澄槽、攪拌槽 ブッシングベースプレート Nano-Plat-BPR 高温クリープ強度は非常に高いが、高温伸びの小さい白金ロジウム10%系強化材 スターラー、高強度が必要な部材ブッシングベースプレート 00.5mm ク クリープ破断時間/ hour 応 力 / MPa 1 10 100 1 10 100 1000 10000 鋳造Pt 鋳造PtRh10% Nano-Plat-Pt Nano-Plat-R Nano-Plat-BP Nano-Plat-BPR 13 72 Nano-Plat-BP 30 45 Nano-Plat-Pt 破断伸び (%) 引張り強さ (MPa) 材料 15 83 Nano-Plat-BPR 40 63 Nano-Plat-R 13 72 Nano-Plat-BP 30 45 Nano-Plat-Pt 破断伸び (%) 引張り強さ (MPa) 材料 15 83 Nano-Plat-BPR 40 63 Nano-Plat-R ズ”の材料はいずれも,鋳造材料に比べて高い 高温クリープ強度を有しており,特に Nano― Plat―BP と Nano―Plat―BPR の高温クリープ強 度が高い。なお,高温クリープ強度は板厚や成 形方法によって強度が変化するので,図2は高 温クリープ強度の目安として眺めて頂きたい。 表2に高温引張り試験の結果をまとめた。一 般的に,酸化物分散型強化白金では,高温ク リープ強度を向上させると高温引張り試験での 破断伸びが減少する傾向があり, Nano―Plat シリーズ”でも同様の傾向を示した。高温クリー プ強度の非常に高い Nano―Plat―BP と Nano― Plat―BPR では高温引張り試験での破断伸びは 15% 程度と小さく,これらの材料を使用する 場合には,熱上げ時などに白金装置の変形が大 きくならないように設計や保護耐火物の施工に 配慮すべきことが示唆された。 3. Nano―Platシリーズ”を用いた実験事例 図3に鋳造白金と Nano―Plat―Pt で製作した 外 径50mm,高 さ50mm,板 厚1.0mm の 小 型坩堝での実験結果を示した。本実験では小型 坩堝に酸化物結晶を入れ,加熱・冷却を繰り返 し酸化物結晶の溶解・凝固を10回,100回と 繰り返した。その結果,鋳造白金では10回後 で既に変形が見られ,100回後において下部が 大きく膨らんだ。また,結晶粒の粗大化も顕著 だっ た。一 方, Nano―Plat―Pt で は10回 後 で はまったく変形が見られず,100回後において も変形は僅かだった。更には,結晶粒の粗大化 表1 Nano―Plat シリーズ”の名称,特徴,および,推奨活用部位 図 1 Nano―Plat―Pt(左)と Nano―Plat―BP(右)の 断面組織 図2 1400℃ での高温クリープ強度 表2 1400℃ での高温引張り特性 79 NEW GLASS Vol.28 No.109 2013

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10回後 100回後 10回後 100回後

鋳造

Pt

Nano-Plat-Pt

鋳造 PtRh10 Nano-Plat -R Nano-Plat -BPR 1回目 1500ºC到達後即炉冷 2回目 1500ºC-5hour保持後炉冷 も見られなかった。これは酸化物結晶の溶解時 に坩堝に内側から外側へのクリープ応力が掛か ったための変形と結晶粒の粗大化と解釈できる が(白金と酸化物結晶の熱膨張係数の違いによ る変形も含む), Nano―Plat―Pt の坩堝では, 材料の高温クリープ強度が高いために変形が抑 制され,また,白金に添加した高分散微細酸化 物の楔効果によって強化白金特有の組織を維持 したため,結晶粒の粗大化が起こらなかった。 図4には,鋳造白金ロジウム10% と白金ロ ジウム10% 系強化材の強度比較を行った実験 結果を示す。本実験では,まず,直径50mm, 長さ200mm,板厚0.8mm の円筒管をそれぞ れの材料で準備した。その後,その円筒管内部 を真空に保ったまま溶接によって封じた。その 円筒管を電気炉に入れ,それぞれの材料での変 形挙動を比較した。図4に示すように,鋳造白 金ロジウム10% では,1500℃ に到達後即炉冷 したところで円筒管が真空の力に耐え切れず変 形 し た。一 方, Nano―Plat―R , Nano―Plat― BPR では,いずれも変形がなかった。その後, Nano―Plat―R と”Nano―Plat―BPR“の 円 筒 管 に2回目の熱処理(1500℃ で5時間)を施し たところ, Nano―Plat―R の円筒管で変形が生 じ た。 Nano―Plat―BPR の 円 筒 管 で は,更 に 1500℃ で200時間の熱処理を実施するも変形 が見られなかった。図3同様に,鋳造材料に比 較 し て, Nano―Plat―R と Nano―Plat―BPR が 変形を抑制できることが示されたが,結晶組織 制御によって高温クリープ強度を高めた Nano ―Plat―BPR では,更にその変形耐性が向上し ていた。 図5に鋳造白金,および,白金系強化材で製 作 し た 直 径10mm,高 さ12mm,板 厚1mm のパイプの1400℃ での30% 圧縮試験時の変形 後の表面の拡大写真を示した。鋳造白金では材 料が伸びて割れは見られなかったが,Nano― Plat―Pt では僅かなスジ状の縦クラックが観察 さ れ た。ま た,Nano―Plat―BP で は20% 圧 縮 で既に縦割れが生じ,30% 圧縮後ではその割 れが拡がり顕著な割れとなった。これらの挙動 は表2に示した高温引張り伸び特性に起因する 図4 鋳 造 PtRh10% と Nano―Plat―R お よ び Nano―Plat―BPR の 変 形 挙 動比較 図3 鋳造 Pt と Nano―Plat―Pt の変形挙動比較 80

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1400℃で30%押し込み 鋳造Pt Nano-Plat-Pt Nano-Plat-BP ものであるが,強化白金は高温クリープ強度は 高いが,高温伸び特性に劣るといった特徴があ るので,特に熱上げ時の白金装置の変形を抑制 する設計,耐火物施工をご考慮頂きたい。 4.まとめ ガラス工業用の白金装置の長寿命化と貴金属 量 の 削 減 に 貢 献 す る た め,新 た に 強 化 白 金 Nano―Plat―シリーズ”を商品化した。 Nano― Plat―シリーズ”には白金系強化材で2種類, 白金ロジウム10% 系強化材で2種類の高温ク リープ強度を持った材料をそれぞれラインアッ プした。 Nano―Plat―シリーズ”の機能を最大限発揮 するには,それぞれの材料特性に加えて,使用 条件,使用環境を考慮しての選定が必要です。 本文にそのための参考データを一部記載しまし たが,弊社からの提案も可能です。是非,お近 くの弊社営業所までお問い合わせ下さい。 図5 鋳 造 Pt と Nano―Plat―Pt お よ び Nano―Plat― BP の高温圧縮試験後の表面拡大写真 81 NEW GLASS Vol.28 No.109 2013

参照

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