• 検索結果がありません。

資料からの読み取りと活用を重視した社会科授業づくり

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "資料からの読み取りと活用を重視した社会科授業づくり"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

資 料 か ら の 読 み 取 り と 活 用 を 重 視 し た 社 会 科 授 業 づ く り

山 内 敏 男 下 舘 史 嗣 大 津 圭 介 米 田 豊 1 問 題 の 所 在 学 習 者 に 問 題 意 識 を も た せ , 事 実 判 断 や 推 理 を し て い く 展 開 か ら な る 授 業 は こ れ ま で に も 数 多 く 紹 介 さ れ て き た 。 そ の 一 方 で , 学 習 者 の 立 場 に 立 っ た と き , そ の 学 習 方 略 , 学 習 内 容 が 受 け 入 れ ら れ て き た か ,学 習 し た 成 果 が 本 当 に 得 ら れ て い る か に つ い て は ,検 討 の 余 地 が あ る 。 社 会 科 の 学 習 に お い て は , 個 別 事 象 に 意 味 を も た せ て 認 識 す る の で は な く , 様 々 な 事 象 を 関 連 付 け て , 社 会 認 識 を 形 成 し て い く こ と が 肝 要 で あ る 。 と り わ け , 中 学 校 歴 史 的 分 野 以 降 の 歴 史 学 習 で は , 既 有 知 識 と 新 た に 見 知 っ た 事 象 と を 関 連 付 け な が ら , 対 象 と す る 時 代 に お け る 社 会 の 仕 組 み を 再 認 識 す る こ と に よ り , 社 会 認 識 は 深 化 さ れ る 。 その一方で,歴史学習は「暗記の学習である」,あるいは「難しい」といった言葉はよく聞かれる。 暗記中心の学習とされる要因については,学習指導をする側の問題として,少しでも多くの事象(と いうより,語句や年代)の習得が目ざされることにより,個々の歴史事象を一回的なものとしてとら え,覚えさせる類の知識の注入が「暗記」を強いていることが想定される。こうした学習では社会認 識形成はおぼつかないことは周知のことであろう。さらに,生徒たちが歴史事象について,十分な認 識をもち得ていない場合は,その認識をゆさぶり,十分なものにするという学習活動も想定しなけれ ばならない。社会科領域においても学習者の既有知識や先行学習経験に誤りや不十分さが見られ,し かも,「正しい知識を教示するという通り一遍の授業では,誤った知識は容易に修正されない。また, 授業直後には正しい知識を用いることができても,しばらく時間が経つと元の誤った認識が発動され ることがある」と指摘されており*1,その修正は容易ではない。学習者に資料を読み取らせ,その内 容を活用させていくためには,既有知識や先行学習経験をふまえた学習過程を構想し,実践していく 必要がある。 2 研 究 の 目 的 学 習 に 際 し て , 生 徒 の 興 味 関 心 を 引 き 出 し た り , 身 近 に 感 じ さ せ た り す る 際 , そ の 方 略 が 的 は ず れ な も の で は 授 業 の 成 立 す ら お ぼ つ か な い 。 学 習 者 へ の 動 機 付 け を 図 る 際 , 学 習 者 が も つ 既 有 知 識 と 関 連 付 け て 学 習 過 程 を 組 み 立 て る こ と が 重 要 で あ る 。 し か し な が ら , と も す る と 学 習 者 が 関 心 を 引 き そ う な 内 容 を ト ピ ッ ク 的 に 取 り 上 げ た り , 事 象 の 背 景 を 「 裏 話 」「 エ ピ ソ ー ド 」 と し て 披 露 し た り し て , 当 座 の 「 面 白 さ 」 を 注 入 し て 日 々 の 授 業 を こ な し て い る こ と ( 自 省 の 念 を 込 め て ) も 多 い の で は な い だ ろ う か 。 こ れ で は , 学 習 者 が 資 料 か ら 読 み 取 り , そ の 内 容 を 活 用 で き る よ う な 学 習 は 望 め な い 。 高垣マユミの知見によると,学習者のもつ既有の概念構造を解き明かした上で,それと矛盾する科 学的概念とつなげるために,認知的葛藤を組み込んだ方略や思考のガイダンスを行うことで概念の変 容・深化に一定の効果をあげる,という具体的な教授的介入の方法が提供されている*2。 認知的葛藤を生起させる一つの方略として,学習者が抱きがちな「誤った認識」(年表の表記など 視覚的な情報の読み誤りや過剰な単純化によってもたらされる,歴史学や考古学をはじめとする社会 諸科学の研究成果に合致しない認識)や「不十分な認識」(ある歴史事象に対して相対的に考えるこ とができず,断定的な解釈をした結果としての認識)を取り上げることがある。この方略では,「誤 った認識」をもつ学習者に,矛盾する事実(反証例)を提示することによって認知的葛藤を生起させ ると,学習者はその解消に向けて関心が向き,情報活動が生起するというD.E.バーライン(Berlyne, D.E)の考えに基づいている*3。こうした方法を授業に組み込んでいくことで,目標とする社会認識が 形成され,なおかつ「誤った認識」「不十分な認識」が修正されるという点で優れた方略として位置 付けることができる。 そ こ で , 本 研 究 で は , 認 知 心 理 学 の 研 究 成 果 を 援 用 し つ つ , 歴 史 事 象 に つ い て , 既 存 知 識 や 先 行 学 習 経 験 に よ っ て 獲 得 し て き た 認 識 に 対 し , 再 考 を 促 し た り , 考 え を 深 い と こ ろ に 導 い た

(2)

り す る 学 習 展 開 ,特 に 資 料 の 読 み 取 り か ら 導 出 さ れ る 問 い と 活 用 の 過 程 を 取 り 上 げ る 。そ し て , 歴 史 事 象 間 の 関 係 を 吟 味 し , よ り 的 確 な 要 因 ( な い し は , 複 数 の 要 因 ) を 理 解 す る 学 習 方 略 を 提 案 し , そ の 効 果 に つ い て 検 討 を 試 み る 。 3 学 習 に お け る 資 料 の 位 置 付 け 学 習 者 に と っ て , 問 い に 結 び つ い て い く 認 知 的 葛 藤 を 生 起 さ せ て い く た め に は , 教 師 に よ る 教 示 で は な く , 学 習 者 自 身 に よ る 活 動 の 結 果 引 き 起 こ さ れ る こ と が 望 ま し い こ と は 言 う ま で も な い 。 社 会 科 で は 「 資 料 か ら の 読 み 取 り 」 が 想 定 さ れ る 活 動 が こ れ に あ た る 。 資 料 か ら の 読 み 取 り に 際 し て , 下 舘 史 嗣 は 次 の 2 点 の 課 題 ( 留 意 点 ) を 指 摘 し て い る 。 ま た ,「 読 み と ら せ た い 社 会 事 象 」 を 学 習 者 に 的 確 に 読 み と ら せ る こ と は , 学 習 者 の 認 知 的 葛 藤 を 的 確 に 解 消 で き る 資 料 で あ る こ と が 求 め ら れ る 。 こ の こ と に つ い て 下 舘 は ,「『 読 み と ら せ た い 社 会 事 象 』 以 外 の 様 々 な 社 会 事 象 を 取 り 除 く こ と 」 が 肝 要 で あ る と し て い る *5。 こ れ は「 読 み と ら せ た い 社 会 事 象 」が 幾 通 り に も 生 じ て し ま う こ と で ,授 業 の 焦 点 化 が 困 難 と な り , 教 師 が 意 図 す る ね ら い , 目 標 の 達 成 も 難 し く な る こ と に ほ か な ら な い 。 言 い 換 え れ ば ,「 読 み 取 る こ と が で き る で あ ろ う 内 容 が 単 純 で あ る 」 こ と が 必 要 で あ る 。 学 習 者 の 思 考 過 程 を ふ ま え , 資 料 か ら 読 み と っ た 内 容 を 活 用 す る こ と に よ っ て , よ り 的 確 な 社 会 事 象 間 の 関 係 を 理 解 す る こ と が で き る 。活 用 に つ い て ,米 田 豊 は「 習 得 し た 知 識 や 技 能 を , 新 た な 学 習 場 面 で 使 う こ と 」 と 定 義 し て い る *6。 具 体 的 に 授 業 に 当 て は め る と , 資 料 か ら 読 み 取 り , 解 釈 し た 内 容 つ ま り , 習 得 し た 知 識 を 関 連 付 け る 活 動 で あ る と も 言 え る 。 認 知 的 葛 藤 の 生 起 を 前 提 と し て , 資 料 の 読 み 取 り と 活 用 に 関 す る 一 連 の 学 習 活 動 を 図 に 示 す と 次 の 【 図 】 の よ う に な る 。 と ら え さ せ た い 問 題 に 対 し て そ の 要 因 が 読 み 取 れ る で あ ろ う 史 資 料 を 複 数 用 意 し , 関 連 付 け る こ と で , 認 識 の 変 容 , 深 化 を 図 る 。 そ れ に 先 立 ち 導 入 の 段 階 で は , 断 定 的 認 識 を 想 起 さ せ , 既 有 概 念 を ゆ さ ぶ る 反 証 例 を 提 示 す る 。 反 証 例 は , 現 代 を 生 き る 学 習 者 の 思 考 ・ 感 覚 と は 異 な る , 対 象 と す る 時 代 独 特 の 思 考 ・ 感 覚 を 示 す 事 例 と し て 位 置 付 け る 。 そ の 上 で , な ぜ 反 証 例 の よ う な こ と が 生 じ る の か を 問 い ,問 題 意 識 を 高 め る 。そ し て ,「 原 因 と な る 資 料 の 読 み 取 り( 習 得 )」 の 活 動 場 面 で は 結 果 と な る 事 象 と 原 因 と 考 え ら れ 得 る 事 例 と の 関 連 付 け だ け で は な く , 原 因 と な る 事 例 同 士 が 互 い に 連 関 し て い る か ど う か ま で 検 討 を 行 う ( 一 つ の 事 象 に 対 し て 複 合 的 な 原 因 を 検 討 で き る ) 学 習 を 構 成 す る 。 以上のように,反証例による認知的葛藤の生起とそれを解消する事例を資料として複数組み込んだ 学習は,資料の読み取りによって習得したことことを活用することにによって,妥当性の吟味ができ, 関連付けたことを構造化する過程と組み込んだものとなる。 ・ 与えられた役割に相応しい社会事象を資料に取り込むこと。 ・ 「読み取らせたい社会事象」を学習者が読みとれるようにすること。*4 【図 認知的葛藤を前提とした資料の読み取り,活用に関する学習モデル】 原因となる資料の 読み取り(習得) 断定的認識 認知的葛藤 認知的葛藤を生起さ せる反証例の提示 反証例 問題意識の 高まり なぜ疑問 (提示された 結果に対する 問題意識) の設定 事例(原因)2 事例(原因)1 認識の深化 新たな認識 の獲得 事例(原因)3 関連づけ (活用)

(3)

4 実 践 小単元「モンゴル襲来と鎌倉幕府」を例にして,認知的葛藤を前提とした資料の読み取り,活用に 関する学習を提案する。単元の範囲は「モンゴル襲来」~「鎌倉幕府の滅亡」にかけてである。幕府 政治(執権政治)の展開と滅亡にかかわる特色をとらえていく際,認知的葛藤を前提として,複数の 資料から読み取りを行い,活用する学習が有効と思われるのは次の点である。 現代に生きる我々が「悪党」と聞くと,「わるものの集団。転じてわるもの。」というイメージがま ず浮かんでくる。しかし,広辞苑によると右のよう な意味があるとしている。ここで「悪」の意味につ いて注目したいのが,古語における用例が見られる ④である。また,「悪党」の意味を加えると,下線 部が示しているように,支配者の立場から見て「秩 序を乱す」存在であり,立場が変われば「わるもの」 とは言い切れないことが推測できる。当時の社会に 即して言えば,幕府や朝廷,寺社などの権力・権威 に反抗する人々,その命に従わない人々が悪党と呼 ばれていたことになる。そこで,悪=必ずしも悪く はないことを反証例として取り上げることで認知的 葛藤を生起させる。そして,「なぜ『悪党』呼ばれ たのだろう。」,「誰にとっての『秩序を乱す存在』 なのだろう」といった問題意識が生成されることを 期待する。 その上で,悪党について記載された法律(式目追 加法や関東御教書など),悪党が誰なのか特定した 文書(悪党交名注文)の推移をグラフから読み取ら せ,なぜ,増加したのかを問う。グラフからは,悪 党交名注文の増加は1280年代から増加に転じ,1300 年以降ピークを迎えることが読み取れる。そして, その要因として,年表とともにaからdの事例を資料 で示せるようにした。 5 学 習 モ デ ル の 検 証 授業後に行ったアンケートでは,次のような質問を行い,それぞれについて「1.ほとんどそうは 思わない,2.そう思わない,3.どちらでもない,4.そう思う,5.とてもそう思う」の5段階 0 2 4 6 8 10 12 14 16 「悪党」が誰なのかが報告された文書 悪党研究会編『悪党の中世』岩田書院,1998年,pp.382‐385より作成 「悪」 ①「よくないこと,正義・道徳・法律に反すること」 ②「みにくいこと,不快なこと」,③「おとること」 ④「たけだけしく強いこと」*7。 「悪党」 ①「わるものの集団。転じてわるもの」,「鎌倉後 期から南北朝時代にかけて,秩序を乱すものとして 支配者の禁圧の対象となった武装集団。風体,用い る武器などに,従来の武士とは異なる特色を持ち, 商工業・運輸業など非農業的活動に携わるものも少 なくなかった(下線部筆者)。」*8 【『広辞苑』に記載されている「悪」「悪党」の意味】 a 「分割相続の様子」 分割相続により領地が減少,あるいはなくなってしまう武士が増え,荘園などを侵害したので,悪党と呼ばれた。(相 模国地頭職大友氏の相続,竹内理三編『鎌倉遺文』8巻,東京堂出版,1975年p.112より作成) b 「元の襲来(元寇)後の恩賞」 元の襲来で勝っても武士には十分な恩賞が与えられず,荘園などを侵害してしまうので,悪党と呼ばれ,その数を 増加させた。(荒井孝重『蒙古襲来』吉川弘文館,2007年,pp.190-195より作成) c 「自力救済」を説明する文章 この時代は自分が実力で問題を解決する時代だったので,問題を自分たちで解決しようとして自らが武装し,武力 で自己主張する悪党と呼ばれる人たちも増えた。(小林一岳『日本中世の歴史4元寇と南北朝の動乱』吉川弘文館,20 09年,p.85より作成) d 「鎌倉末期の守護の配置の移り変わり」 北条得宗家による専制政治が進み,他の武士の不満が増大し,悪党と呼ばれる人たちも増加した。(佐藤進一『鎌倉 幕府守護制度の研究増訂版』東京大学出版会,1983年,より作成) 【原因となる資料の出典と,習得内容】

(4)

本授業で実施した反証例提示による認知的葛藤の生起,原因と考えられ得る資料の提示によって, 学習者の問題意識が高揚し,習得内容を活用できたかを検討するために,社会認識にかかわる4点の 各質問項目の平均評定値について,評定値の中央値(3.00)を期待値として比較の対象とし,t検定を 行った。 その結果,①悪の意味に対する意外感に関わる平均評定値(4.16)は期待値よりも有意に高かった(t (62)=7.73, p< .001)。このことは,学習者が本授業によって悪の意味に対する意外感をより強く感 じたことを示している。このことから,本授業で実施した反証例の提示によって,学習者は認知的葛 藤を生起させ,自らが生きる時代の常識としての「悪」の意味ではなく,歴史事象が起こった当時の 様々な社会背景を考え合わせた上で,「悪」の意味を改めて捉え直していることが示唆されよう。 ②悪党がなぜ増えたかに対して疑問を感じるかに関わる平均評定値(4.25)についても期待値よりも 有意に高かった(t(62)=7.19, p< .001)。このことは,学習者が本授業によって悪党がなぜ増えたの かについて疑問をより強く感じたことを示している。この結果から,意外感は高く疑問ももてたこと が理解できるであろう。このように,「悪」の意味について意外に感じたことや(意外感),なぜ悪党 が増えたのか疑問に思うこと(認知的葛藤を解消しようとする思考の表れ)の平均値が高いことから, 反証例の提示が問題意識の高まりと焦点化に相当程度寄与していたことがわかる。実際の学習では, 資料「悪党が誰なのかが報告された文書」から,「1280年頃から増加している。」「1300年頃になると すごく増えている」といった発言が見られ,読み取り内 容は「悪党の増加」に絞られていた。このことから,読 み取ることができるであろう内容が単純である資料を提 示することによって,問題意識を的確にもてたことを示 している。 さらに,③悪党が増えたのにはいくつかのことが関連 しているかどうかの平均評定値(4.38)が期待値よりも有 意に高かったことに着目したい(t(62)=8.26, p< .001)。 というのも「悪党の増加にはいくつかのことが関連して いる。」と思っている傾向が強いことを意味するからで ある。 実際の授業において,学習者が資料から読み取った内 容は右のようなものであった。また,学習者がどの資料 を活用し,関連付けていたかを次頁【表】に示した。こ の表は,悪党が増えた原因となる要因としてどのような ものを挙げたかについて示したものである。表中の○印 は表の上覧に示した要因を関連付けており,人数は関連 付けた要因のパターンが同じ場合の人数を示している。 複数の要因を挙げた学習者は15名になる。このことから, ほぼ半数の学習者が資料から読みとった内容,つまり習 得内容を活用し,悪党が増加したことの様々な要因を関 連付け,理解していたことがわかる。例えば,学習後の まとめカードの記述において,「元に勝っても恩賞がな かったこともあって,自力救済でもあったから悪党が増 えたと思います。」,「分割相続で領地が減ったため生活 が 苦し くな り ,自 立救 済を した武 士が 多く なっ たと 思 う。」といったように,複数の要因を文章で表現できた 資料「鎌倉時代の年表」からの読み取り 元寇が終わって,貧しくなった御家人た ち の借金が増え,その後徳政令によって借 金 は帳消しになったけど,土倉からの信頼 が なくなり,金が借りられなくなってさら に生活が苦しくなる。(以下,徳政令とする。) 資料「元の襲来後の恩賞」からの読み取り モンゴル襲来で恩賞はなかった。(恩賞な し) 資料「分割相続の様子」からの読み取り 親 が死ん だと き,子 ども に分け 与え られ る財産や土地はどんどん減っていった。(分 割相続) 資料「自力救済の時代」からの読み取り 自分ことは自分で守る。この時代は武力 で 自分たちが正しかったことを主張するこ と は普通で,悪党は自力救済を行う集団だ った。(自力救済) 資料「鎌倉時代の守護の配置」からの読み取り 元寇の後,北条氏の守護が増えている。(守 護独占) 資料「悪党が誰なのかが報告された文書」からの 読み取り 悪党を取り締まる法律ができたから。(法律) その他(読みとった資料がはっきりしないもの) 人が代替わりして,反発する人が増えたから。 領地が減ったから。金がなくなり,生活が苦し くなったから。 【各資料から学習者が読み取った内容】

(5)

ことは,悪党増加の要因について資料から読み取った内容を活用し,構造化することができたことを 示している。また,単数の要因を挙げている学習者につい ても17名中15名が,参考になる友達の意見を記述する欄に 他の要因を書き込んでおり,他者が読み取った要因を吟味, 検討を加えた上で自己の解釈を記述している様子がうかが える。このことからも,認知的葛藤を駆動因として,悪党 増加の要因,つまり,なぜ疑問の解となる諸要因を資料か ら読み取り,活用することができたことが示唆される。さ らに,このことは,自力救済を悪党増加の一因であると考 えた生徒(9名)のいずれもが,モンゴル襲来後の恩賞が なかったことや分割相続など他の要因と関連させていたこ とからも推定できる。これは,自力救済は「ある問題に対 して,自分のことは自分で守る」ことであり,前提として 「ある問題」がなければ正当化できないことを,自立救済 を一因とした生徒のすべてが理解しているということに他 ならない。諸要因を関連付けることができたことは,鎌倉 時代後期の社会の仕組みや時代の構造,特に得宗専制にお ける諸矛盾(複合的な矛盾)が構造的に理解されたとも言えるのではないだろうか。 本授業で実施したように,悪党の増加という歴史事象に関する反証例が提示されることによって認 知的葛藤を生起させた学習者は,その解消に向けて資料を読み取り,その内容を活用したことにより, 妥当性の吟味ができ,関連付けたことの構造化が促進されたと考える。歴史学習において,反証例に よる認知的葛藤の生起と問題意識を高めるための読み取り内容が単純で明確な資料の提示,さらには, 認知的葛藤を解消する事例を資料として複数組み込んだことが効果的な学習方法の一つであることが 少なからず示唆されることであろう。 6 本 研 究 の 成 果 と 課 題 既存知識や先行学習経験によって獲得してきた認識に対し,認知的葛藤を生起させる反証例を提示 することで,問題意識を高揚させ,習得すべき内容を焦点化する役割を果たすことが明らかとなった。 また,原因となる資料を読み取り,習得した内容を活用した場面では,結果となる事象と原因と考 えられ得る事例との関連付けだけではなく,原因となる事例同士が互いに連関しているかどうかまで 検討を行う(一つの事象に対して複合的な原因を検討できる)学習が展開できれば,読み取った内容 を活用して,一つの時代の枠組みを構造的にとらえることが可能となる。そして,構造化された知識 も相互に連関させたものになり,認識の深化を促す手がかりとなることを実証できた。ただし,どの ような事例を資料として提示することが適切なのか,その要件を規定していく必要がある。今後の課 題としたい。 【 註 】 *1 麻柄啓一,進藤聡彦『社会科領域における学習者の不十分な認識とその修正 教育心理学からのアプローチ』東北大学 出版会,2008年,p.3 *2 高垣マユミ「教授理論と授業」,高垣マユミ編著『授業デザインの最前線Ⅱ理論と実践を創造する知のプロセス』北大 路書房,2010年,pp.3-8 *3 Berlyne,D.E,橋本七重,小杉洋子訳『思考の構造と方向』明治図書,1970年,pp.298-299 *4 下舘史嗣『資料の役割を明確にした社会科授業の設計』兵庫教育大学特定の課題についての学修の成果,2011年,p.38 *5 同上書,p.144 *6 米田豊「習得・活用・探究の授業構成と学習課題」岩田一彦・米田豊編著『小学校社会科学習課題の提案と授業設計 -習得・活用・探究型授業の展開-』明治図書,2009年,p.41 *7 新村出編『広辞苑 第6版』岩波書店,2008年,p.30 *8 同上書p.33 【表 学習者の関連付け】 恩 分 自 守 徳 法 自 人 賞 割 力 護 政 律 由 数 な 相 救 独 令 記 し 続 済 占 述 ○ 6 ○ ○ ○ 5 ○ ○ ○ ○ 1 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 1 ○ ○ 4 ○ ○ 1 ○ ○ 1 ○ 4 ○ ○ 1 ○ ○ 1 ○ 3 ○ 1 ○ 3 合計32名

参照

関連したドキュメント

生活のしづらさを抱えている方に対し、 それ らを解決するために活用する各種の 制度・施 設・機関・設備・資金・物質・

そのため、ここに原子力安全改革プランを取りまとめたが、現在、各発電所で実施中

C :はい。榎本先生、てるちゃんって実践神学を教えていたんだけど、授

1ヵ国(A国)で生産・製造が完結している ように見えるが、材料の材料・・・と遡って

④資産により生ずる所⑮と⑤勤労より生ずる所得と⑮資産勤労の共働より

これらの事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的