国語科授業論 : 「演奏の授業」を通して読むことの授業の在り方を考える
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(2) はじめに. 本論の目的は、 ﹁演奏﹂という比喩を用いることによって、国語科の読むことの授業の在り方を見つめ直し、. ﹁学習者、教師、教材﹂という授業の三要素が柔軟に、そして多彩に関係し合っていくダイナミックな読みの授 業、つまり﹁演奏の授業﹂の実現のための要件を明らかにすることである。. 従来、読むことの授業において、 ﹁学習者、教師、教材﹂という授業の基本的な構成要素については、次のよ. うな問題点があった。学習者に関しては、教師が発問を繰り返し、児童がそれに答えるという授業が行われてき. たために、教師の教材解釈を押しつけられ、児童自身の読みは存在しなかった。教師に関しては、教材解釈をす. るために教材を眺める﹁観察者﹂であり、授業においては作品のテーマの掘り起こしに躍起となる解説者であっ た。そして、教材に関しては、教材を神聖化し過ぎてきた。. これらの問題点を解決するために、今西祐行氏の提言をもとに、 ﹁新しい読みの授業﹂としての﹁演奏の授業﹂. を提案する。 ﹁演奏の授業﹂とは、 ﹁教師が柔軟で多彩な役割を担い、多彩な学習材を柔軟に活用しながら、一. 人ひとりの児童が読みの主体者となることができる授業﹂のことである。. 第二章. 第一章. ﹁演奏の授業﹂ の要件の確立. ﹁演奏の授業﹂ の具現化. ﹁演奏の授業﹂ の基礎理論. 本論では、次のような構成のもと、この﹁演奏の授業﹂を実現するための要件を明らかにしていく。. 第三章. 第一章においては、まず、従来の読むことの授業の問題点を解決するための﹁演奏の授業﹂を提案し、国語科. の授業論に﹁演奏﹂という比喩を用いる意義について考察する。 ﹁ダイナミックな読みの授業﹂つまり﹁演奏の. 授業﹂を実現するために﹁学習者、教師、教材﹂がどのような役割を果たせばいいのかを整理し、次のように.
(3) ﹁演奏の. ﹁演奏の. ﹁演奏の授業﹂ 実現のための、A、B、C、Dの四つ要件の柱を設定し、aからfまでの下位の要件を導き出し ていく。. 1 学習者について A 文学教材を確かに読ませる a 基礎的な読みの学習をさせる B 文学教材を豊かに読ませる 自分なりの読みをもたせ、心の中に生じたことを意識化させる. b 作品の﹁装置﹂に反応させ、作品世界を生きさせる C. 交流の結果をもとに﹁より価値の高い意味付け﹂をさせる. 一人ひとりの読みを交流させる. d 自分なりの読みを﹁意味付け﹂させる e f. 2 教師について C 教師が柔軟で多彩な役割を担って支援する. 3 教材について D 柔軟で多彩に学習材を用いて支援する. 第二章においては、第一章において整理した要件をもとに、論者が実践した授業から具体例をあげ、 授業﹂における読むことの在り方について検討する。. 第三章においては、第一章の﹁演奏の授業﹂の基礎理論と第二章の授業実践の分析・考察をもとに、 授業﹂の具現化のための要件をさらに整理し、まとめる。.
(4) はじめに. 目. 次. ﹁演奏の授業﹂の基礎理論 第一章 第一節 ﹁演奏の授業﹂について ⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮:ニ. ー 従来の﹁読むこと﹂の授業論の歴史的流れ 2 従来の﹁読むこと﹂の授業の問題点. 3﹁演奏の授業﹂の定義. 第二節 ﹁演奏﹂に関する比喩について ⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮五 1 ﹁演奏﹂に関する比喩とは 2 ﹁演奏﹂に関する比喩を用いる意義 第三節 ﹁演奏の授業﹂の構想 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮・・⋮・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮九. 1 ﹁演奏の授業﹂における学習者、教師、教材の関係 2 ﹁演奏の授業﹂における読みの構想. 第四節 ﹁演奏の授業﹂の要件 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮二十. 1 学習者について 2 教師について 3 教材について. ⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮四四. ﹁演奏の授業﹂の具現化 第二章 第一節 ﹁演奏の授業﹂の要件をもとにした授業構想 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮三二 第二節 ﹁演奏の授業﹂の要件をもとにした授業の実際 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・三五. 第三節 ﹁演奏の授業﹂実践の分析・考察. 1 調べをつかむ読み 2 調べを重ねる読み 3 調べを奏でる読み 4 調べを楽しむ読み − 学習者について A 文学教材を確かに読ませる B 文学教材を豊かに読ませる.
(5) 2 教師について C 教師が柔軟で多彩な役割を担って支援する 3 教材について D 柔軟で多彩に学習材を用いて支援する. 第三章 ﹁演奏の授業﹂の要件の確立 第一節 ﹁演奏の授業﹂成立のための要件 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮六九. 1 学習者について A ﹁文学教材を確かに読ませる﹂ための細要件 B ﹁文学教材を豊かに読ませる﹂ための細要件 2 教師について C ﹁教師が柔軟で多彩な役割を担って支援する﹂ための細要件 3 教材について D ﹁柔軟で多彩に学習材を用いて支援する﹂ための細要件 第二節 ﹁演奏の授業﹂における今後の課題と展望 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:6⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮七七. 文献一覧および内容解説 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮:ゴ・・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮五七. 学習材集 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮・・::⋮⋮⋮⋮::・::⋮⋮⋮⋮⋮・・::⋮⋮⋮⋮::・::⋮⋮⋮⋮::・::⋮⋮三十. 戦後国語科授業丁丁 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮:⋮・⋮⋮⋮⋮⋮:⋮・⋮⋮⋮⋮⋮:⊥ 提言﹁国語教育に望むもの﹂ ︵今西祐行氏︶ ⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮:・⋮⋮:・⋮十七 教材文 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮十九 ︵﹁ヒロシマのうた﹂、今西祐行、東京書籍、平成四年度版、六年下︶ 授業構想案 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・⋮⋮二四. 1 学習者について 2 教師について 3 教材について 注. おわりに く資料編﹀. 資料一. 五料二 面料三. 曲十四 資料五 資料六.
(6) 第一章 ﹁演奏の授業﹂の基礎理論. 第一節 ﹁演奏の授業﹂について 1 従来の﹁読むこと﹂の授業論の歴史的流れ. 戦後の国語教育において、 ﹁読むこと﹂の教育はどのように実践されてきたのであろうか。. 紙幅の都合により、ここでは﹁読むこと﹂の教育の流れを概観することにする。 ︵※ 片下の注一および論末の. 資料一に詳しく述べてある。また、文献を領域ごとに分け、内容を短く示したものを資料末尾に掲げた。︶. 昭和二二年、アメリカのコース・オブ・スタディにならった﹃学習指導要領国語科編﹄ ︵試案︶が公表され、. 言語機能重視の経験主義国語教育が方向付けられた。. この経験主義的国語教育に対し、昭和二十年代半ば、厳しい批判の声があった。そこで、 ﹁能力主義の国語教 育﹂が提唱され、これが後の﹁系統学習﹂へと結びつく。. 昭和三十年代に入ると、 ﹁系統学習による効率的な授業を﹂という根強い要望とアメリカなどから新しい教育. 思潮が導入され、民間教育研究団体において様々な方法が試みられた。児童言語研究会の二読総合法﹂、熊谷 孝氏を中心とする﹁総合読み﹂、大河原忠蔵氏の﹁状況認識の文学教育﹂などである。. 昭和四十年代、輿水実氏はさ国語教育のシステム化を主張し、 ﹁基本的指導過程﹂を提唱した。このころ、外. 山滋比古氏の読者論が注目され始ある。しかし、その読者論は作品論と読者論を並劇的にとらえる二元的発想に 限界があった。. 昭和六十年代から現在においては、読者論者は、サルトルやイーザーそれにヨーロッパの構造主義・記号論の. 流れを見据えながら、読者のそして読むことの意味をとらえようとしている。国語教育においても、そうした流. れを取り入れようという動きが現れている。たとえば、読者論の視点を読みの学習に取り入れようと理論化を図 っている、田近洵一氏などをあげることができよう。. 1.
(7) 2 従来の﹁読むこと﹂の授業の問題点. このように﹁読むこと﹂の授業を何とか充実させようとする営みは、連綿と続けられてきた。. 本論においては、そうした営みを踏まえながら、 ﹁学習者、教師、教材﹂という授業の基本的な構成要素につ. いて従来の﹁読むこと﹂の授業の問題点を明らかにし、それを改善する方法の検証・考察を通して、 ﹁新しい読 みの授業﹂の論を確立することをめざしている。. まず、従来の﹁読むこと﹂の授業の問題点について、関口安義氏は次のように述べている。 ︵※ 傍線と記号 は論者による。以下、同様。︶. このような解釈学理論に導かれた指導過程論では、 ︵3︶とカく が イさ の居・ 想 ることが の の窪くもち げら る その結果は︵1︶ 畠の 乖 が・・宅さ ’ 想 力によ て. にも百のこと2るのであるく読み﹀の多様性、倉. オくらむ季の諺 一 の小かなし、︵2︶日﹁一たら とてホ毘 そこに ら. てるると茜、る甲ーマのりこ一 となり . ず﹂ ぱ 明. 造としてのく読み﹀は、このような客観主義に立つ解釈学的国語教育からは生まれようがなかった。そこでは読むと いう行為への問いかけを欠き、教師の型通りのく読み﹀の跡をたどらせるのに汲々とした授業が行われるのである。 ︵関口安義、 ﹁読者論導入による授業の改革し、教育科学﹃国語教育﹄、明治図書、一九八五年九月、八頁︶. 傍線部︵1︶、 ︵2︶、 ︵3︶をもとに、 ﹁従来の授業の問題点﹂を整理すると、次のようになる。. ︵1︶ 学習者について 繋馨一. 関口安義氏が指摘しているように、従来の授業においては、教師の教材解釈が絶対視され、児童に教. 師の教材解釈を押しつけてきた。教師が発問を繰り返し、児童がその答えを当てるという授業が行われ、. 児童は教師の教材解釈を当てようと応答してきたのである。そのため、児童は主体的に教材を読み、自 分なりの作品世界を作り上げるというようなことはできなかった。. ︵2︶ 教師について 、繕蟹’麟. 従来の授業においては、教師は教材解釈をするために教材を眺める﹁観察者﹂であり、授業において. 2.
(8) 教材について灘羅. ﹁解答者﹂であり、今節の教材解釈を聞く﹁受容者﹂でなければならなかったのである。. は作品のテーマの掘り起こしに躍起となる﹁解説者﹂であった。そのため、児童は教師の解釈を当てる. ︵3︶. 従来の授業においては、教材が神聖化され過ぎてきた。教師は教材解釈において、教材の主題は何な. のか、作者はどのように教材を構成し、表現しているのかを把握することに没頭していた。そして、授. 業においては、発問を繰り返しつつ、教材解釈の結果を児童に当てさせたのである。そのため、児童は. 自分なりに、あるいは多義的に教材を読むことはできなかった。その結果、従来の授業においては、国 語への興味・関心を失わせ、国語嫌いの児童を増やすことも多かった。. 3 ﹁演奏の授業﹂の定義’. このように、従来の﹁読むこと﹂の授業においては、教材が神聖化され、教師が教材の﹁観察者﹂や﹁解説者﹂. であったために、学習者自身の読みが存在する余地がなかった。これらの問題点を解決するために、ここでは、. 次のような今西祐行氏の提言をもとに、 ﹁学習者、教師、教材﹂という授業の基本的な構成要素に関する解決策. について述べ、 ﹁新しい読みの授業﹂としての﹁演奏の授業﹂について提案する。 ︵※ 全文は論末資料二に掲載︶. ‘. ︵c︶禾一画のくロロー詔によ て一じ て るのだと思 てしま 五線紙にオタマジャクシやい ろいうな記号が書き込まれて音楽は作られます。 しかし、その音楽が完成するのは、 ︵a11︶ カ そ 、 旧 、まちカOなくたどりなカら なお力 自 なりに して したとき その目塾 ︵ai2︶文 るので. も一口.で としう言口 たどりなカら 自 なり ハ たとき ロ。4諺 の に る で一な しで う力 国語教育は、文字やことばをまちがいなくたどることを教えると同時に、それを自分の中で演奏することを教える 教育ではないでしょうか。. ︵b︶ 甜 一 して 誉 であ て一ならなると思しま はら し噛 であ て一 しので 。 ︵今西祐行、 ﹁国語教育に望むもの﹂、倉沢栄吉・田近洵一・外山滋比古編著、 ﹁毎日の言語指導﹄、シリーズ小学. 一. 3. 一.
(9) 校国語科教育一、教育出版、一九八二年二月、一一七頁︶. 傍線部︵a︶、 ︵b︶、 ︵c︶をもとに、 ﹁1 従来の﹃読むこと﹄の授業の問題点﹂においてあげた三つの 事柄に関する解決方法を次のようにまとめてみた。. ︵1︶ 学習者について 騨・毯鋤国.雛. 今西祐行氏の論の︵a−2︶ ﹁自分なりの共感を持ったとき、作品は読者の中に完成する﹂というこ. とを︵a11︶ ﹁自分なりに解釈して演奏したとき、その音楽は完成するのです﹂をもとに考えると、. 今西祐行氏は、児童を読みの主体者と捉え、読むことを﹁児童︵H読者︶が作品を共感をもって読み進 め、自分なりの作品世界を作り上げさせること﹂と捉えていると考えられる。. 国語教室において、一人ひとりの児童が自分なりの読みをすれば、実に多様な読みが存在することに. なる。そこで、児童一人ひとりを読みの主体者と捉え、多彩な読みを生かしつつ、読みを深化・拡充さ. せ る 授 業 を め ざ す 必 要 が 出 て く る 。 4 一 ただし、今西祐行氏が︵ai2︶ ﹁文字という記号をたどりながら﹂と述べているように︿豊かな読. み﹀はく確かな読み﹀の支えがあってはじめて成り立つものであることを忘れてはならないであろう。. ︵2︶ 教師について. 今西祐行氏は、 ︵b︶ ﹁決して解説者であってはならないと思います。すばらしい演奏者であってほ. しいのです﹂という。つまり、教師は児童とともに作品を読む立場に立つべきだというのである。これ. は常に﹁演奏者﹂の立場に立てということではなく、あるときは﹁演奏者﹂、またあるときは﹁解説者﹂、. 他のときは別の役割を担ってよいという意味に解釈すべきであろう。. 児童を読みの主体者と捉え、一人ひとりの読みを生かしつつ、読みを深化・拡充させるためには、教 師が柔軟で多彩な役割を担うことが必要なのである。.
(10) ︵3︶ 教材について. 今西祐行氏は、 ︵c︶ ﹁作品は、読者によってはじめて完成するのだ﹂と述べている。どんなに優れた. 作品を書いても、読者がそれを読まない限り、作品としての価値はない。読者が作品を読むことによって. はじめて作品としての存在価値が生じてくるのである。つまり、国語科の授業においては、児童が主体的. に教材を読むことによってはじめて、教材を学習する価値が生じてくるといえよう。. 一人ひとりの児童に主体的に教材を読ませるためには、柔軟に多彩な学習材を用いて児童を支援してい くことが必要なのである。. 多彩な学習材を柔軟に活用しながら、一人ひとりの児童が読みの主体者. 以上のことから、本論でいう﹁演奏の授業﹂は、次のように定義することができるであろう。 ・教師が柔軟で多彩な役割を担い、. となることができる授業. 第二節 ﹁演奏﹂に関する比喩について. 第一節では、今西祐行氏の提言をもとに、 ﹁演奏の授業﹂を﹁教師が柔軟で多彩な役割を担い、多彩な学習材. を柔軟に活用しながら、一人ひとりの児童が読みの主体者となることができる授業﹂と定義した。. 第二節では、この﹁演奏の授業﹂という比喩をさらに幅広く応用し、比喩を用いた授業論の先行例をもとに、 国語科における授業論に比喩を用いる意義についても考察していく。. 1 ﹁演奏﹂に関する比喩とは. 本論でいう﹁演奏の授業﹂は、先にも述べたように今西祐行氏の次のような提言に基づいている。. ・’ し し な言ロが書き込まれて︵b︶難は作られます。しかし、その音楽が完成するのは、 ︵c︶饗がそ. 私は自分の書く作品は、 ︵c︶薯によってはじめて完成するのだと思っています。五線紙に︵a︶ . の楽譜をまちがいなくたどりながら、なおかつ︵e︶自 オり一 たとき、その︵d︶一. 5.
(11) のです。 ︵b︶文学も同じです。文字という記号をたどりながら、 ︵e︶自 オり ’ ナとき、 ︵d︶帽副 一≡の に るのではないでしょうか。. 国語教育は、 ︵a︶文翌ばをまちがいなくたどることを教えると同時に、それを自分の中で演奏することを 教える教育ではないでしょうか。 ︵f︶国鶉師は決して解説者であってはならないと思います。すばらしい︵f︶嚢であってほしいのです。. ︵今西祐行、 ﹁国語教育に望むもの﹂、倉沢栄吉・田近洵一・外山滋比古編著、 ﹁毎日の言語指導﹄、シリーズ小学 校国語科教育一、教育出版、一九八二年二月、一一七頁︶. 日、、に る用三賄. ﹁演奏﹂という比喩をさらに幅広く活用するために、この文章において使用されている国語教育と音楽に関す. ︵a︶. 記 号 ︵b︶. ︵c︶ ︵d︶ ︵f︶. ︵e︶. オタマジャクシやいろいろな記号 音楽 演奏家 音楽は完成する 自分なりに解釈して演奏した 演奏者. る用語を整理すると、次のようにまとめられる。. 国語 に. る用語 文字やことば 文学 読者. 作品は読者の中に完成する 自分なりの共感を持った 国語の教師. 題名O l ﹁ O 1 0曲名. 読みO l 1 0 0 1調べ. 交流。 o l o , , 毎 o ■ o o l l合奏・重奏. 言葉1 , l l l I 暫音符. 音楽1 0 ■ 0 0 0 8作品. こうした今西祐行氏の比喩を生かしながら、本論では、前記の表以外に次のような比喩を使って述べていく。 教材l l − 0 0 1楽譜. 本論では、 ﹁演奏﹂に関する比喩を幅広く用い、音楽の概念を国語教育に持ち込むことによって、従来の授業. の在り方を見つめ直し、新しい国語科の授業、つまり﹁演奏の授業﹂の在り方を考えていく。 ︿注二V. 2 ﹁演奏﹂に関する比喩を用いる意義 前節においては、本論では﹁演奏﹂に関する比喩を幅広く用いるということを述べた。. 闇. 6. 顔.
(12) では、国語教育を論じる際に、比喩を用いることにはどのような意義があるのであろうか。. ︵1︶ 認識と発見の手段としての比喩. 認知科学選書十七﹃比喩と理解﹄は、言語学と関連分野の認知的な視点から考察した文献である。この中の一. 章﹁1.1 はじめに﹂において、山梨正明氏は、比喩を用いることの意義について次のように述べている。. である トリ・ク ︸. ‘. ・ら る ロカ る. るも で一なし この言 りあげてしくた の 言言と の とし. ・な目、のた に. り、む に謡をりた るf ・な. このような一定の制約にしたがう日常の言葉は、一面において、きわめて常識的で慣習的な世界の伝達にかぎられ る傾向がある。日常の言葉の機能として、この側面があることは否定できない。 しし峯剛力ら しなおし イミいク、愈・、な しかし、 ︵b︶ の 言 吊言・な 一 ロ と てしくた こ 日吊の着 の桐胴・なフィノターの櫛、 こえた しも伝.の か必 になる このような倉亀・な伝﹁. ︵ a ︶ 一 に 上 玉 は. ︵c︶しカし この の話 のあ ‘ 必 しもそのような のあ ‘ B吊 の伝・ より山’ 、画し しし愈覧・な. ︵山梨正明著、認知科学選書十七﹁比喩と理解﹄、東京大学出版会、一九八八年三月、一頁︶. ての’害もにな しる 7. 冒 ︵a︶のように﹁レトリックの一種﹂というように考えると、比喩は﹁むやみに言葉を飾りたてる修辞的な手. 段﹂に過ぎないかもしれないが、 ︵b︶のように認知科学の視点から考えると、比喩は︵c︶のような﹁新しい 創造的な世界を造りあげていくための、認識と発見の手段﹂になる。. 本論では、従来の国語教育を新しい視点から見直し、新しい国語科の授業つまり﹁演奏の授業﹂を創造するた. めに、傍線部︵c︶のような﹁新しい創造的な世界を造りあげていくための認識と発見の手段﹂として比喩を用 いていこうとしている。. ︵2︶ ﹁修辞的な手段﹂、 ﹁認識と発見の手段﹂としての比喩を用いた例. ﹁︵1︶ 認識と発見の手段としての比喩﹂であげた﹁修辞的な手段﹂、または﹁認識と発見の手段﹂として 比喩を用いて国語教育を論じた先行例としては次のようなものをあげることができる。.
(13) ①﹁修辞的な手段﹂として比噛を用いた例 浮橋康彦氏は、 ﹁学びがいのある国語科の授業形態の条件﹂. に関して、次のように述べている。. において、 ﹁全員発言﹂を生かす授業構想の基本. ﹁テーマに関わるかどうか﹂を優劣の基準にし、前以て︵指導書などによって︶教師が定めた﹁正答﹂に合うか合 わないかによって選別する指導方針は、言わばゴルフ型の授業と言えよう。 ゴルフの場合は小さな穴があって、 ︵そこに旗が立っていて︶ここに入れよと指示してある。ボールが早く穴に入 れば、それで勝ちということになるコ ﹁正答﹂にたどり着くまで発言の選別を続けて、 ﹁正答﹂が出れば終わり、と いう教師の指導は、 ﹁正答﹂の穴に早く入れよと催促するゴルフ型の授業と言える。 ︵中略︶ 野球のフェアグラウンドは九〇度の幅で開いており、バッターの足元からはるかかなたまでが有効打の範囲である。 授業における生徒の発言は、この野球場のフェアグラウンドのような広がりの中に受けとめて、 ︵小さな穴に入る ﹁正答﹂以外を、選別的に排除することに努めるのでなく︶むしろ何らかの形で生かすことに努力すべきだと、私は 考える。それが﹁全員発言﹂を生かす授業の構想の基本である。 へ中略︶ 授業はゴルフ型から野球型に切り替える必要があると、私は考える。. ︵浮橋康彦、 ﹁学びがいのある国語科の授業形態の条件﹂、 ﹁国語教育基本論文集成﹄第二五巻/国語教育方法論 ︵二︶指導形態論、明治図書、 一九九三年、三三九∼三四〇頁︶. 浮橋康彦氏は、正答中心主義の問答型の授業を﹁ゴルフ型﹂、 ﹁全員発言﹂を生かす授業を﹁野球型﹂という. ように比喩を用いて論じている。この浮橋康彦氏の文章において、比喩は﹁全員発言﹂の授業の構想について読. 者によりょく理解させるための例示、つまり﹁修辞的な手段﹂としての比喩に用いられているのである。. ②﹁認識と発見の手段﹂として比喰を用いた例. 中洌正尭氏は、 ﹃物語的文章の学習指導の工夫﹄において、 ﹁演劇の世界を読みの世界に反映させると、いろ. いろおもしろいことが考えられるのである﹂と述べ、 ﹁劇的な読み﹂について提案している。. もちろん、できるならば、すべての人物を演じてみるのがよい。この次元はもはや、演出家の仕事である。私は、 ﹁劇的な﹂読みの極致は、演出家としてのそれにあると思っている。 ︵a︶そ 一 日 のイ.に仁てし. 演出家の仕事は、劇中人物にとどまらず、それこそ、舞台装置、小道具、衣装、照明効果、音響効果、劇の構成・. 列. 8.
(14) 進行などのすべてにわたる。 演出家の仕事は、舞台をはさんで、評論家のそれと対極に位置している。いわば両者は演じる側の代表と観る側の 代 表 である。. 私は、受け身の観客︵学習者、読者︶の立場から、 一、身を乗り出して劇中人物と対話・交流する態勢へ 一、劇中人物を演じる態勢へ 一、舞台装置、小道具、衣装、照明効果、音響効果等を設定する態勢へ 一、劇を演出する態勢へ 一、劇を評論する態勢へ といった転換をはかりたいと願っている。つまり、 ︵b︶ ・ イ ミ・クな詔 を求めている。 ︵高潔正尭著、 ﹁物語的文章の学習指導の工夫﹂、大書の国語﹁豊かさと創造﹄、大阪書籍、一九九五年四月、三十. ∼三一頁︶. 中細正尭氏は、 ﹁演劇﹂の概念を国語教育に持ち込むことによって、児童を受容的な学習者の立場から能動的. な学習者の立場へと転換させ、傍線部︵b︶ ﹁物語のダイナミックな読み﹂を実現しようとしている。つまり、. ﹁劇的﹂に関する比喩を﹁新しい創造的な世界を造りあげていくための認識と発見の手段﹂として用い、 ﹁物語 ノ のダイナミックな読み﹂を実現しようとしているのである。. 本論は、中洌正尭氏の論の傍線部︵a︶ ﹁交響曲の指揮者﹂のように﹁音楽﹂の概念を国語教育に持ち込み、. ﹁新しい創造的な世界を造りあげていくための認識と発見の手段﹂として比喩を用いることによって、学習者を. 読みの主体者とする﹁ダイナミックな読みの授業﹂つまり﹁演奏の授業﹂を実現するための要件を探究すること を め ざ し て いる。. 第三節 ﹁演奏の授業﹂の構想. ﹁教師が柔軟で多彩な役割を担い、多彩な学習材を柔軟に活用しながら、一人ひとりの児童が読みの主体者と. 一. 9. ﹁.
(15) なることができる授業﹂である﹁演奏の授業﹂ ︵第一節︶、この﹁演奏﹂に関する比喩を﹁新しい創造的な世界. を造りあげていくための認識と発見の手段﹂として用い、 ﹁音楽﹂の概念を国語教育に持ち込むことによって、 ﹁ダイナミックな読みの授業﹂を実現しようとしている︵第二節︶ことを論じてきた。. 発問 心答. 習. 学習者. 学. 教 材. と こ. む 読. ⋮. 学び手 指導・支援 ⋮ ⋮ と 学習 ⋮ 業 こ 習 ⋮ 授 え手 む 学 ⋮ の 読 教 ⋮演奏 分析 ⋮ 学習材 学習 ⋮ ⋮ ⋮︿演奏の授業﹀ ⋮学習材⋮教え手が学習材を分析する。学び手が学習 材を読む。 ﹁教科書﹂だけでなく、児童の ⋮ 作ったものや他の資料も学習材になる。 ⋮. ﹁従来の授業﹂と﹁演. 本節では、 ﹁学習者、教師、教材﹂がどのような役割を果たせばいいのかを整理し、それをもとに﹁ダイナミ ックな読みの授業﹂つまり﹁演奏の授業﹂の実現のための構想を明らかにしていく。. 1 ﹁演奏の授業﹂における学習者、教師、教材の関係 ︵1︶ 従来の授業と﹁演奏の授業﹂における学習者、教師、教材︵学習材︶の比較 ﹁演奏の授業﹂における学習者、教師、教材︵学習材︶の関係を明らかにするために、. 師. 教材研究. 教. 奏の授業﹂における﹁学習者、教師、教材﹂という授業の三要素の役割を対比してみた。. 業 授 の. 来 従. 指導内容 ︿従来の授業﹀. 教材⋮⋮教師が教材研究をする対象である。 児童が学習をする対象である。 主に教科書を使用する。. 騨. 10. 一.
(16) 教師⋮⋮教材研究をする。教材研究の結果をもとに発⋮ 教え手⋮学習材を分析する。学び手が学ぶことを指 問を繰り返し、児童に教材を読ませる。 鱒 導・支援する。児童同士も互いに教え手と. コ 学習者⋮教師の発問の答えを考えることによって、教鴫 なる。 材を読む。 餌 学び手⋮教え手に指導・支援を受ける。学習材を学 ⋮ 習する。教師も学び手になる。 一1 従来の学習において、 ﹁学習者、教師、教材﹂という授業の三要素は﹁固定的で、単一な役割﹂を担っていた。. つまり、 ﹁教師﹂は教材研究を行い、その結果をもとに発問する。そして、児童は発問に答えるために﹁教材﹂ を読むという授業が行われてきたのである。. 一方、 ﹁演奏の授業﹂においては、 ﹁学習者、教師、教材﹂という授業の三要素は﹁柔軟で多彩な役割﹂を担. う。つまり、教師は、あるときは児童が﹁学習材﹂を学ぶことを指導・支援する﹁教え手﹂であり、あるときは 児童からあるいは児童とともに学ぶ﹁学び手﹂でもある。. また、児童は、あるときは必要に応じて教師から指導・支援を受けつつ﹁学習材﹂を学習する﹁学び手﹂であ. るが、またあるときは自分が学んだことを友達や教師に教える﹁教え手﹂でもある。 ’ そして、児童と教師の﹁学習材﹂は、基本的には教科書が教材であるが、必要に応じて児童の作り出したもの やその他の資料も学ぶ対象になる場合もあるのである。. このように、 ﹁演奏の授業﹂において、 ﹁学習者、教師、教材︵学習材︶﹂という授業の三要素が柔軟で多彩. な役割を担うのであるが、それぞれの要素がどのような役割を担うのかを、以下、さらに詳しく述べる。. ︵2︶ ﹁演奏の授業﹂における教師の役割. 従来の授業では、教師は次の表の﹁ウ 司会者的役割﹂と﹁工 指揮者的役割﹂を担うことに終始することが. 多かったのではないだろうか。教師が発問によって学習を進めたために、教師が授業の﹁主体者﹂であり、児童. ﹁. 11. 一.
(17) は学習の﹁受容者﹂であったのである。. そこで、 ﹁演奏の授業﹂では、児童一人ひとりに自分なりの読みを深化・拡充させるために、教師が次のよう. な柔軟で多彩な役割を担い、児童を支援していくようにする。こうすることによって、児童を学習の﹁主体者﹂ に転換させることができるのである。. ﹁工 指揮者的役割﹂を担うことが多かったため、児童は、. 作曲家・作詞家・編曲家的役割 ア ︵ア︶ 教材作成⋮⋮⋮教材︵纏楽譜︶の選択、学習材の書き換え イ 演出家的役割 ︵イ︶ 教材研究⋮⋮⋮教材︵11楽譜︶の決定、教材分析、目標分析 ︵ウ︶ 教授法研究⋮⋮指導案作成、指導法の決定 ︵エ︶ 学習者研究⋮⋮学習者︵畦演奏者︶の実態調査、その結果の分析 ウ 司会者的役割 ︵オ︶ 司会⋮⋮⋮⋮⋮話し合い︵11合奏︶の司会 割 工 指揮者的役割 ︵カ︶ 教材提示⋮⋮⋮説明、解説、演示︵闘範奏︶ 役 ︵キ︶ 反応喚起⋮⋮⋮諸媒体︵11楽譜、楽器︶の提示、発問、指示 の ︵ク︶ 反応統制⋮⋮⋮間合い︵“休符︶、指示、教示、誘導︵11指揮︶ 丁 ︵ケ︶ 診断⋮⋮⋮⋮⋮学習者︵11演奏者︶の反応・活動に対する教師の反応 丁 演奏者的役割 オ ︵コ︶ 学習⋮⋮⋮⋮⋮教師も学習者︵11演奏者︶ 観客的役割 カ ︵サ︶ 評価⋮⋮⋮⋮⋮評価基準の設定、評価︵11拍手︶活動 ︵シ︶ KR⋮⋮⋮⋮⋮学習者︵時演奏者︶の反応に対する教師の反応提示 キ 裏 方的役割 ︵ス︶ 学習材の製作⋮学習材を作成 ︵セ︶ 学習材の管理⋮学習で使った学習材を保管 ︵3︶ ﹁演奏の授業﹂における学習者の役割 従来の授業では、教師が﹁ウ 司会者的役割﹂と. 12.
(18) 次の表の﹁e 演奏者的役割 ︵j︶ 意見発表﹂に終始することが多かったのである。. 役. の. 学. 者. 習. 割. そこで、児童に柔軟で多彩な役割を担わせることによって、児童を﹁学習の主体者﹂へと転換させたい。 a 作曲家・作詞家・編曲家的役割 ︵a︶ 学習材作成⋮⋮⋮⋮第二次教材のもとになる学習材の作成 b 演出家的役割 ︵b︶ 学習計画⋮⋮⋮⋮⋮学習計画を立てる ︵c︶ 学習者選択⋮⋮⋮⋮交流する相手の選択 ︵d︶ 学習材選択⋮⋮⋮⋮学習材を使用するか否かを判断、学習材を選択して使用 学習形態選択⋮⋮⋮一人で、グループで、全体で学習するのかを選択 ︵e︶. 。 司会者的役割. ︵f︶ 話し合い⋮⋮⋮⋮⋮自由に、グループで、全体で話し合い d 指輝者的役割 ︵9︶ 発議・提案⋮⋮⋮⋮学習内容・学習方法への提案 ︵h︶ 指名⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・次の発表者の指名 e 演奏者的役割 ︵i︶ 作業⋮⋮⋮⋮⋮::・・教材や学習材を使って学習. ︵j︶ 意見発表⋮⋮⋮⋮⋮学習の結果を発表. f 観客的役割. ︵k︶ 確認⋮⋮⋮⋮⋮⋮・:学習内容の確認 ︵1︶ 単純反応・応答・h::教師の問いかけなどへのうなずき、表情の変化 ︵m︶ 質問⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・疑問に思ったことを質問 ︵n︶ 評価⋮⋮⋮⋮⋮⋮:・自己評価︵11拍手︶. g 裏方的役割 ︵o︶ 学習材の準備⋮⋮⋮学習に必要なものを準備 ︵p︶ 学習材の管理⋮⋮⋮学習で使ったものを片づけ、保管 ︵4︶ ﹁演奏の授業﹂における学習材の四. 従来の授業では、教師が発問によって授業を進めていたため、教科書とノートだけでも、十分に指導していく. 13.
(19) ことができた。. 例. 材 習. 学. の. ﹁演奏の授業﹂では、児童を学習の主体者と捉え、児童を支援しながら学習を進めて行くために、次のような 柔軟で多彩な学習材が必要となる。. あ 楽譜的学習材︵読みを深化・拡充させるもとになるもの︶ ︵あ︶ 教科書⋮⋮⋮⋮⋮テキスト ︵い︶ 学習計画表⋮⋮⋮学習内容、学習方法を確認させる ︵う︶ ﹁読みの地図﹂⋮意見の位置付けを明確にする、交流の地図 ︵え︶ 感想文集⋮⋮⋮⋮作品世界を分かち合わせる ︵お︶ 図書紹介表⋮⋮⋮発展的な読書の資料 い 音符的学習材︵読みを考えたり書いたりするためのもの︶ ︵か︶ 付箋紙⋮⋮⋮⋮⋮意見の整理に活用 ︵き︶ 学習カード⋮⋮⋮意見の整理や学習の記録に活用 ︵く︶ 学習プリント⋮⋮疑問を解決させる、意見を見つめ直させる う 休符的学習材︵読みの途中で一息入れ、意見を助けるもの︶ ︵け︶ ﹁はてな帳﹂⋮⋮随時、基本的な学習内容、発展的な読みの学習をさせる ︵こ︶ 学習のてびき⋮⋮困った児童にヒントを与える え 終止線的学習材︵授業の節目で評価するために使うもの︶ ︵さ︶ 自己評価欄⋮⋮⋮その時間の学習の評価 お 楽譜集的学習材 ︵し︶ 辞書⋮⋮⋮⋮⋮⋮分からない言葉を調べさせる ︵す︶ 録音テープ⋮⋮⋮インタビューを聞かせる ︵せ︶ 関連図書⋮⋮⋮⋮発展的な読書をさせる. ﹁学習者、教師、教材︵学習材︶﹂という授業の三要素をこのように捉えたとき、たとえば次のような指導の 展開が可能になろう。. 教師は、児童から出された問題をもとに、学習プリント︹い 音符的学習材 ︵く︶ 学習プリント︺を作成 する。 ︹キ 裏方的役割 ︵ス︶学習材の製作︺. 14.
(20) 児童は、学習プリントの問題を考えたり︹e 演奏静的役割 ︵i︶作業︺、話し合ったり︹c 司会者的役 割 ︵f︶話し合い︺しながら、読みを深化・拡充させていく。. その闘、教師は児童の学習の様子を観察し︹工 指郷者的役割 ︵ケ︶診断︺、必要に応じて児童に学習材や 助言を与えて︹工 指揮者的役割 ︵キ︶反応喚起︺児童を支援していく。. このように、 ﹁学習者、教師、教材︵学習材︶﹂という三要素が柔軟で多彩な役割を担うことによって、ダイ ナミックな授業、つまり﹁演奏の授業﹂が実現できるのである。. 2 ﹁演奏の授業﹂における読みの構想. ここまでは、国語科授業全体に関して述べてきた。本論では、特に﹁読みの授業﹂として、文学教材を用いた. 読みの指導に絞って考察を進めていく。読みの授業において、ダイナミックな授業、つまり﹁演奏の授業﹂を実. 現するために、 ﹁学習者、教師、教材﹂の三要素が柔軟で多彩な役割を担うとはどのようなことなのであろうか。. ︵1︶ ﹁演奏の授業﹂における読みとは. ﹁演奏の授業﹂は、児童を学習の主体者として展開されることから、 ﹁読者論﹂的な展開になる。. そこで、関口意義氏の論を中心に、ダイナミックな読みの授業つまり﹁演奏の授業﹂を展開するための柱を導 き出すことにしたい。. ①児童を主体者とする読み. 従来の授業においては、教師が発問し、児童が答えるという教師主体の問答型の授業が行われてきた。教師は. 教材解釈にもとづき発問を行い、児童は教師の答えを想定して当てさせられていた。その結果として、 ﹁読みの 押しつけ﹂が行われ、児童の主体的な読みは存在しなかったのである。. 読者論の立場をく読みVの指導に導入する有効性は、 習 蚤 ・ と ・ 一るところにある。. ︸. 15. .
(21) そこには他者の読みの押しつけは存在せず、個々の学習者は教材の中に入り込み、自己を解放し、豊かな夢を育むこ とができるのである。 ︵関口安義著、 ﹁国語教育と読者論﹄、授業への挑戦一二五、明治図書、一九八六年二月、十七頁︶. 関口安義氏は、傍線部のように﹁学習者を︿読み﹀の主体者として位置づける﹂ことを主張している。そうす. るによって、 ﹁個々の学習者は教材の中に入り込み、自己を解放し、豊かな夢を育むこと﹂ができるのである。. そこで、 ﹁演奏の授業﹂においては、まず、児童を読みの主体者と捉えて文学教材に関わらせていきたいと考. える。 ﹁演奏﹂という比喩を用いたのは、 ﹁演奏者﹂が主体的にあるいは能動的に曲を演奏するように、児童に. も主体的に文学教材を読んで欲しいからである。児童に疑問を出させ、自ら考えさせることによって、児童が読 みの主体者として学習できるような授業を展開するようにしたい。 ② 多義的な読み. 従来の授業においては、文学教材を段落分けし、段落ごとに読解するということが多かった。この方法で作品. を読み進めると、作品を細かく区切って指導するために、作品のモチーフや主題はつかみにくくなってしまう。. 読者論の立場を︿読み﹀の指導に導入する有効性は、学習者を︿読み﹀の主体者として位置づけるところにある。. 一方、 と の としての 品一 その におして多 堅なものであ て 百じ で一言 なしもの. 勾1このことの認識は大事である。が、文学作品のこうした特徴を十分理解できず、文学のテキストを数学や法. 律のことばと同じように考えて、多層的な読みの存在を認めることのできない人もいる。 ︵関口智恵、 ﹁読みの理論と読むことの教育﹂、全国大学国語教育学会編、 ﹃読むことの教育と実践の課題﹄国語科 教育研究三、明治図書、一九八五年二月、三五頁︶. 関口安義氏が、傍線部で述べているように、 ﹁ひとつの織物としての作品は、その本質において多義的なもの﹂. である。だからこそ、作品を段落に分けずに﹁ひとつの織物として﹂ ﹁多義的﹂に読ませる方法を考えて行くべ き で は な か ろうか。. ﹁演奏の授業﹂においては、文学教材を段落分けしないで、登場人物や主題に関する複数の観点から多義的に. 一. 16. 一.
(22) 読ませたいと考えた。 ﹁演奏﹂に関する比喩を用いて言えば、ある曲の演奏を聴いたときに、同じ楽譜に基づい. て演奏されているのに、演奏者によって曲の印象が違ってくる。それは、演奏者が曲を演奏する観点が微妙に違 っているからに他ならないからである。. 学級の児童全員に文学教材の﹁読みの観点﹂を出させて整理し、観点ごとに作品を多義的に読ませるようにし. たい。こうすることに、文学教材を段落ごとに分けることなく、︸人ひとりの﹁読みの観点しの違いを生かして 読ませることが可能となる。. ③ 交流する読み. 従来の授業においては、ある学習課題を設定し、その課題を解決するためにグル:プあるいは学級全体で話し. 合うという場が設定されていた。しかし、その話し合いにおいて発言できる児童の数は時間の関係上限定されて おり、全員の児童が主体的に読みを交流することは難しかった。. しかも、学習課題あるいは問題を解決するための話し合いは、正解到達のためのものであり、児童の多様な読 みを生かした交流がなされているとは言えなかったのである。. 教室でのく読み﹀では、 ⋮老 摯 、−も必 た それは批評意識の養成にもつながる大事な観点で ある。他者の︿読み﹀と出会うことによって、個々の学習者の︿読み﹀は大きく成長する。他者の︿読み﹀の批評を 通し、各自は徐々に主体的な︿読み﹀を確立するのである。 ︵以下、省略︶ ︵関口道義、 ﹁テクストとの︿対話﹀の尊重﹂、 ﹃月刊国語教育﹄、東京法令出版、一九九一年五月号、二十頁︶. 関口皇天氏は﹁学習者相互の︿読み﹀の交流も必要だ﹂と述べている。交流を通して﹁他者の︿読み﹀と出会. うことによって、個々の学習者の︿読み﹀は大きく成長する。﹂からである。﹁演奏の授業﹂では、 ﹁② 多義. 的な読み﹂で述べたように、 ﹁読みの観点﹂ごとに文学教材を読ませていく。そして、観点ごとの児童の多様な. 読みを分類・整理させることによって、一人ひとりの読みの位置付けを明確にさせる。これをもとに、同質の読. みと、次に異質の読みと交流させる。同質の読みと出会わせることによって読みを深化させ、異質の読みと出会. 一. 17. 一.
(23) わせることによって読みをゆさぶり、拡充させようというのである。. このように、多様な読みと交流させることによって、 一人ひとりの読みを深化・拡充させることができる。. ④ 発展的な読み. 従来の授業においては、文学教材の単元であれば、一単元の配当時間の八割を読みのために、そして残りの二. 割を関連学習や発展的な学習に使っていた。これでは、国語科の﹁読む、書く、話す、聞く﹂という四領域の中. で﹁読み﹂の学習に重点が置かれ過ぎており、総合的な国語学力を身に付けことができたとは言えないのではな いだろうか。. 学習者の主体的参与があってはじめて教材が成立すると考える読者論的発想に立つ国語科の指導は、倉澤栄吉の説 く単元学習理論にも近いものだ。悪しき方法論信仰と訣別し、斗 の亦イに、心したさまざまな 、 、の言 一 、 9 の 二 の ︸一 ﹂ 彊く♪ ら るところなのである イ 毒 テレビ・ラジオ・音楽・コミックー子ども文化における映像や音楽の時代は、今後一層進行するだろう。そうした 中にあって、活字文化を特権化するのでなく、映像と読書、映像と文学教育、音楽と読書、さらには漫画と読書とい つたテーマを一元論的発想でとらえ、考え抜く柔軟な思考が求められる。今日の﹁読む生活とその教育﹂という課題 は、ひとり学校教育のものとしてあるばかりでなく、社会全体の問題としても存在しているのである。 ︵関口安義著、 ﹁国語教育と読者論﹄、授業への挑戦一二五、明治図書、一九八六年二月、五一頁︶. 関口安義氏が述べているように、今は﹁子ども文化における映像や音楽の時代﹂であるつしたがって、その時 代に応じた﹁映像化時代の︿読み﹀の教育﹂が必要である。. ﹁演奏の授業﹂では、 ﹁発展的な読み﹂を大事にし、たとえば、発展的な読書︵読む︶、感想文や手紙の作成. ︵書く︶、読書会︵話す︶、テープを聞く活動︵聞く︶などの多様で総合的な学習活動をさせることで、自分な りに作り上げた作品世界をさらに深化・拡充させたい。. つまり、 ﹁演奏の授業﹂の﹁読みの授業﹂は、次の四つの柱を満足するものでなければならないのである。. 18.
(24) ︵3︶ ﹁読みの展開﹂の構想. ﹁演奏の授業﹂は、児童一人ひとりに自分なりの読みをもたせ、多様な読みと交流させることによって読みを. 深化・拡充させ、自分なりの作品世界を作り上げさせることを目指している。この読みの展開は授業においては. もちろんのこと、一人ひとりの児童の内部においても起こっているものと考えられる。 ︿注三﹀. オーケストラ. この展開は、オ1ケストラにおいて演奏者が演奏を完成させていく過程とよく似ている。そこで、オーケスト ラが演奏を作り上げていく過程を参考に、次のような﹁読みの展開﹂を構想した。 ﹁演奏の授業﹂の読み. 他の人の演奏を聴いたり、 他の曲を演奏したりする。. る。. 予行練習や演奏会で演奏す. パ:トごと、 あるいは全体 で練習する。. を弾いてみる。. 鶏灘。⋮演奏者︵纏児童︶に楽譜︵11教材︶を見せ、自分なりの調 楽譜を見て、自分なりに曲 べく読みその一﹀を奏でさせる場である。そして、自ら出 させた疑問を考えさせることによって意味付けた︿読みそ の二﹀を奏でさせる場のことである。 ⋮演奏者が各パート︵1ーグループ︶ごと、あるいは全体で調 べを重ね合い︵涯交流︶深化・拡充させたく読みその三﹀ を奏でさせる場のことである。 嚢、獲⋮演奏者が予行練習を行い、作り上げた演奏︵11作品世界︶ ↑ ︿読みその四﹀を奏でさせる場のことである。 ⋮演奏者が同じ作者や同じ分野の音楽︵腫作品︶を弾いたり 聴いたりすることによって、自分の演奏を深めたり広げた りした︿読みその五﹀などを奏でさせる場のことである。 ︵4︶ ﹁読みの段階﹂の構想 ,舞罫義. ︵3︶の﹁読みの展開﹂を学習過程に応用するために、 さらに細分化すると次のようになる。. 曲想の段階⋮⋮⋮教材︵U楽譜的学習材︶と出会い、題名︵“曲名︶をもとに、どんな話か︵一−曲︶を想 ↑ 像する段階。 試奏の段階⋮⋮⋮自分なりに教材を読み、疑問点︵H音︶を出す。それをもとに、読みの観点を整理し、 ↑ 各観点ごとにく読みその一﹀を書く段階。. 19.
(25) 麟賜難、、’宙懇. 基礎練習の段階⋮漢字の練習へ意味調べ、音読の練習などを行い、言葉︵紅音符︶の知識を身に付ける段 ↑ 階。. 独の腰階⋮⋮⋮学習プリント︵11音符的学習材︶の疑問を解決して、読みを意味付け、︿読みその二﹀ ↑ を書く段階。 重奏の段階⋮⋮⋮﹁読みの地図﹂ ︵H楽譜的学習材︶を見て、同じ読み︵11調べ︶の友達と交流︵籠合奏︶ ↑ する段階。 合奏の段階⋮⋮⋮﹁読みの地図﹂を見て、違う読みの友達と交流︵11重奏︶する段階。 ↑ 再独奏の段階⋮⋮交流の結果を書いたカード︵11音符的学習材︶をもとに、 ︿読みその三﹀を書く段階。. 予行練習の段階⋮感想文を書き、各観点の読みを総合し、自分なりの作品世界︵腿演奏︶つまり︿読みそ ↑ の四﹀を作り上げる。そして、それを発表する準備の段階。 演奏会の段階⋮⋮感想文集︵11楽譜的学習材︶を読み合って、 ︿読みその四﹀を学習カード︵口音符的学 習材︶を使って、全体で交流する段階。. 再演の段階⋮⋮⋮インタビューの録音テ:プ︵”楽譜集的学習材︶を聴いたり、関連図書の読書をしたり して︿読みその五﹀などを置き、文学への興味・関心を高める段階。. 第四節 ﹁演奏の授業﹂の要件. 第一節では、 ﹁演奏の授業﹂が﹁教師が柔軟で多彩な役割を担い、多彩な学習材を柔軟に活用しながら、一人. ひとりの児童が読みの主体者となることができる授業﹂であると定義した。そして、 ﹁演奏﹂に関する比喩を. ﹁認識と発見の手段﹂として用いること︵第二節︶によって、従来の授業における﹁学習者、教師、教材︵学習. 材︶﹂の役割を見つめ直し、これらが柔軟で多彩な役割を担うダイナミックな授業、つまり﹁演奏の授業﹂の構 想を明らかにした︵第三節︶。. ﹁学習者、教師、教材︵学習材︶﹂が柔軟で多彩な役割を担うダイナミックな授業、つまり﹁演奏の授業﹂を. 騨. 20. 隅.
(26) 実現させるためには、教師が押さえておくべき事柄︵11﹁演奏の授業﹂を実現するための要件︶を導き出す必要 がある。. 本節では、まず﹁読みの授業﹂における﹁学習者、教師、教材︵学習材︶﹂のそれぞれについて﹁演奏﹂とい う比喩を用いて考察し、それを通して要件の柱とそれを支える要件を明らかにする。. 1 学習者について. 第三節﹁﹃演奏の授業﹄の構想﹂の﹁2︵3︶ ﹃読みの展開﹄の構想﹂において、 ﹁調べをつかむ、重ねる、. 奏でる、楽しむ﹂という四つの読みについて述べた。 ﹁演奏の授業﹂においては、この四つの読みの過程を経る. ことによって、児童一人ひとりに自分なりの作品世界を作り上げさせていくことを目指す。この﹁演奏の授業﹂. の﹁﹁四つの﹃読みの展開﹄の構想﹂は、次の大槻和夫氏の﹁文学作品の読みの過程を踏まえた授業構想﹂の四 つの読みの構想と重なり合うものと考えられる。. 一なカろうカ. 右のことをまとめると、文学作品の読みの過程は、−そ 凝 に一とうしう カ カ てしる カ に てとらえる◎ と、 そ とう . え 居ロ・一る カとしう噛・とが、ほとんど同時進行的に、あ るいは前後して進行する過程だということになる。 ︵中略︶ 文学作品の読みを右のように考えると、9 ロ。 一理 一” ロ●。と 想 る カ . ま る. 雪 さ たりとし た ・な≡ ・である。 ︵以下、省略。︶. 鋸 撫 は、 − ‘霧である。a一 なし 訟 るように たり 居ロ カらなる語 想ロ. この過程では、一人読みの段階では気付かなかった作品の﹁装置﹂に気付いたり、その﹁装置﹂に着目する. c自 ・し に こ たことカとう .たカ ロロ とも ら ﹁謹璽講興縫.建轟. から始めるとか、冒頭部分だけを読んで﹁読みの構え﹂を呼び覚ますなどという方法によって、まず、読もうとする 能動的な姿勢を立てさせておいて、その後に一人ひとりが作品に読み浸る時間を保障したい。次いで、その読みの過 程で生じた自分の心の中の動きを、テキストに記号を書き込むなり、書きつけるなりしてチェックさせておきたい。 である。. 一. 21. 一.
(27) ことによって新たな読みが生まれることも期待したい。これは、 ﹁読み方﹂を学ばせる過程でもある。 鋳四は、難 額である。 ﹁意味付け﹂は、個々の形象の読みにおいても、形象相関の読みにおいても、 作品全体についても必要である。dこの 居ロ・一﹂におして一 削 とりの 思”・一﹂か さ な一. れば劉が、それと同時にeそのバーによ てf より の し罎・一﹂もありうることにも気付かせたい。. ︵大槻和夫、 ﹁文学作品の読みの過程とその指導﹂、田近洵一・浜本純血・府川源一郎編、 ﹁﹁読者論﹂に立つ読み の指導﹄小学校高学年編、東洋館出版、一九九五年二月、十九∼二十頁︶. 調べをつかむ読み︵試奏・基礎練習︶. 読みの展開︵段階︶. ︵試奏︶調べをつかむ読み︵試奏︶. ︵独奏︶調べを重ねる読み. 調べを重ねる読み. ︵重奏・合奏︶ ︵再独奏︶. ,. f 交流の結果をもとに﹁より価値の高 い意味付け﹂をさせる. るe 一人ひとりの読みを交流させる. d 自分なりの読みを﹁意味付け﹂させ. 界を生きさせる。 自分なりの読みをもたせ、心の中に生じたことを意識化させる. B 文学教材を豊かに読ませる b 作品の﹁装置﹂に反応させ、作品世. A 文学教材を確かに読ませる a 基礎的な読みの学習をさせる. ﹁演奏の授業﹂の構想 ﹁演奏の授業﹂成立の要件. 大槻和夫氏と﹁演奏の授業﹂の読みの構想との関係を整理すると、次のようになる。. d 意味付け. c 読みの意識化. b 装置への反応 調べをつかむ読み. a 基礎的な読みの学習. 大槻和夫氏の授業構想 読みの過程. 読み ○コード的解読 としての読み. きさせる読み○意識化させる 読み. ○作品世界を生. ○ ﹁ 意 味 付け﹂ の読み. e 交流. い意味付け. f より価値の高 調べを重ねる読み. ︵予行練習・演奏会︶. 調べを奏でる読み. ︵再演︶. 調べを楽しむ読み. 大槻和夫氏の論に沿いながら、 ﹁演奏の授業﹂における学習者の読みに関する要件の柱を整理していく。. 大槻和夫氏の言う﹁①その作品の中にはどういう世界が描かれているのかを表現に即してとらえる過程﹂を展. 一. 2 2. 一.
(28) 開するためには、 ﹁A 文学教材を確かに読ませる﹂という要件の柱が必要である。また、 ﹁②その世界をどう. 感じ、考え、意味付けるのかという過程﹂を展開するためには、 ﹁B 文学教材を豊かに読ませる﹂という要件 の 柱 が 必 要 である。. 実際の授業を展開するためには、この二本の柱となる要件の下に、さらに下位要件を設ける必要がある。まず、. 大槻和夫氏の言う﹁コード的解読としての読み﹂の﹁a 基礎的な読みの学習﹂については、 ﹁演奏の授業﹂の. ﹁調べをつかむ読み﹂の﹁試奏・基礎練習の段階﹂において行い、 ﹁a 基礎的な読みの学習をさせる﹂という 要 件 が 設 定 できる。. 次に、 ﹁作品世界を生きさせる読み﹂の﹁b 装置への反応﹂については、 ﹁調べをつかむ読み﹂の﹁試奏の. 段階﹂において行い、 ﹁b 作品の﹁装置﹂に反応させ、作品世界を生きさせる﹂という要件が設定できよう。. そして、 ﹁意識化させる読み﹂の﹁C 読みの意識化﹂については、 ﹁調べをつかむ読み﹂の﹁菓子の段階﹂. において行い、 ﹁c 自分なりの読みをもたせ、心の中に生じたことを意識化させる﹂という要件が設定できる。. ﹁﹃意味付け﹄の読み﹂の﹁d 意味付け﹂については、 ﹁調べを重ねる読み﹂の﹁独奏の段階﹂において行 い、 ﹁d 自分なりの読みを﹁意味付け﹂させる﹂という要件が設定できる。. ﹁﹃意味付け﹄の読み﹂の㍉e 交流﹂については、 ﹁調べを重ねる読み﹂の﹁重奏・合奏の段階﹂において 行い、 ﹁e 一人ひとりの読みを交流させる﹂という要件が設定できよう。. ﹁意味付けの読み﹂の﹁f より価値の高い意味付け﹂については﹁調べを奏でる読み﹂と﹁調べを楽しむ読. み﹂において行い、 ﹁f 交流の結果をもとに﹃より価値の高い意味付け﹄をさせる﹂という要件が設定できる。. ところで、傍線部9において、大槻和夫氏は﹁文学作品の読みの授業は、次の四つの読みの統合過程として構. 想するのが望ましい﹂と述べており、 ﹁読みの授業の構想﹂は一つのサイクルとして捉えることができる。. そこで、本論では、次のaからfまでの過程を﹁基本サイクル﹂、 ﹁基本サイクル﹂の一部を応用したdから. 23.
(29) 調べをつかむ読み ぐ調べを重ねる読み嚢鑑. ﹁演奏の授業﹂の構想. fまでの過程を﹁応用サイクル﹂と呼ぶことにする。. ルクイ ル ク イ サ 用 応. 大槻和夫氏の読みの授業の構想 a 基礎的な読みの学習b 装置への反応。 読みの意識化d 意味付けe 交流f より価値の高い意味付け. サ本基. AとBの二本の柱となる要件とaからfまでの六つの下位要件を導き出してきた。 ﹁演奏の授業﹂を実現させ. るには、さらに細かい要件を設定しておく必要がある。ダイナミックな﹁演奏の授業﹂を行うためには、きめ細 かな設計が不可欠なのである。. A 文学教材を確かに読ませる a 基礎的な読みの学習をさせる. ﹁a 基礎的な読みの学習﹂をさせるためには、それを支える基礎的な﹁⑮ 言葉の学習﹂と読みと言葉に関. する発展的な学習をさせる﹁@ 随時の学習﹂が必要である。そして、これらを児童が身に付けたかどうかを確 認させるために、 ﹁@ 自己評価﹂をさせることも必要であろう。. 文章をたどり読む学習 漢字や語句の学習 随時、読みと言葉の学習. そこで、基礎的な読みの学習をさせるために、次の四つの細要件が必要であると考える。. ai1 ︻基 a礎的な読みの学習︼ a−2 ︻⑮言葉の学習︼ a−3 ︻@随時の学習︼. 24.
(30) a14 ︻ @ 自 己 評 価 ︼ 各時間に自己評価. a−1 ︻a 基礎的な読みの学習︼ 文章をたどり読む学習. ﹁a 基礎的な読みの学習﹂のために、粗筋をまとめさせる。挿し絵をもとに粗筋をまとめさせることによっ. て、文章をきちんとたどりながら大意をつかむという﹁基礎的な読みの学習﹂をさせることができるのである。. a−2 ︻⑤ 言葉の学習︼ 漢字や語句の学習. 第三節の﹁2︵4︶ ﹃読みの段階﹄の構想﹂で示した学習過程に﹁基礎練習の段階﹂を位置づけた。この. ﹁基礎練習の段階﹂は、 ﹁漢字の練習、意味調べ、音読の練習を行い、言葉︵11音符︶の知識を身に付ける﹂段. 階である。指導過程中にこのような段階を設定することによって、基礎的な読みの学習を支える言葉の力を高め、 児童全員に確かに読む学習をさせることができる。. ai3 ︻◎ 随時の学習︼ 随時、読みと言葉の学習 ヨ 児童一人ひとりの学習速度が異なっているために、ある児童は早く作業を終え、ある児童はなかなか終わらな 2. いという事態が生じる。そのようなとき、早く終わった児童に﹁随時の学習﹂をさせるのである。できれば児童. の実態に合わせて、教材ごとに﹁学習帳﹂のようなものを作って使用させるとよいであろう。. a−4 ︻@ 自己評価︼ 各時間に自己評価. 各時間の最後に自己評価をさせることによって、その時間の﹁学習内容﹂と﹁学習方法﹂を児童に振り返らせ. る。児童に自分自身の学習の成果を自覚させることによって、学習への興味・関心を高め、確かに読む力を身に. 付けることができる。なお、次の時間の始めに、よい自己評価を紹介するというようなフィード・バックを行う と学級全体に成果が還元されよう。.
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