小学生を対象とした障害の理解度に関する調査研究 : 障害児者に対する態度や認識を中心として
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第70巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 70, No.1. 令 和 元 年 8 月 August, 2019. 小学生を対象とした障害の理解度に関する調査研究 ― 障害児者に対する態度や認識を中心として ―. 田名部沙織・細谷 一博* 札幌市立中沼小学校 *. 北海道教育大学函館校 障害児臨床研究室. The Understanding of Elementary School Students Regarding Disabilities: A Study on the Attitudes and Perceptions toward Children with Disabilities TANABU Saori and HOSOYA Kazuhiro* Sapporo City Nakanuma Elementary School *. Department of Special Education,Hakodate Campus,Hokkaido University of Education. 概 要 本研究では,通常学級に在籍する小学生の態度や認識を中心とした障害理解の程度を明らか にすることを目的とした。「児童生徒版障害者に対する多次元的態度尺度」(楠・金森・今枝, 2012)を用いて調査をした結果,1年生と2~6年生の間には意識の差があることや6年生は 他の学年に比べて関わりへの意欲や態度が低いことが明らかとなった。また,全学年共通して, 関わりや交流や共に学習することといった行動での意識は身についているが,それらに伴って 育まれることが望まれる心理的理解を表す仲間意識や正しい知識が身についていないことが明 らかとなった。この結果を受けて今後,障害理解教育を行う際には,障害児者を身近に感じる 学習内容を各学年の発達段階や学習段階に合わせて授業に取り入れることや授業実施前に児童 の障害児者に関する知識や認識や態度に関して実態把握をする手続きが必要であることが示唆 された。. Ⅰ 問題と目的. 周囲の人々が,障害のある人や子どもと共に学び 合い生きる中で,公平性を確保しつつ社会の構成. 中央教育審議会初等中等教育分科会(2012)は,. 員としての基礎を作っていくことが重要である。. 「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育シ. さらに,次世代を担う子どもに対し,学校におい. ステムの構築のための特別支援教育の推進(報. て,これを率先して進めていくことは,インクルー. 告) 」おいて, 「障害者理解を推進することにより,. シブな社会につながる」と示し,インクルーシブ. 129.
(3) 田名部沙織・細谷 一博. な社会を実現するには,学校において障害理解を. わりをもちながら生きていく現代社会において重. 育むことが重要であると述べている。小学校学習. 要である。このような障害理解教育の意義につい. 指導要領(文部科学省,2017)では, 「障害のあ. て徳田(1994)は,障害理解教育とは,障害のあ. る幼児児童との交流及び共同学習の機会を設け,. る人に関わるすべての事象を内容としている人権. 共に尊重し合いながら協働して生活していく態度. 思想を基軸にすえた教育であり,障害に関する科. を育むようにすること(第1章総則)」や「障害. 学的認識の形成を目指したものであるとしている。. のある幼児児童生徒との交流及び共同学習の機会. 徳田(2005a)は,障害理解教育は障害理解の. を通して,協働することや,他者の役に立ったり. 発達段階(第1段階:気づきの段階,第2段階:. 社会に貢献したりすることの喜びを得られる活動. 知識化の段階,第3段階:情緒的理解段階,第4. を充実すること(第6章特別活動) 」と記されて. 段階:態度形成段階,第5段階:受容的行動の段. いる。このことから,これまで以上に「交流及び. 階)を促進していく教育であると述べている。こ. 共同学習」が目的を持ち学校教育の中で取り入れ. れをうけて,西舘(2009)は,小学生における障. られることが推測される。また,「交流及び共同. 害理解プログラムを作成する中で,小学生に対し. 学習」を円滑に進めるためには,障害についての. ては,気づき,知識化,情緒的理解の段階を積み. 知識や障害のある子どもたちへの理解を促すため. 重ねることを目標の中心にすえた教育を行うべき. の事前学習が必要とされている(全国特別支援教. であること指摘している。また小林・梁・今枝・. 育推進連盟,2007)。さらに,久保山(2009)は,. 金森(2015)は,系統的な障害理解教育プログラ. 支援を必要とする子ども本人の成長とともに,支. ムを作成するために,小学生の各学年における児. 援を必要とする子どもの周囲にいる子どもたち. 童の障害理解の発達段階を明らかにし,第3学年. が,その子の特性やその子に必要な支援について. の授業目標は,第4段階の態度形成の到達を目指. 理解を深めていくことが大切であると述べてい. し,第2段階の知識化の段階,第3段階の情緒的. る。これらのことから,インクルーシブな社会の. 理解の段階に関わるものと示している。さらに第. 実現や学校現場での交流及び共同学習の推進,障. 4学年,第5学年の授業目標は,第2段階の知識. 害のない児童の成長のためにも障害について学ぶ. 化の段階や第3段階の情緒的理解の段階の他に. 障害理解教育の必要性が高まっているといえる。. も,第4段階の態度形成の段階に関わるものとし. 障害理解の定義について徳田・水野(2005)は. ている。水野(2016)は障害理解教育を実施する. 「障害のある人に関わる全ての事象を内容として. 際には,子どもの発達や理解の状態をとらえたう. いる人権思想,特にノーマライゼーションの思想. えで行うことが重要であることを報告している。. を基軸に据えた考え方であり,障害に関する科学. また,白井・武蔵・水内(2010)も障害理解教育. 的認識の集大成である」と指摘している。また,. プログラムを作成する際には,児童の理解の進度. 前田・高野名・千賀(2008)は障害理解教育を「障. に合わせて計画する必要があることを指摘してい. 害に関する科学的な理解・認識の形成を通して,. る。したがって,障害理解教育を実施する際には,. 自己理解・相互理解を深め,人間・尊重・人権尊. 障害理解の発達段階で示された項目を参考に実施. 重の精神を育てていく教育活動である」と定義し. することが重要であるといえる。. ている。これらの定義に共通する考え方として. 障害理解の構成要素について,徳田(2005b). 堤・今枝・山本・金森(2008)は,①障害の有無. は「知識」「認識」「態度」「行動」の4つを取り. に拘わらず全ての人を対象にしていること,②障. 上げており,さらに,楠・金森・今枝(2012)は,. 害の科学的認識を通して人間への理解を促すこ. 「態度」と「認識」を評価するために5因子(共. と」の2点を挙げている。これらのことより,障. 同的な教育領域/積極的な対人関係領域/障害に. 害理解は障害の有無に拘わらず,多様な他者と関. 関する仲間意識領域/自発的交流性領域/障害に. 130.
(4) 小学生を対象とした障害の理解度に関する調査研究. 関する知識領域)16項目からなる「児童生徒版障. は特別支援学級は設置されていない。. 害者に対する多次元的態度尺度」を開発した。こ の中の「積極的な対人関係領域」は,適切な交流. 2.調査方法. 及び共同学習または,障害理解教育を実施するた. 調 査 期 間 は201× 年 8 月 下 旬 か ら12月 下旬の. めには,重要な領域である事を指摘している。こ. 4ヶ月間を設け,アンケート用紙は,郵送により. のことから,交流学習や障害理解学習などを通し. 配布・回収を行った。なお,本研究の実施にあた. て,培われる「障害の理解」と子どもたちの障害. り,対象校の校長宛に研究の趣旨や分析の手続. に対する「態度」や「認識」には大きな関連があ. き,結果の公開を含めたデータの扱い方を記載し. ると言える。そのため,適切な障害理解教育の実. た研究依頼文を発送し,承諾が得られたのちに本. 施においては,障害理解の発達段階の把握ととも. 研究を実施した。. に,徳田(2005b)が指摘している障害理解の4 つの構成要素の中でも「態度や認識」の程度を把. 3.調査内容. 握することが,適切な障害理解の実施における重. 本研究では,「児童生徒版障害者に対する多次. 要な情報になると考えられる。しかしこれまでの. 元的態度尺度」(楠・金森・今枝,2012)を用い. 障害理解に関する研究においては,小学生に関す. て調査を実施した。質問用紙は,回答者の「基本. る障害理解の発達段階や小学校中学年と高学年の. 情報(学年・性別・接触経験・知っている障害)」. 障害理解の程度は報告されているが,低学年も含. と「障害児者に対する仲間意識」「自発的交流性」. めた全ての学年の障害理解の程度や領域毎の違い. 「障害児者に関する知識」「共同的な教育」「積極. を明らかにしたものはみられない。さらに,態度. 的な対人関係」の5つの因子からなる16項目で構. と認識は交流及び共同学習及び障害理解学習で培. 成し,回答方法は小学生が回答しやすいよう「思. いたい側面であることから,これらの側面を知る. う・わからない・思わない」の3件法で回答を求. ことは意義あることと考える。. め た。 本 研 究 で 使 用 し た 各 因 子 の 質 問 項 目 を. そこで本研究では,小学校の通常学級に在籍す. Table 1に示す。また,1~3年生は担任教師に. る児童の障害に対する態度や認識の程度を明らか. 質問の説明文を読んでもらい実施した。なお,本. にし,今後の障害理解教育の実施に向けた基礎的. 研究では学校の要望や対象が小学生であることか. な資料を得るとともに,実施の在り方について検. ら質問の意図を変えないよう注意し,筆者を含め. 討することを目的とする。. た複数名で質問の意図が変わっていないか協議し. なお,本研究で取り扱う「理解度」とは,障害. たうえで,質問文の変更及び回答方法の修正を. 者に対する態度やどのように認識をしているのか. 行った。. についての「理解の程度」を「理解度」とし,質 問に対して3件法で求めた回答を得点化したもの. 4.分析方法. である。. 回答者によって得られた結果を,得点化(思 う:3点,わからない:2点,思わない:1点). Ⅱ 方 法. し,平均を算出して,学年(1年生,2年生,3 年生,4年生,5年生,6年生)×因子(「障害. 1.調査対象. 児者に対する仲間意識」「自発的交流性」「障害児. A大学附属小学校3校の通常学級に在籍する児. 者に関する知識」「共同的な教育」「積極的な対人. 童(1~6年生)1,212名(内訳は1年生192名,. 関係」)の多元配置分散分析及びTuckey法による. 2年生199名,3年生204名,4年生200名,5年. 多重比較検定を行った。. 生211名,6年生206名)を対象とした。対象校に. 131.
(5) 田名部沙織・細谷 一博. Table 1 各因子の質問項目 因子. 質問項目 ⑦あなたは障害のある人はすべてのことがみんなと同じくらいできるとおもう. 障害児者に対する ⑧あなたは障害のある子供を自分のなかまに入れることは嫌ではないとおもう 仲間意識 ⑬あなたは障害のある人は不思議な力は持っていないとおもう ⑮あなたは障害のある人は他の人に手伝ってもらうことを感謝していないとおもう 自発的交流性. ⑤あなたは障害のある子供と一緒に仕事してみたいとおもう ⑥あなたは障害のある人とたくさん交流したいとおもう. 障害児者に関する ⑭あなたは障害のある人もない人も記憶力は同じであるとおもう 知識 ⑯あなたは障害のある人はいつもきちんとしているとおもう ⑨あなたは障害のある子供はみんなと同じ学校で勉強を教えてもらうことが一番良いとおも う 共同的な教育. ⑩あなたは障害のある子供はみんなと同じ学校に入学することでたくさんのことを経験でき るとおもう ⑪あなたは障害のある子供はみんなと同じ学校で勉強することが良いとおもう ⑫あなたは障害のある子供がみんなと同じ学校に入学するとおたがいのことをたくさん知る ことができるとおもう ⑰あなたは障害のある人にもきんちょうしないで話しかけられるとおもう. 積極的な対人関係. ⑱あなたは障害のある人とも「話すことが嫌だな」と思わないで話すことができるとおもう ⑲あなたは障害のある人が困っているときすぐに助けることができるとおもう ⑳あなたは障害のある人に対して他の人と同じように関わるとおもう. Ⅲ 結 果. されたため多重比較検定(Tuckey法)を行った。 その結果, 「自発的交流性」では,1年生が2年生,. 回収率は,97.9%(1,186名/1,212名)であった。. 4年生,5年生,6年生よりも高く(p<.01),. 学年別では,1年生183名(95.3%),2年生196名. 2 年 生 が 3 年 生 よ り 高 い こ と が 示 さ れ た(p. (98.5%) , 3 年 生202名(99.0%), 4 年 生198名. <.01)。 ま た, 6 年 生 が 3 年 生 よ り も 低 く(p. (99.0%) , 5 年 生205名(97.2%), 6 年 生202名. <.01),さらに5年生よりも低いことが明らかに. (98.1%)であり,いずれの学年でも高い割合で. となった(p<.05)。 「障害児者に関する知識」では,. 回答が得られた。. 1年生が2年生よりも高い(p<.05)とともに,. 本研究では因子ごとに学年間の比較を行い,因. 3年生,4年生,5年生,6年生よりも高い(p. 子と学年の関係について検討した。その結果を. <.01)ことが示された。「共同的な教育」では,. Table 2に示す。「障害児者に対する仲間意識」 (F. 1年生が2年生,3年生,4年生,5年生,6年. [5,4300]=0.9122,n.s.),「自発的交流性」(F. 生よりも高い(p<.01)ことが示された。「積極. [5,2353]=13.4310,p<.01),「障害児者に関す. 的な対人関係」では,1年生が2年生,3年生,. る知識」 (F [5,1952]=8.7941,p<.01),「共同. 4年生,5年生,6年生よりも高い(p<.01)示. 的な教育」 (F [5,4708]=11.4336,p<.01),「積. された。また,6年生が2年生,3年生よりも低. 極的な対人関係」 (F[5,4693]=18.2099,p<.01). く(p<.01),さらに,5年生よりも低い(p<.05). となり, 「障害児者に対する仲間意識」以外の因. ことが明らかとなった。. 子では,学年による主効果が有意であることが示. 以上のことから, 「障害児者に対する仲間意識」. 132.
(6) 小学生を対象とした障害の理解度に関する調査研究. Table 2 学年間の因子の比較 因子 障害児者に対 する仲間意識. 1年生 2年生 3年生 4年生. 5年生 6年生. N. 183. 196. 202. 198. 205. 202. M. 2.21. 2.20. 2.15. 2.23. 2.21. 2.18. SD. 0.83. 0.81. 0.82. 0.83. 0.81. 0.80. M. 2.46. 2.17. 2.35. 2.21. 2.22. 2.07. SD. 0.80. 0.78. 0.73. 0.75. 0.73. 0.70. M. 2.28. 2.09. 2.02. 2.08. 1.94. 1.99. SD. 0.75. 0.74. 0.72. 0.73. 0.65. 0.64. M. 2.55. 2.34. 2.39. 2.39. 2.32. 2.30. SD. 0.70. 0.73. 0.74. 0.75. 0.76. 0.75. M. 2.63. 2.44. 2.45. 2.40. 2.42. 2.31. 自発的交流性. 障害児者に関 する知識. 共同的な教育. 積極的な対人 関係. SD. 0.67. 0.66. 0.70. 0.71. 0.68. 0.68. F値 1.56. n.s.. 13.43**. 8.79. Tukey法による多重比較. **. 1年>2年,1年>4年, 1年>5年,1年>6年 2年>3年 6年<3年,6年<5年 1年>2年,1年>3年, 1年>4年,1年>5年, 1年>6年. 11.43**. 1年>2年,1年>3年, 1年>4年,1年>5年, 1年>6年. 18.21**. 1年>2年,1年>3年, 1年>4年,1年>5年, 1年>6年 6年<2年,6年<3年, 6年<5年 **. p<.01, *p<.05. では,全学年間において差が見られず,「自発的. に,実施の在り方について検討することを目的と. 交流性」 「障害児者に関する知識」 「共同的な教育」. した。. 「積極的な対人関係」の4つの因子においては, 1年生を除く2年生以降の学年において,学年間. 1.学年間の因子の比較からみる障害理解の程度. に差は見られなかった。しかし,対1年生となる. 学年間の因子を比較すると1年生が「自発的交. と,多くの因子で他の学年で差が見られた。1年. 流性」「障害児者に関する知識」「共同的な教育」. 生は「自発的交流性」「障害児者に関する知識」. 「積極的な対人関係」の4因子において,2年生. 「共同的な教育」「積極的な対人関係」において. 以降の学年より高いことから,1年生と2年生以. 他学年よりも高い意識であり,1年生と2年生の. 降の学年には意識に差があることが示唆された。. 間では意識に差がみられた。それに対して,3年. 西舘・徳田・水野(2005)は,小学校では3年生. 生,4年生,5年生の間ではあまり意識の差がみ. から始まる総合的な学習の時間で障害に関する内. られず,6年生は「自発的交流性」と「積極的な. 容を学習することが多いことを明らかにしてい. 対人関係」の障害のある人との関わりや交流に関. る。したがって,1年生と3~6年生の間では意. する因子が他学年よりも低いことが明らかとなっ. 識の差がみられることが予想される。一方で,2. た。. 年生は,1年生と同様に「総合的な学習の時間」 が設置されていない。徳田・新井・松村・水野・. Ⅳ 考 察. 喜美候部・鵜木(2004)や水野(2005)によって, 各教科(国語科と生活科)や道徳での「障害」に. 小学校の通常学級に在籍する児童の障害に対す. 関する内容の取り扱われ方は1年生と2年生では. る態度や認識の程度を明らかにし,今後の障害理. あまり変化がないことが明らかとなっている。し. 解教育の実施に向けた基礎的な資料を得るととも. たがって,1年生と2年生の間での意識の差は学. 133.
(7) 田名部沙織・細谷 一博. 習内容に影響されているのではなく,子どもの発. に触れあう活動を通して困難を解決するための方. 達過程に関係することが考えられる。. 法や工夫点を考えるなど,障害に対する共感性や. また,総合的な学習の時間が実施される3年. ともに生活をするための視点を育むことの必要性. 生,4年生,5年生に関しては,「障害児者に関. が示唆された。小学校学習指導要領(文部科学省,. する知識」 「共同的な教育」「積極的な対人関係」. 2017)では,交流及び共同学習を通して,「共に. において有意差がみられないことから,障害理解. 尊重し合いながら協働して生活していく態度を育. 学習が系統立てて行われておらず,各学年での学. むようにすること」と明記されていることから. 習が蓄積されていないといえる。さらに,6年生. も,障害について認知することや共感性を育むこ. が「自発的交流性」,「積極的な対人関係」の領域. とは重要であると言える。また,中学年段階では. において他の学年よりも低いことが明らかとな. 教科学習の中で障害に関する題材を通して,障害. り, 水野(2005)の研究と同様の結果が示された。. を認知するきっかけになることが考えられる。近. また,障害理解の発達段階からみると1年生と2. 年,細谷・田名部(2017)や田名部・細谷(2017b). 年生は同じ段階として考えられている(西舘,. は,小学校5年生と6年生を対象に友達を理解す. 2009)が,障害理解の程度からみると1年生と2. るための障害理解学習や友達と楽しむための工夫. 年生においては,理解の内容について異なる見方. を考える障害理解学習の試みを行い,障害を認知. をする必要がある。今後は,1年生の障害理解の. する活動や障害に対して共感し,共に活動するた. 程度が他の学年よりも肯定的である要因を子ども. めの視点を学習する取り組みを報告している。ま. の発達という視点を含めて探る必要があるといえ. た,ただ継続するのではなく,内容に系統性を持. る。その中でも交流及び共同学習や障害理解教育. たせることが重要であり,系統的・継続的に取り. に重要な領域と指摘されている「積極的な対人関. 組むためには,各学年の授業内容を考えて,小学. 係」におては,1年生と6年生が各学年と顕著な. 校6年間を通した障害理解学習モデルの作成が必. 差が見られた。小学校の入学初期の学年と最高学. 要である(田名部・細谷,2017a)。. 年の2つの学年において差が見られたことは興味. 真城(2005)は,障害理解教育は児童の実際の. 深く,今後の研究で要因を明らかにしていく必要. 経験が大きく影響することから,単純に心理的発. がある。. 達段階に応じて実施されるものではないと指摘し ている。したがって,当該学年の実態だけではな. 2.今後の障害理解教育の在り方. く,全学年を通した障害理解の実態を把握する必. 本研究の結果から今後の障害理解教育について. 要があり,そのためにも,本研究で実施した態度. 必要となる事項を検討する。. や認識を把握する手続きは,障害理解教育を行う. 全学年共通して障害児者に対する仲間意識や知. 上で必要な手続きである。. 識が低いことや6年生が他の学年に比べて関わり. 本研究では,小学校3校を対象に,障害理解の. への意欲や態度が低いことが明らかとなった。仲. 認識について調査を行ったが,対象とした小学校. 間意識は児童期後半から共感性と関連して発達す. には特別支援学級が設置されていないことや小学. ること(萩原・原田,1999)や,児童期中期から. 校の国語の教科書で取り扱われているような国語. 後期にかけて無認知であると共感性が発達しない. や道徳の授業で扱われる障害を題材とした学習. (浅川・松岡,1987)ことが指摘されている。そ. (例:小学国語4下:太田正己「便利」というこ. こで,本研究の結果から小学校低学年から中学年. と.教育出版)については,全員が一律に学んで. にかけては,絵本を用いた学習やシミュレーショ. いることを前提とした。このことから対象とした. ン活動を通じた障害理解学習など,障害を認知す. 3校の障害理解学習の取り組みや児童個々の固有. る学習活動を取り入れ,高学年にかけては,実際. の特性について詳細な分析は行わず,小学生の発. 134.
(8) 小学生を対象とした障害の理解度に関する調査研究. 達段階に焦点を当てて分析を行った。したがっ て,今後は,児童個々の特性に焦点をあてた障害 理解の認識や障害理解学習の実施による変容な ど,障害理解の認識を多面的に分析する必要があ. 論と実践.誠信書房,16-22. 水野智美(2016)はじめよう!障害理解教育子供の発達 段階に沿った指導計画と授業例.図書文化社. 文部科学省(2017)小学校学習指導要領. 西舘有沙(2009)小学校における障害理解教育プログラ. る。. ムの作成.障害理解研究⑾,29-38. 西舘有沙・徳田克己・水野智美(2005)小学校及び中学 校において実践されている交通バリアフリー教育.障. 謝 辞. 害理解研究⑺,27-34. 真城知己(2003)障害理解教育の授業を考える.文理閣.. 本研究の実施にあたり,調査にご協力いただき. 白井佐和・武蔵博文・水内豊和(2010)発達障害の障害. ましたH大学附属小学校3校の校長先生をはじ. 理解教育プログラムに関する研究―小学校低学年の通 常学級でのLD(学習障害)の理解について―.香川大. め,教職員の皆さま,ならびに子どもたちに感謝 申し上げます。. 学教育実践総合研究,20,85-98. 田名部沙織・細谷一博(2017a)障害理解教育の変遷と今 後の課題~実践を中心とした今後の展望~.北海道教. 引用文献. 育大学紀要(教育科学編) ,67⑵,93-104. 田名部沙織・細谷一博(2017b)学校間交流の事前指導に おける障害理解学習の効果⑵ ―6年生における授業実. 浅川潔司・松岡砂織(1987)児童期の共感性に関する発. 践を通して―.第55回日本特殊教育学会大会発表論文. 達的研究.教育心理学研究,35⑶,42-51. 中央教育審議会初等中等教育分科会(2012)共生社会の 形成に向けたインクルーシブ教育シにステム構築のた. 集,P1-35. 徳田克己(1994)障害理解における絵本『さっちゃんの まほうのて』の読み聞かせの効果.読書科学,38⑷,. めの特別支援教育の推進(報告). 萩原直人・原田唯司(1999)児童・生徒の仲間意識の発 達に関する研究.静岡大学教育学部研究報告(人文・. 153-161. 徳田克己(2005a)障害理解と心のバリアフリー.徳田克 己・水野智美(編),障害理解心のバリアフリーの理論. 社会科学編),49,319-335. 細谷一博・田名部沙織(2017)学校間交流の事前指導に おける障害理解学習の効果⑴―5年生における授業実. と実践.誠信書房,2-10. 徳田克己(2005b)障害理解の測定.徳田克己・水野智美 (編),障害理解心のバリアフリーの理論と実践.誠信. 践を通して―.第55回日本特殊教育学会大会発表論文 集,P1-34. 小林智志・梁真規・今枝史雄・金森裕治(2015)私立小. 書房,281-287. 徳田克己・新井邦二郎・松村みち子・水野智美・喜美候 部浩二・鵜木ゆみこ(2004)交通バリアフリー教育の. 学校における系統的な障害理解教育プログラムの作成 に関する研究(第Ⅰ報)―各学年の障害理解の発達段 階 の 様 相 ―. 大 阪 教 育 大 学 紀 要 第 Ⅳ 部 門,64⑴, 127-136. 久保山茂樹(2009)友だちをわかろうとすること,自分. 内容の選定と方法の開発.国際交通安全学会. 徳田克己・水野智美(2005)障害理解―心のバリアフリー の理論と実践―.誠信書房. 堤佳弘・今枝史雄・山本壮則・金森裕治(2008)障がい理 解学習の現状と実践的課題についての基礎的研究―通. を知ろうとすること―交流及び共同学習や障害理解授. 常の学級における授業実践についての報告(第1報)―.. 業で子どもたちが学ぶもの― 交流及び共同学習を推 進する環境整備に関する実証的研究―障害理解授業を 中心に―.独立行政法人国立特別支援教育総合研究所.. 大阪教育大学障害児教育研究紀要,31,77-90. 全国特別支援教育推進連盟(2007)よりよい理解のため に交流及び共同学習事例集.ジアース教育新社.. 楠敬太・金森裕治・今枝史雄(2012)障害理解教育の評 価に関する研究―児童生徒版障害者に対する多次元的 態度尺度の開発を通して―.大阪教育大学紀要第Ⅳ部 門,61⑴,59-66.. . (田名部沙織 札幌市立中沼小学校). . (細谷 一博 函館校教授) . 前田佳子・高野名明子・千賀愛(2009)障害理解教育の カリキュラム開発に関する岩見沢市立栗沢小学校の実 践.北海道特別支援教育研究,2⑴,21-31. 水野智美(2005)障害に関する知識・認識の発達.徳田 克己・水野智美(編),障害理解心のバリアフリーの理. 135.
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