学校保健と地域保健の連携に関する研究 : 特に養護教諭と保健師の連携について
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第55巻 第1号. 平成16年9月. JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.55,No.1. September,2004. 学校保健と地域保健の連携に関する研究 一時に養護教諭と保健師の連携について−. 津 村 直 子* 工 藤 香 織** (北海道教育大学札幌枚* 浜中町立茶内小学校**). Abstract. Informationregardingtherelationshipbetweenschoolandcommunityhealthwasobtainedthrough questionnairessenttolO6schoolnursesandlOpublicnurses.. 1.Percentageofteacherswhohadarelationwithcommunityhealthwas90.6%andteachersw intendedtorelationwithcommunityhealthwas95.3%. 2.Percentageofpublicnurseswhohadarelationwithschoolhealthwas90.0%. 3.Withregardtothepresentconditionoftherelationshipbetweenschoolandcommunityhealth,44・8% ofschoolnurseand66.7%ofpublicnurseweredissatis丘ed.. 4.Theaimsoftheschoolnursewhowantedtoconnecttocommunityhealthwereeducationonprevent I ofsmoking(56.9%),VaCCinations(45.6%),anddrugeducation(44.8%). 5.Percentageofactiveschoolhealthcommitteemeetingwas7.8%. キーワード:養護教諭 保健師 連携. はじめに. 子どもの心とからだの健康づくりは,地域全体で継続的・有機的な連携のもとに行われることが効果的で あるが,子どもの保健行政は生まれてから就学するまでは母子保健法,児童福祉法に規定されており,厚生 労働省の所管である.就学後は学校保健法のもとに文部科学省の所管となり,行政上の所管省庁が異なるこ. とによって,その間の情報交換が十分とはいえず,協同で事業に取り組むことはあまりみられなかった.必 要な援助を効果的に継続させるためには,健康情報の一貫性が必要であり,地域において小児期からのライ フサイクルに沿った健康づくり施策を推進するためには,他領域との連携が必要不可欠である. また,教育の面からも地域社会との連携の必要性が強調されている.1996年に公表された第15期中央教育 審議会の答申1)において,学校・家庭・地域社会の役割と連携の重要性が提言されている.さらに,小・中 学校の学習指導要領2)3)にも,開かれた学校づくりを進めるため,地域や学校の実態等に応じ,家庭や地域 の人々の協力を得るなど,家庭や地域社会との連携を深めることが挙げられている.平成14年度から実施さ れた完全学校五日制により,子どもたちは家庭や地域ですごす時間が増えており,学校と地域社会との連携 は一層重要になってきている.. 本研究は養護教諭,保健師の両方の視点から学校保健と地域保健の連携の現状を把握し,問題点や今後の. 249.
(3) 津村 直子・工藤 香織. 課題について明らかにすることを目的としたものである.. 対象および方法 調査対象:青森県西北五地区の養護教諭106人と保健師10人 調査方法:郵送による質問紙調査. 調査期間:2003年11月 調査内容:養護教諭に対しては地域保健との連携状況・内容,学校保健委員会の開催状況など 保健備に対しては保健師の業務内容,学校・養護教諭との連携状況など. 調査票の回収数は養護教諭64人(60.4%),保健師10人(100.0%)であった. 養護教諭の経験年数は「5年未満」3人(4.7%),「5∼9年」9人(14.1%),「10∼14年」8人(12.5%), 「15∼19年」●7人(10.9%),「20∼24年」11人(17.2%),「25∼29年」15人(23.4%),「30∼34年」6人(9.4%),. 「35∼39年」2人(3.1%),「40年以上」1人(1.6%),無回答2人(3.1%)であった.勤務校は「小学校」 36人(56.3%),「中学校」17人(26.6%),「高等学校」9人(14.1%),「養護学枚」1人(1.5%),無回答 1人(1.5%)であった.児童生徒数は「50人未満」10人(15.6%),「50∼99人」19人(29.7%),「100∼299. 人」16人(25.0%),「300∼599人」13人(20.3%),「600人以上」4人(6.3%),無回答2人(3.1%)であっ た.保健師の免許所有者は12人(18.8%),看護師の免許所有者は25人(39.1%)であった. 保健師の勤務場所は保健所が4人,市町村保健センターが6人であった.経験年数については保健所保健 師は「20∼24年」1人,「30∼34年」2人,「35∼39年」1人で平均29.5年,市町村保健センターの保健師は 「5∼9年」3人,「10∼14年」1人,「15∼19年」2人で平均11.3年であった.. 結 果 1.養護教諭について 州 地域保健. 地域保健と連携をとっている人は58人(90.6%),連携をとっていない人は6人(9.4%)であった.校種 別にみると連携をとっている人は,小学校では32人(88.9%),中学校では17人(100.0%),高等学校では. 7人(77.8%),養護学校では1人(100.0%)であった. 地域で連携をとっている機関は「近隣の学校」が最も多く40人(62.5%),次いで「教育委員会」39人(60.9%),. 「保健所」37人(57.8%),「病院・診療所」「市町村保健センター」がともに31人(48.4%),「警察署」19 人(29.7%),「児童相談所」「保育所・幼稚園」がともに9人(14.1%),「社会福祉協議会」8人(12.5%), 「福祉事務所」「給食センター」がともに4人(6.3%),「精神保健福祉センター」「市町村保健福祉課」が ともに2人(3.1%)であった.保健所との連携を保健師の免許所有別にみると,保健師の免許を所有して いる人では保健所と連携あり10人(83.3%),連携なし2人(16.7%),免許を所有していない人では保健所 と連携あり27人(51.9%),連携なし25人(48.1%)であり,保健師の免許を持っている人の方が保健所と 連携している人が有意に多かった(p<0.05).また,市町村保健センターとの連携は,保健師の免許を所 有している人では連携あり7人(58.3%),連携なし5人(41.7%),免許を所有していない人では連携あり 24人(46.2%),連携なし28人(53.8%)であり,保健師の免許を持っている人の方が市町村保健センター と連携している人が多かったが,有意差は認められなかった. 地域保健との連携が必要であると回答した人は61人(95.3%),必要でないと回答した人は1人(1。6%),. 250.
(4) 学校保健と地域保健の連携に関する研究. 無回答が2人(3.1%)であった.連携が必要でないと回答した人は地域保健と連携をとっていない人であり, 経験年数1年未満の高等学校の養護教諭であった.. 連携をとっている内容を表1に示したが,最も多いものは「喫煙防止教室」56.9%であり,次いで「予防 接種」46.6%,「薬物乱用防止教室」44.8%であった.校種別にみると小学校では「喫煙防止教室」68.8%, 「予防接種」62.5%,中学校では「薬物乱用防止教室」76.5%,「思春期教室」64.7%,「赤ちゃんふれあい 教室」52.9%,高等学校では「薬物乱用防止教室」85.7%,「性教育」71.4%であった. 表1連携をとっている内容. 人(%). 小学校 中学校 高等学校 養護学校 無回答 計. 内 容. 22(68.8) 8(47.1) 2(28.6) 1(100.0) 1(100.0) 赤ちゃんふれあい教室 6(18.8) 9(52.9) 4(12.5) 11(64.7) 1(14.3) 1(100.0) 思春期教室 虫歯予防教室 6(18.8) 1(100.0) 歯みがき指導 8(25.0) 1(5.9) 飲酒防止教室 1(3.1) 1(▼5.9) 8(25.0) 5(29.4) ,5(71.4) 1(100.0) 性教育 予防接種 20(62.5) 3(17.6) 2(28.6) 1(100.0) 1(100.0) 薬物乱用防止教室 7(21.9) 13(76.5) 6(85.7) 喫煙防止教室. 2(6.3). 環境学習. 1(3.1) 32. 手洗い指導 対象者. 33(56.9). 16(27.6) 17(29.3) 6(10.3) 10(17.2) 2(3..4). 19(32.8) 27(46.6) 26(44.8). 2(3.4) 1(1.7) 17. 58. 7. (複数回答). 連携の頻度(年間の回数)は,「1∼3回」40人(69.0%),「4∼6回」13人(22.4%),「7∼10回」2. 人(3.4%),「随時」3人(5.2%)であった.現在の連携を「十分」と考えている人は24人(41.4%),「不 十分」と考えている人は26人(44.8%),「どちらとも言えない」2人(3.5%),無回答6人(10.3%)であっ た.年間の連携回数との関係をみると,「1∼3回」では十分16人(40.0%),不十分21人(52.5%),無回 答3人(7.5%),「4∼6回」では十分4人(30.8%),不十分4人(30.8%),どちらとも言えない2人(15・4%), 無回答3人(23.0%),「7∼10回」では十分2人(100.0%),「随時」では十分2人(66.7%),不十分1人(33.3%) であった.. 連携をとることによる効果については,「子どもの関心が増す」24人(41.4%),「専門的な知識が収集で きる」18人(31.0%),「情報の交換ができる」14人(24.1%),「保護者の意識が高揚する」「資料が入手で きる」がともに4人(6.9%)であった. 連携をとる中で問題となることは,「打ち合わせ時間の確保」8人(13.8%),「ねらい等の共通理解」7人. (12.1%),「依頼上 表2 連携をとりたい内容 内 容. 人(%). 小学校 中学校 高等学校 養護学夜 無回答 計. 8(22.2) ′5(29.4) 4(50.0) 健やかレディースセミナー 1,(2.8) 2(11.8) 1(12.5) 赤ちゃんふれあい教室 6(16.7) 1(5.9) 1(12.5) 思春期教室 7(19.4) 2(11.8) 1(12.5) 9(25.0) 5(29.4) 虫歯予防教室 8(22.2) 4(23.5) 歯みがき指導 飲酒防止教室 5(13.9) 5(29.4) 1(12.5) 14(38.9) 6(35.3) 3(37.5) 性教育 薬物乱用防止教室 15(41.7) 3(17.6) 1(12.5) 環境学習 11(30.6) 4(23.5) 手洗い指導 3(8.3). 17(27.0). 喫煙防止教室. 対象者. 36. 17. 8. 4(6.3) 8(12.7). 10(15.9). の手続き」「日程の調. 整」「事後指導」がい. ずれも2人(3.4%), 「謝礼金」「専門用語. 1(100.0). 1畠(23.8). の理解」がともに1. 1(100.0). 13(20.6). 人(1.7%)であった.. 11(17.5). 23(36.5). これから連携をと. 19(30.2). りたい内容を表2に. 15(23.8) 1(100.0) 1. 4(6.3). 1 63. 示したが,最も多い ものは「性教育」. (複数回答). 251.
(5) 津村 直子・工藤 香織. 36.5%,次いで「薬物乱用防止教室」30.2%,「喫煙防止教室」27.0%であった.校種別にみると小学校で は「薬物乱用防止教室」′41.7%,「性教育」38.9%,「環境学習」30.6%,中学校では「性教育」35.3%,「喫 煙防止教室」「虫歯予防教室」「飲酒防止教室」がいずれも29.4%,高等学校では「喫煙防止教室」50.0%,「性. 教育」37.5%であった. 保健所,市町村保健センターに対する要望は,「情報交換・情報の入手」8人、(12.5%),「教材・資料の 貸し出し」5人(7.8%),「出張指導」「研修会の開催」がともに2人(3.1%)であった. (2)学校保健委員会. 学校保健委員会を開催している学校は5校(7.8%)であり,いずれも小学校であった.養護教諭の経験 年数をみると「25∼29年」2人,「30∼34年」2人,「40年以上」1人であった.また,児童生徒数について は「50人未満」1校,「100∼299人」2校,「300∼599人」2校であった. 学校保健委員会の構成メンバーは,「校長,教頭,保健主事,養護教諭,PTA役員,児童生徒保健委員」 が5校,「教務主任」が4校,「生活指導主任,一般職貞,学校医,学校歯科医,児童生徒役員」が3校,「学 年主任,体育主任」が2枚, 3枚,「警察署」2校,「民生委員」1校であった.. 2.保健師について (1)保健師の業務. 保健師が最も力を入れている仕事(3つ)については,保健所保健師では「精神保健の相談・指導」3人, 「疾病・健康対策」2人,「高齢者・成人保健」1人,市町村保健センターの保健師では「母子∴乳幼児保健」 6人,「高齢者・成人保健」5人,「疾病・健康対策」「健康教育」がともに3人,「精神保健の相談・指導」 1人であった. (2)学校】養護教諭との連携. 学校と連携をとっている人は9人であり,連携をとっていない1人は保健所の保健師であった.. 養護教諭と連携をとっている保健師は6人であり,保健所保健師が2人,市町村保健センターの保健師が 4人であった.連携をとっていない理由は,「学校との連絡は管理職や担任と連絡をとることがほとんどで,. 養護教諭からは特にない」という回答であった.連携の頻度は保健所保健師では「年1回」1人,無回答1. ゝ 人,市町村保健センターの保健師では「年10回」2人,. 「年4回」「年1∼2回」がともに1人であった.現. 在の連携について十分と考えている保健師は1人(保健所保健師),不十分と考えている保健師は4人(市 町村保健センター保健師),無回答1人(保健所保健師)であった.連携の回数との関係をみると,年1回 連携している保健所保健師は十分と考えていたが,年1∼2回,4回,10回の市町村保健センターの保健師 はいずれも不十分と考えていた.. 連携の内容については保健所保健師は「思春期教室」2人,「まごころケア教室」1人,市町村保健センター の保健師は「栄養教室」3人,「思春期教室」「赤ちゃんふれあい教室」がともに2人,「喫煙防止教室」1 人であった.. 養護教諭との連携の効果については,保健所保健師は「共通理解が得られる」「事業の展開が容易になる」 がともに1人,市町村保健センターの保健師は「子どもの実態を知ることが出来る」「事業の展開が容易に なる」がともに2人,「コミュニケーションがとりやすくなる」1人であった.. 養護教諭との連携上の問題点については,市町村保健センターの保健師から「養護教諭と管理職の関係」「問 題の共有化」「学校の問題・要望が不明確」という回答があった.. これから連携をとりたい内容については,保健所保健師は「飲酒防止教室」「薬物乱用防止教室」がとも. 252. 」.
(6) 学校保健と地域保健の連携に関する研究. に2人,「喫煙防止教室」「性教育」「赤ちゃんふれあい教室」「健やかレディースセミナー」「虫歯予防教室」 「環境学習」がそれぞれ1人であった.市町村保健センターの保健師は「飲酒防止教室」「喫煙防止教室」「性 教育」「赤ちゃんふれあい教室」がいずれも2人,「健やかレディースセミナー」「歯みがき指導」がともに 1人であった. (3)学校に対する要望. 学校に対する要望については,保健所保健師からは「地域との接点を見いだして活動してほしい」「地域 の健康づくり会議等に養護教諭が参加してほしい」「養護教諭が地域の健康づくりに一役かってほしい」「地. 域保健と学校保健が同じ目的,目標で活動できればよいと思う」「養護教諭との連携が非常に大切である」「思. 春期教室等学校全体で取り組んでほしい」,市町村保健センターの保健師からは「地域の問題に関すること があれば相談に来てほしい」2人,「学校保健委員会に呼んでほしい」「情報交換をしたい」「センターの教 材を活用してほしい」「地域保健との連携を視野に入れてほしい」「もっと密に学校保健とかかわりたい」と. いう回答であった.. 考 察 1.保健所について 1994年の地域保健法の制定により,保健所と市町村の役割が明確にされ,市町村が保健サービスを実施し. ていく拠点として市町村保健センターを法律上に位置付けている4).その結果,保健所は地域保健の広域的, 専門的,技術的拠点として,情報の収集・整理・活用,調査・研究,企画調整機能等の強化を図っている. また,市町村保健センターは市町村における対人保健サービスの総合拠点として,身近で頻度の高い母子保 健や老人保健などの生涯を通じた健康づくりを実施している.本調査においても母子・乳幼児保健は市町村 保健センターの保健師が担当していた.また,市町村保健センターは戻健所からの専門的かつ技術的な援助. および協力を積極的に求めること,保健所の協力の下に実施すること4),さらに,保健所保健師は管内市町 村の保健師の現任教育,特に新任保健師教育を担うことが求められている5).本調査において,保健所保健 師は経験年数20年以上の人(平均29.5年),市町村保健センターの保健師は経験年数20年未満の人(平均11.3 年)であり,専門的な情報が豊富な保健師が保健所に配属されていることが理解される.. 2.学校保健と地域保健の連携について. 学校保健と地域保健の連携の現状は養護教諭,保健師ともに9割であった.しかし,養護教諭と連携をとっ ている保健師は6割であり,学校保健の窓口が養護教諭でない場合もみられ,学校保健と地域保健の連携は 養護教諭と保健師の連携と一致しない場合もあることが把握された. 養護教諭が連携をとっている機関は近隣の学校が最も多く6割であった.学校間の連携は複数の小学校が. 同一の中学校へ進学している地域では,中学校区域内の小学校相互の連携も必要である6).保健所と連携し ている人は約6割であったが,保健師の免許を所有している養護教諭は保健所との連携が有意に多いことか ら,相手の専門性を理解していると連携がとりやすいと思われる.. 地域保健との連携が必要と思っている養護教諭は95%であり,山田7)らの調査の93.1%と同様の結果が得 られたが,全員ではなかった.連携が必要でないと回答した人は経験年数1年未満の養護教諭であり,養成 機関における教育の中で,地域保健の位置付けがあまり高くなかったのではないかと危供される.. 連携をとっている内容については,喫煙防止教室57%,予防接種47%,薬物乱用防止教室45%等であった (表1参照).予防接種はジフテリア破傷風の二種混合ワクチンの接種が小学校6年生であり,事務的なも. 253.
(7) 津村 直子・工藤 香織. のであるため連携と判断していない人もいると推測される.. 地域と連携した健康教育はこれから連携をとりたい内容も含めると,喫煙防止教室79.4%,薬物乱用防止. 教室71.4%,性教育66.7%が半数以上を占めていた(表1,2参照).喫煙防止教室,薬物乱用防止教室は 平成10年の学習指導要領において,中学校および高等学校に加えて新たに小学校に喫煙・飲酒・薬物乱用と. 健康に関わる内容を指導することになった8)ためと思われる.セルフエステイームを高めることを中核にす るライフスキルを発達段階に応じて身につけるための指導を小学校から系統的に行うことにより,具体的な. 指導の効果が高まると期待されている.特に薬物乱用防止教室は文部科学省9)が全中・高等学校において少 なくとも年に1回は薬物乱用防止教室を開催するよう勤めるとともに,地域の実情に応じて小学校において も薬物乱用防止教室の開催に努めることとしている.飲酒防止教室は養護教諭は2剖であったが,保健師は 4割であり,保健師のほうがその必要性を高く評価していた.アルコールはたばこより日常化しており,いっ き飲みによる急性アルコール中毒の危険だけでなく,アルコール依存症によるノト身に与える影響が大きいた. め,厚生労働省は節度ある適度な飲酒の知識の普及を目標10)に掲げている.喫煙・飲酒は保護者,地域社 会の影響が大きいことから,地域ぐるみでとり組むことが必要である.性教育は高等学校では100%であった.. 義永11)らの調査では,学校でとりくむべき健康課題は,高等学校では妊娠・人工中絶が4割,性感染症が 3割と性教育に関する分野が多く,本調査においても同様の課題がみられろものと推測される.. 連携の頻度は養護教諭は1∼3回が7剖であり,山田7)らの調査の1∼2回が51.1%よりいくぶん多い結 果が得られた.現在の連携を不十分と考えている養護教諭は45%であり,年1∼3回では不十分,4∼6回 では十分,不十分が半数,7回以上では十分であったため,年5回は必要と思われる.保健所保健師は年1 回の連携で十分と考えていたが,市町村保健センターの保健師は年10回,4回の連携をとっていても不十分 と考えていた.市町村保健センターの保健師は管轄している地域にあるすべての学校と連携をとることを希 望しているものと推測される. 連携上の問題については,養護教諭から日程調整,打合せの時間の確保があげられていたが,学校五日制 になりますます厳しくなることが予測され,総合的な学習の時間等を活用することも有用と考えられる.ね. らい等の共通理解を得ることは,講師によっては学校側が意図したものとは異なる講演になることもある12) ので,事前の打合せを十分図ることが必要である.保健師からは養護教諭と管理職の関係があげられていた. が,学校長と養護教諭の関係がうまくいっている学校は,連携の効果が大きい13)といわれている. 保健所,市町村保健センターに対する要望は,情報交換・情報の入手,教材・資料の貸出し,講師の派遣,. 研修会の開催等であったが,義永11)ら,高橋14)らの調査結果と同様であり,健康教育の充実に地域の保健 資源が期待されていることが把握された.保健師から学校に対する要望は,養護教諭に対する期待の大きさ がうかがわれた.特に市町村保健センターの保健師の要望は具体的であり,養護教諭との連携を強く望んで. いる内容であった.学校はどちらかと言えば閉鎖的であり,一番連携しにくいところ15)といわれているが, 地域保健との連携が学枚がかかえている子どもめ健康問題の解決に有効であることが示されればその必要性. は認識されると思われる.. 3.学校保健委員会について. 1997年9月の保健体育審議会答申16)において,学校と家庭・地域社会を結ぶ組織として学枚保健委員会 を機能させる必要があると提言されており,学校保健を効果的に推進する組織として学校保健委員会の活性 化が期待されている. 本調査において学校保健委員会を開催している学校は5校(7.8%)であり,著しく少ない結果が得られた.. 平成13年度の文部科学省の調査17)では,学校保健委員会の設置状況は小学校76.0%,中学校74.2%,高等. 254.
(8) 学校保健と地域保健の連携に関する研究. 学校68.5%,盲・ろう・養護学校83.9%であった.また,都道府県,政令指定都市別18)では100%から14.1% であり,極端な差が生じており,委員会の必要性は十分認識されていないように思われる.. 本調査では開催回数を把捉できなかったが,設置校における開催状況17)は年1回46.3%,2回25.0%, 3回10.9%,0回16.5%であった.委員会は設置されていても一度も開催されていない場合もみられるので, 本調査においても開催していないが設置されている学校があるのではないかと推測されるが,設置だけでは 意味のない組織である.学校保健委員会の開催状況については,学期ごとに少なくとも1回の会議がもたれ. るべきである19)という意見や,年度計画,進捗状況,一年の結果報告というように年3回が望ましい20)と いう意見がみられ,効果的に機能するためには,少なくとも年3回開催することが必要と考えられる.. 学校保健委員会の未設置の理由21)は,①学校保健に対して関係者の理解が不十分である.②日程調整が 困難である.③学校三師等の参加に対する予算の確保が難しい.④特に必要を感じていない.また,未開催 の理由は①日程調整がうまくいかない.②保健に関する職員の意識が低く,校内の組織体制が整わない等が あげられている.学校保健委員会はこれまで校長の諮問機関として児童・生徒の健康・安全,とくに保健管. 理を中心に審査され,これらの問題に対して校長に意見を具申する機関としてとらえられてきたため22), 学校保健委員会の今日的意義や役割,組織,運営方法等が多くの学校に理解されていないことが最大の要因23) のようである.本調査の委員会を開催している学校の養護教諭は経験年数25年以上の人であり,学校保健に. 対する教職員の意識向上に大きく貢献していると考えられ,養護教諭の位置づけと関係者の学校保健に対す る理解の程度とは関連していると推測される. 学校保健委員会の構成メンバーについては,本調査では学校内の教職員,、保護者が多く,内部的組織とし. て運営されており,地域保健関係者が構成メンバーに入っているのは保健所が3枚のみであった.保健師か ら学校に対する要望の中に「学校保健委員会に呼んでほしい」という意見がみられたが,地域からの歩み寄 りに対して学校は積極的に対応することが必要である.. ぁわりに. 養護教諭106人と保健師10人に対して,学校保健と地域保健の連携について質問紙調査を行い,いくつか の知見を得た. 1. 2.学校保健と連携をとっている保健師は90.0%であった. 3.現在の連携の頻度を不十分と考えている養護教諭は44.8%,保健師は66.7%であった.. 4.地域保健と連携をとっている内容は喫煙防止教室56.9%,予防接種46.6%,薬物乱用防止教室44.8%等 であった.. 5.学校保健委貞会の開催は7.8%であった. 本調査において学校保健委員会はほとんど機能していなかったが,地域保健との連携は9割であった.し. かし,現在の連携を不十分と考えている養護教諭は半数近くみられ,地域の保健資源を有効に活用して健康 教育を充実させたいと考えていることが把握された.保健師は学校よりも養護教諭との連携を重要視してお り,特に市町村保健センターの保健師は現在の連携を不十分と考えており,学校に対する要望も養護教諭と の連携に関するものが多かった. また,養護教諭,保健師が連携をとりたい内容は必ずしも一致していないことや,問題・ねらい等の共有 化を図ることが連携上の問題にみられることから,学校保健と地域保健の連携が両者にプラスになるために. は,十分話し合える場を持ち,お互いの組織や専門性を理解し,相互に歩み寄ることが大切と思われる.. 255.
(9) 津村 直子・工藤 香織 稿を終えるにあたり、お忙しい中調査にご協力を賜りました養護教諭ならびに保健師の方々に深く感謝申. し上げます.. 引用文献. 1)中央教育審議会:21世紀を展望した我が国の教育のあり方について(第一次答申),41,中央教育審議会,1996 2)文部省:小学校学習指導要領(平成10年12月),5,文部省,1998. 3)文部省:中学校学習指導要領(平成10年12月),6,文部省,1998 4)厚生省:地域保健対策の推進に関する基本的な指針,看護行政研究会監修,看護六法,437−447,新日本法規出版株式会社, 2003. 5)村山正子,大野絢子,斎藤泰子ほか:新たな地域保健に対応した保健婦の現任教育のあり方に関する研究,保健婦雑誌, 52(10),811−824,1996 6)文部省:小学校保健指導の手引(改訂版),61,大日本図書株式会社,1994 7)山田七重,中村和彦,山燦然太郎:学校保健と地域保健との連携の現状と諸問題,山梨医科大学紀要,16,6−10,1999 8)渋谷敬三,国崎弘:新学校保健実務必携《第六次改訂版≫,801,第一法規出版株式会社,2001. 9)鬼頭英明:薬物乱用防止教育の充実について,学校保健,249,2−3,2003 10)厚生労働省;厚生労働自書(平成15年版),311,ぎょうせい,2003 11)義永直巳,諏訪泰代,古塩幸子ほか:思春期保健に関する調査,平成14年度京都府保健福祉環境等調査研究発表会要論集, 15−16,2002. 12)村上節子,太田敦子,杉本博子ほか:思春期保健活動を進める上での学校との連携に関する研究,平成3年度厚生省心身 障害研究報告書,244−246,1991. 13)原朋邦:学校保健と地域保健の連携,小児科臨床,53,11ト116,2000 14)高橋良枝,河野志津子,楠瀬菓子ほか:学校保健における保健所の支援方法の検討,第4回地域保健研究会抄録集,40−41, 2001 15)川島ひろ子:保健所から学校保健に期待すること,学校保健のひろば,46(2),58−61,1998 16)保健体育審議会:生涯にわたる心身の健康の保持増進のための今後の健康に関する教育及びスポーツの振興の在り方につ. いて,スポーツと健康,29(11),50−93,1997 17)日本学校保健会事務局:学枚保健委員会の設置について,学校保健,246,12,2003. 18)日本学校保健会:学校保健の動向(平成13年度版),156,日本学校保健会,2001 19)中村泰三:学校保健と地域医療,大国真彦編,学校医マニュアル第2版,61−72,分光堂,1990 20)日本学枚保健会:学枚保健の動向(平成15年度版),164,日本学校保健会,2003 21)林眞示:学校経営からみた学校保健委員会と保健主事の重要性,スポーツと健康,31(11),3ト34,1999 22)高田公子:学校保健委員会,養護教諭実践講座刊行会編,CARA養護教諭実践講座第2巻保健指導の展開,400−403,株. 式会社ニチブン,1995 23)日本学校保健会:学校保健の動向(平成14年皮版),211,日本学校保健会,2002. (津村 直子 札幌枚助教授). (工藤 香織 浜中町立茶内小学校養護教諭). 256.
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