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機能範疇の出現と消失 : 言語獲得,類型論,歴史言語学に対する極小主義のアプローチ

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Academic year: 2021

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(1)Title. 機能範疇の出現と消失 : 言語獲得,類型論,歴史言語学に対する極小主 義のアプローチ. Author(s). 菅野, 悟. Citation. 北海道教育大学紀要. 人文科学・社会科学編, 62(1): 47-61. Issue Date. 2011-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2430. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(人文科学・社会科学編)第62巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(HumanitiesandSocialSciences)Vol.62,No.1. 平成23年8月 August,2011. 機能範時の出現と消失 一言語獲得,類型論,歴史言語学に対する極小主義のアプローチー. 菅 野. 悟. 北海道教育大学旭川枚英語学研究室. TheEmergenceandLossofFunctionalCategory −AMinimalistApproachtoLanguageAcqulSltlOn,Typology,andHistoricalLingulStics−. KANNO Satoru. DepartmentofEnglishEducation,AsahikawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 本論では,機能範疇の出現と消失という観点から,言語獲得,言語類型論,歴史言語学に閲し論じる。 GB理論までは,言語機能(LanguageFaculty)の内容を豊かにすることにより,言語獲得などの問題に対 し答えを与えていた。しかし,言語機能の内容を豊かにすればするほど,言語の系統発生を説明することが 困難になる。一方,極小主義では,統語は併合が中心的な操作であると仮定し,概念的・理論的に妥当であ る仮説のみを採用する。これにより,言語の系統発生の問題に取り組むことが可能となったと言える。さら に,極小主義に基づく言語獲得は,子どもの成長における機能範時の形成の過程と考えることができる (Radford(1998))。もし,言語獲得の際に,機能範時に対する肯定証拠が与えられなければ,子どもの獲 得する文法には機能範暗が存在しないと予測される。この予測通り,言語間に存在する違いを機能範時の有 無の観点から説明することができる(Fukui(1986))。さらに,言語の変化は機能範時の出現と消失である と論じる 。. 1.導 入 本論では,機能範時の出現と消失が存在し,これは極小主義の枠組みから理論的に導かれる帰結であると 主張する。GB理論の枠組みでは,機能範疇の出現・消失はあまり議論されてこなかった。また,この観点 から,子どもの言語獲得,言語間の遠い(言語類型論),言語の変化(歴史言語学)を包括的に扱った議論 は少ないと思われる。しかし,極小主義と呼ばれる生成文法の最先端の理論では,言語獲得の議論からこの 可能性が理論的に導かれる帰結であり,さらに,類型論と歴史言語学においても,機能範時の出現・消失の. 47.

(3) 菅 野. 悟. 観点から統一的に扱うことができると論じる。. 本論の構成は次のようになる。第2章において,まず,GB理論までに仮定されてきた文の構造を生成す る規則に焦点を当てる。次に,この理論に内在していた問題点を概観する。第3章では,極小主義理論を概 観し,文の構造は併合操作により形成されることを見る。この極小主義により,言語の系統発生の問題に取 り組むことが可能になったことを論じる。第4章では,極小主義から導かれる理論的帰結について論じる。 この帰結として,機能範時の出現と消失の観点から言語獲得,言語類型論,歴史言語学が統一的にとらえら れることを論じる。第5章では本論の結論を示す。. 2.GB理論と言語の系統発生 2.1.生成文法における構造構築 一般的に1957年が生成文法の始まりであるといわれている。この年,Chomskyにより即ntaCticstruc− turesが出版され(Chomsky(1957)),この本で示された考えを最も単純な形式で述べると,(英語の)統 語規則は,句構造規則と移動から成り立つとすることができる。. (1)統語構造. て芸芸造規則. 統語規則の1つには句構造規則が存在し,この規則に従って文が生成される。例えば,(2)のような規則が仮 定され,構造が生成される。そして,個々の語彙項目(1exicalitem)が挿入されることにより,文が生成 される。. (2)a.S →NPVP b.VP→VNP c.NP →DetN. さらに,Chomskyは(2)のような句構造規則だけでは,文の構造を適切にとらえるためには不十分であるこ とを指摘した。この不備を補うため,移動が必要であると主張した。このように,句構造規則と移動の両方 を仮定することにより,適切な統語構造が得られると主張した。 Chomskyが生成文法を碇案する以前の構造主義言語学においては,主に,統語構造の句構造規則に焦点 があてられていた。しかし,Chomskyは,句構造規則だけではなく,移動を統語操作の中心に据えること により,この不備を解決したのである(詳しくはNewmeyer(1980,1986)を参照)。 この後,生成文法は様々な理論的な変遷をたどることになる。1980年代までは,主に個別文法(特に英語 の統語論)に焦点が当てられてきたが,1980年代以降では,理論の抽象化が進められる。例えば,個々の句 構造規則(2)は,GB理論では通カテゴリー特性を捉えるため,Ⅹ’理論(3)へと集約される。. (3)a.X, =ⅩⅩ,,* b.X= =Ⅹ=*Ⅹ,. (Chomsky(1986:3)). さらに,構文毎に規定されていた移動規則は抽象化され,α移動(Moveα)となる。ここで重要なことは,. 48.

(4) 機能範疇の出現と消失. GB理論において高度な理論的抽象化を遂げたが,統語構造は句構造規則と移動という独立した2つの要素 から成るという,(1)に示された考えは変わらず保持されていたということである。(第3章で論じるように, 極小主義では,この2つは併合操作1つにより導かれる。). さらに,GB理論では他にも様々な規則が抽象化された。Ⅹ’理論とα移動を含め,抽象化された規則(の 一部)を(4)に示す。. (4)a.X’理論 b.α移動 c.境界理論 d.投射原理 e.束縛理論 f.空範噂原理. また,Chomskyは統語部門自体が他の認知機関とは独立しているという統語論のモジュール性を打ち出し たが,統語部門内部においても,(4)に示されるような様々なモジュールが存在し,そのモジュールの相互作. 用の結果により,文が生成されると主張した。 以上,この節をまとめると,Chomskyは句構造規則と移動が統語論に必要不可欠であると主張した。句 構造規則と移動は理論的変遷において様々な形式でとらえられていたが,GB理論に至るまで,この2つが 独立して存在していると考えられてきた。次の節では,GB理論から得られる理論的帰結と,GB理論が持 つ問題点を示す。. 2.2.GB理論から得られる理論的帰結 このGB理論の観点から,言語に対する様々な疑問に対する答えが提供された。ここでは,本論と関係す る次の2点を挙げる。. (5)子供はなぜ短期間に言語を獲得するのか。 (6)人間と他の動物を区別するのは何か(=人間性とは何か)。. GB理論では,子どもが短期間で言語習得できる理由として,子どもが生得的に持っている言語機能 (LanguageFaculty宍ゴUG)が豊かな規則体系を持っているからであると考えられていた。つまり,Ⅹ’理 論でとらえられる句構造規則や,α移動が示す移動現象,この他に(4)で示される諸原理を子供は生まれな がらに有しており,このため,不完全な質と不十分な量しか持たない大人の発話を聞くだけで,完全な言語 を獲得できると考えられていた。端的に言い換えれば,子どもは生まれながらに,多くの原理・規則を持っ ている,ことなる。 次に,(6)の問題に対する答えとして,Chomskyは言語こそが人間と他の動物を分けると主張した。古く から人間と動物を分ける決定的要因に関しては多くの議論がなされてきた。例えば,その答えとして直立二 足歩行や道具を使う能力,理性がある。しかし,Chomskyは言語こそが区別のための決定的要因であると 主張した。このため,Chomskyの主張は言語学のみならず,哲学,心理学,脳科学,生物学に大きな影響 を及ぼすに至っている。その言語を定義づけるのが,ここでも(4)である。 このように,豊かな規則体系(4)を仮定することにより,子どもの言語獲得や人間性を説明していた。しか. 49.

(5) 菅 野. 悟. し,このように言語の規則体系を豊かにすればするほど,言語の系統発生にとっては問題となる。次の節で はその理由を論じる。. 2.3.GB理論と言語の系統発生. GB理論においては,その当時ほとんど意識されていなかった重大な問題がこの理論には存在している。 それは,人間言語の系統発生関する問題,すなわち,(i)人類はいつ言語を獲得したか,(ii)どのように獲得し. たか,という問題である(Jenkins(2000))。GB理論の枠組みにおいて言語の系統発生を扱うためには, いつ,そして,どのように,(4)に示される統語部門内の複数モジュールを獲得したのかを説明しなければな らない。 まず,動物のコミュニケーションについて考える。動物のコミュニケーションにおいては,(4)に示される モジュールに似た心的機関を持ってはいない(例えば,Greenfield(1991))。もし,人類が徐々に(4)のモジュー ル群を獲得していったのならば,他の動物(特に,現生生物で人類との分岐が近いチンパンジー)にモジュー ル(4)の一部が観察されるはずである。しかし,これは観察されていない。さらに,現生人類と20万年前に分. 岐した,ネアンデルタール人も言語を扱う能力が欠如していたと考えられる(LiebermanandCrelin(1971))。 このように,他の動物や人類に現生人類に似た文法モジュールが存在しないということを考えると,考え られ得るシナリオは,現生人類が他の動物と分岐した時点で,複数のモジュール(4)を一挙に獲得したという. ことになる。しかし,進化は突然の発明をするのではなく,すでに存在しているものを徐々に変化させ,小 さな変化の積み重ねの結果として生じる(Dawkins(1981))。このため,GB理論から推測される系統発生 の仮説,すなわち,複数のモジュールを一遍に獲得したという仮説は,進化論的に妥当ではないと結論付け られる(藤田(2009))。. しかし,1990年代に入り,生成文法の理論がさらに進展し,極小主義(MinimalistProgram)と呼ばれ る枠組みの下,この間題が取り組まれている。次の章では,まず,極小主義がどのような理論かを概観し, 次に,その理論が提出する系統発生の問題に対する答えを論じる。. 3.極小主義 3.1.併合操作 生成文法における極小主義は,GB理論を発展させた言語理論であり,次の2つの考えを基盤としている。 1つ目は,言語記述の際に,より少ない道具立てのみを用いるべきであるという考え(Occam’srazor)で ある。2つ目は,統語部門はインターフェイス(他の認知機能との接点)に対する最適解であるという仮説 である。2つ目の仮説は強い極小主義のテーゼ(strongminimalistthesis)と呼ばれ,この考えを簡単に述 べれば,言語は完壁な形に設計されているということになる。統語部門は意味や音声のインターフェイスヘ の要求に,最も経済的で,最適な形で答えると言い換えられる(Chomsky(1995))。 この2つを基盤とし極小主義は,従来まで仮定されていたあらゆる仮説の妥当性を検証する。もし,概念 的・理論的妥当性が存在しないならば,言語記述に有益であっても,その理論は棄却される。例えば,GB 理論において,言語獲得の問題(5)と人間性に対する問題(6)に対する答えとして碇出されていた諸規則群(4)も, 極小主義の下,妥当性が再検討され,そのままの形式で残っている規則はない。代わりに,極小主義で不可 欠とされている操作は併合(merge)操作である。 すでに述べたように,GB理論では,Ⅹ’理論に従い,構造構築を行っていた。極小主義では,どのよう に構造構築を行うのか,(7)を例に考えてみる。. 50.

(6) 機能範疇の出現と消失. (7)Whodidthemanmeet?. 併合(merge)という操作は二つの要素を結び付ける操作をいう。meetとwhoという2つの要素は併合 により,結び付けられる(8)。さらに,themanやdidが併合操作により,この構造に加えられる(9)。. (8). /〈\ meet. who. (9). /一〈\\ did. /〈\. theman /〈\ meet. who. GB理論と極小主義の構造構築の違いは,GB理論では,Ⅹ’理論(3)が仮定されていたが,極小主義において は,この規則は破棄される点である。構造を作り上げるのは,2つの要素を結び付ける併合操作であり,Ⅹ’ 理論は併合操作に還元される。 さらに,極小主義においては,(1)で示されていた移動も併合操作に還元される。㈹に示されるように,. whoという要素とdidthemanmeetとを結び付ける(併合)することにより,Whoの移動がとらえられ ている。. ㈹. このように,句構造規則と移動を独立した2つの操作として仮定するのではなく,併合操作から両方を説 明するのである。構造構築の併合と移動の併合の違いは,構造構築が,句構造になかった要素を派生に導入 するのに対し,移動はすでに派生に導入された要素をもう一度用いる点にある。しかし,移動も構造構築も,. ある要素と別の要素とを結び付けるという点で共通しているため,移動は内的併合(internalmerge)とし て捉えられ,構造構築は外的併合(externalmerge)と呼ばれる。どちらも仕t)に示すように,併合に還元さ れるのである。.  ̄二∴. 併合. フ 句構造規則→外的併合−一亡 以上のように,極小主義においては,あらゆる仮説の妥当性が再検討され,現在では,併合操作が不可欠 な操作として仮定されている。極小主義に至るまでの理論では,句構造規則と移動が独立して仮定されてき た(1)。しかし,極小主義では,この2つは1つの操作から導かれる仕方。言い換えれば,統語構造は併合操作. に還元されることになる。さらに,この操作に基づき,GB理論までの諸規則(4)を捉えようとする試みがな されている。このため,GB理論と極小主義の違いの1つは,言語機能に豊かな内容を仮定するか否かとい. 51.

(7) 菅 野. 悟. うことになる。次の節では,母語獲得の問題(5),人間性の問題(6),さらに,系統発生の問題に対して,極小 主義はどのように答えるのかを論じる。. 3.2.極小主義と言語の系統発生 まず,極小主義の下,母語獲得と人間性の問題を論じ,次に系統発生の問題を論じる。先に挙げた。(5)と (6)をそれぞれ下に再掲する。. ㈹ 子供はなぜ短期間に言語を獲得するのか。 ㈹ 人間と他の動物を区別するのは何か(=人間性とは何か。). まず,江別こ対しては,極小主義では,GB理論と比べると豊かな規則体系を仮定しない。このため,子供は,. 大人と同じ完全な構造を持って生まれてくるのではなく,得られる肯定証拠に従い自ら文法を作り上げると いうことになる。詳しい議論は4.1節で行うため,ここでは,これ以上論じない。. 次に,人間性に対する問題q鋸こ対する答えとして,他の動物と人間を分けるのは,併合操作を持つか否か という一点に絞られる。ここでも,規則体系(4)を仮定しない。言い換えれば,人間を特徴付けるのは,併合 である。他の動物(チンパンジー)や人類(ネアンデルタール人)には,この併合操作,より正確にいえば,. 再帰的な併合操作は存在せず,人間のみがこれを持つということになる。 3つ目の問題として,系統発生の問題である。GB理論の枠組みでは,この間題は解決不可能な問題であっ たが,極小主義の枠組みにおいて,この間題に取り組むことが可能となる。. 現在の研究を論じる前に,ここで,以前,特に19世紀の言語の系統発生の研究に軽く触れる。まず,言語 の系統発生の研究に閲し,最初に挙げるべき人物はDarwinである。Darwinは人間言語も進化論の観点か ら捉えることが可能な対象であると考え,原始的な言語から,現在の言語へと徐々に変化(進化)すると主 張した(1871=2004)。この同時代において,系統発生に対する多くの仮説が碇案されたが,この碇案の大部 分は思索的なものであり,学問上の進展はほとんどなかった。このため,1866年,パリ言語学会は,言語の 系統発生に関する発表は受け付けないと宣言する。さらに,1872年,ロンドン言語学会で同様の宣言がなさ れる。この理由は,当時,言語学のみならず,心理学や人類学,生物学は言語の系統発生を扱うほど,十分 に発展してなかったためである。. しかし,今日,これらの学問分野は言語の系統発生を扱えるほどに成熟したと考えられる。このような, 学問的発展を示す例として,生物学の進展が挙げられる。生物学(特に遺伝子研究)は,人類の誕生と移動 に対し有力な証拠を示したことにより,言語の系統発生に対する基盤ができたと言える。人類の誕生に関し ては,従来,「アフリカ単一起源説(Cann,StonekingandWilson(1987))」と「多地域進化説(Wolpoff, Hawks,FrayerandHunley(2001))」の2つの仮説が提案されていた。遺伝子研究が示した成果は,現在, 世界の様々な地域に住んでいる人々の遺伝子をさかのぼると,約20カ年前にアフリカに住んでいた一人の女 性(ミトコンドリア・イヴ)にたどりつくというものである。このため,人類誕生のシナリオとして,現在 の人類はアフリカで誕生し,全世界へと移動したということになる。このことは,アフリカ単一起源説を強 く支持する。この人類誕生の仮説に対して,生物学だけでなく,考古学や化石学の観点からもこの説を支持 する証拠が発見されている。例えば,エチオピアのキビシュから,19万5000年前の人骨(OmoIとOmoII) が発見されている(McDougall,BrownandFleagle(2005,2008))。 さらに,アフリカで誕生した人類は7から5万年前にアフリカ以外の土地に進出をする(「出アフリカ」)。. 4万年から3万年前までには,ユーラシア大陸とヨーロッパ大陸全域に広まり,2万年前から1万年前では,. 52.

(8) 機能範疇の出現と消失. ベーリング陸橋(今日の海峡)を渡る。そして,最終的に,1万5000年前から1万2000年の間にアメリカ大 陸の南端にたどりつく。. 以上までが,人類誕生から世界各地への移動のシナリオである。このような誕生と移動のシナリオに基づ き,言語の系統発生の問題を考えると,解くべき問題は次の点である。1. ㈹ 人類はいつ言語を獲得したか. 江刺ま極小主義に至り,初めて問える問題である。なぜならば,「.‥GB理論の高度にモジュール化された文 法モデルは,進化的妥当性にとってはむしろ最悪のシナリオだとしなければならない。」(藤田(2009:115)). ためである。GB理論と異なり,極小主義では,人間言語を特徴づけるものは併合操作に集約される。この ため,㈹の問題は次のように言い換えることが可能である。. ㈹ 人類はいつ併合を獲得したか 人類に言語をもたらすのは,複数のモジュールが同時に発生したからではなく,併合を中心に考えればよい ことになる。. この間題に対し,Chomsky(2008a,2008b)は,人類誕生以来,脳構造に変化がないということを前提 とし,併合の獲得は出アフリカの時期,つまり,6−5万年前と述べている。しかし,この点に閲し,いくつ かの問題が生じる。もし,人類誕生以来,脳構造に変化がないことを仮定するならば,併合の獲得はネアン デルタール人と分岐した時期,すなわち,現生人類が誕生した20−15万年前に求めるのが妥当である。実際,. McWhorter(2001)は言語の誕生を15万年前としている。本論では,言語の系統発生を20−15万年前と仮定 する。さらに,そもそも言語に影響する脳部位も変化している可能性がある。DediuandLadd(2007)で は,二つの遺伝子(ASPMとMicrocephalin)の分布が音調言語の分布と関係していると論じてい. る。この. ため,㈹=江別こ関しては,もちろん議論の余地が十分にあり,言語学,生物学などの様々な分野から言語の 系統発生に閲し活発な議論がなされている。. 重要なことは,このような議論が可能になったことが,併合を統語の中心に据える極小主義の重要な成果 である,ということである。GB理論では,言語機能の内容を豊かにすることで,言語記述をはじめ,様々 な問題(㈹や㈹など)を説明していた。一方,極小主義では,より少ない仮説のみを採用しているため,系 統発生の問題も取り組むことが可能になったのである。さらに,系統発生を考慮した言語記述も取り組まれ ている。つまり,言語記述する際にも,進化論的に妥当であるかどうかを考慮すべきであると考えられてい るのである(Boeckx(2010a),Hornstein(2008))。 次の章では,この進化的妥当性(evolutionaladequacy)を取り入れた枠組みが,言語獲得,類型論,歴 史言語学にどのような影響(理論的帰結)をもたらすのかを論じる。. 4.極小主義から得られる理論的帰結 4.1.極小主義と言語獲得 この節では,言語の個体発生江別こ関して論じる。個体発生とは,子どもがどのように母語を獲得するのか. という子供の言語獲得の問題であり,極小主義の枠組みでは,StruCture−buildingapproachが妥当である と論じる 。. 53.

(9) 菅 野. 悟. 言語獲得に関しては,大きく分けて2つの考えが存在する(Radford1998)。一つは大人が持っている構 造を,すでに子供が持っているという考え方(structuralcontinuityapproach)である。もう1つは,語彙 項目(1exicalitem)に基づき,子どもは文法を作り上げるという考え方である。 子供の発話として,次の㈹が観察される。Radford(1998)はこれらの発話に対し,仕7)の構造を提案する。. q6)a.Mummydoingdinner Daniel(1;10). b.bunnybrokenfoot. Claire(2;0),fromHi11(1983). c.babyeatcookies. Alison(1;10),fromBloom(1973). 抑. (Radford(1998:44)). VP. /一〈\\ Ⅴ’. N. /〈\ Ⅴ. Mummy doing Bunny broken Baby eat. N l. dinner fbot COOkies. (ibid.:45). 仕7)が示すように,この時期の子どもの文が有しているのは,VPまでの投射である。言い換えれば,大人の 文法に存在しているIP(TP)やCPが,この時期の子供の文法には存在していない。これらの機能範噂は 生まれながらに存在しているのではなく,子どもは成長するにつれて,下位の範暗から徐々に獲得すると Radfordは主張する。また,名詞句の構造に対しても同様に,子どもの発話(q8)のイタリック体の部分)に は,機能範疇(D)が欠如していると主張している。. ㈹ a.What’sthis?L7セIephone(Paula18) b.What’sthis?L$t,00n(Paula18) c.what’sthis?L助Iloon(Dewi18) d.Whatdoyouwant?LBiscuit(Dewi18). (Radford(1990:84)). 節と名詞句の構造に対し,Radfordは子供の文法が,大人とは異なる構造を持っており,十分な投射が存 在していないと主張する。. この主張は,併合操作を中心とする極小主義の考えと一致する。極小主義では,併合操作が文法を特徴付 ける操作であり,豊かな文法をあらかじめ持っているとは仮定しない。そのため,子どもの母語獲得の際に,. あらかじめ豊かな構造を持って生まれてくるのではないことになる。また,顕在的な語彙項目の存在しない ような投射も存在しないと考えられる。子供は,第1次言語資料に基づき,併合操作を用い文法を構築する という道筋が適切となる。このため,子どもが文法を作り上げる際には,まず,語彙範噂(ⅤやN)の形 成から始まり,次に,第1次言語資料の肯定証拠に基づき,徐々に機能範噂を形成するという過程をたどる。 一般化すれば,子どもの言語獲得は,語彙範疇を獲得した後,機能範疇を形成する過程であるといえる (Osawa(2003))。これを江別こ示す。. q9)LexicalProjection→FunctionalProjection+LexicalProjection. 54.

(10) 機能範疇の出現と消失. では,もし子どもが母語獲得の際に,機能範噂(の一部)に対しての肯定証拠を得なかったならば,どの ような文法を形成するかを考えてみたい。あり得る答えは次の2つのうち1つである。そのような状況にも かかわらず,子どもはすべての機能範噂(C,Ⅰ,Dなど)を持つ言語を獲得する。もしくは,獲得された 文法には機能範疇(の一部)が存在しない。妥当な答えは,後者であると本論では主張する。なぜならば, 子どもが生まれながら持つ言語機能は,母語獲得の過程を規定はするが,最終目標を決定してはいないため である。このため,機能範噂(の一部)が欠如している言語が存在する可能性が生じる。 次の節では,実際にこの予測に基づき,言語間の違いを機能範時の有無という点から論じる。. 4.2.極小主義と類型論. この節では,機能範疇の有無により言語間の違いを説明する。この試みは,GB理論の枠組みにおいて活 発に研究がなされてきたが,極小主義により,この考えに対する理論的支持がさらに与えられることになる。. 例えば,Fukui(1986)では,機能範時の有無により,英語と日本語の違いを論じている。まず,節構造 に対しては,英語のような言語の場合,CP−IP−VPの構造が存在し,主語は[Spec,IP]にあり,目的語は VP内に生起する。一方,日本語では,不完全なⅠだけが存在し,基本的には,節はⅤの最大投射であると 主張する伽)。. 伽). (Ⅰ’). /〈\ Ⅴ’ /〈\. (Ⅰ). Ⅴ’. \. Ⅴ’. /〈\. Ⅴ. (Fukui(1986:242)). 次に,名詞句の構造に対しても,同様の主張がなされている。英語には,DP−NPの構造があるが,日本語. の名詞句はNの最大投射であると主張する飢。. 飢. N’. /一〈\\ N’. /〈\ \ N’. /一〈\\ N. (ibid.:243). このように,言語獲得から得られる理論的予測の通り,言語間の遠いを機能範疇の有無の点から説明する ことが可能である。2 ここで,最近提案された分離CP仮説(SplitCPHypothesis(Rizzi(1997)))について触れる。この仮. 55.

(11) 菅 野. 憶. 説は,CPをより詳細な投射に分けるという仮説である。この仮説に閲し注意すべき点は,すべての言語に 対し妥当とはならない可能性がある,ということである。GB理論では,豊かな言語機能の規則体系を仮定 し,その規則体系を生得的に子供は持っていると考えられていたため,ある言語で妥当性が認められた場合,. 別の言語にもその妥当性が当てはまると考えられていた。しかし,本論での主張が正しければ,機能範疇の 有無は言語により異なるため,ある言語で分離CP仮説が適切であっても,直ちに,別の言語に応用するこ とはできない,ということになる。Boeckx(2010b)では,進化的妥当性の観点から,分離CP仮説自体を 批判している。しかし,この仮説を完全に破棄するのではなく,本論の議論から導かれる妥当な結論は次の 主張である。極小主義の観点から,分離CP仮説を考えると,言語機能には,IPより上に詳細な投射を形 成する「能力」があるが,言語間で異なる可能性がある,ということである。つまり,子供は肯定証拠に基 づき,併合操作を行い文法を形成するため,ある言語がそのような肯定証拠を提供する限りにおいて,当該 言語に詳細な投射が存在し得る,ということである。 最後に,なぜ言語は多様であるのかを考えてみたい。3.2節において,人類の歴史のシナリオとして,ア フリカで誕生し,その後,アフリカ大陸を離れる(出アフリカ)と述べた。この時に出アフリカを行ったの は,小規模の集団であり,現在アフリカ大陸以外に住む人類はこの集団の子孫である。その証拠として,ア フリカ大陸以外に住む人々には皆,遺伝子マーカー「M168」が備わっている。この集団の規模は少数であっ たため,使われていた言語の数は少ない,恐らく1つであったと推測される。. このため,世界中の様々な言語が今日観察される理由として,次のシナリオが考えられる。出アフリカの 際に話されていた言語が,個々の方言へと変化をし,さらに,個別の言語へとなっていったというシナリオ である。言い換えれば,言語が多様であるのは,歴史的変化の結果であることになる。そこで,言語の多様 性を生み出す歴史的な変化について考察する必要がある。次の節では,極小主義の枠組みの下,どのようド 言語の変化が捉えられるかを論じる。. 4.3.極小主義と歴史言語学. 4.2節において,少数もしくは一つの言語から現在の存在しているすべての言語が生じたという可能性を 示した。この節では,多様性を生み出す言語の変化について論じる。. 言語の変化については,歴史言語学において活発に議論されてきたが,ここで,類型論と歴史言語学の関 係を,より明確にするために,㈹を取り上げる。. Cz2)a.膠着語(AgglutinatingLanguage) b.屈折語(inflectional1anguage) c.孤立語(IsolatingLanguage). ¢勿は,形態論に基づいて言語を分類した場合,世界の言語は(少なくとも)3つに分類されることを示す. (Sapir(1921),Comrie(1989),Whaley(1997))。 歴史言語学において,これは連続的に変化すると考えられている。例えば,CrowleyandBowern(20104) においては,言語は次のように変化すると主張している。. 56.

(12) TS 䠄䇾MARKED䇿䠅 The man, he TOP. PRO. came. NEUTRAL 䠄RE-ANALYZED䠅 ==>. The man he-came SUBJ SUBJ AG AG.

(13) 菅 野. 悟. 錮の左方移動した構文は,有標の意味を持っていたが,世代を経るごとに,徐々に有標の意味が薄まる。こ れは文法化の際に見られる現象であり,より有標性の低い文脈においても,過剰に使われることにより意味 の漂白化が生じる。. 有標性が低くなるにつれて,文法構造も変化をする。以前のTop/FocPは,投射自体が持つ意味が薄まり, I/TPとなる。(IPであるか,TPであるかは議論に影響しないため,ここでは,I/TPと記す。). ・ご−;−. Ⅰ/TP. /一〈\\ Ⅰ’/T’. /一〈\\ VP. Ⅰ/T. /〈\. PrOnOuni. S叫i. V’. /〈\. 代名詞は主語の一致形態素と再分析され,IO/TOに基底生成する。[Spec,VP]に基底生成される主語は [Spec,I/TP]へと移動をする。この移動の要因は,かつてのTop/FocPがSpecを要求した名残であると仮 定する。この考えを一般化すると,指定部を要求するというEPP特性は,かつて意味を持っていた機能範 時の名残である可能性がある。しかし,ここではこれ以上の議論はせず,これを仮定する。 次の段階として,さらなる意味の漂白化が起こると,I/TPはただの一致を引き起こすための投射(AgrP) となる。. 即. AgrP. /一〈\\. Agr. /〈\ VP. /〈\ S叫i. V’. /一〈\\ Ⅴ. 以前の代名詞は,それ自体の意味を失い,音的にも縮約され接辞化する。ここでも,先ほどと同様の理由に より,主語は[Spec,AgrP]へと移動をすると仮定する。 最後の段階として,AgrP自体がなくなると仮定する。このため,錮の言語状態に戻ることになる。この 循環的変化をまとめると鯛のようになる。. 58.

(14) 機能範疇の出現と消失. ・ご・・・−. (Top/FocP). 〈. Subj.. (F’). 〈 vp. (F). 〈 Ⅴ,. PrOnOuni. 〈 Ⅴ. \ 1/TP 〈 Ⅰ’/T’. 〈 VP. ⅣT. prOnOuni. 〈 凱旬i. V’. 〈 Ⅴ. 上で,類型論と歴史言語学には密接な関係があり,変化している言語の一状態を捉えたのが類型論であると 述べた。このため,鯛の図を用いて,言語の分類をすると,中国語や日本語(Fukui(1986))は(Top/FocP−) VPの言語に属すると考えられる。I/TP−VPの言語には,代名詞と同じ形式の要素が一致形態素として生 じる言語(パンツー諸語(Giv6n(1976))や屈折の豊富な言語(ドイツ語やイタリア語)が含まれる。そ して,AgrP−VPの言語では,屈折が乏しい言語(英語)が含まれるということになる。. ここで,AgrPに閲し述べると,Chomsky(1995)は意味の存在しない投射を仮定する理論的根拠がな いとし,一致のための投射(AgrP)は存在しないと主張した。しかし,本論では,AgrPはかつて意味を 有していた機能範時の名残がAgrPであると主張する。このように考えれば,かつて意味を持っていた機能 範疇の名残がAgrPとして,一時的に残っていると考えられ,存在を仮定する根拠があると思われる。さら に,EPP特性は,かつて意味のあった,もしくは,意味を持つ機能範時の一般的特性(Rizzi(1996))で あると本論では主張する。 極小主義に基づく言語獲得の理論的帰結から,機能範時の有無により言語の分類ができることを論じ,こ の章では,これを捉えるために,言語変化に対する規則(機能範疇の出現と消失)を論じた。. 5.結 論 歴史言語学に閲し論じた 本論では,機能範時の出現と消失という観点から,言語獲得,言語類型論,。. GB理論では,言語機能に豊かな内容を持たせることにより,言語獲得などの問題に対する答えを提供して きたが,言語機能の内容を豊かにすればするほど,言語の系統発生を説明することが困難になる。一方,極 小主義では,言語機能の中心は併合操作であると仮定し,概念的・理論的安当性のある仮説のみを採用する。. この結果,現在の極小主義理論では,言語の系統発生の研究に取り組むことが可能となった。さらに,この 極小主義の枠組みで,言語獲得を考えると,子どもの文法獲得は,機能範時の出現と考えることができる。 この言語獲得の理論的帰結として,言語の違い(言語類型論)は機能範時の違いという考えに理論的根拠が 与えられ,さらに,言語の変化は機能範疇の出現と消失であるとみなすことができることを論じた。. 59.

(15) 菅 野. 悟. 注 1Hauser,Chomsky,Fitch(2002)では,(14)=(15)の問題以外に,言語機能と他の認知機構がどのように結びついたかという 問題も取り上げている。しかし,本論では,この間題は扱わない。また,彼らは,併合の前駆体はないと主張し,ダーウィ. ン流の進化論に疑問を呈している。 2 機能範疇の有無は,言語毎に異なるのか,一言語内でも構文毎に異なるのかはここでは議論しない。Kanno(2010)で, 1言語内では構文毎に投射が変わることはない,と論じた。. 3 糾で示されている略語はそれぞれ次を意味する。TS=Topic−Shift(constructions),Top=tOpic,PRO=prOnOun, SUBJ=Subject,AG=agreement(marker) 4 糾では,代名詞が凛頭辞(prefix)となっている。基底構造の語順に依存するが,一般に主語の一致形態素は,接尾辞((suffix) である傾向にある。Haiman(1991)は,接尾辞になる理由として,Ⅴ−S語順の時に再分析が生じるためであると主張する。 Ⅴ−S語順において,主語代名詞は,一敦形態素か顕在的主語かが不明確になり,一敦形態素として再分析されると主張する。. 参考文献. Bloom,Lois(1973)One WbrdataTime:Thetjbeq/Single WbrdtHterancesBubre勘niax,MoutondeDeGruyter,The Hague.. Boeckx,Cedric(2010a)‘‘MovingBeyondExplanatoryAdequacy:FromCtoP,”paperpresentedatLinguisticWorkshopin HokkaidoUniversity.. Boeckx,Cedric(2010b)‘‘CartographyintheContextofModernCognitiveScienceandBrain,”paperpresentedatLinguis− ticWorkshopinHokkaidoUniversity.. Cann,RebeccaL.,andMarkStonekingandAllanC.Wilson(1987)‘‘MitochondrialDNAandhumanevolution,”Ndure325, 31−36. Chomsky(2008b)“TheBiolinguisticProgram:WheredoesItStandToday?,”Ms.MIT. Chomsky,Noam(1957)$yniacticStnLCtureS,Mouton,TheHague. Chomsky,Noam(1986)&Jrrie7T,MITPress,Cambridge,MA. Chomsky,Noam(1995)TheMinimaliitPYVg7um,MITPress,Cambridge,MA. Chomsky,Noam(2008a)‘‘OnPhases,”Fbu71datio71alhsuesi71Li71guistic Theo7rEぶsLDTSi71Ho710rq′Jea7l−Rogt?r陀7g71aud, ed.byRobertFreidin,CarlosP.OteroandMariLuisaZubizarreta,133−166,MITPress,Cambridge,MA.. Comrie,Bernard(1989)Languagethlive7TaLsandLinguistic7bpology,2nded.UniversityofChicagoPress,Chicago.. Crowley,TerryandClaireBowern(2010)AnlhtroductiontomstoricalLinguistics,4thed.0Ⅹford,NewYork.. Darwin,Charles(2004)TheDescentq′腸nandSelectioninRelationtoSex.[ReprintedinTheDescentofMan,ed.by JamesMooreandAdrianDesmond,2004,PenguinBooks,London.] Dawkins,Richard(1981)TheBlindWbtchmaker,W.W.NortonandCompany,NewYork. Dediu,DanandRobertLadd(2007)‘‘LinguisticToneisRelatedtothePopulationFrequencyoftheAdaptiveHaplogroups OfTwoBrainSizeGenesASPMandMicrocephalin,”靴4S104,10944−10949.. Derbyshire,DesmondC.andGeoffreyK.Pullum(1981)‘‘ObjectInitialLanguages,”1hternationalJournalqfAmerican 上物酢沈痛ム47,192−214.. Fukui,Naoki(1986)A Theo7TdCbtego7TPrqiectionandlhAMlication,DoctoralDissertation,MIT. 藤田耕司(2009)“言語の起源と進化Ⅲ−:生成文法の視点から,”95−133 『言語と進化・. 変化』,池内正幸(編)朝倉書店,. 東京。 Giv6n,Talmy(1976)“Topic,PronounandGrammaticalAgreement,”SuわectandT坤ic,ed.byCharlesN.Li,149−188, AcademicPress,NewYork.. Greenfield,PatriciaM.(1991)‘‘Language,TooIsandBrain:TheOntogenyandPhylogenyofHierarchical1yOrganizedSe− quentialBehavior,”Behavio7TllandBnlinSciences14,531−595.. Haiman,John(1991)‘‘FromV/2toSubjectClitics:EvidencefromNorthernItalian,”AmroachestoGrammaticalizatio71: hcuson乃少esq′GタⅥmmatical腸rke7T,ed.byElizabethC.TraugottandBerndHeine,135−157,JohnBenjamins,Am− sterdam.. 60.

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