Title
インタラクションにおける直接的コミュニケーションの
考察
Author(s)
吉田, コマキ; 木曽, 隆
Citation
沖縄大学マルチメディア教育研究センター紀要 = The
Bulletin of Multimedia Education and Research Center,
University of Okinawa(10): 17-24
Issue Date
2010-03-31
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/6445
研究 ノー ト
インタラクションにおける直接的コミュニケーションの考察
吉田コマキ
木 曽
隆
沖縄大学マルチメデ ィア教育研究セ ンター
プロッコ ・デ リ ・ア-キテクツ有限会社
概要 近年、コミュニケーション手段は、情報通信技術の進歩によって多様化 している。 この 「手段の多様化」 は 我々の日常生活を潤す反面、中身であるコミュニケーション自体の質を低下させる面も持っている。 本稿は、端的なコンピュータヒューマンインタラクションではな く、 「触れる」 ことで空間や時間を共有 し、直接 的なコミュケ-ションが起 こるインタラクションアー ト作品を制作、鑑賞者の行動を考察 した。Cons
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Abstract Recently,communicationmethodsarediversifiedintovariouskinds・byalotoftechnology
breakthroughs.Thisdiversificationhastwosidesforourlife.Weenjoythebenefitsofit.Ontheother hand,itcausequalityofourcommunicationstobereduced.
In thispaper,wereportobservationsofhumanwhotouchourinteraction-art. Theartprovides DirectCommunicationsforuserswithtouchandreactiveinterface.
7-1.目的と背景 』盾報技術が社会的な役割を大きく担っている昨今、コンピュータやネットワークの普及にともない、人々 のコミュニケーションの場も現実世界よりも仮想世界への偏重が顕著になってきている。電子メール中心の ビジネスフローの発達や、ネットワークゲームに代表される仮想現実的な世界の拡大などはその証左といえ よう。 そういった社会現象は、様々な人間関係に影響を及ぼし、感情の希薄、過度な摩擦、隣り合う人との温度 差や感覚を欠落させる要因のひとつになると考えられる。(参考文献(1))実際にインターネットを介した 犯罪や、人間関係の崩落など、痛ましい事件事故がたびたび耳にするのも、健全なコミュニケーションの不 足から起こっているのではないだろうか。 喜怒哀楽といった、日々の生活の中で起こる人としての感情を、直接の他人と対面したり、共有したりす ることで健全な人間関係や育成につながり、小さなコミュニティ(核家族など)から多様なグローバルコミュ ニケーションも可能にしていくであろうと考えている。 今回は、コンピュータデバイスを活用しつつも、直接的なコミュニケーションを実現させるアート作品を 制作し、空間や時間を共有している鑑賞者の行動を考察した。 2.直接的コミュニケーション この章ではまず、「直接的コミュニケーション」について考察し、その実現方法を提示する。 2.1.「人対人」の直接的コミュニケーション 人対人の直接的なコミュニケーションとは、両者が時間的空間的に同じところに存在しコミュニケーショ ンすることと位置づける。今回の展示作品は、その「人対人」のコミュニケーションを実現し、観察するた めに、複数の人が一度の楽しめる造形を意識して製作を行った。複数の人が同時に楽しめるということは、 その場で自然とコミュニケーションが生まれ、さらには展示観賞後、時間が経った後も同じ話題で語り合う という時間と空間を与えられる。さらには、展示物を体験した人から、まだ体験していない人へのコミュニ ケーションの流れも期待できる。このようにして働く相互作用や交換作用をインタラクションと言う。 2.2.「人対装置」の直接的コミュニケーション 人対装置における直接的なコミュニケーションとは、人が装置に触れることで入力を伝え、また、装置は 即座に反応を示し適切な1情報を応答する関係と位置づける。昨今、様々なセンサーデバイスが普及し、いわ ゆるパーソナルコンピュータの形状をしていないコンピュータが身の回りにあふれている。日常的にこれら のコンピュータデバイスを意識することなく、コンピュータからの情報を取得することが可能になった。そ れらは、生活の多くを便利にし、多くのコミュニケーションを多様化させている。 2.3.本作品における直接的コミュニケーション 本作品は、複数の人が同じ空間と時間を共有、複数の人が同時に情報を取得させることを目的とし、「人 対人直接的コミュニケーション」の実現手段として、インタラクションアートを採用し、「人対装置直接的 コミュニケーション」の実現手段として、マルチタッチデバイス採用した。特に、アート作品としての造形 表現の自由度をあげるために、マルチタッチデバイスの技術には、安価で形状自由なFTIRを採用した。さ らに、操作や取得する`情報を単純明快にすることで、「人対人」の直接的コミュニケーションを自然に発生 できるという視点を意識した。 3.展示作品 ここでは、実際に展示される作品に関して紹介する。 -18-
3.1.作品コンセプト「ハッピーなインタラクション」 昨今、メールやウェブサイトといった、インターネットを介してのコミュニケーションは当たり前になっ てきている。だが、100人からお祝いの電子メールを受け取るよりも、10人集まって一緒に場を共有するこ とが、幸せと感じないだろうか。本作品を通じて、その場を共有することの楽しさ、ハッピーを表現した。 3.2.作品概要 直径50cmというあまり目にしない特大のバースデーケーキは、甘党でない人でも目を細めるのではない だろうか。フェルトで模した特大バースデーケーキを作成し、中央に円形のFTIRマルチタッチセンサーを 施した。ケーキ上でタッチされた指の数に応じた和音数のハッピーバースデーソングが流れるという仕掛け になっている。指一本では、単音のオルゴール音のみ。指が二本、三本と同時に触れると和音が増えて、演 奏が豪著になっていく。今回は、最大10パートの音を用意し、10本の指で全音が演奏される。 直径50cmの特大アクリル板に映し出される映像は、ケーキをデコレーションしているフルーツのイラス トが、指で触れた位置を起点にランダムな方向へ飛ぶ出すアニメーションになっている。 写真は実際の展示の様子。特大サイズの「バースデーケーキ」を「みんなで」囲み、「ハッピーバースデー ソング」を聞く。といったキーワードから、直接的なコミュニケーションが生まれる空間と時間を提供した。 3.3.作品における素材 くMulti-TouchCake> 円形アクリルパネル(アクリル屋どっとコム特注直径460mm/厚み10mm) デフューザー(薄紙) 赤外線LED(OSIR5113AVf=L25VIf=20mA)32コ 、、Ihj、。 トロロ
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電流制限抵抗(炭素皮膜抵抗100Q)4コ ACアダプター(出力電圧12V) フェルトケーキ(キーウィ、バナナ、スト ホイップクリーム)適量 ストロベリー、メロン、パイナップル、みかん、ラズベリー、ミント <camera> ウェブカメラ(ELEC○MUCAM-DLU130HSV) 赤外線パスフイルター(FUJIFILMIR88) -19-くPC> PC(Maclmni-2GHzlntelCore2Duo) スピーカー(ELEC○MMS-130WH)2セット プロジェクター(PLUSU4131) 鏡3枚 <Fumiture> 700mm×700mm×850mm(有限会社ワールドスクリーン特注) 34.造形における概要 今回の作品は、インタラクション作品のため、多くの人が手に触れるものとなる。鑑賞する者への第一 印象、触れている最中、さらにはそれを見ている者への印象も含めて、本作のデザイン造形においては、 (1)色彩、(2)形状、(3)素材、(4)質感といった要素をポイントにした。 3.4.1.色彩 色は特に人の心理や意識を左右させる。バースデーケーキを模することから、ミックスフルーツを意識し、 色とりどりなフルーツを採用した。赤や緑、黄色といった色彩には、賑やかさや幸福感を意識するものとな り、さらに美味しそう、楽しそうといった形容も加えられるものとなった。 3.4.2.形状 形状は、そのモチーフから円形であるが、円形であることで、様々な方向から同じ情報を取得できるよう にしている。それらを囲む人数を-人や二人と限定させず、触れていない者でも、触れている様子をどこか らでも眺められるようした。 3.4.3.素材 マルチタッチに必要な直径50cmのアクリルを、バースデーケーキに模するため、素材にフェルト生地を 採用。フェルトを採用した理由には、豊富な色のバリエーションに加え、素材自体の暖かみであった。さら に、多くの子どもが触れることを想定し、安心できる素材としての理由をあげる。実寸サイズのフルーツを 刺繍糸で縫い合わせて行くことで、さらにその暖かみを増している。実際第一印象も「ケーキだ」と歓声 があがるほどだった。 3.4.4.質感 フェルトという、布の質感にアクセントとして、ビーズを加えることで、フルーツの「しずる感」を与え ることが出来る。新鮮なフルーツや、シロップといった「味」をイメージできる重要な仕上げ作業となった。 3.5.メイキング(ケーキデコレーション) 仕上がり像から、モチーフを選び、型紙を用意する。それらひとつひとつを、本物に近い形、実サイズに 仕上げて行く。  ̄. ̄㈱噸辮…』鋼1KW ̄… ̄…熱.鴬騨i#
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1m 耐1m「Ⅲ|鰯lnH瞬川塒`、■鰐
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漸一一同…,…、 写真(左)は、土台の内部の様子。マルチタッチセンサーの機器やプロジェクターが収容されている。写 真(右)は、土台にアクリル板を配置し、センサーの動作確認を行っている様子。 3.8.メイキング(情報) 人のアクションによって取得できる情報として、Flashによるフルーツのイラストのアニメーションと、 一般的に誰もが歌え、知っている曲として「HappyBirthday」のインストウルメンタルのオルゴール音を 採用した。 曲には、旋律1、副旋律1,和声3,ベース1,ドラム1,シンバル1,鈴1,オルガン1といった形で -21-!:二jlIbHH㈱
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l ~。、 伴奏がアレンジされ、指1本目、2本目と増やす毎に旋律や楽器が増え、ゴージャス感を徐々に感じられる ようにしている。 写真は、実際に触れている様子。指先からフルーツの飛び出すFlashアニメーションが表示されている。 4実際の展示 本作品は2009年6月に沖縄県立博物館特別展示室に芸術工学会の企画にあわせて展示した。 41.-日目、設置における問題を解決カメラとプロジェクター、鏡を内部に構造させているため、土台の高さが70cm、ケーキのタッチパネル
面を含めると80cmもの高さとなり、身長130cm以下の主に小学生以下の子どもたちがタツチパネル面に触
れることが容易ではないことに気付き、急瀝、子ども用足踏み台を購入し、設置した。 Ⅲ…。團藤鳶鰊蝋
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酌MII砿 r」 』 写真は、実際の展示の様子。四方にカラフルな足踏み台を設置している。 -22-4.2.最初の行動 遠目にケーキが飾られていることは分かるが、近づいてみるとケーキの中央には、大きなアクリル板が施 されている。それが、触れることで何が起こるのかは知らされていなくとも、ケーキの素材感と暖かみの安 心感からか、誰もが気軽に触れていた。触れる前に「触ってみる?」というお互いの挑戦の同意を確認し合 い、画面に触れるという「人対人」の.ミュケーションがすでに始まっていた。 4.3.途中の行動 指を離すと曲が途濤切れることから、指を離さずにいることで連続したインタラクションを行えることが学 習される。一人でも複数人でもしばらく触れているという様子が伺えた。触れた指の数だけ、旋律が変わ ることにその場にいる者と共有できていた。その場で、自然とコミュニケーションが起こっていることで、 さらに触れている様子を見ている者が、作品に寄り触れるという行動も見受けられた。 44.インタラクションの効果‘ 本作品は、活動的で連続したアクションによって、インタラクションが行われるものではない。指が画面 に触れ続けることで、情報(音)が鳴り続けるという単純なインタラクションが繰り広げられるだけだ。指 を1本、1本触れさせてみたり、複数の指で曲を楽しんだりと、単純な曲であるにも関わらず、何度も繰り 返し流れて来る曲を聞き、指から現れるフルーツのアニメーションを楽しんでいる様子が伺えた。
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J 」 冊 山 --- 5.まとめと展望 今回は、操作や情報そのものを単純明快にすることで「人対、人」、「人対・装置」の行動を容易に促せ、直接 的なコミュニケーションの場を容易に観察することができた。本来、情報技術において、複雑な操作や交換 を行わなくとも、直接的なコミュニケーションを行うことは可能である。 また、今回のように我々はコンピュータを意識させない装置操作を可能にすることで、よりコンピュータ に支配されることなく情報を取得することができる。これまでwebサイトや携帯電話のサイトなどといっ たコンピュータデバイスを所有し、活用できるスキルを持たずとも、同じように同じタイミングで情報を取 得できる頻度は高くなり、普及の動きも高くなるだろう。そのことから、「情報弱者になってはいけない」 という強迫観念からも解放されることになる。 -23-それは、世代間や使用頻度におけるコンピュータリテラシーのギャップを埋めることだけではなく、これ までコンピュータに支配されてきた人々の生活リズムの変化も起こりうる。 本作品を通して、情報そのものはコンピュータから得られることに変わりはないが、それがきっかけに生 まれる直接的なコミュニケーションを意識することは、決して時代にそぐわないアイテムにはならないと改 めて感じた。 今後も、時代や価値観の変化が起こるとしても「人対薑装置」の技術的な進歩があっても、「人対壜人」のコ ミュニケーションの違いはそう差は大きくならないと考えられる。 6.謝辞 今回の作品制作において、當眞久仁子氏、山城隆盛氏、小山和軌氏、平良海氏、與世山廷氏、沖田民行氏、 伊波誠氏には、大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。 7.参考文献等 今回の作品制作において、参考にした文献等は以下のとおり。 (1)インターネット犯罪(出版:文春新書) (2)RUK○のフェルトのスイーツーはじめてでも、うっとりするほどリアルに作れる(出版:主婦の友社) (3)Han,IY、2005.LowCostMulti-TouchSensingthroughFrustratedTotallnternalReflection lnProceedingsofthel8thAnnualACMSymposiumonUserInterfaceSoftwareandTechnology http://csnyuedu/~jhan/ftirsense/ (4)NUIGroup2008CommumtyCoreVision(CCV):OpenSource/Cross-platformSolutionfor ComputerVisionandMachineSensmg http://ccvnulgroupcom/ (5)MatthewHagerty2O06FTIRMulti-TouchSurface http://www・digitalstratumcom/programmmg/ftir=build (6)ThomasMBrand2007FTIRMultitouchandDisplayDevice-AGuidetobundyourown-ExperimentswithProcessmg,○SC http://lowresch/ftir/ -24-