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宮崎口蹄疫発生における現代的課題: 沖縄地域学リポジトリ

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(1)

Author(s)

上本, 政夫; 下村, 英視; 土居, 俊平

Citation

宮崎産業経営大学法学論集 = Miyazaki Sangyo-Keiei

University law review, 20(1): 151-186

Issue Date

2010

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/10103

(2)

宮崎口蹄疫発生における現代的課題 (上本 下 村 土居)

【研究資料】

宮崎口蹄疫発生における現代的課題

目 次 ー はじめに 1 口蹄疫とは 2 本稿の意義 ・構成 二 日本におけるIJ蹄疫発侠の概要及ひ、法的対策 1 明治 2 2000年IJ蹄疫発生の状況と経過及びその対策 3 2010年 μ蹄疫発生の状況と経過及びその対策 4 小括

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蹄疫発牛:における生命倫理の課題 「口蹄疫j問題を生命倫理の視点から考える 四 口蹄疫発生における法的課題 1 .j:旦保権に関する概括的な法的課題 2 土地法の視点からみた課題 五 結語 -lfil一

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はじめに

口蹄疫とは 口蹄疫とは、ウイルスによっておこる偶蹄類の急性伝染病で、法 定伝染病である。この病原体は 1897年に発見された歴史の古いウイ ルスである(1)。感受性動物としては、牛、水牛、めん羊、山羊、豚、 しか、いのしし等の偶蹄類があげられるが川、マウス、ハムスター、 ラット、ウサギなどいずれも幼若なものであれば感受性があるとさ れる{ヘ 病状は、突然体温が400 C前後にあがり、元気・食欲を失い、 多量のよだれをだし、口蹄、鼻鏡、乳頭等に水癌が形成され、歩行 をいやがる症状がみられる(ヘ診断については、伝播が速いので、 発生状況、症状、剖検所見をもとに診断し、防疫処置をとるとされる(ヘ 口蹄疫の清浄国であった国に口蹄疫が発生すれば、「口蹄疫清浄 国リストjから除外され、清浄国に復帰する際の要件を充たした後、 OIE(国際獣疫事務局)による認定を受け、輸出再開の協議を各国 と行ニうことになる同}。 予防法としては、多くの諸外国と同様に、原則として感染動物の 摘発ととう汰による清浄化を実施する。また、緊急接種用の不活化 ワクチンの備蓄、水際での厳重な検疫を実施する。なお、本病の常 在国等では不活化ワクチンが使用されているが、ワクチン接種動物 は、感染を完全に防御できず、感染動物はワクチン接種動物との識 別が難しいことから、本病を見逃し、感染源となる可能性がある、 と指摘されている 。(7) 2 本稿の意義・構成 2010年、宮崎における大規模な口蹄疫の発生を契機として、今ま であまり顧みられなかった家畜の伝染病に関する法的課題や生命倫

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宮崎口蹄疫発生における現代的課題 (上本 下村 上居) 理に関する問題に日を向けることに本稿の意義がある。H本各地で 発生が予想される鳥インフルエンザも近似の課題である。日本で口 蹄疫が確認されるとすべて感染動物は殺処分になるので畜産業の即 廃業を意味するとし、う指摘があるがは)、今回の口蹄疫発生により時 限立法として口蹄疫対策特別措置法が制定され、即廃業に向かうこ とに少しは歯止めがかけられたと思われるが、その指摘は、的をえ ていると思われる。本稿は、今後も口蹄疫の発生が予期されるもの なので、日本における口蹄疫発生の概要及び法的対策を整理し、当 面の問題となるであろう法的課題や生命倫理の問題について若干の 指摘をしておくものである。 日本における口蹄疫発生の概要及び法的対策を整曙し、口蹄疫発 生に伴う家畜の生命倫理に関する課題を顕在化させ、今後の解決策 探求の礎に繋がるものとしたい。 なお、本稿の内容の多くは、畜産局衛生課プレスリリース等を参 考に記載しているので、詳細については併せて確認をお願し、したい。

日本における口締疫発生の概要及び法的対策

1 明治 (1) 発生の状況と経過 日本においては1800年代に口蹄疫らしいものの発生が記載されて し、るが1900~02 年に関東を中心として発生した3 , 500余頭に及ぶ流 行が記録されている(川。 しかし、現在では、最終発生年は、明治41 年 (1908年)とされている{川。 ( 2) 家畜衛生、広ー規(11) 日本における家畜伝染病の予防に関する法的制度の歴史は古い。 明治の初め、 中国東北地区及びシベリア地方に発生した牛疫が猛威 qJ F h d ' S A

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をふるっており、日本に侵入する虞があるとして悪性伝染予防に関 する太政官布告が明治4年6月7日に出され、明治29年に獣疫予防法 が、大正 11年には家畜伝染予防法が発布されている。この法律では、 それまでの獣疫予防法を家畜伝染予防法に改称するとともに法の適 用を受ける家畜の範囲を広げ、 16種を家畜伝染予防法として取り扱 うこととされた。昭和2年の改正では、家畜伝染病の発生にともな う各種法的規制により自活の道が閉ざされた者に対してはその生活 費に充当するための手当金を交付する規定の新設等の大幅な改正が 行われている。その後昭和23年の改正では、他の法律により対処し てきた結核病及び篤伝染a性貧血も同法の中に組み入れられた。昭和 26年に至り将来の畜産の進路を見越して家畜伝染予防法の全面改正 が行われた。 (i) 家畜伝染病予防法(昭和26年5月31日法律第166号)川 家畜の伝染性疾病(寄生虫病を含む)の発生を予防し、及びまん 延を防止することにより、畜産の振興を凶る目的で制定された。家 畜の伝染性疾病の発生の予防として、伝染性疾病についての届出義 務を課し、当該疾病にかかっていない旨の証明書である移動のため の証明書の携行、家畜所有者の請求により検査、注射等の証明書が 交付される。家畜伝染病のまん延の防止として、患者等の届出義務、 隔離の義務、通行遮断、と殺の義務、殺処分、死体の焼却等の義務 が諜せられ、農林水深大臣又は都道府県知事はまん延防止のため家 音の移動の制限をすることができる、とされている。 主な内容は以下のとおりである。 ① 口蹄疫等に感染したおそれのある家畜の検査のための隔離期 聞を最大10日(法第14条第3項)とした。 ② 口蹄疫等に対する初動防疫体制の強化として通行遮断期間48 時間以内(法第15条)とし、所有者が患畜等のと殺(法第16条

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宮崎口蹄疫発生における現代的課題 (と木 下村 士居) 第l項)及び患畜等の死体の焼理却(法第21条第 1項)を実施 すること。 ③ 口蹄疫等の病原体に汚染したわら等の所在した倉庫を介した 伝播の防止。 ④ 海外からの口蹄疫等の侵入防止策の強化として動物検疫対象 を畜産物等とした(法37条第 l項)。 ⑤ 口蹄疫等の原因究明のための調査・手法の強化として報告徴 収対象者を家畜の取扱者等とした(法第52条)。 その後、家畜伝染病予防法は幾度も改正が行われたのである。

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年口蹄疫発生の状況と経過及びその対策(13) (1) 発生の状況と経過 (i) 宮崎の場合 〔第 1例〕平成 12年3月25日、宮崎市の肥育牛農場 1戸で口蹄 疫の発生が確認された(当該黒毛和種1頭が3月8日頃から不調と なり民間獣医師が3月 12日から診察をはじめた )0 26日に飼養牛全 頑(l O~頁)が疑似患畜と決定され、翌26 日全頭が殺処分された。 4月4日のP C R検資で全頭を患畜として取り扱うこととした。 〔第2例]同年4月3日、宮崎県高岡町(現宮崎市高岡町)の肉 用牛繁殖農場で全頭 (9頭)が疑似患畜と決定され、翌4日に殺処 分された。その後のP C R検査では陰性を示した。 〔第3例〕同年4月9日、宮崎県高岡町(現宮崎市高岡町)の別 の肉用牛繁殖農場で全頭(16頭)が疑似患畜と決定され、翌 10日 に殺処分された。そのうちの抗体検査をした 10頭については患畜 として取り扱うこととした。 ( ij) 北海道の場合 〔第4例〕同年5月11日、北海道;本別町の肥育牛農場で全頭 (705 一155一

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頭)疑似患畜と決定され、同月15日までに全頭殺処分された。そ のうち P C R検査で陽性となった2頭については患畜として取り 扱うこととした。 (山) 口蹄疫の疫学調査の結果及び口蹄疫清浄回復帰(J4) 口蹄疫の発生原因を究明するための疫学調査により初発農場で 使用されていた中国産麦わらが他の要因に比べ侵入源として最も 可能性が高いことが判明した。2000年の口蹄疫に関する状況及び 結果についての報告書を「口蹄疫その他疾病委員会J(国際獣疫 事務局:

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日「口蹄疫その他疾病委員会会議j (国際獣疫事務局:

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により日本の口蹄疫清浄国への復帰が承 認されたことが発表された。 ( 2) 口蹄疫拡大防止対策{凶 口蹄疫をはじめとする海外悪性伝染病については、海外悪性伝染 病防疫要領 (50畜 A第3843号農林水産省畜産局長通知)に沿って、 殺処分方式により、その撲滅を図ることになっている。発よ主現場の 飼養牛の殺処分、移動制限等に併行し、移動制限地域内農家、家畜 の導入元等疫学的な関連農家等に対する徹底的な清浄性の確認とと もに、全国的な異常家畜の摘発と診断、

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青疫学調査による感染家 畜の摘発を行ったとされた。 (i) 宮崎県における対応 〔第1例〕の発生が確認された3月25日以降、発生農場を中心 とした半径20キ ロ メ ー ト ル の 範 囲 を 移 動 制 限 地 域 (121fi町村)、 半径50キロメートルの範囲を搬出制限地域 (3県32市町村)とし て設定された。 移動制限地域内では、偶蹄類の家畜、汚染を広げるおそれのあ る物品の一切の移動を禁止するとともに、家畜市場、と殺場の閉

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宮崎口蹄疫発生における現代的課題 (上本 下村 土居) 鎖、種付けの禁止が実施された。搬出制限地域内では、偶蹄類の 家畜、汚染を広げるおそれのある物品の地域外への搬出が禁止さ れるとともに家畜市場が閉鎖された。 その後、今回発生した口蹄疫の空気伝播の可能性は極めて低く、 またその感染力も従来知られているのに比べて低いと判断された ことから、 4月23日には、搬出制限地域を解除し、移動制限区域 については徐々に縮小し、 5月2日には全面解除がなされた。 (ii) 北海道における対応 〔第4例〕の発生が確認された5月 11日から発生農場を中心と した半径10キロメートルの範囲が移動制限地域に設定され、偶蹄 類の家畜、病原体を広げるおそれのある物品の移動禁止、放牧の 停止、種付けの禁止等が実施された。同地域内に家畜市場、と殺 場はなかったので、搬出制限地域は設定されなかった。その後、 移動制限地域内全戸の清浄性確認が終わり6月9日に移動制限が解 除され、 今回の一連の口蹄疫まん延防止措置が終了したとされた。

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口蹄疫被害対策(16) (i) 防疫関連対策 発生農家における殺処分疑似患畜、汚染物品については家畜伝 染予防訟に基づき、評価額の5分の 4、疑似患畜、汚染物品の埋 却費についてはその経費の

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分の1が補償された。 (ii) 経営対策等 イ)当面の資金対策 移動制限等により家畜の出荷が困難な畜産農家へ経営に必要な 運転資金の低利融資が行われ、当該農家の負担については、国の 利子補給1.01%以内、道県等の補給等により末端金利は無利子と された。 -157

(9)

自作農維持資金の融通として末端金利2.1%が適用される。 宮崎県、鹿児島県、熊本県内の食肉処理業者等の経営に必要な 運転資金を低利(国の利子補給1.01 %以内、末端金利2.1%以内) で融資した。 ロ)収容しきれない家畜対策 搬出制限地域内の養豚農家が家菌防疫員の確認に基づき、子豚 を淘汰及び焼却、埋却等を行う場合には、 1頭あたり 7千 5百円 の助成がなされる。 宮崎県の搬出制限地域内における緊急的な簡易畜舎の設置等に 対する助成及び北海道十勝支庁内における農協が、新たにヌレ子 晴育に取り組む者等に貸し付けるために簡易なヌレ子飼養施設を 導入した場合の経費の助成がなされる。 ハ)出荷遅延等対策(17) 宮崎県、鹿児島県、熊本県の搬出制限地域内の養豚農家が出荷 適齢期を超える肉豚を出荷した場合の助成が 6千円/頭。繁殖雌 牛の自家保留等による増頭、経産牛肥育、ヌレ子保育等の奨励金 を交付した。北海道十勝支庁内の初妊牛育成専門農家で集荷でき なかった初妊牛が経産牛として出荷せざるを得なくなった場合の 助成 (2万 9千円/頭)、肉用子牛補給金の交付要件の緩和、肉用 牛肥育経営安定緊急対策事業の助成要件を緩和した。 ニ)家畜市場再開後の畜産経営安定等の対策 集客対策等として、家畜市場開設者に対し、市場のPR等を行う 場合の助成、家畜市場から牛を購入する場合の購買者に対する輸 送費の助成がなされた。価格安定対策として、農協等が一定価額 で地域内肥育等のために黒毛和種の肉用子牛を導入した場合の助 成、九州、

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県の肉用子牛及び十勝支庁内の初妊牛の市場価絡が過 去の実現価格相当額を下回った場合にその差額の9害1)を助成、市

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宮崎口蹄疫発生における現代的課題 (上本 下村 土居) 場価格低迷時に農家が肉用子牛を自家保留した場合に助成する、 とした。

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法的対策 (i) 家畜伝染病予防法の一部を改正する法律の施行(附 ① 今回の口蹄疫のように臨床症状による診断が困難で抗体上昇 の有無により確認せざるを得ないような事態に対応するため、 検査のための隔離期間を21日まで延長する(第 14条第3項)。 ② 畜産の飼料規模の大型化により病原体の散逸防止のためのと 殺、焼埋却等の初動防疫の措置だけでも48時間以内に完了させ ることが困難な事態が発生する可能性が想定されることから通 行の遮断の期間の上限が72時間に延長され、通行規制について 法律上明示的に規定された(第 15条、政令2条、施行規則第26 条関係)。 ③ 畜産の飼料規模の大型化等により、大規模なと殺、焼埋却を 家畜の所有者が限られた時間内に適切に実施することが困難と なる事態も想定されることから、家畜所有者の実施を原則とし つつも、緊急の必要がある場合には、第23条第3項に基づく家 畜防疫員による汚染物品の消毒または焼埋却および第25条第3 項に基づく家畜防疫員による施設の消毒と同様に、第 16条第 l 項に基づくと殺および第21条第 l項に基づく患畜等の死体の焼 埋却についても家畜防疫員がこれを行うことができることとさ れた(第 16条第3項、第21条第4項)。 ④ 施設の消毒については、飼料等汚染物品の所在した施設を介 した家畜伝染病の蔓延を防止するため、 25条において患畜もし くは疑似患畜またはこれらの死体のみならず、都道府県知事は、 必要があるときは、家畜伝染病の病原体により汚染し、または -

(11)

159-汚染したおそれがある物品の所在した倉庫、船舶、車両その他 これに準ずる施設の所有者に対して期限を定めて当該施設を消 毒すべき旨を命じることができるとされた(第26条、第46条、 第46条の2、政令第5条)。 ⑤ 輸入検疫強化のため、わら及び飼料用の乾草については、 新 たに指定検疫物または輸入禁止品の対象にできることとされた (第37条、施行規則43条、第45条)。 3

2010

年口蹄疫発生の状況と経過及びその対策 (1) 発生の状況と経過 宮崎口蹄疫発生の状況・経過について、農林水産省が公表した資 料に基づき整理してみた。 平成

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年) 4月

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日、宮崎県児湯郡都農町に存在する農場 (飼養形態:肉用牛・繁殖)において口蹄疫の発生が確認され、家 畜の移動制限及び感染家畜の殺処分がなされた。 4月28日、宮崎県 児湯郡川南町に存在する県畜産試験場において、感染力が強し、とさ れる口蹄疫の豚への感染が確認され、一気に感染が広がった。 5月 上旬には、川南町を中心に国道

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号沿い等道路沿いに感染が広がり、 大規模養豚場での発生が確認されるに至った。この時期から、患畜 の殺処分 ・埋却が遅れ、処分待ちの頭数が急増した(そのことが新 たな感染を惹起したと推認されるところでもある)。その後も感染 に歯止めがかからなかったため、 5月22日にはわが国でははじめて となる口蹄疫に感染していない家畜を含む一定地域

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南町を中心 とする感染多発地域)に存在する全頭を対象とする緊急ワクチン接 種が実施された(ワクチン接種がなされた家畜は殺処分された)。 その結果、 7月4日以降は新規の発生は認められることはなかった。 7月27日に全地域における家畜の移動制限が解除された。8月27日

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宮崎口蹄疫発生における現代的課題 (上本 下村 土居) には、東田原宮崎県知事(当時)により口蹄疫終結宣言がなされた。 結果的に、全292例、 211608頭(牛209戸27454頭・豚86戸 174132頭・ 山羊9戸14頭・ 羊l戸8頭)の家畜が口蹄疫の犠牲となり殺処分され るに至った。 ( 2) 口蹄疫拡大防止対策 (i) 防疫関連対策 指定地域内に存する死体の所有者が、死体の焼却又は埋却を求 めた場合には、家畜防疫員は当該死体を焼却又は埋却するものと するほか、国は、埋却の用に供する土地の確保、必要な作業に従 事する者の派遣その他の必要な措置を講ずる。 都道府県知事は、口蹄疫のまん延を防止するためやむを得ない 必要があるときは、指定地域内において都道府県知事が指定する 家 畜 (患畜及び疑似患畜を除く。)を所有する者に、期限を定め て当該家畜を殺すべきことを勧告することができ、所有者が当該 勧告に従わないとき等において緊急の必要があるときは、家畜防 疫員に当該家畜を殺させることができる。 イ) 患 畜等 以外 の家 畜 の 殺 処 分に 係 る 補 て ん ・ 補 償 等 ( 法 第6条関係) ① 殺された家畜の評価額、勧告の日から殺された日までに要し た飼料代その他の省令で定める額を交付する。 ② 家畜の所有者が速やかに損失の補てん・補償等の交付を受け られるよう、都道府県知事は殺処分の実施を確認することによ りその決定した額を交付する。 ロ) 国による負担の額(法第四条関係) 口蹄疫に対処するために要する費用についての国の負担は、次 に掲げる額の合計額と規定する。 -161一

(13)

① 消毒実施に要する以下の費用 -家畜防疫員の旅費の全額(②の場合を含む。) .薬品の購入費の全額 .衛生資材の購入費又は賃借料の2分のl ② 焼却・埋却実施に要する費用(①を除く。)の2分のl ③ 患畜等以外の殺された家畜(予防的殺処分)に係る焼却・埋 訂正却実施に要する費用(①を除く。)、損失の補てん・補償実 施に要する費用(④及び⑤を除く 0)は、当該都道府県の標準 税収入に対する対策費総額の占める割合等に応じた額 ④ 損失の補てん・補償実施に要する費用(⑤を除く。)のうち 評価人の手当及び旅費の全額 ⑤ 農林水産大臣が自ら患畜等以外の家畜を殺した場合における 損失の補償実施に要する費用の全額 ハ) 農業者年金の保険料の免除等の特例(法第21条関係) 口蹄疫により被害を受けた農業者年金の被保険者について、 ① 保険料を納付することを要しない(免除する)ものとする。 ② それによって納付しなかった保険料を追納できるものとする 等の特例を規定する。 (ii) 経営対策等 国は、生産者、関連事業者等の経営の安定及びその生活の安定 を図るため、必要な資金の無利子の貸付け、施設の整備等に要す る費用の助成その他の必要な措置を講ずる。 家畜防疫員の確保、偶蹄類に属する野生動物の監視、ねずみ等 の駆除、口蹄疫に対処するための費用の国による負担、家畜等の 移動等の禁止等により生じた損失の補てん、農業者年金の保険料 の免除等の特例、地域再生のための支援及び税制jJ-.の措置等が設 けられた。

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宮崎口蹄疫発生における現代的課題 (上本 下村 十.居) (3 ) 口蹄疫被害対策 一一追加対策{川 (i) 発生農家への対応 イ)殺処分家畜等に対する手当令 患畜:家畜の評価額の 1/3、疑似患畜:同4/5 ① 疑似患畜に対する手当金の概算払いによる迅速な交付 ② 疑似患畜の評価額と手当金の差額(1/5)について、宮崎県 が負担した場合、 総務省において全額を特別交付 税で措置 ロ)家畜防疫互助基金の実施 防疫措置終了後の経営再開等を支援するため経営支援互助金を 交付(互助金非加入分は加入分の1/

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相当額を交付) ハ)死体、汚染物品の焼埋却に要した費用に対する交付金 (1

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(ii) ワクチン接種農家への対応 ワクチン接種を行った家畜について、早期殺処分のための殺処分 奨励金(時価評価額)と経営再開支援金(肉専用種肥育牛:59

000 円等)等を交付する。 (川)搬出制限15<:域内からの早期出街対策 ① 早期出荷を行い、 一定期間内の家畜の導入を自粛する場合、 早期

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街による価値の低ト.分(肉専用種肥育 12ヶ月以上28ヶ月 未満:SOO, 500円等)及び出街促進支援金 (肉専用平副巴育:19; 500 円等)を交付 (ワクチンを接種した移動制限区域周辺の搬出制 限区域)する。 ② l直ちに販売で、きない食肉の冷凍保管等に要する経費を助成 ( iv) 当面及び経営再開に向けた資金対策等 イ)家畜疾病経営維持資令の融資枠等の拡大 ① 家畜疾病経営維持資金の貸付対象を搬出制限区域内の農家ま で拡大し、さらに家畜市場の開催中止の影響を受けた九州・沖 縄の子牛・子豚出荷農家を追加する。 -163

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-② 融資枠を 100億円から 300億円に拡大 ③ 貸付限度額の引き上げ(経営再開資金:2,000万円(法人8,000 万円) →特認設定、経営継続資金:1.3倍) ロ)農林漁業セーフテイネット資金の貸付限度額の引き上げ 口蹄疫の発生により経営が悪化した農業者に貸し付けられる農 林漁業セーフテイネット資金について、貸付限度額を引き上げ (年間経営費3か月分又は300万円→年間経営費6か月又は600万円) ハ)殺処分又は早期出荷した農家が優良種畜をリース方式で導入 する場合の支援(金利相当額の1/2補助) ニ)口蹄疫により経営が悪化した農業者に対する農業近代化資金 の融資条件につき、県の判断で償還期限を 15年以上に延長した 場合にも、当該融資の保証については引き続き低い保険料率を 適用する特例を措置 ホ)資金の円滑な融通や支払猶予等に関する要請 金融機関に対する資金の円滑な融通・既往貸付金の償還猶予、 配合飼料メーカーやリース会社等に対する飼料代やリース料の支 払猶予について要請 (v) 出荷遅延対策 イ)子牛の出荷遅延対策 宮崎、鹿児島、熊本県内の子牛の出荷遅延に係る助成(1当該 農家の平均出荷日齢 +30日Jから直近(1回目)市場再開日また は2回目の市場開催日までの問、子牛:1頭・ 1日当たり400円) ロ)繁殖部門で生産された子畜の繁殖利用又は肥育用の簡易畜舎 のリース 畜産高度化支援リース(1

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補助付きリース)の対象として、 繁殖部門で生産された子畜の繁殖利用又は肥育用の簡易畜舎(宮

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宮崎口蹄疫発生における現代的課題 (上本 下村 土居) 崎、熊本、鹿児島)を追加 ハ)肥育牛の出荷遅延対策 ① 移動制限区域内及び搬出制限区域内(搬出制限を含め40日を 超えて制限が課された地域)の肥育牛の出荷遅延に係る助成

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当該農家の平均出荷日齢 +40日」を超えて飼養している肥育 牛 :1頭・ 1日当たり 600円) ② 移動制限区域等(搬出制限を含め40日を超えて制限が課され た地域)で出荷適期を超えた肥育牛への助成

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当該農家の平 均出荷日齢 +40日Jを超えて出荷され、枝肉重量540kg以上の 肥育牛:21,000円/頭) ニ)移動・搬出制限区域内における肉豚の出荷遅延対策 移動・搬出制限区域内で出荷適期を超えた肉豚への助成を措置 (枝肉 80~85kg : 4, 000円/頭、枝肉85kg以上:11,000円/頭) {vi} 家畜を出荷できない畜産経営対策等制 イ)経営安定対策等の要件緩和・特例措置 ① 九州卜沖縄における肉用子牛生産者補給金の飼養開始月齢の 要件を緩和 (2か月齢未満→5か月齢未満) ② 九州│・沖縄における肉用牛肥育経営安定特別対策(新マルキ ン)の登録月齢の要件を緩和(14か月齢未満→ 17か月齢未満) ③ 移動・搬出制限区域内における新マノレキンの生産者拠出金の 免除期聞を延長 (4 月 ~6月→7月 ~9 月) ④ 移動・搬出制限区域内における養豚経営安定対策の生産者拠 出金の免除期間を延長 (4 月 ~6 月→ 7月 ~9 月) ⑤ 宮崎、鹿児島、熊本県内における肉用牛繁殖経営支援事業の 子牛の平均売買価格の算定に口蹄疫の影響を反映 ⑥ 宮 崎 県 に お ける新マルキンの粗収益の算定に口蹄疫の影響を反映 ⑦ 宮崎県における養豚経営安定対策の枝肉価格の算定に口時疫 - 165

(17)

-の影響を反映 ロ)滞留する家畜等への対応策の措置 ① 畜産高度化支援リース(1

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補助付リース)の対象として、 ヌレ子用のカーフハッチ(九十│、ト沖縄)や、簡易畜舎(移動・ 搬出制限区域)を追加 ② 繁殖肥育一貫生産方式導入支援 (27,000円/頭)の対象とし て、九州・沖縄の農協が新たに離農農家の牛舎等を活用して肥 育する地域内一貫生産を追加 ③ 移動・搬出制限区域内で滞留する子豚の淘汰及び焼却・埋却 への助成を措置(子豚 1頭当たり 9,500円、人工流産母豚l頭当 たり 21,000円) ④ 九州・沖縄の家畜市場から家畜商組合が肉用牛預託事業のた めに導入する子牛月齢の要件を緩和(12か月齢未満→ 15か月齢 未満) ⑤ 優 良 繁 殖 雌 牛 更 新 促 進事業 (21年度補正予算)における九州、卜 沖縄の家畜市場から導入する子牛の月齢の要件を緩和(1

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か月 齢未満→ 15か月齢未満) ⑥ 宮崎、熊本、鹿児島、大分県内の家畜市場の再開に対し、防 疫強化への助成、並びに4県外からの購買者への輸送費補助へ の助成(1/2補助 :九州内1,000円/頭以内、九州外2,500円/頭 以内)を措置 ⑦ 輸出困難となり全国のと畜場に滞留する原皮の処理への助成 を措置(豚原皮の国内利用促進100円/枚等) い】) 家畜共済事業における対応 九州各県及び沖縄県に対し、以下の対応を指導 イ)家畜共済掛金の納入を猶予する特例措置を講ずるよう県を通 じて共済組合等を指導

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宮崎口蹄疫発生における現代的課題 (上本 下村 土居) ロ ) 共 済 掛 金 を 分 納 し て い る 者 に 対 す る共済 金 支 払 の 免 責 の 適用除外ハ)ワクチン接種農家に対し、ワクチン接種時以降の共 済掛金残期間に相当する掛金(加入者負担部分)の返還(該当 農業共済組合の共済規程の改定) (叫その他 イ)戸別所得補償モデル対策の申請等の期限の弾力的運用 宮崎県及び隣接県(熊本県、鹿児島県及び大分県)において、 口蹄疫の状況を踏まえて、モデ、ル対策の申請等の期限を弾力的に 運用 ロ)飼料作物等の新たな需要先の確保支援等 飼料作物等 (WC

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用稲、飼料用米、 飼料作物)の需要先確保 に向けてマッチングの取組を推進するとともに、新たな需要先が 縫保できない農家に対し、特例として 3.5万円/lOaを助成 (は) 資金貸付措置 ① 日本政策金融公庫、商工中金、信用保証協会及び商工会議 所 等55か所に設置された「口蹄疫に関する中小企業支援対策相談

WJにおける融資相談 ② 臼本政策金融公庫によるセーフテイネット貸付の利用手続き の簡素化 ③ 金融機関からの借入れを行う際に信用保証協会の一般保証と 別枠で保証が受けられる景気対応緊急保証(セーフテイネット 保証)の活用 ④ 商 L組合中央金庫 (中小企業が対象)、 日 本 政 策 投資銀行 (中堅・大企業が対象)による危機対応貸付 ⑤ 中小企業基盤整備機構による小規模企業共済加入事業者の緊 急経営安定貸付の利用条件緩和(売上高減少の確認期間3か月 又は6か月→lか月) -167

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-(4) 法的対策 (i) 口蹄疫対策特別措置法(時限立法) 平成22年4月以降に発生が確認された口蹄疫に起因する事態に 対処するため、口蹄疫のまん延を防止するとともに、口蹄疫に対 処するために要する費用の国の負担、生産者の経営や生活の再建 支援等の特別措置を講じることが立法趣旨とされた。公布および 施行は、平成22年6月4日とされ、平成24年3月31日までの時限立 法である。 (ii) 口蹄疫対策特別措置法施行令 口蹄疫対策特別措置法(平成22年法律第44号。以下「法」とい う。)の制定に伴い、法の規定において政令で定めることとされ ている、補てん又は補償の対象となる損失の範囲、補てん金等の 交付の方法、口蹄疫に対処するために要する費用の国による負担 の割合、農業者年金の保険料の免除等の特例等について規定する。 公布・施行平成22年6月4日(平成22年6月18日一部改正、改正後 の規定は平成22年6月4日から適用) (iii) 口蹄疫対策特別措置法施行規則 口蹄疫対策特別措置法(平成22年法律第44号。以下「法」とい う。)及び口蹄疫対策特別措置法施行令(平成22年政令第 146号。 以下「施行令J という。)の制定に伴い、法及び施行令の規定に おいて農林水産省令で定めることとされている車両等の消毒の基 準、損失の補てんに係る患畜等の移動等の禁止の基準等を定める。 公布および施行平成22年6月4日。 (iv) 口蹄疫税制特例(地方税)に関する法律・口蹄疫税制特例 (所得税)に関する法律(口蹄疫免税法) 口蹄疫対策特別措置法等に基づき発生農場等への手当金等が交 付されている。この関連二法は、口蹄疫対策特別措置法27条にお

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宮崎口蹄疫発生における現代的課題 (上本 下村 土居) いて必要な税制上の措置を講ずる旨との関連で制定されたもので ある。平成22年4月以降に発生が確認された口蹄疫対策として家 畜を殺処分した農家に対して国及び地方自治体が支給した手当金 等のうち、飼育経費を除いた所得分の所得税、法人税・地方税を 免除するものであり、平成22年 10月29日公布、即日施行された。

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IJ¥括 法的な支援対策としては上記に記されたとおり各方面からの立法 により宮崎県の口蹄疫対策が講じられたことは容易に理解すること ができょう。しかしながら、目先の対策に過ぎず、根本的な対策は 今後待たれるところである。 資金的援助としては宮崎県口蹄疫被害義援金が 10月末の締め切り で総額34億 8680万円に上ったとされ畜産農家などにその多くが配分 された、とされる(へしかしながら、義援金だけでは畜産農家の復 興は容易で、ないことは、今後復興の進捗を見守る中で明らかになっ てくると思われる。 今後の防疫対策としては2000年の口蹄疫発生と異なり、 2010年に 発

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した宮崎口蹄疫については、防疫対策に関してより詳細な検証 を進め、口蹄疫に対する戦略、戦術の再構築も園らなければならな い、との指摘がある山)。

口蹄疫発生における生命倫理の課題

「口蹄疫」問題を生命倫理の視点から考える(文責・下村英視) 1 殺処分の妥当性をめぐる問題 1 -a.個人の財産を処分することが許されるのは、その処分が -

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169-より大きな公共的利益をもっということからだが、今回 (2010年宮 崎県)の口蹄疫問題における家畜の殺処分は、本当にそうだったのか。 畜産農家の皆さんは「涙をのんで殺処分に応じたJなどと、人々 の心情に訴えるような報道がなされた。これは、報道を行う主体が、 畜産農家の人たちの心情をくむという方向性と、報道を受け取る者 (市民)の共感や同情をひきおこすという方向性とを、兼ね備えた もので、あった。そこで、個人的な感情(家畜を助けたし、)を抑えて までも、殺処分を受け入れた畜産農家の人たちの苦渋の判断が、美 しくも悲しいものとして強調されることになってしまった。 私は、それが間違いだと言うつもりはない。しかし、悲しい出来 事として同情や共感が主要なものとして受け取られてしまうと、問 題の本質がかすんでしまう恐れがある。はたして、殺処分は本当に 必要なことで、あったのか。この点に絞り込んで考えてみる。 まず、殺処分をしなかった場合を想定しよう。感染力が強し、から、 感染が広がる。宮崎県のみならず、九1'1'1全域に感染が広がったとし よう。そこでは、いったい何が困るのだろう。人には感染しないの 家畜だけの感染。致死率は高いとはいえ、すべて死ぬわけではないη それは、人間に感染する強毒性のインフルエンザでも同じだ。口蹄 疫ウィルスがつくる病巣に毒性が生じるとも聞いていない。そうで あれば、感染した家畜を人聞が食べても、支障はない。熱や酸を加 えれば、口蹄疫ウィルスは死滅する。現に、私たちは、日本脳炎ウィ ルスに感染した豚を食べている(判。それなら、仁l蹄疫にかかった家 畜だ、って、食べてもよいはずだ。 もちろん、一度に大量の家畜を処理することはできないη 処理能 力を上回る感染・発症した家畜が出ると、冷凍保存にしろ、缶詰に しろ、確かに困る。しかし、これは、経営上、経済上の問題だのそ して、諸外国との貿易問題(政治、経済問題)がこれに絡んで、くる。

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宮崎口蹄疫発生における現代的課題 (上本 ド村 七居) 清浄化しないと、汚染固からの食肉輸入を断れないこと。(これま では、日本が清浄固であることを理由に汚染国からの輸入を断って きた。)また、清浄化しないと、国産の食肉を清浄国へ輸出できな いこと。(欧米への食肉の輸出額は年間

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億円にのぼる。日本の食 肉は、高級食材として評価を受けている。) つまり、徹底して清浄化のために殺処分を強行しなければならな かった理由は、口蹄疫で全家畜の命が危険に晒されたからではなく、 また、人間に有害だからでもなく、政治的 ・経済的な理由からであ ることになる。そうすると、あらためて、公共の利益が個人の利益 に優先するという論理に照らして、どれほどの妥当性があるのか、 あったのかが、問われなければならない。 1 -b. この(1-aの)問いを踏まえて、もう一度、聞いが立 て直される。 1-aが、公と個をめぐる社会の在り方の問題だとす れば、 1-bでは、もっぱら、人聞の営みを軸にして考えることが 求められる。種雄牛を育てる(つくる)畜産農家の営みには、「つ くる人間」とし寸人間の本質が現われている。種雄牛はその農家さ んにとって作品で、あった。その農家さんの人生をかけた作品。その 農家さんの人牛そのものである。そうすると、家畜を殺す殺処分と は、家畜を殺すことを通して、畜産農家の人たちの人午を奪っていっ たことになるのではないか。 ただし、ここで重要なのは、畜産農家の皆さんの心情(心の悲し み、心に受けた傷)を問題にしようとしているのではないというこ とだη 篠かに、農家の人たちは悲しみ、苦しんだ。殺すことは悲し い。自分がかわいがってきた家畜を殺すことは苦しい。それだけで あってはならない。その悲しみ、苦しみの原因がどこにあるのかを 考えることが重要である。 そこには、納得できない処分を受け入れなければならなかったと -171一

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いう悲しみと苦しみ、自分の意に反してまでも殺さなければならな いという悲しみと苦しみがあった。感染していない家畜までも殺処 分の対象とされたこと。感染の拡大を防ぐという理由で、家畜のい ないベルト地帯をつくり、原因ウイルスを封じ込める。他を守るた めに殺す。犠牲としての殺処分を受け入れてほしい、そうしてもら うしかないというのが、今回のポイントだ。たとえ、その理由を理 解することができたとしても、納得はできない。健康な家畜をすべ て殺処分する。これは納得できることではない。 では、感染してしまった家畜を殺すことになら、納得することは できたのだろうか。感染した以上、今度は、その家畜の体内でウィ ルスが増殖する。そして、ウイルスが大量に出てくる。感染源にな るということだ。その家畜を生かしておくことは、それが原因となっ て他の家畜にも感染が広がる可能性がある。それなら、周辺のおよ び全国の畜産農家に迷惑がかかる。さらには、関連産業に従事する 人たちゃ、食肉を求める一般消費者にも影響が及ぶことが考えられ る。それならば、殺処分も納得しなければならないのではないか。 もちろん、悲しいことは悲しい。しかし、そのように説明されると、 諦めて殺処分に応じなければならないのではないか。他者の利益の ためにはそうするしかない、として、畜産農家の皆さんは殺処分を 受け入れた。 しかしながら、 l-aで考えたように、殺処分の理由は、経済的 な問題であった。他者に迷惑が及ぶと考えられたわけだが、それは 経済的な理由からそのように考えられたのであって、決して、人の 命に直接かかわることで、はなかった。感染した家畜が有毒化して、 それが人間に害毒をもたらすから処分したというわけで、はなかった。 。と それなのに、ただ他人に迷惑がかかるからという理由でーーその 理由を暖昧にしたまま一一農家の人たちが殺処分に応じなければな

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宮崎口蹄疫発生における現代的課題 (上本 下村 土居) らないような空気がつくられた。そして、それをつくっていったの は、行政であり、ひとりひとりの市民で、あった。そこには、少しで も不都合なものがあればそれを無くしたいという力が働いている。 家畜の健康を守るという意味の安全性、それに1- aで見た経済的 理由に由来する農家の生活を守るとし、う意味の安全性、さらに消費 者としての一般市民の食生活が困窮しないで、すむという安全性、こ れらの安全性の確保に向かつて、人々の意識は傾いていった。 不都合なものはなくしたい、自分たちにとってより有利な仕方で 事柄を運びたいという考え方があり、そこには強し、仕方で合理主義 の精神が根を張っている。「ゼロリスク探求症候群j という概念が ある。人は、危険を避けたいものだ

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少しでも危険の可能性が予測 されると、その可能性を避けるために、病的なまでに危険の可能性 を消そうとして、これまで普通に目にしてきたものにまで疑いを寄 せ、少しでも疑うことができるものを排除しようとする。異物とし て嫌悪し、自分の住む世界から消し去ろうとする。 今回、宮崎県で起きた家畜の殺処分は、合法的な行為だ。しかし、 その背後には、自分たちの利益を優先し、それが守られるためには、 犠牲もやむをえないという、上記のような合理主義の精神が、ゆき わたっている。 農を生業として生きることの意味を問うことになるこの考察は、 文化人類学的な手法によって深められる必要があるだろう。それは、 畜産を営む人々の生活を見守ること、生活を教えてもらうというフィー ルド・ワークとして報告されねばならない。この調査研究がなされ たとき、もう一度、個人の作品(財産)を公共が奪うということが、 果たして、 1-aのような理由で許されるのかどうかが、問われる。 2 命をめぐる問題 - 173一

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l-bで、種雄牛は個人の作品とみなされると、私は述べた。そ れは、そもそもどういう意味で人の作品として認められるのか。干 の 問 い は 、 次 の よ う な 展 開 を 見 せ る 。 こ こ で 、 大 き く ベ ク ト ル (r力と方向性をもった思考」とでも考えていただけるとよし、)の方 向が変わることに注意しておいてほしい。 ほんせい 2 -a.日甫乳類の本性を全く無視して、異母兄弟を20万頭もつく る技術、このような生殖技術が高度に推し進められてきた理由は、 商品価値の高い食肉(人の口においしく感じられる肉質をもった牛) をつくることにある。これは、命を改良すること、命に手を加える ことに他ならない。優れた牛をつくることは、それを食する人にとっ て好ましい命をっくり出すことで、あった。これまで、このことには 批判の目が向けられることがなかったが、これから先もこれまで通 り無条件に肯定されてよいのか、改めて考えてみなければならない。 この点は、厳しい議論につながる。それは、高度な生殖技術が特 定の病気に弱い家畜をっくり出している、ということである。口蹄 疫が爆発的に広がることが懸念されたのも、もちろんウイルス自体 に強い感染力が備わっていることもあるが、受容する側(家畜)も 遺伝情報が極度に狭められていることが原因になっている。 1-a でインフルエンザのことを書いたが、これが流行しでも、私たちみ んなが感染するわけではない。感染しでも、同じように発症するわ けではない。種全体が特定の菌やウィルスにやられてしまわないよ うに、遺伝情報の多様性が、個体を守っている。そして、生き残れ る個体をもつことによって、種の存続をはかつている。これが有性 生殖の利点であると、説明されている凶。 一頭の種雄牛の遺伝情報を継承する子孫を20万頭もつくる技術は、 しぜんほんせい 生物が、有性生殖によって生き残りをはかる白然本性に反する行為 である。もし、家畜の遺伝情報が多様であるならば、これほどまで

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宮崎口蹄疫発生における現代的課題 (上本 下村 土居) に口蹄疫を恐れる必要もなかったのではないか。 ちなみに、牛は一度の妊娠で一頭しか子どもを産まない。それは、 一度の人工授精において(それが成功したとして)、一頭の子牛が 生まれることを意味する。 20万頭の子牛をつくるためには、最低で も20万回の人工授精が必要になる。これに使われる精細胞(精液) は、どのように供給されるのか。 精細胞を提供する雄の牛の中でも、優れた(人の味覚においてお いしいと感じられる)肉質をもち、かっ大量の精液を供給すること ができるものについて、「スーパ一種牛J という名称が与えられて いる12ヘしかし、精液の供給量がいくら多いといっても、高度に管 理された生殖技術に支えられなければ、 20万件もの妊娠と出産は不 可能である。そして、牛の妊娠期間は 10ヶ月。子や孫の代の雌牛に まで、冷凍保存された生殖細胞を使った受精が行われていることは、 想像に難くない。すると、遺伝情報は、ますます狭められてしまい、 その結果、件の家畜が特定の菌やウイルスにやられてしまう可能性 はもっと高まる。 2 - b. このことは食文化について考えることにつながる。私た ちは生きるために食べなければならない。他の生き物の命をいただ く(奪い、殺す)ことによってしか、私たちには生きる手段がない。 おごそ したがって、殺して食べるということは、厳かなことである(制。そ ういうことが、今日の生活の中で、忘れられてしまっているのでは ないか。それを忘れて、私たちは自分の欲望を充足することだけを 求めて生きるようになった。このことについて、改めて反省してみ なくてはならないのではないか。 このような考え方は、商品価値の高い肉質をもっ牛を大量に生産 するとし、う技術とそれに支えられた畜産業のあり方そのものを、間 いの中に置く。そして、商品価値の高い肉質をもっ牛を大量に生産 175

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-するという技術を高めることによって生き残りを図ろうとする方向 に、結果的に農家の方々を押しやってしまった私たちの責任を問う ことにつながる。それは、私たちの生き方を問いなおすことである。

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もうひとつの視点 復興とは、これまでの畜産を同じ路線のもとに修復することなのか。 今日の畜産農家を成り立たせているのは、生殖にかかわる技術、 肥育に関する技術、病気から家畜を守るための衛生管理、すなわち、 徹底した消毒と抗生剤投与という技術。宮崎の畜産を復興するとい うことは、私たちが農家の皆さんと共に考えようとしない限り、こ れまでどおりに修復することだ。これまで蓄積された畜産の技術を、 そのまま継承し発展させるということだ。はたして、それは正しい ことなのか。これまでどおり、種雄牛をっくり守ることは、本当に 正しいことであるのか。 農薬や抗生剤が多用されるようになったのは、戦後からだ。たか だか60数年の歴史しかない。生殖を管理し、微生物をコントロール する技術、それはすばらしいもののように思えるが、同時に、絶え ず緊張した中でやってし、く、生きていくことを意味する。無菌状態、 などという極めて異常な状態を恒常化して、それに支えられた食料 生産をすることが、はたして、人類の長期的な存続と幸福につなが るだろうか。動物たちを不自然な緊張状態におき、人間もまた失敗 (病原菌、病原ウィルスが活動すること)の許されない緊張状態の 中で生きることが幸せだとは、私には思えない。 このようにして、本章(下村担当)の 1と2で、異なった方向に向 けられていた問いのベクトルは、一致を見る。 それらの問いに込められた力は、共に合理主義の精神を間い直す ことを根底にもつ。 清浄確保のためにすべてを殺処分する、消去し

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宮崎口蹄疫発生における現代的課題 (上本 下村 土居) て無にすることと、精神の力で優れた作品をつくろうとすることと は、同じ精神構造から生み出された努力(合理的にとらえられた観 念の世界を現実化するための努力)に他ならないのである。「つく る」ことと「消去するJ こととは、同じカテゴリーの中にある。作 品をつくる、それがうまくできなかったら、リセットボタンを押し てすべて消去し、もう ー度制作を始める。人間は、これを繰り返し てきた。文明などというものは、それぞれの民族がそうしてやって きたことのそれぞれの結果なのだ。 種雄牛の所有者は、涙をのんで家畜の殺処分に応じた。その無念 さを推測することは、難しくはない。また、報道も、丹精こめて育 ててきた家畜を殺処分しなければならない人たちの悲しみと悔しさ とに共感を促すような仕方で、なされた。 農家の人たちは、人生をかけてつくってきた「作品」を壊す(殺 す)ことを強し、られた。確かにそれは、残酷なことであった。家畜 にとっても、農家の人たちにとっても、そうである。しかし、その 時、考えておくべきもうひとつのことがあったのではないか。 優れた作品、理想、の種雄牛をつくるということは、あるいはつくっ たということは、その時既に、牛の自然本性を損なっていた。自然 午殖を排し、徹底した生殖管理によって、望ましい(人の口におい しく感じられる肉質をもっ)牛を大量に生産することは、殺すこと と同様に残酷なことで、はなかったかc 人の手で生命を操作すること は、自然なノ主命を殺し、その体の一部を活用して、人間の欲望を充 たす「製品jをつくることであった。 J

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舗で切り身の肉を買って食べる者に、命に対する畏敬と感謝の 念、が生まれないように、生命をつくり育む農家の人たちにとっても、 それは同じことだったのではないか。命を生みだ、し、育むことにか かわる厳かさとは遠いところにいて、家畜の世話をすることに専念 円 d a ウ i t

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-していたので、はなかったか。家畜の世話をし、時聞を共有すること によって、 言い換えれば、自分の人生の一部がそこ(家畜という作 品)に表現されることによって、共感のようなものが午まれていた ということだ、ったのではないだろうか。 それは、「愛情Jと表現されてもよい。その 「愛情jゆえに、農 家の人たちは、涙を流されたので、はなかったか。動物状態を離脱し て、意味の世界を担いながら生きてゆかなければならない人間にとっ て、食べること、食べ物をつくることは、 文化であり、 生き方であ る。どのような文化を生き続けるか、どのような生き方をよいもの として選ぶか、今の私たちの判断に、未来を生きる子どもたちの幸 せがかかっている。食べること、食べ物をつくることは、 E真の倫 理的な問題なのである。 どんなことを考えようとも、それらはいくつもの観念の中のひと つだから、相対的なものでしかないと言われれば、それはそうだ。 でも、その中で、最善の判断をするための努力をする責任が、私た ちにはある。私たちも自分の生き方について、未来の子供たちの幸 福を視野に入れて、このままでよいのかどうか問い直し、責任ある 判断をしなくてはならないのではないか。 ~l蹄疫問題は、 今後の私 たちの生き方を聞いの中におき、考え直してみる絶好のチャンスを 与えてくれたということだ。

口蹄疫発生における法的課題

1 担保権に関する概括的な法的課題(文責・上本政夫) 民法上の課題として、次のものがあげられよう。特に担保権に関 する課題としては担保権の実行の問題と担保評価の問題に大別され よう。第一に、担保権の物上代位と出等ーが提供する手当金等との競

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宮崎[1蹄疫発生における現代的課題 (上本 下村

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居) 合の問題であるのすなわち、 一般的な物上代位権については、土地 収用法 (104条)及び土地改良法 (123条)等の特別法上の補償金、 清算金に対しでも物上代位権を行使できる。しかし、手当金等が 生産再開を条件とした場合に、担保権に基づく物上代位権を行使す ることが可能かどうかという点は検討の余地を残しているといえる。 さらに物上代位権を行使するときに、差押が必要であると考えられ ているが、生産再開等の諸条件が付されている場合に、そもそも差 押が可能かどうかについても検討する必要がある。第二に、担保評 価の問題である。これについては士地の評価減と担保価値の問題、 種雄牛等の担保評価においてどの時点が時価評価として妥当である かという問題が存するの市場価格に左右されやすい農畜産物を再建 可能な価格にどう適応させていくのか、種雄牛のように数年の歳月 と多大な労力を要するものの評価をし、かにすべきかという点である。 単に、その所有者にとどまらず、その地域や取引のある畜産農家に も影響を与えるふのであるので、この点も検討の余地があろうと思 われる門 その他の民法1:の課題として、午及び豚等のブランド価値が低下 した場合における損害賠償の問題及び埋却した畜産物の汚染水が流 失した場合における損害賠償の問題があげられるの いずれの課題についても早急に結論を見出すことは避けなければ ならないので、今後の検討に譲ることが望ましいといえる。 2 土地法の視点からみた課題(文責・土居俊平) 平成22年4月から数カ月にわたり宮崎県並びに全国の関係者を恐 怖のどん底に陥れた宮崎fJ蹄疫は、最終的に午・豚等の家畜・ 28万 頭余を殺処分することにより一応の終結をみせた(ぺ宮崎口蹄疫問 題については、実に様々な観点から議論がなされ得るところではあ -~ 179

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-るが、ここでは口蹄疫が拡散した一つの要幽とされる理却地の問題 を土地法の観点から検討していきたい。なお、ここでは詳細な検討 をなすのではなく概括的な検討をなすに過ぎず、本格的な検討につ いては別稿に譲ることになることをお断りしておくの そもそも、口蹄疫に感染した家畜(ニ患畜)が発生した場合、

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該家畜の所有者は当該家畜を殺さねばならない(家畜伝染病予防法 16条)、そして、当該家畜の所有者は遅滞なく、当該死体を焼却し、 又は埋却しなければならない(家畜伝染病予防法21条l項)と規定 されている(制。このように患畜所有者・に焼却・埋却義務を負わされ ていることから、患、畜を殺処分し埋却処分するにあっては埋却地を 自ら用意する義務が患畜所有者にあるとの結論が導かれよう。そし て、患畜所有者が用意した埋却地に殺処分された患畜を迅速に煙め ることが防疫の観点からは強く求められるところである。もっとも、 所有権絶対の原則から自己の所有する埋却地に殺処分された患畜を 埋却することは原則として白由であるとしても、他者の所有権なり 生活を侵害することは許されない。特に、士地は互いに接しあうも のであり一方の土地の利用が隣接する土地の利用に何らかの影響を 及ぼさざるを得ない場合も多い。つまり、無制限に土地の利用を認 めれば隣人同士の円満な共同生活は不可能なものとなろうれそこで、 社会において共同生活を行うにあたり普通に生ずる程度の影響は受 忍する等、調整を図る必要性が生じ得る。ここに、埋却地に殺処分 された患畜を埋設するにあたり、近隣住民の同意が必要とされる理 由がみてとれる。ただ、今回の宮崎口蹄疫にあっては、開却地の確 保(=深く掘ることができ、かつ、地下水への影響がない等の条件 をみたす土地の確保)並びに近隣住民の同意に時間がかかったこと が新たな口蹄疫発生をもたらしたとの指摘があることも事実である。 そこで、口蹄疫の爆発的発生というような緊急事態にあっては、

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宮崎口蹄疫発牛.における現代的課題 (上本 下村 上居) 近隣住民の同意なく埋設することが許容されるのではなし、かという ことが法的に検討される必要がある。この点を検討するにあたり、 まず近隣住民の同意のもつ法的意味を明らかにする必要がある。近 隣住民の同意のもつ法的意味と しては、①埋却することを確認する としづ意味、②埋却することを確認するのみならず、更に一般的に 想定しうる不利益を負担するとしづ意味、③将来的に埋却地所有者 に対して私法上の請求を放棄する意味、等々いろいろと考えられる ところである。この点、 原則と しては近隣住民の同意のもつ法的意 味としては①が妥当ではなし、かと思われる。というのも、民法上規 定されている隣地所布者の義務は築造・修繕のための隣地使用であ り(民法205条)、隣人に重い負担を課すことは法の趣旨に反すると 考えられるからである。もっとも、隣人には通常の生活から生ずる 一定の煙・騒音・振動の侵入や日照・通風の妨害等の生活妨害につ いては受忍すべき義務があることは一般的に承認されていることか ら、 当該埋却地に殺処分された患畜等を埋却する行為が一般的に受 忍すべきものであると言えれば、同意には①ではなく②の意味を持 っとも考えられる。ただ、この点は殺処分された患畜の埋却地への 埋却行為が具体的にどのような影響・不利益を近隣住民に与えうる のかという点の検討抜きには結論を出すことはできないので、 現段 階では結論を留保しておきたい。 では、前述した近隣住民の同意のもつ法的意味をふまえ、近隣住 民の同意なく埋却した場合どのように考えていくべきであろうか。 ①のように近隣住民の同意に確認の意味しかないのであれば、同意 なく埋却しでも直ちに法的問題は生じないことになる。 一方、②③ のように一定の不利益を負担することを認めるという意味であれば、 近隣住民の同意なき埋却行為は近隣住民に勝手に不利益を押し付け ることになるので同意なき埋却行為は直ちに法的問題が生ずること -181一

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になる。具体的にいえば一般的に、同意なき埋却行為は不法行為を 構成する余地があり、 不法行為を構成する場合にあっては損害賠償・ 差止等の請求をなしうることになる。ただ、①の意味を有する場合 にあっても、一定の不利益が生じ不法行為を構成するのであれば損 害賠償・差止の請求が可能であることは②③の意味を有する場合と 同様である。要するに、①の意味を有する場合にあっては同意があっ てもなくてもなしうる法的措置は同じであるのに対して、②③の意 味を有する場合にあっては同意がある場合と同意がない場合では取 り扱いが異なるのである。そして、②③の意味を有する場合にあっ ては当該同意に一定の利益を放棄するとの意味がある。従って、不法 行為の成立を認めることは①の場合よりは難しくなる。また、②の 意味を有する場合と③の意味を有する場合とでは、放棄されている 利益に相違がある。具体的には、②の意味を有する場合よりも③の 意味を有する場合の方が放棄されている利益が大きい、そのため、 ②よりも@の方が不法行為の成立を認めることは難しくなる。 以上、殺処分された患畜の埋却地への埋却行為をなす際の近隣住 民の同意のもつ法的意味並びに同意なき理却行為が法的に許される のかにつき検討してきた。今後は、宮崎口蹄疫がもたらした種々の 法的問題につき特に土地法の視点から検討を深めていきたい。この ように宮崎口蹄疫がもたらした種々の法的問題につき研究課題とす ることは、 口蹄疫が発生した宮崎県に存在する唯一の法学部に所属 する大学教員として避けて通ることのできない重要な課題であると 認識している。本稿はそのための第ー歩である。

五 結 語

2000年に発生した口蹄疫対策に対する取り組みは、地元道県はもち ろんのこと関係者ー体となった取り組みにより口蹄疫のまん延を最小

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宮崎口蹄疫発生における現代的課題 (上本 下村 土居) 限にくい止めたことは国際的にも高く評価されたが凶、 2010年に発生 した口蹄疫対策に対する取り組みは、 2000年に克服したことによる心 の緩みや固と県との聞における意見等の対立により必ずしも関係者一 体となったものとは言い難く、 U蹄疫のまん延を最小限度にくい止め ることはできなかった。今後の検証により改めて今回の課題が明らか になると思われる。 一方、本稿では、以下のような課題を顕在化させた。その点をまと めれば以下のようになる。 第一に、「口蹄疫」問題を生命倫理の視点から考えれば、宮崎県で 起きた家畜の殺処分は、合法的な行為であるが、その背後には、自分 たちの利益を優先し、それが守られるためには、犠牲もやむをえない という合理主義の精神が根底にある。このような考え方は、高度な繁 殖技術の発展や

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本人の食文化にも深く影響を与えるものである。長 期的視野に立って考えた場合、果たしてこれまでどおりの合理主義的 な視点からのみ復興案を練ることが私たちにとって本当の利益につな がるのか、また、幸せであるのかを問い直す必要がある。 第二に、口蹄疫の問題を法的視点から考えれば、特に、土地に関す る課題、保険及び担保に関する課題が顕在化した。これらの課題につ いては合理主義的な発想から離れて、今一度、長い期間を見据えた生 命倫理的な視点から探っていくことが今回の宮崎県の口蹄疫の問題を 解決し、さらには日本の食糧問題を解決していく緒となろう。 それでは上述した生命倫理の問題と民法上の問題が直接的又は間接 的に繋がりをもっているかという点については即答を避けなければな らないが、しかし、このような仕方で間いをなしえたことは、法の根 底において法を法たらしめている精神を問い直し、人間存在を肯定す るための法として、改めて法を握りなおす思索の鍛錬の場を、私たち に与えてくれたということができるであろう。 - 183

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-最後に、行き過ぎた合理主義の考え方は、口蹄疫の問題に限らず、 生命倫理に関するあらゆる問題に繋がるものである。多数の幸福(生 存)のために少数の犠牲はやむを得ないという仕方で人類は歴史を刻 んできた。しかし、弱者差別の克服をはじめ真の人権の擁護・回復を 願う人類の課題に応えるためには、これまでの合理的・常識的な思考 方法を超えて、人間の存在を肯定する理論を提供しなければならない。 私たちは、今、ここにいる法律を扱う者として、少し立ち止まって世 界を見回した上で更なる議論の展開を図りたいと望むものである。 '"越智勇一監修『最新家畜伝染病~ (南江堂、 1970年)3頁参照。 (2)農水省『口蹄疫 技術の手引き~ (J965年)島森宏夫・山田理 rEUにおける口蹄 疫の発生と対策J(畜産の情報(泌外編)141号、 2001年)46頁参照。 1 3)越智勇一監修『最新家畜伝染病~ (南江堂、 1970年)3頁参照。 14)農水省『口蹄疫 技術の手引き~ (J965年)、越智勇 監修『最新家畜伝染病~ (南 江堂、 1970年)8頁以下参照。 川越智勇一監修『最新家畜伝染病~ (南江堂、 1970年)10頁参照。 川山本健久 I口蹄疫清浄国への復帰についてJ(畜産の情報(国内縁)133号、 2000年) 21寅以下参照。 (1)越智勇一監修『最新家膏伝染病~ (南江堂、 1970年)11頁、椿}京彦吉「口蹄疫」農 林省家畜衛生試験場技術者集談会編『家畜伝染病の診断~ (文永堂、 1967年)7頁及び 農林水産省ホームベージ!http://www.maff.go.jplの記者発表資料及び畜産局ホームペー ジ (各部局庁のページの膏産局)等を参照。 (柑)小野嘉隆

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C:j本を取り巻く隣国 中国畜産の諸問題 (4)一口蹄疫(lJー J (畜産 の研究第60巻第5号、 2006年)633頁。 (9)徳田悟ー「口蹄疫」清水高正ほか編『牛病学 第2版~ (近代出版、 1988年)24'1頁 参照。 (附畜産局衛生課「平成 12年3 月 25 日プレスリリース 『口蹄疫の疑似慰畜について ~J 参 昭。 (11)長尾壮七代表『新版 家畜衛生学概論~ (文永堂出版、 1994年)271頁参照。詳細は 農林省畜産局監修『家畜伝染病予防法の解説~ (中央法規出版、1973年)17賀、 24頁 参照。 {山農林省音産局監修 『家高伝染病予防法の解説~ (中央法規出版、 1973年)参照。 { 山星野和久 i~1 蹄疫の発生について J (畜産の情報(国内編)130号、2000年)16頁以 下参照。資産局衛生課 I平成12年3月25C:j付プレスリリース 口蹄疫の疑似患音につ いて」以降には、口蹄伎の発生および経過について詳細に報告されており、これを参 考に記載している。なお、農林水産省ホームベージ[http://www. maff.go.j plの記者発 表資料及び者産局ホ」ムページ(各部局庁のページの畜産局)等参照。 (川畜産局衛生課 「平成12年目}jJ日プレスリリース J(58報、日報)参照。 ( 15)星野和久 rr~ 蹄痕の発生についてJ (畜庖の情報(国内編)130号、 2000勾)J7~以 下参照。

参照

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