化粧品に含有される紫外線吸収剤の検査結果(平成16~19年度)
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(2) 化粧品に含有される紫外線吸収剤の検査結果(平成 16-19 年度). 52. 社会的意義:化粧品の品質や安全性は、薬事法で規定されている。近年の国際調和や規制緩和 の流れを受けて、2001 年 4 月に薬事法の改正が行われ、それに伴い、化粧品については、これ までの品目毎の承認許可制が届け出制に変更された。また同時に、化粧品基準(平成 12 年、厚 生省告示第 331 号)が制定されるとともに、全成分表示が義務付けられることになった。これ により、使用者にとっては商品の選択肢が増えた一方、使用者自身が表示されている成分名か ら化粧品の品質と安全性を確認するという負担を負うことになった。 紫外線吸収剤は、化粧品基準において「化粧品に配合される紫外線吸収剤(紫外線を特異的に 吸収するものであって、紫外線による有害な影響から皮膚又は毛髪を保護することを目的とし て化粧品に配合されるものをいう。)は、別表4に掲げるものでなくてはならない。」とされ、 別表4に成分と配合上限が定められている。また、太陽光線から皮膚を保護する目的だけでな く、製品保護のため添加されていることもある。 全成分表示により、紫外線吸収剤についても成分名が製品に表示されるようになったが、配合 量や配合目的は不明である。また、最近の美白志向、新規成分の開発等によって、化粧品基準 で定められた配合可能な紫外線吸収剤は、当初の 24 成分から現在 32 成分に増加しているが、 それらの成分の使用傾向は年毎に変遷しており、製品への使用実態は把握しきれていない。 当センターでは、化粧品基準が遵守されているかについて検査を行っている。今回は、最近の 検査結果を集計し、紫外線吸収剤の使用実態並びに含有量をまとめた。紫外線吸収剤には皮膚 障害を起こす可能性のある成分もあり、また、複数の紫外線吸収剤が配合されている場合、総 量として高含量となる製品もあること等から、市場に流通している製品の実態を把握すること は、健康被害を未然に防止するうえで重要と考える。. 化学生物総合管理 第 6 巻第 1 号 (2010.3) 51-57 頁 連絡先:〒169-0073 新宿区百人町 3-24-1 E-mail: [email protected] 受理日:2010 年 1 月 12 日.
(3) 化粧品に含有される紫外線吸収剤の検査結果(平成 16-19 年度). 53. 1.はじめに 有害な太陽光線から皮膚を防御するため、「日焼け止め」だけでなく多くの化粧品に紫外線吸 収剤が使用されている。また、「日焼け止め」を標榜しない化粧品にも製品保護のために紫外 線吸収剤が配合されていることがある。化粧品に配合できる紫外線吸収剤については、薬事法 の化粧品基準(厚生省、2000)において、その種類とそれぞれの上限値が定められており、当 センターではこの基準が遵守されているかについて検査を行っている。昨年、森ら(森他、2007) により平成 16~18 年度の 3 年間の防腐剤についての検査結果が化粧品の種類別に集計され、 有用なデータが得られている。そこで今回、紫外線吸収剤についても使用実態の把握と分析法 の改良に役立てることを目的として、過去の検査結果を化粧品の種類別に集計した。. 2.実験方法 (1)試料 平成 16~19 年度の 4 年間に東京都内に流通し、当センターに搬入された化粧品 891 検体。 (2)分析方法 既報(横山他、2005、横山他、2006、宮本他、2007)により高速液体クロマトグラフィーを 用い、同時分析でスクリーニングを行った後、必要に応じて個別に定量を行った。 (3)検査対象成分 今回分析対象とした紫外線吸収剤は化粧品基準(厚生省、2000)の別表第 4 に掲げられてい る成分のうちの 20 種類で、名称と略称は以下のとおりである。 フェルラ酸 (HMC)、テトラヒドロキシベンゾフェノン (オキシベンゾン 3、THB)、パラア ミノ安息香酸エチル (エチル PABA、EAB)、ジヒドロキシベンゾフェノン (オキシベンゾン 1、 DHB)、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン (オキシベンゾン 6、DHDMB)、 2-ヒドロキ シ-4-メトキシベンゾフェノン (オキシベンゾン 3、HMB)、ジメトキシベンジリデンジオキソイ ミダゾリジンプロピオン酸 2-エチルヘキシル (EBP)、 4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイル メタン(BMB)、パラメトキシケイ皮酸 2-エチルヘキシル (EMC)、サリチル酸オクチル(ESA)、 2-シアノ-3、3-ジフェニルプロパ-2-エン酸 2-エチルヘキシルエステル(オクトクリレン、ECA)、 ドロメトリゾールトリシロキサン (BPS)、 2、4、6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボ ニル)アニリノ]-1、3、5-トリアジン (オクチルトリアゾン、TEAT)、 2、2'-メチレンビス[6-(2Hベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1、1、3、3-テトラメチルブチル)フェノール] (MBP)、パラジメ チルアミノ安息香酸 2-エチルへキシル (EDB)、サリチル酸ホモメンチル (HS)、フェニルベン ズイミダゾールスルホン酸 (PBS)、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸 (オキシベ ンゾン 4、OXB4)、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム (オキシベンゾン 5、OXB5)、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム (オキシベンゾン 9、OXB9)。. 3.結果及び考察 (1)化粧品の種類と分類 今回の調査では、化粧品を種類別にできるだけ詳細に分類した。検体は、その時々に設定し た目的で数多く集められたものもあり、化粧品の種類別検体数は国内の市場流通実態(東京化 粧品工業会、2008)から見て偏りがあるが、搬入された全検体を集計した。. 化学生物総合管理 第 6 巻第 1 号 (2010.3) 51-57 頁 連絡先:〒169-0073 新宿区百人町 3-24-1 E-mail: [email protected] 受理日:2010 年 1 月 12 日.
(4) 54. 化粧品に含有される紫外線吸収剤の検査結果(平成 16-19 年度). (2)紫外線吸収剤の検出状況 集計の結果、 133 検体(表 1)から延べ 190 成分(表 2)の紫外線吸収剤を検出した。検出 頻度の高かった「日焼け止め」では 50 検体中 36 検体(72.0%)から、「香水・オーデコロン」 では 18 検体中 13 検体(72.2%)から紫外線吸収剤を検出した。その他、「ネイルエナメル」、 「エナメルリムーバー」、「ファンデーション」、「乳液」等の検出頻度が比較的高かった。 すべての製品で紫外線吸収剤を検出しなかったのは、基礎化粧品では「化粧油」、「洗顔料」、 「メイク落とし」、「ひげそり用クリーム」、メーキャップ用では「マスカラ」、「アイシャ ドウ」、「アイライナー」等目のまわりに使用する化粧品、ボディー用では「石けん」、「入 浴剤」等洗い流す化粧品の多く、そして「歯みがき」等の口腔用化粧品であった。 (3)検出した紫外線吸収剤の種類と含有量について 紫外線吸収剤には紫外線 B 波(UVB、波長 290~320nm)を吸収しサンバーン(赤く炎症を おこす日焼け)を予防するタイプと紫外線 A 波(UVA、波長 320~400nm)を吸収し、 サンタン(褐色になる日焼け)を予防するタイプがある。今回、最も多く検出した成分は UVB 吸収効果のある EMC で延べ検出数の半数近くに上った。次いで多かったのは UVA 吸収効果の ある BMB と両波長域にわたって吸収効果のある HMB で、これら 3 成分の検出頻度は全体の 約 3/4 を占めた(表 2)。 表 1. 紫外線吸収剤を検出した化粧品 分 類 日 焼 け 止 め 等 日 焼 け 止 め 日 焼 け 剤 基 礎 化 粧 品 化 粧 水 ・ 美 容 液 ク リ ー ム 乳 液 ひ げ そ り 後 ロ ー シ ョ ン パ ッ ク メ ー キ ャ ッ プ 用 フ ァ ン デ ー シ ョ ン お し ろ い ・パ ウ ダ ー 口 紅 ・ リ ッ プ ク リ ー ム チ ー ク カ ラ ー ネ イ ル エ ナ メ ル エ ナ メ ル リ ム ー バ ー 毛 髪 用 シ ャ ン プ ー リ ン ス 整 髪 料 染 毛 料 ヘ ア ト リ ー ト メ ン ト 芳 香 化 粧 品 香 水 ・ オ ー デ コ ロ ン ボ デ ィ ー 用 ボ デ ィ ー シ ャ ン プ ー ボ デ ィ ー ロ ー シ ョ ン 合 計. 検 体 数. 検 出 数. 検 出 頻 度. 50 3. 36 1. 72.0 33.3. 164 71 21 3 11. 5 9 6 1 1. 3.0 12.7 28.6 33.3 9.1. 37 11 45 7 20 14. 15 1 8 1 12 5. 40.5 9.1 17.8 14.3 60.0 35.7. 31 23 35 20 26. 2 2 5 1 5. 6.5 8.7 14.3 5.0 19.2. 18. 13. 72.2. 8 20 638. 1 3 133. 12.5 15.0. (%). 化学生物総合管理 第 6 巻第 1 号 (2010.3) 51-57 頁 連絡先:〒169-0073 新宿区百人町 3-24-1 E-mail: [email protected] 受理日:2010 年 1 月 12 日.
(5) 55. 化粧品に含有される紫外線吸収剤の検査結果(平成 16-19 年度). 表 2. 化粧品種類別検出成分および検出数. 分類. 日焼け止め等 日焼け止め 日焼け剤 基礎化粧品 化粧水・美容液 クリーム 乳液 ひげそり後ローション パック メーキャップ用 ファンデーション おしろい・パウダー 口紅・リップクリーム チークカラー ネイルエナメル エナメルリムーバー 毛髪用 シャンプー リンス 整髪料 染毛料 ヘアトリートメント 芳香化粧品 香水・オーデコロン ボディー用 ボディーシャンプー ボディーローション 合計. E M C. H M B. B M B. E S A. E B P. 35 5 1. 9. 3. 3. 1 5 6. O X B 4. T H B. T E A T. D H B. 3. 4 1. 1. E D B. E A B. 1. 1 3. H M C. E C A. 1. H S. M B P. P B S. 2. 1. 1. 1 1. 1. O X B 5. O X B 9. 1. 1. 1. 1. D H D M B. 1. 1 1 14 2 1 7 1 1 2. 7 3. 1 4 1 3. 1 1. 4. 2. 1 1 1 3. 4 1. 2. 1. 1. 1 2. 6. 3. 2. 1. 3 1. 3 1 1 1 89 26 26 8. 6. 6. 5. 4. 4. 3. 3. 2. 2. 2. 1. 1. 0. B P S. 合 計. 64 1 0 5 16 7 1 1 0 17 1 9 1 15 5 0 2 2 8 1 6 0 21 0 1 6 0 190. 検出頻度の高い EMC、HMB、BMB について、化粧品別の含有量を図 1 に示した。「日焼 け止め」における EMC の含有量はほとんどが 1.0~10.0%で、10.0%以上が 3 検体であった。 一方、HMB と BMB の含有量はいずれも 0.5~5.0%であった。また、HMB と BMB は必ず EMC と併用されており、これは広領域の紫外線を防止するために配合されているものと考えら れた。 「乳液」から検出されたのは全て EMC で、その含有量は 2.4~8.8%であり、そのうち 1 検 体では同時に BMB も 1.3%検出した。「ファンデーション」では EMC が主に検出され含有量 は 10.0%以下であった。「乳液」および「ファンデーション」でも使用目的は皮膚への紫外線 防止と考えられる。 「香水・オーデコロン」では BMB が 6 検体、EMC が 4 検体の他、THB、HMB、EBP、ESA、 OXB4 と種々の成分を検出したが、それらの含有量はいずれも 1.0%以下であった。 「ネイルエナメル」および「エナメルリムーバー」から検出された紫外線吸収剤の約半数は HMB であり、その含有量はほとんどが 0.5%以下であった。香水やオーデコロンへの使用目的は紫外 線からの皮膚の保護とは考えられず、製品の品質保護のためと考えられた。 化粧品では薬事法の化粧品基準(厚生省、2000)で化粧品に使用可能な紫外線吸収剤の成分 と上限が定められている。検出頻度の高かった EMC と HMB では化粧品の種類により配合制 限があり、粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもので EMC は 20%、 HMB は 5.0%が最大配合量である。BMB ではすべての化粧品で 10%が最大配合量に定められている。 化学生物総合管理 第 6 巻第 1 号 (2010.3) 51-57 頁 連絡先:〒169-0073 新宿区百人町 3-24-1 E-mail: [email protected] 受理日:2010 年 1 月 12 日.
(6) 56. 化粧品に含有される紫外線吸収剤の検査結果(平成 16-19 年度). 今回の検査結果ではこれらを越える違反検体はなかった。また、検出された他の成分について も、それぞれの上限値を越えるものはなかった。. EM C. HM B. BM B. 含有量. 10.0%< 5.0-10.0% 1.0-5.0% 0.5-1.0% 0.1-0.5% <0.1%. 香. ネ. ク. 日. エ. ネ. ク. 日. 香. フ. 口. ク. 乳. 日. 水. イ. リ. 焼. ナ. イ. リ. 焼. 水. ァ. 紅. リ. 液. 焼. オ ・. ナ. ) (4. ) (9 め. ) (6. ). ) (3 ー バ ー ム リ ) (7 ル メ. ナ. ) (3. ン ロ コ デ ー ) (3 ル メ. エ ル. ム ー. 止 け. ル メ. エ ル. ) (5 め. ン. ー リ. ョ シ. ク. 35 : 数. ) (4 ン ロ コ デ 4) ー (1 ) (7 ム. ム ー. 止 け. オ ・. ー. ) (5. 体 (検 め. プ ッ. デ ン. リ ・. ム ー. ) (6. 止 け. 図 1. 主な紫外線吸収剤の含有量分布 紫外線吸収剤が複数配合された製品が多数流通している。 今回、複数の成分が多く検出され た「日焼け止め」と「香水・オーデコロン」について、検出成分と総含有量をまとめ、表 3 に 示した。この中には総含有量が 30%を越えた製品が 1 検体あった。単なる合算で是非を判断す ることはできないが、現在の基準では複数使用の場合の規制値はなく、今後この問題について 早急に検討されるべきと考えている。 化粧品基準に掲載される成分は年々追加され、それを反映して市場に出回る製品にも配合成 分に変化が見られる。我々が昨年度報告した 14 成分同時分析法(宮本他、2007)により、紫 外線吸収剤を含有する最近の化粧品の 90%以上が分析可能であることがわかった。現在、水溶 性成分について別法での同時分析法を検討中であるが、まだ分析法が確立されていない成分や 他国で許可されている成分についても分析が行えるよう、方法の改良等を検討する必要がある。. 4.まとめ 化粧品では全成分表示が義務づけられており、日焼け止めを標榜する化粧品だけでなく、多 くの種類の化粧品に紫外線吸収剤が成分表示されている。その中には紫外線による有害な影響 から皮膚を保護する目的だけでなく、製品保護の目的で配合されたものや、原料からのキャリ ーオーバーと考えられるものもあるが、含有量までは不明である。紫外線吸収剤の中にはアレ ルギーや皮膚障害を起こす可能性があるという報告(T. M. Hughes, et al.、2005)もあり、使 用実態を把握することは重要と考えている。 化学生物総合管理 第 6 巻第 1 号 (2010.3) 51-57 頁 連絡先:〒169-0073 新宿区百人町 3-24-1 E-mail: [email protected] 受理日:2010 年 1 月 12 日.
(7) 化粧品に含有される紫外線吸収剤の検査結果(平成 16-19 年度). 57. 表 3. 複数成分を検出した製品の紫外線吸収剤総含有量 分類. EMC. 検出成 分 BMB HMB. 検体数. 総含 有量 (%). 20 2. 1.0~20.0 2.2~ 5.3. + (1)*. 3 2 1. 4.1~10.0 7.9~ 9.1 5.5. + (1). 5. 2.2~22.9. + (2). 1. 30.2. + (3). 1. 10.3 1.49. + (1). 1 3. そ の他. 日焼け止め. + + + + + + + + 香水・ オーデコロン. + +. + + + + +. + +. + +. 0.09~0.35. * 成分数 今回の調査では化粧品基準で定められている各成分の個々の上限値を超える製品はなかった。 しかし、同時に数種類が配合され、紫外線吸収剤の含有量の合計が 30%に及ぶ製品も見られた ことから、総量での規制について検討が望まれる。 本邦文は東京都健康安全研究センター研究年報第 59 号(2008)に掲載された論文の内容を基に、 一部加筆・修正を加えたものである。. 参考文献: 1. T. M. Hughes, J. A. Martin, V. J. Lewis and N. M. Stone (2005) Contact Dermatitis,25, 226-227. 2. 厚生省 (2000)厚生省告示第 331 号, 平成 12 年 9 月 29 日. 3. 東京化粧品工業会編 (2008) 平成 19 年度事業報告, 5- 8. 4. 宮本道子、森謙一郎、中村義昭、他 (2007) 東京健安研セ年報, 58, 97 -105. 5. 森謙一郎、中村義昭、大貫奈穂美、他 (2007) 東京健安研セ年報, 58, 103 -106. 6. 横山敏郎、森謙一郎、中村義昭、他 (2005) 東京健安研セ年報, 56, 105 -110. 7. 横山敏郎、森謙一郎、中村義昭、他 (2006) 東京健安研セ年報, 57, 145 -150.. 化学生物総合管理 第 6 巻第 1 号 (2010.3) 51-57 頁 連絡先:〒169-0073 新宿区百人町 3-24-1 E-mail: [email protected] 受理日:2010 年 1 月 12 日.
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