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日本企業の「会社主義」の実態と今後の方向性 ──アンケート・データおよびインタビューによる分析──

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Academic year: 2021

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(1)

1.問題設定

 本稿は,日本経営学会第 92 回大会統一論題

サブテーマ③『日本の「会社主義」はどうなる

のか?』に対して執筆される,一考察である。

 まず,

「会社主義」の定義であるが,福永

(2004)

のサーベイによれば,「会社主義とは現代のわ

が国の企業体制を示す概念であり,研究者によ

りその定義や内容については差異が存在するも

のの,一般的に法人資本主義と日本的労使関係

(いわゆる三種の神器やホワイト・ブルー両カラー

間の身分差撤廃)

,日本型生産システムと競争シ

ステムなどの要素を包括した概念」とされ

(1)

この「会社主義」の具体化した姿が「日本的経

営」とされる。

日本企業の「会社主義」の

実態と今後の方向性

  アンケート・データおよびインタビューによる分析  

東海学園大学 

市 古  勲

【キーワード】会社主義(Companyism),日本的経営(Japanese Management),コーポレート・ガバナ

ンス(Corporate Governance),アンケート・データ分析(Analysis of questionnaire data),インタビ

ュー調査(Interview Surveys)

【要約】本稿は,かつて存在し,日本企業の強みの源泉であったと考えられている「会社主義」が,現

在はどのような形態に変化し,また,その機能状態がどうなっているのかを調査・考察するものである。

調査・考察するにあたっては,可能な限り長いスパンで定点的に行われている種々のアンケート・デ

ータと,筆者が行ったインタビュー調査を使用した。主な結論は次の通りである。まず,日本企業の

被用者らの「終身雇用」,「年功序列」に対する意識は,おおむね肯定的であり,現在においてもその

雇用形態を望む声が多い。しかし,会社そのものへの帰属意識や忠誠心は,世代を経るにつれて希薄

になっている。一方,企業側は,ステークホルダーとして従業員を重視する姿勢は見せつつも,景気・

業績の状況に応じて人員調整をしているケースが多い。以上の事から,現状において,「会社主義」的

な特徴は,形としては観察されるものの,その内実はかつてのものとは異なっており,それ故に,日

本企業の強みの源泉として機能しているとはいえそうにない。

 本稿は,当該概念の定義についてはこれに依

拠することとする。そして,特にサブテーマ③

において意識されている(1)会社の「従業員

共同体的」側面

(会社は「社員の集団」,「雇用者

の強い企業帰属」)

,(2)「従業員集団の利害を優

先した経営」

(⇔株主重視の経営)

の面,の 2 点

に絞って考察を進めることにする。具体的には,

(1

においては,日本の雇用問題および日本人

の意識について,(2

においては日本企業のコ

ーポレート・ガバナンスにおける経営陣

(経営

トップ)

の意識について調査・考察を行う。

 さて,上記

(1)

(2)

の考察を進めるにあたって,

本稿では種々の機関が行ったアンケート・デー

タと,筆者が行ったインタビュー調査結果を用

いる。アンケート・データについては,一部例

外はあるものの,できるだけ長いスパンで定点

【経営学論集第 89 集】統一論題 サブテーマ③ 日本の「会社主義」はどうなるのか?  

(2)

調査的に行われたアンケート・データを用いて

いる。以後,これらを手掛かりに,

(1

(2)

の「実

態」と「今後の方向性」の提示を試みることに

する。なお,本稿における主な考察対象は,日

本の非オーナー系大規模公開会社である。

2.会社の「従業員共同体的」側面の実

2-1.雇用者からみた終身雇用・年功序列につ

いて

(2)

 労働政策研究・研修機構

(2016)

の調査結果

(3)

によれば,図 1 に示すように,「終身雇用

(1 つ

の企業に定年まで勤める日本的な終身雇用,すな

わち,期間の定めのない労働契約)

」を支持する

雇用者の割合は,調査を開始した 1999 年以降,

過去最高の 87.9%で,「組織との一体感

(会社

や職場への一体感を持つこと)

」,「年功賃金

(勤

続年数とともに給与が増えていく日本的な年功賃

金)

」を支持する割合もそれぞれ,88.9%,76.3

%と過去最高の水準となっている。すなわち,

いわゆる日本型雇用慣行をあらわす項目に対す

る雇用者の支持割合が上昇している。

 また,表 1,表 2 で示すように,特に 20~30

      表 1 「終身雇用」の支持割合 (%) 調査年 1999 年 2000 年 2001 年 2004 年 2007 年 2011 年 2015 年 全体 72.3 77.5 76.1 78.0 86.1 87.5 87.9 20-29 歳 67.0 73.5 64.0 65.3 81.1 84.6 87.3 30-39 歳 69.1 72.0 72.6 72.1 85.9 86.4 88.4 40-49 歳 70.8 77.3 74.6 76.9 86.5 87.8 88.6 50-59 歳 71.0 77.1 78.9 80.0 86.0 85.2 88.1 60-69 歳 75.4 80.1 78.4 82.6 86.5 89.8 88.1 70 歳以上 83.2 84.4 85.0 85.4 87.7 88.7 87.1  (出所)労働政策研究・研修機構(2016),p.4 の図表 1-2。 図 1 日本型雇用慣行の支持割合  (注) 終身雇用,組織との一体感,年功賃金:「良いことだと思う」,「どちらかといえば良いことだと思う」 の合計。  (出所)労働政策研究・研修機構(2016),p.3 の図表 1-1。 1999 年 2000 年 2001 年 2004 年 2007 年 2011 年 2015 年 終身雇用 年功賃金 組織との一体感 100.0 95.0 90.0 85.0 80.0 75.0 70.0 65.0 60.0 55.0 50.0 88.9% 72.3% 60.8% 74.6% 77.5% 61.8% 76.9% 76.1% 62.3% 79.1% 66.7% 77.8% 71.9% 74.5% 87.9% 76.3% 78.0% 86.1% 84.3% 87.5% 88.1% (%)

(3)

歳代で「終身雇用」,「年功賃金」の支持割合が

2007 年から急激に伸びており,年齢階層によ

る違いがあまりみられなくなっている。なお,

表 3 の「組織との一体感」についての年代別支

持割合のデータは,2011 年調査までのものし

か入手できなかったが,表 1,表 2 と同様の傾

向にあるといえる。

 これらのデータを見る限り,雇用者

(被用者)

側は,いわゆる三種の神器的雇用慣行について,

それが続くことを望んでいるといえそうである。

 では,会社側は正社員の雇用に対してどうい

う行動を取っていたのか,次項で示すことにす

る。

2-2.企業側から見た従業員の雇用状況

 次の表 4 は,内閣府

(2018)

の企業アンケー

ト結果から引用した

(4)

。これは,平成 4

(1992)

年から平成 29

(2017)

年までの,上場会社の雇

用者数の実態および予想についてのアンケート

結果を時系列で表示したものである。

 この表から,バブル崩壊後の日本企業

(上場

会社)

の雇用状況について,25 年間の流れが分

かる。1993 年~2005 年が,いわゆる「就職氷

河期」といわれる時期である。どの数値も「増

加」が減少,「減少」が増加の傾向にある。

2005 年~2008 年が,いわゆる「IT バブル」の

時期に当たり,どの数値も「増加」が増加,

「減

少」が減少の傾向にある。2008 年が「リーマン・

ショック」の年であり,それ以後,しばらくま

た「就職氷河期」が訪れる。この時期は,先の

「就職氷河期」と同様の傾向となる。そして

2012 年以降が「アベノミクス」の時期に当たり,

「増加」が増加,「減少」が減少の傾向を示す。

 以上のことから,企業側は景気動向や会社の

業績によって雇用者数の調整を行っているもの

と考えられる。

      表 2 「年功賃金」の支持割合 (%) 調査年 1999 年 2000 年 2001 年 2004 年 2007 年 2011 年 2015 年 全体 60.8 61.8 62.3 66.7 71.9 74.5 76.3 20-29 歳 56.2 54.5 54.1 56.1 75.5 74.5 72.6 30-39 歳 56.8 57.7 55.8 62.3 63.8 73.1 72.8 40-49 歳 55.3 58.2 61.5 66.4 68.2 70.2 73.7 50-59 歳 60.2 61.3 61.8 67.4 72.0 73.0 76.2 60-69 歳 66.9 67.9 67.4 69.5 72.4 75.5 75.7 70 歳以上 73.0 70.1 72.0 74.5 79.1 80.2 82.1  (出所)労働政策研究・研修機構(2016),p.4 の図表 1-3。       表 3 「組織との一体感」の支持割合 (%) 調査年 1999 年 2000 年 2001 年 2004 年 2007 年 2011 年 全体 74.6 76.9 79.1 77.8 84.3 88.1 20-29 歳 79.2 80.2 84.5 75.3 92.3 93.6 30-39 歳 79.1 80.3 81.2 78.9 91.1 93.6 40-49 歳 73.5 76.0 77.1 82.1 89.9 92.9 50-59 歳 73.1 76.6 79.1 76.1 81.3 85.2 60-69 歳 73.7 77.3 79.9 80.3 82.1 85.5 70 歳以上 69.1 70.9 73.4 72.6 75.9 82.1  (出所)労働政策研究・研修機構(2013),p.10 の図表 4 抜粋。

(4)

       表 4 雇用者数の増加 / 減少企業割合の推移 (単位:%) 調査年度 過去 3 年間 うち正社員・正職員 今後 3 年間 としている人 うち正社員・正職員 としている人 増加 不変 減少 増加 不変 減少 増加 不変 減少 増加 不変 減少 平成 4(1992)年度 79.6 6.2 14.2 ― ― ― 56.9 15.9 27.2 ― ― ― 5(1993) 69.9 7.9 22.2 ― ― ― 38.4 18.4 43.3 ― ― ― 6(1994) 49.9 8.8 41.3 ― ― ― 36.0 20.1 43.9 ― ― ― 7(1995) 40.1 8.1 51.8 ― ― ― 34.4 19.0 46.7 ― ― ― 8(1996) 35.4 7.7 56.9 ― ― ― 36.7 19.1 44.2 ― ― ― 9(1997) 34.4 10.0 56.0 ― ― ― 32.8 19.6 47.6 ― ― ― 10(1998) 32.3 10.0 57.7 ― ― ― 25.9 15.3 58.8 ― ― ― 11(1999) 29.6 8.5 64.8 ― ― ― 26.6 17.0 56.5 ― ― ― 12(2000) 28.6 7.4 63.9 ― ― ― 32.9 18.7 48.4 ― ― ― 13(2001) 28.2 7.6 64.2 ― ― ― 24.7 16.7 58.6 ― ― ― 14(2002) 29.5 5.5 64.9 ― ― ― 28.4 19.0 52.5 ― ― ― 15(2003) 24.4 7.2 68.5 ― ― ― 29.2 21.8 49.2 ― ― ― 16(2004) 31.3 8.4 60.4 ― ― ― 42.8 22.2 35.1 ― ― ― 17(2005) 43.6 10.0 46.4 38.0 9.6 52.4 55.2 20.1 24.7 51.5 18.5 30.0 18(2006) 52.3 8.9 38.9 48.4 6.6 45.0 61.7 17.0 21.3 58.5 16.0 25.5 19(2007) 63.3 8.6 28.1 59.0 8.1 33.0 68.3 15.3 16.5 66.5 13.8 19.6 20(2008) 65.0 9.6 25.4 60.7 9.6 29.8 39.5 22.0 38.4 39.4 25.0 35.5 21(2009) 58.2 9.3 32.4 59.1 10.8 30.0 43.2 26.0 30.8 42.3 27.1 30.6 22(2010) 49.2 9.7 41.0 48.6 11.6 39.8 49.8 26.4 23.8 47.9 26.7 25.5 23(2011) 50.6 12.0 37.4 47.4 13.7 38.8 48.3 26.7 25.1 46.7 27.5 25.8 24(2012) 49.1 13.8 37.1 46.0 13.9 40.1 48.0 28.2 23.8 45.3 28.6 26.0 25(2013) 50.0 15.3 34.7 48.0 16.0 36.1 54.9 26.4 18.5 53.5 26.7 20.0 26(2014) 56.2 13.1 30.6 53.4 13.8 32.8 61.1 22.7 16.1 60.0 23.2 16.7 27(2015) 60.9 12.1 27.0 57.4 13.2 29.3 63.6 24.1 12.4 61.7 25.1 13.2 28(2016) 64.9 11.4 23.6 63.2 12.2 24.7 67.8 21.3 11.0 65.9 21.6 12.6 29(2017) 67.4 10.4 22.2 66.1 10.9 22.8 69.0 17.7 13.3 68.6 17.8 13.6  (注 1)増加:0%超と回答した企業割合,不変:0%と回答した企業割合,減少:0%未満と回答した企業割合。  (注 2)「過去 3 年間」「今後 3 年間」とは,例えば,平成 29 年度調査における「過去 3 年間」は平成 27~29 年度を表し,「今後 3 年間」は 平成 30~32 年度を表す。  (注 3)雇用者数増減率は,平成 4 年度から調査を開始した。「うち正社員」は,平成 17 年度から調査を開始した。  (注 4)平成 15 年度調査のみ「正社員」の値である(平成 15 年度は,「正社員」と「パート,派遣社員」を調査)。  (注 5)平成 28 年度より項目名を「うち正社員」から「うち正社員・正職員としている人」に変更した。  (出所)内閣府(2018),p.30 の第 1-5-1 表。

2-3.広く「日本人の意識」として,職場はど

ういった存在か

 NHK 放送文化研究所は,1973 年~2013 年ま

での 40 年間,5 年ごとに日本人の意識調査を

行っている。ここでは,最新の第 9 回調査結果

を参照しつつ,日本人の職場に対する意識につ

いて考察する

(5)

 表 5 は,第 22 問の仕事と余暇の関係につい

ての時系列データが記載されたものである。こ

の結果を見るに,ワーク・ライフ・バランスの

(5)

浸透の影響からか,

「仕事優先」の割合が減少し,

「仕事・余暇両立」が増加している。つまり,

仕事

(のみ)

に「生きがい」を求める人の割合

が減少していることが分かる。

 次に,表 6 の,第 17 問の職場の人間関係に

ついての時系列データが記載されたものを見て

みる。

 この結果を見るに,年を追って「全面的つき

あい」の割合が減少し,「部分的・形式的つき

あい」が増加していることが分かる。すなわち,

企業における「従業員共同体的」な色彩が薄ま

ってきていると考えられるのである。この結果

について,高橋・荒牧

(2014)

では,「全面的

つきあい」を支持する回答者の,生年ごとの状

況を分析している。その結果を表したグラフが,

図 2 である。

 グラフは 10 年ごとの結果を表示している。

73年と83年の線の重なりは,10年たっても人々

は意見を変えていないことを意味している。

「全

面的つきあい」については,明治生まれの人の

支持割合は多く,昭和生まれの人の支持割合は

少ない。つまり,職場において「全面的つきあ

い」が望ましいと考える人は,「世代」によっ

て決まっているといえる。

表 5 仕事と余暇の推移  問:リストには,仕事と余暇のあり方について,いろいろな意見がのっています。    あなたはどれが最も望ましいと思いますか。 (%) (略 称) 73 78 83 88 93 98 03 08 13 1. 仕事よりも,余暇の中に生きがい を求める 余 暇 絶 対 4.0 4.1 5.6 5.7 7.4 8.8 8.6 9.4 10.7 2. 仕事はさっさとかたづけて,でき るだけ余暇を楽しむ 余 暇 優 先 28.1 25.3 25.5 28.3 28.7 28.3 25.6 26.1 26.0 3. 仕事にも余暇にも,同じくらい力 を入れる 仕事・余暇両立 20.9 24.9 27.9 32.4 35.5 35.1 37.5 34.9 35.9 4. 余暇も時には楽しむが,仕事のほ うに力を注ぐ 仕 事 優 先 35.7 34.9 31.2 26.1 21.2 20.5 21.1 21.4 20.5 5. 仕事に生きがいを求めて,全力を 傾ける 仕 事 絶 対 8.2 8.5 7.8 5.1 4.6 5.1 4.4 4.7 4.5 6. その他 0.0 0.0 0.1 0.1 0.1 0.0 0.0 0.1 0.1 7. わからない,無回答 D K , N A 3.2 2.3 1.9 2.2 2.7 2.3 2.7 3.4 2.2  (出所)NHK 放送文化研究所(2014),p.13 の第 22 問。 表 6 職場の人間関係の推移  問:職場の同僚とは,どんなつきあいをするのが望ましいと思いますか。リストの中からお答え下さい。 (%) (略 称) 73 78 83 88 93 98 03 08 13 1. 仕事に直接関係する範囲のつきあ い 形式的つきあい 11.3 10.4 13.6 15.1 17.8 20.3 21.7 24.1 26.2 2. 仕事が終わってからも,話し合っ たり遊んだりするつきあい 部分的つきあい 26.4 31.4 32.3 37.6 38.8 38.9 37.5 34.3 35.5 3. なにかにつけ相談したり,たすけ 合えるようなつきあい 全面的つきあい 59.4 55.3 52.3 44.6 40.4 38.3 37.8 38.9 36.4 4. その他 0.1 0.0 0.0 0.1 0.2 0.1 0.1 0.1 0.1 5. わからない,無回答 D K , N A 2.8 3.0 1.8 2.5 2.9 2.4 2.9 2.6 2.0  (出所)NHK 放送文化研究所(2014),p.11 の第 17 問。

(6)

2-4.インタビュー調査による分析

 本稿を作成するにあたり,3 社 4 名の方々に

「コーポレート・ガバナンス」および「会社の

一体感」についてインタビューを行うことがで

きた

(6)

。ア社のa氏は勤続 25 年

(主任)

,同社

b氏は勤続 30 年

(部長)

であり,両者は上司・

部下の関係にある。イ社のc氏は勤続 28 年

(室

長)

である。そして,ウ社のd氏は勤続 36 年

(主

査)

である。4 名の方々は,いずれも日本的経

営が行われていると目される大企業のミドルで

あり,かつ,同一グループに属する会社の従業

員である。

 結果は表 7 の通りである。ウ社を除いて,従

業員の立場としてはコーポレート・ガバナンス

を知覚することはほぼなく

(ただ,ウ社につい

ても,ガバナンスとマネジメントが混在している

感がある)

,また,経営トップと従業員層の間

にはコミュニケーションの断絶がみられる。一

方,会社の一体感のレベルについては,会社の

歴史・社風・経営環境に依存する模様で,同一

企業グループに属する会社でも共通性を見出す

のが難しい。その中でいえそうなことは,会社

の一体感はともかく,仕事上のチームでは一体

感はある,ということであった

(7)

。また,コン

プライアンス,あるいはそのための書類作りに

忙殺されている状況も共通している模様である。

 直近

(5 年)

ROE 水準と各社の「日本的経営」

状況との関連は,これだけの資料では判断は難

しいが,各社におけるその濃淡とは,必ずしも

連動していないように思われる。

2-5.本節の結論

 終身雇用

(期間の定めのない労働契約)

および

年功序列

(昇進制・賃金制)

は,日本企業・日

本人労働者の慣習としては,現在も確かに残っ

ている。ただし,企業側と労働者側の意識には

違いがある模様である。企業側としては,それ

を望ましいと思いつつも,経済状況・企業業績

によって正社員採用者数を調整している。一方,

雇用

(被用)

者側は終身雇用を望んでおり,組

織の一体感もあった方が望ましいと思いつつ

も,企業への帰属意識は,特に世代が若くなる

につれて薄まりつつある模様である。なお,こ

こでいう組織の一体感とは,会社全体としてで

はなく,「仕事上のチームの一体感」である可

能性を指摘できる。

 終身雇用・年功序列という雇用慣行が日本企

業に「従業員共同体的特質

(会社の一体感)

」を

付与するかどうかは,企業・従業員双方の会社・

労働に対する考え方・感じ方次第のようである。

それが存在する会社もあれば,無い会社もある。

現状では,双方とも共同体意識を形成する方向

からは外れているようである。また,現状とし

ては好況あるいは企業のハイ・パフォーマンス

図 2 人間関係(職場)《全面的なつきあい》(生年別)  (出所)高橋・荒牧(2014),p.14 の図 18。 % 80 70 60 50 40 30 20 10 0 1973 年 1983 年 1993 年 2003 年 2013 年 1994 -97 -9389 -8884 -8379 -7874 -7369 -6864 -6359 -5854 -5349 -4844 -4339 -3834 -3329 -2824 -2319 -1814 -1309 -0804 1899-03 以前生1898 平成 昭和 (終戦) 大正 明治

(7)

表 7 会社ミドルへのインタビュー調査結果 ア 社 a 氏 b 氏 質問①  言葉そのものをほとんど耳にしない。よって,意識する こともない。反面,コンプライアンスという言葉は頻繁に 耳にする。  コーポレート・ガバナンスという言葉は,日ごろ全く 使わない。しかし,部長になってからは,株主総会の資 料作り等に関わるので,「会社の意思決定」という意味 では,意識している。 質問②  トップが直接語らないと,トップの考えが現場に伝わら ない状況。現社長はさまざまな媒体を使って従業員に考え を伝えていて好印象。前社長は,そういうことをされない 方だったので,現場からは遠い存在であった。  自席と同じフロアーに役員室・席があるが,取締役の方 とは普段コミュニケーションを取ることはなく,印象薄し。 役員承認等の会議で同席した時の印象は「一緒にやってい こう!」というものではなく「やって下さい,早く成果を 出して下さい」という感じで,あまり一体感を感じない。  一方,執行役員の方は,壁の仕切りがない同じスペース に席がある関係上,存在感はある。会議においても,助言 が具体的で分かりやすい。  部長になってからは,頻繁・密にコミュニケーション を取っている。その前は,あまり意識することはなかっ たように思う。そういうこともあって,経営陣が結構トッ プセールスを行っていることにも気づくようになった。  また,われわれミドル(部長クラス)が原案を作成し て提示しないと(動かないと),上は意思決定をしてくれ ない。現在は,そういう立場で仕事をしているので,経 営層は常に意識している。 質問③  業務執行の意思決定が遅い,または決まらない。不確定 要素のある案件の意思決定をする場合,誰の権限・責任で 決めるのか,不明。また,物事を進める条件が,実質的に 全会一致の傾向。リスクを負うのを嫌い,誰も判断しない 案件もある。過剰なコンプライアンスの副作用か。  経営方針に従い,事業を展開しようとするが,社内に そのリソースがなくて困ることがある。そのリソースは, われわれが用意・準備しなくてはならないのだが,苦労 する。  あとは,会議・ワーキングが多く,また,作成する書 類も多い。資料・計画づくりばかりやっている感じがす る。 質問④  基幹職と組合員との間には壁があるように思える。基幹 職内には一体感があるような気がする。しかし,組合員間 ではそれほどでもない。部署やグループに一体感が生まれ るか否かは,マネージャー次第。  部署間は,利害が一致していれば一体感を出して業務遂 行できるが,一致しなければ,全く一体感を感じない。  仕事(業務)を中心とした一体感はある。仕事を中心 にしたグループのメンバー間には一体感はあると感じ る。従業員全体としては,無いように思う。  部長(部門長)間では,定期的にミーティングがあり, コミュニケーションは取れているので,そこにおいては 一体感は存在すると思う。 質問⑤  表面上あるように見えるが,実態はそうでもないような 気がする。社内の業務遂行はオープンシステムで,自部署 だけで完結できる業務はない。自部署の業務が完了し,他 部署に引き継いでも,上流工程・下流工程の部署がその方 針を受け入れなければ,何も進まない。部署間の方針差異 がある。  会社全体としては,現在はあまり感じない(かつて… 入社したての頃はあったように思うが)。ボトムアップ的な ものがかつてはあったが,今は,ほぼトップダウン的。 また,全社的イベントも行っていないので,会社の一体 感を醸成する機会も乏しい。  仕事(業務)を中心に回っていると感じている。 質問⑥ 別物として考えている。違いは,経営層が含まれるか含ま れないか。  会社の一体感がないと思っているので,質問に対して 適切な回答を付すことが不能。ただ,経営トップは,会 社・従業員の一体感を欲している。経営目標・目的を達 成するためにはそれが必要であると感じているようだ。 質問⑦ 株主は会社のソト。日頃,全く存在を感じない。ステーク ホルダーもソト。経営層・上司・他部者など社内の人間は, 利害は対立するものの,ウチ。端的に言うと,社内の内部 機密情報を開示できる人や組織はウチ,開示できない人や 組織はソト。  言葉では説明しづらいが,意識はしている。その時々 の状況・状態に依存する。グループ会社はグレー。コン ペティターになることもある。 その他  部門間の垣根が比較的高い。原因は,扱う製品が全く異なるゆえに,業務の基盤となる技術に共通性がないこと。  部署間の人事異動は,あまりなされない模様。  同期の退職者は 1 割くらい。就職後 5 年以内にかたは付く。 直近 ROE 10%程度で推移

(8)

イ 社 ウ 社 c 氏 d 氏 質問①  取締役会の原案,株主総会の原案・想定問答を作成する 関係上,「コーポレート・ガバナンス」は意識する。ただ, 言葉そのものには,あまり馴染みがない。  頻繁にある。コンプライアンス・機密管理・予算管理・ 品質管理・営業管理で,役員から直接のチェックを受け, また,直接説明することもある。 質問②  室長(部次長クラス)になってからは,頻繁にコミュニケー ションをとるので,常に意識している。ただ,室長になる 以前は,ほとんどその存在を感じることはなかった。  トップは,現場を知りたいと思っており,現場の視察等 をトップダウンで仕掛けてくることもある。  主査(部次長クラス)になる前からも,20 代後半から 30 代くらいの時でも,その存在をフォーマル・イン フォーマルの両面で身近に感じていた。  経営トップ層は,常に現場で何が起こっているかを キャッチすべく,アンテナを高くしている。ガバナンス の関所を多く設けていて(質問①参照),従業員を試して いる。それに耐えうる人材が戦略的に育成されている。 質問③  工場等の現場がコンプライアンス事項を守らないことが ある。恐らく,知らない(知らずにやっている)のだろうと 思われる。これを周知・徹底させるのが難しい。  また,責任の所在・部署間の役割が不明確になることが ある。  社内制に実態に適合していない部分があり,インフォー マルで何とかこなさなければならない時がある。  同じ問題が繰り返される。  原因①:真因を突き詰める能力の低下と,指導できる ミドルの管理スパンの拡大。  原因②:マニュアルまたはチェックリストを鵜呑みに し,今までにない環境に対応できない。  質問①回答における関所で経営トップが強く統制を掛 けているが,再発は完全には無くならない。 質問④  部門メンバー間の一体感はある。  一体感はあると思う。チームでやっていく風土がとて も強い。 質問⑤  会社への帰属意識,愛社精神,仲間意識は強いと思う。 引退後も OB 会などがある。  一体感はあると思う。理由は主に 3 つ。  ①:意思決定ステップが明確で,チームでクリアーし ようとする強い風土がある。②:意思決定機能が本社の 狭いエリアに集中しており,強いリーダーの下,意思決 定がなされている。③グローバルに事業展開するものの, 最終意思決定・トレーニングは本社で行われ,一貫性が 強く存在する。 質問⑥  カンパニー内では同じだと思う。カンパニー間では,そ うとは言い切れない部分もある。ただ,部門間の交流はあ り,異動も多い(人事の工夫)ので,バラバラという感じ ではない。  ほぼ同じといえるが,違うとすれば一点ある。  収益目標に対するトップの強い意思があるゆえに,経 営環境の悪化に即応し,期中における大幅な方針変更が 行われる。これに対して違和感を覚えるミドルもいる。 質問⑦  職種による境界は,あまり感じない。派遣の中で,仕事 は仕事と割り切ってやっている人は「ソト」だと感じる。  部門間に境界線がある。話ができない,というほどで はないが。これを消すために,カンパニー制を敷いたが, なかなか難しい状況。  一方,仕入先・販売店・お客様に対しては「ソト」と いう感覚は無い。それは,謙虚にその方々のお話を伺う 風土が社内にあるため。 その他  従業員の定着率は非常に高い。「生涯ウチの会社」  グループ会社からの出向者も「良い会社だ」と言ってい るのを耳にする。この会社には,良い意味で「ゆるさ」が あるのだろう。  経営陣は生え抜き人材で構成されるべき。社外からの トップが多数を占めるようになったら,今のような強固 な体制は築けない。業務を詳細に知り,従業員を知り, 尊敬されるには時間が必要。 直近 ROE 3.6~5.5%程度で推移 10~13%程度で推移  (出所)筆者作成。

が終身

(長期)

雇用をもたらしており,終身雇

用が日本企業のパフォーマンス向上に寄与して

いるとは言い難い状況にあるといえそうである。

 その他,インタビュー調査結果における各社

の共通項目「コンプライアンス,あるいはその

ための書類作りに忙殺されている状況」は,注

目に値する。

(9)

3.従業員集団の利害を優先した経営な

のか

3-1.どのステークホルダーを重視した経営か

 コーポレート・ガバナンスに関連して,どの

ステークホルダーを重視して経営を行うか,と

いう問いのアンケートは,これまでも種々の機

関が行ってきた。本稿では,まずは経済同友会

が 2009 年および 2012 年に行ったアンケート・

データを加工し,その状況を比較してみた。そ

の結果が,図 3 および図 4 である。なお,アン

ケートの問いは,「ステークホルダーについて,

経営として,これまで重視してきた主体,また

今後重視する主体について,それぞれ,重要度

の高いものから順に 3 つ以内でお答えくださ

い」というものであった

(8)

。これらを見る限り,

各年間の傾向にはほとんど変化は見られない。

経営をする上で重視する主体は,従業員と顧客

(消費者)

が同程度,次いで投資家

(株主)

とい

う順である。

 これ以前の動向については,日本能率協会グ

ループ広報委員会

(2012)

のデータがある。た

だし,アンケートに回答しているのは新任役員

である

(図 5)

(9)

 この件について,これ以上年度の新しいデー

タは入手できなかったが,2012 年に向かって,

重視されるステークホルダーの順位は従業員・

顧客・株主の順になっていくようである。ただ

し,注意すべきなのは,重視する順位として株

主は第 3 位であるが,決して軽視されている訳

ではない

(10)

。図 3,図 4 が示すように,3 つま

での主体選択の場合,特に数値の変化はない。

つまり,従業員重視と株主重視は,代替的なも

のではない,ということである。

3-2.取締役に対するインタビュー結果

 本稿作成に先立ち,監査等委員会設置会社へ

移行した会社の社内・社外取締役の方々にイン

タビューすることができた

(11)

。その中で,本

稿のテーマに援用できそうなコメントを挙げて

みる

(表 8,表 9)

 ここでは,コーポレート・ガバナンス体制を

決定するのは経営トップであること,そして社

外取締役には,所属する会社に対する当事者意

識が必要であるということが示された。つまり,

どの主体を重視して経営を行うのかを決めるキ

ーマンは経営トップであり,また,経営陣には,

たとえ社外役員であろうとも会社へのコミット

メントを強く求められるのである。さらに,第

2 節第 4 項の表 7 において,ウ社のd氏が「経

営陣は生え抜き人材で構成されるべき。社外役

員が多数を占めるようになったら,今のような

強固な体制は築けない。業務を詳細に知り,従

 (出所)図 3,図 4 ともに経済同友会(2010;2013)のデータを基に,筆者作成。 図 3 これまで重視してきた主体 従業員 顧客(消費者) 投資家 取引先企業 地域・社会 取引先銀行 グループ企業 その他 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% 2.7% 5.1% 10.5% 14.6% 31.8% 64.4% 75.7% 79.5% 4.4% 4.4% 13.7% 20.2% 36.6% 63.3% 73.7% 73.2% 2012 2009 図 4 今後重視する主体 従業員 顧客(消費者) 投資家 取引先企業 地域・社会 取引先銀行 グループ企業 その他 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% 2012 2009 2.2%4.6% 5.1% 5.1% 7.3% 6.8%17.8% 26.9%30.5% 33.7% 65.7% 63.3% 77.8% 74.3%78.4% 76.5%

(10)

表 8 移行の意思決定を行う主体に関するコメント コメント A 氏 ガバナンス体制移行の意思決定は,代表取締役等経営トップが行う。ほぼ「マネジメント的発想」でガバナンス体制 を選択する。 B 氏 現社長のリーダーシップにより移行,ガバナンス体制(型)を選ぶのは「経営トップ」。 C 氏 ガバナンス体制移行の意思決定は,経営トップが行う。 D 氏 経営トップが意思決定をしなければ,何も変わらない。勇気と決断が必要。  (出所)市古・浅井(2018),p.23 の図表 6。 図 5 最重視する利益層  (出所)日本能率協会グループ広報委員会(2012),p.20 の図 24。 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 90.0% 100.0% 01 年調査 (n=245) 12 年調査 (n=269) 02 年調査 (n=301) 03 年調査 (n=210) 04 年調査 (n=279) 05 年調査 (n=214) 06 年調査 (n=175) 07 年調査 (n=161) 08 年調査 (n=203) 09 年調査 (n=184) 10 年調査 (n=252) 11 年調査 (n=229) 株主   従業員   顧客   取引先   社会   その他   無回答 18.2% 19.7% 22.2% 19.0% 29.1% 25.5% 25.1% 37.4% 38.4% 40.5% 36.5% 39.2% 27.3% 26.6% 33.3% 25.8% 31.8% 42.3% 47.2% 45.3% 51.6% 43.7% 43.7% 45.0% 20.0% 0.0% 23.6% 12.9% 21.5% 17.3% 18.3% 16.1% 18.7% 20.1% 17.5% 20.1% 23.0% 0.4% 0.9% 1.1% 1.7% 0.0% 0.4% 0.5% 0.0% 0.6% 0.0% 0.0% 9.4% 7.3% 8.6% 9.0% 10.3% 9.1% 7.5% 5.4% 6.5% 13.1% 11.4% 8.6% 2.4% 3.7% 4.3% 3.9% 2.8% 4.0% 2.5% 1.5% 2.7% 2.8% 3.5% 3.0% 1.6% 0.7% 0.5% 1.1% 0.0% 1.1% 0.6% 0.0% 0.4% 0.9% 1.1%

業員を知り,尊敬されるには時間が必要」とコ

メントしている。以上の事から,会社がコーポ

レート・ガバナンスと経営において,従業員を

重視する度合いが高いか否かは,経営トップの

考え方や経営の姿勢に依存し,また,経営トッ

プが当該会社の生え抜きで,かつ,経営陣にも

生え抜き人材が多い場合には,従業員集団の利

害を優先した経営が行われる可能性が高くなる

ことが予想される。

(11)

4.本稿の結論

 以上,日本企業の従業員共同体的特徴および

従業員重視の経営の状況について調査・考察し

てきた。従業員共同体的特徴については,「形」

としては旧来のものが残っているといえそうで

ある。ただし,昔のものと現在のものとでは,

その内実が異なっているようであり,終身雇用

が経営における強みになっているとはいえそう

にない状況であった。

 従業員重視については,第 2 節と第 3 節の結

論が整合しない,非常に悩ましい事態に陥って

しまった。解釈としては苦しいが,従業員重視

とは,「今いる」従業員に対してであって,「潜

在的な新入」従業員に対してのものではない,

ということであろうか。

 しかし,サンプル数は少ないが,インタビュ

ー調査をしてみると,会社ごとの特徴の違い

(多

様性)

を強く感じる。今回の調査・考察は,ア

ンケート・データで一般的にいえそうなことと,

個別企業の状況・実態との間には大きな差があ

ることを認めざるを得ない結果となった。

 以上の結果を受けて,日本企業の経営の在り

方についての今後の方向性について私論を述べ

ると,次のようになる。

 日本の各企業の多様性が大きいことから,

「日

本企業が世界的に優位性を獲得・維持する方法」

として,一般的に成立しそうなことを提示する

のは難しい。現実的には,各企業の歴史・社風・

経営環境にマッチした企業個別的な解を模索

し,実践する,ということになるだろう。ただ

し,インタビュー調査結果から,それを阻害す

る要因として「過剰ないし形骸的なコンプライ

アンス」の存在を指摘できる。企業活動に伴っ

て生じる負の事象

(不祥事・事故等)

を抑える

ために,ルール作りとその遵守は必要であるが,

それが企業の発展を阻害する要因となっては本

末転倒である。筆者としては,各企業の経営活

動・実践に対する自由裁量の付与とその拘束の

バランスを如何に取るか,という問題に,今後,

取り組んでいかねばならないと考えるところで

ある。

(1) 福永(2004),pp.111-114 を参照。ここでは,馬 場宏二氏と橋本寿朗氏,橘川武郎氏らの見解が整 理されている。 (2) 本項における「雇用者」は,被雇用者(被用者) のことを指す。 (3) 本稿では,主に第 7 回調査結果からデータを取っ ている。第 7 回における調査対象は,全国 20 歳 以上の男女 4,000 人(層化二段系統抽出法),調査 方法は調査員による訪問面接調査,調査期間は 表 9 社外取締役に求められる『スキル』に関するコメント コメント A 氏 新規事業の立ち上げの際に,外部から人材を引き抜くのと同様の論理(「マネジメント」的発想)で独立社外取締役を 導入しようとする。「守り」の分野は監査役制度の蓄積でスキルの育成は可能であるが(法・会計制度),「攻め」の部 分はやはり「資質」が重要。これは「外部」から持ってくるものであり,業界知識が必要となる。 また,特にドメスティックな企業の場合,「地元愛」,「地元への愛着」のある人が望ましい。 関連して,会社への忠誠心「会社愛」があり,役員・従業員から支持される人であることが望ましい。すなわち,「よ そ者」,「お客様」的な人材では,ガバナンスの実効性に欠ける場合がある。 B 氏 個人の有する知見・経営経験の視点から選任する。やはり,社内で育成するものではなく,アウトソースとなる。 しかし,コンサルタント的(第三者的)な視点で考える人は NG。わが社の立場に立って,能力を有し,経営参加へ の時間も有し,かつ,各ステークホルダーへの配慮があり,信頼を得られる人,つまり,わが社において機能しそ うな人を選んでいる(経営的視点での選任)。 C 氏 社外役員であっても「会社への愛」がなければならないと考える。 D 氏 自分なりの情報ネットワークがある人。個人が有する資格ではなく,「人となり」,「見識」による。  (出所)市古・浅井(2018),p.25 の図表 9。

(12)

2015 年 11 月 27 日~12 月 20 日,回答状況は有効 回答数 2,118 人で,有効回収率 53.0%であった。 データの詳細は,労働政策研究・研修機構(2016), p.2 を参照されたい。また,表 3 については労働 政策研究・研修機構(2013),pp.3-7 を参照され たい。 (4) 本稿では,平成 29 年度の結果を提示している。 提示したデータの調査対象は,東京・名古屋の証 券取引所第一部及び第二部に上場する全企業 (2,619 社(平成 29 年 11 月 1 日現在))であり, 回答企業数は 1,107 社(製造業 516 社,非製造業 591 社)であった。データの詳細は,内閣府(2018), p.1 を参照されたい。 (5) 第 9 回の調査対象は,全国 16 歳以上の国民 5,400 人(450 地点× 12 人),調査方法は個人面接法, 回答者数は 3,070 人(56.9%)であった。データ の詳細は,NHK 放送文化研究所(2014),p.5 を 参照されたい。 (6) インタビューの質問項目は次の通りである。①会 社での日常において,コーポレート・ガバナンス を意識・知覚することはありますか。②会社の経 営トップ・経営陣に対して,どう感じていますか。 また,日常,その存在を感じていますか。③日常 業務において,最も対処に困っていることは何で すか。④従業員の一体感はありますか。⑤会社の 一体感はありますか。⑥従業員の一体感と会社の 一体感は同じものですか,別物ですか。⑦会社の 「ウチ」と「ソト・ヨソ」の境界線・境界エリアは, どの辺にあると感じていますか。 (7) この状況は,表 3 と図 2 の解釈をつなぐものと考 えられる。すなわち,組織との一体感とは,「会 社全体」に対してものではなく,「仕事上のチーム」 に対してのものである,といえそうである。 (8) 2009 年のデータについては,経済同友会(2010) の p.2 および p.53 を,2012 年のデータについては, 経済同友会(2013)の pp.160-161 および p.180 を 参照されたい。 (9) 本稿では,第 15 回調査結果からデータを取って いる。データの詳細は,日本能率協会グループ広 報委員会(2012),pp.1-3 を参照されたい。 (10) この点については,宮島他(2013)においても指 摘されている。ここでは,2012 年に行ったコーポ レート・ガバナンスに関するアンケート・データ を基に,さまざまな項目が分析されている。その 中で,「日本企業が以前に比べて明らかに株主重 視の姿勢を強め始めているが,株主の利害と従業 員の利害が決定的に対立した場合には雇用を優先 するという日本企業の姿勢について本質的な変化 は生じていない」と指摘している。つまり,先の 株主重視の意識の上昇は,従業員重視と代替的に 進んだのではなく,並行して生じたと結論付けて いる。詳細は,同書 pp.6-7 を参照のこと。 (11) インタビュー期間は 2017 年 6 月~10 月。インタ ビュイーの属性は,A・C氏は現在,東証一部上 場会社(監査等委員会設置会社)の独立社外取締 役で,かつ,監査等委員である。B氏は現在,東 証一部上場会社(監査等委員会設置会社)の社内 取締役で,かつ,(常勤)監査等委員である。D 氏は現在,東証一部上場会社(監査役会設置会社) の独立社外取締役である。 〈参考文献〉 伊丹敬之(2000)『日本型コーポレートガバナンス:従 業員主権企業の論理と改革』日本経済新聞社。 市古勲・浅井敬一朗(2018)「監査等委員会設置会社移 行会社のコーポレート・ガバナンスに関する調査 研究―社外取締役の『スキル』に着目して―」『東 海学園大学研究紀要社会科学研究編』第 23 号, pp.13-28。 江川雅子(2008)『株主を重視しない経営』日本経済新 聞出版社。 NHK 放送文化研究所(2014)「第 9 回「日本人の意識」 調査(2013)結果の概要」。 経済広報センター(1998~2018)「生活者の “ 企業観 ” に関する調査報告書(第 1 回~第 21 回)」。 経済同友会(2010)「「企業経営に関するアンケート調査」 の結果―「新・日本流経営」の進化・発展に向け た指針―」。     (2013)『第 17 回企業白書』。 高橋幸市・荒牧央(2014)「日本人の意識・40 年の軌跡 (2)~第 9 回「日本人の意識」調査から~」『放送 研究と調査』2014 年 8 月号,pp.2-23。 高橋由明(2014)「「日本的経営」の真価を問う―いつ から何が機能し続け,何が機能しなく(駄目に) なったのか―」『商学論纂(中央大学)』第 55 巻第 5・ 6 号,pp.399-483。 内閣府(2018)「平成 29 年度企業行動に関するアンケ ート調査結果」経済社会総合研究所景気統計部。 日本能率協会グループ広報委員会(2012)「「第 15 回新 任役員の素顔に関する調査」結果報告書」。 福永晶彦(2004)「現代日本企業と「会社主義」―「会 社主義」の好循環と悪循環」『東海学園大学研究紀 要』第 9 号,pp.111-124。 宮島英昭・齋藤卓爾・胥鵬・田中亘・小川亮(2013)「日 本型コーポレート・ガバナンスはどこへ向かうの か?:「日本企業のコーポレート・ガバナンスに関 するアンケート」調査から読み解く」『RIEIT ポリ シー・ディスカッション・ペーパー』Series13-E-

(13)

046。 森本三男編(1999)『日本的経営の生成・成熟・転換』 学文社。 柳川範之(2009)「緊急提言終身雇用という幻想を捨て よ―産業構造変化に合った雇用システムに転換を ―」『NIRA 研究報告書』2009.4,財団法人総合研 究開発機構。 労働政策研究・研修機構(2004)「勤労意識のゆくえ―「勤 労生活に関する調査(1999,2000,2001)」―」労 働政策研究報告書,No.2。     (2005)「第 4 回勤労生活に関する調査(2004 年)」JILPT 調査シリーズ,No.6。     (2008)「第 5 回勤労生活に関する調査(2007 年)」JILPT 調査シリーズ,No.41。     (2013)「第 6 回勤労生活に関する調査(2011 年)」JILPT 国内労働情報。     (2016)「「第 7 回勤労生活に関する調査」結果」 Press Release。

表 7 会社ミドルへのインタビュー調査結果 ア 社 a 氏 b 氏 質問①  言葉そのものをほとんど耳にしない。よって,意識することもない。反面,コンプライアンスという言葉は頻繁に 耳にする。  コーポレート・ガバナンスという言葉は,日ごろ全く使わない。しかし,部長になってからは,株主総会の資料作り等に関わるので,「会社の意思決定」という意味 では,意識している。 質問②  トップが直接語らないと,トップの考えが現場に伝わらない状況。現社長はさまざまな媒体を使って従業員に考えを伝えていて好印象。前社長は,そ
表 8 移行の意思決定を行う主体に関するコメント コメント A 氏 ガバナンス体制移行の意思決定は,代表取締役等経営トップが行う。ほぼ「マネジメント的発想」でガバナンス体制 を選択する。 B 氏 現社長のリーダーシップにより移行,ガバナンス体制 (型) を選ぶのは「経営トップ」。 C 氏 ガバナンス体制移行の意思決定は,経営トップが行う。 D 氏 経営トップが意思決定をしなければ,何も変わらない。勇気と決断が必要。  (出所)市古・浅井(2018),p.23 の図表 6。 図 5 最重視する利益層 (出所)

参照

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