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物語生成課題における共同符号化が記憶を促進する条件の検討―2段階の交渉過程に着目して―

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物語生成課題における共同符号化が記憶を促進する条件の検討

―2段階の交渉過程に着目して―

村 上   祥・佐 藤 浩 一

群馬大学教育実践研究 別刷

第38号 307~312頁 2021

群馬大学共同教育学部 附属教育実践センター

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物語生成課題における共同符号化が記憶を促進する条件の検討

―2段階の交渉過程に着目して―

村 上   祥

1)

・佐 藤 浩 一

2) 1)高崎市立滝川小学校 2)群馬大学大学院教育学研究科教職リーダー講座 物語生成課題における共同符号化が記憶を促進する条件の検討 村上 祥・佐藤浩一

When collaborative encoding facilitates memory in a story making task:

Focusing on two stages of negotiation process.

Sachi MURAKAMI

1)

, Koichi SATO

2)

1)Takigawa Elementary School, Takasaki

2)Program for Leadership in Education, Graduate School of Education, Gunma University キーワード:共同符号化、記憶、物語生成、交渉

Keywords : Collaborative encoding, Memory, Story making, Negotiation (2020年10月30日受理) 1 問題と目的 1.1 共同作業を検討する記憶の実験パラダイム  人はしばしば他者と共同して課題に取り組んだり、 問題を解決しようとしたりする。しかしそうした取り 組みが必ずしも、優れた結果をもたらすとは限らない (有馬,2019)。「三人寄れば文殊の知恵」という諺は、 三人が集まることで、個人の知恵を合わせるよりも素 晴らしい知恵が生まれることを意味している。しかし 現実には、三人の知恵を単純に寄せ集めたレベルで終 わることもあるし、それより劣る結果になることもあ る。  記憶研究において共同作業の有効性や限界を検討す るために、二つの実験パラダイムが開発されてきた。 一つは共同想起パラダイムである。これは単語リスト などを個々人で記銘した後で、2~3人が共同で再 生するという手法である。その結果を個人で再生した 結果と比較すると、共同再生の成績は個々人の再生 を合算したよりも低くなることが多い。このことは共 同抑制と呼ばれている(Nokes-Malach,Richey, & Gadgil,2015)。  もう一つが、共同符号化パラダイムである。この パラダイムでは共同群と個人群が設定される。共同 群は、2~3人が共同で課題に取り組んだ後で、そ の課題の内容について個々人で再生する。個人群 は、課題から再生まで一貫して個人で取り組む。両 者の再生成績を比較すると、共同群は個人群より劣 る こ と が 多 い(Barber,Rajaram, & Aron,2010; Barber,Rajaram, & Fox,2012;Barber,Rajaram., & Paneerselvam,2012)。  これら先行研究の結果は、共同での学習活動がなか なか有効に機能しないことを示している。本研究は共 同符号化パラダイムにおいて、共同群の再生成績が個 人群を上回る条件を探る。すなわち、個人よりも共同 で課題に取り組む方が記憶が促進される条件を検討す ることを目的とする。今日の学校現場ではペアやグ ループでの学習活動が多く取り入れられている。共同 での取り組みが記憶を促進する条件が明らかになるな 群馬大学教育実践研究 第38号 307~312頁 2021

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308 村上 祥・佐藤浩一 らば、ペア活動やグループ活動などの有効性を高める 手立てについても、ヒントが得られるであろう。 1.2 物語生成における共同符号化と「交渉」の過程  共同符号化パラダイムを用いた先行研究の手続きと 結果を見てみよう。佐藤・亀山(2018)では、単語10 語をつなげて、一つの物語を生成するという課題が用 いられた。個人群の参加者は、一人で物語を生成し た。ターン群の参加者は互いに相談することはなく、 機械的に交互に発言しながら物語をつなげていった。 相談群の参加者は互いに相談しながら物語を生成し た。そのうえで、物語の生成に用いられた単語の偶発 再生が求められた。再生の結果、ターン群の成績は最 も低かった。相談群の成績はターン群を上回ったが、 個人群の成績と同じレベルであった。すなわち、相談 群のように実質的な話し合いを行うことで、ターン群 のような機械的な話し合いを上回る記憶成績が得られ たものの、個人で取り組む群を上回ることはなかっ た。ここからペアやグループ活動の意義が疑問視され る結果となった。  一方、有馬・中條・青山(2010)は、やはり二人が 相談しながら単語10語をつなげて物語を生成し、最後 に偶発再生を求めるという手続きで実験を行い、共同 群の再生成績が個人群を有意に上回るという結果を報 告している。佐藤・亀山(2018)と有馬ら(2010)の 間で、重要な結果に食い違いが見られた理由は不明で あり、共同群の成績が個人群を上回る条件を詳細に検 討することが求められる。  有馬ら(2010)は共同で物語を生成する際に、メン バー間あるいは個人の中で「交渉」というメカニズム が働くことで記憶が促進されたと考察している。交渉 は2段階のステップを踏む。まず、共同で物語を生成 する際に、メンバーがそれぞれアイディアを出し合う ことで、個人で取り組むよりも多様な発想に接する。 それにより、一つ一つの単語に豊かな情報が付与され 精緻化されることになる。さらに二人が意見の一致を 見るまで物語生成に取り組むことから、豊かな情報を 個々人がそれぞれの知識や経験と擦り合わせて、各自 のスキーマに組み込んで再体制化する。このように有 馬らは、共同で話し合うことで情報が増える(第1段 階)、個人で情報を再体制化する(第2段階)、という 2段階で共同符号化の効果を解釈している。 1.3 本研究の目的  有馬ら(2010)の交渉説に基づくならば、この交渉 というメカニズムがより一層機能する条件を設定する ことで、共同符号化の効果が高まると予想される。有 馬ら(2010)の共同群や佐藤・亀山(2018)の相談群 では、参加者は二人で一つの物語にまとめた。この方 法では社会的手抜きが生じる可能性がある。すなわ ち、必ずしも参加者一人一人が全ての情報を吟味し、 自分のスキーマに十分に適合するよう再体制化すると は限らない。  そこで本研究では、交渉の第2段階が十分に機能す るよう手続きを改訂し、その効果を検討する。本研究 の共同群では、二人で相談して物語の枠組まで生成 する。その後はその枠組に従って、個々人がそれぞれ に物語を完成させるのである。この手続きを用いた場 合、個々人は物語の枠組を相談する過程で接した情報 を、自分の知識や経験と擦り合わせて再体制化しなけ れば、物語を完成できない。これにより交渉の第2段 階を確実にすることで、物語作成に用いた単語の記憶 が促進され、その再生は個人群を上回ることが予想さ れる。  ところで物語生成課題を用いた先行研究(Barber, Rajaram, & Aron,2010;佐藤・亀山,2018)では、 生成された物語の一貫性、すなわち文と文が結びつい て物語としてまとまっている程度が高いほど、再生成 績が優れていた。そこで本研究でも、生成された物語 の一貫性と再生成績との関連を検討する。 2 方法 2.1 実験計画  符号化の群(個人群、共同群)が参加者間で操作さ れた。 2.2 実験参加者  国立A大学の1年生、男性19名、女性33名の合計52 名が実験に参加した(平均18.7歳、SD=0.56)。特定 の専攻が一方の群に偏らないように配慮した上で、個 人群と共同群に26名ずつを割り当てた。共同群は2名 1組で13ペアが構成された。共同で課題に取り組みや すいよう、2名の専攻は同じにした。

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309 物語生成課題における共同符号化が記憶を促進する条件の検討 2.3 材料  名詞10語のリストを5リスト作成した。リスト内の 単語には、杉島・岩原・賀集(1996)と藤田・齋藤・ 高橋(1991)による基準表から、平仮名清音4~5文 字の高熟知価名詞を無作為に選んだ。基準表での表記 は全て平仮名であったが、参加者が分かりやすいよ うに一部を漢字に直した(例:「はやうまれ」「早生ま れ」)。また、各リストは無関連な単語10語で構成し た。さらに、使用する単語は同じだが、リスト内での 順番を入れ替えたものを2パターン用意し、これを参 加者間で入れ替えて使用した。 2.4 手続き  実験は群ごとに行われた。個人群、共同群ともに1 回の実験セッションに2名1ペアで参加した。個人群 も2名1ペアで実験を行ったのは、他者が存在してい るという状況を共同群と揃えるためである。  単語リストが印刷された小冊子が参加者に配布され た。1頁に一つのリスト(10名詞)が印刷されてお り、名詞には①~⑩の番号が振られていた。参加者に は、一つの名詞から1文を作成し、①から⑩まで順に つなげて一つの物語を作成することが求められた。  個人群の参加者は一人でこの課題に取り組んだ。10 語リスト「①打ち合わせ、②生き物、③永遠、④空 色、⑤寄り道、⑥未確認、⑦探索、⑧一通り、⑨通 信、⑩工作」を例に、「①その日は部活の打ち合わせ があった。②生物部なので何の生き物を飼うのか話し 合った。……」という具合に物語を作成していくこと が説明された(下線部はリストで提示された語であ る、以下同様)。  共同群の参加者ペアにも同じリストを用いて、教示 が与えられた。二人で相談して物語の枠組を作るこ と、その後に個人で物語を完成することが説明され た。相談の例として、  A「生き物と打ち合わせだから生物部の話かな。」  B「空色と寄り道だから部活後の帰りの様子を表し てそうだね」 という会話例が示された。相談する際には相手に同調 するのではなく自分の考えを伝え合うこと、その後は 相談した内容を参考にしながら、自分の考えで物語を 完成させることが強調された。物語の枠組がある程度 できあがったと実験者が判断した時点で相談を打ち切 り、各自で物語を完成させるよう指示が与えられた。  練習に続いて本試行5試行が行われた。予備実験の 結果に基づき、物語生成の時間は1試行あたり9分間 とした。共同群での話合いの様子は、参加者の許可を 得て録音した。5試行が終了した後、参加者は妨害課 題として、新生児の発達に関するDVDを20分間視聴 した。その後、実験で提示された全ての名詞の偶発自 由再生に、個々人で取り組んだ。再生テストは10分間 であり、実験全体では、85分~90分を要した。 2.5 倫理的配慮  参加者には、実験参加は任意であり、回答を拒否し たり中断できること、拒否したり中断したりしても不 利益は生じないことを説明した。以上のことに同意を 得たうえで、手続きの説明を行い、実験を開始した。 3 結果と考察 3.1 共同群での相談・物語生成の例と要した時間  最初に共同群での相談と生成された物語の例を示 す。あるペアは、リスト「①混乱、②早生まれ、③照 れ隠し、④大慌て、⑤飼い主、⑥本心、⑦足音、⑧栄 光、⑨お気に入り、⑩血液」について次のように相談 した。  A「飼い主だから犬が主人公かな」  B「犬が主人公か。お手とおかわりが分からなくて 混乱してたんじゃない?」  A「いいね。お手とお座りが分からなくて照れ隠し のために一回まわるとか?」  B「あっ、これは?照れ隠しのために死んだふりし たら飼い主が大慌てしちゃったんだよ。」  A「それだ。それで、本心は死んだふりして申し訳 ないって思ってるんだね。」  B「そのときお母さんの足音がして、エサがもらえ ると思ったんだ。」  A「栄光ってなんだ?」  B「ペット選手権とかかな。」  A「いいね。ペット選手権での景品でもらったお気 に入りのエサだったんだ。」  B「そのエサ食べつづけたら、血液がサラサラに なったんだ。」  この時点で、物語の枠組ができたと実験者が判断

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310 村上 祥・佐藤浩一 し、相談を打ち切った。その後は参加者それぞれが物 語を考え、最終的に次の物語が生成された。  参加者A「犬の僕はお手とお座りが難しくて混乱し てしまった。僕は早生まれです。僕は間違えて恥ずか しいのを照れ隠ししようと死んだふりをした。大慌 てで僕に駆け寄ってきたジョニー。ジョニーは僕の飼 い主の男の子!僕の本心は申し訳なさでいっぱいだっ た。でも、ママの足音とドッグフードがぶつかる音が 聞こえてきて、尻尾が止まらない!あのドッグフード はドッググランプリで一位をとった栄光の品なんだ! 僕のお気に入りなの!それを食べているから血液もこ んなにさらさらなんだよ!」  参加者B「犬はお手とお座りが分からなくて混乱し ていた。犬は早生まれだった。技ができない照れ隠し として犬は死んだふりをした。それにより、大慌てし てしまった者がいた。飼い主である。本心では異なる が死んだふりを続けた。すると飼い主の母親の足音が した。母親は栄光の賞を受賞した高級なドッグフード を持ってきた。犬は起きあがってそれを食べ、お気に 入りになった。それを食べ続けた結果、血液がサラサ ラで健康になり飼い主も安心した。」  共同群が相談に用いた時間は、平均134.8秒(SD= 28.6秒)であった。すなわち共同群は平均して2分15 秒程度の相談で枠組を作り、残りの6分45秒程度で各 自が物語を完成させたことになる。 3.2 再生成績  正再生数(0~50)は、個人群が平均29.31(SD= 7.45)、共同群が平均36.77(SD=5.82)であった。t 検定の結果、群間の差が有意であった(t=3.95,df =50,p<.01)。なお、参加者の中には、5つのリス トの一部で制限時間内に物語を完成できなかった者 もいた。こうした参加者を除いて、全てのリストで 物語を生成できた参加者(個人群14人、共同群15人) について再生数を検討した。その結果、個人群が平 均29.00(SD=8.19)、共同群が平均35.47(SD=6.33) であり、やはり有意差が見られた(t=2.30,df=27, p<.05)。以上より、仮説の通り、共同群の再生が個 人群より優れていることが示された。 3.3 物語の一貫性  どの群の参加者が生成したか分からないように物語 を並べ替えたうえで、2名の評定者が独立に1(一貫 性がとても低い)~5(一貫性が非常に高い)の5段 階で評定した。文と文のつながりが悪く物語としての まとまりがない場合や、言葉が不足していて文の意味 がすぐに理解できない場合などは、その程度に応じて 低く評定をした。2名の評定者間の相関は、r=.674 と高かった。そこで2名の評定を平均し、その物語の 一貫性評定値とした。そのうえで、各参加者が作成し た5つの物語の一貫性評定の平均を、その参加者の一 貫性得点とした。この一貫性得点は個人群が平均3.27 (SD=0.85)、共同群が平均3.53(SD=0.58)であり、 差は有意ではなかった(t=1.25,df=50)。また、再 生成績と同様に、5試行全てにおいて時間内で物語を 完成させた参加者のみで、一貫性得点を比較した(個 人群14人、相談群15人)。個人群が平均3.28(SD= 1.04)、共同群が平均3.60(SD=0.64)であり、差は 有意ではなかった(t=0.97,df=27)。  個人群と共同群をまとめて、各参加者の一貫性得点 と再生成績の相関を求めた。相関係数はr=.298(df =50,p<.05)であり、有意な相関が確認された。 また全ての試行で物語を完成できた参加者に限定し ても、有意な相関が確認された(r=.421,df=27,p <.05)。  従って、一貫性の高い物語を生成できた参加者ほ ど、再生も優れている傾向にあると言える。しかし個 人群と共同群の間に一貫性の差はなかった。これは共 同群の参加者も最終的には、個々人で物語を完成させ たことによるのであろう。 3.4 共同群の再生が優れていた理由  以上の結果から、共同群での再生成績が優れていた 原因を、生成された物語の一貫性で説明することはで きない。  共同群が優れていた結果を、2段階の交渉の過程に 即して考えると、次のように解釈できる。まず第1段 階では、共同群では個人群に比べて多様な情報が二 人の参加者から出され、単語に豊かな情報が付与され る。そして第2段階では、各参加者がそれらの情報を 自分のスキーマに組み込んで再体制化し、一つの物語 として完成させる。共同群では個人群に比べて、より 多くの情報が単語に付与されているため、それらを再 体制化し物語にするには、個人群よりも多くの認知的

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311 物語生成課題における共同符号化が記憶を促進する条件の検討 努力が必要となる。情報の意味的な処理に認知的努 力を費やすほど、記憶の保持が促進されることから (神谷,1986)、多くの認知的努力を費やして再体制 化したことが共同群の記憶成績を高めたと解釈でき る。 3.5 授業場面への示唆  本研究は物語生成と再生テストという限定的な状況 ではあるが、共同での活動が個人を上回る成果をもた らしており、授業実践にも有益な示唆を与える。共同 符号化の実験パラダイムを授業場面にあてはめると、 ペアやグループで学習活動に取り組んだ後に、個人の 知識がテストされる場面に似ていると言える。今回の 結果から、共同で課題に取り組むことが個々人の学習 を促進するには、共同で考える段階と、それを踏まえ て個人で考える段階の両方で、認知的努力を十分に費 やして取り組むことが必要であると言える。具体的に は次の二つの条件があげられる。  第一に、一人で考えるよりも多くの情報が話合いの 場に提案されることである。そのためには話合いの時 間を十分にとったり、メンバー構成を工夫したりし て、多様な考えが出ることが重要である。話合いがス ムーズに進行することは一見すると好ましいが、同じ 意見のメンバーが十分な検討を踏まえずに同意してい る状況が考えられる。そうした状況は交渉の必要性を 引き下げ、学習に逆効果を及ぼすかもしれない。また 本研究の共同群では最初から話合いに入ったが、授業 では物語生成より難しい課題が扱われることが多いだ ろう。そうした状況では、まず個人で考える時間を確 保したり、考えるための支援を教師が提供することも 大切である。  第二に、話合いの場で出された情報を、自分の知識 や経験と擦り合わせて考えたり評価したりして、最後 は自分の判断でまとめることである。授業場面を参 観していると、話合いの指導は熱心に行われるが、そ のあと個々人で再考する場面での指導が不十分なケー スもある。また自分の意見を曲げずに他者の意見を簡 単に却下するケースも見受けられる(佐藤・須永・田 村,2020)。他者との話合いをもとに考えを広げると ともに、それらを自己のスキーマと関連付けて深めら れるような指導が重要であると言えよう。 3.6 今後の課題  最後に、本研究を今後どのように展開させていくこ とが必要か述べる。  本研究では交渉の第2段階を確実なものとすること に焦点を当てた。今後は第1段階に着目した検討も必 要である。例えば、メンバーの人数を2人ではなく3 ~4人としたり、異なる発想のメンバーを組み合わせ たりすることで、より多様な情報が提示され、共同の 有効性が高まると予想される。ただし情報が増えすぎ ると第2段階で物語にまとめにくくなり、効果が低減 するかもしれない。  また、共同群での相談の内容やプロセスを検討し、 最終的な再生成績と関連付けて分析することも重要で ある。これにより、スムーズな話合いや反対に衝突の 生じた話合い、メンバー間の意見の一致や齟齬など、 交渉に関わる変数が個人の記憶成績にどう影響するか が検討できる。  さらに、物語生成以外の課題を用いて、本研究の結 果の一般性を確認することも必要である。授業場面で 扱われるものにできるだけ近い課題を設定すること で、授業場面でのペアやグループ活動に資する知見が 得られるだろう。 引用文献 有馬淑子(2019).集団と集合知の心理学 ナカニシヤ出版 有馬比呂志・中條和光・青山佳矢(2010).符号化時の協同性 が単独想起に及ぼす効果 協同と教育,6,12-20.

Barber, S. J., Rajaram, S., & Aron, A. (2010). When two is too many: Collaborative encoding impairs memory. Memory & Cognition, 38, 255-264.

Barber, S. J., Rajaram, S., & Fox, E. B. (2012). Learning and remembering with others: The key role of retrieval in shaping group recall and collective memory. Social Cognition, 30, 121-132.

Barber, S. J., Rajaram, S., & Paneerselvam, B. (2012). The collaborative encoding deficit is attenuated with specific warnings. Journal of Cognitive Psychology, 24, 929-941. 藤田哲也・齊藤智・高橋雅延(1991).ひらがな清音5文字名

詞の熟知価について 京都橘女子大学研究紀要,18,79-93. 神谷俊次(1986).単語記憶に及ぼす心的努力の効果 心理学研

究,57,149-155.

Nokes-Malach, T. J., Richey, J. E., & Gadgil, S. (2015). When is it better to learn together? Insights from research on collaborative learning. Educational Psychology Review, 27, 645-656.

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312 村上 祥・佐藤浩一 佐藤浩一・亀山梓(2018).共同符号化におけるコミュニケー ションの形態が個人再生に及ぼす影響―物語生成課題を用い た検討― 協同と教育,14,31-42. 佐藤浩一・須永真佐恵・田村充(2020).中学校国語科「読む こと」における根拠・理由・主張の3点セットと相互説明の 有効性 読書科学,61,179-190. 杉島一郎・岩原昭彦・賀集寛(1996).ひらがな清音4文字名 詞4160語の熟知価 人文論究,46,53-75. 付記  本研究は第一著者による令和元年度群馬大学教育学部卒業研 究「物語生成における共同性が偶発再生を高める条件の検討~ 二段階の交渉過程に着目して~」に基づき、第二著者がまとめ 直したものである。 (むらかみ さち・さとう こういち)

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