論 文
ベンダーエレメントによる砂の液状化時のせん断波速度測定
後藤聡 松枝修平 森井慶行
(平成11年8月31日受理)
Shear Wave Velocity Measurement of Sands
during Liquefaction by Bender Elements
SatoshiGOTO ShuheiMATSUEDA YoshiyukiMORII
Abstract The velocity of shear wave propagation of sand was measured by using a pair of piezo− ceramic bender elements, fixed at the top cap and pedestal of the triaxial apparatus. The element at the top cap operated as a wave transmitter, while the one located at the pedestal operated as a wave receiver. Maximum shear modulus Gmax of soil can be calculated from the shear wave velocity Vs as Gmax=ρ・γi whereρis the total mass density of the soil. Maximum shear modulus Gmax of soils during liquefaction is very important to design the underground structure considering the soil−structure interaction. In order to investigate the changes of maximum shear modulus during liquefaction tests in the laboratory, shear wave velocities were measured by bender elements during liquefaction tests of sands. Moreover, the changes of shear wave velocities during isotropic compression and post・liquefaction were also measured. The relationships between shear modulus and effective confining pressure of Toyoura sand and undisturbed Edo river sand were obtained by using bender elements. 1.はじめに 土のせん断剛性を簡便に求める方法として, ベンダーエレメントによるせん断波の測定1)∼ 5)が注目されている。ベンダーエレメントの 詳細は文献(1)に詳しいが,ベンダーエレメン トとは,圧電素子を複数組み合わせて電極につ なぎ電気的な信号をエレメントの微小な振動に 変換し,せん断波の発生装置として用いたもの である。通常のベンダーエレメントの大きさは, *土木環境工学科,Department of Civil and Environmental Engineering **土木環境工学科,博士前期課程1年 ***大成建設(株)東京支店
厚さ1mm横10mln縦20mm程である。さらに
逆の原理で別のベンダーエレメントがせん断波 を受信すると微小な電気信号が発生することに より,せん断波の受信装置としても用いること ができる。せん断波の発生および受信装置とし てのベンダーエレメントは,それぞれ構造は異 なるが,大きさに相違は無い。 ところで,兵庫県南部地震以来,液状化し た砂のせん断剛性について実験的な検討が行わ れている。これは液状化した砂が流動すること により杭のような地中構造物が多大な被害を受 けたため,液状化した砂が液体なのか固体なの かといった論争に対する実証データを得るため である。もし液状化した砂が液体であれば,せ平成11年12月 山梨大学工学部研究報告 第50号 ん断剛性はゼロで粘性流体として液状化砂を扱 わなければならない。一方,液状化した砂にせ ん断剛性が認められれば,液状化砂を剛体とし て考え従来のバネにより液状化砂と地中構造物 の相互作用を考えることができる。これまでの 研究では,液状化に至る砂のせん断剛性は主に 応カーひずみ関係により求められてきたが,こ の方法は液状化のような小さなせん断剛性を求 める方法としては適切ではない。液状化中の地 盤の物性がどのように変化するかについては, 適切な方法がないため未解明な部分が多い。そ こで,本研究では,液状化中および液状化後の 砂のせん断剛性の変化をベンダーエレメントに より計測することに成功したので報告する。さ らに,液状化中だけではなく,等方圧密中や液 状化後の応力回復中におけるせん断剛性につい ても検討する。 2.実験に用いた砂および実験方法 実験に用いた砂は,豊浦砂および不撹乱江 戸川砂の2種類である。不撹乱江戸川砂は,原 位置地盤凍結工法により採取された。試料の採 取場所等は文献6)に詳しいが,採取された深 度は13.3m, N値25∼30, PS検層によるS波 速度は330m/secである。砂分が全体の75%以 上を占め,礫分,細粒分はともに10%以下で ある。この試料の物理特性は土粒子の密度ρs が2.724g/cm3,間隙比eが0.826,相対密度Dr が86.1%である。 豊浦砂を用いた三軸供試体の寸法は,高さ/ 直径が10cm/5cmであり,空中落下法により作 成した。作成した供試体は,9.8kN/m2の負圧 により自立させ,CO 2および脱気水により飽 和させた。飽和完了後,有効拘束圧を98kN/m2 まで9.8kN/m2間隔で等方圧密し,圧密完了後 2.94kN/m2まで除荷した。除荷後,98kN/m2ま で再び等方圧密した。各圧密応力レベルにおい てベンダーエレメントによりせん断波速度を測 定した。圧密完了後,飽和度がほぼ100%であ ることを確認するためにB値を測定し,0.96 以上であることを確認し,繰返し非排水三軸試 験を行なった。なお,せん断前の供試体の間隙 比は0.666(相対密度D,=84%)であった。液 状化試験中のせん断剛性を求めるために,ベン ダーエレメントを用いてせん断波速度を測定し た。なお,載荷周波数は,試験中の計測精度を 高めるために0.01Hzとした。軸ひずみ両振幅 が5%以上となったことを確認し,試験を終了 した。試験終了直後のせん断波速度も測定した。 さらに,有効拘束圧がゼロに近い状態から試験 装置の排水コックを開閉し,供試体を排水させ, 有効応力が回復する時のせん断波速度の変化を 測定すると同時に供試体の体積変化も測定した。 不撹乱江戸川砂の場合も豊浦砂と同様な実験を 行ったが,供試体の高さ及び直径は12cm/6cm である。 3.ペンダーエレメントによるV,の測定 ベンダーエレメントを設置した試験装置の 構成図を,図一1に示す。三軸試験装置のキャ ップ・ペデスタルにベンダーエレメントを設置 し,圧密中,液状化試験中および液状化後の有 効応力回復過程における砂のせん断剛性の変化 ペンダーエレメント (発信) Degital Recorder 紺レメント Function Generator 極性逆転スイyチ 図一1 ペンタ“ 一一一エレメントによるせん断波速度の測定 0.6 0.4 パル波 ピ5k康.... 破線:入力波 ..タ線:受信波 iεo・2
闘・
蝋:1:儲一_
−0.6−0.500.511.52
時間 (msec) 図一2 せん断波到達時刻の測定例を測定した。ベンダーエレメントへの入力波は 電圧を10Vとし,ファンクションジェネレー タを用いて5kHzのサイン波およびパルス波を 発信させた。受信波はベンダーエレメントの出 力電圧をプレアンプで100倍に引き伸ばして測 定した。なお,受信波については,フィルター をかけると出力が低下し,受信時の立ち上がり が不明瞭になるため,フィルターは一切用いて いない。データのサンプリングは圧密中および 試験後は200kHz,試験中はデジタルレコーダ ーのチャンネル数の制約により100kHzとした。 ベンダーエレメントによるせん断波速度の 測定における,せん断波伝播の有効距離と到達 時刻については統一的な見解が無いようである が,本報告では,次のように定義した。①せん 断波伝播の有効距離は,2つのベンダーエレメ ントの先端間の距離とした。圧密中および,繰 り返しせん断後の有効距離は,キャヅプ上端に 取りつけた非接触型変位計を用いて測定し,液 状化試験中の有効距離は,セル外に設置した変 位計を用いて測定した。②到達時間は,図一2 に示すように,発信の開始時刻と受信した波形 における最初の山の時刻とした。 4.試験結果 4.1 豊浦砂のせん断剛性 図一3(a)に,豊浦砂の場合の等方圧密・除荷・ 再載荷中,および繰り返し載荷により液状化し た供試体の有効応力回復時の間隙比と有効拘束 圧の関係(圧密曲線)を示す。液状化試験後の 有効応力回復時の圧密曲線は,供試体への排水 コヅクの開閉により有効応力を徐々に回復させ, その時の体積変化を測定することにより求めた。 液状化試験前の圧密曲線と液状化後の圧密曲線 は,平均有効応力の範囲は異なるが,勾配はか なり似ている。つまり,液状化の前後で体積弾 性係数は大きく異ならないとことが分る。 図一3(b)に,図一3(a)の圧密曲線に対応するベ ンダーエレメントで測定したせん断剛性の拘束 圧依存性を示す。液状化試験前のせん断剛性の 拘束圧依存性と,液状化試験後のせん断剛性の 拘束圧依存性は同じ傾向であることが分る。つ まり,圧密曲線と同様にせん断剛性の拘束圧依 ⇔ 存性についても,液状化前後の状態で大きく異 ならないことが分る。 図一4(a)および図一4(b)に,繰返し載荷中の有 効応力経路と応カーひずみ関係をそれぞれ示す。 なお,図中には,ベンダーエレメントによりせ ん断波速度を測定した状態もプロヅトしてある。 図一4(a)より,繰返しせん断応力による過剰間 隙水圧の発生によって,平均有効応力の低下が 認められるが,密な砂の特長であるサイクリヅ クモビリティが顕著に現れており,せん断応力 がゼロの時だけ有効応力はゼロとなるが,繰返 0.68 0.67 MO.66 0.65 0.64 0.1 1 10 100 平均有効応力 p’(kN/m2) 図一3(a) 圧密載荷および除荷時と 液状化試験後のe 一一 log.pt曲線 140 (120 曳 邑… 蓉 oE 80
蓋ω
∂c・
嘔 20 0 0.1 豊浦砂・空中落下法 ● 圧密時 宦@ 液状化試験後 { @ ●●兵 { ∼ k ●._ .i.一一 ●O ∂ 「 n 図一3(b) 1 10 100 平均有効応力 p’(kN/m2) 平均有効応力とせん断剛性の関係平成11年12月 山梨大学工学部研究報告 第50号 しせん断応力によって有効応力は回復している。 また,図一4(b)より,圧縮側では軸ひずみがあ まり生じず,伸張側でのみ軸ひずみが増加して いることが分かる。 図一5(a)に,液状化試験時,等方圧密時お よび液状化後の有効応力回復時におけるせん断 剛性の拘束圧依存性を示す。液状化試験中のせ ん断剛性を,(1)軸差応力がゼロの時,(2) 軸差応力が圧縮側(△),および(3)軸差応 力が伸張側(口)の3つに区別して示している。 さらに,軸差応力がゼロの時についても,正弦 波の圧縮側から伸張側に変化する場合(○)と, 伸張側から圧縮側へ変化する場合(●)の2つ に区別して示している。図一5(a)に示すせん断 剛性の拘束圧依存性より,同じ有効拘束圧でも せん断応力がゼロの時,圧縮時および伸張時で せん断剛性が異なることが分る。これは,同じ 有効拘束圧でも,圧縮時と伸張時でせん断ひず み履歴が異なるためだと考えられる。せん断剛 性のひずみ依存性については後述するが,図一 5(a)において,せん断応力がゼロの時でも,圧 縮側から伸張側にせん断応力が変化する場合は 圧縮側のせん断剛性とほぼ同じ傾向であるが, 伸張側から圧縮側にせん断応力が変化する場合 は伸張側のせん断剛性に近いことが分かる。さ らに,等方圧密時および液状化後の有効応力回 復時のせん断剛性と有効拘束圧の関係(実線と 破線)は,液状化試験時における圧縮側の値と 同じ傾向であることが分る。また,液状化試験 終了後の供試体(p’=0.5kN/m2,ε。=2.5%時)の せん断波速度を測定した結果,42m/secという 小さい値であった。 図一5(b)に,液状化試験中のせん断剛性と軸 差応力の関係を示す。圧縮側と伸張側において は,軸差応力の絶対値に比例してせん断剛性が 大きくなっていが,これは軸差応力の変化と同 時に平均有効応力も変わっているためである。 次に,液状化試験時のせん断剛性のひずみ 依存性を検討するために,液状化試験時のせん 断剛性と軸ひずみの関係を図一5(c)に示す。図一 5(b)と同様に,圧縮側から伸張側にせん断応力 が変化する場合は,圧縮側のせん断剛性と同じ ひずみ依存性を示すことが分る。一・方,伸張側 から圧縮側にせん断応力が変化する場合は,伸 張側のせん断剛性のひずみ依存性に近い実験結 果となっている。 4.2 不撹乱江戸川砂のせん断剛性 豊浦砂の場合と同様に,不撹乱江戸川砂の液 状化試験を実施した。応カーひずみ関係や有効 応力経路は紙面の都合上示せないが,豊浦砂の 場合と同様にサイクリヅクモビリティの現象を 示した。液状化試験中に求められたGma.と〆 の関係を図一6(a)に示す。この図より以下のこ とがわかる。(1)液状化試験中の軸差応力g≒0 におけるGmaxとp’の関係は圧縮側におけるGma. 80 60
(40
N∈i ≧2・彰o
毒⑳
袈魂
一60 一80 0 20 40 60 80 100 120 平均有効応力 p’(kN/m2) 図一4(a)応力経路とペンタ㌧エレメント測定点 80 60(40
N日\20
z
曽0
束 但.20 −40 ・60 一80 一5 図一4(b) 一4 −3 −2 −1 0 1 ・ 軸ひずみ εa(%) 応カーひずみ関係とベンタ㌧エレメント測定点とp’の関係とほとんど同じである。(2)伸張側 におけるG_とp’の関係は,q≒0, q≒60kPa およびq≒120kPaにおけるGmaxと〆の関係で それぞれ異なる。 液状化試験中の軸差応力q≒0におけるGma、 とp’の関係,液状化試験前の等方圧密時にお ける(㌔。.とp’の関係,および液状化試験後に おいてコヅクの開閉によって供試体中の水を排 水することにより得られた等方圧密試験におけ るGmaxとp’の関係を,図一6(b)に示す。この図 は,液状化試験も含めた等方応力状態における Gma.とグの関係を示したものである。紙面の 都合上割愛しているが,液状化試験前の圧密, 除荷および再載荷においてGmaxとp’の関係は ほとんど同じであった。図一6(b)より以下のこ とがわかる。(1)液状化試験中におけるGma.は p’がおよそ30kPaまでは等方圧密時のG_とp’ の関係とほぼ等しい挙動を示す。しかし,p’が 30kPa以上では,その傾きが増加している。軸 ひずみの著しい増加が,せん断波速度の低下を まねいていると思われる。(2)液状化試験によ りp’がほぼ0となってもGm。xは10kPa程度で あり0にはならない。つまり,間隙水圧が上昇 し,ひずみが急激に増加する液状化の状態でも, せん断波の伝播が認められた。(3)液状化試験 前と液状化試験後で,Gmaxとp’の関係が,液 状化試験後の供試体において有効応力を増加さ
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益 40 …麟囎口 伸 張 液状化試験前 @ (q=o)→」 圧密時 ト ……… t状化後 . ’ @, ’ f . 20 @00 80 ω ω 201 ’。騨…□
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@i[] ト 寸 ← ! 液状化試験後,’∠∼/ (q=0) 豊浦砂,空中落下法’ せても,液状化試験前の有効拘束圧(132.3kPa) でのGma.よりも,小さな値が得られた。これ は,液状化により砂試料の堆積構造が変化した ものと思われる。 5.結論 ベンダーエレメントを用いた実験により以下 のことが分かった。 (1)等方圧密中,液状化試験中および液状化 140(120
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口 伸 張 ⇔ i△ 口i △i△ 』: 会△ti 2 0 20 40 60 80 100 平均有効応力 p’(kN/m2) 図一5(a)平均有効応力とせん断剛性の関係 (圧密時,液状化試験中,液状化試験後) 豊浦砂,空中落下法i 一.P00 −50 0 50 軸差応力 q(kN/m2) 図一5(b) 液状化試験中の 軸差応力とせん断剛性の関係 140 100(120
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