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グローバル・バリュー・チェーンと労働 (特集1 開発途上国、地域の理解の深化に向かって -- 2017年度アジア経済研究所の研究プロジェクト)

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Academic year: 2021

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グローバル・バリュー・チェーンと労働 (特集1 開

発途上国、地域の理解の深化に向かって -- 2017年

度アジア経済研究所の研究プロジェクト)

著者

佐藤 仁志

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

260

ページ

4-4

発行年

2017-05

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00048944

(2)

特集1

開発途上国、地域の理解の深化に向かって

―2017年度アジア経済研究所の研究プロジェクト― 経済のグローバル化の労働への影響が「格差」や「分 配」をキーワードに世界的に注目を集めています。途 上国では地場企業とそこで働く人々がグローバル経済 にどれだけ関わっていけるかが課題であり、また、所 得や労働環境の改善が確保されることも重要です。こ のプロジェクトでは、企業の人的資源管理、人々の労 働の価値観、労働環境に着目して、経済のグローバル 化が労働に与える影響を分析しようとしています。 ●研究プロジェクトの問題意識 企業が国境を越えて「適地生産」や「適地調達」を 進めた結果、グローバル・バリュー ・チェーンなど と呼ばれる国際的な生産ネットワークが形成されてい ます。途上国にとっては、先進国企業が供給する洗練 された製品の生産活動に参加することで、高賃金で技 術や知識の移転をともなう「良い仕事」を得ることが 期待されます。 一方、懐疑的な見方もあります。そもそも途上国の 企業がグローバル・バリュー ・チェーンに参加する のは困難であるとしばしば指摘されます。「良い仕事」 は期待するほど得られないということです。また、先 進国では国内労働の二極化が進むという指摘がありま す。労働の二極化は所得格差を拡大し、社会の一体性 が損なわれることが懸念されます。さらに、直接投資 の誘致競争が先進国・途上国を問わず労働保護の水準 を低下させるという指摘もあります。 この研究プロジェクトは、企業の国際化が国内の労 働にどのような影響をもたらすかを明らかにし、政策 立案に役立つ分析を提供することを目標としています。 具体的には、途上国の地場企業の国際化とその人的マ ネジメント慣行、国際貿易と人々の労働への価値観の 変化、企業の国際化と労働保護に関する政策を研究の 柱としています。 ●研究の斬新さや独自性について マネジメント慣行、特に人的資源管理という視点を 取り入れていることです。最近の貿易理論では、高い 生産性の企業ほど国際化しやすいことが分かっていま す。では何が企業間の生産性の違いを生むのでしょう か。生産性の決定要因としてマネジメント慣行は重要 です。特に人的資源管理に着目することで、労働者が グローバル・バリュー ・チェーンの経済的メリット をどのような形で手にするかを明らかにできると期待 しています。 貿易と人々の労働の価値観に焦点を当てていること も特徴です。不況などの経済ショックが人々の価値観 や選好に影響することについては研究例があります。 本研究は貿易に着目することで、途上国の生産性や技 術受容力の分析にも発展させられると考えています。 企業の国際化と労働保護については、地域貿易協定の 労働条項に着目し、労働環境への実効性を分析します。 ●ここまでで何が分かってきたか 東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)の 協力を得てベトナムで先行的な企業調査を行いました。 その結果、外国企業と取引のある地場企業はそうでな い企業に比べ、目標設定や管理のきめ細かさ、従業員 への訓練などいくつかの点で大きく違っていることが 分かりました。より本格的な調査によって、外国企業 との取引の開始前後の変化を捉えたいと考えています。

「世界価値観調査」(World Values Survey)を使う と、貿易依存度と労働の価値観の変化との間に部分的 に相関関係が観察されました。さらにグローバル化由 来のショックを特定する作業を進めていきたいと思い ます。 労働保護については、研究会のメンバーでもある神 戸大学の鎌田伊佐生先生が作成された労働条項のデー タを使いつつ分析を進めています。この種の分析自体 まだ非常に少なく、興味深い結果が得られることを期 待しています。 (さとう ひとし/アジア経済研究所 開発研究セン ター)

佐 藤 仁 志

グローバル・バリュー・チェーンと労働

4

アジ研ワールド・トレンド No.260(2017. 6)

参照

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