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Mangrove林の植物生態学的研究

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Academic year: 2021

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(1)

大  野  照  好  〔研究紀要 界6番〕  117

Mangrove林の植物生態学的研究

大  野  照  好

Plant ecological view of the mangrove vegetation Teruyosi Ohno 一 緒   言 Mangrove vegetationはPluviifruticeta (熱帯降雨潅木林)に属し,海岸潮線に接して形成さ れるもので,単一の樹種でなくいろいろな植物から構成される碑林である。 Mangroveは塩水に対 していちじるしく抵抗性強く,また支柱根を有するもり,気根を有するもの,胎生をなすものなど の特徴がある為,早くからいろいろな学者の注目するところであった。 I MangroveはSchimper (1891)によると, 9科26種(19科40種)あり,その大部分の22種 は東半球に分布している。 Mangrove vegetationは同じような特殊な群落型をとり,種の分布範 囲も広く,東亜においてほ熱帯から亜熱帯に至るまで主要な種輝を同じくしている。本報骨は北限 帯におけるMangrove vegetation の植物生 態学的調査に関するものであるが,単に群落学 的観点に立っているので,今後の研究をまって その生態学的特徴を究明したい。 ニ 分   布 北限は鹿児島県指宿郡喜入村前浜であるが, 本地のMangroveは藩政時代に琉球から移植 されたものだと伝えられており,鹿児島県川辺 郡笠砂町大浦同じく熊毛郡中種子町熊野におけ るものと共に自生ではないと考えられる。しか し現在においては,その地の環境条件に適応し て野性状態に発達している。これらの地の MangroveはKandelia ・Rheediiのみから形 成されているのに対し,奄美大島においては, Bruguiera gymnorrhizaを混じてその北限を なしているが Rhizophora mucronataは達 していない。主な分布地として ◇鹿児島県指宿郡喜入村前浜 ◇ 〝 川辺郡 ◇ 〝 熊毛郡 fiiltvu . I. の令や

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(2)

118 mangrove林の植物塵憩学的研究 ◇鹿児島県大島郡笠利相手花部 ◇ 〝 大島郡住用相乗仲間 ◇ 〝 大島郡住用村西仲間 などがある。 三 環 境 条 件

1.気   候

Pluviifruticetaに属するMangrove vegetationはいうまでもなく,高温多湿な熱帯的気候に 適するものであるが,第1表及び第2表の示す如く,気温5.1-C (最低)雨量2,000mmぐらいの 地にも発達している。暖地性植物生育のLimited factorは冬季における最低気温であると考える とき,最低気温3.OoC (1月平均5.1℃)前後の地であっても海水の温度は気温より相当高いし,し かも海水温は気温に比し緯度による変化がいちじるしくない。 Mangroveの生育を可能ならしめて いるのはこの海水の特性にもとづくものではなかろうか。 (黒潮の影響) Table 1. 気    温 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1 1 日 2 全 年 大 島 l 器 14.3 ll.0 14 .3 ll.8 16 .1 13 .6 19 .1 14 .5 2 1.7 18 .1 25 .0 2 4 .5 2 7 .4 2 5 .8 2 7 2 2 5 .4 2 5 .9 2 3.9 2 2 .7 19 .7 19 .4 16 .2 17 .1 15 .1 l" 20 .8 18 .4 種 子 島 卜器 12 ,3 ll.8 15 .1 19 .9 22 .7 2 4 .9 2 8 .0 2 9 .9 2 7 .7 2 2 .8 2 1.2 14 .8 2 0 .9 8 ●6 8 ●7 10 .7 14 .8 18 .1 2 0 .8 2 4.4 2 5 .0 22 .7 17 .4 16 .9 9 ■9 16 .5 指 宿 平 均 最 低 10 .3 ll.3 12 .6 17.7 2 1.4 2 3 .7 2 7 .9 2 9 .4 2 7.3 2 1.8 17 .2 12 .4 19 .4 5 ●l 6 ●5 7●7 ll.3 15 .5 19 .1 2 3 .7 2 4 .1 2 1.9 10 .3 13 .1 7 .9 14 .3 枕 崎 . ≡ 10 .4 5 .4 10 .5 5 ■6 13 .2 7 ●6 18 .1 12 .0 -2 1 .4 15 .8 2 3 .8 19 .1 2 7 .3 2 3.7 2 8 .6 2 3 .5 2 7.2 2 1.5 2 2 .2 15 .9 17 .7 12 .0 ll.7 7 .0 19 .4 14 .1 Table2.質 島   島   砂   宿 子 犬 種 笠 指 ^   0 0   O n J co m   -. 9     5     つ ん     5 〇     〇 0       -      0 3     2     つ ん     2 2.地 形・土 質 海洋が湾入して波浪がまったく絶えるような所の河口で,泥 土が堆積して潟となり,満潮時には水中に没し,干潮時には干 潟となるような遠浅の地に生ヂる。 土壌は砂や磯を含まぬ粘土質で,メタンガスなどによる臭気 を発生するような土壌である。今,深さ5cmの所の土壌のPl上を測定したら第3表の如くである。 Table 3. 土    壌 P.H. Ⅰ Ⅱ 班 Ⅲ【 1 ト 2 ー 3 1 2 3 1 2 3 1 2 3 P h 5 .0 5 .2 5 .6 5 .2 5 .2 巨 6 5 .0 5 .6 5 ●6 5 ●4 巨 2 5 ●4

(3)

大   野   照   好   〔研究紀賓 算6番〕   119 すなわち Ph5.6以下の酸性強き土壌(Ph5.4-5.0が多い)がもっとも生育に通しているものと考 えられる。 四 群 落 の 考 察 第4表は群落の構成について調査したものである。各地vegetationを3ヶ所調査した。 Ⅰ.西仲間Mangrov vegetation l. Kandelia Rheed也Ass.

Kandelia Rheediiの純群叢とも見られるもので,本Mangrove vegetationはほとんどこの Assosiationからできており, Bruguiera gymnorrhizaは点在的に混生するにすぎない。第1層 は完全なCanopyをなしているし,叉2層から構成されるもので,下層は Kandelia Rheediiお よびBruguiera gymnorrhizaの椎樹が点在しているにすぎない。 Table 4. Kandelia Rheedti Bruguiera gymnorrhiza Barringtonia racemosa Caesalpinia Nuga. Toddalia aculeata Duranta Plumieri Cerbera O、dollam Rhaphiolepis umbellata Pittosporum Tobira Polygonum Blumei Cyperus ma】accensis Panicum repens 1 0   +   0   0   0   0   0   0   0   0   0   0 3   2   0   0   0   < D O C D O O O O ・ o   + +   + +   + o   + 0   0   0   + 1 0   +   0   0   0   0   0   0   0   0   0   0 l O O O O O O O O O O O O ・ *   o o o o o o   +   +   o o o

2. Kandelia Rheedii- Brug-uiera gymnorrhiza Ass.

本Mangrove vegetation は全般的に見て Kandelia Rheedii Ass.と認められる

が,局部的にKandelia

Rh-eedii Bruguiera gymnorr・ hiza Ass.を認めることがで きる。Kandelia Rheedii Ass. と同じように2層から構成さ れており,又下層の生育は極 めて悪い。

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120 mangrove林の植物鐘憩学的研究

3. Kandelia Rheed也Ass.

Mangrove vegetationの外縁部海浜樹林に接する地域のものでKandelia Rheedii, Bruguiera gymnorrhiza のほかに Barringtonia racemosa, Caesalpinin Nuga, Toddalia aculeata Duranta Plumieri. Panicum repens, Rhaphiolepis umbellata などが侵入して混生し,下層

はKandelia Rheedii, Bruguiera gymnorrhizaの稚樹によって構成される。 (Kandelia Rheedむの発生)

ⅠⅠ.東仲間Mangrove vegetation l. Kandelia Rheedii Ass.

Bruguiera gimnorrhizaが点在するKandelia Rheedii Ass.で第1層が切り揃えたように Canopyをなしているので下層において, Kandelia Rheedu, Bruguiera gymnorrhizaの発育極 めて悪く,点在するにすぎず,第1層のみから構成される部落と見なしてもよいほどである。本地

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大   野   照   好   〔研究紀要 葬6巻〕   12I のMangrove vegetationは西仲間のMangrove vegetationに比し,規模が小さく,発達状態も 悪くまたBruguiera gymnorrhizaの畳が僅少になっている。

2. Kandelia Rheedii Ass.

河口附近の河流沿いに発達しているもので,まだ完全に成長していない。本群叢中にはCyperus malaccensisが旺盛に侵入しており Kandelia Rheedii-Cyperus malaccensis Ass.として認 められる場合もある。本地域は初めCyperus malaccensis Ass.であったが,水中に落下した Kandelia Rheedii, Bruguiera gymnorrhizaの種子が水によって運ばれてきて定着し,群落を形 成するに至ったものではなかろうか。本群落の水際には多くのこれら種子が漂着しており,叉根を 下しつつある事実からうかがうことができる。

(Bruguiera gymnorrhizaの幻樹)

(Kamdelia Rheedii Ass.)

3. Kandelia Rheec旭Ass.

本地 Mangrove vegetation の外縁部,沿岸附近に発達しているもので, Kandelia Rheedu, Bruguiera gymnorrhizaのほかに,海浜性及び沿水性植物のBarringtonia racemosa, Caesal・ pinia Nuga, Duranta Plumie珪Cerbera Odollam, Polygonum Blumei, Cyperus repensな どが混入している。群落の構成は2層に分かれており,第1層がCanopyをなす程密生していない ので,下層がよく発達しており, Kandelia Rheedii, Bruguiera gymnorrhizaおよび Cyprus malaccensisが密生している。

III.手花部Mangrove vegetation

奄美大島北部に位する手花部Mangrove vegetationはKandelia Rheediiのみから成ってお り,まだ完全な発達をとげておらないし,規模も小である。これは近年人為的に移植せられたもの

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mangrove林の種物生態学的研究

(Kandelia Rheedd Assの発達)

か種子が漂着して最近発達してきたものであろう.       ト 1・は現在ようやく形成されつつあるもので,河口附近の潟で干潮時にようやく土壌が露出する所 で落下した種子が干潮時に漂着し得て成育し発達しつつあるものである。したがって本数が極めて 多く密生している。この群落の縁辺部およびその附近には根を下してようやく葉が2-3枚ついて いるような稚樹の群落が見られ,その旺盛な発生状態をうかがうことができる。これらの群落を形 威させているのは

(Kandelia Rheedii Assの発達)

(そ の 内 部)

(Kandelia Rheediiの発生)

3, Kandelia Rheedii Ass.である。本群叢 は(1)及び(2)などのやや上流河岸に接し ているが,まだ充分に発達しておらず,支柱根 の発達また貧弱である。群落の構成は2層に分 れており,第1層がCanopyをなすほど密生し ていないので,第2層の幼樹稚樹の発育がやや良 好である。また周縁部にはDuranta Plumieri, Rhaphiolepis umbellata, Pittosporum

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Tob-大  野  照  好  〔研究紀要 葬6番〕  123

(Kamdelia Rheedd Ass)

(Kande Rheediiの幼樹群草) iraなどが侵入していることもある。すなわち,泥土が堆積して浅くなるにつれ,だんだん下流に発 達していくもので,外側ほど新しく形成されたものであると考えられる。 ⅠⅤ.喜入Mangrove vegetation Mangrove vegetationの北限とされているが,本地のものは藩政時代に琉球から移植されたも のと伝えられ,自生北限とはいい難い。しかし現今においてはほとんど自生状態と同じように発達 している。これは遺布的分布をなす暖地性植物と同じように,必ずしも本地の環境条件特に気候が Pluvifruticetaに属するMangroveの生育に通しているのではなく, Mangrove自身が次第に該 地環境条件に適応し得て現在の発育状態を示すものではなかろうか。この地におけるMangrove vegetationはKandelia Rheediiのみによって構成されており, Bruguiera gymnorrhizaは川 辺郡笠砂田及び熊毛郡中程子町のMangrove vegetationと共に存在しない。この2着Mangrove vegetationも厳密な意味において自生であるかどうか疑わしい。

、7

(1)および(2)の調査地においてKandelia Rheediiはまだ充分虚構に連しておらず, i群落 の構成は2層と見られ,贋1層はCanopyをなす程でないが棟数が多く密生しているので下層の発 育は不完金である。

(8)

124 mangrove林の植物鐘憩学的研究

けるものには支柱板は見られないが,本Assosiationにおいてはやや発達しかけている。根数が少 く Canopyをなさず,また沿海性のRhaphiolepis umbellata, Pittosporum Tobira その他が 混じている。下層における稚樹の発育ややあり,群落が2層から構成されていることがわかる。 本地はMangroveの北限として天然記念物とて指定,保護されている。 五 要   約 1.本報告はMangrove vegetationの植物群落学的調査に関するものである。 2. Mangroveの北限は鹿児島県指宿郡喜入村前浜である。 3.指宿郡喜入村における分布は,海水の特性にもとづくものであり,しかもその後その他環境条 件に適応し得たためであろう。 4. Mangrove申Bruguiera gymnorrhizaは奄美大島住用村に分布するが,それ以北におい ては, Kandelia Rheediiのみ分布する。 5. Climaxに連した群落は1層のみから構成され,しかもCanpyをなす。 6.土壌はP1- 5.0-5.4ぐらいの酸性地がもっとも多い。 絶えず御指導を賜わる広島大学教授堀川芳雄先生に深甚なる謝意を表する。 参   考   文   献 鹿児島県史蹟名勝天然天然記念物調査報告書 鹿児島測供所 髭児島測候所気象年報

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