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孤立波の解の特異性と長波近似 (非線形波動現象の数理と応用)

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(1)

孤立波の解の特異性と長波近似

公立はこだて未来大学システム情報科学部 村重淳 (Sunao Murashige)

School of Systems Information Science, Future University Hakodate

概要

本研究では,一方向に一定速度で波形を変えずに進む孤立波の近似解につぃて考

える.特に,標準的な近似法である長波近似を用いない方法として Packham の 方法 [7]

に注目し,その応用を考える.孤立波の解は裾野において指数関数的に

減衰するが,この性質は複素平面上の解の特異性としてとらえることができる.

Packham のアイディアは,この特異性が正則化されるような新しい複素平面を導 入することである.本研究では,この複素平面における直交多項式展開を用いる

と,最良多項式近似を与える新しい孤立波の解の表現が得られることを示す.ま

た,Packham の近似解は従来の長波近似より精度がよいことを,数値例を用い

て示す. 1はじめに 水深 $h$ が一定の水路上を一定速度 $c$

で波形を変えずに進む孤立波の運動は,波の進行

方向に沿った鉛直断面で

2

次元的である.この運動の近似として,水平方向の運動の変化

は緩やかであるという仮定に基づく長波近似が有効であることがよく知られている.長波

近似により,

Korteweg-de

Vries $(KdV)$ 方程式に代表される近似方程式がいくつか導かれ

ている.それに対して,

Packham

[7]

が示した近似解は,長波近似を用いていないが比較

的精度がよいという特徴がある.本研究の目的は,

Packham

の近似のアイディアを整理 し,それに基づいた新しい近似解の表現を提案することである. 2定式化と孤立波解の特徴 2.1複素対数速度 $\omega$ を用いた定式化 Fig.1(a)

のように,左方向に一定速度

$c$

で波形を変えずに進む孤立波の運動を,波とと

もに動く鉛直断面内の座標系 $((x, y)$ 平面$)$

で考える.流体は非粘性・非圧縮,流体の運

動は

2

次元渦無しであると仮定する.このとき,

$(x, y)$ 平面における流体の2次元・定

常渦無し運動は,次式で定義される複素対数速度

$\omega$ を用いて表すことができる. $\omega=\tau+i\theta=\log\frac{c}{w}=\log\frac{c}{df/dz}$ (1)

(2)

ここで,

$w=u-iv=qe^{-i\theta}=df/dz$

は複素速度,

$f=\phi+i\psi$ は複素速度ポテンシャル,

$z=x+iy,$ $q=\sqrt{u^{2}+v^{2}},$ $\tau=\log(c/q),$ $\theta=$ arctan$(v/u)$ である.

(a) The $z$-plane $(z=x+iy)$ (b) The $f$-plane $(f=\phi+i\psi)$

(c) The $\zeta$-plane $(\zeta=\zeta_{r}+i\zeta_{i})$ (d) The

$\hat{\zeta}$-plane $(\hat{\zeta}=\hat{\zeta}_{r}+i\hat{\zeta}_{i})$

Fig.1 Conformal mapping ofthe flowdomain of

a

solitary

wave

progressing in

permanent form. $c$ :

wave

speed, $h$ : water depth and

$\Gamma$ : $\hat{\zeta}=\hat{\rho}e^{i\hat{\sigma}}$

(1) で定義される複素対数速度 $\omega$

は流場で正則である.水面と水底の境界条件をみた

す正則な複素関数 $\omega$

を求めるためには,流場を

Fig.1(b) のような複素速度ポテンシャ

ル $f$

平面に写すと便利である.

$f$

平面では,水面は

$\psi=0$, 水底は $\psi=-ch$, 流場は

$-ch<\psi<0$ に写される $(-\infty<\phi<\infty)$

.

このとき,

$\omega=\tau+i\theta$ に対する水面 $(\psi=0)$ ,

水底 $(\psi=-ch)$ , 波の山の下 $(\phi=0)$ , 無限遠 $(\phiarrow\infty)$ の条件はそれぞれ次のよう

に与えられる.

$ch \frac{\partial\tau}{\partial\phi}-\frac{1}{F^{2}}e^{3\tau}\sin\theta=0$ $on$ $\psi=0$ (2)

$\theta=0$ $on$ $\psi=-ch$ (3)

(3)

$\omega=\tau+i\thetaarrow 0$ as $\phiarrow\infty$ (5) (2) に含まれる $F=c/\sqrt{gh}$ は $\mathbb{R}oude$ 数を表す ( $g$ は重カ加速度). (2) のように表され る水面の境界条件は Levi-Civita の条件とよばれることがある [4,

\S 14.65]

.

(4) は解の対

称性に対応する.本研究で考える孤立波解は,条件

(2)(3)(4)(5) をみたす正則な複素関 数 $\omega$ である. 2.2裾野における孤立波解の特徴 孤立波解は裾野 $(|x|\gg 1 or |\phi|\gg 1)$ において指数関数的に減衰することが知られて

いる.この性質は,孤立波解の近似を考えるときポイントとなるので,この節で整理して

おく. 複素対数速度 $\omega$

に対する上記の性質を調べるためには,流場を

Fig.1(c) のような新し い複素平面 ($\zeta$平面)

上の単位円の内側に写すと便利である.

$f$ 平面から $\zeta$ 平面への写像 は次式で与えられる.

$f+ ich=\frac{2ch}{\pi}\log(\frac{1+\sqrt{\zeta}}{1-\sqrt{\zeta}})$ $or$ $\zeta=\tanh^{2}\{\frac{\pi}{4ch}(f+ich)\}$ (6)

このとき,水面

$(y=\eta(x) or \psi=0)$ は $\zeta=e^{i\sigma}(0<\sigma<2\pi)$

に,物理平面における無

限遠 $(|x|=\infty or |\phi|=\infty)$ は $\zeta$ 平面における単位円上の点 $\zeta=1$

に写される.また,

$f$

平面における水面の境界条件 (2) は

$\pi\sin\frac{\sigma}{2}\frac{\partial\tau}{\partial\sigma}+\frac{1}{F^{2}}e^{3\tau}\sin\theta=0$

on

$\zeta=e^{i\sigma}$ and $0<\sigma<2\pi$ (7)

水底 $(0\leq\zeta<1)$ の条件 (3) と波の山の下 $(-1<\zeta<1)$ の条件 (4)

$\theta=0$ $on$ $-1<\zeta<1$ (8)

無限遠の条件 (5) は $\omega=\tau+i\thetaarrow 0$

as

$\zetaarrow 1$ (9) のように $\zeta$

平面では表される.

$\zeta$ 平面の単位円の内側 $|\zeta|<1$

で正則で,点

$\zeta=1$ (物理 平面の無限遠に対応する点) 付近で条件 (7) (8) (9) をすべてみたす解 $\omega$

を調べると,次

のような結果が得られる.

(4)

ここで,

$b$

は実定数で,

$\mu$ は次式をみたす正の実数である.

$F^{2}\mu\pi=\tan\mu\pi$ (11)

したがって,点

$\zeta=1$ は $\zeta$ 平面における $\omega$ の特異点であることがわかる.また,(10) は

(6) を用いると

$\omega\sim\tilde{b}e^{\mp\mu\pi(f+ich)/(ch)} (\phiarrow\pm\infty)$ (12)

のように表すことができる $(\tilde{b}=2^{4\mu}b)$ $dz/df=(1/c)e^{\omega}\sim c(\phiarrow\pm\infty)$ であるので,

上式は孤立波解 $\omega$ が裾野で指数関数的に減衰していることを表している.その減衰率を

与える $\mu$ は Froude 数 $F$ と (11) により,

Fig.2

のように関係づけられる.

Fig.2

より,$F$

の値が1に近い (波高が低い) ほど,$\mu$ の値も小さいことがわかる.(11)?は Stokes [8] [3,

\S 252]

がはじめて導いたので,(11) を Stokes の関係式とよぶ.

$0.\infty 1$ 0.$0f$ $0./$

F-

1

Fig.2 Variation of the decay rate $\mu$ with the Froude number $F$

.

The relation

between$\mu$ and $F$ is computed using Stokes’ relation (11).

3孤立波解の近似 3.1 長波近似 長波近似のアイディアは,孤立波解の水平方向の変化は緩やかであるという仮定に基づ き,$x$ 方向の高階微分を含む項は微小であるとして無視することである.このことは,2.2 節で述べた裾野における孤立波解の性質と次のように関連づけられる. まず,(12) より $\tau\sim\tilde{b}e^{\mp\mu\pi\phi/(ch)}\cos\{\mu\pi(\frac{\psi}{ch}+1)\} (\phiarrow\pm\infty)$ (13) を得る.この $\phi$ 方向の高階微分は次式で与えられる.

(5)

$\frac{\partial^{n_{\mathcal{T}}}}{\partial\phi^{n}}\sim\tilde{b}(\mp\frac{\mu\pi}{ch})^{n}e^{\mp\mu\pi\phi/(ch)}\cos$$\{\mu\pi(\frac{\psi}{ch}+1)\}$ $(\phiarrow\pm\infty)$ (14)

したがって,減衰率

$\mu$ の値が小さいとき (波高が低いとき)

は,微少量

$\epsilon$ を用いて$\mu=O(\epsilon)$

とすると,

$(ch)^{n} \frac{\partial^{n_{\mathcal{T}}}}{\partial\phi^{n}}=O(\epsilon^{n})$ (15)

のように表すことができる.

一方,

$\omega=\omega(f)$ を水底 $\psi=-ch$ を中心に Taylor

展開すると,次のように表すことが

できる.

$\omega(f)=\tau(\phi, \psi)+i\theta(\phi, \psi)=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{1}{k!}[\{i(\psi+ch)\}^{k}\frac{d^{k}}{d\phi^{k}}\check{\tau}(\phi)]$ (16) あるいは

$\{\begin{array}{l}\tau(\phi, \psi) = \check{\tau}(\phi)-\frac{1}{2!}(\psi+ch)^{2}\frac{d^{2_{\check{\mathcal{T}}}}}{d\phi^{2}}+\frac{1}{4!}(\psi+ch)^{4}\frac{d^{4_{\check{\mathcal{T}}}}}{d\phi^{4}}-\cdots\theta(\phi, \psi) = (\psi+ch)\frac{d\check{\tau}}{d\phi}-\frac{1}{3!}(\psi+ch)^{3}\frac{d^{3}\check{\tau}}{d\phi^{3}}+\frac{1}{5!}(\psi+ch)^{5}\frac{d^{5}\check{\tau}}{d\phi^{5}}-\cdots\end{array}$ (17)

ここで,

$\check{\tau}(\phi)=\tau(\phi, \psi=-ch)$ は水底 $(\psi=-ch)$ における $\tau$ を表す.(17) を水面の境

界条件 (2)

に代入し,

$\check{\tau}$ は微小であるという仮定と長波近似の仮定 (15) に基づいて $\phi$ に 関する高階微分の項を無視することにより,次のような近似方程式が得られる. $(ch \frac{d\check{\tau}}{d\phi})^{2}=\frac{3(F^{2}-1)}{1+\frac{3}{2}(F^{2}-1)}\check{\tau}^{2}(1-\frac{F^{2}}{F^{2}-1}\check{\tau})$ (18) この近似方程式の解とその裾野における挙動は,次のように求めることができる. $\check{\tau}(\phi) = \frac{F^{2}-1}{F^{2}}sech^{2}(\frac{1}{2}\sqrt{\frac{3(F^{2}-1)\phi}{1+\frac{3}{2}(F^{2}-1)ch}})$ (19)

$\sim \frac{4(F^{2}-1)}{F^{2}}\exp(\mp\sqrt{\frac{3(F^{2}-1)\phi}{1+\frac{3}{2}(F^{2}-1)ch}}) (\phiarrow\pm\infty)$

(19) を (17) の右辺に代入して,高階微分項を打ち切ることにより,$\tau$ と $\theta$ の長波近似解

を求めることができる.さらに,

$df/dz=ce^{-\omega}$ を用いて水面変位 $y=\eta(x)$ の近似解を

求めることができるが,その近似解は波高が小さいときの $KdV$ 方程式の解と一致する.

また,

$\tau$ と $\theta$ の近似解の指数関数的減衰率は $\sqrt{3(F^{2}-1)/\{1+\frac{3}{2}(F^{2}-1)\}}$

(6)

れは Stokes の関係式 (11) で $\mu$ の値は小さいと仮定することにより得られる近似値とみ なすことができる.また,(17) の高階微分項を打ち切ることにより近似された $\tau$ と $\theta$ は, Laplace

方程式を厳密にはみたさない.すなわち,近似解は解の調和性も近似している.

以上より,長波近似では

(i) 裾野における解の性質 (指数関数的に減衰する性質) と, (ii)

解の調和性を近似している.この近似による誤差は,波高が高くなるとともに大きく

なる.一方,次節のように,Packham は長波近似と異なる方法で,この二つの性質を厳 密に表現できる近似法を示した. 3.2 Packham 近似 (10)

のように,裾野における解の性質

(指数関数的に減衰する性質)

は,

$\zeta$ 平面におけ る解の特異性と関連づけることができる.Packham [7]

は,この特異性が正則化されるよ

うな複素平面 ($\hat{\zeta}$ 平面)

を導入し,

$\hat{\zeta}$ 平面で孤立波解をベキ級数展開することを考えた. そのような $\hat{\zeta}$

平面の選び方は一通りではないが,

Packham

は次のように与えられる $\hat{\zeta}$ を 用いた. $( \frac{1+\sqrt{\zeta}}{1-\sqrt{\zeta}})^{2\mu}=\frac{1+\sqrt{\hat{\zeta}}}{1-\sqrt{\hat{\zeta}}}$ (20)

この変換により,

Fig.1(d)

のように,水面は

$\hat{\zeta}=\hat{\rho}e^{i\hat{\sigma}}$ で与えられる閉曲線 $\Gamma$

上に,流場

はその内側に,物理平面 ($z$ 平面) 上の無限遠は点 $\hat{\zeta}=1$ に写される.$\zeta=1$ は $\hat{\zeta}=1$ に

写されるが,(10) は $\omega\sim\hat{b}(1-\hat{\zeta})$

as

$\hat{\zeta}arrow 1$ (21)

のように変形されるので,孤立波解

$\omega$ は $\hat{\zeta}$ 平面上の点 $\hat{\zeta}=1$ で正則である $(\hat{b}$ は実定 数$)$

また,

$\omega$ は水面を与える閉曲線 $\hat{\zeta}=\hat{\rho}e^{i\hat{\sigma}}(0<\hat{\sigma}<2\pi)$ 上とその内側 (流場) で

正則であるので,

$\hat{\zeta}$ 平面上では次のようにベキ級数展開できる. $\omega=\sum_{n=0}^{\infty}\tilde{b}_{n}\hat{\zeta}^{n}$ (22)

さらに,水底

$(0\leq\hat{\zeta}<1)$ と波の山の下 $(-1<\hat{\zeta}<0)$ の条件 $\theta=0 (-1<\hat{\zeta}<1)$ (23) と無限遠 $(\hat{\zeta}=1)$ の条件 $\omega=\tau+i\thetaarrow 0$

as

$\hat{\zeta}arrow 1$ (24)

(7)

を考慮すると,(22) は次のように表すことができる.

$\omega=\sum_{n=1}^{\infty}b_{n}(1-\hat{\zeta}^{n}) (b_{n}\in \mathbb{R})$ (25)

Packham [7]

は,上式の無限級数の第

2

項以降を打ち切ることにょり得られる第

1

部分和

$b_{1}(1-\hat{\zeta})$

を用いて正則関数を近似することを考えた.この第 1 部分和は,水面以外のす

べての境界条件と裾野における解の性質 (指数関数的に減衰する性質) を厳密にみたす.

Davies [1][4,

\S 15.59]

は,

$\omega=\tau+i\theta$ に対する水面の境界条件 (2) に含まれる $\sin\theta$ を

$\sin\theta\sim\frac{1}{3}$ sin$3\theta$

(26)

のように近似することにより,

(2)

が次式で近似できることを示した.

${\rm Re}[ \frac{1}{e^{-3\omega}}\{ch\frac{d}{df}(e^{-3\omega})-i\frac{3}{F^{2}}\}]=0$ $on$ $\psi=0$ (27)

Packham [7] はこの水面の近似境界条件 (27)

をみたす解が,

$\hat{\zeta}$

を用いて次のように表さ れることを示した.

$e^{-3\omega(\hat{\zeta})}=1-\sin^{2}\mu\pi\cdot(1-\hat{\zeta})$

or

$\omega(\hat{\zeta})=-\frac{1}{3}\log\{1-\sin^{2}\mu\pi\cdot(1-\hat{\zeta})\}$

(28)

ここで,$\mu$ は Stokes の関係式 (11) により与えられる正の実数である.この Packham の

近似解 (28) は (i) 裾野における解の性質 (指数関数的に減衰する性質) (ii) 解の調和

性を厳密にみたしている点が,長波近似と異なる.

4新しい近似解の表現

Packham [7] は,(25)

の無限級数の第

1

部分和を用いて孤立波の近似解を求めたが,第

$N$ 部分和

$\tilde{\omega}_{N}=\sum_{n=1}^{N}b_{n}(1-\hat{\zeta}^{n}) (b_{n}\in \mathbb{R})$ (29)

を用いてさらに精度のよい近似解を求めることが考えられる.この第

$N$ 部分和 $\tilde{\omega}_{N}$ は, すべての $N(N=1,2, \cdots)$

に対して,水面以外のすべての境界条件と裾野における解の

性質 (指数関数的に減衰する性質)

を厳密にみたす.ただし,できるだけ少ない項数

$N$ で精度のよい近似解を求めるためには,

(25)

の無限級数の収束が速くなければならない.

しかし,波高が大きくなるとともに,この無限級数の収束は遅くなるので,

(29)

の級数 展開を改良する必要がある.

(8)

(29) による $\omega$

の近似は,

$\hat{\zeta}$

に関する $N$

次多項式による近似とみなすことができる.

$\hat{\zeta}$

平面上の閉曲線 (水面) $\Gamma$ : $\hat{\zeta}=\hat{\rho}e^{i\hat{\sigma}}(0<\hat{\sigma}<2\pi)$ で囲まれた領域上で正則な関数の近

似の精度を評価するために,二つの複素関数

$\varphi_{1},$ $\varphi_{2}$ の内積 $(\varphi_{1}, \varphi_{2})_{\Gamma}$ と複素関数

$\varphi$ の $\nearrow$ ルム $\Vert\varphi\Vert_{\Gamma}$ を次のように定義する [2,

\S 18.4].

$( \varphi_{1}, \varphi_{2})_{\Gamma}=\int_{0}^{2\pi}\varphi_{1}(\hat{\zeta}=\hat{\rho}e^{i\hat{\sigma}})\overline{\varphi_{2}(\hat{\zeta}=\hat{\rho}e^{i\hat{\sigma}})}d\hat{\sigma}$ (30) $\Vert\varphi\Vert_{\Gamma}=\sqrt{(\varphi,\varphi)_{\Gamma}}$ (31)

このとき,

$\hat{\zeta}$

平面の領域上で正則な関数の最良多項式近似について,次のような定理が成

り立つことが知られている. 定理 [2,

\S 18.4]

$\omega(\hat{\zeta})$ は領域 $\mathcal{D}$

で正則,

$\mathcal{D}\cup\Gamma$ で連続とする ($\Gamma$

:

$\mathcal{D}$ の境界).

このとき,ノルム

$\Vert\Vert_{\Gamma}$

に関する $\omega(\hat{\zeta})$ の最良 $N$

次多項式近似は,次式で与えられる.

$\omega_{N}(\hat{\zeta})$ $:= \sum_{n=1}^{N}c_{n}p_{n}(\hat{\zeta})$ with $c_{n}=(\omega,p_{n})_{\Gamma}$ , (32)

ここで,

$\{p_{n}(\hat{\zeta})\}_{n=1}^{N}$ は次の条件をみたす直交多項式系である.

$(p_{m},p_{n})_{\Gamma}=\delta_{mn}=\{\begin{array}{l}1 (m=n)0 (m\neq n)\end{array}$ (33)

$\square$

直交多項式系 $\{p_{n}(\hat{\zeta})\}_{n=1}^{N}$ は $N$ 個の線形独立な関数系 $\{1-\hat{\zeta}, 1-\hat{\zeta}^{2}, \cdots, 1-\hat{\zeta}^{N}\}$ を

Gram-Schmidt

変換することにより,数値的に求めることができる.ただし,コンピュー タ上の数値計算によるこの変換は丸め誤差の影響を受けやすいので,多倍長演算用ライブ ラリなどを用いて誤差を軽減する工夫をした [5,6]. 本研究では,直交多項式展開 (32) を新しい孤立波の近似解の表現として提案する.(32) は水面以外のすべての境界条件を厳密にみたす最良 $N$ 次多項式であり,(i) 裾野における 解の性質 (指数関数的に減衰する性質) と (ii) 解の調和性も近似せずに正確に表現できて いる.(32) の未知係数 $c_{n}(n=1,2, \cdots, N)$

は,

$\omega_{N}$ が水面の境界条件 (2) を精度よくみ

たすように数値的に求めることができる.

$c_{n}$ の計算方法は参考文献 [5,6] と同じである ので,その説明は省略する.本研究では,近似していない水面の境界条件 (2) を精度よく みたす $\omega_{N}$ を強非線形解とよぶ.

(9)

5 近似解の比較

本節では,

3.1

節で求めた

$\omega$ の長波近似解と,

(28)

に示した Packham

の近似解と,

4

の方法で求めた強非線形解を比較する.強非線形解の精度は,次のように考えた.まず,

$f$ 平面における水面の境界条件 (2)

は,

$\hat{\zeta}$ 平面上の水面 $(\hat{\zeta}=\hat{\rho}e^{i\hat{\sigma}})$ では次のように表す ことができる. $G( \hat{\sigma}):=ch\frac{d\hat{\sigma}}{d\phi}\frac{\partial\tau}{\partial\hat{\sigma}}-\frac{1}{F^{2}}e^{3\tau}\sin\theta=0 (0<\hat{\sigma}<2\pi)$ (34)

このとき,次式で定義される

$\Vert G\Vert_{\max}$

は,強非線形解の精度の指標として用いることがで

きる.

$\Vert G\Vert_{\max};=0\leq\hat{\sigma}\leq 2\pi\max|G(\hat{\sigma})|$ (35)

以下に示す強非線形解の計算結果は,すべて

$\Vert G\Vert_{\max}<10^{-9}$

をみたすように求めた.そ

のために必要な近似解 $\omega_{N}$ の項数 $N$ と直交多項式系 $\{p_{n}\}$ を求めるために用いた多倍長 演算の有効桁数 $M$

は,それぞれ

$N\leq 50,$ $M\leq 40$ であった. 5.1 波形の比較 孤立波の波形を与える座標 $(x/h, y/h)$

は,

$e^{-\omega}=(1/c)df/dz$ を用いると次のように表 すことができる. (36) $\{\begin{array}{l}\frac{x}{h}=F^{2}\int_{\hat{\sigma}}^{\pi}\frac{e^{\tau}cos\theta}{2sin\frac{\hat{\sigma}}{2}\sqrt{sin^{2}\frac{\hat{\sigma}}{2}+tan^{2}\mu\pi}}d\hat{\sigma}\frac{y}{h}=-F^{2}\int_{0}^{\hat{\sigma}}\frac{e^{\tau}sin\theta}{2sin\frac{\hat{\sigma}}{2}\sqrt{sin^{2}\frac{\sigma}{2}+tan^{2}\mu\pi}}d\hat{\sigma}\end{array}$

Fig.3は,上式の $\tau$ と $\theta$

に長波近似解と Packham

の近似解と強非線形解を代入し,それ

ぞれの波形を計算した結果を比較している.Packham の近似解の方が長波近似解より精 度がよいことがわかる. 5.2遅動エネルギー密度の比較 孤立波の運動エネルギー $E_{k}^{*}$ は $E_{k}^{*}= \frac{\rho}{2}\int_{-\infty}^{\infty}\int_{-h}^{\eta}\{(u-c)^{2}+v^{2}\}dydx$ (37) により与えられる ($\rho$ は流体の密度)

さらに,これを無次元化した

$E_{k}=E_{k}^{*}/(\rho gh^{3})$ は 水面上 $(\hat{\zeta}=\hat{\rho}e^{i\sigma})$ の $\tau=\tau(\hat{\sigma})$ と $\theta=\theta(\hat{\sigma})$ を用いて次のように表すことができる.

(10)

10 .5 $x/^{0}h$ 5 10 (a) $F=1.09$ $-10$ $-5$ $x^{0}/h$ 5 (b) $F=1.14$

Fig.3 Comparison of the wave profile. $F=c/\sqrt{gh}$ : the Froude number, thin

line : long wave approximation, thick line : Packham’s approximation

and circle $0$ : fully nonlinear solution.

$0$ 0.5 $1.50\wedge$ 2 2.$5$ 3 $0$ 0.5 $1.5$ 2 2.$5$ 3 ($a$) $F=1.09$ ($b$) $F=1.14$

Fig.4 Comparison of the kinetic energy density $d\hat{E}_{k}/d\hat{\sigma}.$ $F=c/\sqrt{gh}$ : the

Froude number, thin line : long wave approximation, thick line :

Pack-ham’s approximation and circle $\circ$ : fully nonhnear solution.

$E_{k}= \frac{E_{k}^{*}}{\rho gh^{3}}=\int_{0}^{\pi}\frac{F^{6}}{4}\frac{(e^{\tau}\cos\theta-1)(1-e^{-2\tau})}{\sin\frac{\hat{\sigma}}{2}\sqrt{\sin^{2}\frac{\sigma}{2}+\tan^{2}\mu\pi}}d\hat{\sigma}$ (38)

上式の被積分関数を $d\hat{E}_{k}/d\hat{\sigma}$, すなわち

$\frac{d\hat{E}_{k}}{d\hat{\sigma}}=\frac{F^{6}}{4}\frac{(e^{\tau}\cos\theta-1)(1-e^{-2\tau})}{\sin\frac{\hat{\sigma}}{2}\sqrt{\sin^{2}\frac{\sigma}{2}+\tan^{2}\mu\pi}}$ (39)

のように表すと,

$d\hat{E}_{k}/d\hat{\sigma}$

は水面に沿った運動エネルギー密度の分布を表す.Fig.4 は,

(39) の $\tau$ と $\theta$ に長波近似解と Packham

の近似解と強非線形解を代入し,それぞれの運

(11)

位置を表し,

$\hat{\sigma}=0$

が無限遠,

$\hat{\sigma}=\pi$ が波の山に対応する (Fig.1(d) 参照) Fig.3 の波

形の結果と同様に,

Packham

の近似解の方が長波近似解より明らかに精度がよいことが わかる. 6 まとめ

本研究では,一方向に一定速度で波形を変えずに進む孤立波の近似解について考えた.孤

立波解の近似のポイントは,波の裾野における解の指数関数的減衰の評価である.

Packham

[7] は,この評価に適した複素平面を導入することにょり,従来の長波近似とは異なる近 似解を導出した.本研究では,

Packham

が用いた複素平面における水面上で直交化した 関数系で解を展開することにより,最良多項式近似を与える新しい孤立波の解の表現が得 られることを示した.また,新しい解の表現を用いて数値計算で求めた強非線形解と近似 解を比較することにより,

Packham

近似の方が長波近似より精度がよいことがわかった. 参考文献

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1952.

[8] Stokes, G.G. : On the theory of oscillatory waves. Appendix B., Math. and Phys.

参照

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