東北地方前弧域で発生する地震のSコーダ波に関す
る研究
著者
長谷川 和也
学位授与機関
Tohoku University
修士論文
東北地方前弧域で発生する地震の S コーダ波に関する研究
( A study on S-coda wave in the northeastern Japan forearc )
東北大学大学院理学研究科
地球物理学専攻
長谷川 和也
論文審査委員
日野 亮太 准教授 (指導教員・主査)
海野 徳仁 教授
藤本 博己 教授
中原 恒 准教授
伊藤 喜宏 助教
平成 24 年
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謝辞
本研究を進めるにあたり,多くの方々にお世話になりました.ここに深く感謝の意を表 します. 日野准教授,藤本博己教授,伊藤喜宏助教には,研究生活全般に渡り,終始暖かいご支 援とご指導を頂きました.また,学会発表や海域観測など貴重な経験を数多く提供して頂 きました.心より感謝申し上げます. 独立行政法人海洋研究開発機構の高橋努博士には本研究の基礎となる博士論文を提供し て頂きました.学会やシンポジウムの場では多くの助言を頂き,本研究を進める上で非常 に有益でありました.深く感謝致します.本学を卒業されました古賀祥子氏,Nambukara Gamage Sunil Shantha 博士には,それぞれ修士論文と博士論文および投稿論文を参考にさせ て頂きました.記して感謝致します. 鈴木健介氏には,震源再決定のデータ,走時計算のプログラム,ならびに波線経路の計 算結果を提供して頂きました.また,研究室の先輩として,研究を進める上での助言を数 多くして頂きました.豊国源知助教には,地震波伝播のシミュレーション解析をして頂き, 本研究の結果を解釈する上で非常に重要な手掛かりとなりました.木戸元之准教授,飯沼 卓史助教には,常日頃研究の解析や議論に至るまで多くの助言をして頂き,地震学に関す る様々な知識を教えて頂きました.長田幸仁博士には 3 年間同部屋で大変お世話になりま した.研究だけではなく,セミナーや学会,観測など様々なことに関して丁寧に教えて頂 きました.鈴木秀市氏には海域観測に関する様々なことを教えて頂きました.大学生活を する上で数多くのご支援をして頂きました.稲津大祐博士には,研究生活をする上での心 構えを教えて頂きました.記して感謝致します. 海野徳仁教授,松澤暢教授,趙大鵬教授,西村太志教授をはじめとする地震・噴火予知 研究観測センターおよび固体地球物理学講座の教員,研究員,学生の皆様には,セミナーii やシンポジウムなどを通して地震や火山に関する数多くの研究を教えて頂きました.植木 貞人准教授,内田直希助教には,学部生時代の地球物理学実験のころからご指導を頂き, 観測の楽しさを知るきっかけを下さいました.太田雄策助教にはアドバイザーリボートと して,日常生活で多くのご支援や助言をして頂きました.また,事務職員ならびに技術職 員の方々には,研究生活の様々な場面でお世話になりました.同部屋の山村卓也くんには, 本論文をまとめる手伝いをして頂いたとともに,2 年間お世話になりました.心より感謝致 します.ほかにもご支援ご協力を頂きながらここにお名前を出すことができなかった多く の方々に感謝致します. 本研究では,震源情報および観測地震波形として,気象庁,東京大学地震研究所,独立 行政法人防災科学技術研究所,および東北大学のデータを使用しています.以上の関係機 関の方々に心より感謝致します. 地震・噴火予知研究観測センター海域総合観測研究部の皆様には,研究活動において終 始熱心なご指導をして頂き,大学生活において多くの困難を支えて頂きました.3 年間の地 震・噴火予知研究観測センターでの生活は非常に有意義でかけがえのないものとなりまし た.心より感謝申し上げます.最後に,地球物理学専攻の同期の皆さま,地震・噴火予知 研究観測センターの同期の皆さま,特に,海域総合観測研究部同期の久保田達矢くんには 日ごろから大変お世話になしました.心より感謝申し上げます.
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要旨
近年,東北日本前弧の海域下で発生した地震の震源分布は,互いに平行な二つの地震面 を形成することが明らかとなった.この二重面構造は二重浅発地震面と呼ばれ,その上面 と下面の地震の発震機構解は,それぞれ正断層型と逆断層型が卓越する.二重浅発地震面 で発生した地震の陸上観測点における波形は,震源が上面にあるか下面にあるかで,特に S コーダ波部分が大きく異なる.上面上層で発生した地震の波形では,直達 S 波の立ち上が りが不明瞭でコーダ波振幅が大きい状態が長く継続し,S 波部分の波形エンベロープ形状が 時間軸方向に伸張している.これに対して,上面深部および下面で発生した地震の波形記 録では明瞭な S 波の立ち上がりを認めることができて S 波エンベロープの顕著な伸張は見 られない.これまで観測波形が異なる原因が調べられてきたが,二重浅発地震面は観測点 が密な陸域から遠く離れた海域下にあるため,特に震源深さの精度が十分でなく,詳細な 議論が困難であった. そこで本研究では,海底地震計を用いた繰り返し観測を実施してきた,宮城県沖の日本 海溝陸側斜面域で発生した地震を東北地方前弧域の陸上観測点で観測した速度波形記録を 用いて RMS エンベロープを作成してピーク遅延時間を測定し,その測定値と海底地震計 のデータを用いて決定された高信頼度の震源深さとの対応関係を調べた.ピーク遅延時間 は多重前方散乱の影響による S 波エンベロープ伸張を特徴づけるパラメータであり,エン ベロープの形状を定量的に表す.また,震源距離依存性を除去したピーク遅延時間の伝播 経路に対する依存性を調べることで,沈み込み帯における散乱構造の特徴について考察を 行った. その結果,ピーク遅延時間はプレート境界からの相対震源深さと震源位置に大きく依存 することがわかった.日本海溝陸側斜面の中央付近にあたる東経 142.5 度付近より海溝側 (領域東側) では,低角逆断層型の発震機構解を持つプレート境界型地震はピーク遅延時間iv がほかの地震と比べて顕著に大きくなることが明らかとなった.これと比べると,領域東 側で発生するスラブ内地震のピーク遅延時間は有意に小さい.これに対して,領域西側で 発生する地震については,震源深さや発震機構解に依存するような明瞭なピーク遅延時間 の異常はみられない. さらに,プレート境界からの相対的な震源深さに依存するピーク遅延時間の異常の原因 を検討するために,個別の地震についてピーク遅延時間の震源距離に対する増加率を調べ た.ピーク遅延時間の伝播距離に対する増加率は,伝播経路上の媒質がもつ短波長不均質 の強さを反映する.ピーク遅延時間が小さいスラブ内地震については,ピーク遅延時間の 増加率は低いことから,波線経路の多くをしめる太平洋スラブの内部の不均質性が相対的 に弱いことが示唆される.一方で,プレート境界近傍で発生する地震については,ピーク 遅延時間の絶対値が大きいにも関わらず,その距離増加率が小さい.これは,震源付近で ピーク遅延時間が伝播距離とともに急増することを意味する.ピーク遅延時間の増加率が 大きいのは,媒質が短波長不均質に富んでいることを意味するから,本研究の結果は日本 海溝に近い領域のプレート境界面に沿って,短波長不均質性が局所的に大きくなっている ことを示唆するものである.
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論文目次
謝辞
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要旨
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論文目次
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第 1 章 序論
1
1.1 東北地方前弧域で発生した地震の観測波形
1
1.2 S 波エンベロープの解析とピーク遅延時間
2
1.3 2011 年東北地方太平洋沖地震
3
1.4 本研究の目的
4
第 2 章 データおよび手法
8
2.1 データ
8
2.2 手法
8
2.2.1 RMS エンベロープの合成方法
9
2.2.2 ピーク遅延時間の測定方法
9
第 3 章 S 波エンベロープのピーク遅延時間解析
15
3.1 はじめに
15
3.2 ピーク遅延時間の解析
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3.2.1 震源距離依存性
15
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3.2.2 プレート境界からの相対震源深さ依存性
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3.2.3 ピーク遅延時間の震源位置依存性
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3.3 ピーク遅延時間解析結果のまとめ
18
第 4 章 議論
47
4.1 はじめに
47
4.2 ピーク遅延時間の発震機構解依存性
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4.2.1 発震機構解の分類
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4.2.2 発震機構解依存性の結果
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4.3 回帰直線の傾きと伝播経路の不均質構造
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4.4 ピーク遅延時間の震源位置依存性と不均質構造
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第 5 章 結論
71
参考文献
73
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第 1 章 序論
1.1 東北地方前弧域で発生した地震の観測波形
沈み込み帯浅部で発生する地震活動の理解の重要度は,2011 年東北地方太平洋沖地震後, 特に重要視されている.これまで東北日本の沈み込み帯の理解に向けた研究が行われてき たが,特に海域下で発生する地震については,陸上観測点で得られる P 波および S 波の到 達時刻のみを用いてその深さを正確に決定することが困難であった.しかし,Umino et al. [1995] は海底面で S 波から P 波に変換して伝播する sP depth phase を用いて,海域下で発 生する地震の震源深さを正確に決定する手法を開発した.Gamage et al. [2009] はこの手法を 用いて,東北日本前弧の海域下で発生した地震の震源と発震機構解を再決定した.その結 果,海域下の震源分布は,東北日本の深部で指摘されていた二重深発地震面と類似する二 つの地震面を形成することが分かった (図 1-1).この二重面構造は,二重浅発地震面と呼 ばれ,その上面と下面の間隔は 28-32 km であり,上面と下面の地震の発震機構解は,それ ぞれ正断層型と逆断層型が卓越する. 東北日本前弧の海域下で発生した地震の地震波形を陸上の観測点で見ると,その形状は 震源の深さに依存して大きく特徴が異なることが示されている [Gamage et al., 2007; 古賀 2010].Gamage et al. [2007] は,二重浅発地震面の上面で発生する地震と下面で発生する地 震とでは,観測される波形に大きな違いが見られることをはじめて指摘した (図 1-2).具 体的には,二重浅発地震面の上面で発生した地震の波形記録は,直達 P 波・S 波の立ち上が りが不明瞭であり,直達 P 波・S 波に続く後続波が多く見られる.一方,二重浅発地震面の 下面で発生した地震の波形記録は,直達 P 波・S 波の立ち上がりが明瞭であり,後続波は見 られないという異なる特徴を示す.古賀 [2010] は,観測された S 波エンベロープの形状, 特に S 波エンベロープの伸張を定量的に調べて,地震波形の違いが生じる要因を調べた. その結果,Gamage et al. [2007] によって示された二重浅発地震面上面の地震で見られたよう2 な S 波エンベロープの伸張は,海溝陸側斜面下の二重浅発地震面上面内の上層で発生する プレート境界型地震の波形記録のみに限定されることが分かった.また,S 波エンベロープ 伸張が見られたプレート境界型地震と,それが顕著に見られないプレート内地震の波線経 路を比較して,両者の波線がほぼ同じ経路を持つことから,S 波エンベロープ伸張をもたら す要因が震源のごく近傍に位置する可能性を指摘した [古賀, 2010].
1.2 S 波エンベロープの解析とピーク遅延時間
地震波は震源における断層運動によって励起されたのち,地下の媒質の地震波速度や密 度の不均質性などにより,反射・屈折・回折・散乱・減衰といった影響を受け観測点に到 達する.これらの影響の強さは,媒質の不均質性の強さだけではなく地震波の波長と不均 質構造の特徴的なスケールにより変化する.したがって,地震波形の特徴の差異を評価す るためには,内部減衰や散乱波を励起させる微細な短波長不均質構造の推定が重要である. 一般に近地で観測される地震の波形記録は,1 Hz 以上の高周波数成分を多く含むが,それ に対応する波長の速度不均質構造が十分に解明されていないため決定論的な波形の計算が 困難である.特に,高周波数地震波は散乱や回折の効果により,伝播距離の増大とともに インコヒーレントな波群が卓越するため [Sato, 1989],地震波形の位相情報を無視した振幅 エンベロープに着目した確率論的手法が用いられてきた. 地下の微細な速度不均質構造を理解するためには,内部減衰と散乱減衰に関する微細な 不均質構造の推定が重要である.散乱による振幅の減衰と内部減衰の効果を分離した推定 としては,これまで高周波数地震波エンベロープを用いてなされている. 地震波エンベロープは,震源―観測点間の散乱と内部減衰構造で形状が決まる.S 波エン ベロープの伸張は主に多重前方散乱や回折により生じる [Sato, 1989].一方で,内部減衰は 遅れて到達する波群ほど強く振幅を減衰させるものの,ピーク遅延時間に与える影響は十3
分に小さい [Sato, 1991] ことから,Gusev and Abubakirov [1999a, 1999b] や高橋 [2005] は, 多重前方散乱の影響による S 波エンベロープ伸張を特徴づける最も適切なパラメータとし て,S 波到達から S 波エンベロープの最大振幅までの遅延時間 (ピーク遅延時間) に着目し た. 高橋 [2005] は,東北日本弧において S 波エンベロープのピーク遅延時間を求めた.その 結果,高周波数 S 波エンベロープは,第四期火山群下を伝播する経路で特にピーク遅延時 間が大きく,経路依存性が見られた.このような経路依存性は,ランダムな速度ゆらぎが 空間非一様に分布することを示唆する.さらに,シミュレーションによりピーク遅延時間 が伝播距離の増大とともにどのように変化するかを調べ,空間非一様なランダム媒質にお けるエンベロープ伸張の特徴を明らかにした.その結果,ピーク遅延時間の伝播距離に対 する傾きは,すなわち伝播距離依存性は,伝播経路の速度ゆらぎの大きさやそのパワース ペクトル密度の勾配などに依存することが示されている.
1.3 2011 年東北地方太平洋沖地震
2011 年 3 月 11 日に宮城県沖を震源とするマグニチュード 9 の東北地方太平洋沖地震 (以下,本震) が発生した.本震発生に伴い,これまでの地震活動が顕著に変化した [Asano et al., 2011; Suzuki et al., in press].本震発生前までは,低角逆断層の発震機構解を持つプレー ト境界型地震やプレート境界近傍での地震活動が顕著であったのに対して,本震発生後は プレート境界型付近の地震活動度が大幅に低下し,陸側プレート内部や沈み込むスラブ内 部で多くの地震が発生した [Asano et al., 2011] (図 1-3).4
1.4 本研究の目的
これまで述べてきたように,S 波エンベロープ伸張を示すピーク遅延時間は伝播経路の散 乱構造を議論するのに有用な観測量であるため,本研究では観測された S 波エンベロープ からピーク遅延時間を測定し,震源位置と深さの依存性を整理することで,波線経路上の 地球内部構造の特徴について検討する. 先行研究 [Gamage, 2007; 古賀, 2010] では,二重浅発地震面の上面・下面で発生した地震 の観測波形の違いが異なる原因が調べられてきた.しかし,二重浅発地震面は観測点が密 な陸域から遠く離れた海域下にあるため,特に震源深さの精度が十分でない.本研究では, 海底地震計 (OBS; Ocean Bottom Seismometer) により再決定された震源 [Suzuki et al. ,in press] を用いることで,震源の深さ依存性について詳細に調べる.さらに,本震発生後の地 震を解析対象とすることで,本震前は地震活動度が低く従来の研究では不足していた二重 浅発地震面の下面や上盤プレート内で発生した地震の波形の特徴を詳細に調べる. 本研究では,陸側・プレート境界・沈み込むスラブ内部の広い範囲で発生した地震の記 録を用いて,観測波形記録から S 波エンベロープを合成し,ピーク遅延時間の測定を行い, OBS データを用いて決定された高信頼度の震源深さとの対応関係を調べる.また,測定し たピーク遅延時間の経路依存性を調べることで,ピーク遅延時間の大きさを決める要因を 調べて,沈み込み帯における散乱構造の特徴について考察を行う. 本論文の構成は以下の通りである. 第 2 章では,解析に用いたデータと手法について述べる. 第 3 章では,測定したピーク遅延時間の解析結果について述べる. 第 4 章では,解析結果の検証を行い,解析結果を説明する波線経路上の散乱構造の特徴 について検討を行う. 第 5 章では,本論文の結論を述べる.5
図 1-1 東北地方前弧域で発見された二重浅発地震面 [Gamage et al., 2009].海溝軸に垂直 な鉛直断面図.丸で sP 波によって求められた震源位置を示す.逆三角は海溝,点 線はプレート境界を表す.
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図 1-2 二重浅発地震面で発生した地震の波形記録例 [Gamage, 2007].(a) 二重浅発地震面 の上面に属する地震の波形記録. (b) 下面に属する地震の波形記録.波形の上側 に対応する地震の震源情報を示す.赤丸は地震 U6 および L6 の地震の直達 S 波 の到達時を示す.
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図 1-3 本震前後の CMT 解の空間分布 [Asano et al., 2011].(a) および (c) は本震前 (2003 年 1 月から本震発生までの期間) に発生した地震を示す.(b) および (d) は本震 後 (本震発生から 2011 年 5 月 24 日までの期間) に発生した地震を示す.(a) (b) 平面図.色は震源の深さを表す.黄色の星は本震震央を示す.(c) (d) 平面図の黒 色 AB 測線に沿った鉛直断面図.メカニズムによって色分けし,赤,緑,青,黒 はそれぞれプレート境界型地震,逆断層型地震,正断層型地震,それら以外のメ カニズムの地震を示す.
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第 2 章 データおよび手法
2.1 データ
解析には,東北日本前弧側に位置する陸上観測点 (東北大学・気象庁・防災科学技術研究 所) の 3 成分 1 Hz 速度型地震計 76 点で記録された地震波形データを用いた.解析に用 いた観測点と地震の震央分布を図 2-1 に示す.観測点は背弧側を使用せず,前弧側に限定 した.先行研究により,背弧側の観測点で記録された波形は火山フロント直下の強い不均 質構造の影響により顕著な S 波エンベロープ伸張を示すことが知られている [高橋, 2005]. ここでは,震源周辺の不均質構造を反映した S 波エンベロープ形状について議論するため, 火山フロント直下の影響を受けないデータを用いる必要があるためである. 解析対象とした地震の要素は, OBS データにより震源再決定されたものを用いた [Suzuki et al., in press] (図 2-2).解析に用いた地震の発生期間は,2011 年 1 月 1 日から 2011 年 5 月 21 日で,気象庁カタログにおいて東経 141.5 度から 145.0 度,北緯 37.8 度 から 39.0 度,マグニチュードは 2 以上 (本震後は 3.5 以上) である.解析に用いた地震 の数は全部で 820 個であり,そのうち本震前は 341 個,本震後は 479 個である.この震源情報は,震源直上付近に設置された OBS のデータを用いて決められているため, 震源位置,特に震源深さが精度よく推定されていると期待できる.ただし,Suzuki et al. [in press] によると,震源深さは系統的に 5 km 深く決まることから,本研究では 5 km 浅部側 へ補正を行った.プレート境界の深さ情報には,Ito et al. [2005] を用いた.
2.2 手法
二重浅発地震面で発生した地震の波形記録に生じる差異の原因を調べる目的で,本研究 では古賀 [2010] と同様に,観測波形から RMS エンベロープを合成し,得られたエンベロ
9 ープからピーク遅延時間を定量的に測定する.ここでは,その手法について述べる.
2.2.1 RMS エンベロープの合成方法
RMS エンベロープの合成には,地震波形データの水平 2 成分を用いた.水平 2 成分の 速度波形記録にオクターブ幅の 2 極バターワースフィルタを施し, 2 - 4, 4 - 8, 8 - 16, 16 - 32 Hz の各周波数帯に分ける.その後,水平 2 成分の二乗振幅の和を 2 秒の時間窓で平滑 化し,その平方根を取ることで RMS エンベロープを作成した.2.2.2 ピーク遅延時間の測定方法
前節で得た RMS エンベロープの直達 S 波の立ち上がりや S 波エンベロープ伸張といった S 波到達時近傍のエンベロープの特徴を定量化するため,S 波の到達時刻から最大振幅を示 すまでの時間で与えられるピーク遅延時間の測定を行った.地震波エンベロープは散乱と 内部減衰の影響により形状が決まり,S 波エンベロープの伸張は主に多重前方散乱や回折に より生じる [Sato, 1989].一方で,内部減衰は遅れて到達する波群ほど強く振幅を減衰させ るものの,ピーク遅延時間に与える影響は十分に小さい [Sato 1991] ことから,ピーク遅延 時間は多重前方散乱の影響による S 波エンベロープ伸張を特徴づける最も適切なパラメー タといえる [Gusev and Abubakirov, 1999a, 1999b; 高橋 2005].本研究では,S 波到達時として理論 S 波到達時を用い,ピーク遅延時間は理論 S 波到達時 から 30 秒の時間窓の中で最大振幅を示す時刻を読み取ることで測定した.理論 S 波到達 時は,Suzuki et al., [in press] による球殻 2 層の速度構造モデル (図 2-3) から計算した理論 走時と発震時刻から推定した.このモデルでは,地震波速度 𝑉(𝑧) を,
𝑉(𝑧) = 𝑎𝑖(𝑅 − 𝑧𝑟 𝑖 )
𝑏𝑖
10
という深さ 𝑧 での関数で表している.ここで,𝑅 は地球半径 (6369.5 km),𝑟𝑖 ,𝑎𝑖,𝑏𝑖,は
第 i 層における定数である (表 2-1).第 1 層は地殻に,第 2 層はマントルに相当し,地 殻の厚さは 22.5 km とした.
11
表 2-1 本研究で使用した Suzuki et al., [in press] の速度構造のパラメータ.
a b r 第 1 層 P 波 4.50 -116.7 6369.5 S 波 2.45 -116.7 6369.5 第 2 層 P 波 7.90 -2.75 6347.0 S 波 4.54 -2.75 6347.0
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図 2-1 本研究の解析に用いた観測点と,地震の震央分布図.黒色の四角は観測点,丸は解 析に用いた地震の震央で,色でプレート境界からの深さを示す.赤色はプレート境 界より浅部,青色はプレート境界より深部を示す.紺色の枠は解析対象範囲.灰色 のコンターは 1000 m 間隔の等水深線を示す.
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図 2-2 OBS によって震源再決定された (a) 震央分布図と (b) 鉛直断面図 [Suzuki et al., in press].(a) 黒色コンターと灰色コンターはそれぞれ,2011 年 [Lay et al., 2011] と 1978 年 [Yamanaka and Kikuchi, 2004] の地震の破壊域を表す.(b) Ito et al. [2005] による 2 次元速度構造と震源位置の比較.本震前後の地震をそれぞれ灰色と黒色 の丸で示す.発震機構解は F-net により推定されたものを示す.
14 図 2-3 本研究で用いた球殻 2 層の速度構造モデル.
15
第 3 章 S 波エンベロープのピーク遅延時間解析
3.1 はじめに
前章で述べた手法に基づき測定されたピーク遅延時間の解析結果を本章で述べる.解析 に用いた RMS エンベロープの数は,2-4,4-8,8-16,16-32 Hz の各周波数帯それぞれ 49,142 個で,全てのエンベロープに関してピーク遅延時間を測定した.図 3-1 から図 3-3 に観測 された波形記録,各周波数帯の RMS エンベロープ,および測定したピーク遅延時間の例を 示す.各震源のプレート境界面からの深さは,境界面より深部側を正とする. プレート境界よりも深部で発生した地震のエンベロープは,S 波の立ち上がりが明瞭でエ ンベロープ伸張はほとんど見られず,ピーク遅延時間は 5 秒程度の値を示す (図 3-1).こ れは,Gamage [2007] や古賀 [2010] が指摘する,二重浅発地震面下面の地震波形の特徴と 一致する.一方,プレート境界近傍で発生した地震のエンベロープの多くは,S 波の立ち上 がりが不明瞭で顕著なエンベロープ伸張が見られ,ピーク遅延時間は 10 秒程度と大きな 値を示す (図 3-2).この特徴は,二重浅発地震面の上面上層で発生した地震のエンベロー プ形状の特徴と一致する [古賀, 2010].一方,これまで地震活動度がプレート境界および内 部に比べて低調であったため,よく調べられていなかった上盤プレート内部の地震のエン ベロープを調べた結果,ピーク遅延時間にばらつきがみられるものの,顕著なエンベロー プ伸張を示さないことがわかった (図 3-3).3.2 ピーク遅延時間の解析
3.2.1 震源距離依存性
一般に,ピーク遅延時間は震源距離とともに増加することが知られている [例えば,高橋, 2005] .ここではピーク遅延時間の震源距離依存性を述べる.図 3-4 にいくつかの地震に16 ついて得られたピーク遅延時間を,計測した観測点の位置に示した.全体として,震源距 離が短ければ観測されるピーク遅延時間が小さく,震源距離が長くなれば,ピーク遅延時 間が大きくなる傾向がみられる.図 3-5 に測定したピーク遅延時間と震源距離の関係を周 波数帯ごとに示す.各周波数帯ともばらつきは大きい.ピーク遅延時間 𝑡𝑝 [s] の震源距離 R [km] に対する回帰直線は以下のように求められた. log 𝑡𝑝[2 − 4 Hz] = 2.23 log 𝑅 − 4.32 (3.1) log 𝑡𝑝[4 − 8 Hz] = 2.14 log 𝑅 − 4.19 (3.2) log 𝑡𝑝[8 − 16 Hz] = 2.06 log 𝑅 − 4.02 (3.3) log 𝑡𝑝[16 − 32 Hz] = 2.02 log 𝑅 − 3.89 (3.4) 得られた回帰直線の係数は高橋 [2005] よりも大きいものの,震源距離の増加に伴いピーク 遅延時間が増加する傾向を示す.これらの回帰直線に明瞭な周波数依存性は見られないが, 高周波側では傾きがやや小さくなる傾向にある.
3.2.2 プレート境界からの相対震源深さ依存性
先行研究 [古賀, 2010] により,観測されるピーク遅延時間は,プレート境界からの震源 深さに依存して大きく変化することが示されている.それによると,プレート境界近傍の 二重浅発地震面上面上層ではピーク遅延時間は大きく,沈み込むスラブ深部の二重浅発地 震面下面ではピーク遅延時間が小さくなる.ここでは,ピーク遅延時間のプレート境界か らの相対震源深さに対する依存性を述べる.図 3-6 から 図 3-11 に,プレート境界からの 相対震源深さ別にピーク遅延時間と震源距離の関係を示す.また,全データから求めた回 帰直線と,プレート境界からの相対震源深さ別に求めた回帰直線も併せて示す.ピーク遅 延時間にばらつきは見られるものの,プレート境界より深部側の地震では全体の回帰直線 よりも下側に分布する (図 3-6).すなわち,沈み込むプレート深部で発生した地震のピー17 ク遅延時間は全体の傾向と比べると小さい.一方,プレート境界近傍の地震は全体の回帰 直線と比べて上側に分布し (図 3-8,図 3-9),プレート境界近傍で発生した地震のピーク遅 延時間が大きいことを示す. 全体の回帰直線とピーク遅延時間を比較する目的で,地震-観測点毎に計測される全て のピーク遅延時間時間に対して,回帰直線 (3.1 ~ 3.4 式) からの偏差 Δ log 𝑡𝑝 を調べる. Δ log 𝑡𝑝 はひとつの地震―観測点の組み合わせでひとつの値をとるため,ひとつの地震ごと にそれを観測した全ての観測点で計測された Δ log 𝑡𝑝 の平均, Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ を求める.このよ𝑝 うにして求めた Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ を用いることにより,平均的なピーク遅延時間の震源距離依存性𝑝 の影響を除去することができるので,各地震に固有なピーク遅延時間の大小を評価するの に適した量となる. 求めた Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の頻度分布を図 3-12 に示す.Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の最頻値は 0 付近であり,その𝑝 頻度分布はおおよそ正規分布を示す.そのため,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ = 0 を基準とし,Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が 0 よ𝑝 りも大きい地震をピーク遅延時間が大きな地震のグループ,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が 0 よりも小さい地𝑝 震をピーク遅延時間が小さな地震のグループとして,おおまかに2つのグループに分類し た.図 3-13 および図 3-14 に,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が正の地震グループと負の地震グループの震源距𝑝 離に対するピーク遅延時間の関係をそれぞれ示す.どちらのグループも,ピーク遅延時間 は震源距離に顕著に依存していることがわかる.ピーク遅延時間のばらつきは全データを プロットした時 (図 3-5) と比べると小さくなる傾向があることから,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ を指標とし𝑝 てピーク遅延時間の大きな地震と小さな地震に分類できることがわかる.Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が正の地𝑝 震グループ,すなわちピーク遅延時間が大きい地震グループには,プレート境界近傍で発 生した地震が多く含まれている (図 3-13).一方,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が負の地震グループには,プレ𝑝 ート境界よりも深部で発生した地震が多く含まれている (図 3-14). 図 3-15 に, Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ と震源のプレート境界からの深さの関係を示す.プレート境界より𝑝 も 10km ほど深部側に離れた地震のほとんどは,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が小さくピーク遅延時間が小さい𝑝
18 地震グループに分類された.プレート境界近傍で発生した地震の Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ はばらつく様子𝑝 が見えるが,これはプレート境界付近で発生する地震に限って非常に大きな Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が得𝑝 られていることによる.しかし,同じプレート境界付近で発生した地震でも小さい Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ 𝑝 を示すものも多くあることから,S 波エンベロープ形状の差異を議論するためには,プレー ト境界からの相対震源深さ依存性を調べるだけでは不十分であり,それ以外の要因につい て調べる必要がある.
3.2.3 ピーク遅延時間の震源位置依存性
ピーク遅延時間の震源位置の依存性を調べるために,各周波数帯域における Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ を𝑝 震源位置にプロットした (図 3-16).Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ はどの周波数帯域でも同様の空間分布の特徴𝑝 を示し周波数に対する依存性はほとんどみられない.一方で,解析領域の東西,すなわち 海溝軸からの距離と Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ との間には対応関係があるように見える.断面図を見るとそ𝑝 の傾向は明確となり,断面図の横軸座標で -50 km (東経 142.5 度付近) を境にその東西で Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が顕著に変化している.-50 km より東側のプレート境界近傍で発生した地震は,特 に Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が大きく,西側の領域では,境界近傍の地震は相対的に Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が小さいこと𝑝 がわかる.東側の領域の深部の地震は,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が小さいことがわかる. 𝑝3.3 ピーク遅延時間解析結果のまとめ
本章で述べたように,ピーク遅延時間はプレート境界からの震源深さと東西方向におけ る震源位置に大きく依存する.ここでは解析領域の東西およびプレート境界からの相対震 源深さ別に地震を分け,それぞれのグループでの Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ 頻度分布図を調べた (図 3-17 ~ 𝑝 図 3-24) .東西方向には断面図の -50 km を基準に,プレート境界からの震源深さは 5 km19 以深,5 km から -5 km の間,-5 km 以浅を基準に地震を分けた. 領域東側では Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が大きい地震が多く発生したことがわかる (図 3-17).プレート境𝑝 界よりも 5 km 以深で発生した地震の数は多くないものの,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が小さい地震の割合が𝑝 多い (図 3-18).プレート境界近傍の地震は大きな Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ を示す (図 3-19).プレート境𝑝 界より 5 km 以浅で発生した地震の Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の特徴は,プレート境界より深部の地震と同𝑝 様の傾向が見られる.Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が正のグループとなる地震もあるが,プレート境界近傍で発𝑝 生した地震と比べると,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が小さい地震の割合が多い (図 3-20).領域西側の Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ 𝑝 は領域東側と比較すると小さい値を持つ (図 3-21).プレート境界からの震源深さの依存性 は小さく,いずれも領域東側のプレート境界近傍の地震と比べると Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ は小さいこと𝑝 がわかる (図 3-22 から 図 3-24). 本研究で得たピーク遅延時間解析の結果をまとめる.第一に,ピーク遅延時間は震源距 離の増加とともに大きくなる.これは先行研究 [高橋, 2005] で述べられた結果と一致する. 第二に,ピーク遅延時間はプレート境界からの震源深さで大きく変化し,沈み込むプレー トの深部やプレート境界より浅部で発生した地震は小さくなる傾向にあり,一方でプレー ト境界近傍の地震は顕著に大きくなる.これらの特徴も先行研究 [古賀, 2010] で示された 結果と同様である.第三に,ピーク遅延時間のプレート境界からの震源深さ依存性は,領 域東側で発生した地震で顕著に見られるが,領域西側で発生した地震には依存性がほとん ど見られない.さらに領域西側で発生した地震のピーク遅延時間は,領域東側のプレート 境界近傍の地震と比較すると小さい.
20 図 3-1 プレート境界より深部側の離れた地震の観測波形および RMS エンベロープの例. 地図中の波線経路を伝播した地震波の水平 2 成分の観測波形と 2-4,4-8,8-16, 16-32 Hz の各周波数帯での波形から合成した RMS エンベロープ.丸は地震を示 し,色でプレート境界からの深さを表す.ただし,プレート境界より深部を正, 浅部を負と定義する.黒色の四角は観測点を示す.波形の赤色破線と青色破線は それぞれ P 波と S 波の理論到達時を示す.黒色のドットは,S 波到達時刻より 30 秒 の時間窓でエンベロープの振幅が最大となったときの時刻を示す.波形の右上に 各周波数帯のピーク遅延時間を示す.波形枠上の英数字は,観測点名,震源距離, 地震情報を表す.
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図 3-2 プレート境界近傍で発生した地震の観測波形および RMS エンベロープの例.図の 見方は図 3-1 と同じ.
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図 3-3 プレート境界より浅部で発生した地震の観測波形および RMS エンベロープの例. 図の見方は図 3-1 と同じ.
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図 3-4 各周波数帯でのピーク遅延時間の観測点ごとの分布.四角は観測点を示し,色はそ の観測点で得た波形から測定したピーク遅延時間の大きさを対数スケールで示す. ただし,黒はピーク遅延時間を測定できなかった観測点を示す.丸は地震を示し, 色でプレート境界からの震源深さを示す.地図枠上の英数字は地震情報を表す.
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図 3-5 ピーク遅延時間と震源距離の関係.震源―観測点ペアごとに計算されたピーク遅延 時間をすべて点で示す.色はプレート境界からの震源深さを示す.灰色の波線は 各周波数帯で計算された回帰直線 (左上式) を表す.
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図 3-6 プレート境界からの震源深さが 15 km 以深の地震から求めたピーク遅延時間と震 源距離の関係.黒色の破線は,プレート境界の震源深さ別に各周波数帯で計算さ れた回帰直線 (左上式) を表す.灰色の破線は全データから計算された回帰直線 (式 3.1 から 式 3.4) を表す.それ以外の図の見方は図 3-5 と同じ.
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図 3-7 プレート境界からの震源深さが 5 km から 15 km の地震から求めたピーク遅延時 間と震源距離の関係.図の見方は図 3-6 と同じ.
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図 3-8 プレート境界からの震源深さが 0 km から 5 km の地震から求めたピーク遅延時 間と震源距離の関係.図の見方は図 3-6 と同じ.
28
図 3-9 プレート境界からの震源深さが -5 km から 5 km の地震から求めたピーク遅延時 間と震源距離の関係.図の見方は図 3-6 と同じ.
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図 3-10 プレート境界からの震源深さが -15 km から -5 km の地震から求めたピーク遅 延時間と震源距離の関係.図の見方は図 3-6 と同じ.
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図 3-11 プレート境界からの震源深さが -15 km 以浅の地震から求めたピーク遅延時間と 震源距離の関係.図の見方は図 3-6 と同じ.
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図 3-12 各周波数帯域で得られたピーク遅延時間の震源距離に対する回帰直線からの偏差 を地震ごとに平均した Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の頻度分布. 𝑝
32
図 3-13 Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が正の地震のピーク遅延時間と震源距離の関係.黒色破線は全データから𝑝
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図 3-14 Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が負の地震のピーク遅延時間の震源距離依存性.図の見方は図 3-13 と同𝑝
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図 3-15 Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ とプレート境界からの深さの関係.色はプレート境界からの震源深さを示𝑝
35 図 3-16 Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の空間分布 (2-4 Hz).(上) 平面図.丸は Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ を示し,色で大きさを𝑝 示す.黒色の星は本震震央を示し,鉛直断面図の基準点とした.海溝軸と垂直な 赤色の実線に沿って鉛直断面図を示した.黒色の四角は観測点,灰色のコンター は 1000 m 間隔の等水深線を示す.(下) 鉛直断面図.赤色と黒色の実線は断面に 投影した海底面とプレート境界 [Ito et al., 2005] を示す.
36 図 3-16 続き.4-8 Hz の Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の空間分布. 𝑝
37 図 3-16 続き.8-16 Hz の Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の空間分布. 𝑝
38 図 3-16 続き.16-32 Hz の Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の空間分布. 𝑝
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図 3-18 領域東側のプレート境界より 5 km 以深で発生した地震の Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ 頻度分布.サン𝑝
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第 4 章 議論
4.1 はじめに
本研究では,S 波エンベロープ形状からピーク遅延時間を測定し,観測されるエンベロー プ伸張メカニズムを震源周辺の不均質構造で説明することを試みた.ピーク遅延時間の震 源距離依存性を取り除いたところ,S 波エンベロープが示す特徴は,震源の位置によって大 きく 2 つのグループに分類できることがわかった.領域東側 (東経 142.5 度より東側) のプ レート境界近傍で発生する地震は,大きなピーク遅延時間を示す (図 3-16).また,この領 域でプレート境界より深部で発生する地震は小さなピーク遅延時間を示し,顕著にピーク 遅延時間の深さ依存性を示す.一方,領域西側 (東経 142.5 度より西側) の領域に分布する 地震については,プレート境界からの震源深さにかかわらず観測されるピーク遅延時間は 小さい.ここでは,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ 空間分布の特徴を詳細に調べるために,Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が特に大きな𝑝 地震と小さな地震に着目して議論を進める. Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の頻度分布図より,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が 0.2 より大きいものに着目する (図 3-17, 図 𝑝 3-21).これらの地震は領域東側のみに存在し,特にプレート境界に沿って分布する (図 4-1). 一方,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が -0.2 より小さいものに着目すると (図 3-17, 図 3-21),これらの地震は,𝑝 プレート境界より深部のスラブ内に多く分布する傾向にあることがわかる (図 4-2).先行 研究 [古賀, 2010] では,ピーク遅延時間の大小はプレート境界からの相対震源深さに依存 して大きく変化し,ピーク遅延時間が大きくなる地震は二重浅発地震面の上面上層で発生 した低角逆断層型地震に限定され,ピーク遅延時間が小さくなる地震は海溝陸側斜面につ いては二重浅発地震面上面の深部側と下面で発生したスラブ深部の地震であると結論づけ た.本研究のピーク遅延時間解析の結果と先行研究の解析結果とを比較すると,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が𝑝 顕著に大きい領域東部のプレート境界近傍の地震は,二重浅発地震面の上面上層で発生し た低角逆断層型地震に対応し,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が小さい領域東部のプレート境界よりも深い地震は,𝑝48 二重浅発地震面の上面深部側と下面の地震に対応していると考えられる.これを説明する ためには,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ のプレート境界からの相対震源深さ依存性に加えて,発震機構解との関𝑝 係を調べる必要がある.
4.2 ピーク遅延時間の発震機構解依存性
解析に用いた地震 820 個のうち,381 個の地震は F-net によってモーメントテンソル 解 (走向・傾斜角・すべり角) が推定された.ここでは,F-net の解を用いてこれらの地震 を分類し,ピーク遅延時間と発震機構解の関係を調べる.4.2.1 発震機構解の分類
発震機構解の分類方法を述べる.発震機構解の分類には Frohlich [1992] による方法を用 いた.この方法は,T 軸,B 軸,P 軸の dip angle によって発震機構解の断層タイプを判別 するもので,T 軸,B 軸,P 軸の dip angle がそれぞれ 50 度,60 度,60 度以上のとき, 逆断層型,横ずれ断層型,正断層型と定義する (図 4-3).走向 𝜙,傾斜角 𝛿,すべり角 𝜆 と, T 軸,B 軸,P 軸の単位ベクトル (𝒕,𝒑,𝒃̂) には次の関係がある [例えば,Stein and Wysession, 2009] (図 4-4). 𝒕 = 𝒏̂ + 𝒅̂ (4.1) 𝒑 = 𝒏̂ − 𝒅̂ (4.2) 𝒃̂ = 𝒏̂ × 𝒅̂ (4.3) ただし,𝒏̂ は断層面に垂直な法線ベクトル,𝒅̂ はすべりベクトルで, 𝒏̂ = (− sin 𝛿 cos 𝜙− sin 𝛿 sin 𝜙 cos 𝛿
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𝒅̂ = (− cos 𝜆 sin 𝜙 + sin 𝜆 cos 𝛿 cos 𝜙cos 𝜆 cos 𝜙 + sin 𝜆 cos 𝛿 sin 𝜙 sin 𝜆 sin 𝛿
) (4.5)
と書ける.𝒃̂ を書き下すと,
𝒃̂ = 𝒏̂ × 𝒅̂ = (− sin 𝜆 cos 𝜙 + cos 𝜆 cos 𝛿 sin 𝜙sin 𝜆 sin 𝜙 + cos 𝜆 cos 𝛿 cos 𝜙 cos 𝜆 sin 𝛿 ) (4.6) となる.T 軸,B 軸,P 軸の dip angle を 𝜃 とすると, 𝜃𝑖 = tan−1 |𝑧𝑖 2| √𝑥𝑖2+ 𝑦 𝑖2 (4.7) と表せる. i には t,b,p のいずれかであり,𝜃𝑖,𝑥𝑖,𝑦𝑖,𝑧𝑖 はそれぞれの軸の dip angle, x 座標,y 座標,z 座標を意味する.
4.2.2 発震機構解依存性の結果
解析に用いた地震を発震機構解で分類した結果,正断層型は 65 個,逆断層型は 181 個,それ以外のメカニズムは 135 個であった.ここでは,正断層型の発震機構解を示しプ レート境界よりも深部で発生した地震はすべてスラブ内地震,プレート境界よりも浅い地 震はすべて陸側プレート内部で発生した地震とする.本研究で解析に用いた逆断層型地震 のほとんどは傾斜角が 30 度よりも小さいことから,逆断層型地震の大部分はプレート境 界型地震と考えられる. 逆断層型地震,スラブ内地震,陸側上盤プレート内地震の Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ 空間分布について述𝑝 べる (図 4-5 から図 4-7).領域東側では,大きな Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ を持つ逆断層型地震がプレート𝑝 境界に沿って分布する.領域西側では,いずれの深さでも逆断層型地震の Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ は小さ𝑝 い (図 4-5).発震機構解が得られたスラブ内地震の数は少ないものの,領域東側のスラブ 内地震は Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が小さい.一方,領域東側の上盤内部の地震は Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が大きくなる傾𝑝50 向を示す.ただし,陸側プレート内部の地震は,メカニズムを決めることができた地震が 少ないことから,ピーク遅延時間が増大していると結論づけることは難しい.
4.3 回帰直線の傾きと伝播経路の不均質構造
地震ごとのエンベロープ形状を特徴づけるパラメータである Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ を定義する際には,𝑝 解析対象としたすべての地震を用いて,平均的なピーク遅延時間の震源距離に対する依存 性を求めた.ここでは,個別の地震についてピーク遅延時間の距離依存性を調べ,それが Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の大きさとどのような関係にあるのかを検討し,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の大小が何によっている𝑝 のかを検討する. 図 4-8 から図 4-11 に,領域東側のプレート境界型地震,スラブ内の地震,上盤側プレー ト内の地震,および領域西側の地震のそれぞれについて,ピーク遅延時間と震源距離の関 係の典型的な例を示す.いずれの地震についても,ピーク遅延時間が距離とともに大きく なる傾向が明瞭に認められるが,ピーク遅延時間が距離に対して増加する割合,すなわち 回帰直線を引いた時の傾きに顕著な違いを認めることができる.プレート境界型地震に対 する回帰直線の傾きは小さい一方で切片は大きく,その結果として全データから求めた回 帰直線と比較してピーク遅延時間が大きくなるために Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が大きくなる.領域東側の𝑝 スラブ内地震は,高い周波数帯域でばらつきが大きくなる傾向が見られるが,回帰直線の 傾きと切片がともに小さく,結果としてピーク遅延時間は全体から求めた回帰直線よりも 小さい側に分布する,すなわち小さな Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ をとることになる (図 4-9).陸側プレート𝑝 内部の地震に対する回帰直線の傾きは,傾きが小さい一方で切片が大きく,どちらかとい うと,領域東側のプレート境界型地震の特徴に類似するが,ピーク遅延時間の絶対値はそ れより小さい (図 4-10).領域西側の地震は,回帰直線の傾き・切片が平均的なものと同程 度のものが多く結果として Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の絶対値が小さくなる (図 4-11).以上のように個別の𝑝51 地震に対する Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の大きさは,それぞれの地震が持つピーク遅延時間の震源距離に対𝑝 する依存性の強さを強く反映していることがわかった. 図 4-12 は Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ とピーク遅延時間の距離増加率の関係を示す.Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が大きい地震𝑝 は増加率が小さいという傾向を明瞭に見て取れることができる.そしてそうした傾向を持 つ地震は,いずれもプレート境界までの距離が小さいこともわかる.一方で,プレート境 界より深部側で発生する地震の多くは,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ と増加率がともに小さいことがわかる. 𝑝 ピーク遅延時間の伝播距離に対する増加率は,伝播経路の不均質構造の強さを反映する [高橋, 2005] (図 4-13).高橋 [2005] によれば,短波長の変動成分に富むランダム不均質媒 質中を伝播する場合, S 波のピーク遅延時間は伝播距離に対して強い依存性を示す [高橋, 2005] (図 4-14).すなわち,ピーク遅延時間の距離増加率は伝播経路の不均質構造の短波長 成分の割合の指標となる.スラブ内地震に対してピーク遅延時間の増加率が小さいのは, 波線経路の多くをしめる太平洋スラブの内部では短波長の不均質性が相対的に小さいこと を意味する.一方で,プレート境界型地震が示すピーク遅延時間の距離に対する回帰直線 の傾斜が小さく切片が非常に大きいのは,震源近傍で急激にピーク遅延時間が増大するこ とに起因するのであろう.従って,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が大きな地震の震源が集中する東側の領域のプ𝑝 レート境界付近では短波長の不均質が局所的に大きいことが示唆される.
4.4 ピーク遅延時間の震源位置依存性と不均質構造
Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ 空間分布を調べた結果,領域東側で大きく,西側で小さくなることがわかったが, Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ 空間分布をより詳細にみると,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が非常に大きな地震が,領域東側の領域境𝑝 界近傍の南側に広がっている (図 4-1).この領域を地震波速度トモグラフィー (図 4-15) と比較すると,高 VP/𝑉𝑠 比の場所と対応している様子がわかる [Yamamoto et al., 2008].こ のことから,ピーク遅延時間は,局所的な構造不均質を反映する可能性も考えられる.52
図 4-1 Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の空間分布 (Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が 0.2 以上).(上) 平面図.丸は Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ を示し,色𝑝
で大きさを示す.灰色の丸は,Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が 0.2 よりも小さいことを表す.黒色の星𝑝
は本震震央を示し,鉛直断面図の基準点とした.海溝軸と垂直な赤色の実線に沿 って鉛直断面図を示した.黒色の四角は観測点,灰色のコンターは 1000 m 間隔 の等水深線を示す.(下) 鉛直断面図.赤色の実線は断面に投影した海底面 [Ito et al., 2004] を示す.
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図 4-2 Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の空間分布 (Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が -0.2 以下).地図中の灰色の丸は,Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ が -0.2 𝑝
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図 4-3 (上) 左から,純逆断層,純横ずれ,純正断層の発震機構解.それぞれについて,T 軸,P 軸,B 軸の配置を示す.(下) T 軸,P 軸,B 軸の dip angle に応じた発震機構 解の参画ダイアグラム.T 軸,B 軸,P 軸の dip angle がそれぞれ 50 度,60 度, 60 度以上のとき,逆断層,横ずれ,正断層と分類する.
55
図 4-4 断層面と走向 𝜙𝑓 (Strike angle),傾斜角 𝛿 (Dip angle),すべり角 𝜆 (Slip angle),断
層面の法線ベクトル 𝒏̂,およびすべりベクトル 𝒅̂ の位置関係 [Stein and Wysession, 2009].
56
図 4-5 逆断層型地震の Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の空間分布.丸は Δ log 𝑡𝑝 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ を示し,色で大きさを示す.𝑝
灰色の丸は,発震機構解を求めることができなかった地震,または逆断層型以外 の地震を表す.そのほかの図の見方は図 4-1 と同じ.
57
図 4-6 スラブ内地震の Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の空間分布.灰色の丸は,発震機構解を求めることができ𝑝
なかった地震,またはスラブ内地震以外の地震を表す.そのほかの図の見方は図 4-1 と同じ.
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図 4-7 上盤プレート内部の地震の Δ log 𝑡̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ の空間分布.灰色の丸は,発震機構解を求める𝑝
ことができなかった地震,または上盤プレート内部以外の地震を表す.そのほか の図の見方は図 4-1 と同じ.
59 図 4-8 プレート境界型地震 (地図上の色丸,地震番号 1077) のピーク遅延時間と震源距 離の関係.地図上およびグラフ内の色は,プレート境界からの相対震源深さを示 す.地図上の灰色の丸は,それ以外の震央を示す.黒色の四角は観測点を示す. グラフ内の黒色の破線は,各周波数帯で計算された回帰直線 (左上式) を表す.灰 色の破線は全データから計算された回帰直線 (式 3.1 から式 3.4) を表す.相関係 数 R2 と傾きの標準偏差 σ A を示す.
60 図 4-8 続き. (地震番号 1181)
61
図 4-9 スラブ内地震 (地震番号 1759) のピーク遅延時間と震源距離の関係.図の見方は図 4-7 と同じ.
62 図 4-9 続き.(地震番号 1788)
63
図 4-10 上盤内部の地震 (地震番号 1372) のピーク遅延時間と震源距離の関係.図の見方 は図 4-7 と同じ.
64 図 4-10 続き.(地震番号 1459)
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図 4-11 領域西側で発生した地震 (地震番号 1362) のピーク遅延時間と震源距離の関係. 図の見方は図 4-7 と同じ.
66 図 4-11 続き.(地震番号 1395)
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図 4-13 ランダムな速度ゆらぎが空間に非一様に分布する von Karman 型媒質におけるエ ンベロープのピーク遅延時間の伝播距離依存性 [高橋, 2005].白丸および黒色四角 は,シミュレーションにより得られたピーク遅延時間を示す.灰色の線は,構造 が変化する境界を表す.
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図 4-14 von Karman 型パワースペクトル密度関数 [高橋 2005].κ が小さいほど短波長領 域でのパワースペクトル密度が大きい.
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図 4-15 震源域周辺の地震波速度トモグラフィーによる VP/𝑉𝑠 構造 [Yamamoto et al.,
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第 5 章 結論
本研究では,宮城県沖の日本海溝陸側斜面域で発生した地震を東北地方の前弧域に分布 する陸上地震観測点で捉えた波形記録を用いて,S 波エンベロープの合成,ピーク遅延時間 の測定を行い,得られた測定値と海底地震計のデータを用いて決定された高信頼度の震源 深さとの対応関係を調べた.ピーク遅延時間は多重前方散乱の影響による S 波エンベロー プの伸張を特徴づけるパラメータである.震源距離依存性を除去したピーク遅延時間を用 いた解析を行った結果,ピーク遅延時間はプレート境界からの震源深さと震源位置に依存 することを明らかにした. ―海溝陸側斜面の中央付近を境にそれより海溝側 (領域東側) のプレート境界に沿って発 生する低角逆断層型の地震は, S 波エンベロープが顕著に伸張し,ピーク遅延時間が大 きくなる. ―領域東側のスラブ内地震の地震波形では,S 波の立ち上がりが明瞭であり,測定されるピ ーク遅延時間は小さい. ―領域東側の正断層型陸側上盤プレート内部の地震は,ピーク遅延時間がプレート境界地 震ほど大きくなく,顕著な S 波エンベロープ伸張は示さない. ―領域西側の地震は,震源深さや発震機構解に関わらず,ピーク遅延時間は小さく S 波エ ンベロープ伸張は示さない. さらに,ピーク遅延時間の震源距離に対する増加率を調べた結果,次のことがわかった. ―領域東側のプレート境界型地震に対する回帰直線の傾きは小さく切片は顕著に大きい. 全データから求めた回帰直線と比較すると,ピーク遅延時間は大きい側に分布する.72 ―領域東側のスラブ内地震に対する回帰直線は傾きと切片が小さく,ピーク遅延時間は全 体よりも小さい側に分布する. ピーク遅延時間の伝播距離に対する増加率は,伝播経路の不均質構造の強さを反映する ことから,スラブ内地震に対してピーク遅延時間の増加率が小さいのは,波線経路の多く をしめる太平洋スラブの内部では短波長の不均質性が相対的に小さいことを意味する.一 方で,プレート境界型地震が示すピーク遅延時間の震源距離に対する回帰直線の傾きが小 さく切片が非常に大きくなるのは,震源近傍で急激にピーク遅延時間が増大することに起 因すると考えられる.従って,ピーク遅延時間が大きな地震の震源が集中する東側の領域 のプレート境界付近では短波長の不均質構造が局所的に大きいことが示唆される.
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