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電気的・熱的特性評価に基づく銀薄膜配線の設計と加工に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

電気的・熱的特性評価に基づく銀薄膜配線の設計と

加工に関する研究

著者

佐々木 崇紘

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

11301甲第19216号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00130556

(2)

ささき たかひろ

佐々木 崇紘

研究科,専攻の名称 東北大学大学院工学研究科(博士課程)ファインメカニクス専攻

学 位 論 文 題 目

電気的・熱的特性評価に基づく銀薄膜配線の設計と加工に関する研究

論 文 審 査 委 員

主査 東北大学教授 燈明 泰成 東北大学教授 祖山 均

東北大学教授 橋田 俊之

論文内容要約

第 1 章 緒論 近年,テレビジョンやパーソナルコンピューターに代表されるエレクトロニクス機器の小型化・薄型化が進ん でおり,それに伴い材料の微細化に対する要求はますます増大している.この要求に応えるべく,先端材料シス テムには薄膜や細線といった微細材料が使われるようになってきている.ところで微細な金属材料はバルク材と 比較して異なる物理的諸特性を示すことが報告されている.例えば原子拡散現象を利用して創製したアルミニウ ムマイクロワイヤがバルク材に比べて約20 倍も高い降伏応力を示すことや,グレーティング基板へのスパッタ リングによって創製したニッケルナノワイヤがバルク材に比べて約8 倍の大きな電気抵抗率を示すことが報告さ れている.したがって微細材料の活用に際してはそれらの物理的諸特性を正確に把握することが必要である.ま た微細材料では高密度な電流によって発生するジュール熱による溶断や熱疲労,あるいは長期の大気腐食による 僅かな寸法誤差が材料の特性を変化し,これに伴い材料システム全般の損傷や性能低下が引き起こされる懸念が ある.そこで将来の更なる材料の微細化の要求に応じ,かつ先端材料システムの信頼性を高めるためには,微細 材料の電気的・熱的特性を正確に評価することに加えて,長期使用に対する諸特性の変化を把握することが重要 である.ところで,金属の中でも低ヤング率で曲げやすく,最も電気抵抗が低い銀が様々な薄膜配線構造として 用いられ,例えば透明導電膜のための薄膜配線格子,ガス濃度や腐食性を測定する銀薄膜センサーとして活用さ れている.したがって,特に銀薄膜配線の信頼性を高めることは重要である. 本論文は銀薄膜配線の電気的・熱的物性値を評価する手法を提案すると共に,評価した諸物性値を活用して当 該薄膜配線の信頼性と加工性を向上させることを目的としたものである.図1 に本論文の構成を示す.第 2 章で は,基板上銀薄膜配線の電気的・熱的物性値を評価する手法を提案している.第3 章では,評価した銀薄膜配線 の電気的・熱的物性値を利用して,電子デバイス等で活用される銀薄膜配線正方格子の最適設計指針を示した. 第4 章では,銀薄膜配線の耐環境性を評価するため,測定した表面電位差から大気腐食速度を算出する手法を提 案した.第5 章では,銀薄膜配線の集束イオンビームによるエッチング加工性を向上させる熱処理法について検 討した.以下に各章の概要を示す.

(3)

Fig. 1 Flow chart of this study. 第 2 章 基板上銀薄膜配線の電気的・熱的特性評価 これまでに,金属薄膜や細線の電気的・熱的特性を評価する研究は数多く行われてきた.例えばV lklein らは プラチナナノワイヤの電気抵抗と温度係数を測定し,熱エネルギー保存則から熱伝導率を評価している.また Sayer らはニッケルマイクロブリッジに対してジュール熱を負荷し,赤外線サーモグラフィを用いて温度を測定 すると共に有限体積法を利用する熱解析から熱伝導率を評価している.一方,基板上の薄膜細線を対象とした電 気的・熱的特性に関しては報告がなされていない.第2 章では,一連の通電実験と理論解析とを組み合わせるこ とにより,基板上の銀薄膜配線の電気的・熱的物性値を評価する手法を提案し,手法の妥当性を実験により検証 した.伝熱解析により得た解析解と実験により測定した電位差とを照合することにより,室温における電気抵抗 率,温度係数,熱伝導率,銀薄膜と基板との接触熱伝達率の4 つを評価した.はじめに異なる基板温度ごとに低 電流の通電実験を行って電気的物性値を測定した.次に室温で高電流の通電実験を行って熱的物性値を測定した. 最後に測定した電気的・熱的物性値に基づき溶断電流値を予測し,実験値と比較することによって評価した物性 値が妥当であることを立証した.評価した基板上銀薄膜配線の電気的・熱的物性値は先端材料システムの最適設 計や信頼性評価に活用できる.第3 章ではこれを基板上銀薄膜配線格子の最適設計に活用し,第 4 章では腐食挙 動の観察に活用した.また第5 章では薄膜配線の結晶粒を制御して薄膜のエッチング加工性を向上するために活 用した.

(4)

第 3 章 銀薄膜細線からなる正方格子の最適設計 金属薄膜細線がインジウム錫酸化物に替わる透明導電膜の材料として注目されている.透明導電膜とは透明か つ導電性を有する材料であり,主にタッチパネルなどに用いられる.金属は透明ではないが細線を整列,あるい はランダムに組み合わせることで,遠目で見ると細線を認識できないくらいに透明に見えるような格子が提案さ れている.格子を作製する手法が多く提案される一方で,金属細線格子の信頼性を高めるための設計指針につい てはあまり検討がなされていない.第3 章では,第 2 章で算出した電気的・熱的物性値を活用し,投影型静電容 量方式タッチパネルの透明導電膜に銀薄膜配線を用いることを想定した正方格子型透明導電膜の設計指針につい て検討した.ここに最適解の調査には有限要素法を用い,最適化すべき設計因子として,格子を構成する細線の 幅と長さ,正方格子の1 辺あたりの細線の本数,正方格子の個数の 4 つを考えた.はじめに環境耐性について, ジュール熱による温度上昇が溶断や熱疲労を引き起こす懸念があることを鑑み,正方格子の幾何学的寸法と構造 が正方格子の温度上昇に及ぼす影響を調査し,最適解を見出した.次に低消費電力を実現するため,正方格子の 幾何学的寸法と構造が正方格子の電気抵抗に及ぼす影響を調査し,最適解を見出した.幾何学的制約条件を考慮 した解析の結果,銀薄膜配線格子の温度上昇が最も小さく,かつシステムの電気抵抗が最も低くなる設計条件を 見出すことに成功した.以上の知見は透明導電膜の高性能化に大いに貢献するものである. 第 4 章 銀薄膜配線の電気抵抗法による大気腐食挙動の推定 金属薄膜配線は大気環境で腐食することにより,材料システムの劣化や性能低下を招く懸念がある.第4 章で は,3 年以上に亘り銀薄膜配線の大気腐食試験を行い,その腐食挙動を調査した.ここに薄膜配線が上面と側面 から一様に腐食する理論モデルを構築し,電位差法により測定した電気抵抗から腐食層の厚さを推定する手法を 提案した.大気暴露開始からおおよそ1 年半は腐食速度が一定であり,やがて暴露時間に対して腐食速度が減少 することを明らかにした.腐食試験後に銀薄膜配線のエネルギー分散型X 線分析を行ったところ,酸素と硫黄原 子が配線の上面と側面において検出され,構築した理論モデルが適切であることを立証した.得られた腐食速度 および大気腐食挙動に関する知見は銀薄膜配線の大気暴露に対する信頼性を高めることに貢献するものである. 具体的に,薄膜配線の腐食寿命を推定することが可能である. 第 5 章 銀薄膜のジュール熱処理による FIB エッチング速度の向上 微細材料を加工する手段の一つとして集束イオンビームが挙げられる.例えば,微小孔を設けたり,集積回路 の作製や修復を行ったり,断面観察用のサンプルを作製するために用いられている.この加工の原理は,加工対 象物の材料表面にイオンビームに照射されると表面近傍の原子が外部へはじき出される,スパッタリング現象を 利用するものである.通常,エッチング速度を向上させるためにガスが用いられ,加工対象の材料によって適切 なガスが存在する.しかしながら,銀についてはエッチング速度を向上する適切なガスは報告されていない.と

(5)

ころで,微細材料に電流を付与して生じるジュール熱により材料の結晶構造を制御することが行われている.上 述の加工原理によると,集束イオンビーム加工性と材料の結晶構造とは大いに相関があり,ジュール熱により結 晶構造を制御することで,集束イオンビームエッチングの加工性が向上できる可能性がある.第5 章では,銀薄 膜配線の結晶構造と集束イオンビーム加工における加工性との関係を調査した.具体的に,銀薄膜配線の結晶粒 をジュール熱により成長させることにより,集束イオンビームエッチング速度が上昇することを見出している. はじめに銀薄膜配線に一定直流電流を付与して生じるジュール熱により様々な結晶粒径を有する銀薄膜配線を作 製した.次に熱処理による粒界密度の減少を定量的に評価するため,4 端子法により電気抵抗率を測定した.一 般に電子の散乱が活発といわれる粒界の密度が減少するほど,電気抵抗率は小さくなることが知られている.電 気抵抗率は単位体積当たりの付与電流エネルギーが増大するほど低下し,異なる粒界密度の銀薄膜サンプルが得 られたことを確認した.同一条件で任意の時間,集束イオンビーム加工を行い,各加工時間において走査型電子 顕微鏡による観察を行った.電子顕微鏡画像から加工面積を算出し,これを外挿してエッチング速度を算出した ところ,エッチング速度は電気抵抗率が低下するほど,すなわち粒界密度が減少するほど増加した.銀薄膜配線 のエッチング速度は最大で1.75 倍大きくなり,エッチング時間を 43%短縮できた.これにより粒界密度を減少 させるほど銀薄膜の集束イオンビーム加工性が向上することを明らかにすると共に,そのためにジュール熱によ る熱処理が有効であることを示した. 第 6 章 結論 本研究は銀薄膜配線の電気的・熱的特性を評価することに成功すると共に,評価した電気的・熱的特性を次世 代材料システム創出のための配線設計と加工に活用したものである.具体的に銀薄膜配線格子の最適設計を行う と共に,耐環境設計に必要な大気腐食挙動の観察に成功した.また銀薄膜配線の結晶粒界密度を減少することに より,集束イオンビームによるエッチング加工性が向上することをはじめて見出したものである.

Fig. 1 Flow chart of this study.  第 2 章  基板上銀薄膜配線の電気的・熱的特性評価    これまでに,金属薄膜や細線の電気的・熱的特性を評価する研究は数多く行われてきた.例えば V lklein らは プラチナナノワイヤの電気抵抗と温度係数を測定し,熱エネルギー保存則から熱伝導率を評価している.また Sayer らはニッケルマイクロブリッジに対してジュール熱を負荷し,赤外線サーモグラフィを用いて温度を測定 すると共に有限体積法を利用する熱解析から熱伝導率を評価している.

参照

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