Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Three dimensional observation of the occlusal
grooves in the maxillary first and second deciduous
molars with micro-CT
Author(s)
原, 麻子
Journal
歯科学報, 109(5): 520-521
URL
http://hdl.handle.net/10130/1902
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 乳臼歯咬合面の裂溝形態ついて熟知しておくことは,齲蝕の診察・診断ならびに歯冠修復処置あるいは窩溝 填塞や刷掃指導などの齲蝕予防を行う上で極めて重要なことである。乳臼歯咬合面の裂溝形態の研究では,抜 去歯の研磨標本あるいは樹脂に包埋した薄切切片を用いた観察であるため,一方向からの観察しか行えず,し かも切りしろによって試料の一部が失われることから連続的に裂溝形態を観察することはできない。また同一 試料について複数の裂溝形態を観察し,その関連性を調査することも不可能である。 そこで,試料を非破壊的に,高解像度で任意の視点から解析することが可能となる極微小焦点エックス線 CT 装置(以下エックス線 Micro-CT)を用い,上顎第一乳臼歯および第二乳臼歯咬合面溝の裂溝形態について 観察し,形態学的特徴を明らかにするとともに,歯種間の裂溝の相違を明らかにすることを目的とした。 2.研 究 方 法 本研究は東京歯科大学倫理委員会の承認を得て行った(承認№22)。試料は交換期のため抜去された日本人上 顎第一乳臼歯および上顎第二乳臼歯である。咬合面型分類方法に従い,第一乳臼歯は頬側2咬頭,舌側1咬頭 の3咬頭歯,第二乳臼歯は頬側2咬頭,舌側2咬頭の4咬頭歯を選択し,それぞれ20歯ずつ計40歯を用いた。 これら試料について,エックス線 Micro-CT 装置を用いて,管電圧45kV,管電流90μA,倍率4倍の条件下で 撮影し,二次元スライス画像データを取得した。すべての二次元スライス画像について,ノイズ除去およびコ ントラスト調整を行った後,三次元構築ソフトを用いて解剖学的歯冠の立体画像を再構築した。計測部位は上 顎第一乳臼歯では中央溝近心部,中央溝遠心部,頬側溝,近心頬側三角溝の4部位,上顎第二乳臼歯では中央 溝近心部,中央溝遠心部,頬側溝,舌側溝の4部位である。これら各部位について,それぞれ直角に交わる等 間隔の二次元スライス画像を10断面作製し,各断面上で直径2mm の基準円を用いて咬合面溝の展開角,深 さ,窩溝底部エナメル質厚径を計測し,裂溝の形態変化を観察した。また裂溝形態はP,V,U,Iの4型に 分類した。 3.研究成績および考察 咬合面溝の展開角は,最も鋭角であったのは上顎第一乳臼歯では中央溝遠心部,上顎第二乳臼歯では舌側溝 であった。咬合面溝の深さは,中央溝遠心部を除いて,すべての溝で第二乳臼歯の方が第一乳臼歯に比べ有意 氏 名(本 籍) はら あさ こ
原
麻
子
(岡山県) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1743 号(乙第 724 号) 学 位 授 与 の 日 付 平成20年1月16日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第2項該当学 位 論 文 題 目 Three dimensional observation of the occlusal grooves in the maxillary first and second deciduous molars with micro-CT
掲 載 雑 誌 名 Pediatric Dental Journal 第18巻 2号 102∼115頁 2008年
論 文 審 査 委 員 (主査) 藥師寺 仁教授 (副査) 平井 義人教授 佐藤 亨教授 佐野 司教授 井出 吉信教授 歯科学報 Vol.109,No.5(2009) 520 ― 68 ―
に深かった。窩溝底部エナメル質厚径は,上顎第一乳臼歯で0.46mm∼0.60mm,第二乳臼歯で1.02mm∼ 1.27mm であり,第一乳臼歯に比べ第二乳臼歯の方がエナメル質厚径が厚い傾向にあった。裂溝形態は,上顎 第一乳臼歯では各溝ともP型が大多数を占めていたのに対し,上顎第二乳臼歯ではP型は14.5%,85.0%と低 く,舌側溝では展開角が90度未満であるV型が71.5%,棍棒状を呈するU型が10.5%,I型が3.5%を占めて いた。上顎第一乳臼歯中央溝遠心部ならびに第二乳臼歯舌側溝は小窩・裂溝の形態的特徴から齲蝕の初発・好 発部位になりやすく,特にこの領域を含む裂溝部への早期,窩溝填塞の応用が望ましい。また初期齲蝕に罹患 した場合,齲蝕罹患部のみを修復の対象とし,健康歯質には可及的に手を付けない修復法(Minimal Interven-tion)の応用が推奨される。 論 文 審 査 の 要 旨 乳臼歯咬合面溝の裂溝形態について熟知しておくことは,齲蝕の診査・診断ならびに歯冠修復処置あるいは 窩溝填塞などの齲蝕予防を行う上で極めて重要である。従来の研究では,研磨標本あるいは樹脂に包埋した薄 切切片を用いた観察のため,切りしろによって試料の一部が失われること,同一試料について複数の裂溝形態 を観察することは不可能であった。そこで本研究では,試料を非破壊的に任意の視点から観察できる極微小焦 点エックス線マイクロ CT 装置を用い上顎第一乳臼歯および第二乳臼歯の裂溝形態について観察を行った。 本研究では,上顎第一乳臼歯では中央溝遠心部,上顎第二乳臼歯では舌側溝の裂溝がいずれも同歯の他裂溝 よりも鋭角で溝が有意に深いことがわかった。特に上顎第二乳臼歯舌側溝は2歯種のいずれより鋭角であった ことから,同部に対する早期窩溝填塞の必要性が示唆された。 本審査委員会では,1)試料の計測方法について,2)計測項目として窩溝底部エナメル質厚径の意義, 3)上顎第二乳臼歯の解剖学的特徴の質疑がなされたが,いずれの質問に対しても概ね妥当な回答が得られ た。また,論文の記述に関して論文中の表現方法,統計処理について改善の指摘があり修正がなされた。 本研究で得られた知見は,今後の歯科医学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値すると判 定された。なお,英・独2ヶ国語につき試験を行った結果,合格と認定した。 歯科学報 Vol.109,No.5(2009) 521 ― 69 ―