Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
継承と発展 : 素粒子論と宇宙論の120年
Author(s)
望月, 隆二
Journal
歯科学報, 113(2): 192-192
URL
http://hdl.handle.net/10130/3068
Right
20世紀は科学の世紀であった。多くのものが発明され,人々の暮らしは豊かになり,あるいは,大きな悲劇 を招いた。「科学の世紀」はそれにとどまらず,宇宙や物質に対する見方,時間・空間概念,さらには論理と いった科学が「依って立つ」部分,むしろ哲学の範疇と思われる部分にまで,19世紀には思いもよらなかった ような変更を強いた。 例えば,今では当たり前としか思えない原子の存在に対して,19世紀中頃の人々は懐疑的であった。19世紀 後半から20世紀にかけて現在考えられているような原子像が定着するが,20世紀に入ると程なく原子はアト ム,すなわち分割できないものとしての地位を失った。その後も,何が素粒子か,という問いに対する答は変 わり続け,現在では素‘粒子’ではなく,ひもが物質の究極の構成要素であるという超ひも理論が有力視され ている。 見方が大きく変わったのは物質に対してだけではない。アインシュタインは1905年に特殊相対性理論によっ て時間や空間の長さが絶対的ではないことを示し,その後,重力によって空間が曲がり,時間の流れが変化す ることを明らかにした。その彼でさえ永遠に変化しないと信じていた宇宙が実は膨張を続けていることは, 1929年にハッブルにより見出された。さらには20世紀末から21世紀にかけて宇宙の膨張が加速度的であること が観測により明らかにされたが,この事は宇宙に満ちているエネルギーの9割以上が人類にとって全く未知な 存在であることを示している。 中でも最も深刻な哲学的影響を与えたのは1920年代にほぼ完成した量子力学である。量子力学によれば,極 微の世界では日常的な論理は通用せず,電子や光は常識からかけ離れた振る舞いをする。量子力学は無数の実 験によりその正しさが証明されており,現代では家電製品などにも利用されているが,一方で「実在とは何 か」「自由意志とは何か」といった量子力学が内包する哲学的疑問は未だに解決されていない。 これらの理論は互いに絡み合いながら発展を続けている。現在では特殊相対性理論は素粒子物理学の基本中 の基本であり,逆に宇宙論を学ぼうとする者にとって素粒子論は必須である。20世紀をまたいで物理学者の見 る世界はどのように変わったのかを概観する。 ≪プロフィール≫ <略 歴> 昭和56年3月 国際基督教大学教養学部卒業 昭和56年9月∼昭和62年3月 社会福祉法人 子持山学園勤務 昭和63年3月 茨城大学大学院理学研究科修了(理学修 士) 平成3年3月 千葉大学大学院自然科学研究科修了 学術博士の学位受領 平成7年4月∼平成12年3月 東京歯科大学物理学研究室講師 平成12年4月∼平成19年3月 同 助教授 平成19年4月∼平成22年8月 同 准教授(職名変更) 平成22年9月∼ 同 教授