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IRUCAA@TDC : 日本人地域在住高齢者における咀嚼機能とサルコペニアとの関連性

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Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

日本人地域在住高齢者における咀嚼機能とサルコペニア

との関連性

Author(s)

村上, 正治

Journal

歯科学報, 116(5): 357-362

URL

http://doi.org/10.15041/tdcgakuho.116.357

Right

Description

(2)

357

解説(学位論文 解説)

日本人地域在住高齢者における咀嚼機能と

サルコペニアとの関連性

The relationship between chewing ability and sarcopenia

in Japanese community-dwelling older adults

村上 正治

公益社団法人東京都豊島区歯科医師会口腔保健センターあぜりあ歯科診療所

Masaharu Murakami

略歴 2009年日本歯科大学生命歯学部卒業,2014年東京歯科大学大学院歯学研究 科(オーラルメディシン・口腔外科学専攻)修了,2015年より現職。受賞歴:2014 年日本老年歯科医学会第25回学術大会優秀口演賞,Geriatrics Gerontology Inter-national Best Article Award 2015

キーワード:咀嚼機能,色変わりガム,地域,高齢者,サルコペニア

Key words:chewing ability, color-changeable gum, community, elderly, sarcopenia

(2016年3月29日受付,2016年6月7日受理,歯科学報

116:357-362,2016.)

http : //doi.org/10 .15041 /tdcgakuho.116 .357

標準的な概念として国際的に広く用いられている

3)

はじめに

(図2)。EWGSOP の特徴は,サルコペニアを重症

近年,介護予防をより効果的に展開するため,要

度別に分類している点で,筋量の低下のみが認めら

支援,要介護になる前段階である“虚弱”の概念が提

れる段階をプレサルコぺニア,更に,筋力,身体機

唱され,虚弱予防の対策が検討されている(図1)。

能のいずれかが低下する段階をサルコぺニア,すべ

その議論の中で加齢性の骨格筋量減少に関して,筋

ての項目の低下が認められる段階を重症サルコぺニ

力の低下を含んだ概念としてサルコペニアが注目さ

アとして重症度を定義している。また,2014年には

れており,多くの報告が行われている

1,2)

。一連の議

Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)に

論を通して,2010年 European Working Group on

て,アジア人におけるサルコペニアのカットオフ値

Sarcopenia in Older People(EWGSOP)にて虚弱予

が提唱されている

4)

(図2)

。老化に伴う骨格筋量減

防を目的として,サルコペニアを筋量,筋力さらに

身体機能の構成因子から構築した概念が提唱され,

図1 サルコペニアの概念 図2 サルコペニアの分類とカットオフ値

(3)

358 村上:咀嚼機能とサルコペニアの関連性

少は,高齢者の ADL を低下させ,QOL の維持を

困難にさせることが報告されている。一方,摂取す

る栄養素のバランスが崩れると筋量・筋力・身体機

能の低下が認められるとの報告がある

5)

。また,摂

取する栄養素のバランスを保つためには咀嚼機能

維持が重要であるとの報告もある

6,7)

。食事を楽しむ

ことは高齢期の QOL を支える最も重要な因子の1

つであり,健康を維持増進するためにも重要であ

8,9)

。これまでに咀嚼機能と握力,身体機能との関

連性

10,11)

や舌筋厚とサルコぺニアの関連性

10)

を検討

した報告はあるが,咀嚼機能とサルコぺニアの関連

性を検討した報告はない。そこで本研究は,咀嚼機

能とサルコぺニアの関連性を検討することを目的

に,日本人地域在住高齢者を対象として,サルコぺ

ニアとの関連が確認されている既知の因子に,咀嚼

機能関連因子を加えて検討したので報告する。

対象および方法

1.研究対象

東京都健康長寿医療センター研究所が,老年症候

群の早期発見,早期治療のための包括的健診の案内

を郵送した。案内は東京都板橋区内の9つの町丁目

在住の65歳~85歳の男女に,施設入居者と過去の当

研究における介入研究等参加者を除いた7,

015名に

対し行われた。このうち1,

325名から参加希望があ

り,実際に参加したのは835名であった。このうち

研究に関する同意の得られなかった者や,心臓ペー

スメーカー装着や歩行が困難などの理由によりデー

タに欠損値のある者を除いた761名のデータを分析

対象とした。

調査は東京都健康長寿医療センター研究所にて,

2012年9月25日から10月5日に実施した。本研究の

対象者は徒歩,自転車,公共交通機関,もしくは家

族による送迎を利用して調査会場へ来ることが可能

であり,かつ指示行動がとれる者とした。調査対象

者には,個別に文章による同意を得て調査を実施し

た。なお,本研究は,東京都健康長寿医療センター

研究所の倫理委員会の承認を得て実施した(Issue#.

23 -1253 in 2011)。

2.サルコぺニア重症度

サルコぺニアの分類は EWGSOP による概念に従

3)

,筋肉量(インピーダンス法による骨格筋量),

筋力(握力)および身体機能(通常歩行速度)を用い

て,健常者とサルコぺニア重症度(プレサルコペニ

ア・サルコペニア・重症サルコペニア)として分類

した。本研究ではさらに健常者とプレサルコぺニア

を正常群(筋力もしくは身体機能の低下が顕在化し

ていない群)とし,サルコぺニアと重症サルコぺニ

アをサルコペニア群(筋力もしくは身体機能の低下

が顕在化している群)とした。また AWGS による

カットオフ値を用いた

4)

3.全身状態の評価

①身 長

身長計を用いて,対象者には踵,臀部,背中,頭

を尺柱につけるように指示し,頸・腰・膝が良く伸

びているかを確認したうえで,目盛を真横から読み

取って,0.

1cm 単位で測定した。

②体 重

対象者は,体重計の中心部に書かれた足形の上に

静かに乗り,安定した値を0.

1kg 単位で測定した。

③ SMI(Skeletal Muscle mass Index)

InBody720

(Bio Space 社製)を用いた生体電気イ

ンピーダンス法(Bioelectrical impedance analysis;

BIA 法)により体組成を測定し,上肢と下肢筋肉量

の総和を四肢筋肉量(kg)とした。測定した四肢筋

肉量を身長(m)の二乗で割ったものを SMI とした。

④栄養状態の評価

対象者の栄養状態を反映する指標として BMI を

測定した。また,計算式は体重(kg)を身長(m)の二

乗で割ったものとした。

4.運動機能評価

日本の厚生労働省発行の運動器の機能向上マニュ

アルに準じて測定した

13)

。測定の画一化を図るため

に,事前に調査員に対し体力測定方法の研修を行

い,統一した方法によって行われた。

①握 力

筋力の指標として握力を採用した。握力はスメド

リー式握力計(アズワン社製)を用いた。握力を2回

計測し,高い値を採用した

14,15)

②5m 通常歩行速度(歩行能力)

3m の加速路,5m の測定区間,3m の減速路

からなる歩行路を設置し,地面から離れている足が

測定区間始まりの印を超えた時点から,測定区間終

わりの印を超えるまでの所要時間を測定した。2回

― 14 ―

(4)

359 歯科学報 Vol.116,No.5(2016)

の測定のうちいずれか速い値を測定値とした

14,15)

5.口腔関連項目

測定の画一化を徹底するために,事前に本調査に

関する十分な研修を受けた2人の歯科医師・5人の

歯科衛生士によって統一した検査を実施した。

①咀嚼機能

色変わりガム(キシリトールガム咀嚼力判定用

を用いて咀嚼機能の判定を行った。1分間咀嚼させ

たのち,白紙上に吐き出させ,検査者によってカ

ラーチャートを用いて5段階評価を行った

16)

。更

に,1と2を“不良”と分類し,また3,4および5

に分類されたものを“良好”とした。

②現在歯数

残根を除いた口腔内に萌出している歯を現在歯数

とした。

③機能歯数

歯の欠損部位に対してブリッジ(架工義歯),有床

義歯(可撤式義歯),インプラント(人工歯根)によっ

て補綴処置をしている歯数に現在歯数を加えたもの

を機能歯数とした。

④咬合力

咬合力測定システム用フィルムであるデンタルプ

レスケール50H タイプ R

と専用評価機器オクルー

ザー

Ⓡ17)

を用いて評価した。

6.統計分析

連続変数に対応する二群間の差の検定は,Mann-Whitney U 検定を用いた。またカテゴリー変数に

対しては,χ

検定を用いて検討した。またサルコペ

ニアの関連因子を調べる目的で二項ロジスティック

回帰分析(強制投入法)による検討を行った。統計

分析には,SPSS20.

0J for Windows を用い,危険率

5%未満を有意差ありとした。

結 果

1.対象者の基本属性

今回の調査における対象者の基本属性を表1に

示す。対象者は761名(平均年齢73.

0±5.

1歳),男性

314名(平均年齢73.

7±5.

5歳),女性447名(平均年齢

72.

6±4.

9歳)であった。女性が男性より現在歯数

(P=0.

040)において有意に高値を示した。年齢(P

=0.

011),BMI(P<0.

001),SMI(P<0.

001),握

力(P<0.

001),咬合力(P=0.

011)においては男性

が女性よりも有意に高い値であった。またサルコペ

ニア重症度の正常群とサルコペニア群の割合は,サ

ルコペニア群が男性では14.

0%であり,女性では

16.

1%であった。しかしサルコペニア群の割合は男

女間に有意差は認められなかった。

2.サルコペニア重症度と各因子の比較

サルコペニア重症度(正常群とサルコペニア群)

と各因子の比較を表2に示す。サルコペニア群に

おいて年齢が有意に高値となった(P<0.

001)。ま

た,BMI(P<0.

001),SMI(P<0.

001),握力(P<

0.

001),通常歩行速度(P<0.

001),現在歯数(P<

0.

001),咬 合 力(P<0.

001),咀 嚼 機 能(P<0.

001)

はサルコペニア群において有意に低下した。さらに

サルコペニア群の割合は年齢が75歳未満では10.

6%

表1 対象者の基本属性 合計(n:761) Mean±SD 男性(n:314) Mean±SD 女性(n:447) Mean±SD P-value 年 齢 73.0±5.1 73.7±5.5 72.6±4.9 0.011(u) BMI(kg/ m2 ) 22.9±3.3 23.7±3.1 22.4±3.3 <0.001(u) SMI(kg/ m2 ) 6.5±1.0 7.3±0.9 5.9±0.6 <0.001(u) 握力(kg) 24.3±8.2 31.2±7.1 19.4±4.7 <0.001(u) 通常歩行速度(m/s) 1.4±0.2 1.4±0.2 1.4±0.3 0.689(u) 現在歯数 19.9±8.9 19.0±9.4 20.5±8.6 0.040(u) 機能歯数 27.0±3.0 26.8±3.5 27.1±2.6 0.386(u) 咬合力(N) 529 ±342 576 ±383 497 ±305 0.011(u) 咀嚼機能 良 好 653(85.8) 275(87.6) 378(84.6) 0.241(χ2 ) 不 良 108(14.2) 39(12.4) 69(15.4) サルコペニア重症度分類 正常群 645(84.8) 270(86.0) 375(83.9) 0.429(χ2 ) サルコペニア群 116(15.2) 44(14.0) 72(16.1) ― 15 ―

(5)

360 村上:咀嚼機能とサルコペニアの関連性 表2 サルコペニア重症度と各因子の比較(n=761) 表3 サルコペニア関連因子の検討 正常群 サルコペニア群 P-value OR 95% CI P-value Mean±SD Mean±SD 年齢 72.6±5.0 75.7±5.2 <0.001(u) 年齢区分 (前期:後期) 414:231 49:67 <0.001(χ 2 BMI(kg/ m2 23.3±3. 20.9±2. <0.001(u) SMI(kg/ m2 6.6±1. 5.7±0. <0.001(u) 握力(kg) 25.6±8.1 17.1±4.5 <0.001(u) 通常歩行速度(m/s) 1.4±0.2 1.2±0.3 <0.001(u) 現在歯数(本) 20.3±8.8 17.5±9.4 <0.001(u) 機能歯数(本) 27.0±2.9 26.7±3.6 0.693(u) 咬合力(N) 551 ±347 407 ±280 <0.001(u) 咀嚼機能 (良好:不良) 572:73 81:35 <0.001(χ 2

に対し,75歳以上では22.

5%であった(P<0.

001)。

3.サルコペニア関連因子の検討

ロジスティック回帰分析(強制投入法)の結果を表

3に示す。従属変数は,正常群を0とし,サルコペ

ニア群を1とした。独立変数として年齢,BMI,現

在歯数,咬合力,咀嚼機能を採用した。年齢(OR=

2.

37,CI=1.

52-3.

70), BMI( OR =1.

33, CI =

1.

23-1.

45), 咀嚼機能( OR =2.

18, CI =1.

21-

3.

93)がサルコペニアに対して有意な関連因子とし

て抽出された。

考 察

サルコペニアは Fried らの提唱した Frail モデル

の中核をなす概念

18)

で,近年,次のような多くの関

連報告がなされている。サルコぺニアは,高齢者の

ADL を低下させ,QOL の維持が困難になるという

報告や

1,2)

,サルコぺニアの本態である筋量・筋力・

身体機能の低下予防には,摂取する栄養素のバラン

スが重要であるとする報告もある

5)

。一方,摂取す

る栄養素のバランスを維持するには咀嚼機能維持が

必要であるとの報告もある

6,7)

。これらの報告から,

咀嚼機能とサルコペニアの関連性が推察されるが,

本仮説は検証されていない。そこで本研究では既に

サルコペニアとの関連性が明らかになっている因子

も含め,咀嚼機能とサルコぺニアの関連性について

検討することとした。

1.対象の妥当性について

EWGSOP のコンセンサスガイドは世界でも広く

採用されているサルコぺニアの診断基準であり,

年齢(前期高齢者=0, 後期高齢者=1) 2.37 (1.52 ‐3.70) <0.001 BMI(kg/m2 ) (低下するに伴い) 1.33 (1.23 ‐1.45) <0.001 現在歯数(本) 1.01 (0.98 ‐1.04) 0.523 咬合力(N) 1.00 (1.00 ‐1.00) 0.007 咀嚼機能 (良好=0,不良=1) 2.18 (1.21 ‐3.93) 0.010

今まで,統一されていなかったサルコぺニアの定

義の統一的見解を図ったものである

3)

。しかし,

EWGSOP における基準値は欧米における白人や黒

人を対象としたものである。よって,体格の違う日

本人にそのまま適応することは困難である

19)

。した

がって,本研究ではアジア人を対象とした AWGS

の基準値

4)

に従ってサルコぺニアの分類を行った。

またサルコペニア群において BMI は有意に低下し

ていた。これまでにもサルコぺニアの者は BMI が

有意に低下するとの報告があり

20)

,本調査でも同様

の結果が得られたことは,本研究における対象者の

妥当性を裏付けるものと考える。

2.色変わりガムを用いた咀嚼機能評価の妥当性に

ついて

本調査では咀嚼機能評価に,色変わりガムを採用

した。本評価法は簡便に短時間で対象者の咀嚼機能

を評価することができ,他の方法による咀嚼機能評

価と有意な相関が報告されている

21)

。また今回用い

たカラーチャートを用いた評価は,色彩色差計を用

いて評価した場合と比較しても強い相関があると報

告されている

16)

。本研究では,EWGSOP において

握力や歩行速度のカットオフ値に四分位の最下位を

採用していることを参考とし,咀嚼機能においても

同様のカットオフ値を採用した。その結果,咀嚼機

能の5段階評価のうち1・2を不良とすることで四

分位の最下位にほぼ適合し,その割合は14.

1%で

あった。これまでの地域在住高齢者を対象とした,

色変わりガムを用いた調査

22)

においても,5段階評

価のうち,不良に該当する割合は今回の結果と近似

しており,本結果の妥当性を裏付けるものと考える。

3.ロジスティック回帰分析の結果について

今回,サルコペニア重症度を従属変数化するにあ

― 16 ―

(6)

361 歯科学報 Vol.116,No.5(2016)

たり,プレサルコぺニアとサルコぺニアの間にカッ

トオフを設定した。この理由は,プレサルコぺニア

とサルコぺニアの差は筋肉量の低下だけでなく,筋

力もしくは身体機能の低下が顕在化しているからで

ある。また,膝や足首の筋力低下は,日常生活での

身体のバランス能力や歩行速度の低下に関連すると

いう報告

23)

や,身体機能の低下が,健康状態悪化の

予測因子となる報告

24)

などから,高齢者における

QOL 低下のターニングポイントと考えられるため

である。サルコぺニアの関連因子について検討した

ところ,これまでの報告

25,26)

と同様にサルコぺニア

には年齢や BMI が関連していることが確認され

た。今回,調査対象者の日常的なタンパク質の摂取

は検討していない。これは先行研究

25,26)

と同様に身

体機能の低下により,代謝が低下し食欲の低下が引

き起こされている可能性がある。日常的な栄養の欠

乏があった場合,BMI の低下,更には筋量の減少

が起こり,身体機能が低下する負のサイクルが起こ

ると考えられる。更に,今回,サルコぺニアと咀嚼

機能が関連していることが示された。本研究でのサ

ルコぺニアは筋量,筋力,身体機能の3因子からな

る EWGSOP の概念を採用した。この3因子は,年

齢や栄養との関連はこれまでにも多くの報告があ

2,5)

。また筋力と身体機能はそれぞれ咀嚼機能との

関連がこれまでにも報告されている。Moriya らは

現在歯数に関係なく咀嚼機能と握力との関連性を報

告している

10)

。また,Takata らも現在歯数に関係

なく咀嚼機能と身体機能には関連があるとしてい

11)

。一方,全身の筋量と咀嚼機能との関連をみた

報告はないが,これまでに咀嚼機能に関連する舌の

厚みと上腕筋肉量が関連するとの報告はある

12)

。サ

ルコペニアの構成因子である筋力,身体機能に関連

する筋の多くは抗重力筋であり,これら抗重力筋

の筋力低下は全身性に引き起こされるとされてい

27)

。咀嚼機能に関連している筋の多くも抗重力筋

に分類されることから

28)

,同時に筋力低下が起こっ

ているものと考えられる。また,筋量の低下によっ

て筋力の低下が引き起こされ,更に筋力の低下は,

筋の委縮を招き,機能の低下を引き起こすと報告さ

れている

29)

。以上から,今回,年齢や栄養を考慮に

入れても,咀嚼機能とサルコぺニアに関連性が認め

られた背景として,全身の筋量の変動と咀嚼機能に

関連する筋量の変動が関係している可能性が考えら

れた。今回,咀嚼機能とサルコぺニアの関連を明ら

かに出来たことは,今後,歯科的立場から高齢者の

サルコぺニアの進行を抑制する方策を検討するうえ

で意義あることと思われる。

4.今後の展望

本研究結果の限界について述べる。第1に,本研

究の対象者は会場招聘型の健診へ自主的に参加を希

望した者であり,健康意識の高い集団である可能性

や,独歩,もしくは介助下での参加が可能なことか

ら,自立度の高い集団であることが考えられた。そ

のため,本知見は自立度の低い高齢者集団には当て

はまらない可能性がある。第2に,本研究は横断研

究であり,サルコぺニアと咀嚼機能について,時間

経過による変化を考慮した因果関係までは証明出来

ていない。本研究では咀嚼機能がサルコぺニアと関

連しているか検討を行ったが,咀嚼筋の量または質

が低下することで咀嚼機能低下が起こるという,咀

嚼筋の狭義なサルコぺニアの存在を考えることもで

きる。今後は,咀嚼機能とサルコぺニアの相互関係

について,縦断研究や介入研究を行い,更に詳細に

因果関係を調べる必要がある。

まとめ

本研究の結果,日本人地域在住高齢者を対象とし

て咀嚼機能の低下とサルコぺニアとの間に関連があ

り,咀嚼機能は既知の関連因子である年齢と同程度

のオッズ比で関連していた。

文 献

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本論文は,下記学位論文の内容を解説した。

Relationship between chewing ability and sarcopenia in Japanese community-dwelling older adults. Masaharu Murakami, Hirohiko Hirano, Yutaka Watanabe, Katsuhiko Sakai, Hunkyoung Kim and Akira Katakura. Geriatr Gerontol Int, 15 ; 1007-1012,2015.

連絡先:〒170 ‐0013 東京都豊島区東池袋1-20-9 池袋保健所6F あぜりあ歯科診療所 村上正治

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