判断を正当化するためのグラフ理解に対するボトムアップ
およびトップダウン処理の影響
Influence of Top-down and Bottom-up Processing in Comprehension of Graphs to
Justify Decisions
福岡未紗
1三輪和久
1Misa Fukuoka
1, and Kazuhisa Miwa
11
名古屋大学大学院情報学研究科
1
Graduate School of Informatics, Nagoya University
Abstract: A previous study examined decision-making processes together with graph comprehension and
in particular the influence of bottom-up and top-down processing on them. Using a slightly altered procedure, this study examined bottom-up and top-down processing relative to graph comprehension where a decision is made first, followed by graph comprehension. We compared the results of these studies. The pattern of results observed in the previous study was not observed in this study, suggesting that the influence of impression on graph comprehension was mitigated to justify the declared decision in advance. Attitude was observed to have an influence in the decision in both the previous and current studies, showing that it strongly influences decision making regardless of the degree to which the graph is comprehended. We consider that objectively grasping and communicating that various factors are affected on understanding information will lead to better understanding of information and judgment.
1. はじめに
人が様々な外的情報に接し,判断を下す際,情報 をより批判的に理解し,判断することがしばしば求 められる。例えば,「何を信じ,何を行うかの決定に 焦点を当てた,合理的で反省的な思考 [1]」である批 判的思考は,教育や経済学など多くの分野で必要性 が唱えられている。Aufderheide [2] は,「メディア・ リテラシーのある人物とは,メディアにアクセスし, それを分析し,評価し,創造することができる人物 であり,全ての人がそうなる機会を持つべき」と定 義した。この定義は,様々なメディア・リテラシー 研究で取り上げられている[3][4]。メディア・リテラ シーのように,グラフから取り出された情報の理解 に基づく意思決定の能力は重要である。グラフの情 報を理解する方法を決定する要因はいくつかある。 たとえば,ボトムアップ的な要因として,グラフ表 現は認知的エラーを減らし,情報を理解しやすくす る [5][6]。また,トップダウン的な要因として,先行 知識はグラフの評価を異ならせる [7]。Fukuoka, Miwa & Maehigashi [8] は,外的情報とし て棒グラフを用い,外的情報の理解と判断のプロセ スに対する性質の異なるトップダウン処理の影響を 検討した。そこでは,グラフ理解に関する 2 つの研 究に基づき,実験的枠組みを作成した (図 1)。グラ フ理解の CI モデル (Construction-Integration Model [9]) では,グラフ理解が,先行知識からのトップダ ウン処理と視覚的特徴からのボトムアップ処理の統 合 に よ っ て 行 わ れ る と さ れ た 。 ま た , CaMeRa (Computational Model of Multiple Representations [10]) では,グラフ理解のプロセスは,記号的情報を「抽 出」する段階と,抽出した情報と宣言的知識を結び つけ「解釈」する段階に分けられるとされた。先行 研究では,以上の 2 つのモデルを統合した。 また,性質の異なるトップダウン処理として,「印 象」と「態度」の 2 つの要因を取り上げた。「印象」 は,関連する不十分な情報に基づいて一時的に形成 され [11],「態度」は,社会的対象に向けられ,社会 規範意識に基づいて比較的時間をかけて形成される [12]。これらの要因は,形成時間が異なることから, 性質が異なると考えられる。 Fukuoka et al. [8] では,印象や態度といった要因に よって駆動されたトップダウン処理は,グラフ理解 と判断のプロセスに異なる影響を及ぼすことが示さ れた。具体的には,印象に基づくトップダウン処理 はグラフ理解の初期の段階と判断に対して影響を示 人工知能学会研究会資料 SIG-ALST-B803-02
し,態度に基づくトップダウン処理はグラフ理解に は影響せず,最終的な判断にのみ影響を及ぼした。 さらに,基本的に判断はグラフの解釈に基づいて行 われるが,態度に基づくトップダウン処理が介入す るときには,その影響が排除されたことが示された。 先行研究では,グラフ理解に基づいて判断をする 思考プロセスに焦点を置き,ボトムアップおよびト ップダウン処理の影響を検討した。一方で,人は常 に情報を正確に読み取り,合理的な思考に基づいた 判断を下すわけではない。むしろ,好ましい結論を 既に持っており,それを正当化するために,歪んだ 情報の探索や評価を行う傾向が見られる。例えば, 人は,自分の意見を支持する証拠ばかり集め,反す る証拠に対しては,その価値を軽減して評価する, 確証バイアスと呼ばれる傾向を持っている [13]。ま た,Kunda [14] は,動機づけられた推論として,人 は,自分の好む結論に達したいという動機づけによ って,最も望ましい結論を与えそうな証拠の使用を 強化することを提唱している。 情報の理解において,様々な要因が影響すること を客観的に把握し,伝えることは,より良い情報の 理解や判断の教育に繋がると考える。ゆえに,本研 究では,先行研究の実験の枠組みを基に,判断を正 当化するためのグラフ理解に関する新たな実験を実 施した。具体的には,先行研究と同一の課題を用い, 手続きのみを変更した (図 2)。先行研究においては, 棒グラフを提示した後,差の受容項目,解釈項目, 判断項目の順番で設問を提示したが,本研究におい ては,その順序を逆転させ,判断項目,解釈項目, 差の受容項目の順番で設問を提示した。 本研究の目的は,判断を正当化するためのグラフ 理解のプロセスに対するボトムアップ処理とトップ ダウン処理の影響を,パス解析を用いてそれぞれ検 討することである。具体的には,以下の 2 点を検討 する。まず,提示グラフからのボトムアップ処理と して,提示グラフからの影響が,判断,解釈,差の 受容の各フェーズに対し,どのように現れるかを検 討する。さらに,印象や態度に基づくトップダウン 処理として,印象および態度からの影響が,判断, 解釈,差の受容の各フェーズに対し,それぞれどの ように現れるかを検討する。 さらに,グラフを理解し判断するプロセスについ て検討した先行研究と本研究の結果を対比して議論 する。つまり,グラフ理解を行った後に判断を下す プロセスと,判断を表明した後にグラフ理解を行う プロセスのそれぞれで,提示グラフからのボトムア ップ処理と印象および態度に基づくトップダウン処 理の影響がどのように異なるかについて言及する。
2. 実験 1
2.1. 方法
実験参加者 大学生 85 名 (男性 43 名, 女性 41 名, 不明 1 名; Mage = 18.44, SDage = 0.64) が参加した。講 義時間を使用し,集団で実施された。 課題 実験 1 では,先行研究の印象を測定した実験 と同様の課題を用いた。先行研究と異なる点は,手 続きのみだった。 実験 1 では,架空の成分「プロテン」,もしくは「ル ビゾン」の効果を検討する実験状況を設定した。具 体的には,ラットを用いた「回し車課題」の実験を 行い,持続力を高めることが期待される成分の効果 を検討するというものだった。各グラフは,成分を 投与されたラット群とされなかったラット群のそれ ぞれで,2 万事例のラットが回し車を回し,そのうち 3 分以上回転を持続できた事例数を示したものとし 図 1: グラフ理解と判断のボトムアップおよびト ップダウン処理のモデル [8] 図 2: 判断を正当化するグラフ理解におけるボト ムアップおよびトップダウン処理のモデルて提示した (図 3)。 また,3 つのグラフを用意し,参加者には,そのう ちの 1 つを提示した。3 つのグラフは,それぞれで 見た目の差が異なるが,情報の内容は全て同一のも のであり,縦軸のスケールを調整することで,2 群間 の見た目を異ならせていた。具体的な値は,成分投 与群が 1190 事例 (全体の 5.95%),成分非投与群が 1110 事例 (全体の 5.55%) で,両群間の差異は 80 事 例 (全体の 0.4%) だった。 手続き 初めに,架空の成分「プロテン」,もしくは 「ルビゾン」に対する印象を実験的に操作するため, 「アドバイザとして担当している製薬会社」につい ての約 500 文字の文章を提示した。参加者は,2 種 類の文章のうち,片方を提示された。まず,成分名 を「プロテン」とした文章は,「居心地の良い職場で ある」や「努力しただけ評価される」など優良企業 の特徴が含まれ,架空の成分に対してポジティブな 印象を形成することが期待された。一方,成分名を 「ルビゾン」とした文章は,「居心地の悪い職場であ る」や「努力が正当に評価されない」などブラック 企業の特徴が含まれ,架空の成分に対してネガティ ブな印象を形成することが期待された。次に,プロ テンもしくはルビゾンに対してどのような印象を抱 いているか,アンケートを実施した。具体的には, 「プロテン (ルビゾン) は安全だ」や「プロテン (ル ビゾン) は非科学的だ (反転項目)」など,10 項目の 問いに対して 5 段階評定をさせた。この平均値を「印 象」の得点とし,高得点ほど「プロテン (ルビゾン) にポジティブな印象」を持っているとした。 その後,図 3 に示された 3 つのグラフのうちの 1 つを提示し,「ある製薬会社のアドバイザとして,提 示されたグラフに基づいた,強壮剤の開発について の意見を求められた」と教示した。グラフ提示後, 「強壮剤にプロテン (ルビゾン) を含めるべきであ る」という問いに対して,参加者に,「全くそう思わ ない(1)」から「非常にそう思う(5)」の 5 段階評定を させた。この数値を「判断」の得点とした。次に, 「プロテン (ルビゾン) は持続力を上げる効果があ る」という問いに対して,参加者に同様の 5 段階評 定をさせた。この数値を「解釈」の得点とした。最 後に,「グラフの両条件間に差がある」という問いに 対して,参加者に同様の 5 段階評定をさせた。この 数値を「差の受容」の得点とした。 実験時間は約 40 分だった。
2.2. 結果
分析では,提示したグラフの効果を検討するため, 3 つの提示グラフに 0 か 1 の値を当て,ダミー変数 に変換した。このダミー変数を「提示グラフ」とし た。分析では,グラフ 1 と他のグラフを比較した。 初めに,参加者の印象を実験的に操作できたこと を確認するため,異なる印象を形成することを期待 した 2 種類の文章条件の間で印象得点を比較した。 結果,成分名「プロテン」の文章を提示した条件 (n= 39; M= 3.17, SD = 0.49) と成分名「ルビゾン」の文章 を提示した条件 (n= 46; M= 2.62, SD = 0.57) の参加 者間で,有意な差が見られた (t(83)= 4.71, p <.001)。 提示グラフからのボトムアップ処理と印象からの トップダウン処理が,判断を正当化するためのグラ フ理解のプロセスに対して,それぞれどのように影 響するかを検討するため,図 2 に基づいた共分散構 造分析によるパス解析を行った。モデルの適合度は, χ2(1) = 0.21 (p = 0.64), CFI = 1.00, RMSEA = 0.00 だっ た。結果を図 4 に示す。また,それぞれのパスの変 数は,標準化推定値を意味する。 まず,「判断」を従属変数とした場合,「印象」か らの有意な影響は見られなかったが,「提示グラフ」 からの有意な影響が見られた。次に,「解釈」を従属 変数とした場合,「印象」と「提示グラフ」からの有 意な影響は見られなかったが,「判断」からの有意な 影響が見られた。最後に,「差の受容」を従属変数と した場合,「印象」からの有意な影響は見られなかっ グラフ① グラフ② グラフ③ 図 3: 実験で使用した提示グラフたが,「解釈」と「提示グラフ」からの有意な影響が 見られた。 図 4 に示されるように,提示グラフと差の受容の 間に負の関連が示された。この影響は,本研究の実 験的操作において予期された結果と異なるものだっ た。我々は,グラフ③のような見た目の差の大きな グラフを提示されるとき,「両条件間に差がある」と 評価すると予期していた。しかし,実際には,見た 目の差の大きなグラフを提示された参加者は,その 差を小さく評価した。この点に関する詳細な議論は, 後述の考察で行う。
3. 実験 2
3.1. 方法
実験参加者 大学生 78 名 (男性 40 名, 女性 37 名, 不明 1 名; Mage = 18.41, SDage = 0.63) が参加した。講 義時間を使用し,集団で実施された。 課題 実験 2 では,先行研究の態度を測定した実験 と同様の課題を用いた。実験 1 と同じく,先行研究 と異なる点は,手続きのみだった。 実験 2 では,架空の都市 A 市において,市民の健 康調査を行ったという架空の調査状況を設定した。 各グラフは,家族に喫煙者がいる群といない群のそ れぞれで,調査対象とした 2 万人において,呼吸器 系疾患の罹患者の数を示したものとして提示した。 また,実験 1 と同様の 3 つのグラフを用い,その うちの 1 つを参加者に提示した (図 3)。内容は,家 族に喫煙者がいる群の方が,いない群よりも罹患者 数が多くなるよう設定された。具体的な値は,家族 に喫煙者がいる群が 1190 人 (全体の 5.95%),家族に 喫煙者がいない群が 1110 人 (全体の 5.55%) で,両 群間の差異は 80 人 (全体の 0.4%) だった。 手続き 初めに,実験を行う 1 週間前に,喫煙に対 してどのような態度を抱いているかのアンケートを 実施した。参加者には,「喫煙は迷惑行為である」や 「喫煙は個人の自由である (反転項目)」など,10 項 目の問いに対して 5 段階評定をさせた。この平均値 を「態度」の得点とし,高得点ほど「喫煙を嫌悪す る態度」を持っているとした。アンケートを行った 1 週間後に本実験を行った。 3 つのグラフのうちの 1 つを提示し,「ある会社のアドバイザとして,提示 されたグラフに基づいた,社員の喫煙に関する意見 を求められた」と教示した。グラフ提示後,「判断」 として,「社員の会社内外における喫煙を,全面的に 禁止すべきである」という問いに対して,参加者に, 実験 1 と同様の 5 段階評定を行わせた。次に,「解 釈」として,「喫煙は周囲の呼吸器系疾患のリスクを 高める」という問いに対して,参加者に同様の 5 段 階評定をさせた。最後に,「差の受容」として,「グ ラフの両条件間に差がある」という問いに対して, 参加者に同様の 5 段階評定をさせた。 実験時間は約 30 分だった。3.2. 結果
分析では,提示したグラフの効果を検討するため, 3 つの提示グラフに 0 か 1 の値を当て,ダミー変数 に変換した。このダミー変数を「提示グラフ」とし た。分析では,グラフ 1 と他のグラフを比較した。 提示グラフからのボトムアップ処理と態度からの トップダウン処理が,判断を正当化するためのグラ フ理解のプロセスに対して,それぞれどのように影 響するかを検討するため,図 2 に基づいた共分散構 造分析によるパス解析を行った。モデルの適合度は, χ2(1) = 0.21 (p = 0.65), CFI = 1.00, RMSEA = 0.00 だっ た。結果を図 5 に示す。また,それぞれのパスの変 図 4: 実験 1 のパス解析の結果。提示グラフから のパスはグラフ①との有意な差を意味する。 図 5: 実験 2 のパス解析の結果。提示グラフか らのパスはグラフ①との有意な差を意味する。数は,標準化推定値を意味する。 まず,「判断」を従属変数とした場合,「提示グラ フ」からの有意な影響は見られなかったが,「態度」 からの有意な影響が見られた。次に,「解釈」を従属 変数とした場合,「態度」からの有意な影響は見られ なかったが,「判断」と「提示グラフ」からの有意な 影響が見られた。最後に,「差の受容」を従属変数と した場合,「態度」と「提示グラフ」からの有意な影 響は見られなかったが,「解釈」からの有意な影響が 見られた。
4. 考察
本研究の目的は,判断を正当化するためのグラフ 理解のプロセスに対する提示グラフからのボトムア ップ処理および印象や態度に基づくトップダウン処 理の影響をそれぞれ検討し,グラフ理解に基づき判 断を下すプロセスを検討した先行研究と比較するこ とだった。本研究では,先行研究と同一の課題を用 い,手続きのみを変更した 2 つの実験を実施した。 結果は以下の 3 点にまとめられる。 1 点目に,判断を表明した後にグラフ理解を行う プロセスに関して,判断の顕在化は,後のグラフ理 解に強く影響することを確認した。具体的には,本 研究で行った 2 つの実験のどちらにおいても,判断 は解釈に影響し,解釈は差の受容に影響した。 2 点目に,印象および態度に基づくトップダウン 処理の影響に関して,それぞれの要因を用いた実験 で,異なる結果が示された。まず,印象を用いた実 験 1 では,印象は判断表明後のグラフ理解のプロセ スに影響しなかった。しかし,グラフ理解後に判断 を下すプロセスを検討した先行研究では,本研究と 異なる結果が示され,印象はプロセスの全ての段階 に影響していた (図 6 を参照)。このことから,表明 した判断を正当化するために,グラフ理解のプロセ スに対する印象の影響が排除された可能性が示唆さ れた。先行研究は,グラフを理解した後に判断を決 定するプロセスだったため,印象など様々な要因を 考慮してグラフ理解や判断を行うことができた。し かし,本研究では,好ましい結論として既に持って いた判断を先に表明したため,解釈や差の受容など 後続の評価は判断の評価との一貫性が求められた。 ゆえに,判断以外の要因である印象に基づくトップ ダウン処理の影響が考慮されなかったと考えられる。 次に,態度を用いた実験 2 では,態度は判断にの み影響を示した。これは,先行研究の結果と一致し ていた (図 7 を参照)。このことから,グラフの詳細 な理解に関係なく,判断は態度に強く影響されるこ とが示唆された。多くの先行研究において,態度が, 意思決定や商品選択のような行動と強固に関連する ことが知られており[15][16][17],本結果も予測可能 なものだった。 3 点目に,提示グラフからのボトムアップ処理の 影響に関して,実験 1 と実験 2 のどちらにおいても, 判断を表明した後のグラフ理解のプロセスに対する 一定の影響が見られた。 印象を用いた実験 1 では,提示グラフは判断に影 響を示した。これは,判断が,グラフの見た目の差 に惑わされることを意味する。この結果は,先行研 究と一致していた (図 6 を参照)。可能性の一つとし て,グラフ理解は正確な情報の読み取りを目的とし ているが,判断は自身の意思決定に起因することが 考えられる。ゆえに,判断するとき,グラフからエ ンコードした情報の正確な読み取りが妨げられるの かもしれない。 提示グラフは,さらに,差の受容に予想外の影響 を示した。これは,先行研究では見られない結果だ った。また,本研究の実験的操作において予期され た影響と異なった。詳しくは,見た目の差の小さい グラフ①を提示された参加者の間で,多くの参加者 が「両条件間に差がある」と評価した。これらの参 加者は,表明した判断や解釈を正当化するために, グラフの見た目の小さな差を過大評価した可能性が ある。しかし,これは,予測した仮説ではなく,ポ ストホックな推測である。ゆえに,詳細な考察は今 後の課題とする。 次に,態度を用いた実験 2 では,提示グラフは解 釈にのみ影響した。この結果は,提示グラフの影響 がプロセスの全ての段階に見られなかった先行研究 と異なった (図 7 を参照)。つまり,グラフを理解し た後に判断を下すプロセスでは,ボトムアップ処理 の影響を受けないが,判断を表明した後にグラフ理 図 6: 先行研究で印象を操作した実験における パス解析の結果 [8]。提示グラフからのパスは グラフ①との有意な差を意味する。解を行うプロセスでは,グラフの解釈に対し提示グ ラフが影響することが示された。 本結果は,表明した判断を正当化するためにグラ フの解釈を行い,提示グラフの見た目の差に惑わさ れた可能性を示唆する。実験 2 では,初めの判断で, グラフの見た目の差を考慮できなかった。これは, 態度からのトップダウン的影響が判断の段階におい て大きいために,グラフの見た目の差が影響しなか ったことを示唆する。このような考慮しないことを 補うために,グラフの見た目の差が判断の後の解釈 の段階に影響した可能性がある。
謝辞
本研究は JSPS 科研費 15H02927 の助成による。参考文献
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図 7: 先行研究で態度を測定した実験における パス解析の結果 [8]。提示グラフからのパスは グラフ①との有意な差を意味する。