現場ごとの多様な介護業務プロセス知識の獲得方法の検討
Methodology for knowledge acquisition of various aged care process from each care
facility
西村悟史
1大谷博
2畠山直人
2長谷部希恵子
2福田賢一郎
1來村徳信
3溝口理一郎
4西村拓一
1Satoshi Nishimura
1, Hiroshi Ohtani
2, Naoto Hatakeyama
2, Kieko Hasebe
2, Ken Fukuda
1,
Yoshinobu Kitamura
3, Riichiro Mizouchi
4, and Takuichi Nishimura
11
産業技術総合研究所
人工知能研究センター
1
Artificial Intelligence Research Center,
National Institute for Advanced Industrial Science and Technology
2
医療法人社団はなまる会
2
Medical Corporation, Hanamaru Group
3
立命館大学 情報理工学部
3
College of Information Science and Engineering, Ritsumeikan University
4
北陸先端科学技術大学院大学 サービスサイエンス研究センター
4
Research Center for Service Science, Japan Advanced Institute of Science and Technology
Abstract: There are various work processes in care facilities. Such variations are caused by preferences and physiological state of aged person, skill which each care worker has, and an environment in the care facility. Under the situation, sharing the appropriate knowledge of care processes is important to improve the skill of each care worker and educate new comer. In this study, we proposed the method for knowledge acquisition of various aged care processes from each care facility. It includes the way to acquire the common knowledge among the facilities and the way to acquire the focused knowledge in particular facility. We tried the methodology based on workshop technology with two care facilities.
はじめに
高齢化の進展に伴い,日本の医療・介護コストは 世界に先駆けて増大している[1].このような現状の もとで,ロボット介護機器などの介護業務を支援す る技術の必要性も増大している[2].しかしながら, 介護業務プロセスは現場や職員ごとに異なっており, 適切な介護業務プロセスの把握と共有が求められる. 介護業務プロセスが現場ごとに異なる理由は,職員 の持つスキルや介護サービスの利用者(以降,利用 者と呼ぶ)の状態,介護施設が備えている設備の多 様性にある.これらの多様性に応じて実施される介 護業務プロセスは現場ごとに異なり,同じ現場であ ったとしても,職員や利用者,環境の変化とともに 適切なプロセスは変化していく.しかし,現状は職 員同士で適切な業務プロセスを議論する場や時間が 十分にとれておらず,業務プロセスの共有が不十分 であるか,実施手順は共有していても何故その手順 をとるのかという根拠の共有が不十分である. 本研究の目的は,現状の業務プロセスの把握と, 現場ごとに適切な業務プロセスに関する知識を獲得 することである.そのために,職員同士の議論を通 した知識獲得の方法について検討した結果を本稿で は報告する.知識獲得の現状
知識獲得の方法は知識工学分野を中心に多くの方 法が提案されている[3, 4, 5, 6, 7, 8].例えば,エキス パートシステムの知識ベースを構築する際に用いら れる知識獲得の方法としては,インタビューやプロ トコル分析などが挙げられる[3, 4].川口らはドメイ ンに依存しないインタビュアーの質問戦略を見出す ことで,インタビューシステムを提案している[5]. また,小川らは医療ワークフローのモデル化を行い, それをインタビューに用いる研究も行われている [6].このような専門家に対してインタビューを行う 人工知能学会研究会資料 SIG-KST-028-04(2016-07-28) *本資料の著作権は著者に帰属しますような知識獲得方法は,確度の高い有益な知識を得 ることができるという利点がある反面,知識獲得コ ストが高くなるという欠点がある. 専門家からの知識獲得ではない方法としては, web などの大規模なデータから自動的に獲得する方 法がある[7].オントロジー学習の分野では,半構造 化データである wikipedia からの知識獲得方法を用 いて,日本語wikipedia オントロジーが構築されてい る[8].これらの方法は,自動的に大規模な知識ベー スを構築可能であるという利点がある一方で,得ら れる知識ベースには誤りが存在する可能性が高いと いう欠点がある.そのため,失敗の許されないタス クに対して利用する場合には,専門家が改めて確認 する作業が必要となる.
提案手法
本研究では,現場主体の知識獲得方法を検討する. 介護現場の業務プロセスは現場ごとに多様性があり, 現場の状況の変化(利用者の身体的状態の変化や, 施設の環境の変化,職員の変化など)に応じて時間 的にも変化する可能性がある.そのような知識に対 して,研究者や知識工学者が現場ごとに高いコスト をかける方法では,全ての介護現場から現場固有の 業務プロセス知識を獲得することは難しい.一方で, 現状で計算機が利用できるような形式で,介護業務 プロセスに関するデータが乏しいことから,計算機 を利用した自動的な知識獲得方法を適用することは 難しい.本研究では,教科書としてまとめられるよ うな現場によって差異の少ないと思われる共通的業 務プロセス知識を基盤として,現場の職員が現場ご との業務プロセス知識を獲得できる方法論を提案す ることで,上記問題の解決を試みる.共通的業務プ ロセス知識を基盤とすることで,現場ごとの多様性 を吸収しながらも,他の現場との共通性を理解し再 利用のしやすさを考慮する. 提案手法は,二段階の知識獲得方法である.まず, 現場によって差異の少ないと思われる,共通的業務 プロセス知識を構造化する.特に本研究では,従来 研究のCHARM(Conving Human Action Rationalized Model)と呼ぶ人間の行動を表現するためのモデル [9]に従って,教科書から研究者が知識の獲得を行う. 次に,共通的業務プロセス知識を基盤として,介護 施設の職員間での議論を促し,現場固有の知識を職 員より外在化する.外在化した知識は研究者が,構 造化し,共通的業務プロセス知識と関連付けを行う. 再度,構造化された知識を基盤として,職員らが追 加,削減を行う.そのサイクルを繰り返すことによ って,現場固有の知識を含む介護業務プロセス知識 の獲得を試みる.以降で各段階の詳細を述べる.共通的業務プロセス知識の獲得
この方法は,[9]で提案されている CHARM と呼ぶ 人間行動モデルに従った知識獲得の方法である. CHARM とは目的指向という視点を定めてプロセ スを捉え木構造で構造化するモデルであり,地域医 療機能推進機構大阪病院において実践的に適用され た実績がある[10].視点を定めてプロセスを捉える ことにより,状況に応じた介護手順の特殊性と共通 性を議論することが出来るほか,普段とは異なる視 点で現場の職員が介護手順を捉えることが出来る. このモデルに基づき,文献[11, 12]に書かれた文章 中から,行為に関する記述を抽出し,その目的を他 の記述から抽出ないしは専門家の助言のもとで類推 するなどして,図1 に示すような共通的業務プロセ ス知識を獲得,構造化した.CHARM では,青色の 角のとれた四角形が一つの行為を表しており,上に 書かれた行為を目的と読み替えて,その目的を達成 するための方式を青色の正方形で表現する.図1 で は,「褥瘡を予防する」ことを最上位の目的として, 「血行改善方式」,「栄養状態改善方式」,「清潔保持 方式」の三種類の方式が存在することを表現してい る.「血行改善方式」においては,「血行を良くする」 ことによって,「褥瘡を予防する」という目的を達成 できる.さらに,「血行を良くする」行為を目的と読 み替え,「体位変換方式」,「圧力分散方式」の二種類 の方式によって達成可能であることが表現されてい る.また,橙色の長方形ノードによって,行為主体 を表現する.例えば,「福祉用具利用方式」において 実施される「圧力を分散する」行為は,主体が福祉 用具であることが表される.そして,福祉用具を敷 くことによって,利用者の自発的な動きを制限する 恐れがあるといった起こりうるリスクも表現するこ とができ,図1 中の赤色の長方形で表現されている.現場固有の業務プロセス知識の獲得
前節で説明した方法で獲得した共通的業務プロセ ス知識を基盤にして,職員が現場で行っている業務 プロセスには他にどのようなものがあるのかを議論 するワークショップを開催し,現場固有の業務プロ セス知識を獲得する.職員は,共通的業務プロセス 知識を眺めることで,自分たちが普段行っている業 務を想起し,それが十分に表現されているか,され ていなければ,何が足りないのかを考える.考えた 結果は同じグループの職員と話し合うことによって, 自分の考えが妥当か,もしくは自分が考えていなか った業務プロセスのやり方があることを知り,共通 的業務プロセスへと追記していく.追記する際には, 特に現場で実施している業務プロセスを思い出すように教示を行い,共通的な知識ではなく,具体的な 事例をもとにして追記させる. 次に,獲得された事例等の現場固有の業務プロセ ス知識を共通的業務プロセス知識に結合するように 構造化する.今回の提案手法では研究者が行うこと とするが,今後現場の中だけで進められる構造化方 法に関しても検討する. このようなワークショップと知識の構造化を,現 場で実施されている業務プロセスがある程度出尽く すまで数回繰り返し実施する.結果として,現場固 有の業務プロセス知識を獲得する.
介護施設における実施
実施概要
前章で説明した知識獲得の提案手法の実現可能性 および有効性を検討するため,医療社団法人はなま る会の協力のもとワークショップを実施した.2016 年7 月 21 日現在までに,2 つの介護施設の職員から 各3 名程度を集め,知識獲得のためのワークショッ プを2 回行った.各ワークショップはそれぞれ 1 時 間程度である.テーマは「褥瘡(床ずれ)予防」の ための業務プロセスとし,共通的業務プロセス知識 は,文献[11, 12]より筆者が抽出し,構造化を行った (図1 参照). ワークショップでは,共通的業務プロセス知識を 印刷したものを職員らが見て,議論を行い,特に共 有した方が良い知識を付箋に書き出して貼り付ける というプロセスで進めた.職員が意見を出す際には, 実際に行っていることや使っている具体的な器具な どを書き出すようにした.ワークショップの詳細
ワークショップの総参加者数は 1 回目が 8 名,2 回目は5 名だった.協力を得た職員の内訳は,サー ビス付き高齢者向け住宅ひだまりガーデン南町田 (以降,ひだまりガーデン南町田)より 1 回目が 5 名と2 回目が 3 名,グループホームももちゃん(以 降,ももちゃん)よりそれぞれ2 名ずつが参加した. ワークショップ内では,介護施設ごとにグループを 分けた.これは,各施設での現場固有の業務プロセ スを明らかにするためである. 行った教示は次の通りである.最初に本ワークシ ョップの概要を説明し,1 回目に関しては,業務プロ セス知識を表現するために利用しているCHARM の 読み方について説明を行った.次に,共通部分が現 場の業務プロセスに沿っているかどうかを確認させ た.その確認が終わった後,現場の業務プロセスを 表現するには足りない箇所に関して,現場ごとに追 加を促した.追加には,付箋紙に行為に関する知識 図1 褥瘡予防の CHARM 木 褥瘡を予 防する 血行を良 くする 皮膚の状 態を観察 する 皮膚を清 潔に保つ 医師・看 護師に指 示を仰ぐ 皮膚を清 潔に保つ 皮膚を清 潔に保つ 栄養状態 を良くす る 発赤がな いか確認 する 食事を準 備する たんぱく質、 亜鉛、ビタ ミンB群を摂 取する 体位を変 える 圧力を分 散する 体位を変 える 寝返りす る 圧力を分 散する 福祉用具 を敷く 持ち上げると ○○が起こる 利用者の自発的 は動きを制限す る恐れあり 体位を変 える 利用者に 声をかけ る 利用者 福祉用具利用方式 方式 清潔保持方式 栄養状態改善方式 方式 医師・看護師の指示方式 方式 血行改善方式 体位変換方式 圧力分散方式 寝返り方式 体位変換方式 方式 阻害要因 阻害要因 ペース= 2時間に一回 利用者 福祉用具 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 他にどんなことを注意しますか? どんな悪いことが起こりますか? やり方の 適用条件 やり方 図形の意味 起こって ほしくな いこと やること 実行する人 追加情報をテキストで記述させ,共通的業務プロセス知識の 関連づく箇所に貼り付けるように指示をした.記述 内容は,行為に限らず現場で用いている具体的な道 具の名称,注意して観察するべき事象,共通部分に 書かれた業務プロセスが行われる状況など,テーマ に沿って業務プロセスに関連していれば特に制限を 設けなかった.なお,この作業はグループ内で議論 しながら実施させた.最後に2 つのグループ間で, それぞれのグループで出てきた意見の中でも特徴的 なものが何であるかの意見交換を行った.この意見 交換を通して,施設ごとの違いや双方ともに参考に なる知識があるかどうかを確認した.2 回目のワー クショップにおいて行った教示は,1 回目で得られ た業務プロセス知識の内容が現場の業務プロセスに 沿っているかどうかを確認させ,1 回目と同様に不 足箇所に知識の追加を促した.
結果
ワークショップを実施した結果として,以下のよ うに現場から知識を獲得した.図2 はひだまりガー デン南町田の職員らが,図3 はももちゃんの職員ら が作った業務プロセス知識が獲得されていく過程を (a) 1 回目のワークショップによって付箋紙で 追記された業務プロセス知識 (b) (a)をもとに構造化された業務プロセス知識 (c) 2 回目のワークショップを基に構造化された 業務プロセス知識 図2 ひだまりガーデン南町田の職員より 獲得された業務プロセス知識の変遷 CHARMに基づく 構造化後 褥瘡を予 防する 血行を良 くする 皮膚の状 態を観察 する 皮膚を清 潔に保つ 医師・看 護師に指 示を仰ぐ 皮膚を清 潔に保つ 皮膚を清 潔に保つ 栄養状態 を良くす る 発赤がな いか確認 する 食事を準 備する たんぱく質、 亜鉛、ビタ ミンB群を摂取する 体位を変 える 圧力を分 散する 体位を変 える 寝返りす る 圧力を分 散する 福祉用具 を敷く 持ち上げると ○○が起こる 利用者の自発的 は動きを制限する恐れあり 体位を変 える 利用者に 声をかけ る 利用者 福祉用具利用方式 方式 清潔保持方式 栄養状態改善方式 方式 医師・看護師の指示方式 方式 血行改善方式 体位変換方式 圧力分散方式 寝返り方式体位変換方式 方式 阻害要因 阻害要因 ペース= 2時間に一回 利用者 福祉用具 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 他にどんなことを注意しますか? どんな悪いことが起こりますか? やり方の 適用条件 やり方 図形の意味 起こって ほしくないこと やること 実行する人 追加情報 起きる 方式 利用者 摂取量を 把握する 介護者 足浴する 足浴方式 介護者 皮膚を保 湿する 介護者 軟膏を塗 る 軟膏利用方式 介護者 保湿する 軟膏 •補助食品用意 •保湿,軟膏類 •陰洗の実施 足浴する 足浴方式 介護者 2回目の ワークショップ後 褥瘡を予 防する 血行を良 くする 皮膚の状 態を観察する 皮膚を清 潔に保つ 医師・看 護師に指 示を仰ぐ皮膚を清 潔に保つ 皮膚を清 潔に保つ 栄養状態 を良くす る 発赤がな いか確認する 食事を準 備する たんぱく質、 亜鉛、ビタ ミンB群を摂取する 圧力を分 散する 体位を変える 寝返りする 福祉用具を敷く圧力を分散する 持ち上げると ○○が起こる 利用者の自発的 は動きを制限する恐れあり 体位を変 える 利用者に 声をかけ る 利用者 福祉用具利用方式 方式 清潔保持方式 栄養状態改善方式 方式 医師・看護師の指示方式 方式 血行改善方式 圧力分散方式 寝返り方式 体位変換方式 方式 阻害要因 ペース= 2時間に一回 阻害要因 利用者 福祉用具 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 どんな悪いことが起こりますか? やり方の 適用条件 やり方 図形の意味 起こって ほしくな いこと やること 実行する人 追加情報 起きる 利用者 詳細は食 事介助で 摂取量を 把握する 介護者 足浴する 足浴方式 介護者 皮膚を保 湿する 介護者 軟膏を塗 る 軟膏利用方式 介護者 保湿する 軟膏 •補助食品用意 •エンシュア •メイバランス •カロリーメイト •ヤクルト •保湿,軟膏類 •好みに合わせ る •陰洗の実施 •ボディソープ を使用 内出血が ないか確認する 食事量を 確認する 方式 介護者 排泄量を 確認する 立ち上がる 利用者 座位から立 位方式 安楽なポジ ションか確認する 福祉用具 を使用す る 福祉用具 利用方式 タッピン グをする 食事形態 (キザミ, トロミなど)を変える 食事環境を 整える方式 介護者 介護食器 を使用する 座位の場合 臥位の場合 臥位の場合 血管を 広げる 血管をつぶれてい ない状態にする 血行正常化方式 温める •足浴 •入浴剤 マッサー ジする •良好な姿勢 •嚥下体操 •福祉用具 •食形態 色が変わ ることを 確認する 利用者に 触れる 触れる方式 介護者 時間帯:朝, 夜 時間帯:朝 •適切なリネン類 方式 血管拡張方式 温め方式 マッサージ方式 (a) 1 回目のワークショップによって付箋紙で 追記された業務プロセス知識 (b) (a)をもとに構造化された業務プロセス知識 (c) 2 回目のワークショップを基に構造化された 業務プロセス知識 図3 ももちゃんの職員より 獲得された業務プロセス知識の変遷 CHARMに基づく 構造化後 褥瘡を予 防する 血行を良 くする 皮膚の状 態を観察 する 皮膚を清 潔に保つ 医師・看 護師に指 示を仰ぐ 皮膚を清 潔に保つ 皮膚を清 潔に保つ 栄養状態 を良くす る ニオイを 確認する 発赤がな いか確認 する 食事を準 備する たんぱく質、亜鉛、ビタ ミンB群を摂取する 体位を変 える 圧力を分 散する 体位を変 える 寝返りす る 圧力を分 散する 何かを利用 者と床の間 に入れる 持ち上げると ○○が起こる 利用者の自発的 は動きを制限する恐れあり 体位を変 える 利用者に 声をかけ る 利用者 何かを追加する方式 方式 清潔保持方式 栄養状態改善方式 方式 医師・看護師の指示方式 方式 血行改善方式 体位変換方式 圧力分散方式 寝返り方式 体位変換方式 方式 阻害要因 阻害要因 ペース= 2時間に一回 利用者 何か 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 どんな悪いことが起こりますか? やり方の適用条件 やり方 図形の意味 起こって ほしくな いこと やること 実行する人 追加情報 臥位の場合 座位の場合立ち上がる 座位から立位方式 利用者 ペース= 1時間に一回 合ったものを選ぶ方式 体に合っ た用具を 選ぶ 圧力を分 散する 用具 座位時,臀 部,背中に 圧がかかる 阻害要因 身に着けているもののシワをなくす方式 布のシワ を伸ばす 圧力を分 散する 平坦な布地 通気性の よいシー ツを敷く 湿気を減 らす 方式 シーツ 食欲を 出す 利用者 食事形態(キ ザミ,トロ ミ)を変える 方式 食事環境 を整える 介護者 食の好み を知る 口腔ケア方式 介護者 好きな物 を用意す る 介護者 介護者 色を確認 する 入浴する 方式 利用者 口腔内を 清潔にす る 好きな物 提供方式 クリーム を塗る 介護者 (体に合 わせる) エアマット 利用時: ペース= 3時間に一回 臥位の場合 •除圧クッション •エアマット •タオル •クッション •体に合った椅 子・車椅子 •服 •シーツ •シーツの素材 (通気性) •食べやすい食事 用具,スプーン, 箸 2回目の ワークショップ後 褥瘡を予 防する 血行を良 くする 皮膚の状 態を観察 する 皮膚を清 潔に保つ 医師・看 護師に指 示を仰ぐ 皮膚を清 潔に保つ 皮膚を清 潔に保つ 栄養状態 を良くす る ニオイを 確認する 発赤がな いか確認 する 食事を準 備する たんぱく質、 亜鉛、ビタ ミンB群を摂 取する 体位を変 える 圧力を分 散する 体位を変 える 寝返りす る 圧力を分 散する 何かを利用 者と床の間 に入れる 持ち上げると皮 膚剥離・骨折な どが起こる 利用者の自発的 は動きを制限する恐れあり 体位を変 える 利用者に 声をかけ る 利用者 何かを追加する方式 方式 清潔保持方式 栄養状態改善方式 方式 医師・看護師 の指示方式 方式 血行改善方式 体位変換方式 圧力分散方式 寝返り方式 体位変換方式 阻害要因 ペース= 2時間に一回 阻害要因 利用者 何か 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 どんな悪いことが起こります か? やり方の 適用条件 やり方 図形の意味 起こって ほしくないこと やること 実行する人 追加情報 臥位の場合 座位の場合立ち上がる 座位から立位方式 利用者 ペース= 1時間に一回 合ったものを選ぶ方式 体に合っ た用具を 選ぶ 圧力を分 散する 用具 座位時,臀 部,背中に 圧がかかる 阻害要因 身に着けているもの のシワをなくす方式 布のシワ を伸ばす 圧力を分 散する 平坦な布地 通気性を よくする 湿気を減 らす 方式 シーツ 食欲を 出す 利用者 食事形態を 変える 詳細は 食事介助で. 方式 食事環境 を整える 介護者 食の好み を知る 介護者 好きな物 を用意す る 介護者 介護者 色を確認 する 入浴する 方式 利用者 口腔内を 清潔にす る 口腔ケア方式 好きな物 提供方式 クリーム を塗る 介護者 (体に合 わせる) エアマット利用時: ペース= 3時間に一回 臥位の場合 •除圧クッション •エアマット •タオル •クッション •体に合った椅 子・車椅子 •服 •シーツ •シーツの素材 (通気性) •リハビリパン ツでなく布パ ンツ使用 •食べやすい食事 用具,スプーン, 箸 •座席配置 方式 正しい姿 勢か確認 する 福祉用具を 使用する 福祉用具を 使う方式 タッピン グをする •食事形態 •キザミ、トロミ •ゼリー •ミキサー食 •ペースト食など 利用者の 入浴拒否 阻害要因 清拭する 介護者 こまめに パッド交 換をする 介護者 •体位変換シート •ポジショニング の知識表している.図中(a)から(c)へ向かうに従ってワーク ショップを経て構造化された業務プロセス知識が大 きくなっていることが確認できる.図中の(a)は 1 回 目のワークショップで職員らにより付箋紙で補足さ れた知識であり,図中(b)はそれをもとに筆者が CHARM に従って知識を構造化したものである.図 中(c)は 2 回目のワークショップの結果を反映した CHARM 木である. 得られた知識の中でも特徴的なものを図4 に示す. ノードの色の違いによって,共通的業務プロセス知 識と現場から得られた知識とを区別している.青色 のノードは文献に記載されていた内容を指しており, 薄い緑色のノードは1 回目のワークショップで追記 された内容を指す.2 回目のワークショップで追加 された内容は灰色で表記されている.図 4(a)は文献 [11, 12]から抜き出した知識であり,図 4(b)は 1 回目 のワークショップ時にももちゃんの職員が外在化し た知識である.文献[11, 12]では,頻繁に対応するこ とが想定される臥位(ベッド上で寝ている姿勢)時 の体位変換について中心的に述べられていたが,実 図4 現場固有知識の獲得例 褥瘡を予 防する 血行を良 くする 皮膚の状 態を観察 する 皮膚を清 潔に保つ 医師・看 護師に指 示を仰ぐ 皮膚を清 潔に保つ 皮膚を清 潔に保つ 栄養状態 を良くす る 発赤がな いか確認 する 食事を準 備する たんぱく質、 亜鉛、ビタ ミンB群を摂 取する 体位を変 える 圧力を分散する 体位を変 える 寝返りす る 圧力を分 散する 福祉用具 を敷く 持ち上げると ○○が起こる 利用者の自発的 は動きを制限す る恐れあり 体位を変 える 利用者に 声をかけ る 利用者 福祉用具利用方式 方式 清潔保持方式 栄養状態改善方式 方式 医師・看護師の指示方式 方式 血行改善方式 体位変換方式 圧力分散方式 寝返り方式 体位変換方式 方式 阻害要因 阻害要因 ペース= 2時間に一回 利用者 福祉用具 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 他にどんなことを注意しますか? どんな悪いことが起こりますか? やり方の 適用条件 やり方 図形の意味 起こって ほしくな いこと やること 実行する人 追加情報 (a) 共通的業務プロセス知識 体位を変 える 体位を変 える 寝返りす る 持ち上げると ○○が起こる 体位を変 える 利用者に 声をかけ る 利用者 体位変換方式 寝返り方式 体位変換方式 方式 阻害要因 ペース= 2時間に一回 介護者 介護者 どんな悪いことが起こりますか? 臥位の場合 座位の場合 立ち上がる 座位から立位方式 利用者 ペース= 1時間に一回 エアマット 利用時: ペース= 3時間に一回 臥位の場合 (b) 現場から獲得した知識 ワークショップ後 図5 ワークショップ毎に増加する事例 褥瘡を予 防する 血行を良 くする 皮膚の状 態を観察 する 皮膚を清 潔に保つ 医師・看 護師に指 示を仰ぐ 皮膚を清 潔に保つ 皮膚を清 潔に保つ 栄養状態 を良くす る 発赤がな いか確認 する 食事を準 備する たんぱく質、 亜鉛、ビタ ミンB群を摂 取する 体位を変 える 圧力を分 散する 体位を変 える 寝返りす る 圧力を分 散する 福祉用具 を敷く 持ち上げると ○○が起こる 利用者の自発的 は動きを制限す る恐れあり 体位を変 える 利用者に 声をかけ る 利用者 福祉用具利用方式 方式 清潔保持方式 栄養状態改善方式 方式 医師・看護師の指示方式 方式 血行改善方式 体位変換方式 圧力分散方式 寝返り方式 体位変換方式 方式 阻害要因 阻害要因 ペース= 2時間に一回 利用者 福祉用具 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 他にどんなことを注意しますか? どんな悪いことが起こりますか? やり方の 適用条件 やり方 図形の意味 起こって ほしくな いこと やること 実行する人 追加情報 起きる 方式 利用者 摂取量を 把握する 介護者 足浴する 足浴方式 介護者 皮膚を保 湿する 介護者 軟膏を塗 る 軟膏利用方式 介護者 保湿する 軟膏 •補助食品用意 •保湿,軟膏類 •陰洗の実施 足浴する 足浴方式 介護者 褥瘡を予 防する 血行を良 くする 皮膚の状 態を観察 する 皮膚を清 潔に保つ 医師・看 護師に指 示を仰ぐ 皮膚を清 潔に保つ 皮膚を清 潔に保つ 栄養状態 を良くす る 発赤がな いか確認 する 食事を準 備する たんぱく質、 亜鉛、ビタ ミンB群を摂 取する 圧力を分 散する 体位を変 える 寝返りす る 圧力を分 散する 福祉用具 を敷く 持ち上げると ○○が起こる 利用者の自発的 は動きを制限す る恐れあり 体位を変 える 利用者に 声をかけ る 利用者 福祉用具利用方式 方式 清潔保持方式 栄養状態改善方式 方式 医師・看護師の指示方式 方式 血行改善方式 圧力分散方式 寝返り方式 体位変換方式 方式 阻害要因 ペース= 2時間に一回 阻害要因 利用者 福祉用具 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 どんな悪いことが起こりますか? 起きる 利用者 詳細は食 事介助で 摂取量を 把握する 介護者 足浴する 足浴方式 介護者 皮膚を保 湿する 介護者 軟膏を塗 る 軟膏利用方式 介護者 保湿する 軟膏 •補助食品用意 •エンシュア •メイバランス •カロリーメイト •ヤクルト •保湿,軟膏類 •好みに合わせ る •陰洗の実施 •ボディソープ を使用 内出血が ないか確 認する 食事量を 確認する 方式 介護者 排泄量を 確認する 立ち上が る 利用者 座位から立 位方式 安楽なポジ ションか確 認する 福祉用具 を使用す る 福祉用具 利用方式 タッピン グをする 食事形態 (キザミ, トロミなど) を変える 食事環境を 整える方式 介護者 介護食器 を使用す る 座位の場合 臥位の場合 臥位の場合 血管を 広げる 血管をつぶれてい ない状態にする 血行正常化方式 温める •足浴 •入浴剤 マッサー ジする •良好な姿勢 •嚥下体操 •福祉用具 •食形態 色が変わ ることを 確認する 利用者に 触れる 触れる方式 介護者 時間帯:朝, 夜 時間帯:朝 •適切なリネン類 方式 血管拡張方式 温め方式 マッサージ方式 褥瘡を予 防する 血行を良 くする 皮膚の状 態を観察 する 皮膚を清 潔に保つ 医師・看 護師に指 示を仰ぐ 皮膚を清 潔に保つ 皮膚を清 潔に保つ 栄養状態 を良くす る 発赤がな いか確認 する 食事を準 備する たんぱく質、 亜鉛、ビタ ミンB群を摂 取する 体位を変 える 圧力を分 散する 体位を変 える 寝返りす る 圧力を分 散する 福祉用具 を敷く 持ち上げると ○○が起こる 利用者の自発的 は動きを制限す る恐れあり 体位を変 える 利用者に 声をかけ る 利用者 福祉用具利用方式 方式 清潔保持方式 栄養状態改善方式 方式 医師・看護師の指示方式 方式 血行改善方式 体位変換方式 圧力分散方式 寝返り方式 体位変換方式 方式 阻害要因 阻害要因 ペース= 2時間に一回 利用者 福祉用具 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 介護者 他にどんなことを注意しますか? どんな悪いことが起こりますか? やり方の 適用条件 やり方 図形の意味 起こって ほしくな いこと やること 実行する人 追加情報
(a) 共通的業務プロセス知識
(b) 1回目のワークショップで
獲得した知識
(c) 2回目のワークショップで
獲得した知識
1回目の
ワークショップ後
2回目の
ワークショップ後
際の現場では座位の場合にも座位から立位への体位 変換をすることが重要であることがワークショップ の中から得られた.これによって,文献に書かれて いた知識とは別の方式が考えられ,それぞれの方式 が適用される状況が「臥位の場合」と「座位の場合」 であることが明確化された.黄色の長方形ノードは, リンクされている方式の適用条件を示している. 図5 はワークショップを重ねるごとに多くの事例 が得られた例である.ここで,「事例」とは方式や行 為として表現されるよりも具体的な内容(例えば「カ ロリーメイト」などの具体的な商品名)を指す.図 5(a)は文献から抜き出した知識であり,図 5(b)(c)は それぞれ1 回目と 2 回目のワークショップ時にひだ まりガーデン南町田の職員が外在化した知識である. 褥瘡を予防するために栄養状態を良くする部分行為 「たんぱく質,亜鉛,ビタミンB 群を摂取する」の 中で必要な栄養素を列挙していた.それを確認した 職員らは現場での事例として,補助食品を用意する 旨を追記した(図5(b)).さらに,回を重ねることで, 単に補助食品ではなく,「エンシュア」「メイバラン ス」「カロリーメイト」「ヤクルト」といった,より 具体的に現場で用意している食品を事例として列挙 した(図5(c)).このようにして,このワークショッ プを通して,現場の事例に基づいた知識が集まった.
まとめと今後の展望
本稿では,現場固有の業務プロセス知識を獲得す るための方法として,共通的業務プロセス知識を基 盤にして,現場の職員がワークショップを行い,議 論を通して知識の外在化と構造化を行う取り組みに ついて紹介した.結果として,2 つの介護施設の業務 プロセス知識に対して2 回ずつワークショップを行 い,文献[11, 12]から抽出した共通的業務プロセス知 識よりも多くの現場固有の業務プロセス知識を獲得 することが出来た. 今後,さらにそれぞれの施設で得られた業務プロ セスを統合し,施設ごとに必要な知識を取捨選択す ることで,現場ごとの業務プロセス知識の違いを明 らかにするとともに,現場に適応的なマニュアルを 成果物として得ることを試みる.同時にアンケート やインタビューを通して,本提案手法の効果につい ても評価を行う.謝辞
本研究の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・ 産業技術総合開発機構 (NEDO)の委託業務および, JSPS 科研費 16K16160 の助成を受けたものです。参考文献
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