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自律性の涵養を狙った英語授業実践 その1

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Academic year: 2021

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(1)自律性の涵養を狙った英語授業実践. その1. 国際戦略推進機構 満尾 貞行. キーワード: 英語教育、大学教育、教養課程、自律学習 外国語キーワード: English education, university education, liberal arts course, autonomous learning Abstract The writer aims to develop learners’ autonomy through their use of the reading skill and also other three skills with English newspaper and other materials in the language class. What types of language activities and assignments are possibilities to develop learners’ autonomy? The writer discusses the teaching plans based on literature review and his long-life experience of teaching. 要旨 英字新聞等を用いて、リーディングを中心に四技能を駆使する活動を展開する授業を通 して学習者の自律性の涵養を狙う。どういった活動や課題を通して自律的学習態度は養え るのか。先行研究、筆者の長い教師経験から考え出した授業案について論じる。. 1.背景 (1)英語に接触する量の不足 TOEFL や TOEIC 等は現在のところ英語力を計測するのに最適なテストとされている。 「英語を使用した対人とのコミュニケーション能力」と完全に相応するとは限らないが、 これらのテストスコアとある程度相関するという前提で話を進める。こういった曖昧性 を踏まえたうえで、この稿では、英語力を一応 TOEFL ITP スコアとして話を進めたい。 TOEIC ではなく、TOEFL ITP に限定するのは、今回の研究対象が横浜国立大学 1 年生 であり、ほぼ全員入学時に placement test として、また翌年 2 月に統一テストとして TOEFL ITP を受験するからである。今回対象にする 1 年生は 2017 年度入学生であり、 英語カリキュラム改定を実施した初年度の学生たちにあたる。 英語力を伸ばすためには自分の時間、つまり授業外にも英語を学ぶ、英語を使う(読 む・聞くも含まれる)ことが必要不可欠である。英語母語話者が「英語の使用」を通し て母語を習得する時間に関して、鳥飼(2006:19-20)は,例えば 10 才の子どもが英語 に接触する時間は少なくとも 1 日平均 10 時間であり、10 年間では 36,500 時間である という。日本では中学高校で 6 年間英語を学んでいるのに話せない、という不満をよく 耳にするが実際にはこの 10 才児が 1 年間に触れる英語量の何十分の一程度にも及ばな いであろう。一つの言語を使用してコミュニケーションを図れるようになるには様々な. 40.

(2) 条件が考えられるが、少なくとも英語を外国語とする日本では、意図的に英語に接する 量をかなり増やす必要がある。無論、その目的により程度に違いはあるが、自分の気持 ちや考えを伝える英語力を身につけるという意味では、不十分と言わざるを得ない。 (2)自律学習の欠如 英語を外国語として学ぶ以上、国大生としてより高いレベルの英語力(留学、卒業後 の海外赴任、他)を身につけるには在学中は無論、卒業後も自律的に英語を、または英 語で学んでいくことが肝要である。しかしこの自律性はどのくらい身に付いて大学に入 学してくるのであろうか。入試のため受験勉強として英語学習に取り組むが、入試が終 わればその必要はなくなり、大学入学以降における自律学習とは直接は関係なくなる。 小中高と進んでいく中でどの程度英語の必要性を感じているのであろうか。 2015 年 3 月のベネッセによる小学 5・6 年生を対象にしたアンケート調査によると「将 来、自分は英語を使うと思うか」という質問に対し、「日常生活で外国の人と英語を話 すことがある」+「いつもではないが仕事で英語を使うことがある」+「仕事ではほと んどいつも英語を使う」のいずれかに自分のことを当てはめて考えた回答者は半数をや や切る程度であった。1 同社は「中高生の英語学習に関する実態調査」を 2014 年秋に 実施している。時は前後するが参考になると考える。 図1. 社会での英語の必要性と自分が英語を使うイメージ(ベネッセ、2014 年調査より)2. 「日常生活で外国の人と英語を話すことがある」+「いつもではないが仕事で英語を 使うことがある」+「仕事ではほとんどいつも英語を使う」と合わせると自分が使うイ 1 2. https://berd.benesse.jp/global/research/detail1.php?id=4760 「小学生の英語学習に関する調査」 https://berd.benesse.jp/global/research/detail1.php?id=4356 41.

(3) メージを持つ回答者が半分ぐらいである。小学校 5・6 年生の回答結果とほぼ変わらな い。社会での英語の必要性ではもっと英語使用に対しポジティブな回答が多いが、これ は社会の中の様々な情報や学校の授業の影響であろうかと推察される。 大学生はどうであろうか。全国的な意識調査結果を見つけ出せなかったため、本学の みのデータによる。したがって、 「国大生はどうであろうか。」になる。毎年統一テスト 直後にアンケートを実施しているが、その質問項目の一つに「Q14 大学卒業後、自分が 英語を用いているイメージはありますか?」があるが、この回答結果(2016 年度 2 月 実施アンケート調査)では、肯定的な回答と否定的な回答が半々であった。この傾向は 毎年度ほぼ同じである。 自分が将来英語を使うイメージの回答結果に対し、そのための在学中の英語学習はど ういう状態であろうか。年度はさかのぼるが筆者は、国大 1 年生に英語自習の実態調査 を実施した(2011 年度) 。個人レベルの研究調査であったため 700 名程度の回答者にな るが、以下のような結果であった。 表 1 週あたりの英語学習時間(授業時間や課題に取り組む時間を除く). 42.

(4) 表2. 英語自習時間の目的. 回答者は 2013 年度に 1 年生であった学生たちである。将来英語を使用するイメージ を持つ者は約半数。積極的に英語の自習をする学生はさらに少なく週 3 時間以下+0 時 間と回答者で 80%くらいになる。回答者の英語自習の目的を見ると(表2)具体的な目標 を持つ者ほど積極的に学んでいることがうかがえる。様々な要因が考えられるが、自分 が英語を将来使うというイメージをあまり持っていないことが英語学習への強い動機 付けがない一つの要因と考えられる。 (3)自律学習への道と「英語自立学習」 英語に接触する量を増やすにはどのようにすればよいか。動機にも様々な要因が考え られるが、学ぶことで自分の力がついてくることを実感することも動機につながる (Deng, 2007)。日本でも教師主導型で授業から発信し、自律学習につなげようとする 試みは多読指導、e-learning をつかった指導などで試みられている。本学においても多 読指導、e-learning を用いた指導は、この数年盛んであり3、いくつかの授業でも試みら れている。 この流れの一環として、英語カリキュラム改定時に「自立英語」という科目を立ち上 げた4。1 年次春学期に開講されている科目であり、その教育効果や要因を化学で物質を 3. 本学の多読指導は、田島(英語教育部教授)を中心に進めてきている。日本教育アクシ ョン・リサーチ・ネットワーク 全国大会(2015 年 9 月)等で口頭発表してきている。ま た e-learning は授業指導の一環として渡辺(英語教育部教授)により進められてきている。 4 週 1 コマ 90 分×15 コマ(+最終レポート)で 3 から 4 回程度国大留学生(大学院生)のグル ープがクラスを訪れ英語による様々な活動も行っている。授業に関する詳しい内容は 43.

(5) 抽出するかのように示すことはできないが、カリキュラム改定後の 1 年生と前年度の 1 年生に明確な違いを示す分析結果を得ることができた。 統一テスト後、アンケート調査を実施している。26 年度までは統一テスト直後その 場で回用紙に回答してもらい、そこからデータをまとめた。27 年度からは予算削減に 伴い受験直後か当日中に回答をスマートホン等で Web にて回答してもらうようになっ た。5(そのこともあり、若干回答率が 2017 年度のほうが低い。2017 年度は英語学習に 関して意識がより高い学生が回答し低い学生はしていないために好結果が出たのでは ないか、という可能性があることは否定できない。) ここでは、特に関係があるとみられる質問9、質問10のこの二つの年度の回答結果 を示す。(表3) 表3:. 統一テスト後アンケート回答結果より グル ープ. 質問項目. Q9 本日の TOEFL ITP 受験に備えて、授業やその課題の 他に、自主的に多読多聴などに取り組んだと思いますか Q10 入学してから約 1 年が過ぎようとしていますが、 この間、授業以外に自主的に英語学習に取り組む、ま たは、日常生活で英語を使用する(e-mail のやり取り を英語でする、好きな雑誌を英語で読む、雑談を英語 でするなど) という機会を意識的に行いましたか?. 回答は 4 択であり「はい. 1. 2. 3. 回答 者数. 平均 値. 標準偏差. 平均 値の 標準 誤差. 2016. 1590. 2.81. 0.96. 0.024. 2017. 1377. 2.6. 0.832. 0.022. 2016. 1589. 2.95. 0.963. 0.024. 2017. 1376. 2.67. 0.815. 0.022. 4. いいえ」のように示されて. いる。1 に近いほど肯定的な回答になる。2016 年度の学生の回答と 2017 年度の学生の 回答の平均を比較してみた(表2)。Q9、Q10 ともに等分散を仮定しない(Levene の検定、 Q9 は F =20.441、Q10 は F =14.018)。Q9 は t(2965)=6.45, p <.001、Q10 は t(2961.5)=8.49, p <.001 で有意差が見られた。2016 年度の 1 年生より 2017 年度の 1 年生のほうがこの 2 つの質問項目の回答を見る限りでは、意識的に英語の自主学習に取り組んでいると言え る。. ( )を参照のこと。 5 常盤の杜、 本巻の英語教育部による「自律的学習者の涵養を目指した新英語カリキュラム」 参照のこと。 44.

(6) 表4:16 年度と'17 年度の比較から(独立サンプルの検定) 2 つの母平均の差の検定 差の 95% 信頼区間. 有意確率 t 値. 自由度. 平均値の差. 差の標準誤差. (両側). 下限. 上限. Q9. 6.45. 2965. 0. 0.21. 0.03. 0.15. 0.28. Q10. 8.49. 2961.5. 0. 0.28. 0.03. 0.21. 0.34. 筆者は本学 1 年生の自律学習の状況を統一テスト後のアンケートとは別に調査(2013) したが(再掲)、その結果から予想以上に自律学習が定着していないことを認識し、同 年度の統一テスト後のアンケートに、以上にあげた 2 つの質問項目を加えた。それから 2017 年度の調査結果までほとんど大きな違いは見られなかった。「自立学習」という 科目実施開始年度のアンケート結果に前年度までにくらべ統計的有意差(p <.001)が認 められたことは特筆すべきことであり、次年度以上更に調査をしていく必要がある。 (な お、本稿ではこれ以上詳しい分析結果は述べない。分析結果は、この論文集の別のセク ションに挙げてある。)こういう動きの中で、筆者は英語実習科目2LR の授業を通し て履修学生の自律性を育てる試みをしてきた。今回はカリキュラム改定後に設置された 2 年生対象の「英語演習b」という科目の授業での教育指導の実施・効果について分析・ 考察を行う。2017 年度入学の学生たちである。カリキュラム前の学生と比較できると よいのであるが、クラス編成方法に違いがあり、今回は対象となる学生は TOEFL ITP スコアが 500 以上 520 未満のクラスであるため、統計的な比較はしない。 2.先行研究から 授業で教師主導型から発信し学習者の自律性を養う効果は多く論じられ、また試みら れてきている(Jiménez Raya et al., 2007; Smith, 2003)。教師主導とはいえ、それは最初の 段階でのみであり、その後は学習者主導へと移っていく。また Nation(2001)は語彙学習 に関して、Thornbury(2005)はスピーキング学習に関して、Scharle and Szabó(2000)な どはリソースブックに具体的に挙げている。日本でも多くの研究がされ、例えば酒井 (2008)は、e-learning による自立学習の方法を英語習熟別に提示している。 自律性を育てるための授業の条件とは何か。Scharle and Szabó(2000:104)は、自律 性を定義し(「自分の学習に対する責任」)、育成に必要な要件を4つ挙げている。' motivation and self-confidence'、 'monitoring and evaluation'、. 'learning. strategies'、'cooperation and group cohesion'である。「動機付けに自信」「(自己)経 過観察…省察と(自己)評価」「学習方略」「協力とグループの結束性」は学習のどの過 45.

(7) 程でも必要なことであるし起こりうることかと考えられる。Dörnyei(2001, 米山・関 (2005)訳)は,外国語学習者の持つ学習動機として,学習ニーズと自信をあげた。 自 信はその性質より自己効力感の高さに支えされる。また、廣森(2006)など多数の研究 者が共通に挙げているのは自己決定理論にも基づく、3 つ の 心理的欲求(自律性の欲 求、有能性の欲求、関係性の欲求)である。特に活動内容がこの 3 つの欲求を満たすこ とが学習者の動機付け、やる気につながる。この Scharle and Szabó (2000)の 4 つの項目 と Dörnyei のあげる学習動機としての学習ニーズと自信 (自己効力感の高さ)、 廣森(2006) などが挙げている 3 つの心理的欲求(自律性の欲求、有能性の欲求、関係性の欲求)を 英語実習カリキュラムや日々の実践の中でどのように実現することが可能なのか。 内的・外的動機付けと分けた場合、授業や日々の指導で英語実習科目担当者としてで きることは外的な動機付けに関連したことである。動機付けのきっかけを学習者が持つ ための仕掛け、授業や学内の学習環境・情報提供をすることである。それは英語学習内 容そのもの(教材等も含め)に関連する場合もあるであろうし、学習に関連する学習ス タイル、学習方略といった場合もあるかもしれない。それともまたテストを実施するこ とかもしれない。 内的であるにせよ外的であるにせよ、動機付けによる学習が進む中で、継続していく ため効果的にしていくためには学習者自身による経過観察、自信や満足につながる「力 がついてきた」と感じられる経験、実感が重要になる。経過観察はほとんどの学生は黙 っていればしないままであろう。せいぜい TOEIC など自分が関心のあるテストのスコ アの変化くらいではないであろうか。授業の中で自分を振り返る、変化を見る、といっ た学習方略は「自立英語」でも指導の一環として実施されているが、英語必修科目担当 責任部局としては、その他の英語実習科目や 2 年次の必修科目「英語演習」においても 実施されることが不可欠である、と考える。 教員による働きかけは上述してきた事柄に加え、授業内における「協調学習」ができ る環境づくり、そして実施である。協調学習は、多くの学習者にとって楽しいことであ り、ほとんどの学習者にとっては必要である。本学の英語実習はアカデミックな英語ス キル・英語力をのばすことを目標にしているが、この協同学習をするにはフレンドリー なクラスづくりが必要であることに変わりはない。他にも授業内容によってそれぞれ必 要な条件がある。英語によるコミュニケーション力を伸ばしていく上で、ソーシャルス キルを育てていくことも考慮すべき点であると考える。以上の点を踏まえ、あらたえて 担当授業における試みを理論的な側面と実践的な側面に分けて述べる。. 46.

(8) 3.担当授業(英語演習 b)における試み 本稿では 2018 年度秋学期に「英語演習 b」の授業とその受講者を対象に論じていく。 まず授業内容を紹介したい。次にデータ収集と分析方法等であるが、授業の計画上アン ケート調査、各受講者の授業実践ノート(My journal と呼ぶ) 、ワークシート等になる。 アンケート結果や学生たちの My journal は 2019 年 1 月末に回収できる計画のため、こ の稿の締め切りとの関係で、本稿では授業内容の紹介までとして、データ収集と分析結 果および考察は「自律性を養うことを狙った授業実践. その2」 (2020 年 1 月初旬の本. 紀要の次号に投稿予定)で述べたい。その2では、分析結果をどのように 2019 年度の 同じ科目に反映させたかも併せて述べていく。 (1)「英語演習b」の授業の理論的基盤 この授業受講者は 27 名であり、 全員 2018 年 2 月の受験した統一テスト (TOEFL ITP) のスコアが 500 から 520 の間である。 1) 外国語教育指導観:現在英語教育は「教え中心」から「学び中心」へ、つまり Learning-centered にパラダイム・シフトしている。新たなパラダイムでは、教 師が講義形式に教えることを授業の中心に据えるのではなく、学習者が四技能 を駆使してコミュニカティブなタスク活動に取り組めることを主眼としてい る。その目的をもって教師は十分な授業計画と準備を行い、授業中は facilitator (学習の手助け)の役割を果たすことになる。したがって成績評価については、 結果的にテストなどによる実力向上の結果を測るプロダクトのみではなく、学 習のプロセスをも評価の対象にする。 2) 動機付け:学習者の学習動機や意欲は廣森(2006)や他の報告があるように、 自己決定理論に基づき、英語学習場面においては、学習意欲の高さと自律性、 有能性、関係性などの心理的欲求の高さが連動している、と考えられる。この 学習者心理観は「学び中心」の指導観と一致する。授業内容からくる学習への 動機付けだけではなく、学習者自身が興味や将来への希望から動機を持つこと が肝心であり、この点は 1 年次春学期の「自立英語」の授業に始まって各学習 者の動機づけの促進や動機付けに少しでも寄与できることを願った指導を実 施している。 3) 経過観察と自己評価・・・自律性を育てるための工夫:外的動機付け努力をす るとともに、学習者が自分の学習の経過を観察し、達成感等を日々に感じると ともに、長期的には英語力などが伸びているという実感も持つことが持続学習 にとって大事な要素である。授業では授業の活動を通して、その実感を覚えら れるよう、各活動に関しての振り返り、クラスメートの評価を書くようにして いる。(課題によってノートに、または毎回の授業後に提出するワークシート に書き込む。)無論、テストなどにより英語力の変化も見ることも大事である. 47.

(9) が、スコアという形でなくても、学ぶ姿勢や英語で話す姿勢、その他さまざま な点から学習者の変化は垣間見ることができる。活動を通し、振り返りを通し、 意識的に検証をしていく中で学習者は自律性を育てていくと考えられる。自分 の成長を実感するのは英語力とは限らない。長い目で見て英語力につながる学 習方法・学習スタイル、学習方略かもしれないし、英語コミュニケーション力 やソーシャルスキルにつながるクラスメートとの協力、グループの結束力に関 しての場合もあるであろう。 4) 第二言語習得理論から:学習目標言語の力をのばす条件の一つとして「適切な レベル」で「興味ある内容」の英語になるべく多く「接する」ことが挙げられ る。学習者にとって英語との「接触量」をなるべく増やすことが肝心である。 5) 本稿では、以上のような前提に基づき実施してきている授業プラン(授業 15 回×90 分)をまず紹介する。旧カリキュラムでも同じような授業を展開してき ているが、新カリキュラムで「自立英語」の授業を受講し英語習熟別クラスに 振り分けられている受講者への効果を改めて考察していく。 (2) 授業での実践 以上の理論と考え方は、私が英語実習授業で英語学習指導をしていく上での基盤とな っている。 1) 目標 ①やや専門的な知識や語彙を必要とする記事でなければ、短い新聞記事(短い記事= 100~400 語程度)を1時間で 10~15 本位読めるようになる。 ②新聞の社説やコラムも時間をかければきちんと読めるようになる。 ③NHK(TV)のニュースを英語で聞いて、画像を参考にすれば、ある程度わかるよう になる。 ④自分で選んだ英文原書・書物等を継続的に読むようになる。 ⑤クラスメートが紹介する記事内容(英文)を読んで、英語(30 語以上)でコメントが できる。 ⑥自分で目標を設定する。(学期初めにジャーナルの裏表紙に書いてもらい、学期 末の提出時にはどのくらい達成できたか「振り返り」メモを書いて提出。) 2) 授業の組み立て(「授業の組み立て」のこの部分は、1 回目授業配布物の一部を そのまま転用。そのため「です」「ます」調になっている) ① 教材 英字新聞(the Japan Times)を用います。英字新聞を用いる理由は三つあります。一つ は「英語演習b」は教養科目であることです。新聞に紹介される様々な記事を読み一緒 に考え議論していくことが、大学 2 年生の教養科目の教材として相応しいと考えます。. 48.

(10) 二つ目は、英語学習の観点からです。スムースな reading をする条件は、背景知識があ る、習熟に応じた英文のレベルと長さである、読み手にとって興味あるトピックである ことです。学生は自ら記事を選ぶことで調整をします。(こちらで指定する記事もあり ますが。)もう一つは自律学習の観点からです。学期末には、学生が自分で英文を読ん でいく上で手に入れやすい、また、社会人になってもお付き合いをしていくのが新聞で す―例え、WEB で読んだりするにしても同じことです。英字新聞を読む力があれば、 世界のどこにいても情報に事欠きません。 ② 授業構成 ②-1授業までにすること:. My Journal の作成:. 学生が授業までにすることが二点あります。一つは、前週の授業で扱った Japan Times (指定の曜日のものを授業に毎週持参する)から記事を1つ選び、その内容のサマリー とコメントを英語で書いてくることです。B5 ノート見開き左側の1ページを利用して、 サマリーとコメントの他、読んだ記事の切り抜きかコピーも貼ります。右側はあけてお きます。ここにはクラスメートのコメントが入ります。 二点目は、自分で、WEB 等を利用してエッセイやニュースを1つ選び、口頭(英語) でクラスメートに伝えられるように準備してくることです。 (利用できる WEB のリス トあり)。選んだ英文はプリントアウトして、B5 ノート(同じ B5 ノートの反対側から 始める)の見開き左側に貼付します。見開き右側に、key words やマインドマップ等、 口頭で伝えるときに参考にする[メモ]を書きこみます。授業ではこのメモを用いてクラ スメートに読んだ記事の内容を英語で伝えます。書いてきた英文をそのまま読んでは、 練習効果は半減します。 以上課題2種類に取り組んで授業にのぞみます。1 回の課題に 4 ページ分ノートを使 用することになります。また、極力、指定の Japan Times を購入したら、記事が新鮮な うちに一通り目を通してくるように指導しています。時間がないときは写真、ヘッドラ イン等を見るだけでも良いかと思います。どのような記事があるかをなるべく把握して 授業に臨むことです。 ③ -2授業の流れ その1) (クラス一斉)課題から:クラスメートの Journal を読み、英語でコメント する。まず、貼ってある記事とサマリーを素早く読み、次に書かれているコメントも読 みます。次にコメントに対してコメントを英語で書きます。スピードが要求されます。 その2) (ペア・グループ活動)課題から:予め選んで読んできた Web 記事の内容を ペアの相手に英語で伝えます(メモを見ながら)。活動後、ペアになった相手のノート に相手のパフォーマンスに関していくつかの視点から感想を述べる。 その3) (ペア・グループ活動)授業担当者が選んだ複数の記事から1つ、 「ジャンケ ン」して勝った方から順に選びます。選んだ記事を速読し、その内容をメモします。メ. 49.

(11) モを参考に相手に英語で伝えます。相手からの評価を worksheet にもらいます。 その4) (個人活動→全体活動)授業者が用意した worksheet の課題に答えるように新 聞を読みます。この worksheet で提示される課題は、記事を読んで英語で意見をまとめ る、記事を読んでサマリーを英文で書く、記事を scan してキーワードのみ見つける、 など様々で reading skill を身に着けます。特定の記事に関して、クラスメートとのディ ス カ ッシ ョン も最 後にあ り ます 。こ こも 最後は ク ラス メー トか らのコ メ ント を worksheet にもらいます。 その5)worksheet の提出。 その6)前の授業の worksheet の返却とフィードバック (3) 授業の効果 学期末に授業アンケートを実施しています。その後の英語学習状況も気になりますの で、一部の学生をトレースしています。旧カリキュラムの授業「2LR」の結果をまとめ ると以上のようになります。 1). 学生の英文を読むスピードが上がり、長文に対して拒否反応をしなくなる。. 2). 様々なニュース記事などを自分で選ぶことで、次の学期に入っても課題であった 内容を自主的に継続する学生が多くいる。. 3). 英語で少し反応ができるようになる。. 4). 新聞を読む、ニュースを見るといった世の中の動きを追っていくようになる。. (4) 課題 一つは毎週 worksheet を回収しても必ずしも返却できていない点である。 Worksheet には英語による解答や意見は無論、日本語による解答もある。特に英文で書 いた部分は、学生によっては内容へのコメント、英文の添削を期待する声もある。また、 worksheet(15 回分)を見直すことで自分の学習の軌跡を振り返ることもできる。したがっ て返却することは教育的効果があると考える。しかし、この点が十分に実行できていな い。したがって、教育効果は半減していると言わざるを得ない。 もう一つは、学生の動きに関してである。授業の流れの4)にあたる活動では、授業 者が指定する記事を読んで設問に答え、自分の意見・感想も英語で書くことが求められ る。その後、クラス内を歩き回って意見交換をする場に設定しているが、実際にはそれ までの活動のペアやグループで意見交換をする傾向が強くなかなか定着しない。 2018 年度秋学期のこの科目のアンケート結果や上述にあげた課題を鑑みて、次年度 は工夫努力をするとともに、次の論叢の原稿ではよりよい報告ができるよう努めていき たい。. 50.

(12) 引用文献 酒井志延. (2008). 「英語教育における自律した学習者養成と ICT」 『メディア教育研 究』5(1),45-56. 鳥飼久美子.(2006). 「危し!小学校英語」 文藝春秋. 廣森友人、田中博晃. (2006) . 「英語学習者における動機づけを高める授業実践: 自己 決定理論の視点から」.Language Education and Technology,43,111 -125. 満尾貞行. (2011). 「国大生の英語自律学習」、横浜国立大学大学教育総合センター紀要(2) 、 35-50. Deng, Dafei. (2007). An exploration of the relationship between learner autonomy and English proficiency. Asian EFL Journal. http://www.asian-efl- journal.com/pta_Nov_07_dd.pdf Jiménez Raya, M., Lamb, T. and Vieira, F. (2007). Pedagogy for Autonomy in Language Education in Europe: Towards a Framework for Learner and Teacher Development. Dublin: Authentik. Nation, I.S.P. (2001). Teaching and Learning Vocabulary in Another Language. Cambridge: Cambridge University Press. Scharle, A. & Szabó, A. (2000). Learner Autonomy. Cambridge University Press. Smith, R. C. (2003). ‘Pedagogy for autonomy as (becoming-) appropriate methodology’. In L. Dam (1995). Learner Autonomy 3: From Theory to Classroom Practice. Dublin: Authentik. Thornbury, S. (2005). How to Teach Speaking. London: Longman.. 51.

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