氏 名 高岡 智子 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 看護学 ) 学 位 記 番 号 医工博 第 449 号 学 位 授 与 年 月 日 平成 31 年 3 月 20 日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 ヒューマンヘルスケア学専攻 学 位 論 文 題 名 妊娠36週~産後5か月の女性に対する骨盤底筋訓練の教育と実 践のプログラムが肛門挙筋裂孔の縮小にもたらす効果:非盲検 非無作為化比較試験
( The effect of pelvic floor muscle training program on the levator hiatus area in postpartum women: an open label,
non-randomized, controlled trial ) 論 文 審 査 委 員 委員長 教 授 宮本 和子 委 員 教 授 小林 康江 委 員 教 授 中込 さと子 委 員 准教授 谷口 珠実 委 員 教 授 中本 和典
学位論文内容の要旨
【研究目的】 本研究の目的は「妊娠36 週~産後 5 か月の女性に対する骨盤底筋訓練の教育と実践のプログラ ム」(以下、プログラム)が肛門挙筋裂孔を縮小する効果を明らかにすることである。 【研究方法】 1. 研究デザイン 時系列準実験研究デザイン(非ランダム化群間比較デザイン) 2. 研究対象者 単胎妊娠の妊娠後期~末期(妊娠30~36週頃)の成人妊婦92名(介入群46名、比較群46名) 3. 実験介入 介入群には以下3つで構成するプログラムを提供した。比較群は施設での通常ケアのみを受け、 研究者による介入は行わなかった。 ① 骨盤底筋訓練に関する教育と収縮動作の指導(準備教育) 妊娠36週~産後1か月頃の間に3回実施した。その中で骨盤底筋訓練の必要性を説明し、実施を 動機づけるとともに、内診にて骨盤底筋の収縮動作を指導した。 ② 骨盤底筋訓練(自宅訓練) 産後1か月~産後5か月の間に毎日自宅で6セット実施してもらい、実施状況を記録してもらっ た。③ フォローアップ指導 自宅訓練の継続等を目的として、自宅訓練実施期間中に2回実施した。自宅訓練の継続に向け たアドバイスを行うとともに、骨盤底医療用筋電計を用いたバイオフィードバック訓練を実施 した。来院が難しい場合には電話訪問にて自宅訓練の継続を支援した。 4. 評価時期と評価指標 評価時期は自宅訓練の開始前(産後1か月、以下1次評価)と終了時(産後5か月、以下2次評価) の2時点であった。肛門挙筋裂孔の面積は超音波診断装置(サムスン電子ジャパン株式会社製 UGEO WS80A)を用い、経会陰的に測定した。主要評価指標は安静時に取得した肛門挙筋裂孔の 面積の変化率であり、その他、副次指標として質問紙(ICIQ-SF等)や内診(POP-Q法によるstage 分類等)により尿失禁や骨盤臓器脱に関するデータを得た。 5. 分析方法 統 計 分 析 に はSPSS Statistics ver.25 を 用 い た 。 肛 門 挙 筋 裂 孔 の 2 群 間 の 変 化 率 の 差 を Mann-WhitneyのU検定にて分析した。 6. 倫理的配慮 山梨大学医学部倫理委員会にて承認を得た。研究内容を書面にて説明し、自由意思による同意を 文書にて得た。 【結果】 1. 最終的な分析対象者数は89名(介入群44名、比較群45名)であった(脱落率3.3%)。対象者 背景および分娩時要因に有意な群間差は認めなかった。 2. 自宅訓練は1日あたり平均4.4セット実施されていた。規定量の50%(1日3セット)以上を達成 できていた高アドヒアランス群は81.8%(36/44)であった。 3. 割付重視の解析(Intention To Treat、以下ITT)において、安静時の肛門挙筋裂孔の面積は、 介 入 群 で は18.90%の縮小を認めていた。比較群に比較して変化率は大きい傾向にあ る も の の 、有 意 差は 認め な か った(U=769、p=.070)。一方、高アドヒアランス群 に 限 定 す る と 、20.39%の縮小を認めており、比較群に比べて変化率は有意に大きか っ た (U=542、p=.011)。 4. 1次評価で何等かの尿失禁を有するのは介入群で19名(19/44,43.2%)、比較群で11名(11/45, 24.4%)であり、症状を有する女性は介入群に多い傾向にあった。2次評価での有症者は介入 群9名(9/44, 20.5%)、比較群10名(10/45, 22.2%)であり、2群間で有症者の割合に は差がなかった(p=.839)。POP-Q法による骨盤臓器脱のstage分類に関して、1次評価での stage分布に群間差はなかった。2次評価でも各群の分布は類似であり、差は認めなかった(介 入群 stage0: 40.9%(18/44), stage1: 50.0%(22/44), stage2: 9.1%(4/44)、比較群 stage0: 40.0%(18/45), stage1: 46.7%(21/45), stage2: 13.3%(6/45) ; p=.814)
【考察・結論】
ITTにおいて、2群間で安静時の肛門挙筋裂孔の面積(変化率)に有意差はなく、本介入プログ ラムが安静時の肛門挙筋裂孔を縮小する効果は認めなかった。介入群を高アドヒアランス群に限定 した場合には、介入群の面積の変化率は比較群に比較して有意に大きく、本プログラムは肛門挙筋
裂孔を縮小する効果を有していた。今後は、盲検化を伴った無作為化比較試験により効果を検証す ること、および、より長期的な追跡を行うことで今回認めた効果の臨床的意義を検討することが課 題である。