高校生に対する救急法実技指導の効果
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(2) . 北海道教育大学紀要(教育科学編) 第5 0巻 第2号. 平 成12年 2月. Journa lofHokka ido Un i i fEduca i i 50 tyo t t s on(Educa ve r on)Vol , .2 . ,yo. February,2000. 高校生に対する救急法実技指導の効果. 津村. 直子・村上. 美可*. 北海道教育大学札幌校臨床医科学・看護学教室 *苫 ・牧中央高等学校. 緒 -. 言. 複雑, 多様化する現代社会において, 救急車の出動件数も増加の一途をたどり, 1997年では347万6504件 ) 救急 であ り, こ れ は9 1秒 に1 回の 割 合 で救 急 隊 が 出動 し, 国民 の38人 に1 人 が 搬 送 さ れ た こ と に な る1 ‐ ‐. )であり それまでに救急現場近くの一般住民による応急手当 が適切に 車の平均現場到着所要時間は6 1分2 ‐ , 実施されれば大きな救命効果が期待できると思われる. 心臓停止傷病者では, 救急車が到着するまでの間に 家族等により応急処置が実施された 傷病者の1カ月 後の生存者数は, 実施されなかっ た人 の2倍以上高 )4 )と いう 結 果 が報告 さ れて お り バイ ス タ ン ダー の はた す 役割 は 大 き く f い3 id の 処 置 が そ の 後 の t rs ‐a , , i. ‐生存率に大 きな影響を及ぼしていることが理解できる. 傷病者の救護は, 一般的に現場に居合わせた人の応急手当; 現場に急行した救助隊員の行う救急処置 そ , して最終的に医療機関による医療行為な ど, これら一連の行為 の相乗効果が発揮されてはじめて生命の安全 に対する効果が挙がるものである‐ WHO の公表している救急処置の基準 では, 医師,‐看護婦, 消防救急隊 ) 一般住 民に 員, 警察官はもとより, 一般人にも救 命のための応急手当の知識技術を必要条件としている5 . )が古 対する応急手当の普及は, 日本赤十字社による, 「衛生講習会」( 19 26年) を前身とする救急法講習会6 くから行われている‐ また, 消防庁では, 199 3年に 「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」 を ) 心肺蘇 制定し, 各消防機関が心肺蘇生法等の実技指導を中心とした住民に対する普及講習を行っている7 . 生法の普及 活動は 「他人の命を守ることが自 分の命も守られることになる」 という 「お互いの命を守る」 社 会原理に基づいており, 社会のかかわりの中から自己の存在性を見いだす社会啓発運動 であり 「自分なら , )にもつながるものと考えられる どうするか」 を常に考え, 実行する勇気をもった人間を育てる教育8 ‐ 本研究は, ‐応急処置により生命を救おうとする意欲や救急法の知識について; 救急法の指導や心肺蘇生法 の実技指導をうけた生徒と, うけていない生徒を比較し, 高校生 に対する救急法実技指導の効果と意義につ い て 考 察 する こ とを 目的 と して いる‐. 対象および方法 調査対象は, 札幌市内のH高等学校の1年生420人と3年生435人であり 3年生は心肺蘇生法の実技指導 , をうけた生徒である‐ 1997年1 0月中旬に学級担任を介 して質問紙調査を行っ た‐ 調査内容は 救急法の指導 , , 心肺蘇生法の実技経験, 救急時の救命意欲 救急法の知識についてな どである アンケートの回収率は913 , . . %, 有効 回 答率 は98 6% (770人) であ っ た. .. 77.
(3) . 津村. 直子・村上. 結. 美可. 果. ( 1 ) 中学校における応急処置の学習状況につ いて 中学校の保健の授業で扱う応急処置について, 生徒が学習したと 回答した項目の結果を表1に示 した. 最も多いもの は 「止血法」. 学習した応急処置. 表1 項. 0%) で 8%) (5 5 1%) . . ‐ , 「包帯法」 (46 , 次いで 「人工呼吸法」(47 7%) あり, 最も少ないものは 「感電の処置」 (8 . , 「習 っ た記憶が 8%であった. ない」 と答えた生徒が10 ‐ ( 2 ) 救急法について 心肺蘇生法等の救急法の指導 をう けた と 回答した生徒は516人 0%) であっ た. うけた動機 (複数回答) は 「学校の授業 だか (67 . 7%) で あ っ た. 例 数 は 少 な い が 「い つ ら」 が最 も多 く468人 (90 .. 0%) かは役に立つと思うから」36人 (7 . , 「自分や家族, 周囲の人々 の生命を守るのに必要だから」10人 (L9%) という 内容もみられ た. また, 救急法の指導をうけた場所 (複数回答) は 「高等学校」 0%) 00人 (7 7 5%) が最も多く4 . . , 次いで 「中学校」 が134人 (26 0%) や 「消 防 局 の 講 であ っ た. 「日 本 赤十 字社 の 講習 会」 5 人 (1 .. 止. 血. 法. 424( 55 1) ‐. 包. 帯. 法. 35 6 0) 4(4 .. 運. 搬. 法. 27 0) 208( .. 人工呼吸法. 8 ) 368( 47 .. 突き指の 処置. 26 2) 20 2( .. 捻挫の処置. 23 0) 177( ‐. 骨折の処置. 29 2(37 9) ‐. 置 脱臼の処置. 2(u 9) 9 2 (11 .. 火傷の処置. 8) 237(30 ‐. 凍傷の処置. ) 1 7 52(19 ‐. 感電の処置. 67( 8.7). 習った記憶なし. 8 ) 83( 10 . ′ m “ 9) 7 6 1 (ワ L》 ノ 0 1\ .. 而 無 蕪. 6%) な ども少 数な が ら含ま れてい た. 習 会」 3 人 (0 . 救急 法 の指 導 をう けて い な い 生徒 につ いて は, 指 導 をう けた いと. 人数(%). 目. 間 回 凶. 姑 答 合 0 7 n=7. (複数回答). 3 5 7%) 希望している生徒は167人 (6 . ‐ , 希望しない生徒 は77人 (30 9%) で あ っ た. 性 別 の 結 果 を 表 %) . , 無 回答10人 (3. ± ‘ 衣へ. 2に示したが, 救急法の希望者 は男子より女子のほう 0 05) が多 く 有意 差 が 認め ら れた (pく . .. 希望. 猫の卓 掛9 至 双 忍 汁枇 広畑辱爪 傭伐. 男子. 女子. 、 人(%). 性別 不 明. 救急法の指導をうけた生徒に対して, 『意識がなく呼. あり. 3) 46 1) 89(53 77( ‐ .. ) 1( 0 6 .. 吸 も 止ま っ て いる 状態 の 人 をみ た ら, あ な た は 心 肺 蘇. なし. 50(64 9) .. 26(33 8) ‐. 3) 1(1 ‐. 1) ) 115(47 5 2 1 計‐ 127( . .. 2( ) 0 8 .. 生法を行いますか』 という, 救急時の心肺蘇生法に対 す る 取り 組 み 意 欲 を調 査 した. 最 も 多 い も の は 「行 い. 0 ) 0 5 1 5( z2=8 p〈 ‐ .. たいという気持ちはあるが, 自信がないので行わない」 0%) 43 3%) 239人 ( 46 . 次いで 「自信はないが行ってみる」222人 ( ‐ , 「自信があるのです ぐに行う」 14人 ‐ , 49 6 0%) であっ た. 性別にみると, 男子では 「自信はないが行ってみる」112人 ( 2 ( 7%) ‐ ‐ ‐ , その他41人 (8 3人 ( 36 7%) わない」8 %) ‐ , 「自信があるのです ぐに , 「行いたいという気持ちはあるが, 自信がないので行 自信がないので行 3%) 4%) 行う」10人 (4 ‐ ‐ , 女子では 「行いたいという気持ちはあるが, , その他21人 (9 38 4%) 3 9%) 5 わない」153人 ( ‐ , 「自信があるのです ぐに行う」 4人 ‐ , 「自信はないが行ってみる」109人 ( 3%) であり, 男子 は女子より救急時の心肺蘇生法への取り組み 意欲が高く有意差 1 4%) ( ‐ ‐ , その他18人 (6 0 01) が認められた (pく . ‐ 4%) と た生徒は4 46人 (86 た生徒のうち 救急法の指導をうけ . ,う , 心肺蘇生法の実技指導をうけた 回答し 2%) であった. 実技指導 をう けた場所 (複数回答) は, 1 12 4%) 4人 ( けていない生徒は6 ‐ ‐ , 無回答6人 ( 5%) であった‐ 6%) 高等学校が最も多く395人 (88 ‐ . , 次いで中学校69人 (16 心肺蘇生法実技経験の有無と救急時の心肺蘇生法に対する取り組み意欲について表3に示した. 実技経験 7 8.
(4) . 高校生に対する救急法実技指導の効果. のあ る 生 徒 は 「自 信 は な い が 行 っ て み る」 と 答 え た生 徒 が最 も多く45 6%, 次い で, .. 表3. 心 肺 蘇 生 法 に対 する 意 欲. 「行 い た い と いう 気 持ち はあ る が 自 信 が な. ヰ 什 夫 奴 経 験. 0%, 「自 信 が あ る い の で行 わ な い」 が45 ‐. あり. の で す ぐに行う」 が2 .9% で あ っ た. 実 技. なし. 0( 0 0) .. 15(23 4) ‐. 経 験 の な い 生 徒 は 「行 い た い と い う 気 持. 無 回答. 1(16 7) .. 3(50 0) .. ち はあ る が 自 信 が な い の で 行 わ な い」 が. 計. 』倍 モm 日1日の り. 』停 は十 し 日偏{. 行う. 行う. だ 鱈 気 丸 仕ふ 付つセ のり 行わない. 人(%). その他. 13( 2 9) 204(45 6) 201(45 0) 2 5) 8( 6 . ‐ . ‐ 37(57 8) 12(18 8) . ‐ 1(16 7) .. 1(16 7) ‐. 9) 239(46 2) 4 2) I4( 2 7) 222(42 1( 8. . . ‐. 最 も 多 く57.8%, 次 い で, 「自 信 は な い が. 86 (p〈 0 0 1) ズ 2=27 . ‐. 行っ てみる」 が23 4%であり, 心肺蘇生法 ‐ の実技経験のある生徒 は, 実技縄験のない生徒より救急時の心肺蘇生法への取り組み意欲が高く有意差が認 め ら れた (p〈0 01) ‐ ‐. 3 ) 心肺蘇生法の知識について ( 心肺蘇生法に対する関心の程度を, 救急法の指導をうけていない生徒に対して調査した. 救急法の指導を受けていない生徒のうち, 指導をうけたいと希望している生徒は, 心肺蘇生法について 「全く知らない」6 1人 (36 5%) 7%) ‐ . , 「テレビや雑誌等で見たことがある」58人 (34 , 「心肺蘇生法という ことばだけ知っている」38人 (22 8%) であっ た‐ 指導を希望しない生徒では, 心肺蘇生法について 「全く . 知らない」48人 (6 2 3%) 6%) ‐ , 「心肺蘇生法ということばだけ知っている」12人 (15 . , 「テレ ビや雑誌等で 見たことがある」 8人 (104%) であり, 救急法の指導を希望している生徒は希望しない生徒よりテ レビ, 雑誌等で心肺蘇生法を見聞きしている生徒が多く, 全く知らない生徒は少ない結果が得られた (p〈 0 0 1) . ‐ 「 心肺蘇生法の知識について, 心臓マッサージを行う施行者の手の位置」 「心肺蘇生法の手順」「ドリンカー の曲線」 について選択肢を用いて正解を求めた. 心臓マッサージを行う施行者の手の位置について, 正しい圧迫部位を理解 している生徒は全体では581人 (7 5 5%) であ っ た. 救急法の指導をう けた生徒の正解は442人 (85 7%) . . , う けていない生徒では139人 (5 4 7%) であり, 救急法の指導をうけた生徒のほうが正しく理解しているものが有意に高い値が得られた ‐ 0 (pく 01) 1%) ‐ . また, 心肺蘇生法実技経験のある生徒の正解は393人 (88 ‐ , 実技経験のない生徒 の正解は 43人 (67 2%) であり, 心肺蘇生法実技経験のある生徒のほうが有意に高い値が得られた (p〈 0 01 ) ‐ ‐ . ‐ 心 肺 蘇 生 法 の 手順 につ い て, 正 しく 理解 して いる 生 徒 は 全体 で は517人 (67 1%) で あ っ た. 救 急 法 の 指 .. 導をうけた生徒の正解は384人 (7 4 4%) 4%) であり, 救急法の指導を ‐ , うけていない生徒では133人 (52 ‐ うけた生徒のほうが正しく理解しているものが有意に高い値が得られた (p< 0 01) ‐ . また, 心肺蘇生法実技 経験のある生徒の正解は337人 (7 5 6%) 8%) であり, 心肺蘇生法 . , 実技経験のない生徒の正解は44人 (68 . 実技経験のある生徒のほうが高い値が得られたが有意差は認められなかっ た. 呼吸停止時間と蘇生率との関係を示した ドリンカーの曲線において, 蘇生率50%の呼吸停止時間を質問し た項目については, 全体では正解者は37 1人 ( 48 2%) であっ た‐ 救急法の指導をう けた生徒の正解は279人 ‐ ( 5 4 1%) 36 2%) であり, 救急法の指導をうけた生徒のほう が正 しく理解し ‐ . , うけていない生徒では92人 ( ているものが有意に高い値が得られた (p<0 01) ‐ ‐ また, 心肺蘇生法実技 経験のある生徒の正解は244人 (54 7%) 6%) であり, 心肺蘇生法実技経験のある 生徒 のほう が高 . , 実技経験のない生徒の正解は33人 (51 . い値が得られたが有意差は認められなかった.. 79.
(5) . 津村. 考. 直子・村上 美可. 察. ( ) 中学校における保健の授業について 1 保健の学習は, 小学校5年生から中学校3年生まで継続して毎学年学習されており, 高等学校での教育は, 小.中学校における指導と一貫性をはかることで学習の効果が期待できる. そこで, 中学校の保健で扱う応 急 処 置 につ い て, 生 徒 が学 ん だこ と を覚 えて いる, 印象 に残 っ て いる 項 目を調 査 した.. ー傷害の応急処置を取 現行の中学校の学習指導要領では, 保健体育科保健分野の 「傷害の防止」 においてデ 9 ) り扱っており, 包帯法, 止血法, 人工呼吸法 (口移し法) , 運搬法などを実習を通して 身につけさせる と 99 2年~1994年は, 現行の指導要領 (1989年に改訂され, 示されている‐ 調査対象の生徒が中学生であった1 0 )をみ 978年改訂, 1981年度から本格実施の学習 指導要領1 1993年度から本格実施) の移行期であるため, 1 ると, 応急処置は 「傷害の防止と疾病の予防」 の中で取り扱われていたが, 応急処置の内容は現行の指導要 領と同じであった. また, 保健の年間授業時数は, 3年間を通してともに55単位時間を標準と していた. 1 )について 半数以上の生徒が学習 したと回答した項目は 「止血法」 中学校の保健授業で扱う応急処置1 , のみであり, 次いで人工呼吸法, 包帯法の順であった. 中には習っ た記憶がないと答えた生徒が約1割存在 1 2 ) していた (表1参照) . 門田 の大学生に対する調査では, 中学校で応急処置の授業がなかっ たと答えたも 1%, 中・高校の保健授業で学習した応急処置の内容について半数以上のものが挙げた項目は止血法 のが29 ‐ 8%) の3 ▲項目であり, 本調査も同様の傾向が得られた. また, 0 9%) 3%) ( 55 . ‐ ‐ , 包帯法 (5 , 人工呼吸法 (55 3 )の高校生に対する中学校の保健授業についての調 査では 保健の授業はほとん ど行われなかっ たと 和唐1 , 9%, 印象に残っ た授業は人工呼吸法, 包帯法などの応急処置が第1位であり, 実習教材や 答えたものが10 ‐ 4 )をみると 多くは教科書 プラス 視聴覚教材を使っ た授業が上位を占めていた. 中学校の保健授業の形態1 , ・ 中学校の保健授業の学習形態にはふれて 説明の授業で, 実験, 実習もほとんど行われていない. 本調査では{ 5 }の調 査 による と 中 学校 の応 急 処 置 で実習 を行 っ て いる も の は包帯 の 巻き 方667% 患 者 の い な い が, 丹1 . , ,. 5%であり, 実験・実習 はあまり行われていない と判 断される. 85%, 止血法18 6%, 人工呼吸法1 運搬29 ‐ ‐ )では 英米と比 べ て日本の学 生は 知識の総 6 日英米の大学生に対する保健知識の習得状況に関する調査1 , , 合的な習得は悪くないが, 性知識や救急法といった実践的な知識が不足していると報告されている‐ 日米の 7 )は 生活スキルや行動の とり方を具体的に身につける学習過 差の要因の1つには, アメリカの保健教育1 , 二日本の保健教育は, 知識の教授・伝達に重点がおかれ, 実験・実習が 程を組み込みながら展開している が, 少ないという授業形態の違いも関与していると考えられる. 生徒の保健行動の変容を求めることが健康教育の目的であるが, 本調査では, 中学校で学んだ応急処置は 生徒の印象に残っている項目が少なく, 生活に役立つ授業であっ たとは評価しがたい結果であった‐ ( 2 ) 救急法について 9 )は突 )である また 学校管理下での死 亡の原因1 8 5~1 9歳の年齢層の死亡原因の第一位は不慮の事故1 . , 20 3%) である‐ 文 3 8%) 8%) 3 5%) 然死・ 6%) (55 ‐ . , その他 ( ‐ ‐ , 日射病・熱射病 ( . , 溺死 (6 , 頭部外傷 (1 部省では, 交通事故の増加や学校管理下での児童生徒の突然死の多発などに対応するため, 様々な形で学校 教諭に対する心肺蘇生法の講習会を実施している. 教師自らがバイスタンダーとしての役割を認識してもら うととも に, 1989年に高等学校の学習指導要領の内容に応急処置が加わっ たのをうけて, 91年から3年間, 高等学校の保健体育科の全教諭を対象に応急処置研修会を行っており, 94年からは中学校の保健体育科教諭 0 ) 教員の研修は保健体育の教諭 養護教諭を対象に行われてきたが, 現在は一般教 を加えて実施している2 , ‐ 2 1 ) 諭にも定着してきている . 1989年に高等学校の保健体育科に加わっ た心肺蘇生法は, 移行期間を経て1994 80.
(6) . 高校生に対する救急法実技指導の効果. 年から全面実施となり, 本調査の対象校も2年生の生徒に心肺蘇生法の実技指導を行っている‐ 7 5%, 心肺蘇生法等の救急法の指導をうけた生徒は3分の2であり, うけた場所 (複数回答) は高等学校7 . 0%であった‐ 動機は学校の授業だからが9割であり, 指導の機会は保健の授業の1つとして学校 中学校26 ‐ 側が提供した受け身のものが多かったが, なかには日本赤十字社や消防局の講習会を積極的に受講している 生徒も少数ながら存在していた. 救急法の指導は, 安全に対する意識の向上とともに生徒が生命の尊さ, 命 . 他人をおもいやる心や生きる力の教育にもつながるものと思われる の重さを考えるよい機会にもなり, . 救急法の指導をうけた生徒を性別にみると, 男子は女子より救急時の取り組み意欲が高く (p〈0 01) . , い ざという時に相手を救助しようとする行動力を特- っているものは男子のほうが多いと思われる. また, 救急 法の指導をうけていない生徒では, 男子より女子のほうが指導をうけたいと希望 しているものが多く (表2 参照) , 子 どものけがや事故に対する母親の責任や, 高齢化社会に対する介護の必要性から, 女子は男子よ り関心が高く, 若いうちから興味をもっている生徒が多いのではないかと推測されるが, い ざという時に行 動に結びつくものは男子より少なく, 女子は予期せぬ事故に対して安心感を得るために救急法の指導をう け たいと思う生徒が多いのではないかと推測される‐ 心肺蘇生法の実技経験者は救急法の指導をうけた生徒の86 4%であり, うけた場所 (複数回答) は高等学 ‐ 2 )であり 心肺 校88 6%, 中学校15 5%であっ た‐ 中学校での保健体育の中の応急処置は人工呼吸法の実習2 ‐ ‐ , 3 )で は 保 健 蘇 生 法 ま で含 ま れてい な い ため, 経験 した生 徒 が少 な い も の と思 わ れる. アメ リ カ の 中 学 校2 ,. 体育の授業の中で心肺蘇生法を教えており, 日常生活の中で心肺蘇生法は一般常識となっている. また, 小 学校3年生以上であれば, 心肺蘇生法は自分と同じくらいの体型の友達に対 して8割の子どもが十分できる 4 〉も報告されており 小さいころから友達や生命を大切 にする お互いに助け合う という気 持 という結果2 , , ちを育てる命の教育としての意義も大きいと考えられる. 心肺蘇生法実技経験と救急時の心肺蘇生法への取り組み意欲をみると, 実技経験のある生徒は, 自信はな いけど行ってみると答えた生徒が最も多く, 実技経験のない生徒より救急時の心肺蘇生法に対する取り組み 意欲が有意に高かった (表3参照) ‐ 実技経験者は実際の場面と同じ設定の中で, 自 分が どのよう に行動す るのか体験的に学習していることが取り組み意欲につながっ ていると考えられる‐ ,心肺蘇生法は, まず教科 書で理論学習を1時間, 次に ビデオを見て実際の方法を学び, その後実際に実習用人f本模型を使って人工呼 吸, 心臓マッサージを行い, 実際にその感じを体験しておくことが大切であり, 教科書での理論学習だけで は限界がある. 生徒1人ひとりが実習 を1回でもやれば, ある程度の自信につながり 意識啓発という点で , 、 2 ) 5 効果が期待できると思われる. しかし, 実技を体験した母親を対象 にした調査結果 では できる と自 信 , をもっ て答えた人は3%, できると思うという人が31%であり, 何とかできるのではな いかと思う 母親は3 6 }で は 出 来る と思う も の は 人工 呼 吸 が136 分の 1 であ っ た‐ ま た, 心 肺 蘇生 法 の 実習 を行 っ て い る 高 校 生2 , . 2 }では 心臓マ ッ 7 %, 心 マ ッ サ ー ジが21 2% り と であ 4 7 4% が自信 がな え い 答 て いる 大 学生に対する調査 ‐ , . . ,. サージについて自信があると答えた学生は救急看護法を履修している体育学科が71 4%, 他学科が4 0%で . ‐ あった. 本調査でも, 心肺蘇生法の実技を 経験していても半数近くの生徒は行いたい という気持ちはあるが )は健康教育において 8 自信がないので行わないと答えており, いざという時に行動に結びついていない‐ 森2 , 教師が生徒に習得させよ・ うとしていることば 「知識] と 「実践」 であり, 生徒が習得した状態とは 「わか , る」 ことと 「できる」 ことの一体化, 「からだでわかる」 状態であると述べている‐ 状況がかわっ ても ま , た, 新 しい状況におかれても, 現実場面でできることが重要であり そのためには; 心肺蘇生法は反復 継 , , 続して学ぶことが必要である‐ 保健体育の授業だけでなく 外部から講師を招き 実技等の講習会を行うこ , , 9 ) また.地域の防災訓練で繰り返し体験したり 日本赤十字社の救急処置の講習や消防署関係の ともよい2 . , , もの等いろいろな機会を利用して, 何度も経験を積むことが自信につながるものと思われる. 81.
(7) . 津村. 直子・村上. 美可. ( 3 ) 心肺蘇生法の知識について 救急法の指導を希望している生徒は, 希望していないものよりテレ ビ, 雑誌等で日頃から心肺蘇生法を見 0 01) 聞きしている生徒が多く (p< ‐ , 救命救助に関する放映や救急の日の特集記事などを積極的に見ている と思われ, 関心の高さがうかがえる. )は 4分の3の生徒が正しく理解していた また 心肺蘇生法の実技経験 0 心臓マッサージの圧迫部位3 . , , 0 0 1 ) のある生徒の正解は9割であり, 実技縄験のない生徒より正しく理解しているものが多く (p< . , シミュ レーションで実際に体験することで正確な圧迫位置が身についていると考えられる. 心肺蘇生法の手順鋤 については, 3分の2の生徒が正しく理解していた. また, 救急法の指導をう けた 0 01) が, 心肺蘇生法の実技経験の有無で 生徒の正解は7 5%であり, うけていない生徒より多かっ た (pく . は差がみられなかった. 意識の確認, 呼吸の確認, 気道の確保, 人工呼吸の実施, 脈拍の確認, 心臓マッサー ジの実施という 一連の手順を正確にマスターするには, 何度も実習を行うことが必要と思われる. 呼吸停止時間と蘇生率との関係を正しく理解している生徒は約半数であった. 人間の脳細胞は血流が途絶 ) 傷病者の生 死は心臓マッ 2 えて4分たつと細胞の機能はもとにも どらない3 ,サージを開始する時間が大き . ・ ・く, 大切な知識であるが く関与しており, 心臓マッサージのテクニックのみでは傷病者を救うことはできな 正解者は最も少なかっ た. 救急法の指導をうけた生徒はうけていない生徒より正しく理解しているものが多 )の理解 3 かっ た ( 0 01 ) が, 心肺蘇生法実技経験の有無では差が認められな‐かっ た.-ドリ ンカーの曲線3 p〈 . は, 理論の学習でありテクニックの習得ではないので, 実技縄験の有無による影響はみられなかっ たものと )の大学生に対する調査では 蘇生率の知識 は心肺蘇生法 の 講習を受けたことのある 思われるが, 芝木ら糾 , もののほうが正解率が高く, 心肺蘇生法教育の成果を評価している. 結. ′. 語. 高校生に対して, 心肺蘇生法の実技縄験の有無, 心肺蘇生法に対する取り組み意欲, 心肺蘇生法の正しい 知識などについて質問紙調査を行い, いくつかの知見を得た. 救急時の心肺蘇生法に対する取り組み意欲は, 実技経験のある生徒はない生徒より取り組み意欲が高 01) く有意差が認められた (p<0 . . ①. ②・ 心臓マッサージの胸部の正しい圧迫部位は, 心・肺蘇生法実技経験者のほうが有意に高い値が得られた (p< 0 01) . . ③. く理解している生徒は, 救急法の指導をうけた生徒のほうが有意に高い値が 心肺蘇生法の手順を正し・. 0 0 1) 得られた (p〈 . . ④. 呼吸停止と蘇生率との関係については, 救急法の指導をうけた生徒のほうが正しく理解しているもの. 0 0 1) . が有意に高い値が得られた (p〈 . . 心肺蘇生法の実技指導をうけた生徒や救急法の指導をうけた生徒は, うけていない生徒より心肺蘇生法に 対する知識, 技術を正しく把握しているものが多く, また, 救急時の心肺蘇生法に対する取り組み意欲も実 技指導をうけた生徒のほう が高い結果が得られた. 救急法は教科書による知識の学習 だけでなくゞ 知識に裏 付けされた実技指導は正しい技術の習得に有効である ことが明確にされ, 生徒の緊急時に対する対応と意‐識 の向上につながることが確認された. 21世紀の子 どもの健康課題は, 複雑な生活環境に関連して, 事故傷害の防止が疾病の課題以上に大きな位 )といわれており 事故の予防とともに救急法習得の意義も大きいと考える. 5 置を占める3 , 2 8.
(8) . 高校生に対する救急法実技指導の効果. 稿を終えるにあたり, 調査にご協力いただきました高等学校の校長先生ならびに養護教諭の先生に心から 感謝申し上げます. また, 本学荒島真一郎教授から有益なご指導とご校閲を賜りま した. 厚くお礼申し上げ ま す.. 引. 用. 文. 献. 1 ) 消防庁:消防白書 (平成1 0年版) 9 7 9 9 8 ,1 , 大蔵省印刷局,1 2) 消防庁 : 前掲書, 19 9 3) 消防庁 : 前掲書, 213 4) 北海道新聞 ; 救命措置で生存率2 倍, 1998 .9 .9 5) 工藤明: 救急業務からみた プレ.ホス ピタ ル.ケア, 学校保健研究, 26( 2) 57 984 ‐ , 52 ,1. 6 ) 日本赤十字社:救急法講習教本, はじめに, 日赤出版普及会,1 9 9 4 7 ) 総務庁:交通安全白書 (平成1 0年度) 1 9 大蔵省印刷局 6 1 9 9 8 , , , 8) 河村剛史 :‘・肺蘇生法を通 した中・高校生への命の教育, 交通安 全教育, 34(3) 11 16 , ‐ , 1999. ) 文部省:中学校指導書 保健体育編,7 9 5 9 8 9 , 大日本図書株式会社,1 1 ) 文部省;中学校指導書 保健体育編,9 0 8 8 9 4 , 東山書房, 京都,1 1 1) 松田岩男 ほか: 中学保健体育, 学習 研究社, 1993 12) 門田新一郎 : 大学にお ける 保健教育に関する 検討, 岡山大学教育学部研究集録 第92号 1 150 93 ‐ , , 39 , 19 13) 和 唐正勝ほか : 生徒からみた保健授業 の実態に関する調査研究, 学校保健研究 2 ( ) 3 1 0 4 7 4 4 8 4 1 9 8 1 ‐ , , ,. 1 4 ) 和唐正勝ほか:前掲書 15) 丹 公雄 : 保健教育 を評価 する-中学校の場 合-, 学校保 健研 究 27( 5) 212 5 ‐ , , 207 , 198 16) 鳥居央子ほか : 大学生の 保健知識の習得状況 に関する研究-日、英、米の比較から- 学校保健研 究 3 2 38 ‐ , , 3(5) , 228 , 1991 17) 藤田和 也: 日本の学校保健教 育の課題-アメ リカの保健教育との対比 にふれつつ- 体育科教育 44(io) 30 3 2 1 96 , , , ‐, 9. 8 1 ) 厚生統計協会:国民衛生の動向,4 ( ) 5 9 5 5 9 9 8 ,3 , 厚生統計協会,1 ) 日本学校保健会:学校保健の動向 (平成1 1 9 0年度版) 東山書房 5 6 9 9 8 , , , 京都,1 ) 教育医事新聞:‘ 2 0 ・肺蘇生法 3万2000人が受講, 1997 ‐25 .3 2 1 ) 教育医事新聞:特別座談会 応急処置と心肺蘇生法教育,1 9 9 7 5 .3 ‐2 2 2 ) 文部省:前掲書9 ) ) 河村剛史:前掲書 2 3 2 4 ) 教育医事新聞:前掲書2 1 ) 2 ) 教育医事新聞:前掲書2 5 ) 1 26) 教育医事新聞 : 理論学習 十 ダミー で 「よく理解できた」 は約 5割 1997 3 25 .. ,. 2 ) 藤井真美:一般教員養成課程における救急処置の位置づけ 学校保健研究 2 7 2 ( ) 8 2 6 9 8 4 ‐ , , 6 ,5 ,1 28) 森昭三 : 健康情報 を効果的 に習 得させるう えでの具体的工夫- 学校保健 教育において- 学校保健研究 28(9 ) -411 , , , 407 , 1986 29) 中村朋子: 日常的な救急処置一中 ‐高等学校の場合- 学校 保健研究 26 22 4 ‐ , , (1) , 15 , 198 30) 日本医師会 : 救急蘇生法の指 針-一般市民のため に- 11 日本救 急医療研修財団 1993 、 , , 31) 石田詔治 :ノ [ ・肺蘇生法, からだの科学, 161号, 7 5 8 0 1 9 9 1 ‐ , 3 2) 加来信雄 : 市民にできる 救命救助 からだ の科学 16 40 ‐ , , 1号, 37 , 1991. ) 厚生省健康政策局指導課監修:救急救命士標準テキスト 2 3 3 9 9 9 2 ,2 , へるす出版,1 ) 芝木美沙子ほか:教員養成系大学における応急処置教育 (第1報) -大学生を対象とした心肺蘇生法に関する調査- 北 3 4 , 海道教育大学紀要, 49(1) 25 136 ‐ ,1 , 1998 35) 高石昌弘 :21世紀に生 きる学校 健康教育の在り方 体育科教 育 44(10 ) 1 3 6 - , , , 10 , 199. 83.
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