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大学の地域連携事業の実践報告 : 標茶町「おたっしゃプロジェクト」について

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Academic year: 2021

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(1)Title. 大学の地域連携事業の実践報告 : 標茶町「おたっしゃプロジェクト」に ついて. Author(s). 北澤, 一利; 平岡, 亮; 小澤, 治夫; 岡嶋, 恒. Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第36号: 95-100. Issue Date. 2004-11. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/1316. Rights. 本文ファイルはNIIから提供されたものである。. Hokkaido University of Education.

(2) 釧路論集一北海道教育大学釧路校研究紀要一第36号(平成16年) KushiroRonshu−JournalofHokkaidoUniversityofEducationat Kushiro−No.36:95−100.. 大学の地域連携事業の実践報告 標茶町「おたっしやプロジェクト」について. 北 洋 一 利・平 岡 亮・小 棒 治 夫・岡 嶋 恒. 北海道教育大学釧路校保健体育研究室. Pilot study of community cooperation by academic agencies, Healthy aging projectin Shibecha Town.. KazutoshiKITAZAWA,Akira HIRAOKA,Haruo OzAWA,and TsuneshiOKAJIMA. Department of PhysicalEducation,Kushiro Campus,Hokkaido University ofEducation.. ブルや行き違いを経由している。ここで連携関係構築のプ ロセスとともにその一部をあげていこう。 初期の段階で標茶町から、大学と地方自治体が協働して 行った先行事例について紹介があった。その一つが、筑波. 1.はじめに 北海道教育大学釧路校保健体育科講座(以下、保健体育 科と略)では、平成15年度に大学の近隣市町村の一つであ る標茶町と協働して、住民の健康管理のための合同事業の 可能性について検討を始めた。この事業は、翌平成16年度. 大学が茨城県大洋村の村民を対象に行った健康体力づくり. 事業である。この事業は、体力づくりに参加した村民の医 療費が削減されるなどの効果をあげたものでり、近年全国 的に注目を集めている。そのため、保健体育科の教員数名 がこの事業の内容を詳しく知っていた。以後の打ち合わせ は、この大洋村の事業をモデルに進められることになる。 6月には数回の打ち合わせを経ながら、同様の事業の実現. には正式に予算化され、年間を通じて行われる委託事業と して発足した。また、保健体育科講座ではこの事業を学生 の実践的な活動のチャンスとしてとらえ、それを教育指導 に役立てるために既存のカリキュラムの中に導入した。こ うした試みは、今日大学が求められている地域責献に加え、. 可能性を探るための情報収集を行った。そして、7月には 筑波大学の当事業代表者と連絡を取り、標茶町役場担当者 と伴に東京に出向いて情報交換を行った。 しかしながら、今日振り返ってみると、この時点では我々. 学生の実践能力の向上を実現する一例として数えることが. できるだろう。この事業が今後の大学の地域連携を展望す るにあたり参考の一助となるよう、本稿ではこの二年間に わたる活動の経緯と詳細について報告する。. 保健体育科は標茶町が大学に何を期待しているのかについ. て正確に把握することに失敗していたといえる。我々は、. 2.連携事業の概要. 標茶町が釧路校に筑波大学同様の事業を行うことを期待し. a)連携の端緒. ていると考えていた。しかしながら、時間が経過しても標. 本事業に関わり、標茶町と保健体育科の担当者が協議を 始めたのは、平成15年度5月である。はじめに、標茶町役. 茶町からこの事実に必要な経費や予算規模が示されること. はなく、また我々が情報収集に費やした実費さえ補われる. 場の総務課長より保健体育科講座主任に対し、健康づくり. ことはなかった。半年後の11月の打ち合わせになって明ら. 事業に関する協力可能性について非公式な打診があった。. かになったことであるが、標茶町が釧路校に求めていたの. それを受けて保健体育科では、大学が置かれている社会情. は、筑波大学の事業ほどの規模ではなく、もっと規模が小. 勢を重視し、また、学生の教育効果の向上に加え、保健体 育科教員のスキルのレベルアップも期待できると判断し、. さい健康づくり教室であったのである。 しかし、そうとも知らずに釧路校の保健体育科教員は、 標茶町にとって何が必要かという観点で独自に議論を進め、. 増加する負担が学生指導や通常業務に支障を与えない範囲. において協働事業に応じることを決めた。. これ以降8月末までの3ケ月間にわたり、標茶町に対して 一方的な情報提供を継続することになる。そして、標茶町. b)連携構築の過程で直面する「壁」. からのリアクションを首を長くして「待つ」という時間が. 両機関が連携を構築していくまでには、さまざまなトラ. 経過するのである。しかし、期待したような手応えは得ら. 一95−.

(3) 北澤 一利 他 れなかった。そのうちに、保健体育科教員の中から不満が 聞こえるようになり、事業の継続に対して消極的な意見が 現れる。コミュニケーションの敵酷が蓄積した結果、両機 関の担当者に不信感が生じてしまったのである。これは、. 対象に実践するという点で、きわめて有意義な教育の チャンスとなる。 4.地域住民と大学が直接触れあうことができるという点 で、大学の地域貢献の一つとしてふさわしい。 すなわち、「健康まつり」を共同で実施することによって、. 大学が他の機関との連携を模索する過程で直面する「外部. の壁」であるといえる。大学は、地方自治体の事情に閲し、 まったく無知である。また、地方自治体の方も大学に対し て大きな遠慮がある。互いの不案内が障害となって、初め のうちは意思疎通がなかなか難しかったのである。 ところが、壁は外部だ桝こあるのではなかった。この間、. 標茶町と大学の双方が互いに有益な成果を得ることができ. ることを確認したのである。 この事業を進めるに当たって、釧路校では当初標茶町が 予定していた事業プログラムよりも優れたものを行い、標 茶住民に大学との協働事業をアピールすることを決めた。 新たに測定項目を追加し、そのために必要な機材を整え、 さらにデータベースと処理システムを構築した。. 保健体育科内では、大学の独立行政法人化を念頭に置いた 場合、この標茶町の共同事業が外部資金の確保や釧路校の 地域責献の実績づくり、そして何よりも生涯学習課程の身 体スポーツ文化領域の学生達に対して有意義な実習の場を. 提供することになるだろうと考え、その意義に関する認識 が高まっていく。しかしながら、すべての保健体育科教員 が、この事業に対して同様の認識を示し、協力することに 全面的に合意したわけではなかった。大学教員の任務は研 究と教育にあり、金集めや地域住民相手の興業ではないと する「本質論」がある。ここに、大学が新しい事業を開始 する場合に直面する「内部の壁」が存在したのである。し かし、この「内部の壁」は、事業が順調に進むようになる. と解消され、かえってさらに保健体育科内の協力関係が強 化するという好結果に転じることになる。 C)健康まつりへの参加. 疑心暗鬼の数ヶ月を経由した後、8月末になって、両機 この「健康まつり」を一時的なイベントに終わらせない. 関の担当者が具体的な事業の計画立案のための打ち合わせ. を行った際、釧路校から、初年度にあたる15年度は、新規 事業を立ち上げるのは難しいので、従来標茶町で実施され ている既存事業に大学が参加して、協働で運営してはどう かという提案を行った。すると、標茶町からは、それなら. ために、標茶町にとって利益の大きなものであり、なおか つ大学にとっても利益が得られるものであるように検討と 工夫を重ねた。標茶町の広報誌に宣伝を掲載し、そこで釧 路校と共同して「健康まつり」を開催することを広告した。. 10月に予定されている「健康まつり」がいいのではないか. 「健康まつり」では、あらたに「おたっしやモニター」を. という回答があった。そこで、両機関の共同事業の第一歩. 募集することで、町民の健康と運動の追跡調査を行うこと. として、10月上旬に行われる「健康まつり」の準備が進め られるのである。. にした。なお、釧路校がこの「健康まつり」のために準備. したデータ処理システムと物品は表1のとおりである。. 詳細について、担当者が情報交換を重ねるうちに、この. 「健康まつり」は、保健体育科の教員と学生がもつ能力を 生かすにふさわしい事業であることがわかった。その主な 内容は以下の3点である。. 表1標茶町健康まつり物品,. 数量. コンピューターサーバー. 1.標茶町は、住民の健康や体力測定を行ったデータを保 存管理したり、分析していくシステムを持たない。こ の分野は、大学の持つ研究資源を活用するにふさわし い場所である。. デスクトップ型コンピューター. 1. ノート型コンピューター. 2. データーベースソフトウエア. 3. プリンター. 2.測定に必要な機器を借用するために、標茶町が札幌市 の業者に依頼してかなり高額なリース料を支払ってい. る。大学の測定機器を活用し、学生の補助を使うこと でより経費を削減することができる。 3.学生が授業の中で学んだ健康と体力づくりを地域住民. ー96−. 無線ネットワークルーター. 1. 数字入力テンキーパッド. 1. データベース関連書籍. 2.

(4) 大学の地域連携事業の実践報告. d)運動指導者養成事業. ものであるが、釧路校で行う事業は自家製の講習会である. 「健康まつり」を協働で成功させた後、その反省会と今 後の事業の検討を兼ねて打ち合わせを行った。この頃、よ. 為、公的な資格が与えられるものではない。しかし、標茶. うやく標茶町職員と大学のスタッフとの間に互いに対する. 作成、既存の運動施設の利用、北国特有の冬の健康づくり の対策などの点で、釧路校が計画する事業の方がより梗茶 町民にとって有益な内容であると考えている。. 町の町の産業構造と人口動態にあった健康づくりプランの. 信頼関係が成立したと思われる。ところが、保健体育科と しては「健康まつり」に際して多くの経費を持ち出す形で. 事業の準備は、平成16年2月から本格的に始め、4月の はじめから学生の訓練、情報収集、必要物品の手配などを 行った。講師には、釧路校の非常勤講師の他、道内から必. 投入したものの、その補填がなされないままの状態がつづ. いていたため、少なくともなんらかの形でそれを補うよう な事業を実現したいと考えていた。そこで標茶町住民の健 康づくりにとって有益であり、大学の資源をいかせるよう. 要な人材を確保した。. な事業として「運動指導者養成事業」を企画提案すること. になった。同様の試みについては先行事例がある。町民の 中に運動指導を行えるようなリーダーを育成し、町の健康 づくり教室を自主的に行っていくという事業である。そし て、これが標茶町の平成16年度事業として予算措置される ことになった。ようやく、釧路校の努力が結実したといえ. 標茶町は、平成17年度に作成を予定している「健康・福祉 総合町づくり計画」の作成にあたり、住民の健康と福祉の 実態調査を行うことになった。その調査の集計と分析を行. るだろう。. い、報告書を作成するという業務の委託を大学が受け入れ. とはいえ、標茶町に財源があるわけではない。そこで標 茶町では、厚生労働省の補助事業の一つである介護事業の. たのがこの事業である。従来、標茶町ではコンサルタント. e)住民意識調査事業. この事業は、上の健康づくり事業とは少し性格が異なる。. と呼ばれる民間会社に類似の事業を発注していた。その経 費は、年間数百万から数千万に上るという。今回、大学で は健康関連の意識調査(対象人数1200人)と、身体障害者. 中から、高齢者の「筋力アップ」事業を選び、その一つの. 方式として大学と協働で町が行う事業計画を立てて、道に 申請することになった。道の方では、本来想定されていた. と知的障害者対象の実態調査(対象人数450人)に関する質. 補助事業のスタイルとは異なる申請に当初とまどいがあっ. 問紙調査の処理と分析を依頼され、民間企業よりも格段に. たものの、今回の「運動指導者養成事業」を受講した町民 が、間違いなく高齢者の「筋力アップ」事業を担当するこ. やすい金額でそれを請け負うことになった。業務の内容は、. とができるのであればいいだろうという条件の上で、申請. 記入、報告書の作成であるが、このうち、学生のアルバイ. が認められたようである。標茶町が「運動指導者育成事業」 に用意した予算は137万円である。このうち、どれだけが道 経由の補助金で補われているのかはわからない。しかし、. トで補えたものはデータの入力だけであった。それ以外は、 保健体育科教員が行うことになったが、今後学生のスキル. 今回の事業において、釧路校には受講生が確実に運動指導. 可能である。そして、それは学生にとってもきわめて利益. 者の資質を得るだけの講習を行う責任が生じたことになる。 釧路校が計画した「運動指導者養成事業」の内容は、財. の大きなものになると予想される。 契約に関しては、独立行政法人化に伴い規程が整備され. 団法人「健康・体力づくり事業財団」が行う「健康運動実. ていないこともあり、従来からあった「受託研究」の形で. 践指導者養成講習会」をモデルにしている。この講習会は、. 契約を行うことになった。ただし、町としては通常の委託. 健康運動実践指導者の「認定証」が当財団から付与される. 契約を希望しており、本来ならば入札を経て業者を決定す. データの入力、統計処理、表・グラフの作成、分析結果の. アップを待って、学生ができる範囲を増やしていくことは. る性質の業務であるので、この点について今後は大学の柔. 軟な体制が必要となるだろう。 f)各種運動教室へのボランティア参加. 上記事業の他に、標茶町と大学の相互協定に基づく協力 事業の一環として、標茶町の従来事業である「親子水泳教. 室」、「アクアビクス」などの社会教育に参加する計画があ る。こちらは、特別な準備が必要ではなく、教員と学生の 時間の調整と現地スタッフとの連絡さえ円滑に進めば実現. しやすい。学生には、事故防止の為の事前指導を徹底し、 また、移動の交通事故などについて、注意を促すことにし ている。. ー97−.

(5) 北揮 一利 他 れてきている。連携事業の内容と講義科目の関連について. 3.学生指導体制の変革. は詳しく学生に説明してきたが、これら予算の内容につい. 以上のすべての事業は、教員だけで実現するのは不可能 である。その大半は、学生の謙虚でひたむきな参加の力に 負うところが大きい。しかし、こうした学生の参加協力は、 自然に生まれてくるものではない。そこに至るまでに、か なり多くの呼びかけと意識改革と情報提供が必要になる。 すべての事業の正否は、まさにこの点にかかっているといっ. ても支障のない範囲で学生にも説明する予定であり、「連携 事業と講義科目との関連づけ」を学生が有効利用すること. で多大な恩恵を受けられることに彼らは気づくであろう。 b)学生の意識改革. 連携事業については、保健体育科では生涯教育課程及び. ても過言ではない。では、どのように学生の意識を変え、. 教員養成課程の別なく「体育」総ての専攻学生に対して公. 彼らのスキルを向上させ、事業に向かう準備をしたのか。. 開されている事業」を取り込み、学生の主体的な意欲と行. 平なアナウンスに心がけ、事業への多くの参加協力者を応 募してきた。しかし、事業に参加協力することによっても たらされる学生にとってのメリットを切々と語っても、学 生の反応はしばらく低調であった。原因を特定した上で対 策を講じ、学生の新たな反応を期待した。 低調な反応の原因として考えられることのひとつに、日 程調整に対する不安があった。講義は別として、標茶町に 出向いて行う活動のほとんどは土日あるいは祝祭日である。 専攻学生の多くは体育会運動部に在籍しており、運動部の. 動をもって講義内容に反映されるようカリキュラム上配慮. 大会や試合が連携事業のスケジュールと重なってしまうこ. されてきた。講義内容ならびに学習活動を充実させるため には想定した以上の努力が求められ、年度毎に「0」から 内容を創り上げる労力が必要であった。また、必要経費の 捻出は大きな障害のひとつであった。学生の「視野を広げ・. とへの不安であった。日常的に活動時間を制約されている 彼らにとって、休日は彼らが心置きなく汗を流せるかけが えのないものなのである。他専攻の学生には当てはまらな いが、保健体育科を専攻した学生にとっての固有の専門ス. 様々なスキルを獲得させ・達成感を得る」ためには成果を. ポーツは、卒業後に大きな意味合いを持っている。. 次はこれにふれてみたい。. a)既存授業の概要とその改正の要点. 釧路校の生涯教育課程身体スポーツ文化領域では、課程 がスタートしたときから、学習及び研究のフィールドを地. 域に関連づけるよう努力してきた。既存する領域分野科目 においては「地域の自然」「地域で活動する人」「地域で展. 得ることができた講義内容であったが、大系的に受講生の. 「事業の内容ならびに保健体育科にとっての事業の位置. 成長過程を評価することが難しいという反省課題が認めら. づけ」を理解し切れなかったことも、低調反応の原因とし て考えられた。理解不足から、「手伝わされている」という. れた。「このような課題を解決するために、地域との連携事 業に既存の講義科目を改変し関連づける。」ことが、今回、 我々が学生に対して起こしたアクションである。アクショ. 強制されたノルマ(実際はそれとは異なるが)への不信感. が排除されず、可能ならば関わらないで過ごそうという意. ンを起こす準備として、連携事業が学生教育に及ぼす影響. 識が働いてしまったのではないであろうか。こうなると、. について入念なシミュレーションを重ね、それを基に講義. 学生が恩恵を理解し肯定することには遠く、「今まで通りで. 科目を再構築した(図参照)。. いいからそっとしておいて」状態となるわけだ。. 講義科目改正の要点であるが、該当する講義科目が体系. また、サービスを提供する対象への戸惑いがあったので. 的にリンクしたこと、学生の活動する場が安定的に供給可 能となったこと、地域及び住民との直接的な関わりを学生. はないであろうか。保健体育科では教員養成課程の学生は. 施することを定常化したこと(オムニバス形式ではなくそ. もとより、生涯教育課程の専攻学生にいたっても教員志望 が非常に強い。とうぜん、彼らの対象とすべきは子どもで あった。ところが、連携事業における対象者は中・高齢者. の場に複数の教員が居ることを意味する)及び身体スポー. である。このことは、指導者側にとっても困惑する要因で. ツ文化領域の科目ではあるが教員養成課程保健体育科専攻. あった。これまでは、「老化」という概念と身体的・機能的 変化を単元として取り扱ってきたわけであるが、「老いるに. に提供したこと、通常は1人の教員が行う講義を複数で実. 生に対して受講を促したことなどである。これらのことに より、講義の充実が期待できるだけではなく、研究活動の. つれて失われていく体力と機能美を如何にしてその損失を. 対象フィールドとしての協力が保証されることにもなる意. 防ぎ改善するか」に焦点を当てなければならなくなったの. 義は大きい。 なお、波及的に改善されたこととして、学生が講義に関. である。 低調反応に関わる幾つかの原因を解消するため、連携事. 連して活動する経費の一部を連携事業の予算に盛り込むこ. 業の詳細について学生に説明し、丁寧な日程調整を行い、. とができたことを挙をヂねばなるまい。「交通費・弁当代・物 品費」などが経費の内訳であるが、これまでは自己負担し てきたものが支給されるようになり、自分たちのまわりに. 講義においては教員が意欲的姿勢を演出した。学生が受け. 勉強するために必要な物品がすこしずつではあるが配備さ. ブになりつつある。. る恩恵についても、具体的な例を示して確認させた。これ. らのことを積み重ねることにより、学生の反応はポジティ. −98−.

(6) 大学の地域連携事業の実践報告. い。例えば、少子高齢化社会に耐えうるような町の産業や. C)達成した効果と変化. 経済活性化のリーダーを育成したり、自然保護教育や環境. 連携事業と関連する試み(授業改善など)を進めること. により、以下のような効果や変化が認められた。 第一に、研究ならびに教育活動のフィールドが拡大した。 これは、地域及び地域住民の「健康」に関わる研究活動の. 保全活動を通して町のイメージアップや雇用の創出につな. がるような事業を企画したり、町が持つ独自の資源を海外 や全国に向けて発信するなどの、よりスケールが大きくダ イナミックな事業を考えていかなければならないだろう。 そのために、教育大学には何ができるのか。今回の事業 を通じて見えてきたことは、こうした地域との連携事業で は、たんに保健体育一教科だけではなく、音楽、芸術の専. 対象を広げたとともに、学生の実習フィールドがシミュレー ションの枠を超えて実践の場として確保できたことを意味. する(学生にとっては、カリキュラム上の効果を上回る意 味を持っているものと考えられる。)。 第二に、連携事業を例とする保健体育科における地域貢 献の具体例を提示できた。これについては、拡充を求めら れる大学による地域貢献のモデルケースとしてその価値を. 門家、さらに幼児教育、養護教育、そして教科専門の人材 が幅広く必要にあるという点である。そしてそれは、教育 大学の一つの有利な点でもある。いかなる事業においても、. 見出すことができよう。. 協力が不可能な教科や専門分野は一つもないことを確信し. た。これらの他分野の専門家が一緒に事業に参加して、協. 第三に、連携事業における具体的な活動を通して、保健 体育科の「やる気」を学生にアピールすることで科内に活. 力することがユニークな事業を成功させることになるだろ. 力を演出できたことをあげることができよう。例えば、関. う。例えば、周辺市町村の学校を利用した「サマースクー ル」などがその一例である。教育大学のスタッフが協力す. 連する講義科目を再構築することで講義内容の充実が図ら. れるなど、カリキュラムの改善に推進力をもたらしている。 平成16年度から独立行政法人化となった国立大学にとって、. れば、自然保護の啓発、キャンプや登山、音楽、陶芸、酪 農体験、チーズづくり、羊の毛刈り、セーター編みなどを 組み合わせたようなパッケージを、それぞれの専門家の手. 研究・教育活動に必要な予算を学外に求めることは避けら. によって用意することができるだろう。. れないことである。また、地域連携を通して調達される学 外からの予算は、地域と大学との結びつきの強さや広がり を意味することになろう。なお、獲得した外的資金は、研究 活動を充実および学生の学習環境改善等に反映されている。. 二つ目に、学生の利益を明確にする必要がある。事業を 進める上で、学生の力は無視できない大きなものである。 しかしながら、単に人手を補う為に学生の協力を得るだけ で、学生自身にとっての利益が不明確であるとすれば、そ の事業は失敗である。教員志望の学生については、参加す. 第四は、学外からの活動予算を獲得できたことである。. る事業がどのように教師の育成に役立つのかを明確にしな. ければならない。また、民間企業などへの就職についても、 活動の経験が彼らの力となるように事業全体が洗練された. ものになっていなければならない。そのためには、事業の 目的と目標を明確にし、学生の利益と役割をあらかじめはっ きりさせておく必要がある。標茶町の事業では、学生は役 場職員や住民、障害者といった現実社会の人々と直接応対 し、緊張感を持ちながら責任を果たしていく経験を重視し 図 学生の教育指導をプロジェクトに関連付けた場合の効果. た。また、高齢者の健康問題、その解決法、適切な運動法 といった実用的な知識とスキルの獲得も重視し、その点で 進歩が見られなければ評価を与えないこととした。その一 方で、事業を通して住民や町から得られる反響や感謝など. 4.地域連携に求められる条件 昨年度から、手探りで進められてきた保健体育科の地域 連携事業であるが、最後に今後の活動に向けて考慮しなけ. 生の功績をきちんと形に残るように配慮するためである。. ればならない課題の三点についてまとめておきたい。. すべての活動は写真やビデオで記録し、ホームページなど. まず一つ目の課題は、大学が地域に貢献することの積極 的な理念を打ち出し、その上で成果を判定する評価基準を 作成する必要があるだろう。大学の地域賞献とは、地方自. で公開することを予定している。. 治体の業務をアウトソーシングして経費節減に協力すると. といえばスタンドプレーに近い活動であることは事実であ. いう程度のものであってはならない。大学が地方自治体に 協力するというのは、雑務を下請けして小銭を儲けるよう なケチなものではなく、地域の将来的な発展につながるよ. る。また、本事業は一教員の個人的な研究資産と人脈に多 くを依存して可能となったところも特殊要因であろう。し かしながら、これまで距離があった近隣市町村と現実に連 携事業がスタートしたことの意義は大きい。保健体育科内. については確実に学生本人に届くように注意を払った。学. 今回の連携事業は、大学全体の合意に基づく組織的な取 り組みというよりも、保健体育科の教員による、どちらか. うな、より積極的な事業を創出するものでなければならな. ー99−.

(7) 北澤 一利 他 では、健康まつりの成功にともない、これまで分かれてい た意見がまとまり、科内で一つの強い協力体制ができあがっ た。当初障害となっていた、大学内の壁はすでに消失して. いる。今後は、保健体育科以外の講座との協力関係を構築 していく必要があるだろう。それは、従来型の研究室縦割. り運営という大きな障害への挑戦となるだろう。しかしな がら、地域連携事業は、こうした障害を前向きに克服し、 多数の教員が連携して大学が一つの組織となって動かなけ ればできないものである。. 1津山薫、石津政雄、中嶋寛之、地域における健康づくりの 実践一茨城県大洋村での健康づくりを中心に、 「日本体育大学紀要」、Vol.32、P57−66、2002年 2小揮治夫、出でよ!中・高体育教師、「体育科教育」、2004 年7月号、p26−29. 3神原直幸、北村薫、宮下桂治、真理特性から見た地域スポー ツリーダー養成講座の効果、「順天堂大学スポーツ. 健康科学研究」、Vol.4、p88−95、2000年. 4北海道新聞、2004年6月18日、ウオーキングで健康づくり 5藤澤邦彦、潰野強、一山村における健康づくり支援活動、 筑波大学体育科学系紀要、26号、p17−25、2002年. 6小澤治夫、大学体育に何を求めるのか∼中等教育の立場か ら∼、「体育の科学」、Vol.48、p461−464、1998年. −100−.

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