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聴覚特別支援学校(聾学校)での早期教育における二言語環境整備

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(1)Title. 聴覚特別支援学校(聾学校)での早期教育における二言語環境整備. Author(s). 田中, 瑞穂; 鹿内, 信善. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 65(1): 413-423. Issue Date. 2014-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7539. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第 6 5巻 第 1号 J o u r n a lo fHokkaidoU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n( E d u c a t i o n l Vo . l6 5,No. l. 平成 2 6年 8 月. Augus . t2014. 聴覚特別支援学校(聾学校)での早期教育における二言語環境整備 田中瑞穂*・鹿内信善. *北海道札幌聾学校 北海道教育大学札幌校教育心理学研究室. E s t a b l i s h i n gab i l i n g u a ln u r s e r ye n v i r o n m e n ta tas c h o o l f o rt h ed e a fandh a r do fh e a r i n g TANAKAMizuho*andSHIKANAINobuyoshi * H o k k a i d oSapporoS c h o o lf o rt h ed e a fandhardo fh e a r i n g n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n Departmento fE d u c a t i o n a lP s y c h o l o g y,SapporoCampus,HokkaidoU. 概要 聴覚特別支援学校(以下,聾学校)の乳幼児相談室では,わが子の聴覚障害を知って間もな い時期の保護者支援を行っている。支援の第一歩として,聴者である保護者に対し,担当者は 聴覚に障害のある子どもの言語獲得について説明をしている。音声言語である日本語と視覚言 語の日本手話の言語獲得に関する説明である。また,希望する乳幼児に対しては,視覚・運動 モダリティを活用した言語指導も行っている。 本研究では,乳幼児相談室における二言語(日本手話・日本語)環境整備の取り組みについ て報告する。あわせて,視覚・運動モダリティによる日本手話を活用した言語指導が,子ども や保護者の行動や考え方におよぼす効果について考察する。. しはじめに 1-1 道立聾学校の状況. 日本で用いられている「手話」は 2種類ある。「日 本語対応手話」と「日本手話」である。この 2つ は,次のように区別される。市田 ( 2 0 0 8 ) による. 4 0年近い歴史のある聴覚障害教育は, 本邦で 1. と,「日本語対応手話」は,日本語に即して手話. 「社会情勢やテクノロジーの変化・発展により」. 単語を用いる方法の総称である。「日本語対応手. 0 0 2 ) 大きく変化してきた。理念も「聴覚 (小田 2. 話」は,言語として見た場合には一貫した構造を. 去J,1"トータルコミュニケーション J,1 " パ イ 口話j. 欠く。そのため日本語対応手話の理解に日本語の. リンガルアプローチ」と多様化している。道外の. 知識とその知識にもとづいた推論が要求される。. 公立聾学校において,「日本語対応手話」が導入. また, 日本語を話しながら同時に手話単語を表現. 0 余年が経過している。 されてから既に 2. することから,話者に大きな負担がかかり,日本. 413.

(3) 田中瑞穂・鹿内信善. 語か手話単語のどちらか,あるいは両方に欠落や. た。当時は,乳幼児相談室でも音声日本語の獲得. エラーが生じることも多い。「発話に日本語コー. を目指して,聴覚口話法による活動が行われてい. ドの手話を同時表現する」と定義される「手話付. た。しかし,聴力レベルや知的発達遅滞の条件等. きスピーチ」や「手指日本語」も「日本語対応手. のために,十分な言語力の伸長がみられない場合. 話」に分類される。それに対して,「日本手話」. もあった。また,. は「日本語や英語などと同様,人類が生み出した. いないということから,手話に関しては,年に数. 0 0 8 ) J である。複雑で 自然言語のひとつ(市田 2. 回,聴覚障害のある時間講師が子どもに関わる程. 洗練された文法をもち,子どもが特別な訓練なし. 度だ、った。つまり,定期的な日本手話による活動. に獲得できる。日本手話では,手の動き以外の要. 導入には至っていなかったのである。. 2歳児までは,学校に在籍して. N o nM a n u a lM a r k e r s:頭の動きゃあごの位 素 (. そこで,第 1筆者は,日本手話を基盤とする活. 置,口の動きなど)や身体前の空間(空間に関連. 動を計画的に取り入れることとした。理由は,日. づけられた手の向きや動きの方向)がその文法に. 本手話,日本語の二言語環境下で,聴覚に障害の. おいてきわめて重要な役割を果たしている。. ある乳幼児の言語獲得が促進されるのではないか. 道立聾学校(幼稚音防、ら中学部まで)の授業に. と考えたからである。また,子どもの言語力が高. 日本手話および日本語対応手話(手話付きスピー. まることにより,意思疎通が良好な親子関係が築. 0 0 7年度であ チ)が同時に正式に導入されたのは 2. かれるのではないかと考えたからである。. 0 0 7 )。第 1筆者が勤務す る(北海道教育委員会 2. 具体的な活動として,まず,聾者を外部講師に. 0~ 2歳児で希望する親子に日本手話によ. る北海道札幌聾学校では,長年,聴覚口話法によ. 迎え,. る指導が行われてきた。しかし,「子どもや保護. る「絵本読み」を行った。なお,聴児に対する「絵. 者からの「手話による教育」を望む声が高まり,. 本読み」は,通常「読み聞かせ」と表現されてい. 0 0 6年に日本手話も含めた実践研究 教育委員会は 2. る。しかし,本研究で対象とするのは聾児である。. 0 0 8 ) J それを受け を行うことを発表した。(岡本2. このため本論文では,「読み聞かせ」ではなく,「絵. 0 0 7年 3月,北海道札幌聾学校の幼稚部から て , 2. 本読み」という語を用いていく。. 中学部まで「本人および保護者の教育的ニーズ」. 以下,この取組みを通してみられた子どもの言. を把握する意向調査が実施された。主な調査内容. 語獲得の様子や保護者の変容等を報告する。この. は,「日本手話」で学ぶグループと「聴覚口話+. 実践から日本手話を基盤とする新しい指導方法の. 手話付きスピーチ」で学ぶグループのどちらを希. 開発につなげていきたいと考えている。. 望するかというものである。その結果,同年 4月 より,調査で示された希望にしたがって,「日本 手話」グループ(約 30%),1"聴覚口話+手話付き スピーチ」グループ(約 70%) を編制した。. 1-3 研究内容と方法 ( 1 ) 研究内容 聾者による日本手話による絵本読みや関わりの. 乳幼児相談室は,北海道聴覚障害児療育事業の. 場面,乳幼児の変化や成長がみられた場面などを. 一環として,聴覚障害乳幼児の早期療育体制の充. VTR記録から抽出する。それによって,聴覚に. 実を図るため, 1 9 8 8年に道立聾学校に設置された。. 障害のある乳幼児の言語獲得や保護者の変容等に. 乳幼児相談室では,. 0~ 2歳児の聴覚障害をもっ. 乳幼児およびその保護者らに対する相談・支援を 行っている。. ついて考察する。. ( 2 ) 研究方法 ①. 既に VTRに記録しである聾者による絵本 読み活動を分析していく。. 1-2 問題と目的 2 0 1 2年度,第 1筆者は乳幼児相談室主任となっ. 414. ②. VTR記録等から,子どもの行動の変化・ 子どもの日本手話の理解と表出・保護者の行.

(4) 聴覚特別支援学校(聾学校)での早期教育における二三議環境整備. 動の変化について整理する。. ③. 整理した内容を検討・考察する。. がいたことによる。また,絵本読みが,言語を介 したコミュニケーションのー形態であるというこ とを,聾の子どもたちに理解してもらいたいとい. I I . 取り組みの内容 II-l. 日本手話による絵本読みの目的と留意点. う願いがあったからである。. II-2 日本手話による絵本読みのパタン. 2 0 0 2 ) によると,乳幼児への「絵本読み 三森 (. 日本手話での絵本読み活動を進める中で,以下. 聞かせ」には,次の効果がある。「子供の感受性. の 4つのパタンができた。. を育てること,言葉の獲得に大きな効果を持つこ. ① 聾講師の絵本読みを 1人の子どもとその保護 者が見る活動。. と,子供の考える力を伸ばすこと,親子のスキン シップに役立ち,子供の情緒安定に役立つ」。また,. ②. 者らが見る活動。. 絵本の絵から,「テーマ(主題),設定(場所・季 節・天気・時間・時代背景),人物(描かれてい. きる。三森の主張は聴児を想定してなされている。. 日本手話語りを収録した DVDを 1人の子ど. ③. る物・人物等の考え・感情・会話など),象徴, 色調・色彩,タッチ,構造」を読み解くことがで. 聾講師の絵本読みを複数の子どもとその保護. もとその保護者が見る活動。 参観者がいる中で,聾講師の絵本読みを 1人. ④. の子どもが見る活動。. 聴覚に障害がある乳幼児の場合,音声言語による 絵本読み「聞かせ」の効果を十分に得られる保証 はない。しかし,聾児が 100%受容できる「視覚 言語である日本手話」を用いれば,絵本読みの効 果を享受し,「絵を読み解く力」を身につける可. i l l . 活動記録の分析 i l l l 活動記録の概要 1歳児グループの 1人の子ども (A児)を抽出. 能性は非常に高い。現に,手話による「絵本読み」. し,活動スケジ、ユールを表 1にまとめた。 A児の. は,内外の多くの教育現場で行われている。国内. 簡単なプロフイールを紹介しておく。. では,明晴学園の実践があげられる。国外の実践. A児(女) :2010年 5月出生。感音性難聴:平. としては,鳥越 ( 2 0 0 1 ) が米国ギャローデット大. 均聴力レベル右 100dBHL,左 90dBHL。両親は聴. 学での事例を紹介している。. 者。第一子である。活動開始時には,親子とも日. 以上の経緯を踏まえて,筆者らは,聾児に対す. 本手話に接触した経験は全くなかった。. る絵本読みのあり方について,聾講師と協議した。 その結果,「概念の形成・言語力の伸長・思考力 の伸長・親子の安定した関係づくり」を大きな目. i l l 2 初期の活動分析 初期の活動をみていく。初期の活動 VTRでは,. 的として,日本手話による絵本読みに取り組むこ. 第 2回目の録画状態がよかった。このため,初期. とにした。. の活動の事例として第 2回目の様子をプロセスレ. その際,「子どもと読み手が対面する。 2歳ま では,ページコントロールは読み手が行う。絵本. コード化した。プロセスレコードの表記は,次の 書式によった。. を媒介として子どもと読み手ができるだけ日本手. ①. 日本手話の発語//,その日本語訳文. 話でコミュニケーションをする。」点に留意する. ②. 日本手話の表記方法については白津他. こととした。その根拠は,以前は,絵本を読んで. ( 2 0 0 2 ) を採用する。. i Jo. YNqは肯否疑問丈,. もらうことの意味がわからず,片端から本棚の絵. WHqは疑問詞疑問丈を表示する表情が付加さ. 本を床に落としてしまったり,手にした絵本の. れていることを示す。 nodは領きを示す。. ページを高速で、めくるだけだ、ったりという子ども. PTは指さし(後に続く数字は指さしが示し. 415.

(5) 田中瑞穂・鹿内信善. [ 表 1]2012年度 A児の'l::J本手話による絵本読み」活動スケジ、ュール 回. 月. 活動 ノfタン. 円. ニ 員 冗 士. ん. だ. 品 会. 本. (こぐま社), ~どうぶつ 1 .I .I IJ (講談社). 6月1 2日. ①. 『かおかおどんなかお~. 2. 7月2 0日. 人 ci ノ 九. 『きんぎょがにげた~. 3. 9月2 5日. ①. 『もこもこもこ~. 4. 1 0月 9円. ①. 『いないいないばああそぴ~. 5 1 0月23H. ①. 『ちいさなたまねぎさん~. 6 1 1月 6日. ①. 『いないいないばああそび」. 7 1 1月2 0日. ρ 占 ¥ 主 」 ノ1. 『いないいないばああそび』. 8 1 2月 1 1日. ②. 『もこもこもこ~,. 9 1 2月 1 8日. ③. 『ボール~. 1 0 1月29H. ①. (福音館書庖). 注:家族講座での絵本読み. (文研向版), ~ぞ、うくんのさんぽ'~ (福音館書庖) (倍成社), ~めしあがれ~ (視覚デザイン刷究所). (金の星社), ~ふしぎなナイフ J (福音館書庖). ~おやさいとんとん~. (岩崎書庖), ~なかみはなあに~ (倍成社). ( B B E D制作) 1 百] DVDも活片jした。. 「さんびきのくま~ (金の星社), ~し一つ~ (フレーベル館), ~どんどこももんちゃん J (童心社), ~ほ. うしとったら~ (学研教育,' H版 ) , ~おいしいおとなあに~ (あかね書房), ~まゆとおおきなケーキ~ ( 福. 音館書庖), ~ごあいさつなあに~ (チャイルド本社), ~のりものいっぱい~ (こぐま社). 1 1 3月 1 9日. に 0 . , ノ. 『おしくらまんじゅう巳(ブロンズ新社), ~おはようあさご、はん~ (ひさかたチャイルド). ている人称を去し, 二人称,. PTlは一人称, PT2は. PT3は 三 人 称 ) を 示 す 。. ③. [ p a ][ p u ] は 口 形 「 パ J 'プ」を示す。. ④. (. )は,聾児の単純発声。. [ 表 2] 初 期 の 活 動 時間 (分:秒). 講師らの言動. 幼児の言語反応 および行動. 0 0 :0 2 .2 1 1 1 1の絵本を提不す る 。 / 1 ] 子き/どちら WHQ/. 「どちらが好き?J o d / /どちら/よい n 「どちらでもいいんだ よ 。 」 -鋲いて「きんぎょが にげた」を差し出す。. -絵本から円をそらす。 -講師を見る。 -絵本を見比べる。 .rきんぎょがにげた』の 衣紙を見る。 .~きんぎょがにげた』を 受け取る。. -もう一冊『すべりだ. 0 0 :2 9 い』を A児に見せ, /本/し、ゃ YNQ/ 「この本はいやなの?J -領いて『すべりだ、い』 を片付ける。 /絵本/聞く n o d / 「絵本を開くよ。」 /魚/ここ/ 「ここに魚がし、るよ。」 /少し/待つ/ 「ちょっと待ってね。」. -絵本を持つ。 -講師と視線が合わな し 、 。 写真 2-1. -絵本を持ち,講師を見 る 。 -講師を見つめる。 -絵本を聞く。. 416. 首を振り I . 2ページめくる。 1 2ページ/めくる n o d / ' 2ページめくっちゃっ たね。」 0 1:0 01/ 1ページ/もどる n o d / ' 1ページもどるから ね 。 」 「あー J (口形のみ) /魚、/どこ WHq/ ・講師の顔を見つめる。 「魚はどこにいるか│写真 2-2 な ?J .A児と一緒に絵本を│・絵本を見る。 持つ。 .A児の右腕に軽く触 れ. /魚/どこ/ここ n o d / ・講師と会緒に絵本を持 「魚:はここにいるよ。 J Iつ 0 1:1 1 ・ページ上の金魚を指 す 。 I写真 2-3 0 1:1 51/魚ここ n o d / 「魚、はここにいるね。 J I ・講師を見る。 0 1 :2 51.A 児の左腕に触れ│写真 2-4 る 。 I ・指された箇所を見る ・A児と視線を合わせ│・講師を見る。 I ・出会本から円をそらす る 。 ・絵本の金魚を指す。 I写真 2-5 ・前のページに戻り, I ・講師と視線を合わせ 水槽を指す。 Iる 。 /[ p a ] 魚/挑ぶ/ 「ボーンと魚が跳んだ よ。ボーン。」 0 1:46 ・ページをめくる。 -絵本の金魚、を見る .絵本を見る ・講師を見る。 ・講師を見て笑う。 写真 2- 6 O. 1. 0. 0. 0. 1. 0.

(6) 聴覚特別 支援 学 校 (聾学校)での早期l 教育における 一言語環境整備. 面。講師の手指より,表情,特に口元 を見つめ. 04:4 0 ※ AI日が飽きてしまい,. ビデオの振影を停めよう とした。偶然,胤に吹か れたカーテンでビデオカ メラのレンズが覆われ, 記録が中断された。. ている。日本手話の文法が話者の表情等に表れ る。そのため聾幼児が日本手話を言語として獲 得 していくために大切な行動である。. 注:第 1筆者が補助者として絵本を保持する場面もあった。. [初期の活動における幼児の言動についての特徴]. A児は,まだ絵本をコミュニケーションの媒体 として認識できていない。そのため,注意が散漫 になっている。講師は,品会本をコミュニケーショ ンの媒体としていくために様々なはたらきかけを している。以下において,幼児の行動と共に,講. 写真 2-3. 師のはたらきかけについても詳細なプロセス分析. 0 1:1 1 講師が子どもと視線を合わせようとし. をしていく。. て,右腕に軽く触れた場面。この注意喚起のス トラテジーをこの回,講師は多用している。. 写真 2-1. 0 0 :2 9 A児は絵本を持つが,集中していない様. 写真 2-4. 子。講師と視線が合っていない。絵本も見てい ない。絵本を使って何をするのか意味を理解し. 0 1:1 5 写真 2-3の講師からの促しを受けて, 指された箇所を見る A児。講師は,子どもの表情. ていない様子。. から何を理解しているか推し量ろうとしている。 講師は,常に A児と視線を合わせようとしている。. 写真 2-2. 0 1:0 0 講師の表出する日本手話を初めて見た場. 写真 2-5. 417.

(7) 出' 1 ' f市 穂 ・ 鹿 内 信 善. [ 表 3]中期の活動. 0 1:2 5 A児は,また,絵本から目をそらしてし. まう。講師は,今度は子どもの左腕に触れて絵 本に注意を向けようと試みている。講師は,. A. 児と視根を合わせようとする行動と,幼児の視. 時間. 講師らの言動. (分:秒). -絵本を見る。. 00:0 1. 線を絵本に向けさせるための行動を同時に行っ ている。. 幼児の言語反応 および行動. -子ども肘のいすの上. /切る/切る/. に絵本を 立てる。. 「ほうちょうでトント ン 。 」. -領く。. 写真 3- 1. /切る/切る/. -絵本を比る。. 「トントンって切って いるね。」 00:0 6 -ページをめくる。. -子どもと視線を合わ せる。 /泣く/泣く nod/. -講師と視線が合う。 写点 3- 2. 「えーんって泣いてい. (わあーっ。) 写点 3- 3. るね。」. /泣く/泣く/ 「えーん,えーんって。」. 写真 2-6. /1/ 「ひとつだ、ね。」. -講師の表情を見る。. / i立く / i立く/. -絵本を見る。. 「えーんって。」. 「ひとつ。」. -驚いたふりをする。. (あーっ。). -子どもと視線を合わ. -絵本を指さす。. 0 1:4 6 A児と講師が視線を共有して笑い合う場. -講師の表情を見る。. 面。「特に母親が乳幼児に話しかける際に特有 の,ゆっくりと抑揚の大きな少し高めの声によ. せる。 /にんじん/. 0 0 9 ) Jを「マザリーズ、」という。 る話し方(山本 2. 「にんじんさんがいる. 講師は,日本手話の口形 [ p a ] を大仰に表し. -講師と視線が合う。. よ 。 」 /玉ねぎ/. ている。つまり,講師は視覚言語である日本手 話のマザリーズを A児に用いている。そのこと. 「にんじん。」. /走る/走る/. /玉ねぎ/. -ページの該 当筒所を. 。. 指す。 0:34 /泣く/なぜWHq/. ill-3 中期の活動分析. /にんじん/. 「玉ねぎがいるね。」 「走っているよ。」. により,幼児の視線を講師に誘導できた場面で ある。. 11/. -ページをめくる。. 「玉ねぎ。」 /走る/走る/ 「走っている。」. 「どうして泣いている. -指された箇所を見る。. の か な ?J. -絵本を指さす。 /なに/なに/ (講師の手. 中期の活動では, A児が絵本を媒介として日本. 1 ) 去を模倣している。). 手話によるコミュニケーションができるように. -ページをめくる。. なった回の活動を分析する。初期の頃, A児の視. /お玉/すくう/. 線は定まらなかった。しかし,活動の中期にあた. つ 。 」 /フライ返し/妙める/. 写真 3- 4 (あー。). 「お玉ですくうでしょ. る第 5回目では,「講師」と「絵本」にしっかり. -講師を見る。. 「フライ返しで妙める. と視線を向けることができるようになった。その. でしょう。」. 回の VTRからプロセスレコードを作成した。. /待って/ 「待っていてね。」. -講師を見る。 -講師を見る。. 古1 1 犀を山る。. -講師を見る。. 0 1:0 2. (参観していた八把 │ の母が言 う。). 418. /待つ/. 写真 3- 5. 「待ってね。」 /何 WHq/. /待つ/. 「何だろうねつ」. (あー。). 「待つよ。」.

(8) 聴覚特別支援学校(聾学校)での早期l 教育における 一言語環境整備. -母親を 見る 。 -棚の上の箱を指さす。. 0 0:0 1 絵本が提示されるとすぐに, A児が/切 る/切る/'ほうちょうでトントン。」と発語した。 講師の発語を待たずに,既に絵本の世界に能動 的に入り込んでいる。. A児の反応、を講師も領い. て受け止めた。相互の信頼関係が築かれてきて い る 。 ま た , 講 師 と の 距 離 が 2 m程 離 れ て い ても活動が成立している 。. るる 見見 をを 本本 絵絵. 。。. ゾゾソノリノ. 11. のつ. 川/ヤ. 口一. コ 。7. ,//.旬、. ン一プジ ぺツこ. ト品. U. 一フ戸¥ツリコ. 'l. 王コ、正 フ }/L ﹁ みパペ ﹁ て. -おもちゃを持って戻 る 。 -絵本のフライ返しに│・講師を見る。 おもちゃのフライ返し を合わせる。 -絵本のお玉におもち│・絵本を見る。 ゃのお玉を合わせる。. I l l l l l怒る [ p uJ I. 「 お皿が怒っている よ 。 ・ 箭師を見てから,絵本 ・前のページに戻る。 I を比る。 /泣く/泣く/. 「 えーんって放いてい たよね oJ. 写真 3-2 ・絵本を凡る。. 0 0:0 6 絵本を指さして(わあーっ。)と発声し [中期の活動における幼児の言動についての特徴]. た場面。幼児らしい驚きや喜びの感情の発露が. 活動も 5回目となり, A児は絵本を読んでもら. みられた。また,これから読んでもらうお話へ. う楽しさを理解できるようになった。両親も熱心. の期待感が現れている。. に日本手話の学習を続けていた。そのため, A児 は家庭でも乳幼児相談室でも日本手話で会話がで きるようになっていた O 言語環境が整いつつある 中 , A児の日本手話の語葉数が急速に増えていっ た頃である。絵本読みの時も,日本手話で講師や 母親と活発にコミュニケーションをとるように なった。また,この頃, A児は何かを発見したり, 共感を求めたりする時に,. (あー。), (わあー。). 等よく発声するようになった。. 写真 3-3. 0 0 :0 6 A児と講師の視線がしっかりと合ってい る。この回の活動では講師が発語する度に,. A. 児は即座に模倣していた。講師は, A児が既に 矢口っている語を効果的に使用して絵本の内容を 伝えている。この場面では, /泣く/ 'えーんっ て泣いているね。」を繰り返している。. 写真 3-1. 419.

(9) 出' ' 1 f市 穂 ・ 鹿 内 信 善. [ 表 4:後期の活動] 時間. (分:秒). 幼児の言語反応 および行動. 講師らの言動. -絵本を指さす。. 0 2:00 -絵本を指さす。 /何/痛し、 YNq/. 「痛いのかな?J. .A児の 母親を指さす。 /失敗 YNq/ 0 2:1 0 「失敗したのはママか なっ」. 写真 3-4. 0 0 :3 4 講師は/なぜWHq/ 1どうして?J という 疑問詞を提示 している。それを見て A児も講師 の/なに/なに/の手形を模倣している場面。子 どもが疑問詞を使えるようになるのは言語獲得. ( A児のほか) /失敗/. • L 止親を見て指さす。. た. 「ママが失敗し よ 。 」. 写真 4- 1. -絵本を指さす。. I i 立く/ 「えーん。」. の上で非常に大切なステップである。 -絵本を撫でる。 .{ i J ! く 。. -絵本を指さす。 -講師を見る。 Ii立くIi立く/ 「えーん。」. -絵本をたたく。 -絵本を撫でる。 /どちら WHq/. -絵本を見る。. 「どちらだろう?J 0 2:25 -絵本を撫でる。 .{ i J ! く 。. -ページをめくる。. 写真 3-5. 0 1:0 2 講師が部屋を出た時, A児が母親を見た 場面。即座に母親が/待つ/ 1待ってね。」と話 しかけている。この後, A児も/待つ /1待つよ。」 と答えている。絵本読みの場に母親も自然に参 加するようになってきて, A児は安心して活動 できている。. i l l 4 後期の活動分析 後期になると, A児は絵本を媒介として,講師 とだけではなく,母親ともコミュニケーションが. -領く。 /こんにゃく/茶色/ど こWHq/ 「こんにゃくだね。茶色 0 2:27 はどこにあるかなっ」 .A児が座っているい すを指さす。 /PT3同 じ/ 「ここと同じだね。」 -子 どもと 日を合わせ る 。 0 2:37 /こんにゃく/ 「こんにゃくだね。」. -領く。. -絵本を 見 る 。 -講師を 見 る 。 /こんにゃく/ 「こんにゃく。」 写真 4- 3. -自分のいすを 見 る 。 -指された所を見る。 -講師と祝線を合わせ る 。. -絵本を指さす。 /話す/話す/. 図から「ことば」を生み出す場面をとらえた第 1 1. 「おしゃべりしている よ 。 」 /PT2ピンク/同じ/ 「ピンクで Aちゃん. 回目の VTRプロセスレコードを作成した。. I> i と │ 百 lじね。」 のN .A児の母親を指さす。. とれるようになった。その頃の活動で, A児が絵. Ii立く/ 「えーんって泣いてる。」 写真 4- 2. /こんにゃく/ 「こんにゃくだ、 oJ 写真 4- 4. -絵本を比る。 -絵本を指さす。. /日/. iAちゃんのママの服 は白だよ。」. 420. /ピンク PT1/ i f l ,はピンク」.

(10) 聴覚特別 支援 学 校 (聾学校)での早期l 教育における 一言語環境整備. -絵本を指さす。. 0 2:2 5. ~.毒師は ,. i 立ヵ、してしまったまんじゅうを. A児に「ごめんね。」という気持ちで撫でてほし -絵本を指さす。. 02:5 1. / 白 PT3/. かった。そこで数回絵本を撫でながら, /どちら. 「ママは,白だよ。」. WHq/ 1"どちらだろう?J とA児を誘った。し. 写真 4- 5 -母親を見る 0 ・絵本を比る。. /痛い/ 「痛いよ。」. かし, A児は講師の意図を理解できず, /泣く/ 「えーんって泣いてる。」と噛み合わない応答 をした。. A児が,期待される答えは返せなかっ. たものの講師から質問されているということを 理解して,自分で思考して発語した場面。講師 [後期の活動における幼児の言動についての特徴]. は,深追いせず,領いてページをめくった。. A児は非常に落ち着いて活動に臨むようになっ てきた。絵本も 一度,読んでもらうだけでは飽き 足らず,繰り返し読んでもらいたがったり,何冊 も読んでもらったりと態度に変化がみられるよう になった。絵図から「ことば」を生み出す場面も 多くなっていった。また,中期にみられた(あー。) などの発声は少なくなった。 写真 4-3. 0 2 :2 7 A児がこんにゃくの絵を見て, /こんにゃ く/ 1"こんにゃく。」と発語した場面。絵図から 子どもが「ことば」を生み出した瞬間である。. 写真 4-1. 0 2:1 0 絵本の登場人物を,講師が A児とその母 親に見立てて読んでいる場面。講師の話しかけ を受け,母親が自然に/失敗/ 1"ママが失敗した よ。」と話し,活動に参加している。 写真 4-4. 0 2:3 7 講師が,さりげなく A児の手話ラベルを 修正した場面。即座に,. A児は正しい手話ラベ. ルを表出している。日本手話話者と直接会話す ることで,自然に A児が正しい語を獲得してい く場面である。. 写真 4ー 2. 4 2 1.

(11) 出' 1 ' f市 穂 ・ 鹿 内 信 善. 日本手話を用いた絵本読み場面の分析から,聾 乳幼児の言語獲得について考察した。この活動の 第一の意義は,両親が聴者である聾児が日本手話 に出会う環境を設定したことである。佐々木. ( 2 0 0 8 ) は,「聞こえの程度が何であれ,子ども たちにとって,もっとも自然に獲得でき,自分の 思考や感情を制約を感じずに表現できるのは日本 写真 4-5. 0 2:5 1 A児が/白 PT3/ 1"ママは,白だよ。」. 手話である。」とする。しかし,聴こえる両親には, 日本手話の必要性についての認識が不足してい る。両親は,聾学校乳幼児相談室に来て,日本手. と2語文を話した場面。この頃,既に A児は 2. 話母語話者(聾講師)とわが子のコミュニケーショ. 語文や 3語文を表出できるようになっていた。. ン場面を初めて見る。継続してその場面に立ち会 うことにより,わが子が日本手話を獲得していく プロセスも理解できるようになる。さらに,両親. U 考察. は,わが子が聾講師と円滑にコミュニケーション. III-2~4 での分析により,絵本読みの活動の. がとれるようになっていく過程を目の当たりにし. 成果を以下の 3点についてまとめることができ. て,日本手話を肯定的にとらえることができるよ. る 。. うになる。そして,自らも日本手話の学習を始め. ①. ②. ③. 子どもの行動の変化:絵本を媒介にして,. るようになる。ある母親は,次のように述べてい. 講師や母親とコミュニケーションがとれるよ. る。「伝えたい気持ち,伝わったという達成感は. うになった。講師や絵本をしっかりと見つめ. 本当に大きな事で,ここ最近の大成長です。これ. ることができるようになった。 1回の絵本読. からものばしてあげていきたいです。…聴力の良. みでは飽き足らなくなり,何度も読んでもら. い,悪いに関係なく,今の乳幼児相談室みたいに. いたがったり,何冊も読んでもらいたがった. どの子にも日本手話の指導を続けてもらいたいで、. りするようになった。. す」。さらに,「私も手話を勉強していかなければ. 子どもの日本手話の理解と表出:回数を重. …」と意欲的な考えを示している。本研究に協力. ねることで,日本手話の理解語長が増えた。. してくれた A児の母親は,「パパもママも A といっ. 講師との会話が成立し,絵本の内容を楽しむ. ぱいいっぱいお話がしたくて,手話を覚えようと. ことができるようになってきた。後期の活動. 今も頑張っているよ。手話を使いはじめて, 一つ. では,子どもが自分でことばを生み出す場面. Fちょう 一つ言葉が増えていったね。「おいしい. 1I. がみられるようになった。. だ 、 い . 1F Iワンワン.1 F Iあ りカすとうo!l I Fごめんなさい」. 保護者の態度・行動の変化:初期の頃は,. 「 楽しい」そして『パパ.l ' i ママ. 10 少しずつ増え. 参観しているのみであった。しかし,母親が. ていく 言葉 で 、 Aが思っていること,感じているこ. 日本手話を学習していく中で活動に自然に参. と,考えていることがわかるようになって,そし. 加し, A児とコミュニケーションをとるよう. てお話ができるようになって,パパもママもとて. A児も,母親に話しかける. もうれしいよ。」と親子で通じ合える喜びを語っ. に変化してきた。. と答えが返ってくることに安心し,落ち着い て活動に参加できるようになってきた。. ている。 本研究において,聾講師が,聾児と関わること で,乳幼児の言語発達が促進される過程,わが子 と通じ合える喜びを共有することにより,保護者. 422.

(12) 聴覚特別支援学校(聾学校)での早期教育における二三議環境整備. の考えや行動が前向きに変化していく過程をとら えることができた。聾講師による「絵本読み」は, 聾乳幼児が日本手話を獲得していくための,よい 「環境」になる。聾乳幼児は「日本手話」ととも に「日本語」を習得していかなければならない。 次の研究では,二言語のうちの「日本語」に焦 点化して子どもと絵本(メディア)の関わり方に ついて考えていきたい。. 注 1 :木研究は既に記録してある VTRを分析したもの である。 注 2 :VTRに記録すること,および,それをもとに論 え;化することについて保護者から承諾を得ている。 抗 3 :本研究では,第 1筆者の勤務校名に合わせ. I聾 」. を漢字で去記した。. i 七4 :日本手話では「表情」も重要な言語機能をもって いる。このため,掲載写真にはモザイク処理を施さな かった。「写真へのモザイク処理不要」ということにつ いても保護者から承諾を得ている。なお,この実践例は, 北海道教育委員会にも提供しており,一部はインター ネットで閲覧できる。北海道教育委員会のホームペー. 引用・参考文献. ジでも,映像のモザイク処理はされていない。 汗究を行うにあたってのインフォームドコンセ 注 5 :本h. 2 0 0 7. 北海道教育委員会. ~特別支援教育に関する基本. 方針(改定案)~. ント(上記注 2と注 4に関わる)は,次の文書によっ てとってある。「本研究の目的は,聴覚障害乳幼児の方々. 1 9 9 9. 北海道札幌聾学校. ~創立 50 周年記念誌二十一. 世紀への船山」. を対象として,二言語(日本手話・日本語)の発達に ついて検討することです。研究実施者が,研究の内容. 2 0 1 4. 5年度 『平成 2. を説明した上で,同志、をしてくださった場合に,研究. 乳幼児柑談窒終了記念文集「よちよち J~. 北海道札幌. に協力していただくことになります。本研究を通じて. 北海道札幌聾学校乳幼児相談室編. 聾学校 市田泰弘. 得られた情報は,貴重な研究成果として,学術団体の. 2 0 0 8. I日本手話と日本語対応手話」. ろう児をもっ親の会編. 全国. 総会や学術雑誌などで発表することがあります。その. 『パイリンガルでろう児は育. 際,日本手話では,表情等が大切なので,画像処理を. つけ本子話+書記 H本語で教育を!~. 生活書院. 2 3. Knigh , tP .&S w a n w i c k .R .2 0 0 2Workingw i t hDeafPU 戸i l s. しないまま写真等掲載させて頂く場合があります。写 真の掲載も保護者の同意をいただいた上で行います。」. u l t o n -SignB i l i n g u a lPolicyi n t oP r a c t i c e -DavidF P u b l i s h e r s 小田候朗. 2 0 0 2. I聴覚障害教育におけるリテラシーの. 変遷に閲する研究~国立特殊教育総合研究所研究. 2 9 1 1 0 岡本みどり 2 0 0 8 Iはじめに」 紀要~. の会編. 『パイリンガルでろう児は育つ. 書記日本語で教育を!~ 三森ゆりか. 全国ろう児をもっ親. 2 0 0 2. 生活書院. 日本手話+. 5 7. 謝辞 聾講師として絵本読みを実施し,本論文中のプ ロセスレコード作成にご協力くださいました. iNPO法人北海道バイリンガルろう教育を推進 する会」岡村真理子氏に心より御礼申し上げます。. ~絵本で育てる情報分析力」一戸社. 佐々木倫子・古石篤子編. 2 0 0 8. ~混乱・模索するろう. 教育の現場一教育政策・言語政策のはざまでー」. 慶. 田中. 北海道札幌聾学校教諭). 磨義塾大学湘南藤沢学会. 白i 宰麻弓・斎藤佐和. 2 0 0 2. おける作業内容の分析 J. 瑞穂(北海道教育大学札幌校大学院学生,. 日本語一手話同時通訳に. 鹿内. 信善(北海道教育大学札幌校教授). 4 0 ( 1 ). ~特殊教育学研究~. 2 5 3 9 鳥越隆士. 2 0 0 1. ~手話・ことば・ろう教育』. 全日本. ろうあ連盟日本手話研究所 山本千紗子. 2 0 0 9. ことの大切さ. I乳幼児に話しかけること・褒める. 子育て支援のエビデンスを求めて. 」. 5巻 10 ' 1 9 2 5 全国ろう児をもっ親の会編 2 0 0 8 ~バイリンガルでろ 『上武大学看護学部紀要~. う児は育つ日本手話+書記日本語で教育を!~. 牛活. 書院. 4 2 3.

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参照

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