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台湾における研究体制の整備とコア・ジャーナル (特集 アジア地域研究と雑誌 -- 「コア・ジャーナル」を語る)

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Academic year: 2021

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台湾における研究体制の整備とコア・ジャーナル (

特集 アジア地域研究と雑誌 -- 「コア・ジャーナ

ル」を語る)

著者

佐藤 幸人

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

198

ページ

12-13

発行年

2012-03

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004032

(2)

●等級制度とTSSCI

  台 湾 で は 一 九 九 〇 年 代 末 か ら、 研究体制にかかわる三つの制度の 整備が進められてきた。三つの制 度 と は 学 術 誌 の 等 級 を 定 め る こ と、学術誌のデータベースを構築 すること、研究者の評価を研究成 果によって客観的に行うことであ る。それぞれの制度の整備は一定 程度独立していたが、同時に半ば 意図的な、半ば意図せざる連動を ともなっていた。   学術誌の等級( 「期刊排序」 )を 定める調査は一九九八年に第一回 が行われ、その後、現在まで二回 行われている。等級の判定は引用 件数などの客観的な指標と、研究 者に対するアンケート調査や専門 家による審議を総合して行ってい る。 デ ー タ ベ ー ス( 「 台 湾 社 会 科 学 引 文 索 引 資 料 庫 」、 Taiwan

So-cial Sciences Citat

ion Index 。以下、 TSSCI)は一九九八年から開 放 さ れ、 そ の 後 毎 年 基 準 に し た がって改訂されている。TSSC Iに収録されるためには、定期的 な刊行といった形式的な基準のほ か、学術的なクォリティも満たさ なければならない。 表 1に社会学 の学術誌について等級制度とTS SCIを統合的に示した。   同 じ く 二 〇 〇 〇 年 前 後 から 、 研 究 者 の 採 用 や昇 進 お よ び 研 究 費 に か か わる 審 査にお い て 、 客 観 的 な 基 準 を と り 入 れよ う と い う 動 き が 活 発 に な っ て い っ た 。 な か で も 重 視 さ れ る よ う に な っ た の が 、 学 術 誌 に 掲 載 さ れ た 論 文 の 本 数 で あ る 。 と り わ け S S C I ( So cia l Sc ien ce s C ita tio n I nd ex に 収 め ら れ て い る 英 文 の学 術 誌に論 文 が 掲 載 さ れ れ ば 、 高 い 評 価 が 得 ら れ る よ う に な っ た 。 こ の こと に 関 して は 既 に 書 い た も の が あ る の で 、 詳 し くは そ ち らを 参 照 さ れ た い (「 台 北 便 り 」 h tt p :/ /j at s.g r.j p /a r-ch ive s/ sa to .h tm l# 00 1 お よ び 「『 知 』 の 共 有 促 す 制 度 を 」 htt p:/ /w w w . as ah i.c om /in te rn ati on al/ a a n / h a t s u / h a t -su 04 03 03 b.h tm l )。 ま た 、 こ の よ う な 制 度 の 変 化 に よ っ て日 本 留 学 組 が い か に 不 利 な 状 況 に 陥 っ た か は 、 本 誌 第 一 七 九 号 ( 二 〇 一 〇 年 七月 ) の劉 仁 傑 「 台 湾 に お け る 英 文 ジ ャ ー ナ ル論 文 中 心 主 義 の 興 隆 と そ の 影 響 ︱ 「日 本 留 学 組 」 の苦 悩 ︱ 」 を 参 照 さ れ た い 。   このような評価制度の下 、中国 語の学術誌の「格付け」も重要性 を 増 す こ と に な っ た。 と こ ろ が、 そ の 際 に 奇 妙 な ね じ れ が 生 ま れ た。等級制度があるにもかかわら ず、実際にはTSSCIに収録さ れているか否かが、デファクトの 基準として普及してしまったので ある。 恐らく原因は複合的である。 第 一 に、 T S S C I 自 身 が 当 初、 表1 社会学の学術誌(2006~2007年の調査) TSSCIに収められている学術誌 TSSCIに収められていない学術誌 第1等級 台湾社会学、台湾社会学刊 第2等級 台湾社会研究季刊*、台大社会 工作学刊、社会政策與社会工作 学刊、人文及社会科学集刊* 人口学刊*、中華心理衛生学刊* 調査研究:方法與応用 第3等級 政治與社会哲学評論*、台湾教 育社会学研究* 台湾社会福利学刊、台湾社会工作学刊、国立政治大学社会学報、 東呉社会工作学報、女学学誌: 婦女與性別研究** 第4等級 教育與社会研究、東呉社会学報、 思與言:人文與社会科学雑誌、 資訊社会研究 (出所) TSSCIウェブサイト(http://db1n.sinica.edu.tw/textdb/tssci/searchindex.php)お よび行政院国家科学委員会ウェブサイト(http://www.nsc.gov.tw/hum/lp.asp?ct Node=1144&CtUnit=813&BaseDSD=7)より作成。 (注) メディア研究は除いている。     *  TSSCIでは社会学以外の分野に分類されている。     ** THCIに収録されている。     なお、現在TSSCIに収められている『文化研究』は、2005年刊行のため、調査の 対象外になっている。

台湾

る研究体制

整備

特 集

アジア地域研究と雑誌

―『コア・ジャーナル』を語る―

 

ア・

か︒

りの研究体制の整備を通して考えてみたい︒

12

アジ研ワールド・トレンド No.198 (2012. 3)

(3)

学術誌の格付けも目的としていた ことである。第二に、TSSCI の方が幾つかの理由からわかりや すかったことである。まず等級制 度自体が必ずしも広く知られてい なかった。また、TSSCIか否 か と い う 基 準 は 単 純 明 快 で あ る。 そして、英文論文の基準であるS SCIと対応している。   しかし、このねじれは弊害を生 み出している。TSSCIが二重 の 目 的 を 持 っ た た め に、 デ ー タ ベ ー ス と し て は 収 録 誌 が 少 な く、 学術誌の格付けとしては十分に適 切かつ慎重な審査に基づいていな いという中途半端なものになって しまった。しかも、TSSCIか 否かという単純なわかりやすさは 乱 暴 な 二 分 化 と 裏 腹 と な っ て い る。このような弊害を是正するた め、科学技術政策を担当する行政 院 国 家 科 学 委 員 会 が 中 心 と な っ て、データベースと等級制度を明 確に分ける改革を進めている。す なわち、将来的にはTSSCIと 人 文 科 学 の T H C I( 「 台 湾 人 文 学引文索引」 。 Taiwan Humanit ies Citat ion Index ) を 統 合 す る と と もに、基準を緩めて収録誌を大幅 に増やし、データベースとしての 機能を強化する。同時に直接的な 格付けの機能は弱める。一方、等 級制度の整備と普及を進める。

●台湾のコア・ジャーナル

  前述のような事情から、今、台 湾 の 社 会 科 学 の 研 究 者 に コ ア・ ジャーナルは何かと尋ねれば、T SSCIに収められている学術誌 を あ げ る 可 能 性 は 高 い。 し か し、 台湾の学術誌のクォリティや影響 力をより正確に示すのは等級制度 である。等級制度の上位の学術誌 はほとんどTSSCIに含まれて いるとはいえ、 表 1が示すように、 若干のずれがあることには注意し なければならない。例えば等級制 度では第二級の『調査研究:方法 與応用』はTSSCIには含まれ ていないが、第三級の学術誌も二 誌、 TSSCIには含まれている。   等級制度に おける各分野のトッ プ二誌は 、社会学では『台湾社会 学 』 と『 台 湾 社 会 学 刊 』、 経 済 学 では『経済論文』と『経済論文叢 刊』 、政治学では『台湾政治学刊』 と 『東呉政治学報』 である。 当然、 T S S C I に も 収 め ら れ て い る。 これらが台湾のコア・ジャーナル 中のコアといえよう。 それぞれの 分野でどのようなトピックを議論 しているのか、三分野から一誌ず つ、 最新号の目次を表 2に示した。   台 湾 に か ぎ っ た こ と で は な い が、社会学の各論文は台湾社会に 対 す る 強 い 関 心 に 基 づ い て い る。 一方、経済学は一般性への志向が 強く、その分、台湾社会への関心 は弱い。 数人の社会学者によれば、 彼 ら は 想 定 す る 読 者 に 応 じ て 使 用 す る 言 語 を 使 い 分 け て い る と い う。 彼 ら の 書 く 中 国 語 の 論 文 は 台 湾 の 人 々 あ る い は 中 国 語 を 使 う 人 々 と の 対 話 を 意 図 し て い る の で、 台 湾 社 会 や 中 華 圏 へ の 関 心 が 特 に 顕 著 に 現 れ る。 そ れ に 対 し て、 経 済 学 者 は 英 文 で の 発 表 を 強 く 志 向 し、 中 国 語 の 論 文 で も 一 般 的 な 問 題 を 論 ず る 傾 向 が あ る。 政 治 学 の ポ ジ シ ョ ン は 中間である。   ま た、 『 台 湾 政 治 学 刊 』 の 最 新 号 に た ま た ま 集 中 し た き ら い は あ る が、 中 国 が 社 会 学 や 政 治 学 で は 重 要 な 研 究 対 象 と な っ て い る こ と が わ か る。 中 国 お よ び 中 国 と の 関 係 を ど の よ う に 理 解 す る か は、 台 湾 自 身 へ の 関 心の延長線上にある。   い ず れ も 厳 し い 審 査 を 通 過した論文である。台湾の社会科 学の動向を知るためには、まずこ の六誌からアプローチすることが 適当だろう。 ( さ と う   ゆ き ひ と / ア ジ ア 経 済 研 究所   企業・産業研究グループ) 表2 コア・ジャーナル最新号の論文 『台湾社会学』第21期(2011年6月)  消えた農民・漁民─台湾における初期環境保護運動再論  永遠の異邦人か─市民身分の格差と中国「農民工」階級  わたしは落ちこぼれのフェミニストかもしれない─フェミニズムのアイデンティティと実践の語りの構築  「夫の首枷」から「国家の首枷」へ─構造的に交錯する苦境下において暴行を受けるベトナムからの婚姻移民女性 『経済論文』第39巻第3期(2011年9月)  輸入競争、一括販売、研究開発  台湾の非線形利子率法則再論  ウェーブレット変換を用いたアメリカのマクロ経済指標とダウ工業指数の関係の分析(英文)  対外投資をしている企業は常に生産性が高いか─技術移転コストの役割 『台湾政治学刊』第15巻第2期(2011年11月)  国家の野生生物保護体制、社会経済の変動及び原住民の狩猟─タロコ族における制度の相互作用の実証分析  中国大陸から台湾への留学生の政治的態度と台湾の主権を受容するレベル  中国の社会組織のガバナンス構造とドメイン分析─環境保護とエイズのNGOの比較  中国大陸の基層における民主と社会保障制度の発展  中国東南部における環境被害と社会の脆弱性─適応型権威主義の事例か(英文) (出所)各誌の目次を和訳。

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台湾における研究体制の整備とコア・ジャーナル

アジ研ワールド・トレンド No.198 (2012. 3)

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