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趣旨説明 (国際シンポジウム報告 -- 責任あるビジネス・責任あるサプライチェーン「ビジネスと人権に関する国連指導原則」を日本はどのように活かせるか)

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Academic year: 2021

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趣旨説明 (国際シンポジウム報告 -- 責任あるビジ

ネス・責任あるサプライチェーン「ビジネスと人権

に関する国連指導原則」を日本はどのように活かせ

るか)

著者

山田 美和

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

254

ページ

30-32

発行年

2016-11

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00018774

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アジ研ワールド・トレンド No.254(2016. 12)

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趣旨説明

山田   美和 ョン・ラギー博士が国連事務総長 から任命され、様々なマルチステ ークホルダー、各国政府、各国企 業、そして市民社会組織の人々と のコンサルテーションを経てドラ フトされ、国連人権理事会で全会 一致で承認されたことが、指導原 則を特別なものにしている。   第二に、指導原則は国に新たな 義務を課すものではないという点 である。企業に対しても、新たな 法規制を課すものではなく、既に 存在している国際人権基準を礎と して、どのようにして各国の政府、 企業がそれを実行していくのかと いう原則である。   第三に、指導原則を受けて、O ECD多国籍企業行動指針に新た な人権の章が加わるなど、多くの ビジネスと人権、CSRにかかわ る枠組みに影響を与えている点で ある。   指導原則が企業に求めているこ とは、非常にシンプルであり、そ のオペレーションにおいて、人権 を尊重する、人々の権利を侵害し ないという最低限を明記したもの である。日本企業には昔から「三 方よし」 という考え方がある。 「売 り手よし、 買い手よし、 世間よし」 と い わ れ る が、 現 代 に お い て は、 かつては考えられていなかった世 間の広がりが、日本国内だけでな く、海外に広がっている。直接的 な取引先のみでなく、様々な関係 性が広がってきている。指導原則 は、企業に制約をかけるというよ りは、人権を尊重するオペレーシ ョ ン を 推 進 し て い く こ と に よ り、 企業にとってレベル ・ プレイング ・ フィールドを醸成するという原則 である。

  最も重要なのは、政府が企業に 対 し て「 人 権 尊 重 が 重 要 で あ る 」 というメッセージを発することで ある。日本政府は、企業に対して 人権尊重を期待するというメッセ ージをまだ明確に表明していない し、それがみえていない状況にあ

責任

責任

人権

国連指導原則﹂

国際シンポジウム報告

  二 ○ 一 一 年 国 連 人 権 理 事 会 に お い て、 ﹁ ビ ジ ネ ス と 人 権 に 関 す る 国 連 指 導 原 則 ﹂︵ UN Guiding Principles on Business and Human Rights ︶が、日本を含む全会一致で承認された。同原則は人権保護という国家の 義務を再度強調し、同時にすべてのビジネスが人権を尊重する責務を負うことを明確にしている。新興国や開 発途上国でのビジネス展開において、進出企業は人権課題に直面しており、人権リスクの効果的なマネジメン トは、国内外における責任あるビジネス・投資に不可欠である。ビジネスの主体は企業のみならず、様々な組 織、団体そして政府自体も、公共調達、信用供与、ODAなどを通じて経済活動に関係する。   国連指導原則をいかに活用するかをテーマに、二○一六年六月二九日国連大学ウ・タント国際会議場にて国 際シンポジウムを開催した。福本拓也氏︵経済産業省経済産業政策局産業資金課長︶の開会挨拶、ダンテ・ペ シェ氏︵ビジネスと人権に関する国連ワーキンググループ議長︶のビデオメッセージを受けて、海外からの専 門家による報告、企業からのパネリストとともに、日本が直面する課題について議論を行った。

  数ある国際機関から毎年出され る文書の中で、ビジネスと人権に 関する国連指導原則というものが なぜ特別なのか、その理由に次の 三点が挙げられる。第一に、多く の関係者による合意形成によって 作られた文書である点である。ジ 15_国際シンポジウム.indd 30 16/11/02 11:28

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アジ研ワールド・トレンド No.254(2016. 12) る。そのことによって、日本企業 が、何もしなくていい、このまま でいいと思ってしまうと、日本企 業のグローバル競争力を弱めてし まいかねない。   したがって、我々は指導原則を 活用すべきであるし、これを外圧 と捉えるのは誤りで、我々は積極 的 に そ し て 能 動 的 に 指 導 原 則 を、 企業としても、それから市民社会 としても使っていくことができる。   国とビジネスの関係においては、 国有企業、国がシェアの一部を持 っている企業など、公的資金が導 入された様々な仕組みがあり、公 共調達もある。国はビジネス活動 を監督する、規制する立場にいる と同時に、自らビジネスのアクタ ーであるので、そこにこそ人権尊 重が必要である。   さらに重要なのは政策の一貫性 である。ビジネスに関係する省庁 だけでなく、様々な省庁において こういった人権保護に関する政策 の一貫性が求められている。投資 条約や通商協定においてもこのよ うな観点が必要であることも指導 原則に盛り込まれている。

  昨年ドイツで行われたサミット の首脳宣言のなかに「責任あるサ プ ラ イ チ ェ ー ン 」 と い う 項 目 で、 指導原則を強く支持し、G7各国 が国別行動計画を策定する努力を 歓迎すると書かれている。   各国は、それぞれの国の企業が、 サ プ ラ イ チ ェ ー ン に お け る デ ュ ー・ディリジェンスの手続を実施 す る よ う に、 「 国 が 企 業 に 対 し て 自発的なデュー・ディリジェンス が 可 能 に な る よ う に 奨 励 し よ う 」 と明記されている。G7はもちろ ん日本もメンバーであり、責任あ るサプライチェーンは、グローバ ルビジネスのキーワードになって いる。   二○一五年度ジェトロ海外ビジ ネス調査において、日本国内の大 企業六三八社、中小企業二三六七 社、合わせて三○○五社からサプ ライチェーンの関係性について回 答を得た。アンケートの結果では、 「 貴 社 は、 取 引( 調 達 ) 先 の 工 場 や職場の労働・安全衛生・環境へ の 取 り 組 み に 関 す る 方 針 を 有 し、 取 引 先 に そ の 準 拠 を 求 め て い る か」という質問に対し、方針を有 し、かつ取引先に準拠を求めてい るのは全体の二一%である。大企 業では四〇%、中小企業では一六 %である。大企業と中小企業の対 照性が浮かび上がる。   方針を有し、準拠を求めている と 回 答 し た 企 業 に 対 し て、 「 ど こ の取引先に対してそれを求めてい るか」という質問には、八割以上 が国内の調達先に準拠を求めてい る。海外の取引先に準拠を求めて いるというのも、大企業では四割、 中小企業で三割ある。さらに、大 企業で二五%、中小企業で一八% が「調達先にその企業の調達先に も準拠させるよう求めている」と 回答している。   逆に、顧客方針への準拠という ことで、自社が準拠を求められて いるかという質問に対しては、 「準 拠を求められたことがある」が全 体 の 四 二 %、 「 求 め ら れ た こ と は な い 」 と い う の は 四 六 % で あ る。 「 求 め ら れ た こ と が あ る 」 の は、 大企業では約五五%、中小企業で は約四○%である。   業種別では、化学では六割を超 えており、自動車、自動車部品そ のほか輸送機器、それから、電気 機械でも六割は超えている。   着 目 し た い の が、 「 方 針 へ の 準 拠を取引先に求めている」と答え た 企 業 よ り も、 「 求 め ら れ た こ と がある」と答えた企業が数として 大 き く 上 回 る と い う こ と で あ る。 もちろん、サプライチェーンの構 造上から行けば、完成品をつくる 会社に対して、部品供給の会社は 複数あるため、求めるよりも求め られるほうが多くなるのは自明の 前提としてあるが、 大企業では 「求 め て い る 」 の が 二 五 二 社 に 対 し、 「 求 め ら れ た こ と が あ る 」 と 答 え たのは三五○社である。中小企業 で は、 「 求 め て い る 」 の は 三 七 九 社 に 対 し、 「 求 め ら れ た こ と が あ る 」 は 九 一 五 社、 お よ そ 二 ・ 四 倍 になる。恐らくこの数字は今後増 えていくと考えられる。   さ ら に、 「 ど こ か ら 準 拠 を 求 め られているのか」というと、海外 が 多 い の で は と 推 測 し て い た が、 そうではなく、八割以上が国内の 顧客(納入先)から準拠を求めら れていると回答している。さらに、 「顧客 (納入先) から自社の取引 (調 達)先にも準拠させるように求め られたことがある」と、大企業で 二八 ・ 三%、中小企業で一六 ・ 五% が回答した。   これらの調査結果から、サプラ イチェーンにおいて、このような 求めている、求められているとい う関係性が浮かび上がる。数字の 上では日本企業は受け身、特に中 小企業はそうであるということが 明らかである。 15_国際シンポジウム.indd 31 16/11/02 11:28

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  国別行動計画 ( National Action Plan ) は、 指 導 原 則 を 各 国 が ど の ように具体的に運用していくのか、 どのような政策を実施していくの かを明示する政策文書である。   N A P の 一 番 の 効 果 と し て は、 繰り返しになるが、政府が指導原 則にコミットしている、企業に対 して人権尊重の期待を持っている ということを明らかにすることが できる点である。企業にとっては、 政府がビジネスと人権に関するコ ミットメントおよび方針を示すこ とによって、レベル ・ プレイング ・ フィールドの形成が促されるとい うのが最大の利点になる。そして、 NAPの策定は、様々な関係者を 関 与 さ せ る こ と に よ っ て、 政 府、 企業、市民社会組織、それから労 働組合等の関係者間の信頼醸成の ために建設的な機会が生まれると いうメリットがある。   英国、オランダ、デンマークの NAPの共通点は、大きく三つあ る。ひとつには、政府が、企業の 人権尊重の責任を促進するために 何をするかという具体的な政策が 書かれている点である。二つめに、 海外における自国企業による人権 の尊重という点を強調している点 である。第三にいずれの国も、ミ ャンマーにおける責任ある企業活 動、投資に注目しているという点 である。

  この四月に初めて、アジア地域 においてビジネスと人権フォーラ ムが開催された。指導原則をドラ フトしたジョン・ラギー氏はその 基調演説で、 「アジアの国々には、 限られた資源のなかで、人権をど うしても経済発展より後回しにし てしまうという誤解がある。持続 的発展の課題は、根本的には人権 の課題である」と論じた。   このアジア地域会議における最 大のテーマは、移民労働者、外国 人労働者であった。日本にも外国 人技能実習生など様々な形で関係 してくる。外国人労働者が集中す る セ ク タ ー は 限 ら れ て い る の で、 人権侵害が起こりやすい。それを 防止するための様々な規制や枠組 みができている。倫理的リクルー トということがひとつの大きな課 題となっている。サプライチェー ン上における労働者の権利に対す る消費者や投資家の関心の高まり もある。   メガスポーツイベントに関して は、日本も二○二○年にオリンピ ックを開催予定であるが、そのよ うなイベントにおける土地収用や、 環境や労働者に対する影響のアセ スメント、それから、持続可能な 調達行動、日本もオリンピックで 様々なものを調達していくが、ど ういう形で行っていくのかも議論 された。開催地の決定過程から終 わるまで、そしてその後について も、持続可能な環境システムの一 部として、人権尊重が重要である ことが議論された。   まだアジアの地域においてはN APが作られていないなかで、今 後、政府の役割はより大きくなる だろうという議論も行われた ⑴ 。

  では、日本は指導原則をどのよ うに活かし、グローバルな期待に どのように応えるべきか。   日本に見られる「三すくみ」と 表現するのは、日本における政府 と 企 業 と 市 民 社 会 の 関 係 で あ る。 一 昨 年 前 に ア ジ ア 経 済 研 究 所 で、 倫理的消費に関するセミナーを開 催した。そこで企業が情報開示を しないのは、企業の側にいわせる と、消費者が求めていないからで あると議論された。消費者は、情 報がないから判断しないし、行動 しない。企業は、消費者も求めて ないし、政府からの規制がないか らやらない。政府も、企業からの 要請がないし、消費者からの要請 がないから何も動かない。 この 「三 すくみ」から前に進むために、指 導原則は、共通の言語として、政 府、企業、そして市民社会が活用 できると考える。   指導原則にもとづき、ビジネス と人権に関して、様々なステーク ホルダー、もちろん企業、それか ら、市民社会組織、労働組合、そ して我々も消費者としても、市民 としても関与し、日本においてど のようなニーズとギャップがあっ て、それを把握して、政策として 取り組んでいくのか。指導原則を、 政府、企業、それから市民社会の 共通のツール、言語としてどのよ うに活用できるのか、本日皆さん と一緒に考えていきたい。 ( や ま だ   み わ / ア ジ ア 経 済 研 究 所   法・制度研究グループ) 《注》 ⑴ 詳 細 は 拙 稿「 ビ ジ ネ ス と 人 権 ──二〇一六年国連ビジネスと 人権初のアジア地域フォーラム 開催される──」アジ研ワール ド・トレンド、二〇一六年八月 号、№二五〇。 15_国際シンポジウム.indd 32 16/11/02 11:28

参照

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