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論 文 要 旨
国 内 製 造 業 が 世 界 で 競 争 力 を 失 い つ つ あ る 中 、 日 本 の 筆 記 具 業 界 は 競 争 力 を 失 わ ず 、ま た そ の 中 で 三 菱 鉛 筆 社( 三 菱 と 略 す )、パ イ ロ ッ ト コ ー ポ レ ー シ ョ ン 社 ( パ イ ロ ッ ト と 略 す ) の よ う な 高 収 益 企 業 が 存 在 す る 。 両 社 の 属 す る 筆 記 具 業 界 を 含 む 国 内 文 具 業 界 は 少 子 高 齢 化 、 人 口 減 少 問 題 に よ る 文 具 使 用 者 の 減 少 、 デ ジ タ ル 化 の 進 展 に よ る ペ ー パ ー レ ス 化 に と も な う 文 具 の 使 用 機 会 の 減 少 に 見 舞 わ れ て い る 。 そ の よ う な 環 境 の 中 で 、 な ぜ 筆 記 具 業 界 は 競 争 力 を 失 わ ず 、 ま た 上 記 2 社 の よ う な 高 収 益 企 業 が 存 在 す る の か と い う 問 題 意 識 を 持 つ に 至 っ た 。 そ こ で 、 筆 記 具 業 界 お よ び 業 界 内 企 業 研 究 を 通 じ て 検 証 し た 結 果 を 基 に 、 業 界 自 体 が 競 争 力 を 維 持 す る 要 因 、 お よ び 業 界 内 で 競 争 優 位 を 構 築 ・ 維 持 す る た め の 仮 説 を 構 築 し 、 戦 略 的 提 言 を 行 う こ と が 本 研 究 の 主 目 的 で あ る 。 さ ら に 、 導 か れ た 仮 説 の 一 般 化 可 能 性 を 検 討 す る こ と で 、 筆 記 具 業 界 の み な ら ず 、 他 の 業 界 に お い て も 日 本 の 製 造 業 が そ の 競 争 力 を 構 築 ・ 維 持 す る た め の 一 助 と す る こ と を 期 し て い る 。 目 的 の 解 明 の た め に 、4 つ の 要 因 す な わ ち 、 (1)国 の 競 争 優 位 (2 )業 界 構 造 (3)企 業 特 性 (4)企 業 の 戦 略 を 強 調 す る 。 (1)お よ び (2)は 業 界 全 体 に 働 く 力 で あ り 、Porter の 研 究( Porter, 1980 , 1990) で 用 い ら れ た フ レ ー ム ワ ー ク を 基 盤 に 分 析 し た 。 (3)、 (4)は 個 別 の 企 業 に 焦 点 を 当 て て 、 分 析 し た 。 本 研 究 の 構 成 は 以 下 の 通 り で あ る 。 Ⅰ 章 に お い て ま ず 、 本 研 究 の 動 機 お よ び 研 究 目 的 を 述 べ 、 我 が 国 の 歴 史 ・ 文 化 が 筆 記 具 業 界 に 及 ぼ し た 影 響 に つ い て 研 究 を 行 っ た 。 Ⅱ ~ Ⅲ 章 で は 筆 記 具 業 界 の 企 業 分 析 、 業 界 を 取 り 巻 く 市 場 環 境 の 分 析 を 行 い 、 日 本 の 筆 記 具 業 界 が 競 争 力 を 維 持 し て い る 要 因 に つ い て 分 析 を 行 っ た 。 Ⅳ 章 で は 企 業 の 戦 略 分 析 に 関 わ る 理 論 研 究 を 行 っ た 。 Ⅴ 章 で は 、 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト を 中 心 に 個 別 企 業 の 戦 略 に 焦 点 を 当 て て 分 析 を 行 っ た 。 上 述 し た 4 つ の 要 因 に つ い て 、 主 と し て Ⅰ 章 で (1)を 論 じ 、 Ⅱ ~ Ⅲ 章 で (2)、 (3)を 論 じ 、 Ⅴ 章 で (4)を 論 じ た 。 Ⅰ ~ Ⅴ 章 の 分 析 を 通 じ て 判 明 し た こ と は 、 以 下 の 通 り で あ る 。 日 本 の 筆 記 具 業 界 は 世 界 的 に 見 て も 研 究 開 発 が 盛 ん な 国 際 的 に 競 争 力 の あ る 業 界 で あ る こ と が 判 明 し 、 そ の 背 景 に は 日 本 の 文 化 、 国 民 性 が 筆 記 具 業 界 を 活 性 化 さ せ る こ と に 寄 与 し て お り 、 国 の 競 争 優 位 条 件 の 要 素 条 件 が 活 か さ れ て い る 業 界 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ の こ と が 日 本 に 多 く の 筆 記 具 製 造 業 がii 存 在 し て い る 要 因 と 言 え る 。 筆 記 具 業 界 内 企 業 に つ い て 、 各 社 の 財 務 情 報 お よ び 各 社 ホ ー ム ペ ー ジ (HP と 略 す ) 情 報 、 新 聞 等 の メ デ ィ ア に よ る 企 業 へ の 取 材 記 事 を 基 に 分 析 す る と 、 三 菱・パ イ ロ ッ ト は 好 業 績 を 維 持 し て い る の に 対 し 、コ ク ヨ 社( コ ク ヨ と 略 す ) や セ ー ラ ー 万 年 筆 社 ( セ ー ラ ー と 略 す ) の 業 績 は 相 対 的 に 低 か っ た 。 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト は 新 商 品 開 発 に 注 力 し 、 筆 記 具 の 構 成 比 率 を 年 々 高 め 、 筆 記 具 専 業 の 事 業 形 態 で 収 益 性 を 拡 大 し て い る の に 対 し 、 コ ク ヨ は 筆 記 具 開 発 を ほ と ん ど 行 っ て お ら ず 、セ ー ラ ー は 文 具 事 業 自 体 が 年 々 縮 小 し て い た 。コ ク ヨ ・ セ ー ラ ー は 他 事 業 も 手 掛 け て い る が 、 収 益 性 は コ ク ヨ ・ セ ー ラ ー の 各 文 具 関 連 事 業 と 同 等 以 下 で あ り 、 筆 記 具 事 業 へ の 注 力 度 合 い が 企 業 業 績 の 差 と し て 表 れ て い た 。特 に 三 菱 の ボ ー ル ペ ン「 ジ ェ ッ ト ス ト リ ー ム 」、シ ャ ー プ ペ ン シ ル「 ク ル ト ガ 」、パ イ ロ ッ ト の ボ ー ル ペ ン「 フ リ ク シ ョ ン ボ ー ル 」と い っ た 高 機 能 ・ 高 価 格 商 品 は 2 社 の 業 績 向 上 に 大 き く 貢 献 し て い る こ と が 推 定 さ れ た 。 筆 記 具 業 界 を 含 む 文 具 業 界 の 現 状 に つ い て 、 経 済 産 業 省 等 の 各 省 庁 が 公 開 し て い る 公 的 資 料 や 新 聞 等 の メ デ ィ ア の 取 材 記 事 を 基 に 分 析 す る と 、 少 子 化 は 進 ん で い る も の の 、 人 口 自 体 は 横 ば い 傾 向 で あ り 、 人 口 減 少 が 市 場 縮 小 要 因 で あ る こ と を 示 す 分 析 結 果 は 得 ら れ な か っ た 。 一 方 で 、 文 具 業 界 の 市 場 規 模 は 縮 小 し て い た 。バ ブ ル 崩 壊 に よ る 企 業 の 経 費 絞 込 み の 影 響 や IT 革 命 に よ る ペ ー パ ー レ ス 化 の 影 響 、 お よ び 流 通 革 命 に よ る 流 通 構 造 の 変 化 に よ り 、 流 通 サ イ ド か ら の 値 下 げ 圧 力 が 強 ま っ て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。 業 界 内 に は 企 業 向 け の 法 人 市 場 と 、 一 般 消 費 者 向 け の 店 頭 市 場 と い う 2 つ の 市 場 が 存 在 し 、 法 人 市 場 は 企 業 向 け 事 務 用 品 市 場 で あ る た め 、 コ ス ト が 優 先 さ れ 、 流 通 サ イ ド か ら の 値 下 げ 圧 力 が 激 し い の に 対 し 、 店 頭 市 場 は 個 人 の 好 み が 反 映 さ れ る た め 、 高 機 能 ・ 高 価 格 の 筆 記 具 が 受 け 入 れ ら れ る こ と が 判 明 し た 。 例 え ば 、 ボ ー ル ペ ン 1 本 当 た り の 単 価 上 昇 や 、 店 頭 市 場 の 拡 大 に つ い て は 、 経 済 産 業 省 や 総 務 省 の 公 的 デ ー タ を 精 査 す る こ と に よ り 判 明 し た 。 こ れ ら の 理 由 に つ い て 、国 内 の 高 機 能・高 価 格 筆 記 具 は 消 費 者 か ら 支 持 さ れ 、 商 品 の 単 価 上 昇 に 貢 献 し 、 海 外 の 安 価 な 商 品 を 市 場 か ら 排 除 し て 商 品 価 格 の 下 落 を 抑 制 し て い た こ と が 判 明 し 、 後 述 す る 仮 説(仮 説 -4)が 導 か れ た 。 ま た 、 筆 記 具 の 商 品 特 性 と し て 、 比 較 的 低 価 格 で あ り 、 消 費 者 は 価 格 差 よ り も 、 移 動 コ ス ト や 店 頭 で 好 き な 筆 記 具 を 選 ぶ と 言 っ た 別 の 価 値 を 優 先 し 、 価 格 競 争 に 制 約 が か か る こ と が 判 明 し た た め 、 後 述 の 仮 説(仮 説 -5 )が 導 か れ た 。 筆 記 具 業 界 に つ い て Porter の フ ァ イ ブ ・フ ォ ー ス 分 析 を 行 っ た 結 果 、 筆 記 具 業 界 は 業 界 構 造 的 に は 決 し て 恵 ま れ て お ら ず 、 特 に 法 人 市 場 は 店 頭 市 場 と 比 較
iii し て 厳 し い 環 境 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 筆 記 具 市 場 を 活 性 化 さ せ て い る の は 店 頭 市 場 に お け る 高 機 能 ・ 高 価 格 筆 記 具 で あ り 、高 機 能 ・ 高 価 格 筆 記 具 を 開 発 ・ 上 市 し て い る 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト を 利 す る よ う に 作 用 し て い た 。 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト の 戦 略 に つ い て 、 各 社 の HP 情 報 、 筆 者 が 実 施 し た 企 業 へ の 取 材 、 新 聞 等 メ デ ィ ア の 取 材 記 事 を 基 に 分 析 す る と 、 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト は 高 機 能 ・ 高 価 格 商 品 に よ り 商 品 の 差 別 化 戦 略 に 成 功 し て お り 、 そ れ を 可 能 と し た の は 高 い 商 品 開 発 力 を は じ め と し た 優 れ た バ リ ュ ー チ ェ ー ン で あ っ た 。 す な わ ち 、戦 略 面 ・ 経 営 資 源 面 で 優 れ て お り 、競 争 優 位(「 業 界 内 で 相 対 的 に 高 い 収 益 性 を 維 持 可 能 な 状 態 」 と 定 義 す る ) を 有 し て い た 。 Ⅵ 章 に お い て は 、 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト が 競 争 優 位 を 構 築 ・ 維 持 し て い る 要 因 と な る 競 争 優 位 仮 説 の 検 証 を 行 っ た 。検 証 に は 以 下 に 述 べ る V ・C フ ロ ン テ ィ ア を 用 い た 。 V ・C フ ロ ン テ ィ ア の 説 明 の 前 に 、V ・C フ ロ ン テ ィ ア で 用 い る V,C,P の 概 念 に つ い て 説 明 す る 。顧 客 に と っ て の 商 品 価 値 を V (あ る 商 品 に 対 す る 顧 客 の 商 品 価 値 の 総 和)、 商 品 の 提 供 者 の コ ス ト を C (あ る 商 品 を 提 供 す る た め の コ ス ト )、 売 上 額(販 売 価 格 と 販 売 数 量 の 積 )を P と す る と き 、 (V - P)は 顧 客 の 利 益 の 総 和 で あ り 、(P- C )は 商 品 の 提 供 者 の 利 益 の 総 和 と 見 な す こ と が 出 来 る 。 ま た 、 (V - C )は 社 会 で 生 み 出 さ れ る 利 益 の 総 和 で あ る 正 味 価 値 (B)で あ る 。 本 研 究 で は V,C,P の 概 念 は 会 計 学 上 の 概 念 を 採 用 し て い る が 、 需 要 曲 線 と 供 給 曲 線 を 用 い て 経 済 学 の 概 念 で の 解 釈 を 試 み る と 、 会 計 上 の 利 益 と 経 済 学 上 の 利 潤 の 概 念 の 違 い は あ る も の の 、 顧 客 の 利 益 で あ る(V - P) は 「 消 費 者 余 剰 」、 商 品 の 提 供 者 の 利 益 で あ る(P- C )は「 生 産 者 余 剰 」と 定 義 す る こ と で 解 釈 し た 。 V ・C フ ロ ン テ ィ ア と は 、あ る コ ス ト で 提 供 さ れ る V の 中 で 最 大 の も の を つ な げ た 曲 線 の こ と を 示 す ( あ る V を 提 供 す る に 必 要 な C の 中 で 最 も 低 い C を つ な げ た 曲 線 で も よ い )。 競 争 優 位 仮 説 と は 、 こ の V ・C フ ロ ン テ ィ ア を 超 え た ポ ジ シ ョ ン HR( ハ イ レ ン ジ )・ フ ロ ン テ ィ ア ポ イ ン ト に 到 達 す る こ と に よ り 、企 業 は 競 争 優 位 を 得 る と い う 考 え 方 で あ る ( 矢 作 恒 雄, 講 義 ノ ー ト 2011,2012,2013,2014,2015,2016 年 度 版 )。 現 在 の V ・C フ ロ ン テ ィ ア 上 の ポ イ ン ト を 越 え 、 ト レ ー ド オ フ な く V の 増 大 や C の 低 減 を 可 能 と す る 力 を 本 研 究 で は イ ノ ベ ー シ ョ ン と 定 義 す る 。 V ・C フ ロ ン テ ィ ア を 経 済 学 的 概 念 で の 解 釈 を 試 み る と 、 イ ノ ベ ー シ ョ ン が 興 る と 、 完 全 競 争 を 前 提 と し た 需 要 曲 線 と 供 給 曲 線 の 前 提 が 崩 れ 、 独 占 状 態 に 移
iv 行 す る 。V ・ C フ ロ ン テ ィ ア の 概 念 は 独 占 の 理 論 か ら も 解 釈 す る こ と が 出 来 た 。 イ ノ ベ ー シ ョ ン は ト レ ー ド オ フ な く V を 増 加 さ せ た り C を 低 下 さ せ た り す る 力 で あ る た め 、 イ ノ ベ ー シ ョ ン に 成 功 し た 商 品 の(V - C ) は 大 き い は ず で あ る 。 そ こ で 、 ア ン ケ ー ト 調 査 を 実 施 し 、 実 際 に イ ノ ベ ー シ ョ ン を 興 し た と 推 測 さ れ る 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト の 商 品 を サ ン プ ル に V の 定 量 化 を 行 っ た 。 V は 顧 客 の 商 品 価 値 の 総 和 で あ る が 、ア ン ケ ー ト か ら 得 ら れ る 1 個 人 の 商 品 価 値 Viの 総 和 が V で あ る 。Vi の 平 均 値 か ら 顧 客 の 購 入 金 額 Piの 平 均 値 を 引 い た も の に 、商 品 の 販 売 数 量 を 乗 じ る こ と に よ り 、 顧 客 の 利 益(V - P)と な る 。 ま た 、 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト の 財 務 情 報 、HP 情 報 、メ デ ィ ア の 取 材 記 事 に よ り 、C の 低 下 に 焦 点 を あ て 、 提 供 者 の 利 益(P - C ) を 推 定 し た 。 そ し て 正 味 価 値 で あ る B {= (V - C )} の 推 定 を 行 っ た 。 検 証 の 結 果 、 こ れ ら の 商 品 の(V- C )は 大 き く 、 イ ノ ベ ー シ ョ ン に 成 功 し 競 争 優 位 性 を 獲 得 し て い た 。 そ の こ と が 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト の 好 業 績 の 源 で あ る こ と が 検 証 出 来 た 。 Ⅶ 章 に お い て は 、V を 高 め る 要 因 を 明 ら か に す べ く Vr( 重 回 帰 分 析 か ら 得 ら れ た 顧 客 価 値 ) を 被 説 明 変 数 、 商 品 に 関 す る 設 問 内 容 を 説 明 変 数 と し た 回 帰 分 析 を 行 い 、Vi を 高 め る 決 定 要 因 を 分 析 し た 。 回 帰 モ デ ル の 説 明 力 を 高 め る た め 、 異 常 値 を 除 外 し 、 調 査 対 象 の 4 つ の 筆 記 具 商 品 を 変 数 化 し た 上 で 、 統 計 的 に 有 意 な 主 要 変 数 を 用 い た 統 一 基 本 モ デ ル を 構 築 し た 。説 明 力 を 示 す 自 由 度 調 整 済 み 決 定 係 数(adjR2)は 0.230 で あ っ た 。 Vi を 高 め る 要 因 に つ い て 分 析 し た と こ ろ 、 性 別 、 商 品 へ の 嗜 好 等 、Vi を 高 め る 要 因 を 特 定 で き た 。商 品 に よ っ て は 、使 用 を 通 じ て Vi が 高 ま る 場 合 と 、流 行 等 の ネ ッ ト ワ ー ク の 外 部 性 に よ り Vi が 高 ま る こ と が 明 ら か と な っ た 。 Ⅵ 章 、 Ⅶ 章 を 通 じ て 競 争 優 位 仮 説 と し て 3 つ の 仮 説 ( 下 記 の 仮 説 -1~ 3) が 導 か れ 、 先 に 述 べ た 2 つ の 仮 説 と 併 せ 、 下 記 の 5 つ の 仮 説 が 導 か れ た 。 仮 説-1 競 争 優 位 の 持 続 と は 、V ・C フ ロ ン テ ィ ア を 超 え 、 フ ロ ン テ ィ ア の 外 側 に ポ ジ シ ョ ン を 移 し 続 け る こ と で あ り 、 そ れ を 可 能 に す る 手 段 は イ ノ ベ ー シ ョ ン に 他 な ら な い 。 仮 説-2 イ ノ ベ ー シ ョ ン の 継 続 に よ り V を 向 上 さ せ 、 C を 下 げ 、 利 益 が 蓄 積 さ れ る 。 利 益 の 再 投 資 に よ り さ ら な る イ ノ ベ ー シ ョ ン が 持 続 さ れ 、 よ り 優 位 な ポ ジ シ ョ ン を 築 く 。
v 仮 説-3 消 費 者 の 認 知 す る V は 下 記 の 2 種 類 の 高 ま り 方 が あ る 。 (1) 商 品 の 使 用 体 験 を 通 じ て 、 着 実 に 維 持 、 も し く は よ り 高 ま る 場 合 企 業 の 持 続 可 能 な 競 争 力 の 源 と な る 商 品 で あ る 。 し た が っ て 、V を 高 め 続 け ら れ る 技 術 活 動 の 維 持 が 不 可 欠 で あ る 。 (2) 流 行 等 の ネ ッ ト ワ ー ク の 外 部 性 ( ユ ー ザ ー 数 が 商 品 の 価 値 そ の も の と な る 状 況 ) が 心 理 的 に 影 響 を 与 え 、V が 高 ま る 場 合 常 に 流 行 を 創 り 、 そ れ を 持 続 さ せ ら れ る よ う な マ ー ケ テ ィ ン グ 活 動 が と り わ け 重 要 と な る 。 仮 説-4 顧 客 に 支 持 さ れ た 高 機 能 ・ 高 価 格 商 品 は 商 品 単 価 の 上 昇 を 促 し 、 安 価 な 低 品 質 の 商 品 を 市 場 か ら 排 除 し 、 我 が 国 の 業 界 の グ ロ ー バ ル 市 場 に お け る 競 争 力 を 維 持 す る 。 仮 説-5 価 格 と 消 費 者 の 移 動 コ ス ト の 関 係 ( 値 下 げ の 効 果 が 発 揮 さ れ る 基 準 ) が 価 格 下 落 の 抑 制 要 因 と な る 。 下 式 を 満 た す 場 合 ( 消 費 者 の 移 動 コ ス ト 以 上 の 価 格 差 が あ る 場 合 ) の み 、 価 格 差 が 購 入 の 意 思 決 定 基 準 と な る 。 す な わ ち 、 低 価 格 品 で は 、 値 下 げ の 効 果 は 限 定 的 で あ る 。 商 品 価 格 の 値 下 げ に よ る 集 客 が 見 込 め る 条 件 式 Cm<(P1- P2) Cm :消 費 者 の 移 動 コ ス ト P1:移 動 せ ず に 購 入 可 能 な 商 品 の 価 格 P2:移 動 に よ り 購 入 可 能 と な る 商 品 の 価 格 Ⅷ 章 で は 、 他 業 界 で も 同 じ こ と が あ る か 、 他 業 界 の 商 品 で 仮 説 の 一 般 化 可 能 性 を 検 証 し た が 、 適 合 が 見 ら れ る 事 例 が 確 認 で き た 。 Ⅸ 章 で は 本 研 究 の 結 論 を 論 じ 、 導 か れ た 仮 説 に 基 づ き 、 下 記 の 戦 略 的 提 言 を 行 っ た 。 1. イ ノ ベ ー シ ョ ン を 興 す 競 争 優 位 を 得 る サ イ ク ル を 継 続 さ せ る た め の 戦 略 策 定 が 重 要 で あ る 。 2. 顧 客 価 値 V を 高 め 、 維 持 す る 活 動 顧 客 の V を 高 め 、維 持 す る 活 動 が 重 要 で あ る 。 持 続 的 競 争 優 位 維 持 の た め
vi の 仮 説 と し て 、「 最 強 商 品 力 フ ロ ン テ ィ ア 」 の 概 念 を 提 案 す る 。 3. 自 社 の 商 品 価 値 の 向 上 と 商 品 特 性 の 理 解 高 品 質 の 商 品 の 継 続 的 提 供 は V を 高 め る 。 ま た 、 商 品 特 性 の 理 解 に よ り 、 過 度 な 価 格 競 争 を 抑 制 可 能 な 場 合 が あ る 。 Ⅹ 章 に お い て 、 本 研 究 の 意 義 に つ い て 検 討 し た 。 本 研 究 に お け る 最 大 の 理 論 的 貢 献 は 顧 客 価 値 V の 定 量 化 を 可 能 と し 、V を 高 め る 行 動 指 針 を 具 体 的 に 示 せ た こ と と 言 え る 。 一 方 、 今 後 の 課 題 と し て 、 統 計 モ デ ル の 説 明 力 を 挙 げ た 。 最 適 な 変 数 を 選 定 す る こ と に よ り 、 説 明 力 の 向 上 は 可 能 と 言 え る 。 研 究 上 の 限 界 と し て 、 本 研 究 の 適 用 範 囲 に つ い て 述 べ た 。 本 研 究 は 一 般 消 費 者 向 け の BtoC モ デ ル に お い て で あ り 、 企 業 向 け の BtoB ビ ジ ネ ス へ の 適 用 が 困 難 な こ と 、 お よ び BtoC ビ ジ ネ ス に お い て も 仮 説 の 一 般 化 に お い て は 今 後 の さ ら な る 検 証 が 必 要 で あ る こ と を 述 べ た 。 仮 説 に 基 づ く 提 言 は 短 期 で 実 践 可 能 な も の ば か り で は な い 。 し か し 、 こ れ を 中 長 期 的 な 企 業 活 動 の 指 針 と し て 捉 え れ ば 、 企 業 の 競 争 優 位 の 持 続 に 寄 与 す る と 考 え る 。
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目 次
Ⅰ 章 本 研 究 の 動 機 と 背 景 分 析
1. は じ め に ... ... ... p .1 2. 戦 前 戦 後 の 筆 記 具 業 界 の 歩 み ( 戦 前 ~ 1980 年 代 ) ... p .9 3. バ ブ ル 崩 壊 後 の 筆 記 具 業 界 の 商 品 開 発 の 歩 み ( 1990 年 代 ~ 現 在 ) .. .p.11 4. 日 本 の 筆 記 具 業 界 の 国 の 優 位 ... ... p .12 5. ま と め (検 証 結 果 - 1、 国 の 優 位 の 検 証 ) ... ... p .21Ⅱ 章 筆 記 具 業 界 、 企 業 の 現 状 分 析
1. 筆 記 具 業 界 ... ... ... p .24 2. 国 内 企 業 4 社 の 分 析 ... ... .... p .24Ⅲ 章 筆 記 具 業 界 を 取 り 巻 く 環 境 の 分 析
1. バ ブ ル 崩 壊 前 の マ ク ロ 経 済 環 境 が 文 具 業 界 に 与 え た 影 響 ... p .42 2. 1970 年 代 ~ 2000 年 代 の 文 具 業 界 ... ... p .43 3. 1990 年 代 以 降 の 大 き な 変 化 - パ ラ ダ イ ム シ フ ト - ... p .46 4. パ ラ ダ イ ム シ フ ト の 渦 中 の 海 外 動 向 ... ... p .52 5. 国 内 市 場 の 環 境 変 化 ... ... .... p .54 6. 筆 記 具 を 取 り 巻 く 流 通 構 造 と 価 格 へ の 影 響 ... .... p .61 7. 海 外 市 場 ... ... ... p .63 8. 筆 記 具 業 界 構 造 の 分 析 ... ... . p .70 9. ま と め (業 界 仮 説 - 1、 -2) ... ... p .72Ⅳ 章 理 論 研 究
1. 企 業 の 境 界 ... ... ... p .76 2. 市 場 環 境 ... ... ... p .79 3. 企 業 戦 略 ... ... ... p .81 4. 内 部 組 織 と 外 部 環 境 へ の 適 応 ... ... p .87Ⅴ 章 日 本 の 筆 記 具 業 界 に お け る 戦 略 の 分 析
1. 筆 記 具 業 界 内 の 競 争 優 位 企 業 に つ い て ... ... p .90 2. 筆 記 具 業 界 企 業 の 戦 略 に つ い て ... ... p .91 3. 各 企 業 の 競 争 戦 略 と 業 界 の 興 亡 に つ い て ... ... p .107viii 4. ま と め (検 証 結 果 - 2、 検 証 結 果 -3) ... ... p .108
Ⅵ 章 競 争 優 位 仮 説
1. こ れ ま で の 検 証 結 果 ... ... .. p .110 2. V ・C フ ロ ン テ ィ ア ... ... ... p .111 3. 競 争 優 位 仮 説 の 検 証 ... ... .. p .125 4. ま と め (競 争 優 位 仮 説 -1、 競 争 優 位 仮 説 -2) ... .... p .144Ⅶ 章 価 値 V の 重 回 帰 モ デ ル 構 築 と 分 析
1. 回 帰 モ デ ル の 説 明 力 の 検 討 ... ... p .145 2. 統 一 基 本 モ デ ル ( =回 帰 モ デ ル 3-2) を 用 い た 商 品 別 分 析 ... p .150 3. ク ル ト ガ の V の 分 析 ... ... . p .154 4. 主 要 変 数 の 分 析 ... ... ... p .158 5. V を 高 め る 商 品 提 案 に つ い て ... ... p .163 6. ま と め (競 争 優 位 仮 説 -3) ... ... p .165Ⅷ 章 本 研 究 で 構 築 し た 仮 説 の 他 業 界 へ の 適 用 可 能 性
1. 筆 記 具 業 界 の 分 析 に よ り 導 か れ た 検 証 結 果 と 競 争 優 位 仮 説 ... p .166 2. 仮 説 の 一 般 化 可 能 性 の 確 認 ... ... p .167 3. 仮 説 -1,仮 説 -2,仮 説 -3( 競 争 優 位 仮 説 ) の 一 般 化 可 能 性 の 検 証 ... p .167 4. 仮 説 -4、 仮 説 -5 の 他 業 界 検 証 ... ... p .183Ⅸ 章 結 論
1. 本 研 究 の 結 論 ... ... ... p .186 2. 戦 略 的 提 言 ... ... ... p .187Ⅹ 章 本 研 究 の 意 義
1. 本 研 究 の 意 義 ... ... ... p .192 2. 本 研 究 に お い て 導 か れ た 仮 説 と 残 さ れ た 課 題 ... p .193 3. あ と が き 日 本 の 製 造 業 の 未 来 ... ... p .194謝 辞
参 考 文 献
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添 付 資 料
1. 付 属 資 料 1-1~ 1-7 ア ン ケ ー ト 調 査 資 料 : 筆 記 具 調 査 2. 付 属 資 料 2-1~ 2-11 3. 付 属 資 料 3-1~ 3-9 ア ン ケ ー ト 調 査 資 料 : 他 業 界 調 査 4. 付 属 資 料 4-1~ 4-4 5. ア ン ケ ー ト 1 楽 天 リ サ ー チ あ な た ご 自 身 に 関 す る ア ン ケ ー ト:筆 記 具 6. ア ン ケ ー ト 2 楽 天 リ サ ー チ あ な た ご 自 身 に 関 す る ア ン ケ ー ト ・SK-Ⅱ FTE ( フ ェ イ シ ャ ル ト リ ー ト メ ン ト エ ッ セ ン ス ) ・ ク ロ ッ ク ス ク ロ ッ ク バ ン ド 2.5・ バ ル ミ ュ ー ダ Gre en Fan Japan ・ 花 王 ヘ ル シ ア コ ー ヒ ー
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図 表
図 1-1 筆 記 具 出 荷 金 額 シ ェ ア ( 2014 年 ) ... ... p .4 図 1-2 筆 記 具 主 要 3 商 品 の 出 荷 金 額 お よ び 輸 出 入 金 額 (2014 年 ) ... p .5 図 1-3 筆 記 具 主 要 3 商 品 の 出 荷 数 量 お よ び 輸 出 入 数 量 (2014 年 ) ... p .5 図 1-4 国 内 市 場 に お け る 国 内 製 商 品 の 構 成 と 海 外 向 け 出 荷 金 額 ... p .6 図 1-5 2006 年 筆 記 具 市 場 シ ェ ア ... ... p .7 図 1-6 主 要 筆 記 具 の メ ー カ ー 別 売 上 高 ( 2013 年 度 ) ... p .7 図 1-7 筆 記 具 主 要 3 商 品 の メ ー カ ー 別 市 場 シ ェ ア ... p .8 図 1-8 文 具 関 連 上 場 4 社 の 業 績 推 移 ... ... p .22 図 2-1 三 菱 ( 単 体 ) の 主 要 商 品 の 売 り 上 げ 構 成 比 ( 2014 年 ) ... p .25 図 2-2 三 菱 の 業 績 推 移 2 ... ... p .26 図 2-3 三 菱 の 業 績 推 移 3 ... ... p .26 図 2-4 パ イ ロ ッ ト ( 単 体 ) の 2009 年 度 の 商 品 別 売 上 構 成 比 ... p .30 図 2-5 パ イ ロ ッ ト の 業 績 推 移 2 ... ... p .31 図 2-6 コ ク ヨ の 業 績 推 移 2 ... ... p .34 図 2-7 セ ー ラ ー の 業 績 推 移 2 ... ... p .37 図 2-8 セ ー ラ ー の 自 社 製 商 品 の 商 品 別 売 り 上 げ 構 成 比 (2013 年 ) ... p .38 図 2-9 セ ー ラ ー の 事 業 別 売 上 高 の 推 移 ... ... p .39 図 3-1 一 人 当 た り 国 民 所 得 の 推 移 ... ... p .42 図 3-2 日 本 の 総 人 口 と 15 歳 未 満 人 口 の 推 移 ... . p .43 図 3-3 紙 ・ 文 房 具 小 売 業 の 年 間 商 品 販 売 額 推 移 ( 2014 年 CPI 基 準 ) ... ... ... p .45 図 3-4 大 店 法 の 届 け 出 状 況 ... ... p .47 図 3-5 文 房 具 、 ボ ー ル ペ ン の 全 国 の CPI 推 移 ( 2010 年 基 準 ) ... p .48 図 3-6 ア ス ク ル の 業 績 推 移 ... ... p .50 図 3-7 ボ ー ル ペ ン の 輸 出 金 額 推 移 ... ... p .53 図 3-8 国 内 文 具 市 場 規 模 推 移 ... ... p .54 図 3-9 ボ ー ル ペ ン の 市 場 規 模 推 移 ... ... p .55 図 3-10 商 品 1 本 当 た り の 出 荷 金 額 指 数 の 推 移 ... p .56 図 3-11 文 房 具 類 の 1 世 帯 当 た り 年 間 支 出 金 額 (総 世 帯 ) ... p .56 図 3-12 文 房 具 類 の 1 世 帯 当 た り 年 間 支 出 金 額 ( 総 勤 労 者 世 帯 ) .... p .57 図 3-13 ボ ー ル ペ ン 出 荷 金 額 お よ び 輸 出 入 金 額 の 推 移 ... p .59 図 3-14 ボ ー ル ペ ン 出 荷 数 量 お よ び 輸 出 入 数 量 の 推 移 ... p .59xi 図 3-15 2014 年 の 消 費 者 向 け 筆 記 具 世 界 市 場 の 企 業 別 シ ェ ア ... p .64 図 3-16 一 般 消 費 者 向 け 筆 記 具 市 場 の 企 業 別 シ ェ ア 世 界 上 位 10 社 .. p .65 図 3-17 世 界 の 筆 記 具 市 場 の 成 長 推 移 ... ... p .66 図 3-18 商 品 1 本 当 た り の 出 荷 金 額 お よ び 輸 出 入 金 額 ... p .68 図 4-1 Porter の バ リ ュ ー チ ェ ー ン ... ... p .83 図 4-2 カ ラ ー フ ィ ル ム の 総 需 要 の 推 移 ... ... p .89 図 5-1 水 性 ・ 油 性 ボ ー ル ペ ン の 1 本 当 た り 出 荷 金 額 推 移 ... p .94 図 5-2 ス マ イ ル カ ー ブ の 概 念 図 ... ... p .99 図 5-3 筆 記 具 メ ー カ ー 4 社 の 商 品 力 比 率 の 推 移 ... p .104 図 5-4 三 菱 の 研 究 開 発 費 の 推 移 ... ... p .106 図 6-1 V,C,P の 概 念 図 ... ... p .114 図 6-2 完 全 競 争 状 態 に お け る 需 要 曲 線 と 供 給 曲 線 1 ... p .115 図 6-3 V ・C フ ロ ン テ ィ ア ... ... p .116 図 6-4 完 全 競 争 状 態 に お け る 需 要 曲 線 と 供 給 曲 線 2 ... p .118 図 6-5 完 全 競 争 状 態 に お け る 需 要 曲 線 と 供 給 曲 線 3 ... p .118 図 6-6 V ・C フ ロ ン テ ィ ア と イ ノ ベ ー シ ョ ン 1... p .120 図 6-7 V ・C フ ロ ン テ ィ ア と イ ノ ベ ー シ ョ ン 2... p .121 図 6-8 完 全 競 争 状 態 に お け る 需 要 曲 線 と 供 給 曲 線 4 ... p .122 図 6-9 独 占 市 場 に お け る 需 要 と 価 格 ... ... p .123 図 6-10 商 品 の 使 用 実 態 ... ... p .128 図 6-11 商 品 の 使 用 実 態 ( 補 正 後 ) ... ... p .129 図 6-12 推 定 対 象 グ ル ー プ の「 現 在 使 用 中 」の {Vi(ave .*)- Pi(ave. )} p .133 図 6-13 Vi の 推 定 対 象 グ ル ー プ の 商 品 の 使 用 実 態 別 の Vi(ave.*) .... p .136 図 6-14 上 場 企 業 4 社 の 売 上 総 利 益 率 ・ 営 業 利 益 率 推 移 ... p .141 図 7-1 ク ル ト ガ の 年 代 ・ 性 別 毎 の 使 用 率 ... .... p .155 図 8-1 商 品 の 使 用 実 態 ... ... p .169 図 8-2 商 品 使 用 者 の {Vi(ave.* )- Pi(a ve .)} ... ... p .172 図 8-3 商 品 使 用 者 中 再 購 入 希 望 者 の {Vi(ave.*)- Pi(ave .)} ... p .173 図 8-4 商 品 の 使 用 実 態 別 の Vi(ave.*) ... ... p .174 図 9-1 最 強 商 品 力 フ ロ ン テ ィ ア の 概 念 図 ... .... p .190 表 1-1 パ イ ロ ッ ト セ グ メ ン ト ( 地 域 ) 別 売 上 高 ( 2014 年 ) ... p .2 表 1-2 日 本 筆 記 具 工 業 会 概 要 ... ... p .18
xii 表 1-3 ペ ン ・ 鉛 筆 ・ 絵 画 用 品 ・ そ の 他 の 事 務 用 品 製 造 業 ... p .20 表 1-4 文 具 関 連 上 場 企 業 4 社 の 業 績 推 移 ... ... p .22 表 1-5 日 経 MJ ヒ ッ ト 商 品 番 付 ( 文 具 ・ 筆 記 具 を 抜 粋 ) ... p .23 表 2-1 三 菱 の 業 績 推 移 1 ... ... p .25 表 2-2 パ イ ロ ッ ト の 業 績 推 移 1 ... ... p .31 表 2-3 コ ク ヨ の 業 績 推 移 1 ... ... p .34 表 2-4 2014 年 12 月 期 コ ク ヨ セ グ メ ン ト 別 業 績 ... p .35 表 2-5 コ ク ヨ の 事 業 の 系 統 図 ... ... p .36 表 2-6 セ ー ラ ー の 業 績 推 移 1 ... ... p .37 表 2-7 2014 年 12 月 期 セ ー ラ ー の 事 業 セ グ メ ン ト 別 業 績 ... p .38 表 2-8 筆 記 具 上 場 4 社 事 業 別 収 益 性 比 較 ... .. p .40 表 2-9 筆 記 具 上 場 4 社 の 財 務 状 況 ( 2003 年 度 と 2014 年 度 の 実 績 比 較 ) ... ... ... p .41 表 3-1 紙 ・ 文 房 具 小 売 業 の 年 次 別 事 業 所 数 、 従 業 者 数 、 年 間 商 品 販 売 額 、 売 り 場 面 積 の 推 移 .. p .44 表 3-2 日 本 貿 易 の 変 化 ... ... p .53 表 3-3 ニ ュ ー ウ ェ ル の Office Product ( Writing)部 門
お よ び ビ ッ ク の Stat ionery 部 門 の 業 績 推 移 ... p .67 表 4-1 VRIO フ レ ー ム ワ ー ク と 企 業 の 強 み ・ 弱 み と の 関 係 ... p .85 表 5-1 日 本 企 業 の 売 上 高 営 業 利 益 率 推 移 ... ... p .90 表 5-2 筆 記 具 業 界 内 企 業 の 収 益 性 ... ... p .91 表 5-3 2014 年 12 月 期 業 績 お よ び 商 品 力 ( 比 率 ) 比 較 ... p .103 表 6-1 図 6-8 中 の V,P,C 等 の 変 化 ... ... p .123 表 6-2 各 商 品 の Vi の 推 定 結 果 ... ... p .131 表 6-3 購 入 金 額 回 答 者 ... ... p .133 表 6-4 Vi の 推 定 値 の 信 頼 性 ... ... p .134 表 6-5 {Vi-Pi(ave . )}≧ 0 の 条 件 を 満 た す 回 答 者 比 率 ... p .134 表 6-6 購 入 金 額 の 回 答 内 容 別 Vi(ave*) ... ... p .135 表 6-7 図 6-13 中 の 各 Vi(ave.*)の 回 答 者 数 ... . p .136 表 6-8 商 品 の 推 定 販 売 金 額 1 ... ... p .142 表 6-9 商 品 の 推 定 販 売 金 額 2 ... ... p .142 表 6-10 新 商 品 の 業 績 へ の 寄 与 ... ... p .143 表 7-1 商 品 の 重 回 帰 分 析 結 果 1 ... ... p .147 表 7-2 商 品 の 重 回 帰 分 析 結 果 2【 異 常 値 除 外 】 ... p .148
xiii 表 7-3 統 一 モ デ ル 推 定 結 果 ... ... p .149 表 7-4 説 明 変 数 の 相 関 係 数 ... ... p .149 表 7-5 統 一 基 本 モ デ ル よ り グ ル ー プ 化 し た 商 品 別 の Vrの 推 定 値 .. p .151 表 7-6 グ ル ー プ 毎 の Vi(ave.*)と 統 一 基 本 モ デ ル か ら 得 ら れ た 推 定 値 Vr( 表 7-5 の Vr) と の 比 較 結 果 .. p .152 表 7-7 ク ル ト ガ 以 外 の 3 商 品 と ク ル ト ガ の 回 帰 モ デ ル ... p .153 表 7-8 ク ル ト ガ の { Vi(ave.*)- Pi(ave .) } の 再 検 証 結 果 ... p .155 表 7-9 ク ル ト ガ 使 用 者 の Vi(ave.*) ... ... p .156 表 7-10 ク ル ト ガ 使 用 者 の Viの 順 位 和 検 定 結 果 ... p .156 表 7-11 「 商 品 が 欲 し い 」 の 変 数 を 除 外 し た 統 一 モ デ ル ... p .162 表 7-12 Vrの 主 要 変 数 と そ の 性 質 ... ... p .164 表 8-1 各 商 品 の Vi の 推 定 結 果 ... ... p .171 表 8-2 図 8-4 中 の 各 Vi(ave*)の 回 答 者 数 ... .... p .174 表 8-3 商 品 の 重 回 帰 分 析 結 果 1 ... ... p .177 表 8-4 商 品 の 重 回 帰 分 析 結 果 2 ... ... p .178 表 8-5 商 品 の 重 回 帰 分 析 結 果 3 ... ... p .179 表 8-6 仮 説 -1 ~仮 説 -3 の 検 証 結 果 ... ... p .181
1
Ⅰ 章 本 研 究 の 動 機 と 背 景 分 析
1. は じ め に
1.1 研 究 の 動 機 と 目 的 筆 記 具 メ ー カ ー で あ る 三 菱 鉛 筆 社 ( 三 菱 と 略 す ) の ホ ー ム ペ ー ジ (HP と 略 す ) の 財 務 資 料 を 見 る と 、 売 上 高 経 常 利 益 率 は 2010 年 度 に 10%を 超 え 、 2014 年 度 に 至 っ て は 15%を 超 え て い る1。ま た 、パ イ ロ ッ ト コ ー ポ レ ー シ ョ ン 社( パ イ ロ ッ ト と 略 す ) の ホ ー ム ペ ー ジ の 財 務 資 料 を 見 る と 、 売 上 高 経 常 利 益 率 は 2013 年 度 に 10%を 超 え 、 2014 年 度 は 三 菱 同 様 15%を 超 え て い る2。 筆 者 自 身 、 筆 記 具 業 界 に 身 を 置 き 20 年 が 経 過 す る が 、 近 年 の 両 社 の 業 績 は 過 去 に 例 の な い 高 い 業 績 と 言 え る 。法 人 企 業 統 計 に よ る と 、2014 年 の 製 造 業 の 売 上 高 営 業 利 益 率 は 4.2%3で あ り 、 両 社 の 業 績 は 明 ら か に 高 い 水 準 で あ る 。 営 業 利 益 率 10% 以 上 の 企 業 を「 高 収 益 」企 業 と 定 義 す る と 、三 菱 、パ イ ロ ッ ト は 明 ら か な 高 収 益 企 業 で あ る 。 両 社 の 属 す る 筆 記 具 業 界 を 含 む 国 内 文 具 業 界 は デ ジ タ ル 化 の 進 展 に よ る ペ ー パ ー レ ス 化 、 そ れ に と も な う 文 具 の 使 用 機 会 の 減 少 や 少 子 高 齢 化 、 人 口 減 少 問 題 が 顕 在 化 し 、 文 具 使 用 者 の 減 少 に 見 舞 わ れ て い る 。 少 な く と も 日 本 国 内 に お い て は 文 具 の 市 場 規 模 は 年 々 縮 小 を 続 け 、「 衰 退 業 界 」と 位 置 付 け ら れ る 業 界 で あ っ た 。Porter は 「『 衰 退 業 界 』 と は 長 期 に 渡 っ て 販 売 数 量 そ の も の が 下 降 を 続 け て い る 業 界 (Porter,1980)」 と 定 義 し て い る が 、 バ ブ ル 崩 壊 後4の 1990 年 代 前 半 以 降 の 文 具 業 界 は ま さ に こ の 状 況 で あ っ た 。 一 方 で 、 詳 細 は 本 章 次 節 で 述 べ る が 、 財 務 省 の 貿 易 統 計 に よ る 筆 記 具 の 輸 出 入 金 額 お よ び 、 経 済 産 業 省 の 生 産 動 態 統 計 年 報 に よ る 筆 記 具 の 出 荷 金 額 に よ る デ ー タ を 整 理 す る と 、 ボ ー ル ペ ン ・ マ ー キ ン グ ペ ン 等 、 筆 記 具 の 主 要 商 品 ( 商 品 の 語 の 扱 い に つ い て 、 注5参 照 ) に つ い て は 、国 内 か ら の 出 荷 金 額 の 内 、約 半 分 が 輸 出 で あ り 、 一 方 、 海 外 か ら の 輸 入 金 額 は 国 内 向 け 出 荷 金 額 の 1/5 程 度 で あ る6 , 7。 民 間 調 査 会 社 の 調 査 で は 筆 記 具 の 国 内 販 売 シ ェ ア は 国 内 企 業 で 占 有 さ れ て い る8 , 9。 こ れ ら の デ ー タ よ り 、 国 内 の 筆 記 具 メ ー カ ー は 国 内 外 で 競 争 力 を 維 持 し て い る こ と が 推 定 可 能 で あ る 。 国 内 企 業 の 海 外 現 地 生 産・直 接 販 売 活 動 の 実 態 を 示 す 詳 細 な デ ー タ は 無 い が 、 そ れ を 考 慮 に 入 れ な く て も 国 際 的 に 競 争 力 が あ る と 推 測 さ れ る が 、 例 え ば 、 表 1-1 に 示 す パ イ ロ ッ ト の 2014 年 有 価 証 券 報 告 書 の 地 域 別 セ グ メ ン ト 売 上 を 分 析 す る と 、 以 下 の 情 報 が わ か る 。2 表 1-1 パ イ ロ ッ ト セ グ メ ン ト ( 地 域 ) 別 売 上 高 ( 2014 年 ) 出 所 : パ イ ロ ッ ト HP『 有 価 証 券 報 告 書 ( 2014 年 )』1 0を 基 に 作 成 日 本 か ら パ イ ロ ッ ト グ ル ー プ の 他 地 域( 海 外 )に 販 売 し た 金 額( 内 部 取 引 額 ) が 約 276 億 円 で あ る の に 対 し 、パ イ ロ ッ ト グ ル ー プ 海 外 地 域 か ら 外 部 顧 客 へ の 売 上 高 が 4 つ の 地 域 合 計 で 約 518 億 円 あ る 。海 外 法 人 は 日 本 か ら の 輸 入 分 に 利 益 を 乗 せ て 販 売 す る わ け で あ る が 、 日 本 か ら の 輸 入 額 の 約 1.9 倍 の 販 売 金 額 は マ ー ジ ン が 過 大 で あ る 。 そ こ で 、 日 本 か ら 輸 入 し た 商 品 の 販 売 分 以 外 を 現 地 の 生 産 ・ 販 売 実 績 と す る と 、 国 内 か ら の 輸 出 金 額 以 上 に 日 本 の 筆 記 具 メ ー カ ー は 海 外 で 商 品 を 販 売 し て い る と 考 え ら れ る 。 他 方 、両 社 の 属 す る 筆 記 具 業 界 を 含 む 文 具 業 界 は 、例 え ば 商 業 統 計 に よ る 紙 ・ 文 房 具 小 売 業 の 販 売 金 額 は 年 々 縮 小1 1を 続 け て お り 、 文 具 業 界 は ま さ に 衰 退 業 界(Porter, 1980)と 言 え る 。業 界 の 衰 退 要 因 と し て 人 口 減 少 、と り わ け 国 内 学 童 人 口 の 減 少 、IT の 普 及 に よ る ペ ー パ ー レ ス 社 会 が 挙 げ ら れ る が 、少 な く と も 国 内 環 境 に お い て 業 界 企 業 の 収 益 性 が 高 ま る 要 因 は 見 出 せ な い と 言 え る 。 そ こ で 、 筆 記 具 業 界 内 企 業 が 国 内 外 で 競 争 力 を 維 持 し て い る 要 因 、 お よ び 業 界 リ ー ダ ー で あ る 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト の 高 収 益 の 要 因 は 何 で あ る か と い う 本 研 究 の 動 機 づ け に 至 っ た 。 日 本 の 筆 記 具 業 界 が 競 争 力 を 維 持 し て い る 要 因 と し て 挙 げ ら れ る の が 、 日 本 の メ ー カ ー が 提 案 す る「 高 機 能 ・ 高 付 加 価 値 商 品 」と 呼 ば れ る 新 商 品 の 数 々 で あ る 。 こ こ で 、「 付 加 価 値 」 の 語 に つ い て 検 討 す る 。 経 済 産 業 省 の 工 業 統 計 調 査 に お い て は 、 付 加 価 値 額 の 算 定 式 と し て 下 記 の 式 が 用 い ら れ て い る1 2。 付 加 価 値 額 = 生 産 額 - ( 消 費 税 を 除 く 内 国 消 費 税 額 + 推 計 消 費 税 額 ) - 原 材 料 使 用 額 等 - 減 価 償 却 額 こ の 定 義 を そ の ま ま 用 い た 場 合 、例 え ば 筆 記 具 に お い て も 筆 記 具 の 生 産 段 階 、 流 通 段 階 あ る い は 筆 記 具 生 産 に 用 い る 材 料 の 生 産 段 階 そ れ ぞ れ に 付 加 価 値 が 発 (百万円) 日本 米州 欧州 アジア その他の 地域 報告 セグメント計 外部顧客への売上高 38,503 22,306 20,301 6,888 2,267 90,268 セグメント間の内部 売上高又は振替高 27,641 6 10 - - 27,658 66,145 22,313 20,301 6,888 2,267 117,926 売上高 計
3 生 す る こ と と な り 、「 高 付 加 価 値 商 品 」の「 付 加 価 値 」は ど こ ま で を 示 し て い る の か 曖 昧 に な る 。 そ こ で 、本 研 究 に お い て は「 高 付 加 価 値 商 品 」を「 商 品 を 製 造 ・ 販 売 す る 企 業 で あ る 筆 記 具 メ ー カ ー が 生 み 出 し た 付 加 価 値 の 高 い 商 品 」 と 定 義 す る 。 付 加 価 値 は 主 に 企 業 の 利 益 と 人 件 費 に 分 配 さ れ る た め 、 企 業 の 収 益 の 源 で あ る 。高 付 加 価 値 商 品 と 推 測 さ れ る も の と し て 本 研 究 で 着 目 し た の が 、三 菱 の ボ ー ル ペ ン「 ジ ェ ッ ト ス ト リ ー ム 」や シ ャ ー プ ペ ン シ ル「 ク ル ト ガ 」、パ イ ロ ッ ト の ボ ー ル ペ ン 「 フ リ ク シ ョ ン ボ ー ル 」 で あ る 。 こ れ ら は 従 来 商 品 よ り も 高 価 格 に 設 定 さ れ て い る が 、 そ の 機 能 性 が 市 場 で 支 持 さ れ 、 販 売 量 が 拡 大 し た 。 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト は 自 社 の 商 品 が ヒ ッ ト す る の と 関 連 す る か の よ う に 、 業 績 が 向 上 し て い る 。 こ の こ と か ら 、 こ れ ら の 商 品 は 「 高 付 加 価 値 商 品 」 で あ る と 推 測 さ れ る が 、「 高 付 加 価 値 商 品 」で あ る 根 拠 は な く 、高 付 加 価 値 を 有 し て い る か は 、本 研 究 を 通 じ て 間 接 的 に 明 ら か に す べ き 目 的 の 一 つ で あ る 。し た が っ て 、 本 研 究 に お い て は 上 述 し た 商 品 に 「 高 付 加 価 値 商 品 」 の 語 は 用 い ず 、 従 来 商 品 よ り 高 機 能・高 価 格 で あ る こ と の 意 味 で「 高 機 能・高 価 格 商 品 」の 語 を 用 い る 。 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト は 自 社 の 利 益 率 を 向 上 さ せ 、 筆 記 具 業 界 内 に お け る 「 競 争 優 位 」 を 構 築 し て い る と 推 測 さ れ る 。 競 争 優 位 と は 「 業 界 内 で 相 対 的 に 高 い 収 益 性 を 維 持 可 能 な 状 態 」 と 定 義 す る 。 こ の 研 究 に 着 目 し た 大 き な 理 由 に 日 本 の 製 造 業 の 衰 退 が 挙 げ ら れ る 。2000 年 を 境 に 電 子 レ ン ジ 、 冷 蔵 庫 、 全 自 動 洗 濯 機 と い っ た 多 く の 電 化 製 品 の 貿 易 収 支 が 赤 字 に 転 落 し て お り1 3、 こ の こ と は 筆 記 具 業 界 と 明 ら か に 異 な る 状 態 で あ る 。日 本 の 製 造 業 衰 退 の 原 因 に つ い て は 、戦 略 の 欠 如 を 原 因 と し た Porter ら の 研 究 (Porter・竹 内 , 2000)、 垂 直 統 合 型 事 業 構 造 か ら 水 平 分 業 型 事 業 構 造 の 変 化 に 対 応 で き な か っ た と す る 産 業 構 造 の 変 化 へ の 対 応 の 遅 れ を 原 因 と し た 研 究 ( 妹 尾, 2009; 小 川 , 2009)が あ る 。日 本 企 業 に 限 ら ず 企 業 の 盛 衰 に 関 す る 研 究 と し て は 、 企 業 の 内 部 環 境 変 化 に 原 因 を 求 め る も の (Collins, 2009 )、 破 壊 的 イ ノ ベ ー シ ョ ン な ど の 技 術 革 新 の 影 響(C hristensen , 1997)等 、多 く の 研 究 が な さ れ て い る 。 な ぜ 、 日 本 の 筆 記 具 業 界 は 競 争 力 を 失 わ ず 、 ま た そ の 中 で 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト の よ う な 高 収 益 企 業 が 存 在 す る の か を 検 証 し 、 業 界 自 体 が 競 争 力 を 維 持 す る 要 因 お よ び 業 界 内 で 競 争 優 位 を 構 築 ・ 維 持 す る た め の 仮 説 を 導 出 し 、 戦 略 的 提 言 を 行 う こ と が 本 研 究 の 主 目 的 で あ る 。 さ ら に 、 導 か れ た 仮 説 の 一 般 化 可 能 性 を 問 う こ と に よ り 、 筆 記 具 業 界 の み な ら ず 、 他 の 業 界 に お い て も 日 本 の 製 造 業 が 競 争 力 を 構 築 ・ 維 持 す る た め の 一 助 と な る こ と を 期 し て い る 。
4 こ れ ま で 日 本 の 筆 記 具 業 界 を 詳 細 分 析 し た 研 究 は な い 。要 因 の 一 つ と し て は 、 業 界 規 模 お よ び 企 業 規 模 が 小 さ い 上 に 非 上 場 企 業 が 多 く 分 析 が 困 難 で あ っ た こ と 、 も う 一 つ の 要 因 は 本 節 の 冒 頭 で 述 べ た よ う に 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト の 経 常 利 益 率 が 10%を 超 え た の は 三 菱 が 2010 年 以 降 、パ イ ロ ッ ト が 2013 年 以 降 と 比 較 的 最 近 の こ と で あ り 、 高 収 益 企 業 と し て の 分 析 対 象 と な ら な か っ た こ と が 挙 げ ら れ る 。 そ れ 以 降 、 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト 共 に 2014 年 ま で 高 収 益 を 維 持 し て お り 、 高 収 益 要 因 を 分 析 対 象 と す る の は 正 に 今 が 適 切 で あ る と 言 え よ う 。 次 節 に お い て 、 筆 記 具 業 界 の 現 状 分 析 を 行 う 。 1.2 筆 記 具 業 界 の 現 状 ま ず 、 日 本 の 筆 記 具 業 界 の 現 状 を 俯 瞰 す る 。 経 済 産 業 省 の 生 産 動 態 統 計 年 報 に よ れ ば 、 統 計 対 象 の 筆 記 具 は 2014 年 集 計 時 点 で 8 商 品 あ り 、 出 荷 金 額 ベ ー ス の 割 合 は 下 図 1-1 の 通 り で あ る 。 図 1-1 筆 記 具 出 荷 金 額 シ ェ ア ( 2014 年 ) 出 所 : 経 済 産 業 省 HP『 生 産 動 態 統 計 年 報 』1 4を 基 に 作 成 8 商 品 を 合 計 す る と 約 1,400 億 円 に な る が 、 こ の 出 荷 金 額 は 輸 出 品 も 含 ま れ る 。 な お 、8 商 品 の 内 、 水 性 ボ ー ル ペ ン ・ マ ー キ ン グ ペ ン ・ 油 性 ボ ー ル ペ ン ・ シ ャ ー プ ペ ン シ ル の 出 荷 金 額 上 位 4 商 品 で 出 荷 金 額 の 約 90%を 占 め る 。 し た 47,408 33% 38,024 27% 24,726 17% 15,692 11% 5,895 4% 4,359 3% 3,734 3% 2,040 2% 水性ボールペン マーキングペン 油性ボールペン シャープペンシル 鉛筆 修正テープ クレヨン・パス・水彩絵の具 修正液 出荷金額(百万円) 及び下段にシェアを表示
5 が っ て 、 筆 記 具 業 界 の 分 析 に 際 し て は こ れ ら 4 商 品 を 分 析 対 象 と す る 。 図 1-2 は ボ ー ル ペ ン ・ マ ー キ ン グ ペ ン ・ シ ャ ー プ ペ ン シ ル の 主 要 3 商 品 の 出 荷 金 額 お よ び 輸 出 入 金 額 、 図 1-3 は 主 要 3 商 品 の 出 荷 数 量 お よ び 輸 出 入 数 量 で あ る 。 輸 出 入 金 額 ・ 数 量 は 貿 易 統 計 の デ ー タ を 使 用 し た ( 貿 易 統 計 に ボ ー ル ペ ン の 水 性・油 性 の 区 分 が な い た め 、ボ ー ル ペ ン 1 区 分 と し て 3 商 品 で 表 し た )。 図 1-2 筆 記 具 主 要 3 商 品 の 出 荷 金 額 お よ び 輸 出 入 金 額 (2014 年 ) 図 1-3 筆 記 具 主 要 3 商 品 の 出 荷 数 量 お よ び 輸 出 入 数 量 (2014 年 ) 出 所 : 図 1-2、 図 1-3 い ず れ も 財 務 省 HP『 貿 易 統 計 』1 5お よ び 経 済 産 業 省 HP『 生 産 動 態 統 計 年 報 』1 6を 基 に 作 成 0
10,000
20,000 30,000 40,000 50,00060,000
70,000 80,000 ボールペン マーキングペン シャープペンシル 百 万円
出荷金額 輸出金額 輸入金額 0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 1,400,000 1,600,000 ボールペン マーキングペン シャープペンシル 千 本 出荷数量 輸出数量 輸入数量6 図 1-2、 図 1-3 が 示 す よ う に 筆 記 具 の 主 要 商 品 は 金 額 、 数 量 ベ ー ス 共 に 、 輸 出 量 が 輸 入 量 を 大 き く 上 回 る 状 態 で あ る 。 そ こ で 、 図 1-2 の 情 報 を 整 理 し 、 国 内 市 場 規 模 を 出 荷 金 額 ( 生 産 動 態 統 計 年 報 ) - 輸 出 金 額 ( 貿 易 統 計 )+ 輸 入 金 額 ( 貿 易 統 計 ) と 仮 定 し 、 主 要 3 商 品 を 合 算 し た 金 額 で 表 し た グ ラ フ を 図 1-4 に 示 す 。 図 1-4 国 内 市 場 に お け る 国 内 製 商 品 の 構 成 と 海 外 向 け 出 荷 金 額 2 種 類 の 異 な る 統 計 デ ー タ を 使 用 し て い る た め 、 統 計 上 の 誤 差 が で る こ と は 認 識 し て い る が 、 筆 記 具 の 国 内 市 場 の 実 態 把 握 の た め の 公 的 デ ー タ を 用 い た 他 の 手 段 が な い た め 、 採 用 し た 。 図 1-4 に よ れ ば 、 国 内 市 場 は 国 内 製 商 品 の 金 額 シ ェ ア が 約 85%を 占 め 、 輸 入 品 は 15%で あ る 。筆 記 具 主 要 3 商 品 の 国 内 市 場 規 模 は 約 900 億 円( 出 荷 金 額 と 輸 入 金 額 を 足 し た 金 額 ) と 言 え る 。 さ ら に 、 国 内 向 け 出 荷 金 額 約 760 億 円 の 約 83%に 相 当 す る 約 634 億 円 の 筆 記 具 が 輸 出 さ れ て い る 。 図 1-5 は 民 間 調 査 会 社 マ ー ケ テ ィ ン グ デ ー タ バ ン ク (MDB)に よ る 筆 記 具 業 界 内 に お け る 国 内 の 企 業 別 筆 記 具 販 売 金 額 シ ェ ア で あ る 。 該 当 す る 公 的 デ ー タ が な い た め 、MDB の 資 料 を 用 い た 。
75,989
13,530
63,391
0
10,000
20,000
30,000
40,000
50,000
60,000
70,000
80,000
90,000
100,000
国内市場
海外市場
(
百
万
円
)
国内向け出荷
輸入品
海外向け出荷
(15%)
(85%)
()内は国内市場シェア7 図 1-5 2006 年 筆 記 具 市 場 シ ェ ア 出 所 :「 筆 記 具 」『MDB 市 場 調 査 レ ポ ー ト 』 MDB1 7を 基 に 作 成 国 内 企 業 5 社 で 90%の シ ェ ア を 占 め て い る 。さ ら に 富 士 キ メ ラ 総 研 が 調 査 し た 筆 記 具 主 要 3 商 品 の メ ー カ ー 別 売 上 高 を 図 1-6 に 、 お よ び 図 1-6 の 情 報 を 整 理 し 、 各 商 品 の 販 売 金 額 を 合 算 し て 各 メ ー カ ー の 市 場 シ ェ ア を 示 し た 図 を 図 1-7 に 示 す 。 図 1-6 主 要 筆 記 具 の メ ー カ ー 別 売 上 高 ( 2013 年 度 ) パイロット, 34% 三菱, 20% ゼブラ, 20% トンボ鉛筆, 12% ぺんてる, 4% その他, 10% 15,000 2,600 2,650 13,300 3,400 4,600 3,800 2,300 4,450 1,800 1,200 2,700 3,037 1,768 9,252 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 ボールペン マーキングペン シャープペン ( 百 万 円 ) パイロット 三菱 ゼブラ ぺんてる その他
8 図 1-7 筆 記 具 主 要 3 商 品 の メ ー カ ー 別 市 場 シ ェ ア 出 所 : 図 1-6、 1-7 い ず れ も 「 主 要 筆 記 具 市 場 の 動 向 」『 富 士 マ ー ケ テ ィ ン グ ・ レ ポ ー ト 』 富 士 キ メ ラ 総 研1 8を 基 に 作 成 い ず れ の 資 料 に お い て も 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト の 販 売 シ ェ ア が 高 く 、 次 い で ゼ ブ ラ 社 ( ゼ ブ ラ と 略 す ) が 続 き 、 図 1-5 で は ト ン ボ 鉛 筆 社 ( ト ン ボ 鉛 筆 と 略 す )、 ぺ ん て る 社 ( ぺ ん て る と 略 す ) が 続 き 、 図 1-7 で は ぺ ん て る が 続 く 。 図 1-7 に ト ン ボ 鉛 筆 が 無 い の は 、 主 要 3 商 品 の シ ェ ア が 低 い た め と 推 測 さ れ る 。 図 1-5、 図 1-7 を 参 考 に す れ ば 、 筆 記 具 国 内 市 場 の 80%以 上 は 日 本 の 数 社 の 筆 記 具 メ ー カ ー で 寡 占 さ れ て い る 状 態 で あ る 。 図 1-4 で は 公 的 デ ー タ を 用 い て 国 内 市 場 に お け る 国 内 製 商 品 の 占 有 率 を 約 85%と 推 定 し た が 、調 査 会 社 の 資 料 と 近 い 値 で あ る 。国 内 製 商 品 の 市 場 占 有 率 は 80%以 上 と 推 定 す る こ と は 論 理 的 と 言 え よ う 。 筆 記 具 の 国 内 市 場 シ ェ ア が 高 い と 推 定 さ れ る 、 三 菱 ・ パ イ ロ ッ ト ・ ゼ ブ ラ ・ ぺ ん て る は い ず れ も 下 記 に 定 義 す る 研 究 開 発 志 向 型 企 業 と 推 定 さ れ る 。 本 研 究 で は「 研 究 開 発 志 向 型 企 業 」を 、「 研 究 開 発 活 動 の 結 果 、実 際 に 市 場 に 研 究 開 発 の 成 果 で あ る 新 商 品 を 上 市 し て い る 企 業 」 と 定 義 す る 。 前 述 し た こ れ ら の 企 業 は 、 研 究 開 発 成 果 の 指 標 と な り う る 特 許 出 願 公 開 件 数 は 2000/1/1~2009/12/31 の 10 年 間 で 、 上 位 か ら パ イ ロ ッ ト ( パ イ ロ ッ ト イ ン キ 社 と パ イ ロ ッ ト コ ー ポ レ ー シ ョ ン 社 の 合 計 ) が 1,041 件 、 三 菱 が 870 件 、 ぺ ん て る が 792 件 、ゼ ブ ラ が 176 件 と 続 き 、海 外 企 業 で 最 も 出 願 件 数 の 多 い フ ラ
パイロット, 28%
三菱, 30%
ゼブラ, 15%
ぺんてる, 8%
その他, 20%
9 ン ス の ソ シ エ テ ・ ビ ッ グ 社 ( 以 降 、 ビ ッ ク と 略 す ) の 28 件 を 大 き く 引 き 離 し て い る1 9。 詳 細 は 本 章 2 節 、 3 節 で 述 べ る が 、 こ れ ら 国 内 企 業 4 社 か ら は 実 際 に 研 究 開 発 活 動 の 成 果 と し て 多 く の 新 商 品 が 上 市 さ れ て い る 。例 を 挙 げ れ ば 、2006 年 に 三 菱 が 上 市 し た 書 き 味 の な め ら か な 油 性 ボ ー ル ペ ン「 ジ ェ ッ ト ス ト リ ー ム 」2 0、 パ イ ロ ッ ト が 2007 年 に 国 内 で 上 市( 海 外 で は 2006 年 に 上 市 )し た 消 せ る ボ ー ル ペ ン 「 フ リ ク シ ョ ン ボ ー ル 」2 1等 が あ る 。 欧 米 に も 前 述 し た フ ラ ン ス の ビ ッ ク 、ド イ ツ の ス テ ッ ド ラ ー 社 、米 国 の ニ ュ ー ウ ェ ル ラ バ ー メ イ ド 社 ( 以 降 、 ニ ュ ー ウ ェ ル と 表 記 す る ) 等 の 筆 記 具 製 造 ・ 販 売 業 者 が 存 在 す る が 図 1-5、 図 1-7 で 示 し た よ う に 、 日 本 国 内 で は 国 内 企 業 以 外 の 市 場 シ ェ ア は 低 く 、 研 究 開 発 活 動 の 指 標 と な る 特 許 出 願 件 数 が 少 な い こ と は す で に 述 べ た 通 り で あ る 。 海 外 企 業 が 研 究 開 発 を 志 向 し て い な い と の 断 定 は 出 来 な い が 、 国 内 市 場 に 関 し て 言 え ば 研 究 開 発 志 向 型 企 業 の 分 析 対 象 か ら 除 外 し て 問 題 な い と 言 え る 。 海 外 市 場 に つ い て の 分 析 は Ⅲ 章 で 行 う 。 そ こ で 、 な ぜ 日 本 で は 筆 記 具 の 研 究 開 発 志 向 型 企 業 が 多 い の か に つ い て 、 背 景 分 析 を 行 う 。 こ の こ と が 筆 記 具 業 界 の 競 争 力 維 持 の 一 要 因 と 考 え ら れ る か ら で あ る 。 要 因 の 解 明 の た め に 、 次 節 で は ま ず 筆 記 具 の 歴 史 を 述 べ 、 そ の 後 日 本 の 筆 記 具 業 界 の 歩 み に つ い て バ ブ ル 崩 壊 前 と 崩 壊 後 に 分 け て 述 べ る 。 バ ブ ル と は 、 「1980 年 代 末 に 起 こ っ た 、実 体 経 済 と か い 離 し た 地 価 上 昇 、株 価 高 騰 に 代 表 さ れ る 経 済 の 過 熱 」 を 指 し 、 そ の 終 焉 で あ る バ ブ ル 崩 壊 を 1991 年 と す る2 2。
2. 戦 前 戦 後 の 筆 記 具 業 界 の 歩 み ( 戦 前 ~ 1980 年 代 )
筆 記 具 の 歴 史 に つ い て 、 戦 前 か ら 戦 後 に か け て の 筆 記 具 業 界 の 主 だ っ た 動 向 を 以 下 に 挙 げ る 。 戦 前 戦 後 の 筆 記 具 業 界 年 表 ・1887 年 三 菱 の 前 身 で あ る 真 崎 仁 六 鉛 筆 創 業 。日 本 初 の 国 産 鉛 筆 製 造・販 売 ・1897 年 ゼ ブ ラ 創 業 者 石 川 徳 松 が 全 く の 独 創 で 、 国 産 鋼 ペ ン 先 製 造 ・ 販 売 ・1911 年 セ ー ラ ー 万 年 筆 社 の 創 業 者 が 日 本 初 の 国 産 万 年 筆 を 始 め 、文 房 具 類 の 製 造 ・ 販 売 開 始 ・1918 年 パ イ ロ ッ ト の 前 身 並 木 製 作 所 創 業 万 年 筆 の 製 造 ・ 販 売 開 始 ・1946 年 ぺ ん て る の 前 身 大 日 本 文 具 設 立 。 ・1948 年 セ ー ラ ー 万 年 筆 社 が 業 界 初 の ボ ー ル ペ ン 上 市10 ・1955 年 ぺ ん て る が 「 ぺ ん て る ク レ ヨ ン 」 上 市 ・1958 年 三 菱 が 国 産 最 高 級 鉛 筆 「 uni」 を 上 市 ・1960 年 ぺ ん て る が 世 界 初 の ノ ッ ク シ ャ ー プ ペ ン シ ル「 ぺ ん て る 鉛 筆 」上 市 ・1963 年 ぺ ん て る が 「 ぺ ん て る サ イ ン ペ ン 」 を 上 市 ・1973 年 サ ク ラ ク レ パ ス 社 が 「 ク ー ピ ー ペ ン シ ル 」 を 上 市 ・1977 年 ゼ ブ ラ が シ ャ ー プ ペ ン シ ル と ボ ー ル ペ ン を 一 体 化 し た 新 商 品 「 シ ャ ー ボ 」 を 上 市 ・1979 年 三 菱 が 世 界 初 の 金 属 チ ッ プ を 使 用 し た 水 性 ボ ー ル ペ ン「 ユ ニ ボ ー ル 」 上 市 ・1984 年 サ ク ラ ク レ パ ス 社 が 世 界 初 の ゲ ル イ ン ク ボ ー ル ペ ン ( ※ 注 )「 ボ ー ル サ イ ン 」 上 市 ※ 注 : ゲ ル イ ン ク は 筆 記 具 業 界 で の 呼 称 で あ り 、 実 際 は イ ン ク に チ キ ソ ト ロ ピ ー 性 を 付 与 し た 流 動 性 の あ る イ ン ク で あ る 。 ( 以 上 、 筆 記 具 各 社 HP を 参 考 に 作 成2 3 , 2 4 , 2 5 , 2 6 , 2 7 , 2 8) 上 記 年 表 を 見 る と 、三 菱 は 1887 年 に 鉛 筆 の 製 造 を 、パ イ ロ ッ ト は 1918 年 に 万 年 筆 の 製 造 、 ぺ ん て る が 戦 後 間 も な い 1946 年 に 文 具 卸 、 後 に え の ぐ 、 く れ よ ん の 自 社 生 産 を 開 始 し て い る 。 戦 前 か ら 国 内 の 筆 記 具 製 造 が 非 常 に 盛 ん で あ っ た こ と が 伺 え る 。 日 本 古 来 の 筆 ・ 硯 等 を 除 き 、 欧 米 か ら 技 術 導 入 を 行 っ た 時 期 で あ り 、 世 界 に は す で に そ れ ら の 筆 記 具 が 存 在 し た 。 例 え ば 三 菱 の HP に よ れ ば 、 鉛 筆 に 関 し て は 黒 鉛 を 用 い た 鉛 筆 の 前 身 と 呼 べ る も の は 1500 年 代 に 使 用 さ れ て い た し2 9、 セ ー ラ ー 万 年 筆 社 ( セ ー ラ ー と 略 す ) は 国 産 万 年 筆 や 日 本 初 の ボ ー ル ペ ン 製 造 に 際 し て 、 海 外 の 商 品 を 参 考 に し て い た3 0。 1950 年 代 に な る と 、三 菱 が 世 界 一 の 鉛 筆 の 開 発 を 目 指 し 、5 年 の 歳 月 を か け て 1958 年 に 国 産 最 高 級 鉛 筆 「 uni」 を 上 市 、 鉛 筆 1 本 「 10 円 」 の 時 代 に 「 50 円 」 の 価 格 で 販 売 し た に も か か わ ら ず 大 ヒ ッ ト し た3 1。 日 本 の 筆 記 具 が 世 界 と 肩 を 並 べ 、 追 い 越 し た 出 来 事 で あ り 、 そ の 後 の 1960 年 代 以 降 は 、 上 記 年 表 の 通 り 、 世 界 初 の 商 品 を 日 本 企 業 が 数 多 く 開 発 し て い る 。 上 記 年 表 に よ れ ば 、 例 え ば 三 菱 が 世 界 初 の 金 属 チ ッ プ ( そ れ ま で は 樹 脂 チ ッ プ ) を 用 い た 水 性 ボ ー ル ペ ン を 1979 年 に 上 市 、 サ ク ラ ク レ パ ス 社 ( サ ク ラ と 略 す )が 1990 年 代 以 降 の 主 力 商 品 と な る ゲ ル イ ン ク ボ ー ル ペ ン を 1984 年 に 世 界 で 初 め て 上 市 し て い る 。 こ の こ ろ か ら 、 国 内 の 筆 記 具 業 界 は 技 術 で 世 界 を 牽 引 し 始 め た と 言 え よ う 。
11
3. バ ブ ル 崩 壊 後 の 筆 記 具 業 界 の 商 品 開 発 の 歩 み ( 1990 年 代 ~ 現 在 )
バ ブ ル 崩 壊 後 の 筆 記 具 業 界 か ら 上 市 さ れ た 主 だ っ た 商 品 と 企 業 の 動 向 を 以 下 に 挙 げ る 。 バ ブ ル 崩 壊 後 の 筆 記 具 業 界 年 表 ・1990 年 代 ゲ ル イ ン ク ボ ー ル ペ ン 開 発 競 争 。 各 社 自 社 ブ ラ ン ド で 商 品 展 開 ( サ ク ラ 「 ボ ー ル サ イ ン 」、 ぺ ん て る 「 ハ イ ブ リ ッ ド 」、 三 菱 「 ユ ニ ボ ー ル シ グ ノ 」、 ゼ ブ ラ 「 ジ ェ ル ビ ー 」) ・2000 年 代 前 半 極 細 ゲ ル イ ン ク ボ ー ル ペ ン 開 発 競 争( パ イ ロ ッ ト「 ハ イ テ ッ ク C」「 三 菱 ユ ニ ボ ー ル シ グ ノ 極 細 」) ・2006 年 従 来 に 無 い 滑 ら か さ を 有 す る 油 性 ボ ー ル ペ ン 、三 菱「 ジ ェ ッ ト ス ト リ ー ム 」 上 市 。 ・2007 年 摩 擦 熱 で 消 去 可 能 な 消 せ る ボ ー ル ペ ン「 フ リ ク シ ョ ン ボ ー ル 」上 市 。 2010 年 以 降 、 販 売 量 を 大 き く 伸 ば す 。 ・2008 年 シ ャ ー プ 芯 が 片 減 り し な い シ ャ ー プ ペ ン シ ル 、三 菱「 ク ル ト ガ 」上 市 。 ・2009 年 ~ な め ら か 油 性 ボ ー ル ペ ン 開 発 競 争( 三 菱「 ジ ェ ッ ト ス ト リ ー ム 」、 パ イ ロ ッ ト「 ア ク ロ ボ ー ル 」、ぺ ん て る「 ビ ク ー ニ ャ 」、ゼ ブ ラ「 ス ラ リ 」 等 )。 ・2010 年 ~ 選 べ る リ フ ィ ー ル 開 発 競 争( パ イ ロ ッ ト「 ハ イ テ ッ ク C コ レ ト 」、 三 菱「 ス タ イ ル フ ィ ッ ト 」、ぺ ん て る「 ス リ ッ チ ー ズ 」、ゼ ブ ラ「 プ レ フ ィ ー ル 」 等 ) ・2014 年 ~ 高 機 能 シ ャ ー プ ペ ン シ ル 開 発 競 争 ( 三 菱 「 ク ル ト ガ 」、 ぺ ん て る 「 オ レ ン ズ 」、 ゼ ブ ラ 「 デ ル ガ ー ド 」)。 ( 以 上 、 筆 記 具 各 社 HP を 参 考 に 作 成3 2 , 3 3 , 3 4 , 3 5 , 3 6) バ ブ ル 崩 壊 後 は 崩 壊 前 と は 異 な り 、 新 た な 新 商 品 が 上 市 さ れ る 間 隔 が 短 く な っ た 上 に 、 他 社 が す ぐ に 追 随 し て 競 争 が 激 化 す る と い う 構 図 と な っ て い る 。 筆 記 具 業 界 企 業 の 詳 細 は Ⅱ 章 で 述 べ 、 筆 記 具 業 界 を 取 り 巻 く 環 境 に つ い て Ⅲ 章 で 詳 細 を 述 べ る が 、 戦 後 か ら 現 在 ま で の 時 間 の 流 れ の 中 で 、 流 通 構 造 の 変 化 や 人 口 動 態 の 変 化( 少 子 化 )等 、筆 記 具 業 界 を 取 り 巻 く 環 境 も 変 化 し て い っ た 。 特 定 の 企 業 は 商 品 開 発 競 争 を 展 開 し た が 、 商 品 形 態 自 体 は あ ま り 変 化 し て い な い 特 徴 が あ る 。 油 性 ボ ー ル ペ ン ・ シ ャ ー プ ペ ン シ ル ・ 鉛 筆 い ず れ も 戦 前 か ら12 あ る ロ ン グ ラ イ フ 商 品 で あ る 。 ま た 、 水 性 ボ ー ル ペ ン の 他 、 サ イ ン ペ ン も 発 売 か ら 20 年 以 上 経 過 し て も 大 き く 形 を 変 え て い な い 。 ま た 、 こ れ ら を 代 替 す る ま っ た く 新 し い 機 能 を 伴 っ た 筆 記 具 も こ れ 以 降 生 ま れ て い な い と も い え る 。 商 品 開 発 競 争 は 、 商 品 の 完 全 な 代 替 で は な く 、 持 続 的 な 改 良 に よ り 商 品 の 中 に 新 た な カ テ ゴ リ ー を 創 出 し た も の が 多 い 。 例 え ば 、 ボ ー ル ペ ン で あ れ ば 、 ゲ ル イ ン ク ボ ー ル ペ ン ・ な め ら か な 油 性 ボ ー ル ペ ン ・ 消 せ る ボ ー ル ペ ン 、 シ ャ ー プ ペ ン シ ル で は 回 転 シ ャ ー プ 等 で あ る 。 日 本 以 外 か ら 、 新 た な カ テ ゴ リ ー を 創 出 し た 筆 記 具 新 商 品 は ほ と ん ど 上 市 さ れ て お ら ず 、 図 1-4 に 示 し た よ う に 国 内 製 商 品 が 国 内 市 場 を 寡 占 し 、 国 内 で は 新 商 品 開 発 競 争 が 展 開 さ れ 、 新 た な 新 商 品 が 上 市 さ れ 続 け た 。 結 果 と し て 、 日 本 の 筆 記 具 業 界 の 企 業 間 競 争 は 激 し い と い え る 。 こ の 現 象 に つ い て 、日 本 と い う 国 家 の 性 質 が 大 き く 関 与 し て い る と 推 測 す る 。 そ こ で 、 国 の 競 争 力 の 説 明 の た め に 、Porter が 提 唱 し た 理 論 、「 国 の 競 争 優 位 」 を 用 い て 検 証 を 行 な う 。Porter は 企 業 が 競 争 に 成 功 す る の に 、 従 来 の 理 論 で あ る 生 産 要 素 を 基 礎 と し た 比 較 優 位 論 で は 説 明 不 十 分 と み な し 、「 あ る 国 が 特 定 産 業 に お い て 、 国 際 的 に 成 功 す る の は な ぜ か 。 答 は 、 そ の 国 の 産 業 が 競 争 す る 環 境 を 形 成 し 、 競 争 優 位 の 創 造 を 促 進 ま た は 阻 害 す る 4 つ の 特 性 で 説 明 で き る (Porter, 1990)。」 と 述 べ て い る 。「 4 つ の 決 定 要 因 と は 、 要 素 条 件 、 需 要 条 件 、 関 連 ・ 支 援 産 業 、 企 業 の 戦 略 、 構 造 お よ び ラ イ バ ル 間 競 争 を 指 す 。 特 に 先 進 国 経 済 の バ ッ ク ボ ー ン を 形 成 す る 知 的 集 約 型 産 業 で 競 争 優 位 を 持 続 す る た め に は 、 国 の ダ イ ヤ モ ン ド ( シ ス テ ム と し て の 決 定 要 因 を 呼 ぶ 際 に 私 が 使 用 す る 言 葉 ) の す べ て に わ た る 優 位 が 必 要 で あ る (Porter, 1990)」 と 述 べ て い る 。 次 節 で は Porter の ダ イ ヤ モ ン ド モ デ ル を 適 用 し て 、日 本 の 筆 記 具 業 界 の 国 の 優 位 を 分 析 す る 。
4. 日 本 の 筆 記 具 業 界 の 国 の 優 位
4.1 要 素 条 件 「 要 素 条 件 」と は 、「 あ る 任 意 の 産 業 で 競 争 す る の に 必 要 な 熟 練 労 働 者 ま た は イ ン フ ラ ス ト ラ ク チ ャ ー と い っ た 生 産 要 素 に お け る 国 の ポ ジ シ ョ ン(Porter, 1990) 」 で あ る 。 要 素 条 件 に お け る 日 本 の 特 徴 と し て 、 ま ず は 、 日 本 の 教 育 レ ベ ル の 高 さ を 挙 げ る こ と が 出 来 る 。 先 進 国 で あ る 日 本 の 教 育 レ ベ ル が 高 い こ と は 論 じ る ま で も な い が 、 日 本 が 戦 後 急 速 に 経 済 発 展 し た 理 由 も 、 日 本 自 身 が 持 つ そ の 教 育 レ ベ ル の 高 さ に 根 ざ し て い る と 推 測 さ れ る 。13 そ の 教 育 レ ベ ル の 高 さ は 主 に 江 戸 時 代 に 遡 る 。 例 え ば 、「1850 年 ご ろ の 日 本 の 就 学 率 は 70%と い わ れ て お り 、 そ の 結 果 、 明 治 初 期 に お け る 識 字 率 は 世 界 最 高 水 準 に あ っ た 。 こ の 急 速 な 発 展 を 支 え た 基 盤 に 、 江 戸 時 代 の 寺 子 屋 教 育 が あ る3 7。」 と の 記 事 が あ る 。 Dore は 、「 大 衆 教 育 の 普 及 度 に つ い て の 計 算 は 極 め て 大 ま か な も の に な ら ざ る を 得 な い が 、 そ れ に し て も 疑 う 余 地 の な い こ と は 、1870 年 ( 明 治 3) の 日 本 に お け る 読 み 書 き の 普 及 率 が 現 代 の 大 抵 の 発 展 途 上 国 よ り も か な り 高 か っ た と い う こ と で あ る 。 恐 ら く 当 時 の 一 部 の ヨ ー ロ ッ パ 諸 国 と 較 べ て も ひ け を と ら な か っ た だ ろ う 。1837 年 に な っ て も ま だ イ ギ リ ス 議 会 の 特 別 委 員 会 の 調 査 で は 、 主 要 工 業 都 市 に お け る 児 童 の 就 学 率 が 4、 5 人 に 1 人 に 過 ぎ な い こ と が 明 ら か に な っ て い る(Dore, 1965)。」 と 述 べ て い る 。 も っ と も 、 現 在 と 異 な り 統 計 的 な 資 料 な ど 無 い 時 代 で あ る 。斎 藤 は 、「 外 国 人 研 究 者 に は 、こ う し た 寺 子 屋 の 普 及 な ど を 基 に 、江 戸 期 の 識 字 率 を 大 胆 に 推 定 す る 作 業 を 行 っ て い る 者 が あ る(斎 藤 , 2012 年 )」 と Dore を 批 判 し な が ら も 、 い く つ か の 歴 史 的 資 料 を 検 討 し た 上 で 、 「 江 戸 末 期 に お い て 、 当 時 の 日 本 は す で に 庶 民 層 を 含 め て か な り 厚 み を お び た 識 字 人 口 層 を 抱 え て い た(斎 藤 , 2012 年 )」 と 結 論 を 下 し て い る 。 江 戸 時 代 当 時 の 文 明 全 体 の 技 術 水 準 は 西 欧 諸 国 に 劣 っ て い た こ と は 否 め な い が 、 日 本 に お い て は 一 部 の 人 間 の み な ら ず 、 一 般 庶 民 に ま で 幅 広 く 教 育 が 行 き 届 い て い た と い え る 。 明 治 以 降 の 近 代 化 の 過 程 に お い て も 一 般 市 民 の 教 育 レ ベ ル の 高 さ は 、 市 場 の レ ベ ル を 引 き 上 げ 、日 本 の も の づ く り を 支 え る 大 き な 力 と な っ た と 推 測 さ れ る 。 約 265 年 続 い た 江 戸 時 代 の 平 和 な 時 期 は 、教 育 以 外 に も 日 本 の 匠 の 文 化 と い う 日 本 の も の づ く り の 原 点 と も 言 う べ き 文 化 を 生 み 出 し た 。 日 本 は 第 2 次 世 界 大 戦 前 ま で 他 国 の 侵 略 を 受 け た こ と の な い 、 ア ジ ア で は 稀 有 な 国 で あ る 。 古 代 に お い て は 、 日 本 は 大 陸 文 化 、 朝 鮮 半 島 と の 交 流 に よ り 、 他 国 か ら 少 な か ら ず 影 響 を 受 け て き た 。 し か し な が ら 、 江 戸 時 代 の 265 年 の 長 き に 渡 り 鎖 国 政 策 を 敷 く こ と に よ り 、 自 給 自 足 の 日 本 独 自 の 文 化 、 国 民 性 を 醸 成 す る こ と と な る 。 渡 辺 は 江 戸 時 代 に つ い て 、 以 下 の よ う に 述 べ て い る 。 江 戸 時 代 と か 徳 川 文 明 と 俗 称 さ れ る 、18 世 紀 初 頭 に 成 立 し 、19 世 紀 を 通 じ て 成 立 し た 一 つ の 文 明 が 滅 ん だ 。 文 化 や 民 族 の 特 性 は 滅 び ず 、 変 容 す る だ け だ が 、 文 明 は 滅 び る 。 確 か に 今 日 の 社 会 に 今 に 伝 え ら れ る 江 戸 時 代 の 生 活 総 体 の 有 り 様 は 見 ら れ な い 。 こ れ ら の 洞 察 は 日 本 人 よ り 、 明 治 時 代 初 期 の 外 国 人 が 深 く 自 覚 し て い